(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135722
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】屋外構造物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/343 20060101AFI20220908BHJP
E04D 13/064 20060101ALI20220908BHJP
E04H 6/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
E04B1/343 U
E04D13/064 501Z
E04D13/064 501B
E04H6/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035703
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤峯 弘城
(57)【要約】
【課題】入隅部を有する屋根からの漏水を容易に、かつ確実に防止すること。
【解決手段】前枠21と、前枠21の複数の位置からそれぞれ漸次低くなるように傾斜して延在した垂木24と、垂木24の延在部間を連結するように配設した雨樋枠とを備え、前枠21、垂木24、雨樋枠によって囲まれる領域にそれぞれ板状を成す屋根葺き材40を配設することによって屋根20が構成される屋外構造物であって、雨樋枠は、前枠21からの距離が互いに異なる位置に配置された後枠25及び後方母屋23Aを備え、前枠21からの距離が短い位置に配置された後方母屋23Aには、後枠25との境界となる位置に配置された境界垂木24の下面24eに対向する位置まで雨樋27aが設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前枠と、前記前枠の複数の位置からそれぞれ漸次低くなるように傾斜して延在した垂木と、前記垂木の延在部間を連結するように配設した雨樋枠とを備え、前記前枠、前記垂木、前記雨樋枠によって囲まれる領域にそれぞれ板状を成す屋根葺き材を配設することによって屋根が構成される屋外構造物であって、
前記雨樋枠は、前記前枠からの距離が互いに異なる位置に配置された第1雨樋枠及び第2雨樋枠を備え、
前記前枠からの距離が短い位置に配置された第2雨樋枠には、前記第1雨樋枠との境界となる位置に配置された境界垂木の下面に対向する位置まで雨樋が設けられていることを特徴とする屋外構造物。
【請求項2】
前記第2雨樋枠に設けられる雨樋は、別体に構成した樋枠を前記第2雨樋枠に取り付けることによって構成されるものであり、
前記樋枠は、長手に沿った全長にわたって同一の断面形状を有し、かつ前記第2雨樋枠に取り付けられた状態の全高が前記境界垂木の下面以下に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋外構造物。
【請求項3】
前記第2雨樋枠に設けられる雨樋には、別体に構成した押さえ部材が装着され、
前記屋根葺き材には、縁部に前記押さえ部材が当接されていることを特徴とする請求項1に記載の屋外構造物。
【請求項4】
前記垂木は、垂木本体と垂木カバーとを備え、両側部分においてこれら垂木本体及び垂木カバーの間に前記屋根葺き材の縁部が挟持され、
前記境界垂木において前記第2雨樋枠の雨樋と前記第1雨樋枠との間となる部分の側面には、側面カバーが装着され、
前記側面カバーには、前記屋根葺き材の板厚に一致し、前記境界垂木の垂木本体及び垂木カバーの間に挟持される被挟持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の屋外構造物。
【請求項5】
前記側面カバーにおいて前記第2雨樋枠の上端よりも上方に位置する部分は、前記第2雨樋枠に設けられる雨樋の樋内部に対してその上方まで延在していることを特徴とする請求項4に記載の屋外構造物。
【請求項6】
前記前枠と前記雨樋枠との間には、母屋が配設され、
前記前枠と前記第1雨樋枠との間に配設された母屋によって前記第2雨樋枠が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の屋外構造物。
【請求項7】
