(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135773
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/62 20060101AFI20220908BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220908BHJP
C08L 75/02 20060101ALI20220908BHJP
C08L 93/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08G18/62 004
C08G18/08 038
C08L75/02
C08L93/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035798
(22)【出願日】2021-03-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】高田 一仁
(72)【発明者】
【氏名】金井 梓
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002CK051
4J002GJ02
4J002GQ01
4J034BA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD01
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DG01
4J034DP12
4J034DP19
4J034EA12
4J034GA06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB05
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
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4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KE02
4J034MA26
4J034QA03
4J034QB06
4J034QB13
4J034QB14
4J034QD03
4J034RA08
4J034RA14
(57)【要約】
【課題】相溶性と密着性と低誘電特性に優れる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオールおよびテルペン樹脂を含む第1成分と、ポリイソシアネートを含む第2成分と、を含み、前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを30質量%以上含み、前記テルペン樹脂の含有量が前記ポリオール100質量部に対して1~60質量部である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールおよびテルペン樹脂を含む第1成分と、
ポリイソシアネートを含む第2成分と、を含み、
前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを30質量%以上含み、
前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して1~60質量部である、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記テルペン樹脂が、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、およびテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオールが、ひまし油系ポリオールをさらに含む、請求項1または2に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
電気電子部品封止用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて樹脂封止された電気電子部品。
【請求項6】
二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のポリオール成分として用いられるポリオール組成物であって、
ポリオールおよびテルペン樹脂を含み、
前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを30質量%以上含み、
前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して1~60質量部である、ポリオール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物、およびそれを用いた電気電子部品、ならびに、該二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のためのポリオール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板や電子部品は、外的要因から保護するためにポリウレタン樹脂組成物を用いて封止することが行われており、ポリウレタン樹脂組成物のポリオールとしてポリブタジエンポリオールを用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水酸基含有液状ジエン系重合体、ポリイソシアネート化合物、多環芳香族炭化水素および石油樹脂からなる電気絶縁材料が開示されている。特許文献2には、水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有水素添加ポリブタジエンおよびポリイソシアネートを反応させて得られるポリマーと、粘着付与剤と、溶剤を含有してなる耐熱性防湿絶縁塗料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-197620号公報
