(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135745
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】防寒用衣類
(51)【国際特許分類】
A41D 13/05 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A41D13/05 143
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035751
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】594011637
【氏名又は名称】株式会社トランサポート
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】端 雅彦
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA12
3B011AC13
3B011AC17
3B011AC22
(57)【要約】
【課題】大腿部の効果的な保温状態を維持できる防寒用衣類を提供する。
【解決手段】被着されたボトムス表面を覆うように装着されるカバー体10から成る大腿部用の防寒用衣類1であって、カバー体10は、各大腿部を個別に覆う筒状を成し、ボトムスBの一部またはベルトBLに係止されカバー体10の下方への移動を規制する係止手段20を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着されたボトムス表面を覆うように装着されるカバー体から成る大腿部用の防寒用衣類であって、
前記カバー体は、各大腿部を個別に覆う筒状を成し、ボトムスの一部またはベルトに係止され前記カバー体の下方への移動を規制する係止手段を備えることを特徴とする防寒用衣類。
【請求項2】
前記係止手段は、ボトムスの一部またはベルトと前記カバー体との相対位置を変更できる機能を有していることを特徴とする請求項1に記載の防寒用衣類。
【請求項3】
前記係止手段は、前記カバー体に対して分離可能な係着手段で固定されており、係着位置の変更により、ボトムスの一部またはベルトと前記カバー体との相対位置を変更出来ることを特徴とする請求項1または2に記載の防寒用衣類。
【請求項4】
前記カバー体は、該カバー体の上下にかけてその内外径を調整可能な太さ調整手段を更に備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防寒用衣類。
【請求項5】
前記太さ調整手段は、前記カバー体の上下方向各位置において、連続的または段階的に太さを調節可能とする係合手段であることを特徴とする請求項4に記載の防寒用衣類。
【請求項6】
前記太さ調整手段は、前記カバー体の一部同士が重合された状態で互いに係合される構成であることを特徴とする請求項4または5に記載の防寒用衣類。
【請求項7】
前記太さ調整手段は、前記カバー体の表面に周方向に幅を持って形成された起毛部と、前記起毛部に係合可能な係合素子と、から構成されることを特徴とする請求項6に記載の防寒用衣類。
【請求項8】
前記カバー体は、伸縮性を有する伸縮基材が上下方向に延設配置されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の防寒用衣類。
【請求項9】
前記カバー体は、保温機能を有する第1シート材と、伸縮性を有する伸縮基材とが、上下方向に渡って結合されていることを特徴とする請求項8に記載の防寒用衣類。
【請求項10】
伸縮性を有する伸縮基材が、内腿部側に配置されていることを特徴とする請求項8または9に記載の防寒用衣類。
【請求項11】
前記係止手段は、ボトムスの側部における股上側に偏在して設けられていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の防寒用衣類。
【請求項12】
前記カバー体の下端側には膝下まで延びる延出部と、前記延出部を膝下の位置で巻き付ける巻き付け手段と、が延設されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の防寒用衣類。
【請求項13】
前記延出部は、伸縮性を有する伸縮基材によって構成されていることを特徴とする請求項12に記載の防寒用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用する衣類に対して補助的に防寒機能を付加する防寒用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
