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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013585
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】哺乳瓶用温度計
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/16 20060101AFI20220111BHJP
   G01K 1/20 20060101ALI20220111BHJP
   A61J 9/02 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
G01K1/16
G01K1/20
A61J9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206151
(22)【出願日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2020116038
(32)【優先日】2020-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】713010411
【氏名又は名称】加藤 博和
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博和
【テーマコード(参考)】
2F056
4C047
【Fターム(参考)】
2F056DA02
2F056DA08
4C047PP15
(57)【要約】
【課題】
哺乳瓶の内部に温度計を挿入することなく、また哺乳瓶内のミルクに温度測定用の器具を接触させることなく、哺乳瓶の外壁面に接触させた温度測定素子を用いて、哺乳瓶の内部にあるミルクの温度を測定することを目的とする。
【解決手段】
断熱材と温度測定素子で構成されたセンサ部において、哺乳瓶外壁面に接触する温度測定素子を、哺乳瓶外側の温度の影響を排除するに必要な厚みと幅をもった断熱材で覆うことにより、哺乳瓶内側にあるミルクの温度を哺乳瓶外側から測定する哺乳瓶用の温度計とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳瓶外壁に熱接触する温度測定素子と、温度測定素子を覆い哺乳瓶に密着する断熱材からなるセンサ部と、
温度測定素子のリード線と、
リード線に接続する温度表示部と
で構成されたことを特徴とする哺乳瓶用温度計。
【請求項2】
断熱材の厚みが0.5mmから100mmであることを特徴とする請求項1記載の哺乳瓶用温度計。
【請求項3】
断熱材における哺乳瓶に密着する面のそれぞれの幅が0.5mmから100mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の哺乳瓶用温度計。
【請求項4】
温度表示部は、電源スイッチと電池と電子回路とそして温度表示パネルで構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の哺乳瓶用温度計。
【請求項5】
センサ部の哺乳瓶に密着する面に、良熱伝導性薄膜が付加されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の哺乳瓶用温度計。
【請求項6】
センサ部における哺乳瓶に密着する面に、粘着薄膜が付加されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の哺乳瓶用温度計。
【請求項7】
粘着材付きベルト、吸盤付きベルト又は巻回ベルトが、センサ部に取り付けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の哺乳瓶用温度計。
【請求項8】
センサ部とリード線と温度表示部とが、一体構造であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の哺乳瓶用温度計。
【請求項9】