前記第1雨樋枠に設けられる雨樋は、前記境界垂木の一方の側面から下方を通過して反対側に位置する他方の側面に到達する部分まで延在していることを特徴とする請求項1に記載の屋外構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーポートやエントランス等の屋外構造物に関するもので、特に雨樋の部分に入隅部が設けられた屋根を備える屋外構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外構造物の屋根は、平面視で四角形状に形成されるのが一般的である。しかしながら、異形の設置スペースに配置する場合、あるいは設置スペースが四角形状であってもその上方部の一部に建物が配置されていたり、樹木が生えている等の制約があった場合には、一部に入隅部を有するように屋根を構成する必要がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-196261号公報
【特許文献2】特開2005-155085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、傾斜の上方となる屋根の前枠を含んで入隅部を構成する場合には、前枠を短いものに変更することで比較的容易に対応することが可能である。しかしながら、特許文献2に記載されているように、雨樋が設けられた雨樋枠を含んで入隅部を構成する場合には、排水経路が分断されることになるため、屋根からの漏水を容易に、かつ確実に防止できるかがきわめて重要な課題となる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、入隅部を有する屋根からの漏水を容易に、かつ確実に防止することのできる屋外構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る屋外構造物は、前枠と、前記前枠の複数の位置からそれぞれ漸次低くなるように傾斜して延在した垂木と、前記垂木の延在部間を連結するように配設した雨樋枠とを備え、前記前枠、前記垂木、前記雨樋枠によって囲まれる領域にそれぞれ板状を成す屋根葺き材を配設することによって屋根が構成される屋外構造物であって、前記雨樋枠は、前記前枠からの距離が互いに異なる位置に配置された第1雨樋枠及び第2雨樋枠を備え、前記前枠からの距離が短い位置に配置された第2雨樋枠には、前記第1雨樋枠との境界となる位置に配置された境界垂木の下面に対向する位置まで雨樋が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2雨樋枠に設けた雨樋が境界垂木の下面に対向する位置まで延在しているため、前枠と第2雨樋枠との間において屋根葺き材の上面を伝った水が雨樋に確実に受け止められることになり、屋根からの漏水を招来することなく、入隅部を有した屋根を容易に構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である屋外構造物を示すもので、(a)は側枠側から見た図、(b)は前枠側から見た図である。
【
図2】
図1に示した屋外構造物の屋根を示す平面図である。
【
図3】
図2に示した屋根を示すもので、(a)は第1雨樋枠の部分を破断した要部断面図、(b)は第2雨樋枠の部分を破断した断面図である。
【
図4】
図2に示した屋根の雨樋枠を示すもので、(a)は第1雨樋枠の端面図、(b)は第2雨樋枠の端面図である。
【
図5】
図2に示す屋根の一部を破断して示す断面図である。
【
図6】
図2に示した屋根のA部分を左後方の上面側から示す斜視図である。
【
図7】
図2に示した屋根のA部分を左前方の上面側から示す斜視図である。
【
図8】
図2に示した屋根のA部分を右後方の上面側から示す斜視図である。
【
図9】
図2に示した屋根のA部分を右後方の下面側から示す斜視図である。
【
図10】
図2に示した屋根のA部分の拡大平面図である。
【
図11】
図10において側面カバーを取り外した状態の平面図である。
【
図12】
図2に示した屋根のA部分において境界垂木と第1雨樋枠及び第2雨樋枠との位置関係を示すための斜視図である。
【
図13】
図2に示した屋根のA部分において第2雨樋枠と樋枠及び押さえ部材との位置関係を示すための斜視図である。
【
図14】
図2に示した屋根のA部分において樋枠の端部を示す破断斜視図である。
【
図15】
図2に示した屋根のA部分において樋枠部分を示す断面図である。
【
図16】