着用する衣類に対して補助的に防寒機能を発揮するべく用いられるものとして、一般に手袋やマフラー、足元の防寒にはボトムスの下で肌に直接着用するレギンスなどが一般的である。レギンスは臀部から大腿部、下腿部にかけて身体に密着するようになっており、薄手ながら防寒機能の効果が高いという特徴がある。一方で、レギンスはボトムスの下に一体に着用するため、手袋やマフラーなどと異なり着用者を取り巻く気温環境によって適宜着脱を行うことは困難である。
【0003】
その他の下半身用の防寒用衣類としては所謂レッグウォーマーが知られている。例えば特許文献1に開示されるレッグウォーマーは、繊維素材を筒状に編み込んで形成され、伸縮性が高い構造となっており、着用者を取り巻く気温環境によって適宜ボトムスの上から着用と脱衣が可能となっている。レッグウォーマーは足首から膝下までの下腿部に着用するものであり、最も太さのある脹脛(ふくらはぎ)から膝に向けて細くなる部分に上端側の開口部が位置することで、十分に窄まった開口部が脹脛を超えないために、レッグウォーマー自体が下方にずり落ちにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3204170号公報(第9頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に体表側に位置する血管として特に太い大腿動脈が通る大腿部を冷やさないようにすることが、防寒機能の効率を高める上で重要といわれている。大腿部の保温を行うために、特許文献1のような伸縮性のあるレッグウォーマーを大腿部まで引き上げて用いることもできるが、大腿部は付け根側から膝側に向けて漸次細くなる形状であるため、特に屈伸運動などの動きによってレッグウォーマーの上端側が徐々に下方にずり落ちてしまう。そのため、大腿部でのレッグウォーマーの上下位置が定まらず、大腿部の効果的な保温状態を維持できない虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、大腿部の効果的な保温状態を維持できる防寒用衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の防寒用衣類は、
被着されたボトムス表面を覆うように装着されるカバー体から成る大腿部用の防寒用衣類であって、
前記カバー体は、各大腿部を個別に覆う筒状を成し、ボトムスの一部またはベルトに係止され前記カバー体の下方への移動を規制する係止手段を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、ボトムスの表面側にて大腿部を取り囲むように筒状を成すカバー体は、各大腿部を個別に覆っているため、必要に応じて個々に着脱を行うことができ、かつ係止手段がボトムスの一部またはベルトに係止されることで、その上端側が下方へずり落ちず、大腿部の効果的な保温状態を維持することでき、効果的な防寒機能を奏することができる。なお、カバー体は、少なくとも各大腿部を個別に覆う際に、筒状を成していれば良く、通常はどのような形状でもよい。
【0008】
前記係止手段は、ボトムスの一部またはベルトと前記カバー体との相対位置を変更できる機能を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者の体形やフィット感によって適宜カバー体の上下位置を変更できる。
【0009】
前記係止手段は、前記カバー体に対して分離可能な係着手段で固定されており、係着位置の変更により、ボトムスの一部またはベルトと前記カバー体との相対位置を変更出来ることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者の体形やフィット感によって適宜カバー体の上下位置を変更できる。
【0010】
前記カバー体は、該カバー体の上下にかけてその内外径を調整可能な太さ調整手段を更に備えることを特徴としている。
この特徴によれば、太さ調整手段によりカバー体の内外径を調整することにより、カバー体内面とその内側に位置するボトムスの生地との擦れ具合を自由に調節でき、ボトムスとカバー体との2層からなる複合体におけるフィット感の調節が可能になるばかりか、運動時の足の動きに対して最適の締め付け具合も選択できる。またカバー体とボトムス間の隙間を調節することで、寒暖調節もできる。
