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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135820
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】係止具
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/50 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
E05C17/50
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021070691
(22)【出願日】2021-03-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】521163086
【氏名又は名称】大野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 和樹
(57)【要約】
【課題】シンプルな構造を持ち、狭い空間でも使用可能なうえ、美観にも優れる係止具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の係止具の一実施形態であるドアストッパー1は設置面Fに空いた設置溝Gの中に収納でき、設置溝Gの側面に支持された軸部材5と、軸部材周りに回転できるような回転部材6を持っている。収納状態のドアストッパー1は完全に設置溝G内に収納され、その高さは設置面Fと等しくなっている。このとき設置面Fはドアストッパー1のない単なる平面と同じ状態をとるため、開き戸2の可動域は制限されない。係止状態のドアストッパー1は、操作部3が設置面Fより低い位置、係止部4が設置面Fより高い位置をとる。この時、係止部4に備えられた緩衝材43に開き戸2が接触することで係止が実現される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に空いた設置溝の中に収納され、被係止部材を固定するために用いられる係止具であって、設置溝の側面に支持可能とされた軸部材と、軸部材周りに回転することで、設置溝の中に収納された収納状態と、操作部が平面から設置溝の底面方向へ沈みこみ係止部が設置面からせり出した係止状態とに変化する回転部材を持つ、係止具。
【請求項2】
収納状態において、回転部材の上面が設置面と同じ高さであることを特徴とする請求項1に記載の係止具。
【請求項3】
操作部側の端面または係止部側の端面と、それらと相対する設置溝について、それぞれの形状が、軸部材の回転軸を中心軸とする円筒の周面の一部をなすことを特徴とする請求項1または2に記載の係止具。
【請求項4】
係止状態において、係止部の被係止部材との接触面が、被係止部材の接触面に平行な面をもつことを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の係止具。
【請求項5】
収納状態または係止状態において、回転部材の操作部または係止部の設置溝の底面と接触する面の形状を、接触する底面の形状と一致させたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかの項に記載の係止具。
【請求項6】
磁力により、収納状態―係止状態間の変化が妨げられることを特徴とする請求項1乃至5の何れかの項に記載の係止具。
【請求項7】
係止部における被係止部材との接触面に緩衝材を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れかの項に記載の係止具。
【請求項8】
係止具と被係止部材とを、所定の相対位置に保持するように、係止状態において被係止部材と相対する係止部の面に、被係止部材に嵌合可能な突起を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れかの項に記載の係止具。
【請求項9】
被係止部材がドアであり、前記ドアの可動域を制限するための、請求項1乃至8の何れかの項に記載の係止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係止具及び係止具を利用したドアストッパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固定部材と被固定部材のいずれか一方に取り付けられた係止具によって、他方に取り付けられた係止部材との係止及び係止の解除を所定の操作により行うものが知られている。例として、環をL字型の部材に掛けることで固定するものや、ゴム足の接触と非接触を切り替えて摩擦により固定するもの、磁石により固定部材と被固定部材の接近を感知し固定するものなどがある。
