(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135732
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】車両用灯具のハウジング部材
(51)【国際特許分類】
F21S 45/00 20180101AFI20220908BHJP
F21S 45/50 20180101ALI20220908BHJP
F21V 15/01 20060101ALI20220908BHJP
F21V 31/00 20060101ALI20220908BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20220908BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20220908BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220908BHJP
【FI】
F21S45/00
F21S45/50
F21V15/01 530
F21V31/00 100
B29C45/16
F21W102:00
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035720
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智彦
【テーマコード(参考)】
3K014
4F206
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014NA02
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB22
(57)【要約】
【課題】軽量で部分的に高い剛性を備える車両用灯具のハウジング部材を提供する。
【解決手段】車両用灯具(1)のハウジング部材(10)は、ポリプロピレンを主成分として含む第1樹脂材料により構成される第1部分(20)と、ポリプロピレンを主成分として含み、かつフィラーを含む第2樹脂材料により構成される第2部分(30)と、を備える。第1樹脂材料および第2樹脂材料は互いに組成が異なる。第2部分(30)は、車両用灯具(1)を構成する他の部材が取り付けられる、または車両用灯具(1)を車体に取り付けるための取付部である。第1部分(20)および第2部分(30)は互いに接合されて一体化されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを主成分として含む第1樹脂材料により構成される第1部分と、ポリプロピレンを主成分として含み、かつフィラーを含む第2樹脂材料により構成される第2部分と、を備える、車両用灯具のハウジング部材であって、
前記第1樹脂材料および前記第2樹脂材料は互いに組成が異なり、
前記第2部分は、前記車両用灯具を構成する他の部材が取り付けられる、または前記車両用灯具を車体に取り付けるための取付部であり、
前記第1部分および前記第2部分は互いに接合されて一体化されている、
車両用灯具のハウジング部材。
【請求項2】
前記取付部が、アウタレンズが取り付けられるシール部を含み、
前記シール部は、前記アウタレンズを取り付けるためのシール剤が設けられる部分である、請求項1に記載のハウジング部材。
【請求項3】
前記取付部が、前記車両用灯具を車体に取り付けるための車体取付部を含む、請求項1または請求項2に記載のハウジング部材。
【請求項4】
前記取付部が、前記ハウジング部材に搭載される発熱部材を支持するための発熱部材支持部を含む、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のハウジング部材。
【請求項5】
前記第1樹脂材料が植物繊維を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のハウジング部材。
【請求項6】
前記フィラーが無機フィラーである、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のハウジング部材。
【請求項7】
前記第1部分および前記第2部分が多色成形されている、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載のハウジング部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具のハウジング部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、アウタレンズを構成する第1材料部と外装パネルを構成する第2材料部との2色成形によって一体形成された第1部材と、ハウジングである第2部材と、を備える照明装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、軽量で部分的に高い剛性を備える車両用灯具のハウジング部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る車両用灯具のハウジング部材は、
ポリプロピレンを主成分として含む第1樹脂材料により構成される第1部分と、ポリプロピレンを主成分として含み、かつフィラーを含む第2樹脂材料により構成される第2部分と、を備える、車両用灯具のハウジング部材であって、
前記第1樹脂材料および前記第2樹脂材料は互いに組成が異なり、
前記第2部分は、前記車両用灯具を構成する他の部材が取り付けられる、または前記車両用灯具を車体に取り付けるための取付部であり、
前記第1部分および前記第2部分は互いに接合されて一体化されている、
