(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135717
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】光学部材、及び液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20220908BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/13357
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035689
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】小林 君平
(72)【発明者】
【氏名】荒井 則博
(72)【発明者】
【氏名】大沢 和彦
(72)【発明者】
【氏名】片桐 裕人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 仁英
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌央
【テーマコード(参考)】
2H291
2H391
【Fターム(参考)】
2H291FA22X
2H291FA24X
2H291FA42Z
2H291FA43Z
2H291FA52Z
2H291FA71Z
2H291FA85Z
2H291FB04
2H291FB21
2H291FC33
2H291FD07
2H291FD16
2H291HA05
2H291HA06
2H291LA21
2H391AA01
2H391AA13
2H391AB04
2H391AC23
2H391AC27
2H391AD03
2H391AD33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】透過表示における明るさを維持しつつ、反射表示における明るさを向上させる光学部品を提供する。
【解決手段】光学部材は、互いに直交する吸収軸と透過軸とを有する偏光板13と、互いに直交する反射軸と透過軸とを有する反射偏光板11と、偏光板と反射偏光板との間に設けられ、入射光角度に応じて直線透過率が変化する光学異方性拡散層12とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する吸収軸と透過軸とを有する第1偏光板と、
互いに直交する反射軸と透過軸とを有する反射偏光板と、
前記第1偏光板と前記反射偏光板との間に設けられ、入射光角度に応じて直線透過率が変化する光学異方性拡散層と、
を具備し、
前記光学異方性拡散層は、光拡散性に関する対称軸である散乱中心軸を有し、
前記光学異方性拡散層の法線と前記散乱中心軸とのなす角度である散乱中心軸角度をθ(0<θ<90°)、
前記光学異方性拡散層の法線と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、前記散乱中心軸角度θとは反対の方位において、直線透過率が極大となる角度をα(-90°<α<0°)、
前記散乱中心軸角度θと前記角度αとの間において、直線透過率が極小となる角度をβ(α<β<θ)とすると、
前記光学異方性拡散層の値kは、
k=(前記散乱中心軸角度θにおける直線透過率-前記角度βにおける直線透過率)/前記角度αにおける直線透過率
で表され、
前記値kは、0.18以上である
光学部材。
【請求項2】
前記角度αにおける直線透過率は、20%以上である
請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
前記散乱中心軸角度θは、0°より大きく30°以下である
請求項1又は2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記光学異方性拡散層は、マトリクス領域と、前記マトリクス領域内に設けられ、前記マトリクス領域の厚さ方向に延在し、前記マトリクス領域とは屈折率の異なる複数の柱状領域とを有する
請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学部材。
【請求項5】
前記反射偏光板の前記反射軸は、前記第1偏光板の前記吸収軸と平行に設定される
請求項1乃至4の何れか1項に記載の光学部材。
【請求項6】
前記請求項1の光学部材と、
液晶層を有する液晶パネルと、
互いに直交する吸収軸と透過軸とを有する第2偏光板と、
を具備し、
前記第1偏光板と前記第2偏光板とは、前記液晶パネルを挟むように配置される
液晶表示装置。
【請求項7】
前記第2偏光板の吸収軸は、前記第1偏光板の吸収軸と直交する
請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記光学部材の前記液晶パネルと反対側に配置され、前記液晶パネルに向けて照明光を出射する照明装置をさらに具備する
請求項6又は7に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外視認性を向上させる液晶表示装置として、観察側とは反対側に配置された照明装置からの照明光を利用する透過表示と、観察側から入射した外光を利用する反射表示との双方で画像を表示可能な透過/反射型液晶表示装置が知られている。この透過/反射型液晶表示装置としては、液晶表示素子の観察側とは反対側に照明装置を配置し、且つ上記液晶表示素子の複数の画素をそれぞれ2つの領域に区分し、その一方の領域の液晶層よりも後側に反射膜を設けることにより、上記複数の画素毎に反射表示部と透過表示部とを形成したもの(特許文献1)、液晶表示素子の観察側とは反対側に照明装置を配置し、上記液晶表示素子の液晶層よりも後側(照明装置側)に半透過反射膜を配置したもの(特許文献2)がある。
【0003】
しかしながら、どちらの方式においても従来の透過/反射型液晶表示装置は、反射表示が暗いという問題がある。そこでさらに液晶表示素子と照明装置との間に光学異方性拡散層及び反射偏光フィルムを導入することで、反射表示を明るくするという方法が提案されている(特許文献3)。また、さらに反射偏光フィルムをもう1層導入することで、上記透過表示が暗くなるのを抑制しつつ、さらに反射表示を明るくすることができるという方法も提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-93715号公報
【特許文献2】特開2002-107725号公報
【特許文献3】国際公開第02/086562号
【特許文献4】特開2020-112729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3、4の透過/反射型液晶表示装置の反射表示を明るくするために異方性拡散層の散乱性を高めると透過表示が暗くなってしまうという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、透過表示における明るさを維持しつつ、反射表示における明るさを向上させることが可能な光学部材、及び液晶表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によると、互いに直交する吸収軸と透過軸とを有する第1偏光板と、互いに直交する反射軸と透過軸とを有する反射偏光板と、前記第1偏光板と前記反射偏光板との間に設けられ、入射光角度に応じて直線透過率が変化する光学異方性拡散層とを具備する光学部材が提供される。前記光学異方性拡散層は、光拡散性に関する対称軸である散乱中心軸を有し、前記光学異方性拡散層の法線と前記散乱中心軸とのなす角度である散乱中心軸角度をθ(0<θ<90°)、前記光学異方性拡散層の法線と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、前記散乱中心軸角度θとは反対の方位において、直線透過率が極大となる角度をα(-90°<α<0°)、前記散乱中心軸角度θと前記角度αとの間において、直線透過率が極小となる角度をβ(α<β<θ)とすると、前記光学異方性拡散層の値kは、
k=(前記散乱中心軸角度θにおける直線透過率-前記角度βにおける直線透過率)/前記角度αにおける直線透過率
で表され、前記値kは、0.18以上である。
【0008】
本発明の第2態様によると、前記角度αにおける直線透過率は、20%以上である、第1態様に係る光学部材が提供される。
【0009】
本発明の第3態様によると、前記散乱中心軸角度θは、0°より大きく30°以下である、第1又は2態様に係る光学部材が提供される。
【0010】
本発明の第4態様によると、前記光学異方性拡散層は、マトリクス領域と、前記マトリクス領域内に設けられ、前記マトリクス領域の厚さ方向に延在し、前記マトリクス領域とは屈折率の異なる複数の柱状領域とを有する、第1乃至3態様に係る光学部材が提供される。
【0011】
本発明の第5態様によると、前記反射偏光板の前記反射軸は、前記第1偏光板の前記吸収軸と平行に設定される、第1乃至4態様に係る光学部材が提供される。
【0012】
本発明の第6態様によると、第1態様の光学部材と、液晶層を有する液晶パネルと、互いに直交する吸収軸と透過軸とを有する第2偏光板とを具備し、前記第1偏光板と前記第2偏光板とは、前記液晶パネルを挟むように配置される、液晶表示装置が提供される。
【0013】
本発明の第7態様によると、前記第2偏光板の吸収軸は、前記第1偏光板の吸収軸と直交する、第6態様に係る液晶表示装置が提供される。
【0014】
本発明の第8態様によると、前記光学部材の前記液晶パネルと反対側に配置され、前記液晶パネルに向けて照明光を出射する照明装置をさらに具備する、第6又は7態様に係る液晶表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透過表示における明るさを維持しつつ、反射表示における明るさを向上させることが可能な光学部材、及び液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、光学異方性拡散層の光学プロファイルを説明する図である。
【
図3】
図3は、液晶表示装置における透過率相対比を説明する図である。
【
図4】
