(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135798
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】固体撮像装置、カバーガラスの製造方法及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20220908BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20220908BHJP
H04N 5/357 20110101ALI20220908BHJP
【FI】
H01L27/146 D
G02B1/118
H04N5/357 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035856
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 昭一
【テーマコード(参考)】
2K009
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
2K009AA01
2K009AA12
2K009BB02
2K009DD12
4M118AA05
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA02
4M118CA34
4M118FA06
4M118GC08
4M118GC11
4M118GC14
4M118GD04
4M118HA02
4M118HA12
4M118HA25
5C024CX01
5C024CY47
5C024CY48
5C024EX43
5C024EX51
5C024GY31
(57)【要約】
【課題】フレアの発生を低減するとともに、チップサイズ縮小化にも適用することのできる汎用性の高いキャビティレスCSP構造のフレア防止構造を有する固体撮像装置、カバーガラスの製造方法及び電子機器を提供する。
【解決手段】入射光を受光して電気信号に変換する複数の画素を配列したセンサ基板と、上面にセンサ基板を載置し、画素が変換した電気信号を下面に配設したバンプや外部接続端子に接続可能に構成した半導体基板と、センサ基板の上面に各画素に対応して配設されたマイクロレンズアレイと、マイクロレンズアレイの上面に配設された樹脂と、樹脂を介してマイクロレンズアレイに接着され、その表面にモスアイ構造を形成したカバーガラスと、を有するよう構成した。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を受光して電気信号に変換する複数の画素を配列したセンサ基板と、
上面に前記センサ基板を載置し、前記画素が変換した前記電気信号を下面に配設したバンプや外部接続端子に接続可能に構成した半導体基板と、
前記センサ基板の上面に前記各画素に対応して配設されたマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイの上面に配設された樹脂と、
前記樹脂を介して前記マイクロレンズアレイに接着され、その表面にモスアイ構造を形成したカバーガラスと、
を有する固体撮像装置。
【請求項2】
前記樹脂は低屈折率材料で形成された請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記半導体基板と前記マイクロレンズアレイの間にはカラーフィルタ及び吸収型の赤外カットフィルタが配設された請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記カバーガラスの表面に形成された前記モスアイ構造は、前記カバーガラスの表面に複数の微小突起が形成され、前記カバーガラスの上面に配列された請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記微小突起は、大きさが不揃いで、配列が不規則にされた請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記微小突起は、可視光波長域の(1/1.6)λ(240nm)以下のサイズで配列された請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記カバーガラスの表面に形成された複数の微小突起の上面は折れ防止のために薄膜で被覆された請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
カバーガラスの上面に、粒径の揃った又は不揃いな単粒子を略均一に散布して単粒子膜を形成する工程と、
前記単粒子膜をエッチングマスクとして前記カバーガラスを気相エッチングすることにより前記カバーガラスの上面に大きさの揃った又は不揃いな微小突起を多数形成する工程と、
を有するモスアイ構造のカバーガラスの製造方法。
【請求項9】
入射光を受光して電気信号に変換する複数の画素を配列したセンサ基板と、
上面に前記センサ基板を載置し、前記画素が変換した前記電気信号を下面に配設したバンプや外部接続端子に接続可能に構成した半導体基板と、
前記センサ基板の上面に前記各画素に対応して配設されたマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイの上面に配設された樹脂と、前記樹脂を介して前記マイクロレンズアレイに接着され、その表面にモスアイ構造を形成したカバーガラスと、
を有する固体撮像装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャビティレスCSP構造を有するCCDやCMOSイメージセンサ(CIS)等の固体撮像装置、これに使用するカバーガラスの製造方法及び当該固体撮像装置を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学センサの簡易なパッケージ方法として、チップスケールパッケージ(Chip Scale Package:以下、「CSP」という。)構造が提案され、このCSP構造を有する光学センサが量産されている。CSP構造は、これまでのセラミックスやモールド樹脂で形成しているキャビティパッケージのように個片化したベアチップをサブストレートなどの上でボンディングによって接続されて形成されるのと異なる。
【0003】
具体的には、ウェハー単位で隣接チップとの間を樹脂で隔壁を設けてキャビティ(Cavity)構造を形成した状態でカバーガラスとセンサ部のSiウェハーとが貼り合わされる。そして、センサ面の反対側の面に再配線が行われ、貫通ビア(スルーシリコンビア:Thru Silicon Via、以下、「TSV」という。)を形成することにより、センサ部と、その反対側の面に設けられたバンプや外部接続端子であるハンダボール等に電気的に接続される。そして最終的にダイシングにて個片化されることにより形成される。
【0004】
したがって、CSP構造では、光学センサの受光部とカバーガラスとの間に空隙が形成される。
このようにCSP構造は、センサチップの前面と裏面間を貫通するTSVにより、センサチップとバンプや外部接続端子等とを接続することでワイヤーボンドによる配線をなくし、クリーンルーム内においてウェハー状態でカバーガラスを貼り合わせることにより構成することができる。
