(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135813
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】無線局位置推定装置、無線局位置推定システム及び無線局位置推定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/02 20100101AFI20220908BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20220908BHJP
H04W 4/029 20180101ALI20220908BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
H04W64/00 140
H04W4/029
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035888
(22)【出願日】2021-03-05
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム(196000002)」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】石▲ざき▼ 雅之
(72)【発明者】
【氏名】浅野 勝洋
(72)【発明者】
【氏名】山本 清志
(72)【発明者】
【氏名】原田 博司
(72)【発明者】
【氏名】水谷 圭一
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB01
5J062CC11
5J062HH05
5K067AA03
5K067DD17
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067FF03
5K067FF23
5K067JJ53
(57)【要約】
【課題】 無線通信システムの複数の無線局の遅延プロファイルを測定し、無線局の位置推定を容易に行うことができる無線局位置推定装置、無線局位置推定システム及び無線局位置推定方法を提供する。
【解決手段】 無線通信システムにおける無線局の位置を推定する無線局位置推定装置3が、無線通信システムにおける位置推定の対象とする無線局(WRAN移動局2)の探索エリア内の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、測定された遅延プロファイルを用いて無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力し、GIS情報表示端末4が地図上に無線局の位置推定情報を表示する無線局位置推定装置、無線局位置推定システム及び無線局位置推定方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおける1つ又は複数の無線局の位置を推定する無線局位置推定装置を有する無線局位置推定システムであって、
前記無線局位置推定装置は、1つ又は複数の前記無線局から送信された無線信号を受信し、前記無線通信システムにおける下り信号から前記無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定することを特徴とする無線局位置推定システム。
【請求項2】
前記無線局位置推定装置は、前記無線通信システムにおける位置推定の対象とする前記無線局の探索エリア内の前記無線局から送信された無線信号を受信し、前記無線通信システムにおける下り信号から前記無線局の前記識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、前記測定された遅延プロファイルを用いて前記無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力することを特徴とする請求項1記載の無線局位置推定システム。
【請求項3】
前記無線局位置推定装置において取得された前記無線局の前記識別情報と推定された前記位置推定情報に基づいて地図上に前記無線局の位置を表示する表示端末を有することを特徴とする請求項2記載の無線局位置推定システム。
【請求項4】
異なる探索エリアを有する前記無線局位置推定装置を複数備え、前記複数の無線局位置推定装置をネットワークで接続し、
前記ネットワークに前記複数の前記無線局位置推定装置からの前記無線局の前記識別情報と前記位置推定情報を収集して配信するサーバを有することを特徴とする請求項2又は3記載の無線局位置推定システム。
【請求項5】
前記ネットワークに前記サーバから配信された前記無線局の前記識別情報と前記位置推定情報に基づいて前記無線局の位置を地図上に表示する表示端末を1つ又は複数接続したことを特徴とする請求項4記載の無線局位置推定システム。
【請求項6】
前記無線局位置推定装置におけるRF部は、周波数のずれ補正を行うために必要な制御情報を計算する制御部を有し、当該制御部は、周波数のずれ補正が完了したときの制御情報を保持し、保持した前記制御情報を前記RF部に出力し続けることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の無線局位置推定システム。
【請求項7】
前記無線局位置推定装置は、