図4は、液晶表示装置における反射率相対比を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施例1~3における光学異方性拡散層の光学プロファイルを説明する図である。
【
図6】
図6は、実施例1~3における光学異方性拡散層の値kを説明する図である。
【
図7】
図7は、実施例1~3における液晶表示装置の反射率相対比を説明する図である。
【
図8】
図8は、光学異方性拡散層の値kと液晶表示装置の反射率との関係を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施例4、5における光学異方性拡散層の光学プロファイルを説明する図である。
【
図10】
図10は、実施例4、5における液晶表示装置の反射率相対比を説明する図である。
【
図11】
図11は、実施例4、5における液晶表示装置の透過率相対比を説明する図である。
【
図12】
図12は、液晶表示装置の反射率相対比と“散乱中心軸角度+入射光角度”との関係を説明する図である。
【
図14】
図14は、条件1~5における光学異方性拡散層の光学プロファイルを説明する図である。
【
図15】
図15は、バックライトの輝度分布を説明する図である。
【
図16】
図16は、入射光角度に対する反射表示の最適角度を説明する図である。
【
図17】
図17は、光学異方性拡散層の値kの範囲を説明する図である。
【
図18】
図18は、光学異方性拡散層の散乱中心軸角度の範囲を説明する図である。
【
図19】
図19は、光学異方性拡散層の構造と、光学異方性拡散層に入射した透過光の様子を示す模式図である。
【
図20】
図20は、光学異方性拡散層の構造と、光学異方性拡散層に入射した透過光の様子を示す模式図である。
【
図21】
図21は、光学異方性拡散層の光拡散性の評価方法を説明する図である。
【
図23】
図23は、散乱中心軸を説明するための3次元極座標表示を示す図である。
【
図24】
図24は、光学異方性拡散層の一例を示す模式断面図である。
【
図25】
図25は、実施形態に係る液晶表示装置の分解斜視図である。
【
図26】
図26は、実施形態に係る液晶表示装置の側面図である。
【
図27】
図27は、液晶表示装置が備える液晶パネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
[1] 用語の説明
本明細書及び特許請求の範囲における主な用語の意味は以下のとおりである。
【0019】
(1)光学異方性拡散層
光学異方性拡散層は、入射光の入射角(入射光角度という)に応じて光拡散性が変化する光拡散層(光拡散フィルム)である。すなわち、入射光角度に応じて直線透過率が変化し、また光拡散性の入射光角度依存性を有する光拡散層である。
【0020】
(2)直線透過率
直線透過率は、光学異方性拡散層に、ある入射光角度で光が入射した際の、直線方向の透過光量(直線透過光量)と、入射した光の光量(入射光量)との比率である。直線方向とは、入射する光の進行方向を示す。直線透過率は、下記式で表される。
直線透過率(%)=(直線透過光量/入射光量)×100
(3)最大直線透過率、及び最小直線透過率
最大直線透過率とは、直線透過率が最大となる入射光角度で入射した光の直線透過率である。最小直線透過率とは、直線透過率が最小となる入射光角度で入射した光の直線透過率である。
【0021】
(4)散乱中心軸
散乱中心軸は、光学異方性拡散層の光拡散性に関する対称軸である。具体的には、散乱中心軸とは、光学異方性拡散層への入射光角度を変化させた際に、光拡散性がその入射光角度を境に略対称性を有する光の入射光角度と一致する方向を意味する。ここで、「略対称性を有する」としたのは、散乱中心軸が光学異方性拡散層の法線に対して傾きを有する場合には、光学特性(後述する「光学プロファイル」)が厳密には対称性を有しないためである。散乱中心軸は、当該光学プロファイルにおける、略対称性を有する入射光角度より確認することができる。
【0022】
(5)散乱中心軸角度
光学異方性拡散層の法線と散乱中心軸とのなす角度(極角)θ(-90°<θ<90°)を散乱中心軸角度と定義する。散乱中心軸が光学異方性拡散層の法線よりプラス側にある場合は、角度θは、0°<θ<90°である。散乱中心軸が光学異方性拡散層の法線よりマイナス側にある場合は、角度θは、-90°<θ<0である。
【0023】
(6)散乱及び拡散
本明細書において、「散乱」と「拡散」とは同じ意味を示す。
【0024】
[2] 液晶表示装置の概略構成
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置1の概略構成を示す斜視図である。液晶表示装置1は、照明装置10、反射偏光板11、光学異方性拡散層12、偏光板13、液晶パネル14、及び偏光板15が、下から(観察側と反対側から)順に配置されて構成される。照明装置10は、バックライトともいう。反射偏光板11、光学異方性拡散層12、及び偏光板13は、光学部材16を構成する。
【0025】
照明装置10は、面光源を構成する。照明装置10は、液晶パネル14の観察側とは反対側に配置され、液晶パネル14に向けて照明光を照射する、また、照明装置10は、観察側から入射して液晶パネル14を透過した光を液晶パネル14へ向けて反射する。
【0026】
反射偏光板11は、互いに直交する反射軸と透過軸とを有する。反射偏光板11は、反射軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を反射し、透過軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を透過する。
【0027】
光学異方性拡散層12は、入射光角度に応じて光拡散性が変化する光拡散層(光拡散フィルム)である。すなわち、光学異方性拡散層12は、入射光角度によって直線透過率が変化し、また光拡散性の入射光角度依存性を有する光拡散層である。
【0028】
偏光板13は、互いに直交する吸収軸と透過軸とを有する。偏光板13は、透過軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を透過し、吸収軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を吸収する吸収偏光板である。偏光板13の吸収軸は、反射偏光板11の反射軸と平行に設定される。
【0029】
液晶パネル14は、一対の基板に挟まれた液晶層を有する。液晶パネル14は、照明装置10から出射された照明光を受け、また、反射偏光板11によって反射された光を受ける。液晶パネル14は、照明装置10側から入射した光を透過して光変調を行う。
【0030】
偏光板15は、互いに直交する吸収軸と透過軸とを有する。偏光板15は、透過軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を透過し、吸収軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を吸収する吸収偏光板である。偏光板15の吸収軸は、偏光板13の吸収軸と直交するように設定される。
【0031】
透過表示は、以下のように行われる。照明装置10から出射された光は、反射偏光板11に入射し、反射偏光板11の透過軸と平行な直線偏光が反射偏光板11を透過する。反射偏光板11を透過した光は、光学異方性拡散層12を透過し、さらに反射偏光板11の透過軸と平行な透過軸を有する偏光板13を透過する。偏光板13を透過した光は、液晶パネル14及び偏光板15を透過して観察者に観察される。
【0032】
反射表示は、以下のように行われる。観察側からの光(外光)は、偏光板15、液晶パネル14、及び偏光板13を透過した後、その一部の光が光学異方性拡散層12で反射される。光学異方性拡散層12で反射された光は、偏光板13、液晶パネル14、及び偏光板15を透過して観察者に観察される。また、光学異方性拡散層12を透過した一部の光は、照明装置10で反射される。照明装置10で反射された光は、前述した透過表示と同じ経路を辿り、観察者に観察される。
【0033】
[3] 光学異方性拡散層12の光学プロファイル
図2は、光学異方性拡散層12の光学プロファイルを説明する図である。
図2の横軸が入射光角度(度(°))であり、縦軸が直線透過率(%)である。
図2において、角度0°が光学異方性拡散層12の法線であり、角度0°の左側がマイナス方向、右側がプラス方向である。本明細書では、光拡散性の入射光角度依存性を示す曲線を「光学プロファイル」と称する。光学プロファイルは、光拡散性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね光拡散性を示しているといえる。
【0034】
図2に示すように、光学異方性拡散層12は、入射光角度に応じて直線透過率が変化する。光学異方性拡散層12は、当該光学異方性拡散層12への入射光角度によって直線透過率が変化する光拡散性の入射光角度依存性を有する。光学異方性拡散層12の光学プロファイルは、3つの山と、2つの谷とを有する。散乱中心軸は、中央の山に対応する入射光角度と一致する方向である。光学異方性拡散層12の光学プロファイルは、散乱中心軸に関して対称性を有する。
【0035】
光学異方性拡散層12の法線と散乱中心軸とのなす角度である散乱中心軸角度をθ(0<θ<90°)とする。光学異方性拡散層12の法線と散乱中心軸とが形成する平面内における、散乱中心軸角度θとは反対の方位において、直線透過率が極大となる角度をα(-90°<α<0°)とする。散乱中心軸角度θと角度αとの間において、直線透過率が極小となる角度をβ(α<β<θ)とする。
【0036】
光学異方性拡散層12に固有の値kは、以下の式1で表される。
【0037】
k=(散乱中心軸角度θにおける直線透過率-角度βにおける直線透過率)/角度αにおける直線透過率 ・・・(1)
角度βにおける直線透過率は、最小直線透過率である。角度αにおける直線透過率は、最大直線透過率である。よって、式1は、式2によっても表される。
【0038】
k=(散乱中心軸角度における直線透過率-最小直線透過率)/最大直線透過率 ・・・(2)
