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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013581
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】管楽器補助具
(51)【国際特許分類】
   G10G 7/00 20060101AFI20220111BHJP
   G10D 9/11 20200101ALI20220111BHJP
   G10D 7/10 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G10G7/00
G10D9/11
G10D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020204750
(22)【出願日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2020113158
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599082229
【氏名又は名称】株式会社ドルチェ楽器
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】安川 透
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182CC10
(57)【要約】
【課題】奏者の呼気に含まれる唾液の飛散を防止することができる管楽器補助具を提供することである。
【解決手段】弱音器15が装着される朝顔部21を有するトランペット20の演奏時に、奏者の呼気に含まれた唾液が、トランペット20の朝顔部21から外部に飛散することを防止するための管楽器補助具1であって、トランペット20の朝顔部21の開口21bに配される第一フィルタ部材4、第二フィルタ部材5と、第一フィルタ部材4、第二フィルタ部材5を朝顔部21に取り付ける取付部材3を有し、第一フィルタ部材4、第二フィルタ部材5は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を阻止可能であり、第一フィルタ部材4、第二フィルタ部材5には、弱音器15、又は奏者の手を挿通可能なスリット14a、14bが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
朝顔部を有する管楽器のための管楽器補助具であって、
前記管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、
前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、
前記フィルタ部材には、スリット又は合わせ目が設けられていることを特徴とする管楽器補助具。
【請求項2】
前記フィルタ部材を少なくとも二つ有し、
前記各フィルタ部材の前記スリット同士又は合わせ目同士が交差していることを特徴とする請求項1に記載の管楽器補助具。
【請求項3】
前記スリットの縁部分又は合わせ目の縁部分を補強する補強部材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の管楽器補助具。
【請求項4】
前記スリット又は合わせ目の長さを、朝顔部の開口の直径よりも小さくなるように限定する固定部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管楽器補助具。
【請求項5】
前記取付部材は、紐状の部材であり、
前記フィルタ部材の周囲の縁部分には、前記取付部材を周方向に貫通させて装着する取付部材装着部が設けられており、
前記取付部材と取付部材装着部は相対移動可能であり、前記取付部材の両端が、前記取付部材装着部から露出していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の管楽器補助具。
【請求項6】
前記取付部材装着部は、連続的に前記取付部材の周囲を覆っていることを特徴とする請求項5に記載の管楽器補助具。
【請求項7】
朝顔部を有する管楽器のための管楽器補助具であって、
前記管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、
前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、
前記フィルタ部材は、開口可能な開口形成部を有し、当該開口形成部の開口面積が変更可能であることを特徴とする管楽器補助具。
【請求項8】
朝顔部を有する管楽器のための管楽器補助具であって、
前記管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を複数有し、
前記各フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、
前記各フィルタ部材が、朝顔部の前記開口の一部を閉鎖して、前記開口の全領域に、各フィルタ部材のいずれかが配置されており、
前記フィルタ部材には、他のフィルタ部材よりも前記開口に近い側に配置される部位と、前記開口から遠い側に配置される部位を有するものがあることを特徴とする管楽器補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランペットやトロンボーン等の朝顔部を有する管楽器に取り付けられる管楽器補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
管楽器には様々な種類のものがあり、トランペット、トロンボーン、サクソフォーンのように、音色を変えたり、音量を抑制する目的で、朝顔部(ベル)に弱音器(ミュート、消音器)を着脱するものがある。管楽器では、マウスピース(歌口)に奏者の唇の振動が伝達され、当該管楽器特有の音色の音が発せられる。また、マウスピースから呼気が吹き込まれると、当該呼気は、朝顔部側へ移動する。
このような管楽器が、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5007842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、朝顔部を有する管楽器では、マウスピースから吹き込まれた奏者の呼気が、朝顔部から排出され、その際、呼気に含まれる奏者の唾液の飛沫も、同時に朝顔部から飛散することがある。すなわち、奏者の唾液が周囲に飛散するため、不衛生であった。
【0005】
昨今は、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡がり、ソーシャル・ディスタンス(social distance)の確保の徹底や、マスク着用等の対策が必要になっている。このような時勢においては、仮に奏者が新型コロナウイルスのキャリアであった場合に、管楽器の演奏時に、奏者の唾液にコロナウイルスが混じって周囲に飛散することが懸念される。
【0006】