このために、CSP構造は、従来のCOB(Chip On Board)タイプのパッケージと比較して、小型化、低コスト化、ダストレス化を実現することができる。
【0005】
しかしながら、CSP構造は、TSVを形成するために、チップの厚みを薄くする必要がある。しかし上記のようにカバーガラスとセンサチップ(光学センサ)との間に空隙が存在するために、はんだリフローなどの加熱プロセスを通すと、熱応力の影響を受けてセンサチップが反ってしまうおそれがある。
【0006】
そこで、このような問題を解決する方法として、カバーガラスとセンサチップ(光学センサ)との間の空隙を樹脂で埋めて空隙を持たないCSP構造(キャビティレス(Cavity less)CSP構造)が提案され実用化されている。
【0007】
このような空隙を有していないキャビティレスCSP構造を採用することにより、空隙を有するCSP構造の空隙内で発生していた熱応力を大幅に低減することができ、反りの発生を抑えることができる。
【0008】
すなわち、シリコン(Si)の半導体基板の機械的剛性が弱いために発生する反りは、キャビティレスCSP構造では、300~800μmの厚いカバーガラスとSiの半導体基板を貼り合わせて一体化されるため、カバーガラスの剛性も加わって機械的剛性が高くなる。これにより、反りを生じなくすることができる。
【0009】
しかし、キャビティレスCSP構造では、カバーガラスと半導体基板を樹脂で貼り合わせて一体化することにより、半導体基板上に形成された光学センサに照射された光が反射されると、樹脂を通過した光は、樹脂とカバーガラスの屈折率の値が近いため、そのままカバーガラスに入射する。そして、入射した光がカバーガラスの上面の空気との境界に到達すると、空気とカバーガラスとの屈折率の違いにより、カバーガラスの上面でカバーガラス内に全反射される。この結果、反射光は再び光学センサの方向に進んでくる。ここで、カバーガラスと半導体基板を貼り合わせた樹脂や赤外カットフィルタの屈折率はカバーガラスの屈折率に近いため、そこで反射することなくそのままマイクロレンズアレイに入射する。センサチップの画素は、この入射光を画像信号としてとらえて電気信号に変換する。
【0010】
このように、光学センサの内部で反射した不要な入射光を、画素が光電変換することによりコントラストが低くなって全体的に画像が白っぽくなるフレア現象や、光学センサの内部で反射した不要な入射光を光電変換することにより光の輪や玉状になって現れるゴースト(偽画像)現象を生じるという問題がある。
【0011】
特許文献1には、カバーガラス上面において、左右方向又は前後方向に対して平行な溝を周期的に並べた構造とすることにより、反射光を回折し、これにより光学センサに入射される反射光を防止する固体撮像装置及び電子機器に関する技術が開示されている。
本技術では、半導体基板の上面にて複数の画素が配列された画素領域に入射光が入射し回折されることで生じた反射回折光を、回折格子が回折する。これにより、反射回折光の一部が回折格子から半導体基板が設けられた側へ反射せずに、半導体基板が設けられた側とは反対側へ、その反射回折光の一部が透過するよう形成されている。
【0012】
特許文献2には、反りを抑制でき、しかもフレアの発生を抑制でき、明るい光源が視野内に入った場合であってもフレアが目立つことのない良質の画像を得ることが可能な撮像装置およびカメラモジュールに関する技術が開示されている。
本技術では、受光部を含む光学センサと、光学センサの受光部側を保護するためのシール材と、少なくとも受光部とシール材のこの受光部との対向面である第1面間に形成された中間層と、膜に斜めに入射する光の入射角度に応じてカットオフ波長が短波側にシフトする制御膜と、を有している。そして、制御膜は、シール材の受光部との対向面である第1面に形成された第1の制御膜と、シール材の第1面と反対側の第2面に形成された第2の制御膜と、を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013-38164号公報
【特許文献2】特開2010-41941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示された固体撮像装置及び電子機器に関する技術は、反射をなくするために、カバーガラスに左右方向又は前後方向に対して平行な溝を適切な寸法に周期的に形成するために高精度な加工を行う必要がある。また、このような加工を行ったカバーガラスを貼り合わせる加工も必要とするため生産性を改善するうえでの課題がある。また、このように規則的な溝を形成しているために、特定の波長や特定の角度から入射された光に対しては、逆に回析光が光学センサに入ってくるおそれもある。
【0015】
特許文献2に開示された撮像装置及びカメラモジュールに関する技術は、カバーガラスと光学センサとの面間を埋める制御膜の屈折率(1.5前後)との間ではオンチップマイクロレンズアレイの集光力が弱くなり、光学センサの感度が落ちてしまうという問題がある。このため、キャビティレスCSP構造では、OCLをSiNなどの高屈折率1.7~2.1を有する材料で形成することで集光力を落とさないような構造を実現することが考えられるが、上記のキャビティレスCSP構造では通常のセンサパッケージ構造では生じることのなかったフレア(偽画像)光が発生するという問題がある。
【0016】
そこで、制御膜をカバーガラスの上下両面に設け屈折率を調整する対策が実施されている。しかしながら、このように制御膜をカバーガラスの上下両面に積層することとなるため微細化に適さないという問題がある。また、片面に成膜したのでは成膜ストレスで大きな反りが発生し、半導体基板との貼り合わせや貼り合わせ装置のトラブルが発生しやすくなるという問題がある。
【0017】
本開示は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、フレアやゴーストの発生を防止するとともに、チップサイズの縮小化にも適用することのできる汎用性の高い固体撮像装置、カバーガラスの製造方法及び当該固体撮像装置を有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の態様は、入射光を受光して電気信号に変換する複数の画素を配列したセンサ基板と、上面に前記センサ基板を載置し、前記画素が変換した前記電気信号を下面に配設したバンプや外部接続端子に接続可能に構成した半導体基板と、前記センサ基板の上面に前記各画素に対応して配設されたマイクロレンズアレイと、前記マイクロレンズアレイの上面に配設された樹脂と、前記樹脂を介して前記マイクロレンズアレイに接着され、その表面にモスアイ構造を形成したカバーガラスと、を有する固体撮像装置である。
【0019】
また、第1の態様において、前記樹脂は低屈折率材料で形成されてもよい。
【0020】
また、第1の態様において、前記半導体基板と前記マイクロレンズアレイの間にはカラーフィルタ及び吸収型の赤外カットフィルタが配設されてもよい。
【0021】
また、第1の態様において、前記カバーガラスの表面に形成された前記モスアイ構造は、前記カバーガラスの表面に複数の微小突起が形成され、前記カバーガラスの上面に配列されてもよい。