【0003】
さらには、被固定部材自体を固定部材に取り付けられた係止具に押し付けることで固定するもの(特許文献1参照)、被固定部材に取り付けられた係止部材を、固定部材に取り付けられた係止具に押し付けることで固定するもの(特許文献2参照)、固定部材に埋め込まれた係止具を所定の操作により収納-出現させ被固定部材と接触させるもの(特許文献3参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―32603号公報
【特許文献2】特開2002―371740号公報
【特許文献3】特開2008―280773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の係止具にはそれぞれ課題が残されていた。具体的には、環をL字型の部材に掛けることで固定するものは、その設置場所によって周囲に幅のない空間では環に触ることができなくなり操作自体が不可能になった。その他の従来技術では、操作が不可能になる課題はないものの、係止具の操作に手間がかかる、被固定部材への係止部材の取り付けや係止具が常に設置面からせり出していることにより、美観が悪くなったり、掃除の際の邪魔になる、また、動作の自動化により構造の複雑化や製作コスト、破損リスクが増加するなどといった課題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するため、本発明の係止具は設置面に空いた設置溝の側面に支持可能とされた軸部材と、軸部材周りに回転することで、設置溝の中に収納された収納状態と、操作部が平面から設置溝の底面方向へ沈みこみ係止部が設置面からせり出した係止状態に変化するような回転部材を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の係止具は、操作部や係止部を手や足などを使って押し込むことで、収納状態と係止状態を切り替える。係止状態では設置面からせり出した係止部が被係止部材に接触することで係止を実現する。このように、本発明の係止具は非常にシンプルな構造を持つため、簡単な工夫で様々な要求や環境に適応できるという特徴を持つ。
【0008】
例として、収納状態において、回転部材の上面を設置面と同じ高さにすることで収納時の美観を改善する、操作部側の端面または係止部側の端面と、それらと相対する設置溝について、それぞれの形状が、軸部材の回転軸を中心軸とする円筒の周面の一部をなすようにすることで、状態変化に伴う回転部材と設置溝側面との間の隙間を無くし、設置溝内への埃などの侵入を防ぐなどがある。
【0009】
さらに、係止状態における回転部材と被係止部材との接触面や、それぞれの状態における接触面である、回転部材底面と設置溝底面とをそれぞれ平行にする、または接触面に緩衝材を備えることで、接触面の摩耗や破損を防ぐ、磁力により収納状態―係止状態間の変化を妨げ、意図しない動作を防ぐなども考えられる。
【0010】
本発明の係止具は、上記の記載の他に従来技術を利用付加した様々な形態が考えられるが、これらは全て本発明の技術思想に包含される。よって本発明に付加されたあらゆる均等な技術をも本技術思想に含むものである。
【0011】
最後に、この係止具は様々な係止のシチュエーションに適応できることを示したが、例として被係止部材がドアであり、前記ドアの可動域を制限するシチュエーションがある。
【発明の効果】
【0012】
本発明の係止具は、操作部や係止部を手や足などを使って押し込むことで、収納状態と係止状態とを切り替える。これにより、大幅な構造の単純化と簡単な操作、確実な動作を実現している。また、収納状態ではその存在を効果的に隠すことができ、美観の面でも優れる。さらに、係止状態では部材同士の接触により係止を実現しているので、被係止部材側に加工をする必要もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ドアストッパー1(収納状態)が取付けられた出入口付近を示す斜視図である。
図2】ドアストッパー1(係止状態)が取付けられた出入口付近を示す斜視図である。
図3】ドアストッパー1(収納状態)の側面に沿って床の断面をとった図である。
図4】ドアストッパー1(係止状態)の側面に沿って床の断面をとった図である。