【0011】
前記太さ調整手段は、前記カバー体の上下方向各位置において、連続的または段階的に太さを調節可能とする係合手段であることを特徴としている。
この特徴によれば、大腿部は、一般に上方が太く下方に行くに従い細くなっており、この太さは極端な個人差がある。係合手段を利用して、カバー体の上下方向各位置において太さを調節可能になっているため、内側に位置するボトムスの生地との擦れ具合を自由に調節でき、少なくともボトムスとカバー体との2層からなる複合体におけるフィット感の向上を図れる。
【0012】
前記太さ調整手段は、前記カバー体の一部同士が重合された状態で互いに係合される構成であることを特徴としている。
この特徴によれば、カバー体の一部が重合により複数層構造となるため、重合位置において保温効果を高めることができる。
【0013】
前記太さ調整手段は、前記カバー体の表面に周方向に幅を持って形成された起毛部と、前記起毛部に係合可能な係合素子と、から構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、係合素子を起毛部の表面の任意の位置にて係合させることで、使用者の太腿にフィットするようにカバー体の径を自由に調整でき、かつ起毛部が幅を持って広く形成されることで、目立ちにくく美観に優れる。
【0014】
前記カバー体は、伸縮性を有する伸縮基材が上下方向に延設配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、他の部位と比べて筋肉量が多く、足の屈伸により断面積が大きく変化することがわかっている大腿部のウォーキング、ランニング、スポーツ時の身体の動作による変化を、伸縮性を有する伸縮基材によって吸収でき、身体動作に対する悪影響を防止できる。
【0015】
前記カバー体は、保温機能を有する第1シート材と、伸縮性を有する伸縮基材とが、上下方向に渡って結合されていることを特徴としている。
この特徴によれば、身体の動作による大腿部の変化は伸縮性を有する素材によって主に吸収され、第1シート材の位置ずれを確実に防止できる。
【0016】
伸縮性を有する伸縮基材が、内腿部側に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、内腿部は一般に神経組織が密集し敏感性の高い部分である。内腿部側に配置されている伸縮性を有する伸縮基材が自身で動き量を吸収し、運動など脚の動作によって生じるカバー体とその内側に位置するボトムスの生地との内腿部位置での擦れを効果的に防止できる。
【0017】
前記係止手段は、ボトムスの側部における股上側に偏在して設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、係止手段が動作時の両脚に干渉せず、大腿部用の防寒用衣類を着用した状態で運動時の邪魔になりにくい。
【0018】
前記カバー体の下端側には膝下まで延びる延出部と、前記延出部を膝下の位置で巻き付ける巻き付け手段と、が延設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、膝下の位置で延出部が巻き付け手段により巻き付けられることにより、下方からカバー体内への冷気の入り込みを防ぐことができるとともに、カバー体の上方への移動を規制することができる。
【0019】
前記延出部は、伸縮性を有する伸縮基材によって構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、身体の動作によるカバー体の動きは、膝下に延びる延出部に影響を与えるが、延出部の伸縮性により、その動きは効果的に吸収される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る実施例1の防寒用衣類を着用した状態を示す図である。
【
図2】本発明に係る実施例1の防寒用衣類を着用して特に膝を曲げ状態防寒用衣類を示す図である。
【
図3】係止手段、そして展開状態のシート部を示す斜視図である。
【
図4】防寒用衣類のシート部を大腿部に巻きつける状態の斜視図である。
【
図5】係止手段をポケットに係止させた場合の着用時の防寒用衣類を示す側面図である。
【
図6】係止手段をベルトに係止させた場合の着用時の防寒用衣類を示す側面図である。
【
図7】本発明に係る実施例2の防寒用衣類を示す斜視図である。
【
図8】実施例2の防寒用衣類における係止手段を構成する保持具を示す平面図である。
【
