IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中村 力の特許一覧

<>
  • 特開-養殖牡蠣用陶器製スペーサー 図1
  • 特開-養殖牡蠣用陶器製スペーサー 図2
  • 特開-養殖牡蠣用陶器製スペーサー 図3
  • 特開-養殖牡蠣用陶器製スペーサー 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135739
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】養殖牡蠣用陶器製スペーサー
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/54 20170101AFI20220908BHJP
【FI】
A01K61/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035743
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】712008873
【氏名又は名称】中村 力
(72)【発明者】
【氏名】中村 力
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA26
2B104CG05
(57)【要約】
【課題】安く且つ環境負荷の少ない素材が必要となる事。長期間の海中での使用に耐える事と繰り返しの使用にも耐える材質と構造であり、現行養殖の現場において著しく現状の作業条件や方法と異なるものに成らない牡蠣養殖用スペーサー開発が課題となる。
【解決手段】陶土と瓦、レンガ、ガラス等の廃棄物等の粉砕リサイクル材の混合材を主原材料とし、軽量化の為にプラスチックもしくは木材チップを混ぜ込んで焼成することで細かで多数の中空部が発生する。内面上部もしくは内外面上部に角の曲面状に面取り形状となる大量生産用の金型で成形加工して、必要に応じて、釉薬焼き付け等で表面の滑り性を付与した材質や形状と加工方法により長期の使用に耐えるものとすることを解決手段としている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶土と瓦、レンガ、ガラス等の粉砕リサイクル材との混合材を主原材料として焼き固めた円筒体であって、長期の環境対応を目的とした養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【請求項2】
前記混合材に、さらに、木材、プラスチック廃材のチップ材を加えて主原材料として固め、焼成後に本体内に多数の中空部を有する形態となる円筒体の請求項1に記載の養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【請求項3】
円筒体の両端部の内面もしくは外面に曲面部を備えたことを特徴とする請求項1及び2に記載の養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【請求項4】
円筒体の内面もしくは内外面に釉薬部を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養殖牡蠣用陶器製スペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
牡蠣を人工的に養殖する際に一般的には、ホタテ貝に種苗を付着させ、各ホタテ貝の間隔を確保する目的でこれまでは約長さ20×外形15×内径10mm位のパイプ状の通常まめ管とよばれるポリエチレン(以下PE製という)製基材からなるスペーサーを使用して筏等に2~3m位の長さで吊るす方法が多く採用されている。現在広島湾近郊の養殖現場ではでこの方法が多く採用され養殖されているという。最近は海の栄養分減少等の問題も有り、かつては1年間位で可能であった海中での養殖期間も近年は2~3年間となっており、その間の波の影響や台風等の被害の合う事で吊り下げ紐部が切れて流れてしまうものも毎年数パーセントある。しかもそれが瀬戸内海と言う海洋条件の中、現在広島湾近辺に1~2億個流出堆積されていると推測されている。流されたプラスチック製スペーサーが海の底や浜辺にも多量に流れ着きマイクロプラスチック化問題の報告以降、大きな海洋環境汚染の原因として改善に向けての近年地域漁協の大きな問題となって居る。
【0003】