図2に示した屋根のA部分に適用する樋枠キャップを示すもので、(a)は樋枠の右側端部に樋枠キャップを装着した状態の斜視図、(b)は(a)の分解斜視図、(c)は樋枠の左側端部に樋枠キャップを装着した状態の斜視図、(d)は(c)の分解斜視図である。
【
図17】
図2に示した屋根の境界垂木及び側面カバーを後方側から見た断面図である。
【
図18】
図2に示した屋根に適用する側面カバーを示すもので、(a)は予め用意される側面カバーの側面図、(b)は(a)の一部を切除して構成した境界垂木の左側面に装着する側面カバーの側面図、(c)は(a)の一部を切除して構成した境界垂木の右側面に装着する側面カバーの側面図である。
【
図19】屋根の変形例を示すもので、(a)は変形例1の平面図、(b)は変形例2の平面図、(c)は変形例3の平面図、(d)は変形例4の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る屋外構造物の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明の実施の形態である屋外構造物を示したものである。ここで例示する屋外構造物は、駐車スペースSの一側に立設した2本の支柱10と、支柱10の上端部から駐車スペースSの他側に向けて漸次上方となるように延在した2本の梁11と、梁11の上部に設けた屋根20とを備えて構成したカーポートである。図には明示していないが、支柱10は、それぞれ角柱状を成すもので、個々の下端部を地中に埋設することによって鉛直方向に沿って立設してある。梁11は、それぞれ角柱状を成すもので、互いにほぼ平行となるように延在している。
【0010】
屋根20は、
図2に示すように、平面視において一つの角部に入隅部1を有した略六角形状を成すもので、前枠21、2つの側枠22、3本の母屋23、6本の垂木24及び後枠(第1雨樋枠)25を備えて構成してある。前枠21、側枠22、母屋23、垂木24及び後枠25は、いずれもアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれが長手に沿った全長にわたってほぼ一様の断面形状を有するように構成してある。本実施の形態では、前枠21を前方として配置した場合に平面視において左後隅部に入隅部1を構成した屋根20を例示している。以下においては便宜上、この前枠21が前方となるように配置した状態で屋根20の構成要素についてそれぞれの方向を特定することとする。すなわち、
図2において上方が前方で、下方が後方、左が左方、右が右方である。
【0011】
図2及び
図3に示すように、前枠21は、梁11の相互間隔よりも大きな長さを有した中空の異形筒状を成すもので、長手に沿って直線状に構成してある。側枠22は、
図2及び
図5に示すように、長手に沿って直線状に延在する側枠本体22aと、側枠本体22aの上部に取り付けられる側枠カバー22bとを備えたもので、それぞれ一方の端部が側枠本体22aを介して前枠21の端部に連結してある。側枠本体22aにおいて互いに対向する側の縁部上面及び側枠カバー22bにおいて互いに対向する側の縁部下面には、それぞれ相互間に隙間が確保してあるとともに、互いに対向する部分の全長にそれぞれシール部材22cが配設してある。
図1からも明らかなように、入隅部1を有した左側の側枠(以下、区別する場合に左側枠22Aという)と、もう一方の右側の側枠(以下、区別する場合に右側枠22Bという)とは互いに長さが異なっている。本実施の形態では、右側枠22Bが梁11とほぼ同じ長さに構成してある一方、左側枠22Aが右側枠22Bのほぼ3/4の長さを有するように構成してある。
【0012】
母屋23は、
図2及び
図3に示すように、前枠21とほぼ同じ長さを有した中空の角筒状を成すもので、前枠21とほぼ平行となる状態で互いに等間隔となる位置に配設してある。前枠21からもっとも遠い位置に配設した後方の母屋(以下、区別する場合に後方母屋(第2雨樋枠)23Aという)は、一方の端部が左側枠22Aにおいて側枠本体22aの端部に接続してある一方、他方の端部が右側枠22Bにおいて側枠本体22aの中間部に接続してある。後方母屋23Aよりも前方に配置した2本の母屋23は、両側の端部が左側枠22Aの中間部及び右側枠22Bの中間部においてそれぞれの側枠本体22aに接続してある。
【0013】
垂木24は、