そこで本発明は、奏者の呼気に含まれる唾液の飛散を低減することができる管楽器補助具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第一の様相は、朝顔部を有する管楽器のための管楽器補助具であって、前記管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、前記フィルタ部材には、スリット又は合わせ目が設けられていることを特徴とする管楽器補助具である。
【0008】
本様相の管楽器補助具は、管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有する。すなわち、朝顔部の内外がフィルタ部材で隔離される。その結果、朝顔部から排出された奏者の呼気は、フィルタ部材に達する。
フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を阻止可能であるので、奏者の呼気は、フィルタ部材を通過するが、このフィルタ部材は、呼気に含まれる唾液の飛沫を捕捉する。よって、管楽器は、管楽器にフィルタ部材が取り付けられていない状態と変わらない音を発することができると共に、奏者の呼気に含まれた唾液の飛沫の朝顔部からの飛散が、フィルタ部材で軽減される。
換言すると、奏者の呼気は、フィルタ部材を通過することができ、フィルタ部材は、呼気の通過を阻害しない。呼気がフィルタ部材を通過する際に、呼気に含まれる唾液の飛沫がフィルタ部材によって捕捉される。
そのため、奏者の周囲の人に、奏者の呼気に含まれる唾液の飛沫が届く懸念が少なくなり、衛生的である。
また、フィルタ部材には、スリット又は合わせ目が設けられているので、奏者は、フィルタ部材のスリット又は合わせ目の間を開いて、朝顔部の内部にアクセスすることができる。
【0009】
前記フィルタ部材を少なくとも二つ有し、前記各フィルタ部材の前記スリット同士又は合わせ目同士が交差しているのが好ましい。
【0010】
ここで、「交差」とは、フィルタ部材(管楽器補助具)を正面視した際に、各フィルタ部材のスリット同士又は合わせ目同士が交差して見える状態を指している。すなわち、フィルタ部材を正面視すると、フィルタ部材同士が手前側から奥側に重なっており、少なくとも一つのフィルタ部材のスリット又は合わせ目と、別の少なくとも一つのフィルタ部材のスリット又は合わせ目が交差している。
この構成によれば、フィルタ部材を少なくとも二つ有し、前記各フィルタ部材の前記スリット同士又は合わせ目同士が交差しているので、弱音器を使用する際に、フィルタ部材と弱音器の間に隙間が生じにくくなる。すなわち、いずれかのフィルタ部材のスリット又は合わせ目と、朝顔部に挿入した弱音器又は奏者の手(腕)の間に生じた若干の隙間が、別のフィルタ部材によって遮蔽される。
また、朝顔部に弱音器を装着した際に、フィルタ部材のスリットの縁(又は合わせ目の縁)が若干塑性変形するため、弱音器を取り外しても、スリットの縁(又は合わせ目の縁)は元の形状には復元しない。すなわり、スリット(又は合わせ目)が完全に閉じなくなり、隙間が生じてしまう。
ところが、この構成によれば、あるフィルタ部材のスリット又は合わせ目と、別のフィルタ部材のスリット又は合わせ目が交差しているので、互いの隙間を保管し合う。
換言すると、線同士(スリット又は合わせ目)が交差して点(交差する部位)が形成されるため、全てのフィルタ部材を貫通する隙間は小さくなる。
【0011】
前記スリットの縁部分又は合わせ目の縁部分を補強する補強部材を有するのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、スリットの縁部分又は合わせ目の縁部分が補強部材で補強されているので、フィルタ部材の強度が増し、耐久性が向上する。また、朝顔部に弱音器を装着した際に、スリットの縁部分又は合わせ目の縁部分が塑性変形しにくい。そのため、朝顔部から弱音器を取り外すと、スリット又は合わせ目は、元の形状に復元し易い。その結果、補強部材が存在しないときよりも、各フィルタ部材を貫通する隙間が小さくなる。
【0013】
前記スリット又は合わせ目の長さを、朝顔部の開口の直径よりも小さくなるように限定する固定部を有するのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、スリット又は合わせ目が朝顔部の開口よりも大きく拡がることがない。そのため、管楽器補助具が、朝顔部からマウスピース側へ外れる事態(すなわち、スリット又は合わせ目に、朝顔部が嵌まり込む事態)になることを防止することができる。
【0015】
前記取付部材は、紐状の部材であり、前記フィルタ部材の周囲の縁部分には、前記取付部材を周方向に貫通させて装着する取付部材装着部が設けられており、前記取付部材と取付部材装着部は相対移動可能であり、前記取付部材の両端が、前記取付部材装着部から露出しているのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、取付部材は、紐状の部材であり、フィルタ部材の周囲の縁部分には、取付部材を周方向に貫通させて装着する取付部材装着部が設けられており、取付部材と取付部材装着部は相対移動可能であり、取付部材の両端が、取付部材装着部から露出しているので、紐状の取付部材の両端を引っ張ると、取付部材装着部が引き絞られ、取付部材装着部が縮径する。
よって、朝顔部の開口の裏側に取付部材装着部を配した状態で、取付部材装着部を引き絞ると、フィルタ部材が朝顔部の開口に配された状態で、管楽器補助具が管楽器に容易に取り付けられる。
また、紐状の取付部材を結ぶことにより、管楽器補助具を管楽器に容易に固定することができる。
さらに、紐状の取付部材の結び目を解き、取付部材装着部を拡径することにより、管楽器から管楽器補助具を容易に取り外すことができる。
【0017】
前記取付部材装着部は、連続的に前記取付部材の周囲を覆っているのが好ましい。
【0018】
この構成によれば、取付部材装着部は、連続的に前記取付部材の周囲を覆っているので、取付部材と取付部材装着部が位置ずれしにくく、取付部材は、確実に取付部材装着部を朝顔部に固定することができる。
【0019】
本発明の第二の様相は、朝顔部を有する管楽器のための管楽器補助具であって、前記管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を有し、前記フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、前記フィルタ部材は、開口可能な開口形成部を有し、当該開口形成部の開口面積が変更可能であることを特徴とする管楽器補助具である。
【0020】
本様相の管楽器補助具によると、フィルタ部材は開口可能な開口形成部を有するので、朝顔部の内部に弱音器を配置したり、奏者が手を朝顔部の内部に侵入させることができる。また、開口形成部の開口面積が変更可能であるので、朝顔部から弱音器を取り外したり、奏者の手を朝顔部から退避させると、開口形成部の開口面積を狭めることができる。
【0021】