図10】(a)~(d)は、それぞれ異なる配置角度で配置した保持具における被係合部の高さ位置を示す平面図である。
【
図11】本発明に係る実施例3の防寒用衣類を示す斜視図である。
【
図12】(a)は、カバー体の内径が最大径である状態を示す断面図であり、(b),(c)はカバー体の内径を適宜調整できることを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る防寒用衣類を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0022】
実施例1に係る防寒用衣類につき、
図1~
図6を参照して説明する。上下左右前後等の方向については、各紙面において矢印を用いて示す一方で、各紙面において矢印を用いて示す方向に係わらず、利用者の右脚については「右脚」、左脚については「左脚」とする。また、防寒用衣類において、着用時に脚に対向配置される側を裏面側、その反対側を表面側として説明する。
【0023】
図1に示されるように、防寒用衣類1R,1Lは、着用しているボトムス、ここではスラックスBの右脚部と左脚部の表面側から両の大腿部にそれぞれ巻き付けるようにして装着して使用する大腿部用の防寒用衣類である。本実施例では、ゴルフやウォーキング、ランニングなどのスポーツで用いられ、保温性の高い比較的厚手の繊維が用いられ、利用者の脚に密着するような、いわゆるスキニータイプのスラックスBをカバーする防寒用衣類について説明する。実施例では説明を省略するが、作業用パンツ、スラックスは、一般にスキニータイプではなく、太めに機能的に作られており比較的肉厚で保温効果は高いが、防寒用衣類でカバーをすればより暖かくなる。
【0024】
図1と
図2に示されるように、装着された防寒用衣類1R,1Lは、大腿部から膝下に亘って筒状を成す一方で(
図1,2参照)、1枚の布状に展開可能(
図3参照)なカバー体10と、カバー体10をスラックスBのポケットの縁部に係止するための吊具20(係止手段)と、から主に構成されている。尚、防寒用衣類1R,1Lは、互いに対称形状であるため、以降の説明において、特に断らない限り防寒用衣類1Lを例に説明する。また、共通の構成については、共通の符号を付して説明する。
【0025】
カバー体10は、各大腿部を個別に覆う筒状を成し、スラックスBの一部またはベルトBLに係止されカバー体10の下方への移動を規制する係止手段である吊具20を備える。この係止手段がスラックスBの一部またはベルトに係止されることで、その上端側が下方へずり落ちず、大腿部の効果的な保温状態を維持することでき、効果的な防寒機能を奏することができる。なお、カバー体10は、少なくとも各大腿部を個別に覆う際に、筒状を成していれば良く、通常は
図3に示されるような一枚のシート状でもよい。当然、係止手段である吊具20は、ボトムスの一部またはベルトと前記カバー体10との相対位置を変更できる機能も有している。
【0026】
係止手段20は、カバー体10に対して分離可能なファスナなどの係着手段で、第2シート材11の起毛状の表面11aに固定されており、係着位置の変更により、スラックスBの一部またはベルトBLとカバー体10との相対位置を変更できるようになっている。そのため使用者は、係止手段20を移動調整し、フィット感を確認しながら適宜カバー体10の上下位置を変更できる。
【0027】
比較的厚地の第2シート材11は、例えばキルティング布地から形成されており、前記のようにその表面11aは起毛状の面となっている。13は、保温機能を有する第1シート材であり、その表面13aは
図1,2に示されるように大腿部の正面側に位置することになる。この面13aは、スラックスBの色や質感等ファッション性を高めるうえでデザインが考慮される面である。第1シート材13は、層状をなす複数枚の素材を重ねた物でも良いが、単層の素材でも良い。12は、伸縮性を有する伸縮基材であり、複数層でも良いが、本実施例では薄手の素材からなる単層の素材である。
【0028】
第1シート材13の裏側には複数の鉤状の突起からなる、いわゆる雄の面ファスナ部16が側端に沿うように固定されている。この面ファスナ部16は第2シート材11の起毛状の表面11aに係合可能となっている。すなわち、カバー体10は、該カバー体10の上下にかけてその内径を調整可能な太さ調整手段を構成することになる。より詳しくは、第2シート材11には起毛状の大きな表面11aが幅を持って広がっており、起毛状の表面11aに上下に渡り延びる雄の面ファスナ部16を適当な位置で係合可能になっているため、上下にかけて連続的または段階的に太さを調節可能になっている。