図5に示すように、前枠21の上面及び母屋23の上面に固定される垂木本体24aと、垂木本体24aの上部に取り付けられる垂木カバー24bとを備えて構成したもので、側枠22とほぼ平行となる状態で互いにほぼ等間隔となる位置に配設してある。垂木本体24aは、前枠21及び母屋23の上面に固定した場合に、その上面が側枠本体22aの上面とほぼ一致するように構成してある。
図2に示すように、左側枠22Aに対してもっとも近い位置に配置した垂木24は、左側枠22Aとほぼ同じ長さを有するように構成してあり、一方の端部が垂木本体24aを介して前枠21の中間部に接続してある一方、他方の端部が垂木本体24aを介して後方母屋23Aの中間部に接続してある。他の母屋23は、右側枠22Bとほぼ同じ長さを有するように構成してあり、一方の端部が垂木本体24aを介して前枠21の中間部に接続してあり、他方の端部がそれぞれ後方母屋23Aよりも後方に突出した状態にある。
【0014】
図5に示すように、垂木本体24aの長手に沿った両側縁部の上面及び垂木カバー24bの長手に沿った両側縁部の下面には、互いの間に隙間が確保してあるとともに、互いに対向する部分の全長にそれぞれシール部材24cが配設してある。上述のように、屋根20に用いる垂木24は、同一の断面形状を有したものであるが、以下においては便宜上、
図1に示すように、右側枠22Bとほぼ同じ長さで、左側枠22Aにもっとも近い位置に配置したものを特に境界垂木24Aと称して他の垂木24と区別する場合がある。
【0015】
後枠25は、
図2~
図4に示すように、長手に沿って直線状に構成したもので、前枠21とほぼ平行となる状態で右側枠22Bから境界垂木24Aにおいて入隅部1側に位置する側面までの間に配設してある。右側枠22Bの端部と、後方母屋23Aから突出した垂木24の端部とは、いずれも後枠25の上面に接続してある。本実施の形態では、枠基部25aと、枠基部25aの側方に設けた後方雨樋部25bとを一体に成形した後枠25を適用している。枠基部25aは、母屋23とほぼ同じ高さを有した角筒状を成すものである。後方雨樋部25bは、枠基部25aの下端部から後方に向けてほぼ直角に延在した後、上方に向けて湾曲状に延在したもので、上方に開口することによって枠基部25aとの間に雨樋25cを構成している。後方雨樋部25bの上縁部は、枠基部25aの上面よりも上方に突出するように設けてある。後方雨樋部25bの両端部には、雨樋25cの端部を塞ぐための雨樋キャップ26が装着してある。雨樋キャップ26は、後方雨樋部25bの断面形状に対して一回り大きな形状の板状を成すもので、後方雨樋部25bとの間に水密性を確保した状態で後方雨樋部25bに取り付けてある。図には明示していないが、後方雨樋部25bによって構成された雨樋25cには、上下方向に延在する縦樋2(
図1参照)が適宜箇所に設けてある。
【0016】
また、後枠25の枠基部25aには、押さえ部25d及び支持突部25eが一体に設けてある。押さえ部25dは、枠基部25aとの間に後述する屋根葺き材40の後方縁部を収容するための収容部25fを構成するもので、枠基部25aおいて後方雨樋部25bとの間となる後方側の側面上方部から後方に向けて突出した後、上方に向けて屈曲し、さらに屈曲した上端部から前方に向けて屈曲して延在している。図からも明らかなように、押さえ部25dの延在縁部は、枠基部25aの上面よりも上方に位置している。支持突部25eは、枠基部25aにおいて前枠21に近接した上縁部から上方に突出した後、後方に向けてほぼ直角に屈曲したものである。支持突部25eの上端面は、押さえ部25dの延在縁部下面よりもわずかに下方に位置している。
【0017】
上述した後方母屋23Aには、
図6~
図13に示すように、後枠25に設けた後方雨樋部25bと同様の断面形状を有した樋枠27が設けてある。樋枠27は、後方母屋23Aとは別体に成形してあり、後方母屋23Aに取り付けることによって後方母屋23Aに雨樋27aを構成するものである。すなわち、樋枠27は、水平方向に沿って平板状を成す上面部27bと、上面部27bの後方縁部から鉛直下方に向けて延在した側面部27cと、側面部27cの下縁部から後方に向けてほぼ直角に延在した後、上方に向けて湾曲状に延在した入隅雨樋部27dとを一体に成形したものである。上面部27bの上面には、上方に向けて突出した後、後方に向けてほぼ直角に屈曲した支持突部27eが一体に設けてある。図には明示していないが、樋枠27によって構成された雨樋27aに対しても、上下方向に延在する縦樋2が適宜箇所に設けてある。
【0018】