本発明の第三の様相は、朝顔部を有する管楽器のための管楽器補助具であって、前記管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を複数有し、前記各フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、前記各フィルタ部材が、朝顔部の前記開口の一部を閉鎖して、前記開口の全領域に、各フィルタ部材のいずれかが配されており、前記フィルタ部材には、他のフィルタ部材よりも前記開口に近い側に配される部位と、前記開口から遠い側に配される部位を有するものがあることを特徴とする管楽器補助具である。
【0022】
第三の様相に関連する様相は、朝顔部を有する管楽器のための管楽器補助具であって、前記管楽器の朝顔部の開口に配されるフィルタ部材を複数有し、前記各フィルタ部材は、通気性を有すると共に、飛散した唾液の通過を軽減可能であり、前記各フィルタ部材が、朝顔部の前記開口の一部を閉鎖して、前記開口の全領域が、各フィルタ部材のいずれかによって閉鎖されており、各フィルタ部材は、他のフィルタ部材よりも前記開口に近い側に配置される部位と、前記開口から遠い側に配置される部位を有することを特徴とする管楽器補助具である。
【0023】
第三の様相の管楽器補助具によると、各フィルタ部材が、朝顔部の開口の一部を閉鎖して、開口の全領域が、各フィルタ部材のいずれかによって閉鎖されているので、管楽器の奏者の呼気がいずれかのフィルタ部材を通過し、呼気に含まれる唾液の飛沫がフィルタ部材で捕捉される。
【0024】
また、各フィルタ部材は、開口の一部を閉鎖するものであり、フィルタ部材には、他のフィルタ部材よりも開口に近い側に配置される部位と、開口から遠い側に配置される部位を有するものがあるので、フィルタ部材同士が重なって配置されたものがあり、重なった部位を一部解消することにより弱音器を開口内に挿入するための孔を形成することができる。
【0025】
各フィルタ部材同士は重なっているため、各フィルタ部材同士の間には隙間が生じない。弱音器を挿通させるための孔は、各フィルタ部材をそれぞれ異なる方向に押しやることによって形成することができる。各フィルタ部材を押し広げることによって弱音器を挿通させるための孔を形成することができる。
【0026】
そのため、形成された孔の大きさは、必要最小限の大きさとなり、各フィルタ部材は、弱音器の周囲に密着し、各フィルタ部材と弱音器の間に生じる隙間は極めて小さい。よって、各フィルタ部材と弱音器の間から外部に漏洩する呼気は極めて少なく、漏洩した当該呼気に含まれる唾液量も極めて少ない。
【発明の効果】
【0027】
本発明の管楽器補助具によると、管楽器が奏でる音に変化を及ぼすことなく、奏者の呼気に含まれる唾液の飛散が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る二つのフィルタ部材を有する管楽器補助具の斜視図であり、(a)は、両フィルタ部材のスリットが交差していると共に、いずれのフィルタ部材のスリットも閉じている状態を示し、(b)は、一方のフィルタ部材のスリットが開いた状態を示し、(c)は、両方のフィルタ部材のスリットが開いた状態を示す。
図2】(a)は、図1の管楽器補助具のフィルタユニットの分解正面図であり、(b)は、(a)のフィルタユニットの組立正面図であり、(c)は、フィルタユニットに紐状の取付部材を装着した状態を示す正面図であり、(d)は、一方のフィルタ部材の分解斜視図である。
図3】(a)は、図1の管楽器補助具を、管楽器の朝顔部に取り付ける直前の状態を示す斜視図であり、(b)は、管楽器補助具を、管楽器の朝顔部に取り付けた状態を示す斜視図である。
図4】(a)は、図3(b)において、管楽器補助具の一方のフィルタ部材のスリットが開いた状態を示す斜視図であり、(b)は、両方のフィルタ部材のスリットが開き、弱音器を管楽器に取り付けた状態を示す斜視図である。
図5】(a)は、本発明の別の実施形態に係る管楽器補助具の斜視図であり、(b)は、(a)の管楽器補助具において、フィルタ部材から取付部材を外した状態を示す斜視図であり、(c)は、(a)の管楽器補助具を管楽器に取り付けた状態を示す斜視図である。
図6】(a)は、別の実施形態の管楽器補助具を取り付けた管楽器と、弱音器を並べて示した斜視図であり、(b)は、弱音器を管楽器に取り付けた状態を示す斜視図である。
図7】(a)は、別の実施形態に係る管楽器補助具を装着した管楽器の朝顔部付近の側面図であり、(b)は、(a)の朝顔部と管楽器補助具を分離した状態を示す斜視図であり、(c)は、朝顔部に弱音器を設置した状態を示す斜視図である。
図8】(a)は、弱音器を挿通させてスリットの縁が塑性変形した管楽器補助具の各フィルタ部材を並置して示す正面図であり、(b)は、(a)の各フィルタ部材を重ね合わせた状態を示す正面図であり、図7(c)において、弱音器を取り外した状態を示す朝顔部の正面図である。
図9】(a)は、フィルタ部材の第一ピースと第二ピースの一部が重なった状態を示す斜視図であり、(b)は、第一ピースと第二ピースを離間させた状態を示す斜視図である。
図10】本発明のさらに別の実施形態に係る管楽器補助具の正面図である。
図11図10の管楽器補助具の分解正面図である。
図12図11の管楽器補助具をさらに分解した分解正面図である。
図13図10の管楽器補助具のフィルタ部材を開いた状態を示す正面図である。
図14図10の管楽器補助具を、管楽器の朝顔部に装着し、さらに弱音器を取り付けた状態を示す部分斜視図である。
図15図10の管楽器補助具のフィルタユニットの変形例を示す正面図であり、(a)は、管楽器補助具を構成するフィルタユニットの分解正面図であり、(b)は、(a)のフィルタユニットの各フィルタ部材が組み合わされた状態を示す正面図であり、(c)は、(b)の状態のフィルタユニットに、弱音器が挿入配置された状態を示す正面図である。
図16図10図15とはさらに別の管楽器補助具のフィルタユニットの変形例を示す正面図であり、(a)は、管楽器補助具を構成するフィルタユニットの分解正面図であり、(b)は、(a)のフィルタユニットの各フィルタ部材が組み合わされた状態を示す正面図であり、(c)は、(b)の状態のフィルタユニットに、弱音器が挿入配置された状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら説明する。
図1(a)に示すように、管楽器補助具1は、フィルタユニット2と取付部材3を有する。詳しくは後述するが、管楽器補助具1は、図3に示すトランペット20(管楽器)の朝顔部21(ベル)に取り付けて使用される。トランペット20(管楽器)には、朝顔部21と、奏者が呼気を注入するマウスピース22(歌口)を有する。朝顔部21の先端部分には開口21bが設けられている。朝顔部21は、開口21b側からマウスピース22側に近づくほど直径が小さくなる略円錐形状を呈する部位である。マウスピース22からトランペット20に注入された呼気は、朝顔部21側へ移動する。
【0030】
図1(b)に示すように、フィルタユニット2は、第一フィルタ部材4と第二フィルタ部材5を有している。第一フィルタ部材4、第二フィルタ部材5は、ガーゼや不織布等の通気性を有すると共に、液状物のしぶき(霧状の液体)の飛散を阻止することができる素材で構成されている。
【0031】
図2(a)、図2(d)に示すように、第一フィルタ部材4は、半割状の第一ピース4a、第二ピース4bを有する。
【0032】