センサ部と温度表示部とが、リード線を介して分離していることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の哺乳瓶用温度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳瓶の外側に取り付け、哺乳瓶の中にあるミルクの温度を測定する哺乳瓶用温度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳児のミルクを調乳するには、粉ミルクをいれた哺乳瓶に70℃以上の熱湯を注ぎ、冷却することにより40℃程度の適温まで冷ます必要がある。乳児にミルクを調乳するときは母親にとって忙しいときでもあり、その最中に高温のミルクを冷水で短時間冷ましては哺乳瓶の温度を手で確認し、再び冷水で冷ますということを繰り返し、最後は手首の皮膚にミルクを数滴落として確認し、授乳ということになる。このように忙しいときに手数が掛かり、それを昼夜何回となく調乳しなければならないことから、母親にとって大きな負担になっている。この負担を軽減するため、ミルクの温度を測定する温度計がある。
【0003】
哺乳瓶の中にあるミルクの温度を測定する温度計としては、温度測定素子を哺乳瓶の内側に取り付けるもの(例えば特許文献1及び特許文献2を参照。)や、温度測定素子を哺乳瓶の外側に取り付けるもの(例えば特許文献3を参照。)が知られている。このうち、特許文献2には、哺乳瓶のキャップに設けた良熱伝導性膜に温度センサ(温度測定素子)を接触させることで、容器(哺乳瓶)を密封した状態で、容器内の温度を正確且つ簡単に測定できる旨も記載されている。また、特許文献3には、哺乳瓶の外周部の一部を金属材料で覆い、その外側に所定の温度で変色する液晶を付着する旨も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02-111440号公報
【特許文献2】実開昭62-117537号公報
【特許文献3】実開昭51-160582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2のように、哺乳瓶内に温度測定素子を取り付けることで、哺乳瓶の中に入れたミルクの温度を測定する温度計では、ミルクの温度を正確に測定することができるものの、哺乳瓶内に温度測定素子を取り付けるため衛生面で注意が必要となる。特に、特許文献2の温度計では、キャップに設けた良熱伝導性膜もミルクに接触するために、衛生面での注意がより必要となる。加えて、授乳の度に温度測定素子を滅菌する必要があり、母親の負担を軽減できないどころか、逆に負担を増加させることにもなる。
【0006】
一方、特許文献3のように、哺乳瓶の外面に温度測定素子を取り付けるタイプの温度計では、温度測定素子を滅菌する必要は無くなるものの、高精度で温度を検出することが難しい。というのも、温度測定素子とミルクとの間に、熱伝導度が低い哺乳瓶が存在するようになることに加えて、哺乳瓶を冷水に浸漬する際には、温度測定素子が冷水に触れるようになるため、ミルクの温度を正確に検出できなくなるからである。また、哺乳瓶を冷水に浸漬した際に、温度測定素子が邪魔になり、ミルクを速やかに冷却しにくくなる。さらに、特許文献3で用いるような液晶は、一般的に温度精度が低い。さらにまた、特許文献3のように、哺乳瓶の外周部に嵌め込むような温度計だと、それを使用できる哺乳瓶の寸法形状が限定されるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、温度測定素子を哺乳瓶の外側に取り付けることで衛生的な問題をクリアしながらも、哺乳瓶の中のミルクの温度を高精度で測定することができる哺乳瓶用温度計を提供するものである。また、哺乳瓶の中のミルクを速やか且つ容易に冷却することができ、ミルクの温度調節の手間を軽減することのできる哺乳瓶用温度計を提供することも本発明の目的である。さらに、それを称する哺乳瓶の寸法形状が特に限定されず、取り扱いが容易な哺乳瓶用温度計を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第一の手段は、