図2の例では、入射光角度がマイナスの領域における最大の直線透過率を最大直線透過率とし、当該最大直線透過率から続く2つの谷のうち左側の谷の直線透過率を最小直線透過率としている。本実施形態では、値kは、0.18以上かつ1以下に設定される。値kの範囲の条件については後述する。この条件を満たす光学異方性拡散層12を液晶表示装置に用いることで、透過表示を維持しつつ反射表示を明るくすることができる。
【0039】
[4] 液晶表示装置1の実施例
次に、光学異方性拡散層12を有する液晶表示装置1の実施例について説明する。
【0040】
図3は、液晶表示装置における透過率相対比を説明する図である。
図4は、液晶表示装置における反射率相対比を説明する図である。
図3、4には、実施例、比較例1、及び比較例2のグラフを載せている。
【0041】
実施例は、光学異方性拡散層12を含む
図1の液晶表示装置であり、また横電界方式であるFFS(Fringe Field Switching)型液晶パネルの実施例である。比較例1は、2個の偏光板のみを有する液晶表示装置である。比較例2は、2個の偏光板及び反射偏光板のみを有する液晶表示装置である。
図3、4は、比較例1を100%とした場合の相対比である。
【0042】
図3から、実施例は、透過特性を比較例2と同等に維持していることが分かる。
図4から、実施例は、比較例1、2に比べて、反射特性が向上していることが分かる。
【0043】
図5は、実施例1~3における光学異方性拡散層12の光学プロファイルを説明する図である。
図6は、実施例1~3における光学異方性拡散層12の値kを説明する図である。
図7は、実施例1~3における液晶表示装置の反射率相対比を説明する図である。
【0044】
図5に示すように、入射光角度-50°付近で直線透過率が第1極大値となり、入射光角度5°付近で直線透過率が第1極小値となり、入射光角度15°付近で直線透過率が第2極大値となる。さらにプラス側に移動するにつれて、入射光角度25°付近で直線透過率が第2極小値となり、入射光角度60°付近で直線透過率が第3極大値となる。
図5の例では、入射光角度15°が散乱中心軸角度に対応する。このように、光学異方性拡散層12は、入射光角度5°付近及び入射光角度25°付近では強く散乱し、それ以外の入射光角度範囲では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。
【0045】
また、
図5~7から、光学異方性拡散層12の値kが高いほど液晶表示装置の反射率が高くなることが分かる。
【0046】
図8は、光学異方性拡散層12の値kと液晶表示装置の反射率との関係を説明する図である。
図8の横軸が値k、縦軸が反射率相対比である。
図8の反射率相対比は、前述した比較例2(2個の偏光板及び反射偏光板のみを有する液晶表示装置)を100%とした場合の相対比である。
【0047】
図8から、光学異方性拡散層12の値kと液晶表示装置の反射率とに比例関係があることが分かる。また、光学異方性拡散層12の値kが高いほど液晶表示装置の反射率が高くなることが分かる。
【0048】
図9は、実施例4、5における光学異方性拡散層12の光学プロファイルを説明する図である。
図10は、実施例4、5における液晶表示装置の反射率相対比を説明する図である。
図11は、実施例4、5における液晶表示装置の透過率相対比を説明する図である。実施例4は、k=0.23であり、実施例5は、k=0.24である。
図10、11は、実施例4を100%とした場合の相対比である。
【0049】
図9~11から、光学異方性拡散層12の値kをおおよそ維持しつつ、散乱中心軸角度や入射光角度の数値を多少調整することで、液晶表示装置の反射率を維持しつつ、液晶表示装置の透過率を高くすることが可能である。
【0050】
図12は、液晶表示装置の反射率相対比と“散乱中心軸角度+入射光角度”との関係を説明する図である。
図12の横軸が“散乱中心軸角度+入射光角度”(°)であり、縦軸が反射率相対比(%)である。
図12の反射率相対比は、前述した比較例2(2個の偏光板及び反射偏光板のみを有する液晶表示装置)を100%とした場合の相対比である。
図13は、
図12にプロットされた点の条件を説明する図である。
図14は、条件1~5における光学異方性拡散層12の光学プロファイルを説明する図である。
【0051】
条件1において、散乱中心軸角度=8°、“散乱中心軸角度+入射光角度”=-6°、k=0.39である。条件2において、散乱中心軸角度=14°、“散乱中心軸角度+入射光角度”=0°、k=0.36である。条件3において、散乱中心軸角度=15°、“散乱中心軸角度+入射光角度”=1°、k=0.41である。条件4において、散乱中心軸角度=17°、“散乱中心軸角度+入射光角度”=3°、k=0.38である。条件5において、散乱中心軸角度=21°、“散乱中心軸角度+入射光角度”=7°、k=0.34である。
【0052】
図12~14において、入射光角度は-14°である。
図12の破線は、k=0.4における推定曲線である。
図12から、条件2、3における反射特性が向上している。すなわち、反射表示における外光の入射角に対して正反射となる角度に光学異方性拡散層の散乱中心軸角度を設定することが望ましい。
【0053】
[5] 反射表示の最適設計
図15は、バックライトの輝度分布を説明する図である。
図15の横軸が視野角(°)、縦軸が輝度変化率である。
図15の例は、例えば、2枚の輝度向上フィルム(BEF:Brightness Enhancement Film)を備えたバックライトである。輝度向上フィルムは、例えばプリズムシートで構成され、透過表示において光源の利用効率を向上させる機能を有する。
【0054】
図15に示すように、バックライトは、一般的に、±20°の視野角範囲で輝度が高くなるように設計されている。液晶表示装置は、上記の視野角範囲で反射表示も明るくなるように設計するのが望ましい。
【0055】
図16は、入射光角度に対する反射表示の最適角度を説明する図である。液晶表示装置1の表示面における法線が角度0°であり、法線より左側がマイナス方向、右側がプラス方向である。液晶表示装置1の法線に対してプラス側を観察位置とする。
【0056】
これまでの発明者の経験的な知見から、正反射光の±10°近傍の拡散光が反射表示に寄与していると考えられる。“正反射角-10°”の拡散光は、
図16の“想定される観察位置A”に向けて反射される。“正反射角+10°”の拡散光は、
図16の“想定される観察位置B”に向けて反射される。
【0057】
反射表示が良好となる範囲を考慮すると、入射光角度-30°以上0°未満の範囲の入射光を想定して設計するのが望ましい。さらに、バックライトの輝度分布と反射表示が良好な範囲との重なりを広げるためには、入射光角度-20°以上0°未満の範囲の入射光を想定して設計するのがより望ましい。
【0058】
[6] 光学異方性拡散層12の値kの範囲
図17は、光学異方性拡散層12の値kの範囲を説明する図である。
図17の横軸が値k、縦軸が反射率相対比である。
図17の傾斜した破線とその近傍の点は、
図8と同じである。
【0059】
液晶表示装置の表示面における法線を角度0°とし、入射光角度-20°以上0°未満の範囲の入射光を想定した場合、入射光角度が±10°変動(観察位置が正反射光近傍となる角度は除く)した場合でも異方性の無い一般的な拡散層を導入した場合よりも高い効果が得られるようにするのが、安定的に本発明の効果を得る上で必要となる。
【0060】
図17の比較例は、2個の偏光板、異方性の無い一般的な拡散層(ヘーズ60%)、及び反射偏光板を備えた液晶表示装置である。比較例の反射相対比は、おおよそ113%である。
図17の一点鎖線が、入射光角度が+10°変動した場合の反射率相対比のグラフである。
【0061】
入射光角度が+10°変動しても本発明とほぼ同等の透過率となるヘーズ60%の異方性無しの拡散層を導入した液晶表示装置よりも反射特性を向上させるためには、値kを0.18以上にする必要がある。また、入射光角度-10°側の変動は+10°側の変動よりも小さいため、k≧0.18とすれば入射光角度が±10°変動しても本発明の効果を安定的に得ることができる。
【0062】
[7] 散乱中心軸角度の範囲
図18は、光学異方性拡散層12の散乱中心軸角度の範囲を説明する図である。散乱中心軸角度は、以下の3つの条件から算出できる。
【0063】
(条件1)一般的なバックライト輝度分布は、±20°の視野角範囲で輝度が高くなる(
図15を参照)。
【0064】
(条件2)入射光に対する正反射角の±10°で反射表示が良好となる(
図16を参照)。
【0065】
(条件3)入射光に対する正反射角に光学異方性拡散層の散乱中心軸角度を設定する(
図12を参照)。
【0066】
上記条件1、2から、液晶表示装置の表示面の法線に対して観察位置をプラスの角度としたとき、入射光角度-30°以上0°未満の範囲の入射光を想定して設計するのが望ましい。条件3から、散乱中心軸角度は正反射角と一致させるのが良いため、散乱中心軸角度も同様に角度+30°以下にするのが望ましい。よって、光学異方性拡散層12の散乱中心軸角度θは、0°<θ≦30°の範囲に設計するのが望ましい。
【0067】
また、入射光に対し散乱中心軸角度をマイナス側に設計する方が良好な反射特性が得られることから、光学異方性拡散層12の散乱中心軸角度θは、0°<θ≦20°の範囲に設計するのがより望ましい。
【0068】
[8] 光学異方性拡散層12の構成
次に、
図19~22を参照しながら、光学異方性拡散層12の光拡散性についてより具体的に説明する。
【0069】
本実施形態では、光学異方性拡散層12として2つの構造(光学異方性拡散層12A、12Bと表記する)について説明する。ここでは、棒状の柱状領域(ピラー構造ともいう)を有する光学異方性拡散層12Aを例に挙げ、柱状領域の代わりに板状領域(ルーバー構造ともいう)を有する光学異方性拡散層12Bの光拡散性と対比して説明する。光学異方性拡散層12A、12Bを特に区別する必要がない場合は、光学異方性拡散層12と表記する。
【0070】
図19は、光学異方性拡散層12Aの構造と、光学異方性拡散層12Aに入射した透過光の様子を示す模式図である。
図20は、光学異方性拡散層12Bの構造と、光学異方性拡散層12Bに入射した透過光の様子を示す模式図である。