第一ピース4aは、半円状の円弧を描く円周部6aと直線状の直径部6bが連続した円の半割形状の外形を呈している。直径部6bには、補強片10a(補強部材)が取り付けられている。補強片10aは、第一ピース4aと同様の素材で構成されている。補強片10aは、平板状の部材が長手方向に沿って二つ折りされた形状を有する。
【0033】
直径部6bは、二つ折りされた補強片10aで挟まれており、第一ピース4aと補強片10aは、縫製によって一体化されている。第一ピース4aにおける補強片10aが設けられた部位は、第一ピース4aの補強片10aが設けられていない部位よりも強度が大きく、形状の復元性が高い。また、補強片10aによって直径部6bのほつれ等の破損を防止することができる。第一ピース4aにおける補強片10aが設けられた部位は、第一ピース4aにおける補強片10aが設けられていない部位よりも、形状の復元性が高い。
【0034】
第二ピース4bは、第一ピース4aと同様の構造を有する。すなわち、第二ピース4bは、円周部7aと直径部7bを有し、直径部7bは、補強片10aと同様の補強片10b(補強部材)で補強されている。
【0035】
第一ピース4aと第二ピース4bは、補強片10aと補強片10bが対向して一致するように配置されている。補強片10a、10bの間には、スリット14a(切れ目、裂け目、開口形成部)が形成されている。スリット14aは、第一フィルタ部材4に形成された切れ目、又は裂け目であると考えることもできる。
【0036】
そして、第一フィルタ部材4は、第一ピース4aと第二ピース4bが、第一ピース4aの円周部6aと第二ピース4bの円周部7aが略同一円周上に配置されることにより、円形状を呈する。ここで、図2(a)では、部材同士の線が重なって見づらくならないように、第一ピース4aと第二ピース4bを若干離して描写している。
【0037】
第二フィルタ部材5は、第一フィルタ部材4と同様の構造を有する。
すなわち、第二フィルタ部材5は、半割状の第一ピース5a、第二ピース5bを有し、第一ピース5aの直線部8bには、補強片11aが縫製されて一体化されている。同様に、第二ピース5bの直線部9bには、補強片11bが縫製されて一体化されている。そして、第一ピース5aと第二ピース5bは、補強片11a、11bが対向して一致するように配置されている。補強片11a、11bの間には、スリット14b(切れ目、裂け目)が形成されている。また、第二フィルタ部材5は、第一ピース5aの円周部8aと第二ピース5bの円周部9aが略同一円周上に配置され、全体として円形状を呈している。
【0038】
図2(b)に示すように、第一フィルタ部材4と第二フィルタ部材5は、同芯となるように重ね合わせられており、全周囲が縫製されて一体化され、フィルタユニット2が構成されている。図2(b)に示すように、第一フィルタ部材4側の補強片10a、10bと、第二フィルタ部材5側の補強片11a、11bは直交(交差)している。
【0039】
ここで、「直交」(交差)とは、フィルタユニット2(朝顔部21)を正面視したときに、各フィルタ(第一フィルタ部材4、第二フィルタ部材5)の各スリット14a、14bが「直交」(交差)して見える状態を指している。
【0040】
そして、第一フィルタ部材4の第一ピース4a、第二ピース4bは、第二フィルタ部材5の第一ピース5a、第二ピース5bと縫製されることによって一体化されている。逆に、第二フィルタ部材5の第一ピース5a、第二ピース5bは、第一フィルタ部材4の第一ピース4a、第二ピース4bと縫製されることによって一体化されている。すなわち、第一フィルタ部材4と第二フィルタ部材5は、90度ずれた角度位置で互いに縫製されて結合されている。
【0041】
第一フィルタ部材4の第一ピース4a(補強片10a)と、第二ピース4b(補強片10b)の間にはスリット14aが形成されている。すなわち、スリット14aは、一体化された第一ピース4aと第二ピース4bの間に形成された切れ目、裂け目であると考えることもできる。また、同様に、第二フィルタ部材5の第一ピース5a(補強片11a)と、第二ピース5b(補強片11b)の間にはスリット14bが形成されている。図2(b)に示すように、スリット14a、14bは、直交(交差)している。
【0042】
スリット14aの両端付近には、固定部17a、17bが設けられている。固定部17a、17bは、縫製によって構成されている。固定部17a、17bによって、スリット14aの長さが、トランペット20(管楽器)の朝顔部21の開口21bの直径より小さく、又、弱音器15や奏者の手を挿入することができる長さに設定されている。
【0043】
同様に、スリット14bの両端付近にも、縫製によって構成された固定部18a、18bが設けられている。固定部18a、18bによって、スリット14bの長さが、朝顔部21の開口21bの直径より小さく、又、弱音器15や奏者の手を挿入することができる長さに設定されている。
【0044】
本実施形態では、第一フィルタ部材4の第一ピース4a(補強片10a)と、第二ピース4b(補強片10b)は、突き合わせ状態であって重なっていないが、第一ピース4a(補強片10a)と第二ピース4b(補強片10b)は、部分的に重なっていてもよい。
【0045】
すなわち、図9(a)、図9(b)に示すように、第一ピース4aの直径部6b(補強片10a)と、第二ピース4bの直径部7b(補強片10b)が、第一ピース4a及び第二ピース4bの表裏方向に重なっていてもよい。このとき、図9(a)に示すように、第一ピース4a(補強片10a)と第二ピース4b(補強片10b)の間には、合わせ目16が形成される。合わせ目16は、第一ピース4aの直径部6b(補強片10a)と、第二ピース4bの直径部7b(補強片10b)が重なっているだけで、固着していない。そのため、合わせ目16には、第一フィルタ部材4を貫通する孔を形成することができる。
【0046】
同様に、第二フィルタ部材5の第一ピース5a(補強片11a)と、第二ピース5b(補強片11b)も部分的に重なって、両者の間に合わせ目が形成されていてもよい。
【0047】
また、フィルタユニット2の周囲の縁部分には、略環状の取付部材装着部12が形成されている。
フィルタユニット2の外周縁付近の円形の部位2aと、当該部位2aより若干内周側の円形の部位2bが縫製されており、両部位2a、2bの間に環状通路である取付部材装着部12が形成されている。取付部材装着部12には、開口である出入口12a、12bが近接対向するように設けられている。図3に示すように、取付部材装着部12の直径は、トランペット20の朝顔部21の直径よりも大きい。
【0048】
一方、取付部材3は、細長い紐状の部材である。取付部材3の長さは、フィルタユニット2の取付部材装着部12の通路長さよりも長い。すなわち、取付部材3が周方向に取付部材装着部12を貫通すると、図2(c)に示すように、取付部材3の両端が取付部材装着部12(出入口12a、12b)から露出する。そして、取付部材3の途中の部位は、連続的に取付部材装着部12によって覆われている。そのため、取付部材3と取付部材装着部12の接続は強固である。
【0049】