哺乳瓶用温度計を、
哺乳瓶外壁に熱接触する温度測定素子と、温度測定素子を覆い哺乳瓶に密着する断熱材からなるセンサ部と、
温度測定素子のリード線と、
リード線に接続する温度表示部と
で構成することである。
【0009】
このように、温度測定素子を哺乳瓶の外側に配することによって、哺乳瓶内のミルクの温度を哺乳瓶外側で非侵襲的に測定することができる。このため、哺乳瓶内のミルクの温度を衛生的に測定することができる。また、温度測定素子の外面を断熱材によって覆うことによって、ミルクを冷ますために哺乳瓶を冷水に浸けた際に、その冷水の温度が温度測定素子に伝達しにくくなっている。このため、哺乳瓶内のミルクの温度を高精度で測定することもできる。
【0010】
加えて、本発明の哺乳瓶用温度計では、センサ部を哺乳瓶の外側に密着させ哺乳瓶を冷水で冷ますことにより、手間をかけずにミルクを効率よく短時間でしかも簡単に適温まで冷却することができる。温度表示部には、温度を数値等で表示することができるので、精度よくミルクの温度を調節することができる。また、本発明の哺乳瓶用温度計は、滅菌する必要がなく、また着脱式であるため、哺乳瓶を簡単に洗浄することができる。さらに、使用を望む哺乳瓶に装着することができることから、哺乳瓶の寸法形状が限定されないことも特長である。
【0011】
本発明の哺乳瓶用温度計において、断熱材の寸法(厚みや幅)をどの程度とするかは重要である。というのも、温度測定素子が検出する温度(ミルクの温度として推定する温度)は、断熱材内側面中央に接する哺乳瓶外壁の温度であるところ、この場所の温度は、断熱材内側面中央に対峙する哺乳瓶内壁の温度の影響を受けるのは勿論のこと、それ以外にも、断熱材内側面辺縁に接する哺乳瓶外壁面の温度や、断熱材内側面の反対側の断熱材外側面の温度の影響も受けるからである。この点、断熱材を大きくすれば、断熱材内側面辺縁に接する哺乳瓶外壁面の温度や、断熱材内側面の反対側の断熱材外側面の温度が、温度測定素子が検出する温度に影響を及ぼしにくくすることができる。これにより、哺乳瓶が冷水に浸けられている場合においても、断熱材内側面中央と哺乳瓶外壁の間に留置した温度測定素子によってミルクの温度をより高い精度で測定することができる。その一方で、断熱材の寸法を大きくしすぎると、センサ部が大型化して測定の際に邪魔になるおそれがあるだけでなく、断熱材を哺乳瓶の外壁に沿わせにくくなる。このため、断熱材の寸法を大きくしすぎるのもよくない。
【0012】
以上のことを考慮して、上記課題を解決するための第二の手段として、断熱材の厚み(哺乳瓶に密着する面に対して垂直な方向での厚み。以下同じ。)は、0.5mmから100mmとすることを提案する。これにより、温度測定素子が検出する温度に断熱材外側面の温度が影響を及ぼしにくくして、ミルクの温度をより高精度で測定することができる。加えて、断熱材を哺乳瓶の外壁に沿わせやすくすることもできる。
【0013】
また、上記課題を解決するための第三の手段として、断熱材における哺乳瓶に密着する面のそれぞれの幅(例えば縦幅及び横幅)は、0.5mmから100mmとすることを提案する。これにより、温度測定素子が検出する温度に断熱材内側面辺縁に接する哺乳瓶外壁面の温度が影響を及ぼしにくくして、ミルクの温度をより高精度で測定することができる。加えて、断熱材をコンパクトにして、センサ部を取り扱いやすくすることもできる。
【0014】
さらに、上記課題を解決するための第四の手段として、温度表示部を、電源スイッチと電池と電子回路とそして温度表示パネルで構成することを提案する。これにより、温度測定素子で得た電気信号を数値として表示することができる。
【0015】
さらにまた、上記課題を解決するための第五の手段として、センサ部における哺乳瓶に密着する面に良熱伝導性薄膜を付加することを提案する。というのも、通常、温度測定素子は微小であり、リード線も極細線であるため、温度測定素子は、外力により損傷を受け易い。この点、温度測定素子を良熱伝導性薄膜で覆うことによって、ミルクの温度の測定精度の低下を抑えながら、温度測定素子を損傷から保護し、温度測定素子の耐久性を向上することができる。