【特許文献2】特開平8-165454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリウレタン樹脂組成物では、ポリオールを含む第1成分とポリイソシアネートを含む第2成分からなる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物としたとき、ポリオールとともに石油樹脂等の他の成分を含有させる第1成分の相溶性が劣ることがあり、またポリウレタン樹脂組成物と基板との密着性が十分でない場合があった。また、例えばセンサや無線通信部品に対する封止材として用いる場合、ポリウレタン樹脂組成物には電波に対する影響を抑えるために低誘電率であることが求められる。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、相溶性と密着性と低誘電特性に優れる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] ポリオールおよびテルペン樹脂を含む第1成分と、ポリイソシアネートを含む第2成分と、を含み、前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを30質量%以上含み、前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して1~60質量部である、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
[2] 前記テルペン樹脂が、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、およびテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
[3] 前記ポリオールが、ひまし油系ポリオールをさらに含む、[1]または[2]に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
[4] 電気電子部品封止用である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて樹脂封止された電気電子部品。
[6] 二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のポリオール成分として用いられるポリオール組成物であって、ポリオールおよびテルペン樹脂を含み、前記ポリオールは、ポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを30質量%以上含み、前記テルペン樹脂の含有量が、前記ポリオール100質量部に対して1~60質量部である、ポリオール組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、相溶性と密着性と低誘電特性に優れる二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、ポリオール(A)およびテルペン樹脂(B)を含む第1成分と、ポリイソシアネート(C)を含む第2成分と、を含むポリウレタン樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1-1)および/または水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)を含むものである。
【0010】
<第1成分>
[ポリブタジエンポリオール(A1-1)および/または水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)]
第1成分に含まれるポリオール(A)としては、ポリブタジエンポリオール(A1-1)および/または水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)(以下、両者をまとめて「PBポリオール(A1)」ということがある。)が用いられる。
【0011】
ポリブタジエンポリオール(A1-1)としては、分子中に1,4-結合型、1,2-結合型またはそれらが混在したポリブタジエン構造と少なくとも2つの水酸基を有するものが好ましく、ポリブタジエン構造の両末端にそれぞれ水酸基を有するものがより好ましい。
【0012】
ポリブタジエンポリオール(A1-1)の水酸基価は特に限定されず、例えば10~200mgKOH/gでもよく、15~150mgKOH/gでもよく、20~120mgKOH/gでもよく、25~100mgKOH/gでもよく、40~90mgKOH/gでもよい。本明細書において、水酸基価はJIS K1557-1:2007のA法に準じて測定される。
【0013】
水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)は、ポリブタジエンポリオール(A1-1)に対して水素添加した構造を持つものであり、ポリブタジエンポリオールに含まれている不飽和二重結合の一部又は全てが水添されている。水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)の水添の度合いは特に限定されず、例えばヨウ素価が50g/100g以下でもよく、30g/100g以下でもよい。本明細書において、ヨウ素価はJIS K0070に準じて測定される。
【0014】
水添ポリブタジエンポリオール(A1-2)の水酸基価は特に限定されず、例えば10~200mgKOH/gでもよく、15~150mgKOH/gでもよく、20~120mgKOH/gでもよく、25~100mgKOH/gでもよく、40~90mgKOH/gでもよい。
【0015】
[ひまし油系ポリオール(A2)]
ポリオール(A)には、さらにひまし油系ポリオール(A2)が含まれてもよい。ひまし油系ポリオール(A2)としては、ひまし油、ひまし油脂肪酸、及びこれらに水素付加した水添ひまし油や水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールを使用することができる。より詳細には、ひまし油系ポリオール(A2)としては、例えば、ひまし油、ひまし油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、及びこれらにアルキレンオキサイドを付加重合したポリオールなどが挙げられる。
【0016】
ひまし油系ポリオール(A2)の水酸基価は特に限定されず、例えば50~250mgKOH/gでもよく、100~180mgKOH/gでもよい。
【0017】
[ポリオール(A)]
ポリオール(A)は、PBポリオール(A1)のみで構成されてもよく、PBポリオール(A1)およびひまし油系ポリオール(A2)のみで構成されてもよく、また、PBポリオール(A1)とともに他のポリオール(A3)を含有してもよく、PBポリオール(A1)およびひまし油系ポリオール(A2)とともに他のポリオール(A3)を含有してもよい。ポリオール(A)は、2官能のもののみで構成されてもよく、3官能以上のものを含んでもよいが、ポリイソシアネート(C)が2官能のもののみで構成される場合、ポリウレタン樹脂組成物を熱硬化性にするべく3官能以上のポリオールを含むことが好ましい。
【0018】