管楽器補助具1をトランペット20(管楽器)の朝顔部21に取り付ける際には、取付部材3の両端を引っ張り、取付部材3における取付部材装着部12から露出する部位の長さを長くすると、取付部材装着部12が引き絞られ、取付部材装着部12の直径が小さくなる。
【0050】
図3に示すように、装着前の管楽器補助具1(フィルタユニット2)の直径は、トランペット20(管楽器)の朝顔部21の直径よりも大きく、フィルタユニット2の中心と、朝顔部21の中心を略一致させ、フィルタユニット2をマウスピース22側へ折り返す。すなわち、フィルタユニット2には、円形の折返し部13が形成される。
【0051】
そして、取付部材装着部12は、朝顔部21の外側の円錐状の曲面21a上に配される。ここで、取付部材3を引っ張ることにより、取付部材装着部12に対して取付部材3を相対移動させて、取付部材装着部12を引き絞り、取付部材装着部12の直径を狭める。その結果、図3(b)に示すように、トランペット20(朝顔部21)に管楽器補助具1が取り付けられる。取付部材3の途中の部位は、連続的に取付部材装着部12によって覆われている。そのため、フィルタユニット2(両フィルタ部材4、5)が、朝顔部21の全周に渡って強固に取り付けられる。
【0052】
図3(b)に示すように、第一フィルタ部材4及び第二フィルタ部材5は、トランペット20の朝顔部21の開口21bの外径に沿って折り返し、取付部材3で取付部材装着部12を引き絞り、取付部材装着部12を小径化する。管楽器補助具1をトランペット20(管楽器)の朝顔部21に取り付けることができる。このときの取付部材装着部12の直径は、朝顔部21の開口21bの直径よりも小さい。そのため、管楽器補助具1が朝顔部21の開口21bから前方側(奏者とは反対側)に外れる事態を防止することができる。
【0053】
また、図3(b)に示すように、朝顔部21の開口21bの直径は、固定部17a、17bの間隔よりも大きい。すなわち、スリット14aの長さを固定部17a、17bで限定することによって、スリット14aが拡がり過ぎて、朝顔部21(管楽器補助具1)がスリット14aを通過して後方側(マウスピース22側)に外れてしまう事態を防止することができる。固定部18a、18bによって長さが限定された第二フィルタ部材5のスリット14bについても同様である。
【0054】
取付部材3は、環状形状のゴムのような伸縮自在な素材や、ワンターン形状(例えばアルファベットのC形状)の金属製のバネで構成することもできる。
【0055】
図3(a)、図3(b)に示すように、トランペット20の朝顔部21の開口21bは、管楽器補助具1の通気性を有するフィルタユニット2によって遮蔽されている。すなわち、朝顔部21の開口21bは通気性を有するフィルタユニット2によって閉じられている。そのため、奏者がトランペット20を演奏すると、演奏音が朝顔部21(開口21b)側からフィルタユニット2を通過して発散する。
【0056】
また、マウスピース22からトランペット20内に侵入した奏者の呼気が、当該呼気に含まれた霧状の唾液の飛沫と共に朝顔部21側に移動するが、呼気のみがフィルタユニット2を通過し、呼気に含まれた霧状の唾液の飛沫は、フィルタユニット2に付着して捕獲され、朝顔部21の外側へ移動することはできない。そのため、演奏時に、トランペット20の朝顔部21から、奏者の唾液の飛沫が飛散することが防止される。
【0057】
換言すると、奏者の呼気は、フィルタユニット2を通過することができ、フィルタユニット2は、呼気の通過を阻害しない。そして、呼気がフィルタユニット2を通過する際に、呼気に含まれる唾液の飛沫がフィルタユニット2によって捕捉される。その結果、奏者の唾液の飛沫が周囲に飛散することが防止される。
【0058】
次に、トランペット20の音色を変更したり、音量を低下(抑制)させるために、図3(b)に示す弱音器15(消音器)を使用する場合について説明する。
【0059】
弱音器15を朝顔部21に装着する場合、図1(b)、図4(a)に示すように、フィルタユニット2の第一フィルタ部材4のスリット14aを開き(開口形成部に開口を形成し)、さらに、図1(c)、図4(b)に示すように第二フィルタ部材5のスリット14bを開き(開口形成部に開口を形成し)、朝顔部21の内外を連通させて弱音器15を朝顔部21に挿通する。
【0060】
弱音器15が、朝顔部21の開口の内側に収まる大きさであれば、第一フィルタ部材4のスリット14a(開口)と第二フィルタ部材5のスリット14b(開口)を閉じれば、朝顔部21の内外が、再度管楽器補助具1で遮蔽され、奏者の唾液の飛沫が、トランペット20の外部に放出されることはない。しかし、弱音器15には、様々な種類のものが存在し、朝顔部21に取り付けた際に、朝顔部21の開口の外側に突出するものが多い。
【0061】
ところが、本実施形態に係る管楽器補助具1によると、弱音器15が、朝顔部21から突出しても、第一フィルタ部材4のスリット14aに生じた隙間(開口)は、第二フィルタ部材5によって遮蔽される。また、第二フィルタ部材5のスリット14bに生じた隙間(開口)は、第一フィルタ部材4によって遮蔽される。このように、両フィルタ部材4、5は、相手側と弱音器15の間に生じた隙間(開口)を解消し、互いに補完し合う。すなわち、スリット14a、14b(開口形成部)の開口面積が小さくなる。
【0062】
管楽器がホルンの場合には、奏者は、朝顔部21に手を配置して演奏する。この場合においても、奏者は、スリット14a、14bを介して手を朝顔部21に挿入することができ、両フィルタ部材4、5は、相手側と奏者の手の間に生じた隙間を解消し、互いに補完し合う。
【0063】
次に、朝顔部21から弱音器15を取り外すと、管楽器補助具1は、図8(b)に示すような状態になる。すなわち、図8(a)に示すように、各フィルタ部材4、5のスリット14a、14bの縁(補強片10a、10b、11a、11b)が塑性変形し、スリット14a、14bは、弱音器15を朝顔部21に装着する前の真っ直ぐな形状(図3(b)に示す状態)に復元せず、開口35a、35bが生じている。
【0064】
しかし、本実施形態に係る管楽器補助具1では、図8(b)に示すように、スリット14a、14bが交差していることにより、各フィルタ部材4、5が、互いに相手側に生じた開口35a、35bの一部を遮蔽する。その結果、管楽器補助具1に形成される開口36は小さい(範囲が狭い)ものになる。
【0065】
ここで、補強片10a、10b、11a、11bに、弾性部材を設けたり、補強片10a、10b、11a、11b自体を弾性部材で構成することもできる。この場合には、弾性部材の付勢力に抗してスリット14a、14bを拡げ、弱音器15や奏者の手を朝顔部21の内部に侵入させても、補強片10a、10b、11a、11bは、塑性変形しにくくなる。そのため、朝顔部21から弱音器15を外すと、各スリット14a、14bは、元の形状に復元し、各スリット14a、14bの開口面積が減少する。その結果、管楽器補助具1は、図8(b)に示す開口36よりもさらに小さい隙間が形成される、又は完全に隙間がなくなる。よって、奏者の呼気に含まれる唾液のしぶき(飛沫)の大半が、各フィルタ部材4、5で遮蔽される。
【0066】