図19、20中の符号20A、20Bはマトリクス領域、符号21Aはピラー構造、符号21Bはルーバー構造を示す。
【0071】
図21は、光学異方性拡散層12(12A、12B)の光拡散性の評価方法を説明する図である。
図22は、
図21に示した光学異方性拡散層12の光学プロファイルを説明する図である。
【0072】
光拡散性の評価方法は、以下のようにして行われる。まず、
図21に示すように、光学異方性拡散層のサンプル12を、光源30と検出器31との間に配置する。本実施形態においては、光源30からの照射光Iが、サンプル12の法線方向から入射する場合を入射光角度0°とした。また、サンプル12表面の直線Lを中心として、任意に回転させることができるように配置され、光源30及び検出器31は固定されている。すなわち、この方法によれば、光源30と検出器31との間にサンプル12を配置し、サンプル12表面の直線Lを中心軸として角度を変化させながらサンプル12を直進透過して検出器31に入る直線透過光量を測定し、直線透過率を算出することができる。
【0073】
図22は、光学異方性拡散層12Aを、
図19のx方向(光学異方性拡散層の柱状領域又は板状領域の長径と平行な方向。ただし、真円のように長径を一意的に決められない場合は任意の方向とする)を
図21に示す回転中心の直線Lに選んだ場合における光拡散性を評価し、得られた光拡散性の評価結果を示すものである。つまり、
図21に示す方法を用いて測定した光学異方性拡散層12Aの光拡散性(光散乱性)の入射光角度依存性を示すものである。
【0074】
図22の縦軸は、散乱の程度を示す指標である直線透過率を示し、本実施形態では、所定の光量の平行光線を入射させたときに、入射方向と同じ方向に出射された平行光線の光量の割合、より具体的には、「直線透過率=(光学異方性拡散層12Aがある場合の検出器31の検出光量)/(光学異方性拡散層12Aがない場合の検出器31の検出光量)×100」を示す。
図22の横軸は、光学異方性拡散層12Aへの入射光角度を示す。なお、入射光角度の正負は、光学異方性拡散層12Aを回転させる方向が反対であることを示している。
【0075】
光学異方性拡散層に所定の入射光角度で入射した光の方向が、柱状領域又は板状領域の配向方向(ピラー構造又はルーバー構造の厚さ方向における延在方向)と略平行である場合には拡散が優先され、当該方向に平行でない場合には透過が優先される。そのため、光学異方性拡散層は、例えば
図22に示すように、当該光学異方性拡散層への入射光角度によって直線透過率が変化する光拡散性の入射光角度依存性を有する。
【0076】
通常の等方的な光拡散フィルムでは、0°付近をピークとする山型の光学プロファイルを示す。一方、光学異方性拡散層12では、ピラー構造21Aやルーバー構造21Bの散乱中心軸方向の入射光角度を0°とした場合、0°入射する場合の直線透過率と比較して、±5~±20°の入射光角度で一旦直線透過率が極小値になり、その入射光角度(の絶対値)が大きくなるにつれて直線透過率が大きくなり、±40~±60°の入射光角度で直線透過率が極大値となる谷型の光学プロファイルを示す。
【0077】
このように、光学異方性拡散層12は、入射光が散乱中心軸方向に近い±5~±20°の入射光角度範囲では強く拡散されるが、それ以上の入射光角度範囲では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。
【0078】
以下、最大直線透過率と最小直線透過率との中間値の直線透過率に対する2つの入射光角度の角度範囲を拡散領域(この拡散領域の幅を「拡散幅」と称する)と称し、それ以外の入射光角度範囲を非拡散領域(透過領域)と称する。
図22に示す光学プロファイルの場合を例に挙げて拡散領域と非拡散領域について詳しく説明する。この光学プロファイルでは、最大直線透過率が約52%、最小直線透過率が約9%であり、それらの中間値の直線透過率が約30%である。この中間値の直線透過率に対する2つの入射光角度の間(
図22に示す光学プロファイル上の2つの破線間の内側(入射光角度0°を含む)の入射光角度範囲が拡散領域となり、それ以外の入射光角度範囲が非拡散領域(透過領域)となる。
【0079】
一方で、ピラー構造を有する光学異方性拡散層12Aでは、
図19の透過光の様子に示すように、透過光は略円形状となっており、x方向とy方向(x方向に垂直な方向)とで略同一の光拡散性を示している。すなわち、ピラー構造を有する光学異方性拡散層12Aでは、拡散は等方性を有する。また、
図22に示すように、入射光角度を変えても光拡散性(特に非拡散領域と拡散領域との境界付近における光学プロファイル)の変化が比較的緩やかである。
【0080】
これに対し、ルーバー構造を有する光学異方性拡散層12Bでは、
図20の透過光の様子に示すように、透過光は板状となっており、x方向とy方向とで光拡散性が大きく異なる。すなわち、ルーバー構造を有する光学異方性拡散層12Bでは、拡散は異方性を有する。具体的には、
図20に示す例では、y方向ではピラー構造の場合よりも拡散が広がっているが、x方向ではピラー構造の場合よりも拡散が狭まっている。
【0081】
図23は、散乱中心軸を説明するための3次元極座標表示を示す図である。3次元極座標表示において、光学異方性拡散層の表面をxy平面とし、法線をz軸とすると、散乱中心軸は、極角θと方位角φとによって表現することができる。
【0082】
なお、散乱中心軸角度の正負は、光学異方性拡散層の面内方向における所定の対称軸(例えば、光学異方性拡散層の重心を通るy軸)と、光学異方性拡散層の法線の両方を通る平面に対して、散乱中心軸が一側に傾斜している場合を+、他側に傾斜している場合を-と定義することとする。
【0083】
光学異方性拡散層は、単一層中に、傾きの異なる柱状領域群(同一の傾きを有する柱状領域の集合)を複数有していてもよい。このように、単一層中に傾きの異なる柱状領域群が複数ある場合には、各柱状領域の群の傾きに対応して散乱中心軸も複数となる。
【0084】
(光学異方性拡散層の構造)
図24は、光学異方性拡散層12の一例を示す模式断面図である。
【0085】
光学異方性拡散層12は、マトリクス領域20と、マトリクス領域20とは屈折率の異なる複数の構造体21とを有する。構造体21は、柱状領域又は板状領域であり、
図19のピラー構造21A又は
図20のルーバー構造21Bに対応する。複数の構造体21はそれぞれ、光学異方性拡散層12の一方の表面側から他方の表面側に向かって延在している。
【0086】
構造体21の一端は、光学異方性拡散層12の一方の表面に到達している。構造体21の他端は、光学異方性拡散層12の他方の表面に到達していてもよく、到達していなくてもよい。
【0087】
この例において、構造体21の延在方向は、光学異方性拡散層12の厚さ方向(法線方向)に対して傾斜している。ただし、光学異方性拡散層12はこれに限定されるものではなく、構造体21の延在方向と、光学異方性拡散層12の厚さ方向とが一致していてもよい。
【0088】
マトリクス領域20の屈折率は、複数の構造体21の屈折率と異なっていればよいが、屈折率がどの程度異なるかは特に限定されず、相対的なものである。マトリクス領域20の屈折率が複数の構造体21の屈折率よりも低い場合、マトリクス領域20は低屈折率領域となる。逆に、マトリクス領域20の屈折率が複数の構造体21の屈折率よりも高い場合、マトリクス領域20は高屈折率領域となる。
【0089】
光学異方性拡散層12の厚さ方向における複数の構造体21の平均高さHは、光学異方性拡散層12の厚さTの80%以上であり、90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。厚さTに対する平均高さHの割合が上記下限値以上であれば、十分な散乱性が得られやすい。平均高さHの上限は厚さTである。
【0090】
平均高さHは、光学顕微鏡を用いて、例えば10本の構造体21の高さを測定し、それらの平均値として求められる。構造体21の高さとは、光学異方性拡散層12の一方の表面を下側、他方の表面を上側として光学異方性拡散層12を水平に置いたときに、構造体21の下端の位置から上端の位置までの光学異方性拡散層12の厚さである。
【0091】
複数の構造体21の延在方向に垂直な断面での構造体形状に特に制限はない。例えば、円形状、楕円形状、多角形状、不定形状、これらの入り混じっているもの等であってよい。
【0092】
複数の構造体21の延在方向に垂直な断面での構造体形状において、最大径を長径LA、長径LA方向と直交する方向における最大径を短径SAとしたときに、短径SAに対する長径LAの比で表されるアスペクト比(LA/SA)は、50未満が好ましく、10未満がより好ましく、5未満がさらに好ましい。アスペクト比(LA/SA)の下限は1である。つまり長径LAと短径SAとが同じ値であってもよい。
【0093】
長径LA(複数の構造体21それぞれの長径LAのうちの最大値)は、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい。長径LAが小さくなるにつれ、光拡散性及び集光性が不十分になるおそれがある。
【0094】
長径LAは、8.0μm以下が好ましく、3.0μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましい。長径LAが大きくなるにつれ、拡散範囲が狭くなるおそれがある。また、長径LAが大きくなると光の干渉(虹)が発生しやすくなるおそれもある。
【0095】
短径SA(複数の柱状構造体21の短径SAのうちの最大値)は、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上がさらに好ましい。短径SAが小さくなるにつれ、光拡散性及び集光性が不十分になるおそれがある。
【0096】
短径SAは、5.0μm以下が好ましく、3.0μm以下がより好ましく、2.5μm以下がさらに好ましい。短径SAが大きくなるにつれ、拡散範囲が狭くなるおそれがある。
【0097】
複数の構造体21の延在方向に垂直な断面形状は、光学異方性拡散層12の表面を光学顕微鏡で観察することによって確認できる。
【0098】