【0029】
大腿部は、一般に上方が太く下方に行くに従い細くなっており、この太さは極端な個人差がある。本実施例によれば、カバー体10の上下方向各位置において太さを調節可能になっているため、少なくともスラックスBの表面生地とカバー体10内面との擦れ具合を自由に調節できるようになっている。より詳しくは、別の実施例を説明する
図7に線分Lで示されるように第2シート材11の起毛状の表面11aに、雄の面ファスナ部16が傾斜状態で係合されている。
【0030】
特にカバー体10は、各大腿部を個別に覆う筒状であると、各カバー体10が自由に動き易くなり、スラックスBとの間で擦れが起きやすいと考えられるが、前記したように、スラックスB、カバー体10、そして下着などが層状に重なった複合体の互いの圧迫具合、延いては互いの擦れ具合を調節できるのであり、この複合体におけるフィット感を運動時も含めて向上させることができる。またカバー体とボトムス間の隙間を調節することで、寒暖調節もできる。
【0031】
なお、第2シート材11には起毛状の大きな表面11aが幅を持って広がっており、起毛部に上下に渡り延びる雄の面ファスナ部16を適当な位置で係合可能になっているため、第2シート材11と第1シート材13とが一部重合状態して複数層構造となり、重合位置において保温効果を高めることができる。
【0032】
伸縮基材12は、伸縮性能を有するハイテンションニットから形成されており、第2シート材11と第1シート材13との間に縫合又は接着により固定され、カバー体10の上部シート構造15を構成している。
【0033】
大腿部は他の部位と比べて筋肉量が多く、足の屈伸により断面積が大きく変化することがわかっている。本実施例によれば、ウォーキング、ランニング、スポーツ時の身体の動作による大腿部の変化は伸縮性を有する伸縮基材12によって吸収され、防寒用衣類1の着用時における身体動作に対する悪影響を防止できるようになっている。
【0034】
特に本実施例によれば、後述する係止手段20をスラックスBのポケットPまたはベルトBLのように外腿部に係止させることによって、
図1,2に示されるように伸縮性を有する伸縮基材12が、内腿部側に配置されるようになっている。運動時や作業時における、スラックスB、カバー体10、そして下着などが層状に重なった複合体の互いの圧迫、延いては互いの「擦れ」は、特に神経組織が密集し敏感性の高い内腿部にあって気になる感触として受け止められる。しかし伸縮基材12が内腿部側に配置されているため、運動など脚の動作によって生じるカバー体とその内側に位置するボトムスの生地との内腿部位置での「擦れ」は伸縮基材12自身の伸縮で吸収され効果的に防止される。なお、身体の動作による大腿部の変化により発生する第1シート材13の位置ずれも確実に防止できる。
【0035】
延出部14は、ハイテンションニットにより、第2シート材11の後端から第1シート材13の前端に亘っての幅寸法と略同寸の帯状に形成されており、第2シート材11、伸縮基材12および第1シート材13の下端部に亘って縫合又は接着により固定されている。延出部14の表面には、片面に複数のフック状の起毛を有する、いわゆる雄の面ファスナ部17Aと、片面に複数のループ状の起毛を有する、いわゆる雌の面ファスナ部17Bと、からなる膝下調整手段17が固定されており、延出部14を膝下の位置で絞り調整を利用して保持することができるようになっている。
【0036】
膝下の位置で延出部14が巻き付け手段である膝下調整手段17により巻き付けられることにより、下方からカバー体内への冷気の入り込みを防ぐことができるとともに、カバー体10の上方への移動を規制することができる。延出部14は、伸縮性を有する伸縮基材によって構成されていることにより、身体の動作によるカバー体10の動きは、膝下に延びる延出部14に影響を与えるが、延出部の伸縮性により、その動きは効果的に吸収される。
【0037】
次いで、この実施例で用いられる係止手段である吊具20について説明する。吊具20は、側面視R字状に形成されて下方側に開口している留め具21(係止部)と、留め具21から垂下する帯状の吊下部22と、片面に複数のフック状の起毛を有する帯状に形成された、いわゆる雄の面ファスナ部23と、から構成されており、面ファスナ部23は、第2シート材11の表面11aに係合可能になっている。この係止手段は、ボトムスの側部における外腿寄りの股上側に偏在して設けられており、係止手段が動作時の両脚に干渉せず、大腿部用防寒用衣類を着用した状態で運動時の邪魔になりにくく構成されている。
