(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135841
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】そばの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20220908BHJP
【FI】
A23L7/109 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021072181
(22)【出願日】2021-03-05
(71)【出願人】
【識別番号】521171003
【氏名又は名称】廣田 史
(72)【発明者】
【氏名】廣田 史
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA04
4B046LB04
4B046LC01
4B046LC17
4B046LG12
4B046LG13
4B046LG29
4B046LG32
4B046LP03
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP51
4B046LQ04
(57)【要約】
【課題】湯ごねでそば粉を練る際に、風味のあるそばを従来に比して容易に製造することができるそばの製造方法を提供すること。
【解決手段】そばの製造方法は、そば粉を含む原料紛に、熱湯を添加する第1水分添加工程と、水分が原料粉全体に含まれるように、熱湯を添加した原料粉を混ぜる第1混合工程と、熱湯を添加した原料紛に、冷水を添加する第2水分添加工程と、冷水を添加した原料粉を混ぜる第2混合工程と、冷水を添加した原料紛を練って、玉状の生地を生成する玉状生地生成工程と、玉状の生地を、所定の厚さのシート状に延ばす延し工程と、シート状の生地を線状に切断する切断工程と、を含み、第1水分添加工程における熱湯および第2水分添加工程における冷水のうち少なくとも一方は、糖含有物を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
そば粉を含む原料紛に、熱湯を添加する第1水分添加工程と、
水分が前記原料粉全体に含まれるように、前記熱湯を添加した前記原料粉を混ぜる第1混合工程と、
前記熱湯を添加した前記原料紛に、冷水を添加する第2水分添加工程と、
前記冷水を添加した前記原料粉を混ぜる第2混合工程と、
前記冷水を添加した前記原料紛を練って、玉状の生地を生成する玉状生地生成工程と、
前記玉状の生地を、所定の厚さのシート状に延ばす延し工程と、
前記シート状の生地を線状に切断する切断工程と、
を含み、
前記第1水分添加工程における前記熱湯および前記第2水分添加工程における前記冷水のうち少なくとも一方は、糖含有物を含むことを特徴とするそばの製造方法。
【請求項2】
前記第1水分添加工程では、糖含有物を1.5重量%以上3.0重量%以下の範囲で溶解させた前記熱湯を使用することを特徴とする請求項1に記載のそばの製造方法。
【請求項3】
前記第2水分添加工程では、糖含有物を1.5重量%以上3.0重量%以下の範囲で溶解させた前記冷水を使用することを特徴とする請求項1または2に記載のそばの製造方法。
【請求項4】
前記糖含有物は、1.5%以上5.0%以下の範囲の糖度を有する液体であることを特徴とする請求項2または3に記載のそばの製造方法。
【請求項5】
前記原料紛は、そば粉、またはそば粉と小麦粉とを所定の比率で混ぜ合わせたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のそばの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そばの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
十割そばは、そば粉のみを使用して製造されるそばである。十割そばは、そば粉に水分を含ませてそば粉を練り、玉状の生地を生成した後、玉状の生地を延し棒で所定の厚さとなるように延ばし、延ばした生地を所定の太さの麺となるように切断することによって製造される。そば粉を練る際に、そば粉に水を加えて練る水ごねと、そば粉に熱湯を加えて練る湯ごねと、がある。
【0003】
水ごねの場合には、そば粉に含まれるたんぱく質を水と接触させることによってグルテンを形成し、グルテンの有する粘性を利用して、玉状の生地に仕上げていく。そば粉に含まれるたんぱく質の量は、そば粉の質量に対して10%程度と少ないため、生地全体に粘性を持たせるのは困難であり、水ごねによって製造された麺は、切れやすい。しかし、水を用いることで、そばの旨味成分および香り成分が溶け出しにくくなるため、そばの風味がよくなる。
【0004】
一方、湯ごねの場合には、そば粉に含まれるでんぷんを熱湯と接触させることによって糊化させ、糊化したでんぷんの粘性を利用して、玉状の生地に仕上げていく。そば粉に含まれるでんぷんの量は、そば粉の質量に対して70%程度と多いため、生地全体に粘性を持たせるのは、水ごねの場合に比して容易であり、湯ごねによって製造された麺は、切れにくくなる。しかし、熱湯を用いることで、そばの旨味成分および香り成分が、水ごねの場合に比して溶け出しやすくなるため、水ごねの場合に比して、そばの風味が落ちてしまう。
【0005】