他のポリオール(A3)としては特に限定されず、分子内に複数の水酸基を持つ化合物であって、PBポリオール(A1)およびひまし油系ポリオール(A2)以外の各種ポリオールが挙げられる。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマー酸ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。他のポリオール(A3)としては、また、一般に架橋剤として用いられている低分子量ポリオールでもよく、例えば分子量300以下の多価アルコール、具体的には、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル等の芳香族アルコール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0019】
ポリオール(A)100質量%中におけるPBポリオール(A1)の含有量は、30質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。PBポリオール(A1)の含有量が30質量%以上であることにより、電子回路基板等との密着性を向上することができ、また誘電率を低下させることができる。PBポリオール(A1)の含有量の上限は特に限定されず、100質量%でもよく、95質量%でもよく、85質量%でもよく、80質量%でもよい。
【0020】
ポリオール(A)にひまし油系ポリオール(A2)を含有させる場合、ポリオール(A)100質量%中におけるひまし油系ポリオール(A2)の含有量は、特に限定されず、例えば、5~70質量%でもよく、15~50質量%でもよく、20~40質量%でもよい。
【0021】
[テルペン樹脂(B)]
本実施形態では、第1成分に、PBポリオール(A1)とともにテルペン樹脂(B)を用いる。テルペン樹脂(B)はPBポリオール(A1)との相溶性に優れるため、第1成分の分離や濁りを抑制することができる。また、PBポリオール(A1)とテルペン樹脂(B)を併用することにより、電子回路基板等との密着性を向上することができ、かつ、誘電率が低いポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0022】
テルペン樹脂(B)は、テルペンを構成モノマーとして含む重合体である。テルペン(テルペンモノマーともいう。)としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(ラセミ体のジペンテンも含む。)、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、およびサビネン等のモノテルペンが挙げられる。これらの中でも、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、α-フェランドレン、β-フェランドレン、α-テルピネン、およびγ-テルピネン等の単環式のモノテルペンが好ましく、より好ましくはα-ピネン、β-ピネン、およびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0023】
テルペン樹脂(B)としては、構成モノマーがテルペンモノマーのみからなる単独重合体または共重合体であるポリテルペン樹脂(B1)、テルペンモノマーと芳香族モノマーとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂(B2)、テルペンモノマーとフェノール系モノマーとの共重合体であるテルペンフェノール樹脂(B3)が挙げられる。これらはいずれか1種用いても、2種以上併用してもよい。
【0024】
芳香族変性テルペン樹脂(B2)を構成する芳香族モノマーとしては、例えば、芳香族モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等が挙げられる。
【0025】
テルペンフェノール樹脂(B3)を構成するフェノール系モノマーとしては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。
【0026】
テルペン樹脂(B)の好適な例としては、α-ピネン、β-ピネンおよびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種の単独重合体または共重合体であるポリテルペン樹脂(B1)、α-ピネン、β-ピネンおよびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種のテルペンモノマーとスチレンとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂(B2)、α-ピネン、β-ピネンおよびリモネンからなる群から選択される少なくとも1種のテルペンモノマーとフェノールとの共重合体であるテルペンフェノール樹脂(B3)が挙げられる。
【0027】
テルペン樹脂(B)の含有量は、ポリオール(A)100質量部に対して1~60質量部である。テルペン樹脂(B)の含有量が60質量部以下であることにより、ポリウレタン樹脂の硬化後におけるテルペン樹脂(B)のブリードを抑制することができる。テルペン樹脂(B)の含有量は、5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは15質量部以上であり、また、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは40質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0028】
[その他の成分]
第1成分には、上記した各成分の他に、必要に応じて、例えば、触媒、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤などの各種添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0029】
触媒としては、例えば、有機スズ触媒、有機鉛触媒、有機ビスマス触媒などの金属触媒、アミン触媒などの各種ウレタン重合触媒を用いることができる。
【0030】
<第2成分>
[ポリイソシアネート(C)]
第2成分に含まれるポリイソシアネート(C)としては、特に限定されず、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する種々のポリイソシアネート化合物を用いることができる。ポリイソシアネート(C)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物(C1)、脂環式ポリイソシアネート化合物(C2)、および芳香族ポリイソシアネート化合物(C3)、ならびにこれらの変性体および多核体が挙げられ、いずれか1種用いても2種以上併用してもよい。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネート化合物(C1)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