【0038】
また、
図5は、吊具20の留め具21をスラックスBのポケットPに係止させる態様であり、
図6は、吊具20の留め具21をベルトBLに係止させる態様である。なお、入口の深いポケットPであれば吊具20と留め具21全てカバー体10の内側に隠ぺいすることも可能である。
【0039】
次に、防寒用衣類1Lの装着方法について、
図1~
図5を用いて説明する。まず、面ファスナ部23を第2シート材11の表面11aに係合させた状態の吊具20の留め具21をスラックスBのポケットPに係止させる。これにより、吊具20を介してカバー体10の荷重がスラックスBに支持された状態、言い換えると仮保持状態となる。
【0040】
吊具20は、カバー体10に対する係合位置を上下方向と幅方向に自由に選択可能であることから、それぞれ異なる形状のポケットPの位置や形状に適応でき、仮保持されたカバー体10を所望の位置に配置することができる。尚、吊具20は、第2シート材11の表面11aに傾斜させて係合させることもできる。
【0041】
次いで、
図1,4に示されるように、カバー体10を第1シート材13が外側にくるようにして大腿部に巻きつけ、第1シート材13の裏側の面ファスナ部16を第2シート材11の表面11aに係合させる。詳しくは、伸縮基材12は裏面を内腿(身体の正中線側)に当接させ、第2シート材11は裏面を大腿部の外腿(体側側)、後面側、前面側にかけて当接させ、第1シート材13の裏面を大腿部の前面側にて第2シート材11の表面11aに重ね、大腿部の外腿(体側側)にて面ファスナ部16を第2シート材11の表面11aに係合させる(
図7参照)。
【0042】
このように、面ファスナ部16と第2シート材11の表面11aとからなる太さ調整手段により、各使用者の大腿部の太さや形状に応じてフィットさせることができ、大腿部とシート部15との一体感により着け心地が良く、かつゴルフやウォーキング、ランニングなどのスポーツ時の体の動作に適合することになる。
【0043】
また、上記したように本実施例における防寒用衣類1R,1Lは、大腿部の太さや形状に合わせて第1シート材13と第2シート材11とからなるシート部15の内径を調整してスラックスB越しに着用されるため、着用者を取り巻く気温環境によって着用と脱衣が容易でありながら、ゴルフやウォーキング、ランニングなどのスポーツ時の体の動作を行いやすい。
【0044】
また、本実施例によれば、防寒用衣類1R,1Lは、太さが調整されてスラックスBの表面に密着しているため、スラックスBとの一体性が高い。また、第1シート材13や第2シート材11に薄手の生地を用いれば、スポーツなどの動作時のパフォーマンスへの影響が極めて小さく、かつ薄手でありながらスラックスBの表面に密着しているため防寒用衣類1R,1Lの内側の暖気を効果的に保持することができる。
【0045】
また、防寒用衣類1R,1Lは、スラックスBの伸縮や身体の動きによるスラックスBの変形に追従する。例えば屈伸運動の屈んだ際において、大腿部は筋肉の収縮により、その付け根側が一時的に大きく肥大し、スラックスBの対応箇所も少なからず伸ばされることになる。このとき、防寒用衣類1R,1Lの付け根側(上部側)には、肥大した大腿部の傾斜により膝側(下側)に押しのけられるような力がかかるが、吊具20の留め具21がスラックスBのポケットPに係止されていることから防寒用衣類1R,1Lの上部側の高さ位置が保持される。このように、身体の動作時においてもスラックスBと防寒用衣類1R,1Lの上部側とが相対移動しないことで、防寒用衣類1R,1Lの位置ズレが生じず、効果的な保温状態を維持することができる。
【0046】
また、ハイテンションニットから形成された伸縮基材12の高い伸縮性により、各使用者の大腿部の太さや形状に応じてフィットさせやすく、また使用者の大腿部の動きに伸縮基材12が追従するため、体の動作を行いやすい。
【0047】
次いで、
図1,4に示されるように、伸縮基材12の下方側に位置する延出部14を膝下に巻きつけ、雄の面ファスナ部17Aを雌の面ファスナ部17Bに係合させる。このように、膝下の位置で延出部14が面ファスナ部17A,17Bにより巻き付けられることにより、下方からカバー体10内への冷気の入り込みを防ぐことができるとともに、膝の形状を利用してカバー体10の上方への移動を規制することができる。また、ハイテンションニットから形成された延出部14の伸縮性により、使用者の膝の動きに延出部14が追従するため、体の動作を行いやすい。
【0048】