受信した信号における無線フレームの下り信号内のMAP情報から前記無線局の前記識別情報を取得する識別情報解析部と、
前記無線フレームの下り信号内のプリアンブルから遅延プロファイルを測定する遅延プロファイル測定部と、
前記測定された遅延プロファイルから前記無線局の位置を推定する計算を行い、位置推定情報を出力する位置推定計算部と、
前記取得された前記無線局の前記識別情報と前記位置推定情報を出力するインタフェース部とを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか記載の無線局位置推定システム。
【請求項8】
無線通信システムにおける1つ又は複数の無線局から送信された無線信号を受信し、前記無線通信システムにおける下り信号から前記無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定することを特徴とする無線局位置推定装置。
【請求項9】
前記無線通信システムにおける位置推定の対象とする前記無線局の探索エリア内の前記無線局から送信された無線信号を受信し、前記無線通信システムにおける下り信号から前記無線局の前記識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、前記測定された遅延プロファイルを用いて前記無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力することを特徴とする請求項8記載の無線局位置推定装置。
【請求項10】
無線通信システムにおける無線局の位置を推定する無線局位置推定方法であって、
前記無線局の位置を推定する無線局位置推定装置が、
前記無線通信システムにおける位置推定の対象とする無線局の探索エリア内の前記無線局から送信された無線信号を受信し、
前記無線通信システムにおける下り信号から前記無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、
前記測定された遅延プロファイルを用いて前記無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の前記識別情報と共に出力することを特徴とする無線局位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける移動局となる無線局の位置を推定する無線局位置測定システムに係り、特に、無線信号から遅延プロファイルを測定し、無線局の位置を容易に推測できる無線局位置推定装置、無線局位置推定システム及び無線局位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来、災害・事件現場等の緊急の状況において、消防、救急、自治体等の公共無線通信システムでは、音声を中心とした情報伝達が行われていた。
しかし、昨今の災害の状況を考慮すると、現場判断や対策を的確に実現するには、動画データを含む高度な情報収集が必要である。
【0003】
一般社団法人電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)が策定した標準規格ARIB STD-T103では、200MHz帯広帯域移動無線通信を行う無線局の無線設備のうち、可搬型基地局と移動局の間の広帯域移動通信の物理層及びメディアアクセス制御層について規定している。
可搬型基地局は、電波法上の陸上移動局であるため、必要な場所へ柔軟に設置し、運用することが可能であり、災害現場・事件現場等の主に非常事態発生地域において、現場の映像を対策本部等へ伝送すること等が可能である。
ARIB STD-T103準拠の無線通信システムでは、基本的に1つの可搬型基地局と1つ又は複数の移動局で構成され、複数の移動局で構成される場合はスター型のネットワークトポロジが形成される。
【0004】
一方、ARIB STD-T119は、上記ARIB STD-T103が規定する200MHz帯広帯域移動無線通信を行う無線局の無線設備のうち、可搬型無線設備の物理層、メディアアクセス制御層及び無線ネットワーク制御層を規定したものであり、特に、想定される運用形態の一つである多段中継機能について規定している。
ARIB STD-T119準拠の無線通信システム(以降、WRAN[Wireless Regional Area Network]システム)は、無線ネットワーク制御用スケジューラ、可搬型基地局及び移動局で構成され、複数の移動局で構成される場合はツリー型(広義で直列接続とスター型も含む)のネットワークトポロジが形成される。
【0005】
[従来のWRANシステム:
図9]
従来のWRANシステムの概略について
図9を参照しながら説明する。
図9は、従来のWRANシステムの概略図である。
従来のWRANシステムは、
図9に示すように、WRAN基地局1、WRAN移動局2-1、WRAN移動局2-2、WRAN移動局2-3から構成されている。ここで、WRAN基地局とWRAN移動局を総合して「無線局」と呼ぶことがある。
【0006】
図9において、WRAN基地局1にはWRAN移動局2-1とWRAN移動局2-2が接続している。また、WRAN移動局2-1にはWRAN移動局2-3が接続し、多段中継する構成となっている。
WRAN移動局2-1~WRAN移動局2-3は、移動する車両に搭載され、移動しながら無線通信する。
【0007】