本実施形態の管楽器補助具1において、トランペット20の朝顔部21に管楽器補助具1を装着した際に、各フィルタ部材4、5のスリット14a、14bが、朝顔部21の直径を超える場合には、スリット14a、14bに固定部17a、17b、18a、18b(図1(a))を設ける。固定部17a、17bの間隔は、朝顔部21の開口21bの直径よりは小さいが、弱音器15や奏者の手を挿入可能な大きさである。同様に、固定部18a、18bの間隔も、朝顔部21の開口21bの直径よりは小さく、弱音器15や奏者の手を挿入可能な大きさである。
【0067】
また、本実施形態に係る管楽器補助具1によると、フィルタユニット2の各フィルタ部材4,5にスリット14a、14bが設けられているので、奏者は朝顔部21に対して弱音器15を容易に着脱することができる。
【0068】
次に、図5を参照しながら別の実施形態の管楽器補助具25について説明する。
【0069】
管楽器補助具25は、フィルタ部材26と取付部材27を有する。
図5(a)に示すように、フィルタ部材26は、図1に示す管楽器補助具1のフィルタユニット2における、第一フィルタ部材4、第二フィルタ部材5の代わりに設けられたものである。すなわち、管楽器補助具25は、一つのフィルタ部材26を有する。
【0070】
図5(b)に示すように、フィルタ部材26は、図1の第一フィルタ部材4の第一ピース4a及び第二ピース4bと同様の半割形状の第一ピース26a及び第二ピース26bを有する。第一ピース26a及び第二ピース26bの直径部分には、それぞれ補強片23a、23bが設けられている。補強片23a、23bには、弾性部材を設けたり、弾性部材で補強片23a、23bを構成してもよい。
【0071】
第一ピース26aと第二ピース26bが、補強片23a、23bの部位を対向させて密着させ、両補強片23a、23bの間にはスリット29が形成されている。スリット29の両端付近には、縫製によって構成された固定部31a、31bが設けられている。すなわち、スリット29の長さが、固定部31a、31bによって限定されている。固定部31a、31bの間隔は、トランペット20の朝顔部21の開口21bの直径より小さく、弱音器15又は奏者の手を挿入することができる大きさである。
【0072】
また、フィルタ部材26の外形は円形を呈している。その円の外周縁部分には、環状の空間である取付部材装着部28が設けられている。取付部材装着部28の両端には、開口である出入口28a、28bが設けられている。取付部材装着部28には、紐状の取付部材27が収容されている。すなわち、紐状の取付部材27が取付部材装着部28を周方向に貫通している。取付部材27の長さは、取付部材装着部28よりも長い。
【0073】
図5(a)に示すように、フィルタ部材26は、トランペット20の朝顔部21の開口の外径と一致する仮想線(二点鎖線)で示す円30に沿って折り返し、取付部材27で取付部材装着部28を引き絞り、取付部材装着部28を小径化する。これにより、図5(c)に示すように、管楽器補助具25をトランペット20(管楽器)の朝顔部21に取り付けることができる。このときの取付部材装着部28の直径は、管楽器補助具25の朝顔部21の開口21bの直径よりも小さい。そのため、管楽器補助具25が朝顔部21の開口21bから前方側(奏者とは反対側)に外れる事態を防止することができる。
【0074】
また、図5(a)に示すように、円30(朝顔部21の開口21b)の直径は、固定部31a、31bの間隔よりも大きい。すなわち、固定部31a、31bを設けることによって、スリット29が拡がり過ぎて、管楽器補助具25が開口21bから後方側(奏者側)に外れてしまう事態を防止することができる。
【0075】
そして、弱音器15(図6(a))を使用する際には、図6(b)に示すように、スリット29(開口形成部)の開口面積を拡げて弱音器15を朝顔部21内に挿入することができる。
【0076】
ここで、補強片23a、23bに、弾性部材を設けたり、補強片23a、23b自体を弾性素材で構成した場合には、弾性力に抗してスリット29の開口面積を拡げ、弱音器15や奏者の手を朝顔部21の内部に侵入させても、補強片23a、23bが、元の姿勢(スリット29が閉じた姿勢)に戻ろうとするため、スリット29の縁は塑性変形しにくい。そのため、弱音器15を取り外したり、奏者の手を朝顔部21から外すと、スリット29は、開口面積が減少するように、元の真っ直ぐな形状に復元し易い。
【0077】
図6(b)に示す隙間24を解消する方法について説明する。
図7(a)、図7(b)に示すように、図5に示した管楽器補助具25と同様の構造の管楽器補助具25a、25bを使用する。すなわち、図5の管楽器補助具25と同じ管楽器補助具25aに加え、図5の管楽器補助具25と同じ構造の別の管楽器補助具25bを重ねて使用する。管楽器補助具25aは、スリット29Aを備えたフィルタ部材26Aを有し、管楽器補助具25bは、スリット29Bを備えたフィルタ部材26Bを有する。
【0078】
図7(c)に示すように、管楽器補助具25aのスリット29Aと管楽器補助具25bのスリット29Bを介して弱音器15を朝顔部21に挿入する。管楽器補助具25aに生じた隙間24aは、管楽器補助具25bのフィルタ部材26Bによって遮蔽される。また、管楽器補助具25bによって生じる隙間24bは、管楽器補助具25aのフィルタ部材26Aによって遮蔽される。
【0079】
このように、管楽器補助具25a、25bは、互いに補完し合い、隙間24a、24bが解消される。また、弱音器15を朝顔部21から取り外したときに形成される隙間は、前述の実施形態で説明した図8(b)に示す開口36のように小さい(範囲が狭い)ものになる。よって、奏者の呼気に含まれる唾液のしぶきの大半が、各フィルタ部材26A、26Bで遮蔽される。
【0080】
図1図4に示す実施形態、及び図7に示す実施形態では、二つのフィルタ部材を使用する場合について説明しており、図5図6に示す実施形態では、一つのフィルタ部材を使用する場合について説明した。
【0081】
本発明の管楽器補助具は、これによらず、三つ以上のフィルタ部材を使用してもよい。三つ以上のフィルタを使用する場合には、少なくともそのうちの一つのフィルタのスリット(開口形成部)が、他のフィルタのスリット(開口形成部)と交差させるのが好ましく、全てのフィルタのスリット(開口形成部)が、等角度間隔で交差するのが最も好ましい。
【0082】
次に、図10図14を参照しながら別の実施形態の管楽器補助具40について説明する。図10図12に示すように、管楽器補助具40は、フィルタユニット41、環状固定部材42、取付部材43を有する。
【0083】
図12に示すように、フィルタユニット41は、フィルタ部材41a、41bを有する。フィルタ部材41a、41bは、ガーゼや不織布等の通気性を有すると共に、液状物のしぶき(霧状の液体)の通過を阻止することができる素材で構成されている。すなわち、人の呼気は、フィルタ部材41a、41bを通過することができ、呼気に含まれる唾液の飛沫は、フィルタ部材41a、41bに捕捉される。
【0084】
フィルタ部材41aは、180度を超える中心角(例えば、190度~240度)の円弧状の円周部44aと、円の内部に向かって凹んだ凹湾曲部45aが連続した外形を呈している。フィルタ部材41aの円周部44aと凹湾曲部45aが連続する両端部48a、49aは、突出している。