また、側面部27cの後方上縁部には、溝状の取付部27fが形成してあり、取付部27fを介して押さえ部材28が装着してある。押さえ部材28は、取付部27fを介して側面部27cに取り付けることにより、後方母屋23Aに屋根葺き材40の収容部28aを構成するためのものである。この押さえ部材28は、垂木24の相互間となる部分にのみ設けてあり、垂木24を後方母屋23Aに取り付ける場合に垂木24に干渉することがない。
【0019】
上述の構成を有する樋枠27は、上面部27bを介して後方母屋23Aの上面にネジを螺合することにより後方母屋23Aに取り付けてあり、入隅雨樋部27dが上方に開口することによって後方母屋23Aの後方に雨樋27aを構成している。図からも明らかなように、後方母屋23Aに設けた入隅雨樋部27dの上縁部は、上面部27bの下面よりも下方に位置しており、樋枠27を後方母屋23Aに取り付けた場合に後方母屋23Aの上面よりもわずかに下方に位置することになる。また、上面部27bにおいて垂木24に対応する部分には、切り欠き27gが設けてあり、垂木24を後方母屋23Aの上面に直接当接して接続させることが可能である。樋枠27の一方の端部は、左側枠22Aの端部に接続してある。樋枠27の他方の端部は、境界垂木24Aの左側面24dから境界垂木24Aの下面24eを通過して境界垂木24Aの右側面24fを超えた位置まで延在している。
【0020】
樋枠27の入隅雨樋部27dにおいて左側枠22Aに接続した端部には、後方雨樋部25bと共通の雨樋キャップ26が装着してある。これに対して入隅雨樋部27dにおいて境界垂木24Aの下面24eを通過した端部には、
図14~
図16に示すように、樋枠キャップ29が装着してある。樋枠キャップ29は、入隅雨樋部27dに装着した場合の全高が上面部27bの下面よりも下方に位置するように構成したもので、取付金具30を介して樋枠27の側面部27cに取り付けてある。樋枠キャップ29には、その両面に取付金具30との相対回転を防止するための突起29aが設けてある。また、取付金具30は、対称形状となっており、両端部を突起29aに嵌合させることが可能である。さらに、樋枠キャップ29には、一方の面を覆い隠すことができるとともに、ネジ挿通孔31aが貫通した平板状のカバープレート31が用意してある。従って、樋枠27の入隅雨樋部27dに対しては、これら取付金具30、樋枠キャップ29及びカバープレート31を両端部で共用することが可能である。
【0021】
上述した前枠21と後枠25との間において垂木24の相互間及び垂木24と側枠22との間の長方形状を成す空間には、屋根葺き材40が配設してある。また、前枠21と後方母屋23Aとの間において垂木24の相互間及び垂木24と側枠22との間の長方形状を成す空間にも、屋根葺き材40が配設してある。屋根葺き材40は、長方形の外形を有した薄板状を成すもので、両側の縁部がそれぞれ垂木本体24aと垂木カバー24bとの間及び側枠本体22aと側枠カバー22bとの間に挟持してある。屋根葺き材40の前方側に位置する縁部は、
図3に示すように、前枠21に設けた収容空間21aに挿入した状態で前枠21に挟持してある。前枠21と後枠25との間に配設した屋根葺き材40の後方側に位置する縁部は、支持突部25eと押さえ部25dとの間の収容部25fに挿入した状態で後枠25に挟持してある。前枠21と後方母屋23Aとの間に配設した屋根葺き材40の後方側に位置する縁部は、支持突部27eと押さえ部材28との間の収容部28aに挿入した状態で後方母屋23Aに挟持してある。
【0022】
さらに、境界垂木24Aにおいて後方母屋23Aよりも後方となる部分には、側面カバー50が装着してある。側面カバー50は、後方母屋23Aと後枠25との間において境界垂木24Aの左側面24dを覆うものである。本実施の形態では、境界垂木24Aの上面から後方母屋23A及び後枠25の下面までの高さを有したカバー部50aと、カバー部50aの上縁部から境界垂木24Aの垂木本体24aと垂木カバー24bとの間に挟持される被挟持部50bとを一体に成形した側面カバー50を適用している。被挟持部50bは、屋根葺き材40と一致する板厚を有したもので、境界垂木24Aにおいて垂木本体24aに垂木カバー24bを装着した場合に垂木カバー24bが傾く事態を防止するように機能する。すなわち、境界垂木24Aにおいては、入隅部1に対応する部分に屋根葺き材40が存在しないため、そのままの状態で垂木本体24aに垂木カバー24bを装着してネジを螺合した場合に、入隅部1に対応する縁部において垂木カバー24bが垂木本体24aに必要以上に近接した状態となる。これに対して側面カバー50の被挟持部50bを介在させた状態で垂木カバー24bを装着すれば、垂木カバー24bが垂木本体24aとの間に被挟持部50bを挟持することで上述も問題を招来するおそれがなくなる。