また、無線接続において、WRAN基地局1に近い方の無線局を「上位局」、遠い方の無線局を「下位局」と呼び、上位局から下位局への無線信号を「下り信号」、下位局から上位局への無線信号を「上り信号」と呼ぶ。
多段中継を行う場合、WRAN移動局は、上位局として、下り信号を送信すると共に上り信号を受信する動作と、下位局として、下り信号を受信すると共に上り信号を送信する動作を交互に繰り返す。
【0008】
[従来のWRANシステムの各無線局の送受信タイミング:
図10]
次に、従来のWRANシステムにおける各無線局の送受信タイミングについて
図10を参照しながら説明する。
図10は、従来のWRANシステムの各無線局の送受信タイミングを示す概略図である。
図10の横軸は時間を表し、縦軸はWRANシステムの各無線局を表し、矢印は無線局間の無線送受信の方向を表している。尚、「DL」は、下り(Down Link)送信/下り受信を示し、「UL」は、上り(Up Link)送信/上り受信を示している。
【0009】
WRANシステムでは、
図10に示すように、無線フレーム単位で無線帯域の割り当てを行う。例えば、フレーム番号[1]~[3]では、WRAN基地局1とWRAN移動局2-1が通信を行い、フレーム番号[4]~[6]では、WRAN移動局2-1とWRAN移動局2-3が通信を行う。
【0010】
また、WRAN移動局2-2及びWRAN移動局2-3は、下位局と接続していないが、フレーム番号[7]~[9]、[13]~[15]では、下り信号を送信する。この下り送信には、新たな下位局をWRANシステムに追加するために必要な信号が含まれている。
【0011】
そして、無線通信システムにおいて、無線局が送信する無線信号から受ける干渉の影響を把握したり、干渉を回避したりするためには、無線信号を送信する無線局の位置を把握することが重要である。
【0012】
干渉源となる無線局の位置を把握できた場合の活用方法の一例について説明する。
ある無線システムについて、利用優先順位の異なるユーザ同士が近接するエリアにて無線通信システムを運用している状況において、利用優先順位の高いユーザの無線局が、干渉波となる無線信号を送信しながら、利用優先順位の低いユーザが運用する通信エリアに近づいて来たことが確認できた場合、利用優先順位の低いユーザが運用する無線通信システムの無線送信出力レベルを下げたり、無線送信を停止したりすることで、無線通信システム同士の干渉によって生じる無線システムの性能低下を軽減もしくは回避させることが可能となる。
【0013】
そして、時間が経過し、干渉の影響が無線通信システムの性能低下に影響しない程度に、干渉源の無線局が遠ざかったことが確認できた場合に、利用優先順位の低いユーザが運用する無線通信システムを通常の運用状態に戻すことも可能である。
【0014】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特許第3733920号公報「位置検出機能を備えた無線端末装置」(特許文献1)、特許第3840412号公報「無線端末装置」(特許文献2)がある。
特許文献1,2には、複数の無線局から送信された信号の受信波からの遅延プロファイルを作成して無線局の受信点の位置を計算することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3733920号公報
【特許文献2】特許第3840412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、特定の無線局からの無線信号との同期を維持するように動作するため、無線フレーム単位で送信元の無線局が切り替わる無線環境下で、各々の無線局から送信される無線信号を受信して位置検出のために遅延プロファイルを生成又は測定することを容易に行うことができないという問題点があった。
【0017】
尚、特許文献1,2には、無線通信システムにおける複数の無線局について、受信信号から遅延プロファイルを測定し、その無線局の位置を推定する構成についての記載がない。
【0018】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、無線通信システムの1つ又は複数の無線局の遅延プロファイルを測定し、無線局の位置推定を容易に行うことができる無線局位置推定装置、無線局位置推定システム及び無線局位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線通信システムにおける1つ又は複数の無線局の位置を推定する無線局位置推定装置を有する無線局位置推定システムであって、無線局位置推定装置は、1つ又は複数の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定することを特徴とする。
【0020】
本発明は、上記無線局位置推定システムにおいて、無線局位置推定装置は、無線通信システムにおける位置推定の対象とする無線局の探索エリア内の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、測定された遅延プロファイルを用いて無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力することを特徴とする。
【0021】
本発明は、上記無線局位置推定システムにおいて、無線局位置推定装置において取得された無線局の識別情報と推定された位置推定情報に基づいて地図上に無線局の位置を表示する表示端末を有することを特徴とする。