【0085】
凹湾曲部45aには、補強片46a(補強部材)が取り付けられている。補強片46aは、断面が略Vの字形を呈し、凹湾曲部45aに沿って延びる部材である。すなわち、補強片46aは、細長い二つの湾曲した平板状の部材の内周側の辺同士が一体化された形状を呈している。
【0086】
補強片46aは、フィルタ部材41aの凹湾曲部45aの縁を挟んでおり、縫製や接着等によってフィルタ部材41aと一体化されている。補強片46aは、弾性変形が可能な素材で形成されている。すなわち、補強片46aが一体化されたフィルタ部材41aの凹湾曲部45aは、外力が作用して変形しても、元の形状に復元することができる。
【0087】
一方、フィルタ部材41bは、フィルタ部材41aと同様の構造を有しており、フィルタ部材41bの凹湾曲部45bには、補強片46bが設けられている。
【0088】
図11に示すように、フィルタ部材41aの凹湾曲部45a(補強片46a)と、フィルタ部材41bの凹湾曲部45b(補強片46b)は、フィルタ部材41aの円周部44aとフィルタ部材41bの円周部44bの中心を一致させた際に、隙間なく交差するように構成されている。
【0089】
また、円周部44a、44bの中心を一致させると、フィルタ部材41aの端部48a、49aがフィルタ部材41b側に突出し、同様に、フィルタ部材41bの端部48b、49bがフィルタ部材41a側に突出する。そのため、フィルタ部材41aの端部48a、49aと、フィルタ部材41bの端部48b、49bは重なる。
【0090】
そして、フィルタ部材41a、41bの突出した端部48a、48bと、フィルタ部材41a、41bの突出した端部49a、49bとでは、図11の紙面の手前側と奥側の位置関係が逆になっている。
【0091】
図10に示すように、環状固定部材42(後述)の内周部分が、フィルタ部材41a、41b(円周部44a、44b)と縫製によって一体化されている。よって、環状固定部材42とフィルタ部材41a、41bの間には隙間が存在しない。
【0092】
また、フィルタ部材41a、41bの凹湾曲部45a、45b(補強片46a、46b)は、互いに交差するように配置されている。
具体的には、図10及び図11において、フィルタ部材41aの一方の端部48aが、フィルタ部材41bの一方の端部48bよりも紙面の手前側に配置されており、フィルタ部材41aの他方の端部49aが、フィルタ部材41bの他方の端部49bよりも紙面の奥側に配置されている。
【0093】
すなわち、図10図11に示すように、凹湾曲部45a、45b(補強片46a、46b)は、隙間なく密接して交差している。すなわち、フィルタ部材41a、41bは、一方の端部48a、48bから他方の端部49a、49bに至る途中の部位(領域)で手前側と奥側が入れ替わっている。
【0094】
図12に示す環状固定部材42は、ガーゼや布等の変形を容認する素材からなる二つの薄い環状の部材で構成されている。環状固定部材42の外周側には縫製部39aが設けられており、内周側には縫製部39bが設けられている。そして、縫製部39a、39bの間には内部空間42cが形成されている。内部空間42cには、出入口部42a、42bが設けられている。
【0095】
内部空間42cには、紐状の取付部材43が挿通されている。取付部材43の長さは、内部空間42cの長さよりも長い。すなわち、内部空間42cに取付部材43を配置した際に、図10に示すように、取付部材43の両端を、出入口部42a、42bから露出させることができる。
【0096】
図10に示すように、管楽器補助具40には、円形の折返し部47が設けられている。折返し部47は、環状固定部材42よりも内周側のフィルタ部材41a、41b上に設けられている。折返し部47は、管楽器の朝顔部の開口の外径と一致している。
【0097】
管楽器補助具40は、図10に示す状態ではフィルタ部材41a、41bの間に隙間(孔)は形成されていないが、弾性変形が可能な補強片46a、46bを、図13に示す矢印51a、51bで示す互いに離反する方向に押圧すると、フィルタ部材41a、41bの間には孔50が形成される。また、この矢印51a、51bに示す方向の外力がなくなると、フィルタ部材41a、41b(補強片46a、46b)は、図10に示す元の状態に戻り、孔50は閉じる。
【0098】
以上説明した管楽器補助具40は、図14に示す様に、管楽器52の朝顔部52a(ベル)に取り付けることができる。朝顔部52aの開口縁に管楽器補助具40の折返し部47が一致しており、環状固定部材42が、朝顔部52aの後方に配置される。そして、取付部材43を絞り、固く結ぶことにより、管楽器補助具40が朝顔部52aに取り付けられる。
【0099】
これにより、管楽器補助具40のフィルタユニット41の各フィルタ部材41a、41bが、朝顔部52aの開口の全領域に渡って配置される。換言すると、各フィルタ部材41a、41bが、朝顔部52aの開口の一部を遮蔽し、朝顔部52aの開口の全領域が、少なくとも各フィルタ部材41a、41bのいずれかによって閉鎖される。
【0100】
フィルタユニット41が朝顔部52aの開口を閉鎖する際には、例えばフィルタ部材41aの端部48aとフィルタ部材41bの端部49bが朝顔部52aの開口に近い側に配され、フィルタ部材41aの端部49aとフィルタ部材41bの端部48bが、朝顔部52aの開口から遠い側に配される。
【0101】
さらに、弱音器53を使用する際には、フィルタ部材41a、41bを変形させ、両者の間に形成した孔50を介して、管楽器52の朝顔部52aに弱音器53を取り付けることができる。図14に示すように、管楽器52に取り付けられた弱音器53は、孔50を貫通し、管楽器補助具40の外部に露出している。
【0102】
フィルタ部材41a、41bの補強片46a、46bは、元の閉じた状態に戻ろうとする復元力を有しているため、フィルタ部材41a、41bの間の隙間は拡がらない。また、補強片46a、46bの復元力によって、フィルタ部材41a、41bは、弱音器53の周囲に密着する。そのため、フィルタ部材41a、41bと弱音器53の間には隙間が生じにくい。
【0103】
よって、奏者の呼気の大半は、フィルタユニット41(フィルタ部材41a、41b)を通過し、大半の唾液の飛沫がフィルタ部材41a、41bで捕捉される。そのため、奏者の呼気に含まれる唾液の飛沫が周囲に飛散することが良好に抑制される。
【0104】
次に、図15図16を参照しながら、フィルタユニット41の別の実施形態について説明する。
【0105】
図15(a)~図15(c)は、管楽器補助具60のフィルタユニット61を示している。管楽器補助具60は、フィルタユニット61の周囲に、図12に示す環状固定部材42と同構造の環状固定部材が固定された構造を有している。なお、図15(a)~図15(c)では環状固定部材の描写は省略している。
【0106】
図15(a)に示すように、フィルタユニット61は、3つのフィルタ部材61a~61cを有する。各フィルタ部材61a~61cは、半円形の外形を呈しており、直線部分には補強片62a~62cが取り付けられている。補強片62a~62cは、図2(d)に示す補強片10a、10bと同様の構造を有している。すなわち、補強片62a~62cは、横断面がV字形の直線状の部材である。また、補強片62a~62cは、弾性を有する素材で形成されており、復元力を有する。