脂環式ポリイソシアネート化合物(C2)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0033】
芳香族ポリイソシアネート化合物(C3)としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI、例えば2,4-TDI、2,6-TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、例えば2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
これらのポリイソシアネート化合物(C1)~(C3)の変性体としては、例えば、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、アダクト変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0035】
一実施形態において、好ましいポリイソシアネート(C)としては、例えば、ポリメリックMDI、ポリイソシアネート化合物(C1)~(C3)のカルボジイミド変性体(より好ましくは芳香族ポリイソシアネート化合物(C3)のカルボジイミド変性体)、ポリイソシアネート化合物(C1)~(C3)のイソシアヌレート変性体(より好ましくは脂肪族ポリイソシアネート化合物(C1)のイソシアヌレート変性体)などが挙げられ、これらはいずれか1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。より好ましくは、ポリメリックMDI、カルボジイミド変性MDI、およびイソシアヌレート変性HDIからなる群から選択される少なくとも1種を用いることである。
【0036】
二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物におけるポリイソシアネート(C)の含有量は、特に限定されず、例えば、ポリオール(A)100質量部に対して、1~70質量部でもよく、3~50質量部でもよく、5~40質量部でもよい。
【0037】
ポリイソシアネート(C)は、2官能のもののみで構成されてもよく、3官能以上のものを含んでもよいが、ポリオール(A)が2官能のもののみで構成される場合、ポリウレタン樹脂組成物を熱硬化性にするべく3官能以上のポリイソシアネートを含むことが好ましい。
【0038】
ポリイソシアネート(C)とポリオール(A)との比は、特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート(C)のモル数とポリオール(A)のモル数との比であるNCO/OH(インデックス)が0.6~1.5でもよく、0.7~1.4でもよく、0.8~1.3でもよく、0.9~1.2でもよい。
【0039】
[その他の成分]
第2成分はポリイソシアネート(C)のみで構成してもよく、また、ポリイソシアネート(C)の他に、必要に応じて、例えば、触媒、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤などの各種添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0040】
<二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物>
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、通常は、第1成分としての第1液と第2成分としての第2液とで構成されるが、第1成分および第2成分の他に、任意成分としての上記その他の成分を含む第3成分を第3液として備えてもよい。
【0041】
該二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、第1成分と第2成分をそれぞれ調製することにより製造することができ、すなわち、第1成分と第2成分はそれぞれ別の容器に充填されたものでもよい。別々の容器に充填された第1成分と第2成分は、使用時に混合されることによりポリオール(A)とポリイソシアネート(C)が反応してポリウレタン樹脂が形成され、硬化してもよい。その際、加熱により硬化させてもよい。実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、第1成分と第2成分を混合して得られたものであってもよく、硬化前の液状でもよく、硬化していてもよい。
【0042】
<ポリオール組成物>
一実施形態に係るポリオール組成物は、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物のポリオール成分として用いられるものであり、上記第1成分がこれに相当する。そのため、該ポリオール組成物は、ポリオール(A)およびテルペン樹脂(B)を含み、該ポリオール(A)がポリブタジエンポリオールおよび/または水添ポリブタジエンポリオールを30質量%以上含み、テルペン樹脂(B)の含有量がポリオール(A)100質量部に対して1~60質量部である。ポリオール(A)、テルペン樹脂(B)およびその他の成分についての詳細は上述したとおりであり、説明は省略する。
【0043】
<二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物の用途>
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、電気電子部品の封止のために用いられることが好ましい。電気電子部品としては、例えば、トランスコイル、チョークコイルおよびリアクトルコイルなどの変圧器、機器制御基板、センサ、無線通信部品などが挙げられる。該二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、低誘電特性に優れ(すなわち誘電率が低く)電波の影響を受けにくいため、無線通信を行う無線通信部品を外部環境から保護するために当該無線通信部品を樹脂封止、すなわち被覆する封止材として用いられることが好ましく、例えば、検知した情報を無線通信により送信するセンサの封止材として用いてもよい。
【0044】