【0022】
本発明は、上記無線局位置推定システムにおいて、異なる探索エリアを有する無線局位置推定装置を複数備え、複数の無線局位置推定装置をネットワークで接続し、ネットワークに複数の無線局位置推定装置からの無線局の識別情報と位置推定情報を収集して配信するサーバを有することを特徴とする。
【0023】
本発明は、上記無線局位置推定システムにおいて、ネットワークにサーバから配信された無線局の識別情報と位置推定情報に基づいて無線局の位置を地図上に表示する表示端末を1つ又は複数接続したことを特徴とする。
【0024】
本発明は、上記無線局位置推定システムにおいて、無線局位置推定装置におけるRF部は、周波数のずれ補正を行うために必要な制御情報を計算する制御部を有し、当該制御部は、周波数のずれ補正が完了したときの制御情報を保持し、保持した制御情報を前記RF部に出力し続けることを特徴とする。
【0025】
本発明は、上記無線局位置推定システムにおいて、無線局位置推定装置が、受信した信号における無線フレームの下り信号内のMAP情報から無線局の識別情報を取得する識別情報解析部と、無線フレームの下り信号内のプリアンブルから遅延プロファイルを測定する遅延プロファイル測定部と、測定された遅延プロファイルから無線局の位置を推定する計算を行い、位置推定情報を出力する位置推定計算部と、取得された無線局の識別情報と位置推定情報を出力するインタフェース部とを有することを特徴とする。
【0026】
本発明は、無線局位置推定装置において、無線通信システムにおける1つ又は複数の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイル測定することを特徴とする。
【0027】
本発明は、上記無線局位置推定装置において、無線通信システムにおける位置推定の対象とする無線局の探索エリア内の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、測定された遅延プロファイルを用いて無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力することを特徴とする。
【0028】
無線通信システムにおける無線局の位置を推定する無線局位置推定方法であって、無線局の位置を推定する無線局位置推定装置が、無線通信システムにおける位置推定の対象とする無線局の探索エリア内の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、測定された遅延プロファイルを用いて無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、無線通信システムにおける1つ又は複数の無線局の位置を推定する無線局位置推定装置を有する無線局位置推定システムであって、無線局位置推定装置は、1つ又は複数の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延をそれぞれ測定する無線局位置推定システムとしているので、無線局の位置推定を容易に行うことができる効果がある。
【0030】
本発明によれば、異なる探索エリアを有する無線局位置推定装置を複数備え、複数の無線局位置推定装置をネットワークで接続し、ネットワークに複数の無線局位置推定装置からの無線局の識別情報と位置推定情報を収集して配信するサーバを有する上記無線局位置推定システムとしているので、広範囲の探索エリアを遠隔地から監視できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】WRANシステムの無線フレーム構成を示す概略図である。
【
図5】無線局位置推定装置の構成ブロック図である。
【
図6】位置推定情報のデータ構造を示す概略図である。
【
図7】無線局位置推定装置の処理フローチャートである。
【
図10】従来のWRANシステムの各無線局の送受信タイミングを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線局位置推定システム(本無線局位置推定システム/本システム)は、無線通信システムにおける無線局の位置を推定する無線局位置推定装置が、無線通信システムにおける位置推定の対象とする無線局の探索エリア内の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、測定された遅延プロファイルを用いて無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力する無線局位置推定システムとしているので、無線局の位置推定を容易に行うことができるものである。
【0033】
本発明によれば、異なる探索エリアを有する無線局位置推定装置を複数備え、複数の無線局位置推定装置をネットワークで接続し、ネットワークに複数の無線局位置推定装置からの無線局の識別情報と位置推定情報を収集して配信するサーバを有する上記無線局位置推定システムとしているので、広範囲の探索エリアを遠隔地から監視できる効果がある。
【0034】
[無線局位置推定方法]
ここで、本システムを説明する前に、無線局の位置を推定する3つの推定方法を説明する。