【0022】
また、この第1の態様において、前記微小突起は、大きさが不揃いで、配列が不規則にされてもよい。
【0023】
また、この第1の態様において、前記微小突起は、可視光波長域の(1/1.6)λ(240nm)以下のサイズで配列されてもよい。ただし、「λ」は光の波長である。
【0024】
また、この第1の態様において、前記カバーガラスの表面に形成された複数の微小突起の上面は、折れ防止のために薄膜で被覆されてもよい。
【0025】
また、第2の態様は、カバーガラスの上面に、粒径の揃った又は不揃いな単粒子を略均一に散布して単粒子膜を形成する工程と、前記単粒子膜をエッチングマスクとして前記カバーガラスを気相エッチングすることにより前記カバーガラスの上面に大きさの揃った又は不揃いな微小突起を多数形成する工程と、を有するモスアイ構造のカバーガラスの製造方法である。
【0026】
また、第3の態様は、入射光を受光して電気信号に変換する複数の画素を配列したセンサ基板と、上面に前記センサ基板を載置し、前記画素が変換した前記電気信号を下面に配設したバンプや外部接続端子に接続可能に構成した半導体基板と、前記センサ基板の上面に前記各画素に対応して配設されたマイクロレンズアレイと、前記マイクロレンズアレイの上面に配設された樹脂と、前記樹脂を介して前記マイクロレンズアレイに接着され、その表面にモスアイ構造を形成したカバーガラスと、を有する固体撮像装置を有する電子機器である。
【0027】
上記の態様を取ることにより、固体撮像装置のフレアやゴーストの発生を低減することができる。
【0028】
本開示によれば、チップサイズの縮小化にも適用することのできる汎用性の高いキャビティレスCSP構造のフレア防止構造を有する固体撮像装置、モスアイ構造のカバーガラスの製造方法及び当該固体撮像装置を有する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】固体撮像装置を用いたカメラの構成を示す構成図である。
【
図2】キャビティCSP構造の固体撮像装置の構成を示す模式断面図である。
【
図3】キャビティCSP構造におけるカバーガラス上面の反射を説明するための図である。
【
図4】キャビティレスCSP構造の固体撮像装置の構成を示す模式断面図である。
【
図5】キャビティレスCSP構造のカラーフィルタのレイアウトを示す平面図である。
【
図6】キャビティレスCSP構造におけるフレアの発生を説明する図である。
【
図7】キャビティレスCSP構造におけるカバーガラス上面の反射を説明するための図である。
【
図9】カバーガラスに入射した光の屈折と反射及び屈折率の変化を説明するための図である。
【
図10】モスアイ構造のカバーガラスに入射した光の屈折率の変化を示す図である。
【
図11】モスアイ構造のカバーガラスの第1実施形態の表面構造を示す平面図である。
【
図12】カバーガラスの上面にモスアイ構造を形成した固体撮像装置の第1実施形態の構造を示す模式断面図である。
【
図13】モスアイ構造のカバーガラスに入射した光の屈折と反射を説明するための概略模式断面図である。
【
図14】モスアイ構造のカバーガラスの第2実施形態の表面構造を示す平面図である。
【
図15】カバーガラスの上面にモスアイ構造を形成した固体撮像装置の第2実施形態に係る固体撮像装置に入射した光の反射を説明するための概略模式断面図である。
【
図16】モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第1実施形態の工程を説明するための断面図である(その1)。
【
図17】モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第1実施形態の工程を説明するための断面図である(その2)。
【
図18】モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第2実施形態の工程を説明するための断面図である(その1)。
【
図19】モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第2実施形態の工程を説明するための断面図である(その2)。
【
図20】本開示に係る固体撮像装置を有する電子機器の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照して、本開示を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)を下記の順序で説明する。以下の図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は、模式的なものであり、各部の寸法の比率等は現実のものとは必ずしも一致しない。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることは勿論である。
1.固体撮像装置を用いたカメラの要部構成例
2.固体撮像装置の要部構成
3.フレア防止構造を有する固体撮像装置の第1実施形態
4.フレア防止構造を有する固体撮像装置の第2実施形態
5.モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第1実施形態
6.モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第2実施形態
7.固体撮像装置を有する電子機器の構成例
【0031】
<1.固体撮像装置を用いたカメラの要部構成例>
図1は、固体撮像装置1を用いたカメラ40の構成を示す構成図である。
図1に示すように、カメラ40は、固体撮像装置1と、光学系42と、制御部43と、信号処理部44とを有する。光学系42は、結像レンズなどの光学部材を含み、入射光Hを、固体撮像装置1の画素領域PA(
図2、
図4及び
図12の固体撮像装置1の構造を示す模式断面図を参照)へ集光し結像するように配置されている。
【0032】
固体撮像装置1は、
図2に示すように、画素領域PA上に結像された光学系42からの被写体像に対応した光信号を電気信号に変換する装置である。すなわち、被写体像からの入射光Hを、光学系42を介して固体撮像装置1の画素領域PAで受光して光電変換することによって、被写体像の画素22に対応した信号電荷を生成する。固体撮像装置1には、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサチップ、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサチップ含む。
【0033】
制御部43は、各種の制御信号を固体撮像装置1と信号処理部44に出力し、固体撮像装置1と信号処理部44を制御してカメラ40を駆動させる制御装置である。固体撮像装置1は、制御部43から出力される制御信号に基づいて駆動される。すなわち、制御信号に基づき固体撮像装置1に蓄積された信号電荷を順次読み出し、電気信号として出力する。信号処理部44は、固体撮像装置1から出力された電気信号について信号処理を実施することによって、例えば、カラーデジタル画像を生成する。
【0034】
<2.固体撮像装置の要部構成>