車両用灯具のハウジング部材である。
【0006】
上記ハウジング部材によれば、軽量なポリプロピレンを主成分として含む第1樹脂部材および第2樹脂部材によりハウジング部材を構成することで、車両用灯具の軽量化が図れる。また、ハウジング部材の第2部分を、フィラーを含む第2樹脂材料で構成することで、ハウジング部材の剛性を部分的に高めることができる。これにより、軽量で部分的に高い剛性を備える車両用灯具のハウジング部材を提供できる。そして、高い剛性を備える第2部分で安定した部材の取り付けや車体への取り付けを実現できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量で部分的に高い剛性を備える車両用灯具のハウジング部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る車両用灯具の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
図1は本実施形態に係る車両用灯具1の断面模式図である。
図1に示すように、車両用灯具1はアウタレンズ3とハウジング部材10と光源部材5(発熱部材の一例)とを有する。車両用灯具1は、例えば車両の前部に設けられて車両前方を照らす前照灯である。アウタレンズ3は光を透過する部材である。アウタレンズ3は例えばガラス材料や樹脂材料により構成される。ハウジング部材10はアウタレンズ3が取り付けられて覆われる開口部を備える部材である。アウタレンズ3がハウジング部材10の開口部を覆うように取り付けられることで灯室Sが規定される。光源部材5は灯室Sの内部に配される。光源部材5は例えばヒートシンクを備えるLED照明ユニットである。
【0011】
ハウジング部材10は第1部分20と第2部分30とを備える。第1部分20は、ハウジング部材10の大部分を占める部分である。図示される例では、第1部分20は他の部材の取り付けや車両への取り付けなどに関与しない部分である。第2部分30は、車両用灯具1を構成する他の部材が取り付けられる、または車両用灯具1を車体に取り付けるための取付部である。第1部分20および第2部分30は互いに接合されて一体化されている。第1部分20および第2部分30の接合は、接着剤を介したものでもよく、インサート成形、溶着、多色成形によるものでもよい。特に、第1部分20および第2部分30が多色成形されて接合されていると好ましい。
【0012】
取付部である第2部分30は、アウタレンズ3が取り付けられるシール部32を含むと好ましい。シール部32はアウタレンズ3を取り付けるためのシール剤が設けられる部分である。図示される例では、シール部32は溝部33を有し、シール剤が設けられた溝部33にアウタレンズ3の張出部4が挿入されて、ハウジング部材10にアウタレンズ3が取り付けられている。シール剤はホットメルト接着剤等で構成されてもよい。なお、ハウジング部材10へのアウタレンズ3の取り付けは、シール剤による取り付けと併せてねじ止めやクリップ止めによって補強されてもよい。
取付部である第2部分30は、車両用灯具1を車体に取り付けるための車体取付部34を含むと好ましい。図示される例では、車体取付部34はハウジング部材10の外側に張り出しており、車体に対して固定される固定部35を備える。
取付部である第2部分30は、ハウジング部材10に搭載される光源部材5を支持するための光源部材支持部36(発熱部材支持部の一例)を含むと好ましい。図示される例では、光源部材支持部36の上部に光源部材5が直接的に搭載される。
【0013】
第2部分30は、シール部32、車体取付部34および光源部材支持部36の少なくとも1つを含むと好ましい。図示される例では、第2部分30がシール部32、車体取付部34および光源部材支持部36の全てを含む。また、ハウジング部材10は、電気ケーブルを通すための開口部、灯室Sの内部と外部とで気体の流通を許容するための開口部、等を備え得る。
【0014】
第1部分20はポリプロピレンを主成分として含む第1樹脂材料により構成される。第2部分30はポリプロピレンを主成分として含み、かつフィラーを含む第2樹脂材料により構成される。第1樹脂材料および第2樹脂材料は互いに組成が異なる。軽量なポリプロピレンを主成分として含む第1樹脂部材および第2樹脂部材によりハウジング部材10を構成することで、車両用灯具1の軽量化が図れる。また、第2部分30を、フィラーを含む第2樹脂材料で構成することで、ハウジング部材10の剛性を部分的に高めることができる。これにより、軽量で部分的に高い剛性を備えるハウジング部材10を提供できる。そして、高い剛性を備える第2部分30で安定した部材の取り付けや車体への取り付けを実現できる。
【0015】
第1樹脂材料は植物繊維を含むと好ましい。植物繊維は、セルロースやヘミセルロース、リグニン等を主成分とする繊維である。第1部分20を構成する第1樹脂部材が植物繊維を含むことで、第1部分20の剛性を高めることができる。また、無機フィラー等を含む場合と比べてハウジング部材10を軽量にできる。また、植物由来材料を使用することで環境負荷を少なくできる。植物繊維としては、パルプ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、ガンピ、ミツマタ、コウゾ、スギ、タケ、カカオ、ケナフ、バナナ、パイナップル、サトウキビ、ココヤシ、トウモロコシ、バガス、ヤシ、ヨシ、エスパルト、サバイグラス、シュロ、バショウ、マツ、クワ、リュウゼツラン、ムギ、イネ、ヒノキなどが挙げられる。