第1の位置推定手法は、無線局に搭載するセンサを用いる方式であり、第2の位置推定手法は、無線信号を受信したときに測定するRSSI(Received Signal Strength Indicator)を用いる方式であり、第3の位置推定手法は、位置推定対象の無線システムの無線信号を受信し、測定した遅延プロファイルから位置を推定する方式である。
【0035】
[第1の位置推定方法]
第1の位置推定手法は、直前の位置からの変位を基にして現在位置を求めるため、一度座標に誤りがあるとそれに誤差が累積するという課題が挙げられる。また、その位置情報は、無線局や無線局を構成する無線システムから入手する必要があるが、それらの情報は秘匿される場合や、通知手段がない場合が想定され、常にリアルタイムで入手できるとは限らないという課題が挙げられる。
【0036】
[第2の位置推定方法]
第2の位置推定手法を、無線LAN(Local Area Network)システムの例を用いて説明すると、無線LAN端末の位置推定の精度は、無線LANアクセスポイントの測定点に依存し、無線LAN端末の周囲に無線LANアクセスポイントが少ない場合,位置推定精度は低下する。
位置推定精度を向上させるには、無線LANアクセスポイントの測定点を増やす必要がある。屋外での運用を想定した場合、測定点の増加によりコストが増加してしまうという課題が挙げられる。
【0037】
[第3の位置推定手法]
第3の位置推定手法は、3つの段階(センシング、学習、推定)から構成されている。
第1段階のセンシングは、VHF帯電波センサ(基地局)が、位置推定対象となる探索エリアに対し、WRANシステムの無線信号を送信する。VHF帯電波センサ(端末局)が、探索エリア内の複数地点において、WRANシステムの信号を受信し、遅延プロファイルを測定する。測定地点の位置情報と遅延プロファイルを紐づけて収集し、位置推定学習用データを生成する。
【0038】
第2段階の学習は、探索エリアをあるサイズに区分したものを位置クラスタとする。位置推定サーバが、それぞれの位置クラスタと、上記センシングにて測定した遅延プロファイルとの関係を機械学習し、位置推定モデルを作成する。
第3段階の推定は、位置推定対象の無線局が探索エリアに侵入してきた場合、VHF帯電波センサ(基地局)が、その無線局から送信される無線信号を受信し、遅延プロファイルを測定する。測定した遅延プロファイルを、上記学習にて作成した位置推定モデルに入力して、無線局の位置クラスタを推定する。
【0039】
次に、第3の位置推定手法が位置推定対象とする無線システムについて説明する。
一般社団法人電波産業会(ARIB:Association of Radio Industries and Businesses)が策定した標準規格ARIB STD-T103では、200MHz帯広帯域移動無線通信を行う無線局の無線設備のうち、可搬型基地局と移動局の間の広帯域移動通信の物理層及びメディアアクセス制御層について規定している。
可搬型基地局は電波法上の陸上移動局であるため、必要な場所へ柔軟に設置、運用することが可能であり、災害現場・事件現場等の主に非常事態発生地域において、現場の映像を対策本部等へ伝送すること等が可能である。ARIB STD-T103準拠の無線通信システムでは、基本的に1つの可搬型基地局と1つ又は複数の移動局で構成され、複数の移動局で構成される場合はスター型のネットワークトポロジが形成される。
【0040】
一方、ARIB STD-T119は、上記ARIB STD-T103が規定する200MHz帯広帯域移動無線通信を行う無線局の無線設備のうち、可搬型無線設備の物理層、メディアアクセス制御層及び無線ネットワーク制御層を規定したものであり、特に、想定される運用形態の一つである多段中継機能について規定している。
ARIB STD-T119準拠の無線通信システム(WRANシステム)は、無線ネットワーク制御用スケジューラ、可搬型基地局及び移動局で構成され、複数の移動局で構成される場合はツリー型(広義で直列接続とスター型も含む)のネットワークトポロジが形成される。
【0041】
上記第3の位置推定方法については、「[依頼講演]広域系WRANによる電波ビッグデータを用いた高能率周波数共用システムの研究開発概要」(水谷圭一、原田博司)信学技報, vol. 120, no. 138, SRW2020-15, pp. 31-36, 2020年8月.に詳しく記載されている。
【0042】
上記第3の位置推定手法により、WRANシステムの無線局の位置推定を実現するためには、WRAN無線局からの無線信号から遅延プロファイルを測定する必要がある。その遅延プロファイルを測定する装置として、既存のWRAN無線局を用いた場合について説明する。
既存のWRAN無線局は、特定の無線局からの無線信号との同期を維持するように動作するため、第3の位置推定手法の第1段階のセンシングの測定において、1台の無線局が送信する無線信号から遅延プロファイルを測定することは比較的容易である。
【0043】
しかしながら、第3の位置推定手法の第3段階の推定では、位置推定対象の無線局が1つとは限らないため、複数の無線局の位置推定を行う必要がある。そして、WRANシステムでは、無線帯域割当により、各無線局が無線フレーム単位で無線送信タイミングを切替えて無線通信を行うことになる。
【0044】