このように、水ごねの場合には、風味はよいが、粘性が低くなり、湯ごねの場合には、粘性が高くなるが、風味が落ちてしまう。そこで、水ごねの場合のように風味がよく、湯ごねの場合のように粘性が高くなる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、そば粉100%の下粉に沸騰した水を加えてそば糊を作成し、そば粉100%の主そば粉にそば糊を加えて顆粒状になるまで混ぜ、顆粒状となった主そば粉をこねながら玉状の生地にまとめる工程を有する十割そばの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、主そば粉に熱湯を用いないため、湯ごねの場合に比して、風味がよくなるが、そば糊を作成する手間が増えてしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、湯ごねでそば粉を練る際に、風味のあるそばを従来に比して容易に製造することができるそばの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のそばの製造方法は、そば粉を含む原料紛に、熱湯を添加する第1水分添加工程と、水分が前記原料粉全体に含まれるように、前記熱湯を添加した前記原料粉を混ぜる第1混合工程と、前記熱湯を添加した前記原料紛に、冷水を添加する第2水分添加工程と、前記冷水を添加した前記原料粉を混ぜる第2混合工程と、前記冷水を添加した前記原料紛を練って、玉状の生地を生成する玉状生地生成工程と、前記玉状の生地を、所定の厚さのシート状に延ばす延し工程と、前記シート状の生地を線状に切断する切断工程と、を含み、前記第1水分添加工程における前記熱湯および前記第2水分添加工程における前記冷水のうち少なくとも一方は、糖含有物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、湯ごねでそば粉を練る際に、風味のあるそばを従来に比して容易に製造することができるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施の形態にかかるそばの製造方法を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、以下で示す数値は一例である。
【0012】
ここでは、十割そばを製造する場合を例に挙げる。まず、そば粉を含む原料粉に、糖含有物を含む熱湯を加える第1水分添加工程が実行される。原料粉は、例えば小麦粉など他の粉を含まない100%の純度のそば粉である。糖含有物を含む熱湯は、糖含有物を、1.5重量%以上3.0重量%以下の範囲の濃度で、熱湯に溶解させて調製したものである。糖含有物は、1.5%以上5.0%以下の範囲の糖度を有する液体である。糖含有物の一例は、イタヤカエデの樹液(メープルサップ)、クルミの樹液、シロップ、しょ糖の水溶液等である。この明細書で、熱湯は、80℃以上100℃以下の水であるとする。一例では、100gのそば粉に対して、糖含有物を含む熱湯は概ね25cc以上35cc以下の割合で添加される。
【0013】
ついで、原料粉全体に水分を含ませるように糖含有物を含む熱湯を添加した原料粉を混ぜる第1混合工程が実行される。以上のように、実施の形態では、原料粉を湯ごねによって混ぜる。
【0014】
その後、水分を含んだ原料粉に、糖含有物を含む冷水をさらに加える第2水分添加工程が実行される。糖含有物を含む冷水は、糖含有物を、1.5重量%以上3.0重量%以下の範囲の濃度で、冷水に溶解させて調製したものである。糖含有物は、1.5%以上5.0%以下の範囲の糖度を有する液体である。糖含有物の一例は、イタヤカエデの樹液(メープルサップ)、クルミの樹液、シロップ、しょ糖の水溶液等である。この明細書で、冷水は、室温以下の水であるとする。一例では、最初に用意した原料紛であるそば粉の質量100gに対して、糖含有物を含む冷水は概ね18cc以上28cc以下の割合で添加される。
【0015】
次いで、原料粉全体に糖含有物を含む冷水が行きわたるように、糖含有物を含む冷水を添加した原料紛を混ぜる第2混合工程が実行される。
【0016】
その後は、公知の方法にしたがって、そばを製造する。一例では、第2混合工程で、原料粉を混ぜていくと、小さい塊ができ始め、さらにかき混ぜると小さい塊同士がくっつき合い、大きな塊ができる。大きな塊ができた後、原料粉からなる大きな塊を練りながら、玉状の生地を生成する玉状生地生成工程が実行される。
【0017】
次いで、玉状の生地を加圧し、厚さが均一なシート状の生地を生成するシート状生地生成工程が実行される。一例では、延し棒を使用して、玉状の生地を薄く延ばし、四角形のシート状の生地にする。シート状の生地の厚さは、一例では1.0mm以上1.5mm以下である。
【0018】
その後、シート状の生地を所定の回数折り重ね、折り重ねたシート状の生地を所定の太さとなるように切断する切断工程が実行される。これによって、線状の麺が形成される。上記したように、実施の形態では、湯ごねによって混ぜるので、そば粉に含まれるでんぷんを糊化している。このため、そば粉同士をつなげやすくなり、線状のそばは切れにくくなる。
【0019】
次いで、沸騰した水であるお湯に麺を投入して、所定の時間茹でる茹で工程が実行される。麺が茹で上がった後、ざるに麺を引き上げ、冷水で洗う水洗行程が実行される。以上によって、そばが製造される。
【0020】
このようにして製造された十割そばは、糖含有物を添加しない熱湯を用いた湯ごねの場合に比して風味が向上する。これは、熱湯ででんぷんが糊化し、また旨味成分および香り成分が溶け出してしまうが、熱湯に含ませた糖含有物がそば粉に旨味および香りを補充する役割を有することによって、風味が向上するものと考えられる。この結果、湯ごねで十割そばを製造しながらも、水ごねの場合と同様の風味を得ることができる。
【0021】
なお、上記した説明では、十割そばの製造方法を例に挙げたが、実施の形態がこれに限定される趣旨ではない。一例では、原料紛として、100%のそば粉ではなく、そば粉と小麦粉とを所定の比率で混ぜ合わせたものを用いてもよい。また、上記した説明では、第1水分添加工程で糖含有物を含む熱湯を添加し、第2水分添加工程で糖含有物を含む冷水を添加しているが、第1水分添加工程の熱湯および第2水分添加工程の冷水のうち少なくとも一方に糖含有物が添加されていればよい。また、第2水分添加工程および第2混合工程を複数回繰り返して行ってもよい。
【0022】
以上のように、実施の形態によるそばの製造方法では、そば粉を含む原料粉に、糖含有物を含む熱湯を添加して、原料紛を混ぜた後、さらに原料紛に、糖含有物を含む冷水を添加して、原料紛を混ぜ、捏ねることによって玉状の生地を形成する。また、玉状の生地をシート状の生地にして線状に切断し、茹で上げて、そばを製造する。これによって、でんぷんが糊化するので、原料紛同士がつながりやすくなり、生地を加工しやすくなる。また、線状に切断した麺も切れにくくなる。さらに、熱湯および冷水に含まれる糖含有物が原料紛に添加されることによって、糖含有物を含まない熱湯で湯ごねした場合に比して、そばの風味が向上するという効果を有する。