【0016】
そして、上記課題を解決するための第六の手段として、センサ部における哺乳瓶に密着する面に粘着薄膜を付加することを提案する。これにより、断熱材の内側面を哺乳瓶の外壁に密着状態で保持させることができる。このため、哺乳瓶を浸漬している冷水が断熱材と哺乳瓶の間に侵入しないようにして、温度測定素子でミルクの温度を精度よく測定することが可能になる。
【0017】
これに対し、上記課題を解決するための第七の手段として、粘着材付きベルト、吸盤付きベルト又は巻回ベルトをセンサ部に取り付けることも提案する。このように、粘着材付きベルト又は吸盤付きベルトを哺乳瓶に密着させることによっても、断熱材の内側面を哺乳瓶の外壁に密着状態で保持することができる。このため、哺乳瓶を浸漬している冷水が断熱材と哺乳瓶の間に侵入しないようにして、温度測定素子でミルクの温度を精度よく測定することが可能になる。
【0018】
そしてまた、上記課題を解決するための第八の手段として、センサ部とリード線と温度表示部とを一体構造とすることを提案する。これにより、哺乳瓶用温度計を簡単に取り扱うことができるようになる。
【0019】
これに対し、上記課題を解決するための第九の手段として、センサ部と温度表示部とを、リード線を介して分離することを提案する。これにより、温度表示部を哺乳瓶から遠隔に置くことができるので、温度表示部を耐熱構造にする必要はなく、そして開放構造にすることが可能になる。また、哺乳瓶を揺さぶりながら冷却しているときでも、温度表示パネルを注視することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によって、温度測定素子を哺乳瓶の外側に取り付けることで衛生的な問題をクリアしながらも、哺乳瓶の中のミルクの温度を高精度で測定することができる哺乳瓶用温度計を提供することが可能になる。また、哺乳瓶の中のミルクを速やか且つ容易に冷却することができ、ミルクの温度調節の手間を軽減することのできる哺乳瓶用温度計を提供することも可能になる。さらに、それを称する哺乳瓶の寸法形状が特に限定されず、取り扱いが容易な哺乳瓶用温度計を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係る哺乳瓶用温度計の構造を示す略断面図であり、(a)はセンサ部、リード線、そして温度表示部が一体構造となった哺乳瓶温度計を哺乳瓶に密着させたところの略断面図であり、(b)は哺乳瓶温度計の構造を示す部分拡大図である。
図2】本発明の実施例2に係る哺乳瓶用温度計の構造を示す略断面図であり、(a)はセンサ部と温度表示部がリード線を介して分離構造となった哺乳瓶温度計を哺乳瓶に密着させたところの略断面図であり、(b)は哺乳瓶温度計の構造を示す部分拡大図である。
図3】本発明の実施例3に係る哺乳瓶用温度計の2次元定常状態のシミュレーションモデルである。
図4】本発明の実施例3に係る哺乳瓶用温度計について実施したシミュレーションの結果であり、(a)はy軸上の温度分布であり、(b)はx軸上の温度分布である。
図5】本発明の実施例4に係るの哺乳瓶用温度計について実施した実験を説明する図であり、(a)は実験器具の配置を、(b)は測定した温度の経時的変化を示している。
図6】本発明の実施例5及び実施例6に係る哺乳瓶用温度計の断熱材に取り付けたベルトを示した図であり、(a)は粘着材付きベルトであり、(b)は吸盤付きベルトである。
図7】哺乳瓶外壁面に設けたくぼみに哺乳瓶用温度計を取り付ける様子を示した斜視図である。
図8】本発明の実施例7に係る哺乳瓶用温度計を巻回ベルトによって哺乳瓶に取り付けた状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る哺乳瓶用温度計の実施の形態を図1から図8に基づいて説明する。
【0023】
なお、本記載は特許請求の範囲を示した例であり、特許請求の範囲を本記載に限定することを意味するものではない。
【実施例0024】