これら問題に着目し全国の各漁協でも色々の取り組みがなされておりスペーサーをプラスチックPE製の物から木製、竹製、ガラス製、紙管や生分解性プラスチック等々色々な基材への変更の検討・検証が行われている。木製品は流された際に魚が餌と間違い食べる危険性や、竹製はスペーサー向けの細いサイズの確保から比較的若い竹を使用するため弱く割れやすい点が指摘され、ガラス製は重いし価格的に高い等が有る。紙管は外面に樹脂コートを行わないと吸水し軟化してバラケてしまう問題も有り、長期間使用の面でも難易度が高い。近年生分解性プラスチックが着目されて実証実験が行われているが生分解素材にも色々な種類が有るが、酸素も太陽光も少ない低温度下の海中では分解も進まない問題点や、一般プラスチック材より比重が重く海に沈んでかえって堆積ゴミとなり易く、今後多量の素材が海に流れる事を想定すると問題がないとも言い難い点が指摘されている。価格的にも従来品と比較して価格的に高い事や、スペーサー自身の再利用性の対応年数面の点や、未解決もしくは解決不可能な問題も多く内在している。
【0004】
養殖業は食卓に安全で安心な魚貝類を届ける大切な産業である、そして養殖業には今回のスペーサー以外にも網、浮き子、筏、船等々多くの基材が使用され、それら道具に使用されるプラスチック材も多くその劣化、放置問題から海洋流出面で魚介類への影響や海洋環境等、多くの問題を抱えている。しかも代替材としての生分解性プラスチックも生分解後の樹脂が海洋生物、それを食する人間に長期的な生物学的観点から見て問題が無いのか等々、多くの解明すべき課題も有り、それを含めて出来るだけ安価で長期視点の環境配慮を前提とした使用基材の転換への取り組みが急務であり必要な段階に来ているといえる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】2018年10月13日付け 毎日新聞記事「カキ養殖パイプ流出防げ」
【非特許文献2】一般社団法人JEANホームページ記事 http://www.jean.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、これまで使用していたプラスチック製スペーサーが牡蠣養殖の水産現場において自然災害で多量に流出し、周辺のみならずマイクロプラスチック化現象による海洋全体への環境汚染の原因となって居る問題への対応から、プラスチック製牡蠣養殖用スペーサーの代替品開発が課題であり、約長さ20×外形15×内径10mm位のパイプ状からなる形状で、課題は環境配慮を主眼とした低価格で、漁業関係者に取って使い勝手の良い新たな材料からなる養殖牡蠣用スペーサーの開発を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
陶土と瓦、レンガ、ガラス等の粉砕リサイクル材との混合材を主原材料として焼き固めた円筒体であって、長期の環境対応を目的とした養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【0008】
前記混合材に、さらに、プラスチック廃材や木製のチップ材を加えて主原材料として固め、焼成後空間部となる部分を有する円筒体の養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【0009】
円筒体の両端部の内面もしくは外面に曲面部を備えたことを特徴とする養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【0010】
円筒体の内面もしくは内面に釉薬部を備えたことを特徴とする養殖牡蠣用陶器製スペーサー。
【発明の効果】
【0011】
本発明の陶器製養殖牡蠣用スペーサーは、プラスチック材で問題となって居る環境負荷の軽減を最大目的としており、最悪、作業時や養殖中や海に流れ出る事が有っても本発明品は土を基材として焼かれたものであり、海中での海洋生物へ基材自身が大きな悪影響を及ぼすものでは無く、中長期的には砂に戻るもので海洋及び深海下でも問題がないと基材と言える事に着目し発明した。本発明品は瓦や他の用途に使用された焼き物、ガラス材等を粉砕再利用するリサイクル材も使用可能で、震災等の現場から多量に出るその様な廃材の有効利用にもつながる利点もある。更に軽量化に向けて木材チップや産業廃棄物的なプラスチックの粉砕品を混ぜ、成形加工後高温で焼き固められ本体内に多数の空間部が出来た陶器製養殖牡蠣用スペーサーは強度も有り軽量化も含め長期的な再利用も可能な物であり養殖業者の経済的な面も併せ高い効果が見込める。
【0012】