長径LA、短径SAはそれぞれ、光学異方性拡散層12の表面を光学顕微鏡で観察し、任意に選択した例えば20個の構造体21の断面形状の長径LA、短径SAを測定し、それぞれの平均値を求めればよい。
【0099】
アスペクト比(LA/SA)は、上記で求めた平均長径LAを平均短径SAで除した値が用いられる。
【0100】
光学異方性拡散層12は、散乱中心軸を有する。光学異方性拡散層12において、複数の構造体21はそれぞれ、延在方向と散乱中心軸とが平行になるように形成されている。したがって、同一の光学異方性拡散層12における複数の構造体21は互いに平行である。
【0101】
構造体21の延在方向と散乱中心軸とが平行であるとは、屈折率の法則(スネルの法則)を満たすものであればよく、厳密に平行である必要はない。スネルの法則は、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質の界面に対して光が入射する場合、その入射光角度θ1と屈折角θ2との間に、n1・sinθ1=n2・sinθ2の関係が成立するものである。例えば、n1=1(空気)、n2=1.51(光学異方性拡散層)とすると、散乱中心軸の傾き(入射光角度)が30°の場合、構造体21の延在方向(屈折角)は約19°となる。このように入射光角度と屈折角とが異なっていてもスネルの法則を満たしていれば、本実施形態においては平行の概念に包含される。
【0102】
光学異方性拡散層12に所定の入射光角度で入射した光は、入射光角度が構造体21の延在方向(配向方向)と略平行である場合には拡散が優先され、入射光角度が延在方向と略平行ではない場合には透過が優先される。そのため、光学異方性拡散層12に入射する光の角度が変化すると、直線透過率も変化する。具体的には、光学異方性拡散層12においては、構造体21の延在方向に近い入射光角度範囲内(拡散領域)では入射光が強く拡散され、それ以上の入射光角度範囲(非拡散領域)では拡散が弱まり直線透過率が高まる。
【0103】
光学異方性拡散層12の法線と散乱中心軸とが形成する平面内において、光学異方性拡散層の法線を0°としたときに散乱中心軸の傾斜角度側を+とすることができる。この場合は、散乱中心軸角度θは、0<θ<90°となる。散乱中心軸が光学異方性拡散層の法線と一致している場合(θ=0°)は、光学異方性拡散層の法線を含む平面を任意に規定し、またその角度の正負についても任意に規定することができる。
【0104】
散乱中心軸角度は、光学異方性拡散層12を製造する際に、シート状の光重合性化合物を含む組成物に照射する光線の方向を変えることで、所望の角度に調整することができる。
【0105】
光学異方性拡散層12は、最大直線透過率が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。
【0106】
光学異方性拡散層12は、典型的には、光重合性化合物を含む組成物の硬化物からなる。この組成物の層を硬化する際に、屈折率の異なる領域が形成される。光重合性化合物を含む組成物については後で詳しく説明する。
【0107】
光学異方性拡散層12の厚さTは、10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましく、20~80μmがさらに好ましい。厚さTが上記下限値以上であれば、十分な光拡散性が得られる。厚さTが上記上限値以下であれば、画像鮮明性がより優れる。厚さTは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0108】
[9] 光学異方性拡散層の製造方法
光学異方性拡散層12の製造方法としては、例えば、特開2005-265915号公報や特開2015-191178号公報に開示された方法が挙げられる。この製造方法は、主に、以下の工程を有するものである。本明細書において、「光重合」と「光硬化」はいずれも、光重合性化合物が光により重合反応することを意味する。
【0109】
(i-1)光重合性化合物を含む組成物(以下、「光硬化性組成物」と称する場合がある)の層を基体上に設ける工程。
【0110】
(i-2)光源から平行光線を得て、該平行光線をそのまま、又は指向性をもった光線として光硬化性組成物の層に入射させ、光硬化性組成物の層を硬化させる工程。
【0111】
(光硬化性組成物)
光硬化性組成物は、光の照射により重合及び硬化する材料であり、典型的には光重合性化合物と光開始剤とを含む。光としては、例えば紫外線(UV)、可視光線等が挙げられる。
【0112】
光硬化性組成物としては、例えば、次のような組成物が使用可能である。
【0113】
(1)単独の光重合性化合物と光開始剤とを含むもの。
【0114】
(2)複数の光重合性化合物と光開始剤とを含むもの。
【0115】
(3)単独又は複数の光重合性化合物と、光重合性を有しない高分子化合物と、光開始剤とを含むもの。
【0116】
上記いずれの組成物においても、光の照射により光学異方性拡散層12中に、屈折率の異なるミクロンオーダーの微細な構造が形成される。
【0117】
光学異方性拡散層12を形成する光重合性化合物が1種類であっても、密度の高低差ができることによって屈折率差が生ずる。光の照射強度が強い部分は硬化速度が早くなるため、その硬化領域周囲に重合・硬化材料が移動し、結果として屈折率が高くなる領域と屈折率が低くなる領域とが形成されるからである。
【0118】
したがって、上記(1)の組成物においては、光重合の前後における屈折率変化が大きい光重合性化合物を用いることが好ましい。上記(2)、(3)の組成物においては、屈折率の異なる複数の材料を組み合わせることが好ましい。なお、ここでの屈折率変化や屈折率の差とは、具体的には、0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上の変化や差を示すものである。
【0119】
(光重合性化合物)
光重合性化合物としては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有する化合物(マクロモノマー、ポリマー、オリゴマー、モノマー等)が挙げられる。
【0120】
ラジカル重合性の官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等の不飽和二重結合を有する官能基が挙げられる。カチオン重合性の官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等が挙げられる。
【0121】
ラジカル重合性の官能基を有する化合物(ラジカル重合性化合物)としては、分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有する化合物が挙げられる。具体例としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等の名称で呼ばれるアクリルオリゴマーと、2-エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソノルボルニルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシフタル酸、ジシクロペンテニルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変成トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートモノマーが挙げられる。これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。メタクリレートも同様に使用可能であるが、一般にはメタクリレートよりもアクリレートの方が光重合速度が速いので好ましい。
【0122】
カチオン重合性の官能基を有する化合物(カチオン重合性化合物)としては、分子中にエポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基を1個以上有する化合物が挙げられる。
【0123】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。ただしこれらに限定されるものではない。
【0124】
2-エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル、ビフェニルのグリシジルエーテル、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類。フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールAのPO付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類。ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類。3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)-4,5-エポキシテトラヒドロフタレート等の脂環式エポキシ化合物。
【0125】
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ビニルエーテル化合物は、一般にはカチオン重合性であるが、アクリレートと組み合わせることによりラジカル重合も可能である。
【0126】
オキセタン基を有する化合物としては、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)-オキセタン等が挙げられる。
【0127】
以上のカチオン重合性化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。光重合性化合物は、上述に限定されるものではない。また、上記光重合性化合物を低屈折率化して充分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物にフッ素原子(F)を導入してもよい。上記光重合性化合物を高屈折率化して充分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物に硫黄原子(S)、臭素原子(Br)、各種金属原子を導入してもよい。さらに、特表2005-514487号公報に開示されるように、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化錫(SnOx)等の高屈折率の金属酸化物からなる超微粒子の表面に、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基等の光重合性官能基を導入した機能性超微粒子を上述の光重合性化合物に添加することも有効である。