図5】ドアストッパー1(収納状態)の設置面F周辺を示す試作品の画像である。
図6】ドアストッパー1(収納状態)の側面に沿って床の断面をとった試作品の画像である。
図7】ドアストッパー1(係止状態)の側面に沿って床の断面をとった試作品の画像である。
図8】固定用突起44と固定穴21の状態を説明する、突起付きドアストッパー7の側面に沿って床の断面をとった図である。
図9】固定用突起44が固定穴21にはめ込まれた状態を示す、突起付きドアストッパー7の側面に沿って床の断面をとった図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
初めに、本発明の係止具の一実施形態であるドアストッパー1について図1乃至7に基づいて説明する。
【0015】
まず、このドアストッパー1の機能について図1図2図5に基づいて説明する。図1図2はともにドアストッパー1が取付けられた出入口付近を示す斜視図であり、特に図1のドアストッパー1は収納状態、図2のドアストッパー1は係止状態を取っている。また、図5図1のドアストッパー1周辺の状態を示す試作品の画像である。
【0016】
図1において、前述の通りドアストッパー1は収納状態をとり、操作部3、係止部4ともに設置面Fと同じ高さとなっている。そのため、設置面Fはドアストッパー1のない単なる平面と同じ状態をとるため、被係止部材である開き戸2の可動域は制限されない。この状態と対応した図5を見ると、収納状態のドアストッパー1が設置面Fに溶け込んでおり、美観が良いのが分かる。
【0017】
図2において、前述の通りドアストッパー1は係止状態をとり、操作部3は設置面Fより低く、係止部4は設置面Fより高い位置をとる。この時、開放された開き戸2は設置面Fからせり出した係止部4と接触するため、可動域が制限される。
【0018】
次にこのドアストッパー1の構造について、図3図4図6図7に基づいて説明する。図3図4はともにドアストッパー1の側面に沿って床の断面をとった図であり、図6図7はそれぞれに対応する試作品の画像である。特に図3図6のドアストッパー1は収納状態、図4図7のドアストッパー1は係止状態を取っている。
【0019】
図3図4図6図7に示されるようにドアストッパー1は設置面Fに空いた設置溝Gの中に収納でき、設置溝Gの側面に支持された軸部材5と、軸部材周りに回転できるような回転部材6を持っている。このとき、回転部材6上面と設置面Fの材質や模様をそろえても良い。その場合、図5のように、収納状態においてより効果的にドアストッパー1の存在を隠すことができる。
【0020】
図3図6に示されるように、収納状態のドアストッパー1は完全に設置溝G内に収納され、その高さは設置面Fと等しくなっている。この状態において操作部3を設置面Fの上方から押すと、回転部材6が軸部材5を軸として回転し、図4図7に示されるような係止状態へと変化する。
【0021】
図4図7に示されるように、係止状態のドアストッパー1は、操作部3が設置面Fより低い位置、係止部4が設置面Fより高い位置をとる。この時、係止部4に備えられた緩衝材43に開き戸2が接触することで係止が実現される。この状態において係止部4を設置面Fの上方から押すと、回転部材6が軸部材5を軸として回転し、図3図6に示されるような収納状態へと変化する。
【0022】
ここで、ドアストッパー1の操作部側の端面3Sまたは係止部側の端面4Sと、それらと相対する設置溝G内の面GSについて、それぞれの形状は、軸部材の回転軸を中心軸とする円筒の周面の一部をなしている。これにより、状態変化に伴う回転部材6と面GSとの間の隙間を無くし、設置溝G内部への埃等の侵入が防がれる。ここで、操作部側の端面3Sと係止部側の端面4Sは、全体が軸部材の回転軸を中心軸とする円筒の周面の形状をとっても良いし、設置面F付近に位置可能な部分のみがその形状であっても良い。
【0023】
また、ドアストッパー1の操作部側の底面3Bまたは係止部側の底面4Bと、それらと相対する設置溝G内の底面GBについて、それぞれの面の形状は一致している。これらにより、それぞれの面の接触時の力が分散され、破損が防がれる。さらにその効果を上げるため、ここに緩衝材を備えても良い。
【0024】
さらに、ドアストッパー1には意図しない状態変化を防ぐため、磁石が備えられている。収納状態では磁石41と磁石42が、係止状態では磁石31と磁石32が接触する。これにより回転部材がどちらかの状態で安定化するため、意図しない状態変化が防がれる。このとき、必ずしも図3図4のような位置に磁石を備える必要はない。同様な効果を得られるのであれば、操作部側の端面3Sまたは係止部側の端面4Sと、それらと相対する設置溝G内の面GSというような、他の位置に磁石を配置しても良い。