図1に、本発明の実施例1に係る哺乳瓶用温度計1の構造の略断面図を示す。実施例1の哺乳瓶用温度計1では、上述した第一から第九までの手段のうち、第一、第二、第三、第四、第六及び第八の手段を採用している。
【0025】
実施例1の哺乳瓶用温度計1では、図1に示すように、センサ部3とリード線4とそして温度表示部5が、一体構造となっている。図1(a)は、哺乳瓶2と哺乳瓶2に密着した哺乳瓶用温度計1を示す略断面図である。図1(b)は、哺乳瓶用温度計1の部分の拡大断面図である。温度測定素子3Aと断熱材3Bからなるセンサ部3と、リード線4と、そして電源スイッチ5Aと電池5Bと電子回路5Cとそして温度表示パネル5Dからなる温度表示部5が、一体構造となっている。センサ部3は、パッド状を為しており、哺乳瓶外壁面2C(図3等を参照。以下同様に、引用している図面に該当する符号が無い場合は他の図を参照のこと。)における限られた範囲に密着されるようになっている。温度表示部5は、断熱材17とともに、防水ケース12の中に密閉されている。断熱材17は、温度表示部5がミルク10によって急激に温度が上昇することを避けるとともに、温度表示部5の温度の不均一を少なくする。温度測定素子3Aと断熱材3Bは、断熱材3Bに取り付けた粘着薄膜7により哺乳瓶2に密着している。図では見やすくするため、密着ではなく便宜上間隔をあけて描いている。
【0026】
哺乳瓶2の中に粉ミルクと70℃以上の熱湯を注いで高温のミルク10を作製した後、冷水内で哺乳瓶2を揺さぶりながら、哺乳瓶2内のミルク10の温度を温度表示パネル5Dで確認しつつ適温まで冷却し、授乳に適したミルク10を調合する。
【0027】
温度表示部5に発音体を内蔵し、温度表示パネルの温度が設定温度まで低下すると発音するようにすると、哺乳瓶2を揺さぶっている場合でも、また暗い室内においても、容易にミルク10の温度を確認することができる。図1の例では、哺乳瓶外壁面2Cは、局所的な凹凸を有さない単純な円筒面状を為しており、この哺乳瓶外壁面2Cに対して、哺乳瓶用温度計1を取り付けるようにしているが、哺乳瓶外壁面2Cには、哺乳瓶用温度計1を取り付けるための構造を設けることもできる。例えば、図7に示すように、哺乳瓶外壁面2Cにくぼみ2Fを設け、このくぼみ2Fに、哺乳瓶用温度計1を嵌め込んだ状態で取り付けてもよい。図7は、哺乳瓶外壁面2Cに設けたくぼみ2Fに哺乳瓶用温度計1を取り付ける様子を示した斜視図である。これにより、哺乳瓶2に取り付けた哺乳瓶用温度計1が哺乳瓶外壁面2Cから突出しないようにして、哺乳瓶2を振る際や冷水に浸漬する際等に、哺乳瓶用温度計1が邪魔にならないようにすることもできる。この構造(くぼみ2F)は、実施例1の哺乳瓶用温度計1のように、センサ部3と温度表示部5とが一体構造となっている場合に、好適に採用することができる。しかし、後述する実施例2の哺乳瓶用温度計1(図2を参照。)のように、センサ部3と温度表示部5とがリード線4を介して分離しているときでも、そのセンサ部3については、くぼみ2Fに嵌め込んだ状態で取り付けることができる。
【実施例0028】
図2に、本発明の実施例2に係る哺乳瓶用温度計の構造の略断面図を示す。実施例2の哺乳瓶用温度計1では、上述した第一から第九までの手段のうち、第一から第六まで及び第九の手段を採用している。
【0029】
実施例2の哺乳瓶用温度計1では、図2に示すように、センサ部3と温度表示部5が、リード線4を介して分離した構造となっている。図2(a)は、哺乳瓶2と哺乳瓶2に密着した哺乳瓶用温度計1を示す略断面図であり、図2(b)は、哺乳瓶用温度計1の拡大断面図である。温度測定素子3Aと断熱材3Bからなるセンサ部3と、電源スイッチ5Aと電池5Bと電子回路5Cと温度表示パネル5Dからなる温度表示部5が、リード線4を介して分離した構造となっている。温度表示部5はケース13の中に収められている。温度測定素子3Aにおける哺乳瓶2を向く側は、良熱伝導性薄膜6によって覆われ、損傷を受けないように保護されている。さらに、良熱伝導性薄膜6における哺乳瓶2を向く側には、粘着薄膜7が取り付けられ、この粘着薄膜7によってセンサ部3が哺乳瓶2に密着した状態で接着されている。