【0023】
側面カバー50のカバー部50aにおいて樋枠27よりも上方に位置する突出部分50cは、入隅雨樋部27dの延在縁部よりも前方側に突出し、開口端が雨樋27aの樋内部に対応する部分に位置している。側面カバー50としては、
図18(a)に示すように、予め両端部に突出部分50cを有したものを用意し、入隅部1を設ける位置に応じて
図18(b)や
図18(c)に示すように、一方の突出部分50cを切除すれば、部品の共用化を図ることが可能となる。
【0024】
上記のようにして構成した屋根20は、前枠21が上方となり、垂木24が後方に向けて漸次下方となる傾斜状態で梁11の上面に取り付けられることになる。屋根20の上面に滴下した雨水等の水は、屋根葺き材40の傾斜に従って低所となる後方側に案内される。屋根葺き材40を介して後枠25に案内された雨水等の水は、後方雨樋部25bによって構成した雨樋25cで受け止められ、縦樋2を介して地上に排出されることになる。一方、屋根葺き材40を介して後方母屋23Aに案内された雨水等の水は、樋枠27によって構成した雨樋27aで受け止められ、縦樋2を介して地上に排出されることになる。
【0025】
ここで、入隅部1を構成した屋根20においては、前枠21と後方母屋23Aとの間に配設した屋根葺き材40の後方側に位置する縁部と、境界垂木24Aの入隅部1側に位置する左側面24dとの会合部分(
図11中のZ部分)に隙間が生じて漏水を来す懸念がある。しかしながら、上述の屋根20によれば、樋枠27が境界垂木24Aの入隅部1側に位置する左側面24dを超えて境界垂木24Aの下面24eに達する位置まで設けてある。従って、仮に屋根葺き材40の後方側に位置する縁部と、境界垂木24Aの入隅部1側に位置する左側面24dとの間に隙間が生じていたとしても、この隙間を通じて滴下する水は樋枠27の雨樋27aによって受け止められることになり、漏水を来すおそれがない。また、上述したように、側面カバー50において樋枠27よりも上方に位置する部分が雨樋27aの樋内部まで延在しているため、側面カバー50の開口端面から内部に吹き込んだ雨水等の水についても樋枠27の雨樋27aによって受け止めれられることになり、漏水を来すおそれがない。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、平面視において左後隅部に入隅部1を有した屋根20を例示しているが、第1雨樋枠である後枠25を含むように入隅部が設けられているものであれば、必ずしもこれに限定されず、右後隅部に入隅部が設けられていても良いし、後枠25の中間部に凹状に入隅部が設けられていても構わない。後者の場合には、両側に境界垂木が設けられるため、それぞれの境界垂木の下面に対向する位置まで雨樋を設けるように構成することになる。
【0027】
また、上述した実施の形態では、入隅部1が垂木24を含むように構成しているが、
図19(a)の変形例1に示す屋根120のように、垂木24を含まないように入隅部1を構成するものにも適用可能である。さらに、等間隔に配設した母屋23の一部を第2雨樋枠として構成しているが、
図19(b)の変形例2に示す屋根220及び
図19(c)の変形例3に示す屋根320のように、等間隔に配設した母屋23の間に新たに母屋23′を追加して第2雨樋枠を構成することも可能である。この場合、追加する母屋23′は必ずしも第1雨樋枠である後枠25に対して平行である必要はなく、
図19(d)の変形例4に示す屋根420のように、後枠25に対して傾斜するように母屋23′を追加して第2雨樋枠を構成しても良い。なお、変形例1~変形例4において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0028】
さらに、上述した実施の形態では、樋枠27に対して押さえ部材28を別体に成形しているが、押さえ部材28は樋枠27と一体に成形しても構わない。
【0029】
またさらに、上述した実施の形態では、屋外構造物としてカーポートを例示しているが、屋根を備えたものであれば、その他の屋外構造物であっても構わない。
【0030】