【0128】
光重合性化合物は、シリコーン骨格を有する光重合性化合物を含んでもよい。シリコーン骨格を有する光重合性化合物は、その構造(主にエーテル結合)に伴い配向して重合・硬化し、低屈折率領域、高屈折率領域、又は、低屈折率領域及び高屈折率領域を形成する。シリコーン骨格を有する光重合性化合物を使用することによって、柱状構造体(柱状領域ともいう)21を傾斜させやすくなる。なお、マトリクス領域20及び柱状構造体21のいずれか一方が低屈折率領域に相当し、他方が高屈折率領域に相当する。
【0129】
低屈折率領域において、シリコーン骨格を有する光重合性化合物の硬化物であるシリコーン樹脂が相対的に多くなることが好ましい。これによって、散乱中心軸をさらに傾斜させやすくすることができる。シリコーン樹脂は、シリコーン骨格を有さない化合物に比べ、シリカ(Si)を多く含有するため、このシリカを指標として、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を使用することによってシリコーン樹脂の相対的な量を確認することができる。
【0130】
シリコーン骨格を有する光重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、マクロモノマーのいずれであってもよい。ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基の種類と数に特に制限はないが、官能基が多いほど架橋密度が上がり、屈折率の差が生じやすいため好ましいことから、多官能のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有することが好ましい。また、シリコーン骨格を有する化合物はその構造から他の化合物との相溶性において不十分なことがあるが、そのような場合にはウレタン化して相溶性を高めることができる。このような化合物としては、末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するシリコーン・ウレタン・(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートのどちらであってもよいことを意味する。
【0131】
シリコーン骨格を有する光重合性化合物と、シリコーン骨格を有さない化合物とを併用してもよい。これにより、低屈折率領域と高屈折率領域とが分離して形成されやすくなり、異方性の程度が強くなる。
【0132】
シリコーン骨格を有さない化合物としては、光重合性化合物のほかに熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることができ、これらを併用することもできる。
【0133】
光重合性化合物としては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーを使用することができる(ただし、シリコーン骨格を有していないものである)。
【0134】
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂とその共重合体や変性物が挙げられる。熱可塑性樹脂を用いる場合においては熱可塑性樹脂が溶解する溶剤を使用して溶解し、塗布、乾燥後に紫外線でシリコーン骨格を有する光重合性化合物を硬化させて光学異方性拡散層を成形する。
【0135】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステルとその共重合体や変性物が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合においては、紫外線でシリコーン骨格を有する光重合性化合物を硬化させた後に適宜加熱することで、熱硬化性樹脂を硬化させて光学異方性拡散層を成形する。
【0136】
シリコーン骨格を有さない化合物として最も好ましいのは光重合性化合物であり、低屈折率領域と高屈折率領域とが分離しやすいこと、熱可塑性樹脂を用いる場合の溶剤が不要で乾燥過程が不要であること、熱硬化性樹脂のような熱硬化過程が不要であることなど、生産性に優れている。
【0137】
光硬化性組成物がシリコーン骨格を有する光重合性化合物とシリコーン骨格を有さない化合物とを含む場合、それらの化合物の比率は質量比で、15:85~85:15の範囲にあることが好ましく、30:70~70:30の範囲にあることがより好ましい。当該範囲にすることによって、低屈折率領域と高屈折率領域との相分離が進みやすくなるとともに、柱状構造体が傾斜しやすくなる。
【0138】
(光開始剤)
ラジカル重合性化合物を重合させるための光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(ピル-1-イル)チタニウム、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0139】
カチオン重合性化合物を重合させるための光開始剤は、光の照射によって酸を発生し、この発生した酸により上述のカチオン重合性化合物を重合させることができる化合物であり、一般的には、オニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が使用され、これらの対イオンには、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF6-等のアニオンが用いられる。具体例としては、4-クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロホスフェート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、(η5-イソプロピルベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0140】
光硬化性組成物中、光開始剤の含有量は、光重合性化合物100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~7質量部がより好ましく、0.1~5質量部がさらに好ましい。0.01質量部以上であれば光硬化性が良好である。10質量部を以下であれば、柱状構造体が良好に形成される。また、表面だけが硬化して内部の硬化性が低下したり、着色したりすることを抑制できる。
【0141】
光重合性を有しない高分子化合物としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの高分子化合物と光重合性化合物とは、光硬化前は充分な相溶性を有していることが必要であるが、この相溶性を確保するために各種有機溶剤や可塑剤等を使用することも可能である。なお、光重合性化合物としてアクリレートを使用する場合、光重合性を有しない高分子化合物としては、相溶性の点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0142】
光開始剤は、通常、粉体を光重合性化合物中に直接溶解して使用されるが、溶解性が悪い場合は光開始剤を予め極少量の溶剤に高濃度に溶解させたものを使用することもできる。溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0143】
光重合性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。
【0144】
光重合性化合物を加熱により硬化させることのできる熱硬化開始剤を光開始剤と共に併用することもできる。この場合、光硬化の後に加熱することにより光重合性化合物の重合硬化を更に促進し完全なものにすることが期待できる。
【0145】
(工程(i-1))
工程(i-1)では、光硬化性組成物の層を基体上に設ける。
【0146】
基体としては、特に限定されず、例えば石英ガラスやソーダガラス等のガラス、樹脂フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)、セロファン、芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0147】
光硬化性組成物の層を基体上に設ける手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。光硬化性組成物が低粘度の場合は、基体の周囲に一定の高さの堰を設けて、この堰で囲まれた中に光硬化性組成物をキャストすることもできる。
【0148】
光硬化性組成物の層を設けた後、光硬化性組成物の酸素阻害を防止して、構造体21を効率良く形成させるために、光硬化性組成物の層の光照射側に、光の照射強度を局所的に変化させるマスクを積層してもよい。マスクの材質としては、カーボン等の光吸収性のフィラーをマトリクス中に分散したもので、入射光の一部はカーボンに吸収されるが、開口部は光が十分に透過できるような構成のものが好ましい。このようなマトリクスとしては、PET、TAC、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、PVA、アクリル樹脂、ポリエチレン等の透明プラスチックや、ガラス、石英等の無機物や、これらのマトリクスを含むシートに紫外線透過量を制御するためのパターニングや紫外線を吸収する顔料を含んだものであっても構わない。このようなマスクを用いない場合には、窒素雰囲気下で光照射を行うことで、光硬化性組成物の酸素阻害を防止することも可能である。また、通常の透明フィルムを光硬化性組成物の層上に積層するだけでも、酸素阻害を防ぎ、構造体21の形成を促す上で有効である。
【0149】
(工程(i-2))