【0030】
哺乳瓶2の中に粉ミルクと70℃以上の熱湯を注いで高温のミルク10を作製した後、冷水内で哺乳瓶2を揺さぶりながら、哺乳瓶内のミルク10の温度を温度表示パネル5Dで確認しつつ適温まで冷却し、授乳に適したミルク10を調合する。温度表示部5は哺乳瓶2から遠隔に置いてもよい。
【実施例0031】
図3に、本発明の実施例3に係る哺乳瓶用温度計1の2次元定常状態のシミュレーションモデルを示す。実施例3の哺乳瓶用温度計1では、上述した第一から第九までの手段のうち、第一、第二及び第三の手段を採用している。
【0032】
図3には、哺乳瓶2(熱伝導率k=1.005W/mKのガラス)の哺乳瓶外壁面2Cに断熱材3B(熱伝導率k=0.027W/mKの発泡スチロール)を密着させたときの2次元定常状態モデルと座標を示している。厚みD=3mmの哺乳瓶壁2Aの上に厚みH=10mm、幅W=40mmの断熱材3Bが密着している。哺乳瓶内側2Eには温度Tm=100℃のミルク10で満たされ、哺乳瓶外側2Bは温度Tw=10℃の冷水11に浸漬されている。断熱材内側面中央3B4の温度Tsは、断熱材内側面中央3B4に対峙する哺乳瓶内壁面2Dから断熱材外側面3B1への熱流出と、断熱材内側面中央3B4に対峙する哺乳瓶内壁面2Dから断熱材内側面辺縁3B3に接する哺乳瓶外壁面2Cへの熱流出によってほぼ決まる。この熱流出は、ミルク10の温度Tmおよび冷水11の温度Twそのものに依存するものではなく、それらの温度差Tm-Twに依存する。x軸は哺乳瓶外壁面2C上にあり、断熱材内側面中央3B4でx=0とする。
【0033】
図4に、本発明の実施例3に係る哺乳瓶用温度計1について実施したシミュレーションの結果を示す。図4(a)は、シミュレーション結果におけるy軸上の温度分布である。y=-3mmでは哺乳瓶内壁面2Dの温度TmでTm=100℃となっている。y=0mmでは断熱材内側面中央3B4の温度TsでTs=99.3℃となっている。この温度は、その位置に温度測定素子3Aを配置することから温度測定素子3Aの温度となる。y=10mmでは、断熱材外側面3B1の温度Tw=10℃となっている。温度は、哺乳瓶壁2Aで、また断熱材3Bで、直線的に低下している。哺乳瓶壁2Aでの温度低下をTmsとすると、Tms=Tm-Ts=100-99.3=0.7℃低下している。哺乳瓶内壁面2Dの温度Tmから断熱材外側面3B1の温度Twを差し引いた温度差Tmwは、Tmw=Tm-Tw=100-10=90℃であるので、哺乳瓶壁2Aで低下した温度の割合の百分率rは、r=100*Tms/Tmw=100*(Tm-Ts)/(Tm-Tw)=100*0.7/90=0.8%となる。
【0034】
図4(b)はx軸上の温度分布である。断熱材内側面辺縁3B3のx=-20mmまでは哺乳瓶外壁面2Cの温度、すなわち冷水11の温度Tw=10℃となり、それよりxが大きくなるに従い温度は急激に上昇し、x=-2.7mmより温度は一定となりx=0で温度測定素子3Aの温度TsはTs=99.3℃となっている。x>0では、x=0で対称な温度分布になっている。
【0035】
x=0における温度Tsから冷水11の温度Twを差し引いた温度差をTswとすると、Tsw=Ts-Tw=99.3-10=89.3℃となる。この温度の98.5%になるxの値を求める。98.5%になる温度をT98.5とすると、T98.5=0.985*Tsw+Tw=0.985*(99.3-10)+10=98.0℃となる。この温度になるxの値、それをx98.5とすると、それは図4(b)よりx98.5=-12.4mm、そしてx98.5=12.4mmとなる。T98.5まで温度が上昇するために必要な断熱材3Bの幅をW98.5とすると、W98.5=(-12.4-(-20))+(20-12.4)=15.2mmとなる。
【0036】
98.5と同様に99%になる温度をT99とすると、T99=98.4℃となり、T99となるxの値、即ちx99図4(b)よりx99=-11.8mmとなる。T99まで温度が上昇するために必要な断熱材3Bの幅をW99とすると、W99=2*(-11.8-(-20))=16.4mmとなる。