図2は、キャビティCSP構造の基本的な構成を示す模式的断面図である。キャビティCSP構造の固体撮像装置1は、
図2に示すように、受光部21と、カバーガラス3とを含み、受光部21と、カバーガラス3とは、互いに対向して配置されている。また、受光部21とカバーガラス3とは、光学センサ2の受光部21を除く周縁部においてシール樹脂8を介して貼り合わされている。したがって、本図に示す固体撮像装置1は、カバーガラス3と受光部21との間に空隙5が設けられている。このような、空隙5を有するために、「キャビティ構造」と呼ばれている。
【0035】
図3は、キャビティCSP構造におけるカバーガラス3上面の反射を説明するための図である。カラー画像の撮像は、上方からカバーガラス3、を介して被写体像として入射する可視光域の入射光Hを、光学センサ2の画素領域PAの各画素22が受光することで行われる。
【0036】
光学センサ2とカバーガラス3との間に空隙5を有するキャビティCSP構造では、カバーガラス3の屈折率の方が空気の屈折率よりも大きい。このために、
図3に示すように、臨界角θcよりも大きな角度で入射した入射光Hは、カバーガラス3の下面3aに当たると、カバーガラス3と空気の境界面3aでカバーガラス3側に全反射し、反射光Xとなる。反射光Xは、カバーガラス3の上面3bに向かって進み、上面3bで再反射し、再反射光Yとなる。再反射光Yは、カバーガラス3の下面3cに向かって進み、下面3cで再反射する。このようにして、カバーガラス3上面3bで透過しない反射光Xは、カバーガラス3の下面3cでも全反射を起こす。このため反射光Xは、光学センサ2の受光部21には戻ってこない。なお、臨界角θcについては後述する。
【0037】
したがって、キャビティCSP構造では、キャビティレスCSP構造に比べてフレアやゴーストはそれほど大きな問題とはならない。
【0038】
図4は、キャビティレスCSP構造の固体撮像装置1の構成を示す模式的断面図である。固体撮像装置1は、本図に示すように、受光部21と、カバーガラス3とを含み、受光部21と、カバーガラス3とは、互いに対向して配置されている。また、本図に示すように、受光部21とカバーガラス3との間には、樹脂4が介在しており、樹脂4を介して両者が貼り合わされている。このように、
図4に示す固体撮像装置1は、カバーガラス3と受光部21との間には、空隙5は設けられていない。このように、空隙5を有していないために、「キャビティレス構造」と呼ばれている。
【0039】
図4に示す固体撮像装置1において、受光部21は、例えば、CMOSイメージセンサチップであり、半導体基板6を含む。半導体基板6は、例えば、単結晶シリコンで形成されている。半導体基板6の上面にはセンサ基板10が配設され、センサ基板10のカバーガラス3と対向する側の面である上面(表面)には、本図に示すように、画素領域PAと周辺領域SAとが設けられている。
【0040】
画素領域PAには、複数の画素22がマトリクス状に配列されて、これらの画素22の集合体が全体として被写体像を形成する。したがって、被写体の画像の解像度は、画素22の数によって決まり、画素22の数が多いほど画像の解像度は高くなる。画素22は、光学系42によって結像された被写体像の一部分を構成する光信号をそれぞれ電気信号に変換する光電変換素子である。光電変換素子は、例えば、フォトダイオードであり、外付けの撮像レンズを含む光学系42を介して被写体像として入射する光を受光面で受光し、光電変換することで信号電荷を生成する。
【0041】
複数の画素22のそれぞれの上面には、複数の画素22を覆うようにカラーフィルタ11が形成されている。カラーフィルタ11は、色の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタ11が、例えば
図5の平面図に示すように、ベイヤー(Bayaer)配列をもってオンチップカラーフィルタ(OCCF:On Chip Color Filter)としてアレイ状に形成されている。なお、カラーフィルタ11の配列パターンはベイヤーパターンに限定されるものではない。
【0042】
また、カラーフィルタ11に重なるように、吸収型の赤外カットフィルタ(IR Cut Filter)12を設けてもよい。吸収型の赤外カットフィルタ12は、所定の波長以上の赤外線を吸収するため赤外光が反射することはない。このため、反射された赤外線が再反射して、例えば、「赤玉ゴースト」と呼ばれる赤色のゴーストが撮像画像に顕著に発生することを抑制することができる。
【0043】
カラーフィルタ11の上面には、直接に、又は赤外カットフィルタ12を介して、それぞれの画素22が集光するためのマイクロレンズアレイ23が設けられている。さらに、マイクロレンズアレイ23の上面には、マイクロレンズアレイ23を被覆するように、樹脂4が設けられている。
樹脂4は、受光部21とカバーガラス3との間に介在している。すなわち、両者は樹脂4を介して貼り合わされている。
【0044】
周辺領域SAは、画素領域PAを囲繞するように周りを取り囲んだ領域である。周辺領域SAには、画素22から画像信号を外部へ取り出し、バンプ7へ接続するための配線層等が形成されている。そして、半導体基板6の下面(裏面)には、
図4に示すように、バンプ7が設けられ、TSVにより半導体基板6の内部に形成された配線層と接続されている。
【0045】
センサ基板10は、
図4に示すように、上方からカバーガラス3、樹脂4を介して被写体像として入射する可視光域の入射光Hを、画素領域PAの各画素22が受光することで、カラー画像を撮像する。
【0046】
キャビティレスCSP構造の固体撮像装置1は、以上説明したように空隙(キャビティ)5を有しておらず、半導体基板6及びセンサ基板10とカバーガラス3とを樹脂4を介して全面を貼り合わせて一体化している。これにより反りに対する強度を維持できるとともに、半導体基板6及びセンサ基板10のウエファを薄型化することができる。また、センサ基板10と半導体基板6間のワイヤボンディングも不要となるため、空隙5であるキャビティも不要となり、パッケージそのものも薄型化できる。さらに組み立てた後に個片化すればよいのでコスト低減を実現することができる。
【0047】
<3.フレア防止構造を有する固体撮像装置の第1実施形態>
[フレア及びゴースト現象の発生原因]
しかし、先に説明したように、キャビティレスCSP構造の固体撮像装置1においては、受光部21の画素領域PAにマトリクス状に周期性をもって配列された画素22やマイクロレンズ23によって生ずる反射光Xに起因して、撮像画像にフレアやゴーストが発生し、画像品質が低下する問題がある。具体的には、
図6に示すように、複数の画素22のそれぞれに対応して周期的に配置されたマイクロレンズアレイ23に入射光Hが被写体像として上方から入射した場合には、その光が反射する。そして、その反射光Xは、半導体基板6の上方に配設されている赤外カットフィルタ12などの部材を通過し、カバーガラス3の上面の空気との境界3bに達すると、そこで再反射される。再反射光Yは、再びカバーガラス3を通過してマイクロレンズアレイ23に入射する。画素22は、当該再反射光Yに応答して電気信号に変換することにより、撮像画像にフレアやゴーストが発生する。
【0048】
キャビティレスCSP構造でフレアやゴーストが発生する要因について、さらに詳しく説明する。