工程(i-2)では、まず、光源から平行光線を得る。次いで、この平行光線をそのまま、又は指向性をもった光線として光硬化性組成物の層に入射させ、光硬化性組成物の層を硬化させる。
【0150】
光源としては、通常はショートアークの紫外線発生光源が使用され、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が使用可能である。
【0151】
光硬化性組成物の層に対して、所望の散乱中心軸と平行な光線を照射し、該光硬化性組成物を硬化させると、該光硬化性組成物の層中に、平行光線の照射方向に沿って延在する複数の柱状の硬化領域(柱状領域)が形成される。
【0152】
このような平行光線を得る方法としては、点光源を配置して、この点光源と光硬化性組成物の層との間に、平行光線を照射するためのフレネルレンズ等の光学レンズを配置する方法、線状光源を配置して、この線状光源と光硬化性組成物の層との間に筒状物の集合を介在させ、この筒状物を通して光照射を行う方法(特開2005-292219号公報参照)等が挙げられる。線状光源を使用すると連続生産を行うことができるため好ましい。線状光源としては、ケミカルランプ(紫外線を出す蛍光灯)を使用することができる。ケミカルランプは、直径20~50mm、発光長100~1500mm程度のものが市販されており、作成する光学異方性拡散層12の大きさに合わせて適宜選択することができる。
【0153】
上記で得られた平行光線を、指向性をもった光線へと変換してもよい。この指向性を持った光線の広がりを調整することにより、形成される柱状領域の大きさ(アスペクト比、短径SA、長径LA等)を適宜定めることができる。
【0154】
指向性をもった光線は、平行光線を指向性拡散要素に入射させることによって得る。この指向性拡散要素は、入射した平行光線に指向性を付与するものであればよいが、例えば、指向性拡散要素内にアスペクト比の高い針状フィラーを含有させるとともに、当該針状フィラーを特定方向に長軸方向が延存するように配向させる方法や、市販のレンチキュラーレンズを使用する方法を採用することができる。
【0155】
指向性をもった光線のアスペクト比は、50以下とすることが好ましい。当該アスペクト比にほぼ対応した形で、柱状領域のアスペクト比が形成される。
【0156】
光硬化性組成物の層に照射する光線は、光重合性化合物を硬化可能な波長を含んでいることが必要で、通常は水銀灯の365nmを中心とする波長の光が利用される。この波長帯を使って光学異方性拡散層12を作製する場合、照度としては0.01~100mW/cm2の範囲であることが好ましく、0.1~20mW/cm2の範囲がより好ましい。光の照射時間は特に限定されないが、10~180秒間が好ましく、30~120秒間がより好ましい。
【0157】
上述の如く低照度の光を比較的長時間照射することにより光硬化性組成物層中に特定の内部構造が形成されるが、このような光照射だけでは未反応のモノマー成分が残存して、べたつきを生じたりしてハンドリング性や耐久性に問題がある場合がある。そのような場合は、1000mW/cm2以上の高照度の光を追加照射して残存モノマーを重合させることができる。このときの光照射はマスクを積層した側の逆側から行ってもよい。
【0158】
その後、基体を剥離することで、光学異方性拡散層12を得ることができる。
【0159】
以下に、各例で測定、評価に用いた方法を示す。
【0160】
(光学異方性拡散層の厚さ)
ミクロトームを用いて、光学異方性拡散層の断面を形成し、この断面を光学顕微鏡で観察し、10箇所の厚さを測定し、それらの測定値の平均値を光学異方性拡散層の厚さとした。
【0161】
(光学異方性拡散層の散乱中心軸角度及び直線透過率の測定)
図21に示すような、光源30の投光角、検出器31の受光角を任意に可変できる変角光度計ゴニオフォトメータ(ジェネシア社製)を用いて、実施例用及び比較例用の各光学異方性フィルム(光学異方性拡散層)の直線透過率の測定を行った。固定した光源30からの直進光を受ける位置に検出器31を固定し、その間のサンプルホルダーに、実施例用及び比較例用の各光学異方性フィルムをサンプルとしてセットした。
図21に示すように、サンプルを貫く直線Lを回転の中心軸としてサンプルを回転させて、それぞれの入射光角度に対応する直線透過光量を測定した。この評価方法によって、どの角度の範囲で入射される光が拡散するかを評価することができる。この直線Lは、光学異方性拡散層の
図19または
図20に示すx方向を回転中心としたものである。直線透過光量の測定は、視感度フィルターを用いて可視光領域の波長を測定した。
【0162】
以上のような測定の結果、得られた光学プロファイルに基づき、各種の直線透過率と、当該光学プロファイルが略対称形状となる入射光角度である散乱中心軸角度とを求めた。
【0163】
(複数の柱状領域のアスペクト比の測定(光学異方性拡散層の表面観察))
実施例用及び比較例用の各光学異方性フィルム(光学異方性拡散層)の一方の表面(紫外線照射時の光照射側)を、光学顕微鏡で観察し、複数の柱状領域の長径(最大径)及び短径(長径と直交する方向における最大径)を測定した。平均長径及び平均短径の算出には、任意の20個の構造体の平均値とした。また、求めた平均長径及び平均短径に対し、平均長径/平均短径をアスペクト比として算出した。
【0164】
(光学異方性拡散層の製造例)
特開2005-265915号公報記載の製造方法を用い、かつ特開2015-191178号公報の記載を参考とし、光硬化性組成物による液膜の加熱温度と、液膜の厚さと、光硬化性組成物に照射する光線方向および指向性とを調整することにより、マトリクス領域と複数の柱状領域とを有し、各表に記載の特性を有する光学異方性拡散層を得た。
【0165】
[10] 液晶表示装置1の具体的な構成例
液晶表示装置1の具体的な構成例について説明する。
図25は、実施形態に係る液晶表示装置1の分解斜視図である。
図26は、実施形態に係る液晶表示装置1の側面図である。
【0166】
本実施形態の液晶表示装置1は、観察側から入射した外光を利用する反射表示と、観察側とは反対側に配置された照明装置からの照明光を利用する透過表示とを行う透過/反射型液晶表示装置である。透過/反射型液晶表示装置は、半透過型液晶表示装置とも呼ばれる。液晶表示装置1は、照明装置10、反射偏光板11、光学異方性拡散層12、偏光板13、液晶パネル14、及び偏光板15が、下から(観察側と反対側から)順に配置されて構成される。
【0167】
照明装置10は、液晶パネル14の観察側とは反対側に配置される。照明装置10は、液晶パネル14に向けて照明光を出射する。また、照明装置10は、観察側から入射して液晶パネル14を透過した光(主に外光)を液晶パネル14へ向けて反射する。
【0168】
照明装置10は、導光板40と、反射膜41と、光源42と、拡散シート43と、プリズムシート44とを備える。反射膜41、導光板40、拡散シート43、及びプリズムシート44は、下から順に互いに平行に配置される。
【0169】
導光板40は、液晶パネル14の画面エリアの全体に対応する面積を有する透明な板状部材であり、例えば矩形形状の入射面40Aと、出射面40Bとを含む。入射面40Aは、照明装置10と液晶パネル14とが積層される方向と略平行な導光板40の一端面である。出射面40Bは、照明装置10と液晶パネル14とが積層される方向と略直交する方向に延びた導光板40の端面のうち、液晶パネル14側に位置する面である。
【0170】
光源42は、入射面40Aの近傍にて入射面40Aと対向するように配置される。本実施形態の照明装置10は、複数の光源42を含む。複数の光源42は、導光板40の入射面40Aに向けて光を出射する。光源42は、例えばLED(発光ダイオード)等の発光素子で構成される。
【0171】
反射膜41は、導光板40の出射面40Bとは反対側に設けられる。反射膜41は、入射面40Aから導光板40に入射した光、及び、出射面40Bから導光板40に入射した光を、出射面40Bに向けて反射する。
【0172】
拡散シート43は、導光板40の出射面40Bとプリズムシート44との間に配置される。拡散シート43は、例えば、散乱粒子が分散された樹脂フィルムで構成される。
【0173】
プリズムシート44は、導光板40側の面が平坦面に形成され、その反対側の面が出射面40Bから出射した光を集光するプリズム形状に形成された透明部材である。すなわち、プリズムシート44の液晶パネル14側の面には、細長形状の微小プリズムがその長手方向と直交する方向に複数並び、複数の微小プリズムは互いに平行に配列される。プリズムシート44は、導光板40の出射面40Bから出射した光を集光して液晶パネル14へ照射する。
【0174】
照明装置10は、プリズムの長手方向が互いに直交する2つのプリズムシートを備えていてもよい。
【0175】
液晶表示装置1が透過表示を行う場合は、光源42から出射し、導光板40にその入射面40Aから入射した光は、反射膜41による反射と導光板40の出射面40Bによる内面反射とを繰り返しながら導光板40内をその全域に導かれ、導光板40の出射面40Bの全体から出射される。導光板40の出射面40Bから出射された光は、拡散シート43によって拡散され、さらにプリズムシート44により集光される。これにより、正面輝度(液晶パネル14の法線付近の方向に出射する光の輝度)の高い輝度分布の照明光が、液晶パネル14へ向けて出射される。
【0176】
また、照明装置10は、液晶パネル14にその観察側から入射し、液晶パネル14を透過した光を液晶パネル14へ向けて反射する機能を有している。液晶パネル14を透過して導光板40にその出射面40Bから入射した光は、反射膜41により反射され、導光板40の出射面40Bの全体から出射される。導光板40の出射面40Bから出射された光は、拡散シート43によって拡散され、プリズムシート44により集光されて、正面輝度の高い輝度分布の反射光が液晶パネル14へ向けて出射される。
【0177】
なお、
図25および
図26に示す例では、照明装置10の反射膜41は、導光板40の出射面40Bと反対側の面と接触するように配置されているが、反射膜41を導光板40との間に間隔を設けて配置してもよい。この場合、導光板40の入射面40Aから入射した光は、導光板40の出射面40Bとは反対側の面で出射面40Bへ向けて内面反射され、当該反対側の面と間隔内の空気層との界面を透過した漏れ光が反射膜41により反射され、導光板40内に戻される。