このように、既存のWRAN無線局は、特定の無線局からの無線信号との同期を維持するように動作するため、無線フレーム単位で、送信元無線局が切り替わる無線環境において、それぞれの無線局から送信される無線信号を受信して、遅延プロファイルを測定することが非常に困難である。
【0045】
そこで、本システムでは、第3の位置推定手法の第3段階の推定において、無線局位置推定装置が、探索エリアに存在する複数のWRAN無線局の遅延プロファイルを測定し、WRAN無線局の位置推定を行い、その結果を出力するようにしたものである。
【0046】
[本システム:
図1]
次に、本システムの概要について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本無線局位置推定システムの概略図である。
本システムでは、
図1に示すように、WRAN基地局1と、複数のWRAN移動局2-1~2-3とから構成されるWRANシステムに対して、少なくとも一つの無線局位置推定装置3と、少なくとも一つのGIS(Geographic Information System)情報表示端末4とから構成されている。
【0047】
本システムにおいて、無線局位置推定装置3が、WRANシステムに接続することなく、WRANシステムの外部から、WRAN基地局1及びWRAN移動局2-1~2-3から送信される無線信号を受信し、その受信信号を用い、WRAN基地局1及びWRAN移動局2-1~2-3の位置を推定するようにしたものである。
【0048】
無線局位置推定装置3は、WRAN無線局の位置推定対象となる探索エリア近くに配置される。
図1では、探索エリア内にWRAN移動局2-1及びWRAN移動局2-3が存在する。
無線局位置推定装置3は、WRAN移動局2-1及びWRAN移動局2-3の無線信号を受信可能であり、WRAN基地局1及びWRAN移動局2-2の無線信号は受信不能である。
GIS情報表示装置4は、無線局位置推定装置3とネットワーク接続する。
【0049】
無線局位置推定装置3は、WRANシステムの無線信号を受信し、解析及び測定した結果であるWRAN無線局の識別情報と位置推定情報をGIS情報表示装置4へ通知する。
GIS情報表示装置4は、通知されたWRAN無線局の識別情報及び位置推定情報と地図情報と合わせて表示する。
【0050】
[WRANシステムの無線フレーム構成:
図2]
次に、WRANシステムの無線フレーム構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、WRANシステムの無線フレーム構成を示す概略図である。
WRANシステムの無線フレームは、
図2に示すように、WRANシステムの複信方式がTDD(Time Division Duplex)方式であり、縦軸が周波数、横軸が時間を表している。
【0051】
無線フレーム(10ミリ秒)は、下り信号の送受信を行うDL(Down Link)サブフレーム区間、上り信号の送受信を行うUL(Up Link)サブフレーム区間、下り信号と上り信号の重なりを回避するためのギャップタイムであるTTG(Transmit/receive Transition Gap)及びRTG(Receive/transmit Transition Gap)に区分される。
【0052】
DLサブフレーム及びULサブフレーム区間の各信号について説明する。
プリアンブルは、下り信号の受信処理において、同期処理を行うための信号である。
FCH(Frame Check Header)は、MAP情報の構成情報(変調方式、誤り訂正方式、MAPデータサイズ)を含む信号である。
DLデータバースト領域は、ユーザデータを含む領域である。
レンジング領域は、下位局からの上り信号の同期処理に必要な信号を含む領域である。
ULデータバースト領域は、ユーザデータを含む領域である。
【0053】
[MAP情報のデータ構造:
図3]
次に、無線フレームにおけるMAP情報のデータ構造について
図3を参照しながら説明する。
図3は、MAP情報のデータを示す概略図である。
MAP情報のデータは、
図3に示すように、DL-MAP及びUL-MAPで構成される。
【0054】
更に、DL-MAPは、MAPデータ長、無線フレーム番号、無線局の識別情報、DLサブフレーム区間長、DLデータバーストの構成情報により構成される。
また、UL-MAPは、ULサブフレーム区間長、ULデータバーストの構成情報により構成される。
【0055】
[DL-MAPの内容]
DL-MAPの内容について説明する。
MAPデータ長は、MAP情報全体のデータ長である。
無線フレーム番号は、無線フレーム周期でインクリメントされる無線フレームを識別するための番号である。
無線局の識別情報は、WRANシステム内において各無線局に対し、ユニークな番号として付与され、DL-MAPを送信する無線局の識別を可能とする情報である。
【0056】
DLサブフレーム区間長は、無線フレーム内のDLサブフレーム区間の長さを示す時間情報である。
DLデータバーストの構成情報には、DLデータバーストの変調方式、符号化率、DLデータバースト領域内のバースト配置情報が含まれる。
【0057】
[UL-MAPの内容]
UL-MAPの内容について説明する。
ULサブフレーム区間長は、無線フレーム内のULサブフレーム区間の長さを示す時間情報である。
ULデータバーストの構成情報には、ULデータバーストの変調方式、符号化率、ULデータバースト領域内のバースト配置情報が含まれる。
【0058】
[無線局位置推定装置3の動作]