養殖牡蠣はホタテ貝に種苗を付着させ、ホタテ貝の間にスペーサーをかました間隔で連続的な数珠状を作る。これを2~3m位の長さで1年から長いもので3年位の間筏等で海中に吊るされる。その間絶えず波で揺らされることより一般的な形状の陶器製筒状のスペーサーでは、プラスチック製もしくは金属製からなる養殖牡蠣の吊り紐が中空部の陶器の上面、下面の角や、内面でこすられ切れやすくなることが今回海洋実験的に判明して居る。ことより本発明はスペーサー管状の中空部の陶器の上面、下面端内面に1R以上角を削った形状の面取り加工金型で成形加工し、必要に応じて内面もしくは内外面に更に釉薬を塗った後焼き固める構造品とすることで滑りやすく、養殖用装置の下準備の際、作業者の脱着の作業も容易となり且つスペーサー自身も長期使用することを可能とさせた構造体とした事を本発明の養殖牡蠣用陶器製スペーサーの特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】は養殖牡蠣の海中での様子を表す本発明の養殖牡蠣用陶器製スペーサーの使用図である。
図2】は本発明の養殖牡蠣用陶器製スペーサーの基本構成(斜視図)である(実施例1)。
図3】は本発明の養殖牡蠣用陶器製スペーサーの構成(断面図)である(実施例2)。 (a)円筒体の両端部の内面に曲面部を備えた場合 (b)(a)において円筒体の内面に釉薬部を備えた場合
図4】は本発明の養殖牡蠣用陶器製スペーサーの構成(断面図)である(実施例3)。 (c)円筒体の両端部の内面もしくは外面に曲面部を備えた場合(d)(c)において円筒体の内面と外面に釉薬部を備えた場合
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明養殖牡蠣用陶器製スペーサーの発明内容を、以下の様に説明する。
【0015】
図1は養殖牡蠣の海中での様子を表す本発明品の構成図で、ホタテ貝2に種苗4を付着させた物を交互に養殖牡蠣用陶器製スペーサー1により連続して各ホタテ貝の間隔を確保した状態で、吊り下げ用紐3で海中に吊り下げられた状況を示している。
【実施例0016】
図2は、本発明品養殖牡蠣用陶器製スペーサー1の基本構成を示す斜視可視図で、陶土もしくは瓦、レンガ、ガラス等の粉砕リサイクル材との混合材、更には軽量化を目的としてプラスチックもしくは木材からなるチップ状の物を混合したものからなる主原材料として、通常品の形状は約長さ20×外径15×内径10mm近辺の寸法からなる円筒体11で、空洞部12と内・外面に曲面部13を設けた形状に成形し、焼き固め後に多数の小さな中空部15を有する形態となるとなる養殖牡蠣用陶器製スペーサーの構成図である。
【実施例0017】
図3(a)は、本発明の実施例2で、養殖牡蠣用陶器製スペーサー1の断面図を示す。本発明品円筒体11は空洞部12を有する。今回実験結果で通常の穴あけ空洞品では角が鋭角となる事より、海中での波の振動等の影響を受けこすれて切れる現状が見られたことから、空洞部12の内面に曲面形状に削り取った曲面部13を有した形態とすることで、養殖用筏に吊り下げ品に数珠つなぎに加工する場合、釣り下げ用紐3を通りやすくなる改善をする事を目的も兼ねて端面を曲面に削り取る加工を施した曲面部13を示している。更に軽量化目的に木材チップや産業廃棄物からなるプラスチック粉砕品を混ぜ焼成時に炭化して多数の細かな中空部15となった状態を示す。図3(b)は更にその効果を増加させる滑り性を付与する目的で内面、もしくは内外面を釉薬に浸けて焼き固めた内面釉薬部14で更に長期の使用に耐えられる構造を示す。
【実施例0018】
図4(c)は実施例3で本発明養殖牡蠣用陶器製スペーサー1の内・外面滑り加工品を施した実施例2の断面図である。この(c)の目的と効果は、上記図2の場合と同様であるが養殖牡蠣用陶器製スペーサーの円筒体11は作成時に陶器品の空洞部12の両端部の内面又は外面に曲面部13を有する形状とし、本体内部に多数の中空部15を有することでより軽量化と長期使用できる効果を促進させたものとしている。図4(d)は図(c)の円筒体を釉薬内に全体どぶ浸けして、その後に焼き固めた内・外面に釉薬部14を設ける加工をする。その滑り性から漁業関係者の取り付け作業の簡便性と長期使用面でも再利用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
添付資料(非特許文献1)及び(非特許文献2)に記載されているように海洋に投棄、廃棄されるプラスチックの問題は地球環境上もマイクロプラスチックとしての魚貝類、海洋動植物及び人体への影響面で待った無しの状況下にあるが、養殖業の現場の観点からは作業性や基材価格は死活問題でもありその意味からも本発明品は長期間使用も可能で、再利用面でも産廃品活用の面でも産業的利用性への可能性が広いものとなって居る。
【符号の説明】
【0020】
1 養殖牡蠣用陶器製スペーサー
11 円筒体
12 空洞部
13 曲面部
14 釉薬部
15 中空部
2 ホタテ貝
3 吊り下げ用紐
4 種苗
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2