【0178】
図27は、液晶表示装置1が備える液晶パネル14の断面図である。なお、
図27では、液晶パネル14の一部分を拡大して示している。液晶パネル14は、例えばアクティブマトリクス型の液晶表示素子である。
【0179】
液晶パネル14は、一対の基板(第1基板50および第2基板51)と、液晶層52と、表示ドライバ54とを備える。
【0180】
第1基板50と第2基板51とは、所定の間隔を空けて対向して配置される。第1基板50と第2基板51とは、観察側および照明装置10側からの光を透過する透明基板であり、例えばガラスなどの透明な絶縁材料により構成される。
【0181】
第1基板50と第2基板51との一方、例えば、観察側とは反対側の第1基板50には、複数の画素に対応して設けられた複数の第1画素電極56と、複数の第1画素電極56に対応して設けられた複数のスイッチング素子(図示せず)と、複数の走査線(図示せず)と、複数の信号線58と、複数の細長電極部60aをそれぞれが含みかつ複数の第1画素電極56に対応して設けられた複数の第2画素電極60とが設けられる。スイッチング素子は、TFT(薄膜トランジスタ)で構成される。
【0182】
なお、
図27ではTFTの図示を省略しているが、TFTは、走査線と信号線58とが交差する位置近傍に配置され、第1基板50上に設けられたゲート電極と、第1基板50の略全体にゲート電極を覆って設けられた透明なゲート絶縁膜55と、ゲート絶縁膜55上にゲート電極と対向させて設けられたi型半導体膜と、i型半導体膜の両側部上にそれぞれn型半導体膜を介して設けられたドレイン電極及びソース電極とを備える。
【0183】
複数の走査線は、第1基板50上に設けられる。複数の走査線は、第1画素電極56の行毎にその一側に沿わせて配置される。各走査線は、対応する行に配置された複数のTFTのゲート電極に電気的に接続される。走査線は、TFTにゲート信号を供給する。
【0184】
ゲート絶縁膜55上には、複数の第1画素電極56が設けられる。複数の第1画素電極56は、行及び列方向にマトリクス状に配列される。複数の第1画素電極56はそれぞれ、対応するTFTのドレイン電極に電気的に接続される。複数の第1画素電極56及びゲート絶縁膜55上には、絶縁層57が設けられる。
【0185】
絶縁層57上には、複数の信号線58が設けられる。複数の信号線58は、第1画素電極56の列毎にその一側に沿わせて配置される。各信号線58は、対応する列に含まれる複数のTFTのソース電極に電気的に接続される。信号線58は、TFTを介して第1画素電極56にデータ信号を供給する。複数の信号線58及び絶縁層57上には、絶縁層59が設けられる。
【0186】
絶縁層59上かつ第1画素電極56の上方には、複数の第2画素電極60が設けられる。複数の第2画素電極60には、共通電圧が印加される。
【0187】
液晶パネル14は、複数の画素にそれぞれ対応させて設けられた赤、緑、青の3色のカラーフィルタ62R、62G、62Bを備える。このカラーフィルタ62R、62G、62Bは、一対の基板50、51のいずれか一方、例えば第2基板51上に設けられる。第2基板51上かつ画素の境界部分には、遮光膜(ブラックマトリクス)63が設けられる。
【0188】
第1基板50と第2基板51とが互いに対向した内面にはそれぞれ、第1画素電極56、第2画素電極60およびカラーフィルタ62R、62G、62Bを覆って一対の配向膜61、64が設けられる。配向膜61、64はそれぞれ、予め定めた方向にラビングすることによって配向処理されている。
【0189】
本実施形態において、液晶パネル14は、例えば横電界制御型液晶表示素子であり、液晶層52に誘電異方性が正のネマティック液晶を用いた場合、配向膜61、64は、第2画素電極60の複数の細長電極部60aの長さ方向に沿った方向、つまり画面エリアの上下方向と平行な方向にラビング処理されている。
【0190】
一方、液晶層52に誘電異方性が負のネマティック液晶を用いた場合、配向膜61、64を、第2画素電極60の複数の細長電極部60aの長さ方向に沿った方向に対して直交する方向(画面エリアのうち左右方向と平行な方向)にラビング処理すればよい。
【0191】
第1基板50および第2基板51は、複数の画素がマトリクス状に配列した画面エリアを囲む枠状のシール材53(
図25及び
図26参照)を介して接着されている。液晶層52は、第1基板50および第2基板51間の間隙においてシール材53で囲まれた領域に封入される。
【0192】
液晶層52は、第1基板50と第2基板51との間において配向膜61、64と接触するように配置され、液晶層52の液晶分子は、配向膜61、64の配向処理によって規定される配向状態に配向する。
【0193】
液晶パネル14の第1基板50は、第2基板51の端部よりも外側に突出した張出部50a(
図25および
図26参照)を有する。第1基板50に設けられた複数の走査線及び複数の信号線58は、張出部50aに搭載された表示ドライバ54に電気的に接続される。
【0194】
偏光板13は、互いに直交する吸収軸13aと透過軸13bとを有する。偏光板15は、互いに直交する吸収軸15aと透過軸15bとを有する。偏光板15の吸収軸15aは、偏光板13の吸収軸13aと直交するように設定される。偏光板13、15は、透過軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を透過し、吸収軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を吸収する吸収偏光板である。偏光板13、15のうちの観察側の偏光板15は、その外面に外光の反射防止処理が施されたアンチグレア偏光板からなっていてもよい。
【0195】
一対の偏光板13、15は、第1基板50および第2基板51を挟むように配置される。偏光板13、15は、第1画素電極56および第2画素電極60間に電界を印加しない無電界時と電界印加時との表示のコントラストを充分に高くすることができる方向となるように吸収軸13a、15aの向きを位置合わせして固定されている。偏光板13、15は、例えば、その一方の偏光板の透過軸を、配向膜61、64のラビング方向(図示せず)と平行にするか或いは直交させ、他方の偏光板の透過軸を一方の偏光板の透過軸に対して直交させるか或いは平行にして配置される。
【0196】
反射偏光板11は、照明装置10と光学異方性拡散層12との間に配置される。反射偏光板11は、互いに直交する反射軸11aと透過軸11bとを有する。反射偏光板11の反射軸11aは、偏光板13の吸収軸13aと平行に設定される。反射偏光板11は、反射軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を反射し、透過軸に平行な光の振動面を有する直線偏光を透過する。
【0197】
なお、液晶パネル14は、基板の内面に複数の画素を形成するための第1画素電極56および第2画素電極60を形成したものに限らず、第1基板50の内面(液晶層52側の面)に行及び列方向にマトリクス状に配列され、それぞれに対応させて配置された複数のTFTに接続された複数の画素電極と、第2基板51の内面(液晶層52側の面)に、複数の画素電極と対向する一枚膜状の対向電極が設けられるものであってもよい。具体的には、液晶パネル14は、TN(Twisted Nematic)型液晶表示素子であり、一対の基板(第1基板50および第2基板51)それぞれの内面に形成された配向膜61、64は、互いに直交する方向に配向処理され、液晶層52の液晶分子が、一対の基板間において実質的に90°の捩れ角でツイスト配向しているものでもよい。
【0198】
また、液晶パネル14は、液晶分子を一対の基板間において180°~270°の範囲の捩れ角でツイスト配向させたSTN(Super Twisted Nematic)型、液晶分子を一対の基板の基板面に対して実質的に垂直に配向させた垂直配向型、液晶分子の長軸を一方向に揃えて一対の基板の基板面と実質的に平行に配向させた非ツイストの水平配向型、液晶分子をベンド配向させるベンド配向型、あるいは強誘電性または反強誘電性液晶表示素子のいずれでもよい。
【0199】
[11] 実施形態の効果
本実施形態によれば、観察側とは反対側に配置された照明装置10からの照明光を利用する透過表示と、観察側から入射した外光を利用する反射表示とが可能な液晶表示装置1を実現できる。
【0200】
また、反射偏光板11と偏光板13との間に、光拡散性の入射光角度依存性を有する光学異方性拡散層12を設ける。そして、光学異方性拡散層12の値kを所望の数値に設定する。これにより、液晶表示装置1の反射特性を向上させることができる。また、透過表示を維持しつつ反射表示をさらに明るくすることができる。
【0201】
また、液晶パネル14内に反射領域を規定する反射膜を設けずに、反射偏光板11及び光学異方性拡散層12を用いて、透過/反射型液晶表示装置を実現することができる。
【0202】
本明細書において、板、フィルム、シート、及び層など表現は、その部材を例示した表現であり、その表現の材質に限定されるものではない。これらの表現は、その表現に関わらず、明細書で記載した機能を有する各種部材に置き換えてもよい。
【0203】
本明細書において、形状、幾何学的条件及びそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0204】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0205】
1…液晶表示装置、10…照明装置、11…反射偏光板、12…光学異方性拡散層、13…偏光板、14…液晶パネル、15…偏光板、16…光学部材、20…マトリクス領域、21…柱状構造体、30…光源、31…検出器、40…導光板、41…反射膜、42…光源、43…拡散シート、44…プリズムシート、50…第1基板、51…第2基板、52…液晶層、53…シール材、54…表示ドライバ、55…ゲート絶縁膜、56…第1画素電極、57…絶縁層、58…信号線、59…絶縁層、60…第2画素電極、61…配向膜、62R,62G,62B…カラーフィルタ、63…遮光膜、64…配向膜。