次に、本システムにおける無線局位置推定装置3の動作について説明する。
無線局位置推定装置3は、WRAN無線局の下り信号を測定対象とし、DL-MAP内の無線局の識別情報を取得し、プリアンブルから測定した遅延プロファイルを用いて位置推定結果を計算する。
【0059】
また、無線局位置推定装置3は、
図1に示す探索エリア内に存在するWRAN無線局からの無線信号を受信可能とし、下り信号を測定対象としていることから、
図10に示す各無線局の送受信タイミングにおいて、フレーム番号[4]~[9]のWRAN移動局2-1及びWRAN移動局2-3から送信される下り信号を、無線局位置推定装置3の測定対象とする。
【0060】
[本システムの位置推定方法:
図4]
本システムにおける位置推定方法について
図4を参照しながら説明する。
図4は、位置推定方法のシーケンス図である。
図10に示した各無線局の送受信タイミングにおける無線信号の送受信の流れと、
図1に示した無線局位置推定装置3とGIS情報表示装置4の処理の流れを併せて、
図4のシーケンス図に示す。
図4に示すように、フレーム番号[4]~[9]でWRAN移動局2-1及びWRAN移動局2-3から送信される下り信号を、無線局位置推定装置3の測定対象としていることを表している。
【0061】
フレーム番号[4]において、無線局位置推定装置3は、WRAN無線局2-1からの下り信号を受信し、MAP情報を解析して取得した無線局の識別情報と、プリアンブルから測定した遅延プロファイルを用いて計算した位置推定情報を、GIS情報表示装置4へ通知する。
GIS情報表示装置4は、通知された位置推定情報を地図情報と合わせて表示する。
フレーム番号[5]~[9]における無線局位置推定装置3及びGIS情報表示装置4の処理は、上記フレーム番号[4]の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
[無線局位置推定装置3の構成:
図5]
次に、本システムにおける無線局位置推定装置3の構成について
図5を参照しながら説明する。
図5は、無線局位置推定装置の構成ブロック図である。
無線局位置推定装置3は、
図5に示すように、アンテナ11と、RF(Radio Frequency)部12と、制御部13と、無線局の識別情報解析部14と、遅延プロファイル測定部15と、位置推定計算部16と、ネットワークインタフェース部17とから構成されている。
【0063】
アンテナ11は、WRANシステムの無線信号を受信し、RF部12に出力する。
RF部12は、入力したWRANシステムの無線信号をベースバンド信号へ周波数変換し、制御部13と無線局の識別情報解析部14と遅延プロファイル測定部15へ出力する。
【0064】
制御部13は、入力したベースバンド信号に基づき、同期処理のための制御情報を計算し、RF部12に出力する。具体的には、フレームタイミング制御、周波数のずれ補正、ゲイン制御等の制御情報を計算する。
RF部12は、入力した制御情報を用いて同期処理を行う。
また、制御部13は、周波数のずれ補正が完了したときの制御情報を保持し、その保持した周波数のずれ補正の制御情報をRF部12へ出力し続ける機能を有する。
【0065】
無線局の識別情報解析部14は、入力したベースバンド信号の下り信号内のMAP情報を解析し、無線局の識別情報を取得し、ネットワークインタフェース部17へ出力する。
遅延プロファイル測定部15は、入力したベースバンド信号の下り信号内のプリアンブルから遅延プロファイルを測定し、位置推定計算部16へ出力する。
位置推定計算部16は、入力された遅延プロファイルを用いて、上述の第3の位置推定手法に基づき、位置推定の計算を行い、位置推定情報をネットワークインタフェース部17へ出力する。
【0066】
ネットワークインタフェース部17は、無線局の識別情報解析部14からの無線局の識別情報と、位置推定計算部16からの位置推定情報とを入力し、
図6に示すデータ構造に編集し、ネットワークインタフェースを介して、GIS情報表示端末4に送信出力する。
【0067】
ここで、無線局位置推定装置3には、第3の位置推定手法の第1段階のセンシングを数多く行い、無線局の位置データと遅延プロファイルのデータの組を複数取得し、それらのデータを元に第2段階の学習を行い、学習された位置推定モデルが位置推定計算部16に組み込まれ、位置推定計算部16は、遅延プロファイル測定部15で測定された遅延プロファイルのデータを当該位置推定モデルに入力して第3段階の推定を行って位置推定を演算する。
従って、第1段階のセンシングと第2段階の学習は、別で行われ、無線局位置推定装置3では、第3段階の推定が行われるものである。
【0068】
[位置推定情報のデータ構造:
図6]
次に、位置推定情報のデータ構造について
図6を参照しながら説明する。
図6は、位置推定情報のデータ構造を示す概略図である。
位置推定情報のデータ構造は、
図6に示すように、無線局の識別情報と、位置推定情報と、終了コードにより構成される。
つまり、位置推定情報を入力するGIS情報表示端末4が、各無線局に対応する位置推定情報を、無線局単位で管理できるように、無線局の識別情報と位置推定情報を1つのデータにまとめた構造になっている。
【0069】
[無線局位置推定装置の処理フロー:
図7]
次に、無線局位置推定装置における処理フローについて
図7を参照しながら説明する。