【0025】
加えて、ドアストッパー1の係止部4における開き戸2との接触面は、開き戸2の接触面と平行であり、緩衝材43を備えている。これらにより、係止部4と開き戸2の接触による破損が防がれる。このとき、緩衝材の形状は開き戸2の接触面と平行であっても良いし、そうでなくても良い。
【0026】
最後に、さらなる実施形態である突起付きドアストッパー7について図8図9を用いて説明する。ここまで説明してきたドアストッパー1は、実用する場面では一般的な戸当たりと併用することが想定されている。なぜなら、ドアストッパー1は開き戸2を開放状態に固定できても、図1に示されるような、壁Wとドアノブ8の衝突の回避はできないからである。
【0027】
突起付きドアストッパー7は、風などによる壁Wとドアノブ8の衝突を回避することのできる本発明の係止具の一実施形態である。図8図9はともに係止状態をとる突起付きドアストッパー7の側面に沿って床の断面をとった図であり、特に図9は開き戸2が固定された状態を表している。
【0028】
この実施形態において、図8に示されるように、突起付きドアストッパー7の構造はドアストッパー1の構造とほぼ同じであり、唯一の違いは、固定用突起44が追加されたところにある。加えて、開き戸2の底面に固定用突起44がはめ込まれるような固定穴21をあける。その他の構成は、ドアストッパー1と同様であるため説明を省略する。このとき、固定用突起44の形状については、多角柱状であっても、円柱状であっても良い。さらに、その先端の太さについても、細くなっていく形状であっても、そうでなくても良い。
【0029】
使用する際は、突起付きドアストッパー7の収納状態から係止状態への変化時に、固定用突起44を固定穴21にはめ込む。すると、図9のような状態となり、開き戸2は図9の位置で固定される。このようなメカニズムで、突起付きドアストッパー7は、開き戸2の開放状態の固定と同時に壁Wとドアノブ8の衝突の回避も行えるのである。
【0030】
このように、そのシンプルな構造故に要望と周囲の環境に応じた、様々な実施形態をとることができるのもこの係止具の強みである。
【符号の説明】
【0031】
1 ドアストッパー
2 開き戸
21 固定穴
3 操作部
31 磁石
32 磁石
3B 操作部の底面
3S 操作部の端面
4 係止部
41 磁石
42 磁石
43 緩衝材
44 固定用突起
4B 係止部の底面
4S 係止部の端面
5 軸部材
6 回転部材
7 突起付きドアストッパー
8 ドアノブ
F 床
G 設置溝
GB 設置溝の底面
GS 設置溝の回転部材の端面に相対する面
W 壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に空いた設置溝の中に収納され、被係止部材を固定するために用いられる係止具であって、設置溝の側面に支持可能とされた軸部材と、軸部材周りに回転することで、設置溝の中に収納された収納状態と、操作部が平面から設置溝の底面方向へ沈みこみ係止部が設置面からせり出した係止状態とに変化する回転部材を持ち、さらに操作部側の端面および係止部側の端面と、それらと相対する設置溝について、それぞれの形状が、軸部材の回転軸を中心軸とする円筒の周面の一部をなす特徴を持つ、係止具。
【請求項2】
収納状態において、回転部材の上面が設置面と同じ高さであることを特徴とする請求項1に記載の係止具。
【請求項3】
係止状態において、係止部の被係止部材との接触面が、被係止部材の接触面に平行な面をもつことを特徴とする請求項1または2に記載の係止具。
【請求項4】
収納状態または係止状態において、回転部材の操作部または係止部の設置溝の底面と接触する面の形状を、接触する底面の形状と一致させたことを特徴とする請求項1乃至の何れかの項に記載の係止具。
【請求項5】
磁力により、収納状態―係止状態間の変化が妨げられることを特徴とする請求項1乃至の何れかの項に記載の係止具。
【請求項6】
係止部における被係止部材との接触面に緩衝材を備えることを特徴とする請求項1乃至の何れかの項に記載の係止具。
【請求項7】
係止具と被係止部材とを、所定の相対位置に保持するように、係止状態において被係止部材と相対する係止部の面に、被係止部材に嵌合可能な突起を備えることを特徴とする請求項1乃至の何れかの項に記載の係止具。
【請求項8】
被係止部材がドアであり、前記ドアの可動域を制限するための、請求項1乃至の何れかの項に記載の係止具。