以上のように、本発明に係る屋外構造物は、前枠と、前記前枠の複数の位置からそれぞれ漸次低くなるように傾斜して延在した垂木と、前記垂木の延在部間を連結するように配設した雨樋枠とを備え、前記前枠、前記垂木、前記雨樋枠によって囲まれる領域にそれぞれ板状を成す屋根葺き材を配設することによって屋根が構成される屋外構造物であって、前記雨樋枠は、前記前枠からの距離が互いに異なる位置に配置された第1雨樋枠及び第2雨樋枠を備え、前記前枠からの距離が短い位置に配置された第2雨樋枠には、前記第1雨樋枠との境界となる位置に配置された境界垂木の下面に対向する位置まで雨樋が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、第2雨樋枠に設けた雨樋が境界垂木の下面に対向する位置まで延在しているため、前枠と第2雨樋枠との間において屋根葺き材の上面を伝った水が雨樋に確実に受け止められることになり、屋根からの漏水を招来することなく、入隅部を有した屋根を容易に構成することが可能となる。
【0031】
また本発明は、上述した屋外構造物において、前記第2雨樋枠に設けられる雨樋は、別体に構成した樋枠を前記第2雨樋枠に取り付けることによって構成されるものであり、前記樋枠は、長手に沿った全長にわたって同一の断面形状を有し、かつ前記第2雨樋枠に取り付けられた状態の全高が前記境界垂木の下面以下に構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、樋枠の全高が境界垂木の下面以下となるため、樋枠の端部に加工を施すことなく境界垂木の下面に対向する位置まで配設することが可能となる。
【0032】
また本発明は、上述した屋外構造物において、前記第2雨樋枠に設けられる雨樋には、別体に構成した押さえ部材が装着され、前記屋根葺き材には、縁部に前記押さえ部材が当接されていることを特徴としている。
この発明によれば、複数の垂木にわたって第2雨樋枠を設ける場合にも、それぞれの垂木の相互間に別体の押さえ部材を配設すれば良いため、第2雨樋枠から押さえ部材を切断する等の追加作業が不要となる。
【0033】
また本発明は、上述した屋外構造物において、前記垂木は、垂木本体と垂木カバーとを備え、両側部分においてこれら垂木本体及び垂木カバーの間に前記屋根葺き材の縁部が挟持され、前記境界垂木において前記第2雨樋枠の雨樋と前記第1雨樋枠との間となる部分の側面には、側面カバーが装着され、前記側面カバーには、前記屋根葺き材の板厚に一致し、前記境界垂木の垂木本体及び垂木カバーの間に挟持される被挟持部が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、境界垂木において第2雨樋枠側の縁部に被挟持部が挟持されるため、垂木本体に対して垂木カバーを配設した場合に垂木カバーが傾く事態を防止することができる。
【0034】
また本発明は、上述した屋外構造物において、前記側面カバーにおいて前記第2雨樋枠の上端よりも上方に位置する部分は、前記第2雨樋枠に設けられる雨樋の樋内部に対してその上方まで延在していることを特徴としている。
この発明によれば、側面カバーの開口端面が第2雨樋枠に設けられる雨樋の樋内部に位置するため、開口端面から側面カバーの内部に吹き込んだ雨水等の水が漏水することなく雨樋に受け止められることになる。
【0035】
また本発明は、上述した屋外構造物において、前記前枠と前記雨樋枠との間には、母屋が配設され、前記前枠と前記第1雨樋枠との間に配設された母屋によって前記第2雨樋枠が構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、別途第2雨樋枠を設ける必要がなくなる。
【0036】
また本発明は、上述した屋外構造物において、前記第1雨樋枠に設けられる雨樋は、前記境界垂木の一方の側面から下方を通過して反対側に位置する他方の側面に到達する部分まで延在していることを特徴としている。
この発明によれば、境界垂木において入隅側となる縁部を伝った水が第1雨樋枠の雨樋に受け止められることになる。
【符号の説明】
【0037】
1 入隅部、20,120,220,320,420 屋根、21 前枠、23 母屋、23A 後方母屋、24 垂木、24A 境界垂木、24a 垂木本体、24b 垂木カバー、24d 左側面、24e 下面、24f 右側面、25 後枠、25c 雨樋、27 樋枠、27a 雨樋、28 押さえ部材、40 屋根葺き材、50 側面カバー、50b 被挟持部