また、
図1,2に示されるように、内腿側に配置される伸縮基材12は、第2シート材11及び第1シート材13よりも相対的に薄いばかりか伸縮可能であるため、ゴルフやウォーキング、ランニングなどのスポーツ時に内腿同士が極めて近接するような動作が生じても、防寒用衣類1R,1Lの伸縮基材12同士が干渉しにくい。特に運動など脚の動作によって生じるカバー体10とその内側に位置するスラックスBの生地との内腿部位置での「擦れ」は伸縮基材12自身の伸縮で吸収され効果的に防止される。
【0049】
また、
図5に示される吊具20の留め具21は、スラックスBのポケットPに係止させ構成であるため、その配置位置は外腿(体側側)となり、ゴルフやウォーキング、ランニングなどのスポーツ時に内腿同士が極めて近接するような動作時の邪魔にならない。
【0050】
また、
図6に示されるように、吊具20の留め具21はベルトBLに係止させることもできる。同様に、留め具21をスラックスBのベルトループ(ベルト通し)P2に係止させてもよい。
【0051】
尚、留め具21は、実施例にて示したような鉤状に限らず、例えばクリップであってもよい。また、吊具20は面ファスナ部23により第2シート材11の表面11aに着脱可能に係合させる構成に限らず、例えば第2シート材11の表面11aに縫い付けられ、吊下部22を長さ調整可能な構成としてもよい。
永久磁石31は、シート部25の上端側にて上方に膨出する凸部26に内蔵されている。詳しくは図示しないが、永久磁石31はシート部25を構成する表布と裏布との間に配置され、これら表布と裏布とが永久磁石31の外縁に沿って縫合されることで、シート部25の平面方向の移動が規制されるとともに、表裏がひっくり返るような移動も規制されている。尚、永久磁石31の固定方法はこの構成に限らず、例えば接着剤などにより裏布に貼り付けられ、シート部25の裏面側に露出する構成であってもよい。永久磁石31は、シート部25の表裏方向にそれぞれ磁極を有する薄板状であり、シート部25の裏面側に向けて開口するキャップで覆われることで、シート部25の裏面側に強い吸着力を偏在させた所謂キャップ磁石であり、磁気強度の高いネオジム磁石が用いられることが好ましい。
板材34の孔部34aは、裏面側に大径部34bを備え、この大径部34bに枠部36の裏面側端部から外径方向に延出するフランジ部36bが嵌入されている。金属板35は、鉄やニッケルなどの強磁性を有する素材を有してなる合金で形成されており、永久磁石31と吸着可能である。また、枠部36の内部空間の幅寸法L5は、永久磁石31の外寸よりも若干大となっており、永久磁石31と金属板35とが近接した際には、永久磁石31が枠部36の内部空間に入り込み、金属板35に対して吸着されることになり、永久磁石31は枠部36により平面方向の移動が規制される。
また、板材34のいずれか1辺(37A~37D)をポケットPの底を構成する縫い目Sに沿わせることで、保持具32のポケットP内部における下方向への移動が規制される。加えて、永久磁石31は保持具32の枠部36の内部空間にて平面方向の移動が規制されている。そのため、運動時、特に屈伸運動等によりカバー体30が膝方向に引っ張られるような大きな力が掛かる場合でも、カバー体30の上部側のスラックスBに対する高さ位置を強力に保持することができる。
また、係止手段33を構成する保持具32はポケットPの内部に配置されて露出せず、対となる永久磁石もまたシート部25に内蔵されて露出しないため、係止手段33が目立たず美観に優れる。
また、永久磁石31と磁性体である金属板35との吸着を利用するため、繰り返しの着脱によっても、カバー体30を保持する能力の劣化が極めて起こりづらい。加えて、ポケットPの縁部に係止させる構成ではないため、装着する対象のボトムスの破けや縫い目の解れなどの破損を防止することができる。
尚、保持具32は上述した構成に限らず、例えば枠部36と板材34とは一体に形成されていてもよい。また、板材34に大径部34bを形成せず、枠部36のフランジ部36bを板材34の孔部34aの縁部に当接させ、接着剤などで固定する構成でもよい。
また、板材34は合成樹脂に限らず、例えば合皮や本革等から構成されていてもよく、この場合、表地と裏地となる2枚の板材で枠部36のフランジ部36bを挟むようにして枠部36及び金属板35が保持されるようにしてもよい。
また、金属板35は枠部36の段部36aに嵌入される構成に限らず、例えば金属板35を板材34の裏側に形成した大径部に嵌入させ、枠部36は板材34の表側に接着などで固定してもよい。