図6に示すように、入射光Hがカバーガラス3に垂直に照射されると、入射光Hはカバーガラス3を通過して受光部21に照射される。受光部21に照射された光は、受光部21に周期性をもって配列されたマイクロレンズアレイ23や画素22に入射すると、そこで反射して反射光Xとなる。反射光Xは、樹脂4及びカバーガラス3の中を通過してカバーガラス3の上面3bに到達する。ここで、反射光Xがカバーガラス3に臨界角θcよりも小さな入射角で入射したときは、カバーガラス3の上面3bにおいて透過光Zとなって空気中に抜けていく。
【0049】
また、反射光Xがカバーガラス3に臨界角θcよりも大きな入射角で入射したときは、カバーガラス3の上面3bにおいて再反射し、再反射光Yとなって再び受光部21の方向に進んでくる。
再反射光Yは、カバーガラス3及び樹脂4に対して臨界角θcよりも大きな入射角で入射した光である。再反射光Yは、再びカバーガラス3及び樹脂4を通過して受光部21に入射する。受光部21の画素22は、この再反射光Yを画像信号としてとらえて電気信号に変換する。その結果、フレアやゴーストを生じることとなる。
【0050】
なお、臨界角θcとは、全反射の始まる入射角のことである。すなわち、臨界角θcよりも小さな角度で入射すると、入射光は透過し、臨界角θcよりも大きな角度で入射すると、入射光は反射される。臨界角θcは、
θc=arcsin(n2/n1)で求められる。
ここで、n1は、入射元の物質の屈折率、n2は進行先の物質の屈折率である。
図6の例では、空気の屈折率は「1」であるから、n1=1とおくと、θc=arcsin(n2)となる。すなわち、n2=sinθcとなり、n2=nとおけば、n=sinθcとなって、カバーガラス3の屈折率nが求められる。以下の説明では、空気の屈折率を1、カバーガラス3の屈折率をnとして説明する。
また、厳密には、カバーガラス3の上面3bと空気との境界においてすべての光が反射されるのではなく、一部の光はカバーガラス3を透過する。その理由は、光の波長によって臨界角θcの値が異なるためである。しかし、本明細書では、かかる波長の差異を捨象して説明する。
【0051】
図7は、キャビティレスCSP構造におけるカバーガラス3の上面の反射を説明するための図である。キャビティレスCSP構造では、カバーガラス3とセンサ基板10及び半導体基板6とが、樹脂4を介して貼り合わせて一体化されている。これにより、センサ基板10上に形成された受光部21への入射光Hが反射されると、樹脂4を通過した反射光Xは、樹脂4とカバーガラス3の屈折率の値が近いため、そのままカバーガラス3に入射する。そして、反射光Xがカバーガラス3の空気との境界である上面3bに到達すると、空気とカバーガラス3との屈折率の違いにより、カバーガラス3内に再反射される。この結果、再反射光Yは再び受光部21の方向に進んでくる。
【0052】
ここで、樹脂4や赤外カットフィルタ12の屈折率は、カバーガラス3の屈折率に近いため、再反射光Yはそこで反射することなく、そのままマイクロレンズアレイ23に入射する。画素22は、この再反射光Yを画像信号としてとらえて電気信号に変換する。その結果、フレアやゴーストを生じる。
【0053】
[第1実施形態]
そこで、フレアやゴーストの発生を防止する構造を有する固体撮像装置1の第1実施形態について以下に説明する。
撮像画像にフレアやゴーストが発生することを防止するための技術の一態様は、
図8に示すように、カバーガラス3の上面の表面部分に底面に対して上に行くほど先細くなるよう形成した略三角錐又は略釣鐘状の微小突起30(モスアイ構造)を形成し、光学センサ2における反射光Xがカバーガラス3の上面3bで再反射することを抑制するよう構成したものである。
【0054】
蛾の目が複眼構造であることは、一般に知られている。すなわち、蛾の複眼は、多数の略六角形をなす個眼群の集合体であり、それぞれの略六角形は、さらに多数の個眼が配列されて構成されている。そして、この個眼の表面は、さらに微小突起が並んだ集合体で形成されている。この微小突起は一般に略釣鐘状をしていて、高さは200~250nm、間隔は200nmくらいである。そこで、蛾の複眼の構造にならって、このような構造を「モスアイ構造」と呼んでいる。モスアイ構造は、このような構造であるため、光の反射防止効果を有している。すなわち、このような構造は、蛾が暗い所にいるときに光を受けても眼が反射して発光しないため、捕食されるのを避けるのに都合がよいとされている。
【0055】
本開示は、このようなモスアイ構造をフレア防止に応用するものである。この場合における微小突起のサイズは、光学設計の考え方によれば、以下のとおりである。すなわち、カバーガラス3の表面に、傾斜構造の断面を有する微小突起30を多数形成した場合、そのピッチは、可視光波長域の(1/1.6)λ(240nm)以下、深さを少なくとも50nm以上、好ましくは152nm以上、より好ましくは380nm以上、さらに好ましくは760nm以上にすることが好ましい。このように形成すると、深さ方向に屈折率が連続的に変化する無数の層が存在することと等価となり、フレネル反射が起こらなくなる。
【0056】
光の反射は、主としてその入射面の屈折率の急激な変化により生じる。すなわち、
図9Aに示すように、入射光Hがカバーガラス3に入射角θ1で入射すると、入射角θ1が臨界角θcより大きい場合は、カバーガラス3の上面で反射光Xとなる。また、入射角θ1が臨界角θcより小さい場合は、屈折角θ2で透過光Zとなってカバーガラス3を透過する。反射光Xとなるのは、
図9Bに示すように、空気とカバーガラス3の境界において屈折率が1からnにいきなり変化するからである。つまり、入射光Hから見ると屈折率が不連続になっている。この屈折率が不連続になっている境界面で光が反射する。ここで、カバーガラス3の屈折率nは、スネルの法則より、
n=sinθ1/sinθ2 で求められる。
【0057】
したがって、入射光Hが、カバーガラス3に入射する境界において屈折率が連続的に滑らかに変化するような構造であれば、入射光Hは反射しないことになる。つまり、微小突起30を可視光の波長以下のサイズに形成することで、入射光Hの反射を限りなくゼロにすることができる。そこで、フレア抑制のために光の反射防止効果を有するモスアイ構造を応用することが考えられる。
【0058】
次に、モスアイ構造により光の反射防止をすることができる原理について、以下に説明する。
図10Aは、モスアイ構造の断面模式図である。また、
図11は、
図10Aに係るモスアイ構造の平面図である。ここでは説明の便宜上、モスアイ構造の微小突起30は頂点を鋭角とする2等辺三角形が横方向に複数個配列された例について説明する。
【0059】
図10Aにおいて、上方から入射光Hがモスアイ構造に照射されると、微小突起30の2等辺三角形の谷間を経由してカバーガラス3内を通過する。このように構成されたカバーガラス3の屈折率はn、空気の屈折率は1である。ここで、屈折率1の空気中を通過した入射光Hがカバーガラス3のモスアイ構造の微小突起30に到達すると、
図10Bに示すように、モスアイ構造の屈折率は、微小突起30の頂点においては空気と同様に1である。
【0060】