図7は、無線局位置推定装置の処理フローチャートである。
無線局位置推定装置3は、
図7に示すように、WRANシステムの無線信号の受信処理を繰り返す(S1)。
【0070】
無線信号を受信した後(Yesの場合)は、無線局の識別情報解析部14が受信した下り信号内のMAP情報の解析を行い、無線局の識別情報を取得する(S2)。
無線信号を受信しなかった場合(Noの場合)、無線信号受信の判定処理S1を繰り返す。
次に、遅延プロファイル測定部15が受信した下り信号内のプリアンブルから遅延プロファイルを測定し(S3)、位置推定計算部16が遅延プロファイルを用いて、位置推定情報を計算する(S4)。
【0071】
そして、ネットワークインタフェース部17が無線局の識別情報と位置推定情報をネットワークインタフェースから出力し(S5)、フローチャート先頭に戻った後は、処理S1~処理S5を繰り返す。
【0072】
このように、発明を実施するための最良の形態を実現することにより、位置推定対象とする探索エリア内の複数のWRAN無線局の位置を推定することが可能となる。
尚、
図1では、WRAN無線局の位置推定対象となる探索エリアに、WRAN基地局が含まれていないが、WRAN移動局だけでなく、可搬性のあるWRAN基地局の位置推定を行うようにしてもよい。
【0073】
[本システムの拡張システム:
図8]
次に、本システムを応用した拡張システムについて
図8を参照しながら説明する。
図8は、本システムの拡張システムの概略図である。
拡張システムは、本システムの発展形であり、
図8に示すように、探索エリアが複数存在し、複数の無線局位置推定装置3と複数のGIS情報表示端末4がインターネット回線6を介して接続されている。
【0074】
具体的には、拡張システムは、無線局位置推定装置3-1~無線局位置推定装置3-3と、GIS情報表示端末4-1~GIS情報表示端末4-3と、位置推定情報収集・配信サーバ5とがインターネット回線等のネットワーク6によって接続される構成となっている。
【0075】
無線局位置推定装置3-1~無線局位置推定装置3-3で計算されたそれぞれの位置推定情報は、ネットワーク(インターネット回線)6を介して、一旦、位置推定情報収集・配信サーバ5に収集される。
収集された位置推定情報は、位置推定情報収集・配信サーバ5によってGIS情報表示端末4-1~GIS情報表示端末4-3へ配信され、位置推定情報が地図情報と合わせて表示される。
【0076】
また、各GIS情報表示端末4-1~GIS情報表示端末4-3は、それぞれが所望する位置推定情報に関係する情報(例えば、探索エリア1~3、無線局の識別情報又は配信周期等)を位置推定情報収集・配信サーバ5に設定し、配信情報を制御することで、ネットワーク6の回線上のトラフィック負荷を抑制することが可能となる。
【0077】
この拡張システム構成例により、複数の探索エリアの広範囲に及ぶWRAN無線局の位置を把握することが可能となり、複数拠点での位置推定情報の共有も可能となって、複数ユーザが複数の遠隔地から探索エリアの監視等を同時に行うことが可能となるものである。
【0078】
[実施の形態の効果]
本システムによれば、無線通信システムにおける無線局の位置を推定する無線局位置推定装置3が、無線通信システムにおける位置推定の対象とする無線局の探索エリア内の無線局から送信された無線信号を受信し、無線通信システムにおける下り信号から無線局の識別情報を取得すると共に遅延プロファイルを測定し、測定された遅延プロファイルを用いて無線局の位置を推定して位置推定情報を当該無線局の識別情報と共に出力するようにしているので、無線局の位置推定を容易に行うことができる効果がある。
【0079】
本システムによれば、GIS情報表示端末4が位置推定情報を地図情報と共に表示するようにしているので、無線局の位置を視覚的に認識でき、干渉回避に向けた対策に活用できる効果がある。
【0080】
本システムの拡張システムによれば、異なる探索エリアを有する無線局位置推定装置3を複数備え、複数の無線局位置推定装置3をネットワーク6で接続し、ネットワーク6に複数の無線局位置推定装置3からの無線局の識別情報と位置推定情報を収集して配信する位置推定情報収集・配信サーバ5を備えるようにしているので、広範囲の探索エリアを遠隔地から監視できる効果がある。
【0081】
本システムの拡張システムによれば、ネットワーク6に接続する複数のGIS情報表示端末4が、サーバ5に特定の探索エリア又は特定の無線局の位置推定情報の配信を要求して表示するようにしているので、無線局の位置推定情報を複数拠点で共有でき、複数ユーザが複数の遠隔地から探索エリアの監視等を同時に行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、無線通信システムの1つ又は複数の無線局の遅延プロファイルを測定し、無線局の位置推定を容易に行うことができる無線局位置推定装置、無線局位置推定システム及び無線局位置推定方法に好適である。
【符号の説明】
【0083】
1…WRAN基地局、 2…WRAN移動局、 3…無線局位置推定装置、 4…GIS情報表示端末、 5…位置推定情報収集・配信サーバ、 6…ネットワーク、 11…アンテナ、 12…RF部、 13…制御部、 14…無線局の識別情報解析部、 15…遅延プロファイル測定部、 16…位置推定計算部、 17…ネットワークインタフェース部