【0107】
図15(b)に示すように、フィルタユニット61の中心64に各フィルタ部材61a~61cの中心を一致させ、120度ずつ角度をずらして組み合わせる。すなわち、各フィルタ部材61a~61cの中心角60度の領域が、隣接する両側のフィルタ部材と重なっている。
【0108】
そして、図15(b)に示すように、フィルタ部材61aは、フィルタ部材61bよりも紙面の手前側に配されていると共に、フィルタ部材61cよりも紙面の奥側に配されている。また、フィルタ部材61bは、フィルタ部材61cよりも紙面の手前側に配されている。すなわち、各フィルタ部材61a~61cの一方の端部が、紙面の手前側に配されており、他方の端部が、紙面の奥側に配されている。
【0109】
図示していないが、フィルタユニット61の外周部分に、図11図12に示すような環状固定部材42が取り付けられて、管楽器補助具60が構成されている。そして、図14に示すような管楽器52の朝顔部52aにフィルタユニット61の折返し部63を一致させて当該朝顔部52aに取り付ける。図15(b)は、朝顔部52aに取り付けられたフィルタユニット61を正面視した図である。
【0110】
これにより、フィルタユニット61の各フィルタ部材61a~61cが、朝顔部52aの開口の全領域に渡って配置される。換言すると、各フィルタ部材61a~61cが、それぞれ朝顔部52aの開口の一部を遮蔽し、開口の全領域が、少なくとも各フィルタ部材61a~61cのいずれかによって閉鎖される。
【0111】
図15(b)に示すように、各フィルタ部材61a~61c(補強片62a~62c)同士が交差しており、フィルタユニット61の中心64は閉じている。すなわち、図15(b)に示す状態では、フィルタユニット61の紙面の手前側と奥側が遮蔽されている。フィルタユニット61が朝顔部52aの開口を閉鎖する際には、フィルタ部材61a~61cの一部が朝顔部52aの開口に近い側に配され、フィルタ部材61a~61cの他の一部が、朝顔部52aの開口から遠い側に配される。
【0112】
また、図15(c)に示すように、補強片62a~62cを変形させて、中心64を押し広げ、孔65を形成することができる。そして、弱音器66は、フィルタユニット61の孔65を介して管楽器52に取り付けることができる。
【0113】
各フィルタ部材61a~61cと弱音器66の間に形成される隙間は、極めて小さい。そのため、この隙間を介して管楽器から外部に飛散する奏者の呼気は極めて少なく、呼気に含まれる唾液の飛沫の周囲への飛散は、良好に抑制される。
【0114】
このように、各フィルタ部材61a~61cを構成すると、フィルタユニット61の加工が容易になる。すなわち、各フィルタ部材61a~61cの外形は半円形であり、加工が容易である。また、補強片62a~62cは、直線状に構成することができ、製造が極めて容易である。
【0115】
図16(a)~図16(c)は、管楽器補助具70のフィルタユニット71を示している。管楽器補助具70は、フィルタユニット71の周囲に、図12に示す環状固定部材42と同構造の環状固定部材が固定された構造を有している。なお、図16(a)~図16(c)では環状固定部材の描写は省略している。
【0116】
図16(a)に示すように、フィルタユニット71は、4つのフィルタ部材71a~71dを有する。すなわち、フィルタユニット71は、図15に示すフィルタユニット61と同様のフィルタ部材を4つ有する。そして、4つのフィルタ部材71a~71dの中心を、フィルタユニット71の中心74に一致させ、互いに90度ずつ角度をずらして組み合わせる。すなわち、各フィルタ部材71a~71dの中心角90度の領域が、隣接する両側のフィルタ部材と重なっている。
【0117】
そして、フィルタ部材71aは、フィルタ部材71bよりも紙面の手前側に配されていると共に、フィルタ部材71dよりも紙面の奥側に配されている。また、フィルタ部材71bは、フィルタ部材71cよりも紙面の手前側に配されている。さらに、フィルタ部材71cは、フィルタ部材71dよりも紙面の手前側に配されている。
【0118】
図示していないが、フィルタユニット71の外周部分は、図11図12に示すような環状固定部材42が取り付けられて管楽器補助具70が構成されている。そして、図16(b)に示すように、フィルタユニット71の折返し部73を、図14に示すような管楽器52の朝顔部52aに一致させて管楽器52に当該管楽器補助具70を取り付ける。
【0119】
これにより、フィルタユニット71の各フィルタ部材71a~71dが、朝顔部52aの開口の全領域に渡って配置される。換言すると、各フィルタ部材71a~71dが、それぞれ朝顔部52aの開口の一部を遮蔽する。そして、朝顔部52aの開口の全領域が、少なくとも各フィルタ部材71a~71dのいずれかによって閉鎖される。
【0120】
図16(b)に示すように、各フィルタ部材71a~71d(補強片72a~72d)同士が交差しており、フィルタユニット71の中心74は閉じている。すなわち、図16(b)に示す状態では、フィルタユニット71の紙面の手前側と奥側が遮蔽されている。フィルタユニット71が朝顔部52aの開口を閉鎖する際には、各フィルタ部材71a~71dの一部がそれぞれ開口に近い側に配され、各フィルタ部材71a~71dの他の一部がそれぞれ開口から遠い側に配される。
【0121】
また、図16(c)に示すように、補強片72a~72dを変形させて、中心64を押し広げ、孔75を形成することができる。そして、弱音器76は、フィルタユニット71の孔75を介して管楽器52に取り付けることができる。
【0122】
各フィルタ部材71a~71dと弱音器76の間に形成される隙間は、極めて小さい。そのため、この隙間を介して管楽器から外部に飛散する奏者の呼気は極めて少なく、呼気に含まれる唾液の飛沫の周囲への飛散は、良好に抑制される。
【0123】
図15図16では、3つ又は4つのフィルタ部材を有するフィルタユニットを開示したが、フィルタユニットは5つ以上のフィルタ部材を有していてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 管楽器補助具
3 取付部材
4、5 フィルタ部材
10a、10b 補強片
11a、11b 補強片
12 取付部材装着部
14a、14b スリット(開口形成部)
17a、17b スリット14aの固定部
18a、18b スリット14bの固定部
20 トランペット(管楽器)
21 朝顔部
21b 朝顔部の開口
26 フィルタ部材
27 取付部材
28 取付部材装着部
29 スリット(開口形成部)
31a、31b スリット29の固定部
40 管楽器補助具
41a、41b フィルタ部材
48a、49b フィルタ部材における朝顔部の開口に近い側に配される部位
48b、49a フィルタ部材における朝顔部の開口から遠い側に配される部位
60 管楽器補助具
61a~61c フィルタ部材
70 管楽器補助具
71a~71d フィルタ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16