しかし、入射光Hが林立する微小突起30の深奥に達するにつれて屈折率はカバーガラス3の屈折率nに近づいてくる。そして、林立する微小突起30の谷間を通過すると、その通過点における屈折率は、カバーガラス3の屈折率であるnになる。すなわち、入射光Hが、空気からカバーガラス3に抜ける場合は、
図10Bに示すように、屈折率が1からnに連続的に変化する。この逆に、入射光Hが、カバーガラス3から空気に抜ける場合も同様に屈折率がnから1に連続的に変化する。
【0061】
以上説明したように、表面がモスアイ構造に形成されたカバーガラス3の屈折率は、
図10Bに示すように、屈折率1からnの間が不連続になることなく、屈折率1からnに向かって連続的に変化することがわかる。モスアイ構造は、このように空気とカバーガラス3との屈折率を1からnに渡って連続的に変化するように形成したものである。
したがって、モスアイ構造を通過する光は屈折率の不連続な部分がないため、反射をすることなくそのまま通過する。これが、本開示に係る技術であるキャビティレスCSP構造を有する固体撮像装置1の原理である。また、カバーガラス3の表面に形成されたモスアイ構造の上面は、微小突起30の折れ防止のために薄膜9で被覆してもよい。被覆する薄膜9は、例えば2酸化シリコン(SiO2)を125nm以上の膜厚に形成するのが望ましい。
【0062】
次に、モスアイ構造を採用したキャビティレスCSP構造を有する固体撮像装置1について説明する。
図12は、カバーガラス3の上面にモスアイ構造を形成した固体撮像装置1の構造を示す断面図である。本図において、受光部21と、カバーガラス3とを含み、受光部21と、カバーガラス3とは、互いに対向して配置されている。また、本図に示すように、受光部21とカバーガラス3との間には、樹脂4が介在している。そして、樹脂4を介して、受光部21とカバーガラス3の全面が貼り合わされている。本図に示す固体撮像装置1は、「キャビティレス構造」である。つまり、受光部21とカバーガラス3との間には、全面に樹脂4が介在しているため空隙5であるキャビティは設けられていない。
【0063】
固体撮像装置1において、受光部21は、例えば、CMOSイメージセンサチップであり、
図4に示すように、半導体基板6を含む。半導体基板6は、例えば、単結晶シリコンで形成されている。カバーガラス3と対向する半導体基板6の上面(表面)には、
図12に示すように、画素領域PAと周辺領域SAとが設けられている。
【0064】
画素領域PAには、複数の画素22がマトリクス状に配列されて、これらの画素22の集合体が全体として被写体像を形成する。また、複数の画素22のそれぞれの上面には、複数の画素22を覆うようにカラーフィルタ11が形成されている。
【0065】
なお、カラーフィルタ11や、それぞれの画素22が集光するためのマイクロレンズアレイ23が設けられている点、周辺領域SAと画素領域PAを設けている点、画像信号を外部へ取り出すために半導体基板6の下面(裏面)には、バンプ7が設けられてTSVにより配線層と接続されている点は、前記の
図4において説明した一般的な「キャビティレス構造」と同様であるため説明を省略する。
【0066】
ここで、何ら手当てをしない場合には、先述のとおり、樹脂4や赤外カットフィルタ12の屈折率は、カバーガラス3の屈折率に近い。このため、カバーガラス3の上面3bで反射した再反射光Yは、カバーガラス3の下面3cで反射することなく、そのままマイクロレンズアレイ23に入光する。画素22は再反射光Yに応答して電気信号に変換する。このため再反射光Yを画像信号としてとらえてしまう。その結果、フレアやゴーストを生じる。
【0067】
しかし、カバーガラス3の上面にモスアイ構造を採用することにより、入射光Hは次のように反射する。すなわち、
図13に示すように、センサ基板10上に形成された受光部21に照射された入射光Hは、受光部21のマイクロレンズアレイ23の表面で反射し、反射光Xとしてカバーガラス3に入光する。そして、カバーガラス3を通過し、カバーガラス3の上面3bに到達した反射光Xは、モスアイ構造の微小突起30を通過する。モスアイ構造における空気とカバーガラス3との屈折率は連続的であるために、カバーガラス3の上面3bでカバーガラス3内に反射されることなく、そのまま透過光Zとして空気中に抜けていく。
【0068】
このため、カバーガラス3の上面3bに到達した反射光Xが、カバーガラス3の上面3bで再反射光Yとなって光学センサ2の方向に進んでくる現象は生じない。したがって、再反射光Yがそのままマイクロレンズアレイ23に入射して画素22が画像信号としてとらえてしまうということもない。よって、フレアやゴーストの発生を抑制することができる。
以上説明したように、カバーガラス3の上面にモスアイ構造を採用することにより、フレアやゴーストの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0069】
上記実施形態では、カバーガラス3の上面にモスアイ構造を採用した例について説明したが、カバーガラス3の上面にモスアイ構造を設ける点に限定されるものではなく、カバーガラス3の下面にモスアイ構造を設けてもよい。また、カバーガラス3の上面及び下面の両面にモスアイ構造を設けてもよい。
【0070】
また、モスアイ構造は、
図10に示す実施形態では、微小突起30の形状を、頂点を鋭角とする2等辺三角形が横方向に複数個配列された例について説明したが、断面が略2等辺三角形に限定されるものではなく、略紡錘形や椎の実状、略台形状あるいは正弦波状であっても差し支えない。このような形状に形成することによって、
図10Bに示す屈折率を1からnへ直線的に変化させるのみならず、曲線的に変化させることができる。
【0071】
また、カバーガラス3の表面に形成された複数の微小突起30は、
図14の平面図に示すように、大きさが均一ではなく不揃いであることが望ましい。不揃いにすることにより屈折率も均一的な変化ではなく、さまざまな変化をするため、広い周波数帯域の波長に対してもより反射しにくくなるからである。
【0072】
また、微小突起30を不規則に配列してもよい。不規則に配列することにより屈折率も均一的な変化ではなく、さまざまな変化をするため、広い周波数帯域の波長に対してもより反射しにくくなるからである。
また、各種形状の微小突起30を取り混ぜて配列してもよい。
【0073】
<4.フレア防止構造を有する固体撮像装置の第2実施形態>
上記第1実施形態では、フレアやゴーストの発生を抑制する対策としてカバーガラス3の上面若しくは下面又は両面にモスアイ構造を設けることについて説明した。第2実施形態では、前記の第1実施形態に加えて、又は加えないで、マイクロレンズアレイ23とカバーガラス3との間に配設された樹脂4を低屈折率材料で形成するものである。
【0074】
図15は、第2実施形態に係る固体撮像装置1に入射した光の反射を説明するための概略模式断面図である。本図において、固体撮像装置1に入射した入射光Hは、受光部21を照射すると受光部21のマイクロレンズ23の半球面で入射光Hの入射角と異なる方向に反射され、反射光Xとなって樹脂4の中をカバーガラス3の方向に進む。そして、樹脂4とカバーガラス3との境界面に達すると、カバーガラス3の屈折率の方が、樹脂4の屈折率よりも大きいために、樹脂4とカバーガラス3の境界面で反射して反射光Xとなってカバーガラス3内を進む。そして、反射光Xは、カバーガラス3の上面3bの空気との境界面に達すると、全反射して、今度は再反射光Yとなって樹脂4の方向に進む。そして、再反射光Yは、カバーガラス3の下面3cの樹脂4との境界面に達すると、カバーガラス3の屈折率の方が、樹脂4の屈折率よりも大きいために、再び全反射して再反射光Yとなる。