なお、第1樹脂材料には重量の大きいフィラーが少量含まれていてもよい。当該フィラーとしては、タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、アルミボレート、MOS、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ウイスカーなどが挙げられる。
第1樹脂材料は荷重たわみ温度(0.45MPa)が120℃以上であると好ましい。第1樹脂材料は、光源やエンジン熱に対する耐久性として、90℃雰囲気下において1000時間静置後の物性低下率が5%以下であると好ましい。第1樹脂材料は、高温多湿な環境での耐久性として、温度60℃、湿度95%の雰囲気下で1000時間静置後の物性低下率が5%以下であると好ましい。第1樹脂材料は150℃雰囲気下において500時間静置後にクラック等の発生が生じないことが好ましい。
第1樹脂材料の主成分であるポリプロピレンは、重量平均分子量(Mw)が250,000以上450,000以下であると好ましい。また、第1樹脂材料が植物繊維を含む場合には、5重量%以上50重量%以下の植物繊維を含むと好ましい。第1樹脂材料が植物繊維以外のフィラーを含む場合には10重量%以上40重量%以下の植物繊維以外のフィラーを含むと好ましい。
【0016】
第2樹脂材料が含むフィラーは無機フィラーであると好ましい。第2部分30を構成する第2樹脂材料が無機フィラーを含むことで、ハウジング部材10の剛性を部分的にさらに高めることができる。これにより、軽量で部分的にさらに高い剛性を備えるハウジング部材10を提供できる。当該無機フィラーは、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、アルミボレート、MOS、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ウイスカーなどが挙げられる。グラスファイバー、タルク、ウイスカーは、汎用的に使用されている無機フィラーであることから本開示の第2樹脂材料に適用する上で好ましい。特にグラスファイバーは、第2部分30の剛性をより高め、耐衝撃性もより向上させることができ、本開示の第2樹脂材料に適用する上でより好ましい。
第2樹脂材料は荷重たわみ温度(0.45MPa)が120℃以上であると好ましい。第2樹脂材料は、光源やエンジン熱に対する耐久性として、温度90℃の雰囲気下において1000時間静置後の物性低下率が5%以下であると好ましい。第2樹脂材料は、高温多湿な環境での耐久性として、温度60℃、湿度95%の雰囲気下において1000時間静置後の物性低下率が5%以下であると好ましい。第2樹脂材料は150℃雰囲気下において500時間静置後にクラック等の発生が生じないことが好ましい。
第2樹脂材料の主成分であるポリプロピレンは、重量平均分子量(Mw)が250,000以上450,000以下であると好ましい。また、第2樹脂材料は、10重量%以上40重量%以下のフィラーを含むと好ましい。第2樹脂材料は、50mm×50mm×2mmの厚みの平板において、90℃雰囲気下で24時間静置後、温度60℃、湿度95%の雰囲気下で24時間試験した際の吸水率が0.5%以下であると好ましい。温度60℃、湿度95%の雰囲気下で24時間試験した際の吸水率が0.5%以下である第2樹脂材料を用いることで、第2樹脂材料で構成される第2部分30からガスが発生することを抑制できる。これによりシール剤の劣化や曇りの発生などを抑制できる。
【0017】
ところで、植物繊維を含む樹脂材料は吸水率が高く、当該樹脂材料をハウジング部材に用いると、温度上昇などでガスが発生しやすくなる。特にハウジング部材が前照灯に用いられる場合には、エンジン熱や点灯時に発生する熱によって温度上昇が起こりやすい。ガスが発生するとシール部に設けられるシール剤を劣化させる原因となり得る。植物繊維を含む第1樹脂材料と異なる吸水率の低い第2樹脂材料により、アウタレンズ3を取り付けるためのシール部32を構成することで、シール剤の劣化を好適に抑制できる。また、植物繊維を含む第1樹脂材料と異なる吸水率の低い第2樹脂材料により、発熱し得る光源部材5を支持する光源部材支持部36を構成することで、ガスの発生を抑制でき、車両用灯具1の曇りを好適に抑制できる。また、第2樹脂材料が無機フィラーを含むことで、ハウジング部材の剛性を部分的に高めることができる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0019】
上記実施形態においてハウジング部材10が、第1樹脂材料および第2樹脂材料により構成される例を説明したが、本開示のハウジング部材は第1樹脂材料および第2樹脂材料以外の樹脂材料により構成されるその他の部分を備えてもよい。
【0020】
また上記実施形態において、第2部分30がシール部32、車体取付部34および光源部材支持部36の全てを含む例を説明したが、本開示のハウジング部材10はこの態様に限定されない。第2部分30は、その全体でシール部32のみを構成してもよく、その全体で車体取付部34のみを構成してもよく、その全体で光源部材支持部36のみを構成してもよい。また、シール部32、車体取付部34および光源部材支持部36のいずれか1つを第2樹脂材料により構成される第2部分30で構成してもよく、第2部分30によって構成されないシール部32、車体取付部34および光源部材支持部36のいずれかを第1樹脂材料により構成される第1部分20や第1樹脂材料および第2樹脂材料以外の樹脂材料により構成される部分としてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1:車両用灯具、3:アウタレンズ、4:張出部、5:光源部材、10:ハウジング部材、20:第1部分、30:第2部分、32:シール部、33:溝部、34:車体取付部、35:固定部、36:光源部材支持部、S:灯室