本実施形態に係る二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を用いて樹脂封止された電気電子部品は、例えば、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、太陽光パネル、電動工具、自動車、バイクなどに使用することができる。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例に基づいて、二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されない。
【0046】
実施例及び比較例において使用する原料を以下に示す。
【0047】
[ポリオール(A)]
・ポリブタジエンポリオール1:水酸基価47mgKOH/g、製品名:Poly bd R-45HT、出光興産(株)製
・ポリブタジエンポリオール2:水酸基価107mgKOH/g、製品名:Poly bd R-15HT、出光興産(株)製
・ポリブタジエンポリオール3:水酸基価49mgKOH/g、製品名:KRASOL LBH-2000、クレイバレー社製
・水添ポリブタジエンポリオール:水酸基価49mgKOH/g、製品名:KRASOL H-LBH-2000、クレイバレー社製
・ひまし油系ポリオール:水酸基価120mgKOH/g、製品名:HS2G-120、豊国製油(株)製
・ポリエーテルポリオール:水酸基価160mgKOH/g、製品名:G-1000、第一工業製薬(株)製
【0048】
[テルペン樹脂(B)]
・テルペン樹脂1:リモネン・スチレン共重合体、有効成分50質量%、製品名:YSレジンLP、ヤスハラケミカル(株)製
・テルペン樹脂2:ピネン・ジペンテン共重合体、有効成分80質量%、製品名:ダイマロン、ヤスハラケミカル(株)製
・テルペン樹脂3:フェノール・α-ピネン共重合体、有効成分100質量%、製品名:YS POLYSTER T80、ヤスハラケミカル(株)製
【0049】
[比較用樹脂]
・石油樹脂:東ソー(株)製、製品名:ペトロタック
[触媒]
・スズ系触媒:製品名:ネオスタンU-810、日東化成(株)製
【0050】
[ポリイソシアネート(C)]
・ポリイソシアネート1:ポリメリックMDI、製品名:ミリオネートMR-200、東ソー(株)製
・ポリイソシアネート2:カルボジイミド変性MDI、製品名:ルプラネートMM103、BASF INOAC ポリウレタン(株)製
・ポリイソシアネート3:イソシアヌレート変性HDI、製品名:デュラネートTPA-100、旭化成(株)製
【0051】
[実施例1~14及び比較例1~4]
下記表1および表2に示す配合(質量部)により、各実施例及び各比較例の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1および表2に示す第1成分を所定量秤量し、適宜熱をかけて溶かし込みながら攪拌混合を行い、混合後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整した第2成分(ポリイソシアネート(C))を表1および表2に記載のとおりに加えて攪拌混合し、脱泡した。
【0052】
各二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物について、相溶性、密着性、および誘電率を測定・評価した。測定・評価方法は以下のとおりである。
【0053】
[相溶性]
第1成分を混合した後の液の様子を確認して、テルペン樹脂または比較用樹脂とポリオール(A)との相溶性を、下記基準により評価した。
A:透明
B:若干の濁りあり
C:濁りあり
D:30分以上経過後に分離発生
E:30分未満で分離発生
【0054】
[密着性]
市販されているFR-4エポキシ基板上に、上記脱泡後の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を直径1cmほど垂らし、80℃にて16時間(一晩)養生し、硬化させた。硬化後のポリウレタン樹脂とエポキシ基板上の境目を狙い、カッターナイフにて樹脂を斫り、基板上に残ったポリウレタン樹脂を目視によって確認した。評価は、凝集破壊をポリウレタン樹脂部分が基板上に残っている状態、界面剥離を基板上からポリウレタン樹脂がはがれてしまう状態とし、両状態が混在している際は、その面積割合に応じて下記基準により評価を行った。
A:凝集破壊100%
B:凝集破壊が75%以上100%未満、界面剥離が0%超25%以下
C:凝集破壊が50%以上75%未満、界面剥離が25%超50%以下
D:凝集破壊が25%以上50%未満、界面剥離が50%超75%以下
E:凝集破壊が25%未満、界面剥離が75%以上
【0055】
[誘電率]
上記脱泡後の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物を厚み3mmの金型に流し、80℃にて16時間(一晩)養生し、3mm厚の樹脂シートを作製した。該樹脂シートを50mm×50mm×3mmのシートに切り分け、測定用サンプルとした。測定は、アジレント・テクノロジー(株)製の装置(本体の型式:E4980A、名称:Precision LCR Meter。電極部分の型式:16451B、名称:DIELECTRIC TEST FIXTURE)を用いて実施し、周波数1MHz時の誘電率(比誘電率)の値を測定した。
【0056】
【0057】
【0058】
結果は表1および表2に示すとおりである。テルペン樹脂ではなく石油樹脂を用いた比較例1では、ポリブタジエンポリオールとの相溶性が悪く第1成分が分離したため、密着性および誘電率の評価は実施しなかった。樹脂を配合していない比較例2では、基板に対する密着性に劣っていた。ポリブタジエンポリオールの代わりにひまし油系ポリオールを用いた比較例3では、ひまし油系ポリオールとテルペン樹脂との相溶性が悪く第1成分が分離したため、密着性および誘電率の評価は実施しなかった。一方、比較例4では、ポリブタジエンポリオールとテルペン樹脂を併用したものの、ポリオール中のポリブタジエンポリオールの比率が少なく、密着性に劣っており、また誘電率が比較例2よりも上昇した。これに対し、実施例1~14であると、ポリオールとテルペン樹脂との相溶性が良好であり、また比較例2に対して低誘電特性を維持しながら基板との密着性に優れていた。
【0059】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
前記テルペン樹脂が、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、およびテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の二液硬化型ポリウレタン樹脂組成物。