【0075】
このようにして、反射光Xがカバーガラス3の中に入射されると、カバーガラス3の中で全反射を繰り返すため、再反射光Yは、受光部21に戻ってくることはない。以上説明したように、樹脂4の屈折率をカバーガラス3の屈折率よりも小さいものを使用することによってフレアやゴーストの発生を抑制することができる。このように、樹脂4を低屈折率の材料で形成することにより、カバーガラス3と受光部21との間に屈折率の小さい空気のような樹脂4が介在することになり、空隙5であるキャビティを設けたのと等価になる。
【0076】
また、カバーガラス3の表面をモスアイ構造とし、さらに樹脂4を低屈折率材料で形成することによって、さらにフレアやゴーストの発生を抑制する効果を奏することができる。この効果は、樹脂4の低屈折率材料の屈折率の値が小さければ小さいほど顕著となることはいうまでもない。
【0077】
<5.モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第1実施形態>
次に、モスアイ構造のカバーガラス3の製造方法について説明する。まず、カバーガラス3を準備する。次に、
図16Aに示すように、カバーガラス3の上面に単粒子50を略均一に散布して単粒子膜51を形成する。
【0078】
次に、
図16Bに示すように、単粒子膜51がエッチングマスクとなるように構成されたカバーガラス3を、気相エッチングして表面加工する(エッチング工程)。このように気相エッチングすることにより、カバーガラス3の上面に円錐状の微小突起30を多数形成することができる。具体的には、気相エッチングを開始すると、
図16Bに示すように、単粒子膜51を構成している各単粒子50の隙間をエッチングガスが通り抜けてカバーガラス3の表面に到達し、各単粒子50と接触していない個所がエッチングされる。その結果、各単粒子50と接触していない部分にV字状の凹部が形成され、各単粒子50に対応する位置にそれぞれ円錐台状突起31が現れる。
【0079】
さらに気相エッチングを続けると、
図17Cに示すように、各円錐台状突起31の頂点上の単粒子50も徐々にエッチングされて小さくなり、同時に、カバーガラス3に形成された各円錐台状突起31間のV字状の凹部もさらに深くなっていく。
【0080】
そして、最終的には、
図17Dに示すように、各単粒子50は気相エッチングにより消失し、それとともにカバーガラス3の表面に多数の円錐状の微小突起30が形成される。
以上のような製造工程をとることにより、固体撮像装置1に使用するモスアイ構造のカバーガラス3を生産することができる。
【0081】
<6.モスアイ構造のカバーガラスの製造方法の第2実施形態>
上記
図16~
図17に示す実施形態では、単粒子50は略同一の大きさであるとして説明した。しかし、単粒子50は略同一の大きに限定されるものではない。例えば、平均粒径が3~380nmの大小異なる単粒子50を混ぜて、それをカバーガラス3の上面に散布して単粒子膜51を形成する。この場合において、そのピッチは380nm以上(可視光の波長以下)、高さは152nm以上(対象とする波長の0.4倍以上)、凹部のアスペクト比は1以上とする。
【0082】
このようにして単粒子膜51を形成すると、大きな単粒子50間は隙間が広くなるためエッチングガスが通りやすくなる。一方、小さな単粒子50間は隙間が狭くなるためエッチングガスが通りにくくなる。その結果、隙間が広い個所は気相エッチングの進行が早く、逆に隙間の狭い個所は気相エッチングの進行が遅くなる。したがって、気相エッチングの進行が早い個所はV字状の凹部が広くかつ深く形成される。一方、気相エッチングの進行が遅い個所はV字状の凹部が狭くかつ浅く形成される。
【0083】
以下、モスアイ構造のカバーガラス3の製造方法の第2実施形態について具体的に説明する。まず、カバーガラス3を準備する。次に、
図18Aの
図14におけるE-E方向矢視図に示すように、カバーガラス3の上面に、粒径の不揃いな単粒子50を略均一に散布して単粒子膜51を形成する。
【0084】
次に、
図18Bに示すように、単粒子膜51がエッチングマスクとなるように構成されたカバーガラス3を、気相エッチングして表面加工する(エッチング工程)。このように気相エッチングすることにより、カバーガラス3の上面に大きさの不揃いな円錐状の微小突起30を多数形成することができる。
【0085】
具体的には、気相エッチングを開始すると、
図18Bに示すように、単粒子膜51を構成している各単粒子50の隙間をエッチングガスが通り抜けてカバーガラス3の表面に到達し、各単粒子50と接触していない個所がエッチングされる。この場合において、大きな単粒子50間は隙間が広くなるためエッチングガスが通りやすくなる。一方、小さな単粒子50間は隙間が狭くなるためエッチングガスが通りにくくなる。その結果、各単粒子50と接触していない部分にV字状の凹部が形成され、各単粒子50に対応する位置にそれぞれ大きさの不揃いな円錐台状突起31が現れる。
【0086】
さらに気相エッチングを続けると、
図19Cに示すように、各円錐台状突起31の頂点上の単粒子50も徐々にエッチングされて小さくなり、同時に、カバーガラス3に形成された各円錐台状突起31間のV字状の凹部もさらに深くなっていく。
【0087】
そして、最終的には、
図19Dに示すように、各単粒子50は気相エッチングにより消失し、それとともにカバーガラス3の表面に多数の大きさの不揃いな円錐状の微小突起30が形成される。
以上のような製造工程をとることにより、固体撮像装置1に使用するモスアイ構造を有するカバーガラス3を生産することができる。
【0088】
このように、大小異なる単粒子50を混ぜて、それをカバーガラス3の上面に散布して単粒子膜51を構成し、気相エッチングを行った場合には、カバーガラス3の上面にそれぞれの高さと大きさの異なる多数の不揃いな円錐状の微小突起30が形成される。このように不均一な円錐状の微小突起30を形成することにより、帯域が広い波長の光に対しても反射を抑制する効果を発揮することができる。
【0089】
光の反射は、入射面の屈折率の急激な変化により生じる。したがって光が入射する境界において屈折率が連続して滑らかに変化するような構造があれば、入射光Hは最終的に反射しなくなる。したがって、上記説明のとおり微小突起30の高さを可視光の波長以下のサイズにすることで、入射光Hの反射を限りなくゼロにすることができる。
【0090】
本実施形態に係る固体撮像装置1は、そのカバーガラス3の上面が、円錐状の微小突起30が形成されてモスアイ構造をなしている。このモスアイ構造を形成することによって、カバーガラス3の上面3bで反射光Xを空気中に透過させ、固体撮像装置1の受光部21の方向に再反射してこないようにすることができる。この結果、受光部21にフレアやゴーストの発生原因となる、再反射光Yが照射されなくなる。このようにして、フレアやゴーストの発生を抑制することができる。
【0091】
従来、固体撮像装置1におけるフレアやゴーストの発生を抑制する対策として、カバーガラス3の上面側と下面側に反射防止膜を積層する方法(
図4の第1の制御膜24及び第2の制御膜25)、カバーガラス3の上面に反射防止フィルタ取り付ける方法、マイクロレンズアレイ23を凹凸形状に加工する方法などがあるが、制約事項が多く汎用性が低い。本開示は、平坦なカバーガラス3の上面に粉末状の微粒子を吹き付けて、それを気相エッチングのマスクとして加工する方法である。今後、固体撮像装置1の微細化や低背化が進んでも本開示に係る製造方法は、有効な製造方法である。
【0092】
以上のような工程を経ることにより、モスアイ構造を有するカバーガラス3を製造することができ、もって、キャビティレスCSP構造を有する固体撮像装置1を製造することができる。
【0093】
<7.固体撮像装置を有する電子機器の構成例>
上述した実施形態に係る固体撮像装置1を有する電子機器の構成例について、
図20により説明する。なお、この構成例はフレア防止構造を有する固体撮像装置1の第1実施形態又は第2実施形態に共通する。
【0094】
固体撮像装置1は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置や、撮像機能を有する携帯端末装置や、画像読取部に固体撮像装置1を用いる複写機など、画像取込部(光電変換部)に固体撮像装置1を用いる電子機器全般に対して適用可能である。固体撮像装置1は、ワンチップとして形成された形態のものであってもよいし、撮像部と信号処理部または光学系とがまとめてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態のものであってもよい。
【0095】
図20に示すように、電子機器としての撮像装置200は、光学部202と、固体撮像装置1と、カメラ信号処理回路であるDSP(Digital Signal Processor)回路203と、フレームメモリ204と、表示部205と、記録部206と、操作部207と、電源部208とを備える。DSP回路203、フレームメモリ204、表示部205、記録部206、操作部207及び電源部208は、バスライン209を介して相互に接続されている。
【0096】
光学部202は、複数のレンズを含み、被写体からの入射光(像光)Hを取り込んで固体撮像装置1の画素領域PA上に結像する。固体撮像装置1は、光学部202によって画素領域PA上に結像された入射光Hの光量を画素22単位で電気信号に変換して画素信号として出力する。
【0097】
表示部205は、例えば、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等のパネル型表示装置からなり、固体撮像装置1で撮像された動画または静止画を表示する。記録部206は、固体撮像装置1で撮像された動画または静止画を、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録する。
【0098】
操作部207は、ユーザによる操作の下に、撮像装置200が持つ様々な機能について操作指令を発する。電源部208は、DSP回路203、フレームメモリ204、表示部205、記録部206及び操作部207の動作電源となる各種の電源を、これらの供給対象に対して適宜供給する。
【0099】
以上のような撮像装置200によれば、本開示に係る固体撮像装置1を使用することにより、微小突起30から構成されるモスアイ構造や低屈折率の樹脂4がフレアやゴーストの発生を防止するため、撮影された画像の一部や全体が白っぽくなったり、画像全体の解像度が落ちる現象や光の輪や玉状になって現れる現象を防止でき、高画質な撮像画像を得ることができる。
【0100】
最後に、上述した各実施形態の説明は本開示の一例であり、本開示は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した各実施形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、さらに他の効果があってもよい。
【0101】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
入射光を受光して電気信号に変換する複数の画素を配列したセンサ基板と、
上面に前記センサ基板を載置し、前記画素が変換した前記電気信号を下面に配設したバンプや外部接続端子に接続可能に構成した半導体基板と、
前記センサ基板の上面に前記各画素に対応して配設されたマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイの上面に配設された樹脂と、
前記樹脂を介して前記マイクロレンズアレイに接着され、その表面にモスアイ構造を形成したカバーガラスと、
を有する固体撮像装置。
(2)
前記樹脂は低屈折率材料で形成された前記(1)に記載の固体撮像装置。
(3)
前記半導体基板と前記マイクロレンズアレイの間にはカラーフィルタ及び吸収型の赤外カットフィルタが配設された前記(1)に記載の固体撮像装置。
(4)
前記カバーガラスの表面に形成された前記モスアイ構造は、前記カバーガラスの表面に複数の微小突起が形成され、前記カバーガラスの上面に配列された前記(1)に記載の固体撮像装置。
(5)
前記微小突起は、大きさが不揃いで、配列が不規則にされた前記(4)に記載の固体撮像装置。
(6)
前記微小突起は、可視光波長域の(1/1.6)λ(240nm)以下のサイズで配列された前記(4)に記載の固体撮像装置。
(7)
前記カバーガラスの表面に形成された複数の微小突起の上面は、折れ防止のために薄膜で被覆された前記(1)に記載の固体撮像装置。
(8)
カバーガラスの上面に、粒径の揃った又は不揃いな単粒子を略均一に散布して単粒子膜を形成する工程と、
前記単粒子膜をエッチングマスクとして前記カバーガラスを気相エッチングすることにより前記カバーガラスの上面に大きさの揃った又は不揃いな微小突起を多数形成する工程と、
を有するモスアイ構造のカバーガラスの製造方法。
(9)
入射光を受光して電気信号に変換する複数の画素を配列したセンサ基板と、
上面に前記センサ基板を載置し、前記画素が変換した前記電気信号を下面に配設したバンプや外部接続端子に接続可能に構成した半導体基板と、
前記センサ基板の上面に前記各画素に対応して配設されたマイクロレンズアレイと、
前記マイクロレンズアレイの上面に配設された樹脂と、前記樹脂を介して前記マイクロレンズアレイに接着され、その表面にモスアイ構造を形成したカバーガラスと、
を有する固体撮像装置を有する電子機器。
【符号の説明】
【0102】
1 固体撮像装置
2 光学センサ
3 カバーガラス
4 樹脂
5 空隙
6 半導体基板
7 バンプ
8 シール樹脂
9 薄膜
10 センサ基板
11 カラーフィルタ
12 赤外カットフィルタ
21 受光部
22 画素
23 マイクロレンズアレイ
24 第1の制御膜
25 第2の制御膜
30 微小突起
31 円錐台状突起
40 カメラ
42 光学系
43 制御部
44 信号処理部
50 単粒子
51 単粒子膜
200 撮像装置
PA 画素領域
SA 周辺領域
H 入射光
X 反射光
Y 再反射光
Z 透過光