【0037】
このように、哺乳瓶2の厚みD=3mm、断熱材3Bの厚みH=10mm、そして幅W=40mmでは、温度測定素子3Aの温度Tsは99.3℃となり、ミルク10の温度より0.7℃低く表示されることになる。熱流出は温度差によって決まることから、ミルク10の温度が40℃まで低下したときは、哺乳瓶内壁面2Dと哺乳瓶外壁面2Cの温度差は(100-10)=90℃から(40-10)=30℃となるので、温度測定素子3Aの温度Tsはミルク10の温度より0.7/(90/30)=0.2℃低く表示されることになる。
【0038】
断熱材3Bの幅Wが充分に大きくなると、x軸上においてx=0付近で温度は一定の値になる。このように平坦になり温度勾配がない場合、その方向への熱の流出はない。このような状態では、断熱材3Bが同じ幅で奥行方向にあったとしてもその方向への熱の流出はない。このような場合、2次元モデルの温度分布は3次元モデルの断面における温度分布と同じになる。よって、断熱材3Bの奥行方向の幅をx軸方向の幅と同じにするか、もしくはそれよりも大きくすれば、哺乳瓶内のミルク10の温度を哺乳瓶外側2Bから精度よく測定することができる。
【0039】
断熱材の幅Wが充分に大きく断熱材内側面中央3B4の付近でx軸方向に温度勾配が生じない場合において、ガラス製の哺乳瓶の厚みDを0.2mmから5mm、断熱材3Bの厚みHを5mmから20mmまで変化させたシミュレーションの結果、y軸方向の温度分布の指標となる哺乳瓶壁2Aで低下する温度の割合の百分率rは、次のシミュレーション式、(数1)にまとめられる。

(数1)
r=2.65D/H
【0040】
ガラス、プラスチック又はステンレス製の哺乳瓶で、断熱材の幅Wが充分に大きく断熱材内側面中央3B4の付近でx軸方向に温度勾配が生じない場合において、哺乳瓶の厚みDを0.2mmから20mm、断熱材3Bの厚みHを0.5mmから300mmまで変化させたシミュレーションの結果、y軸方向の温度分布の指標となる哺乳瓶壁2Aで低下する温度の割合の百分率rは、次のシミュレーション式、(数2)にまとめられる。

(数2)
r=100*(D/k)/(D/k+H/k

ここで、kは哺乳瓶2の熱伝導率であり、ガラスではk=1.005、プラスチックではk=0.30、ステンレスではk=16を採用している。kは断熱材の熱伝導率であり、発泡スチロールではk=0.027を採用している。
【0041】
温度20℃の冷水でミルク10を40℃に冷却するとき、断熱材内側面中央3B4における温度の誤差が1.0℃まで許容されるとするとr=5.0%となる。下記表1に、哺乳瓶2の材質がパイレックス(登録商標)ガラス(厚みD=1mm,2mm,3mm,4mm)である場合と、PPSU樹脂(厚みD=0.5mm,1mm,2mm,3mm)である場合とのそれぞれにつき、温度の誤差が0.1%のときと、0.5%のときと、2.5%のときと、5.0%であるときにおける断熱材3Bの厚みHを示す。

【表1】
【0042】
上記表1を見ると、誤差5.0%で必要とされる断熱材3Bの厚みHは、パイレックス(登録商標)ガラス製の哺乳瓶2の厚みDが1mmのときにはH=0.5mmとなり、Dが4mmのときにはH=2.0mmとなることが分かる。また、PPSU樹脂製(プラスチック製)の哺乳瓶2の厚みDが0.5mmのときにはH=0.9mmとなり、Dが3mmのときにはH=5.1mmとなることが分かる。温度20℃の冷水でミルク10を40℃に冷却するとき、断熱材内側面中央3B4における温度の誤差が0.1℃まで許容されるとするとr=0.5%となり、必要とする断熱材3Bの厚みHは、パイレックス(登録商標)ガラス製の哺乳瓶2の厚みDが1mmのときにはH=5.3mmとなり、Dが4mmのときにはH=21.4mmとなることが分かる。また、PPSU樹脂製(プラスチック製)の哺乳瓶2の厚みDが0.5mmのときにはH=9.0mmとなり、厚みDが3mmのときにはH=53.7mmとなることが分かる。また、いずれの場合においても、断熱材3Bの厚みHが大きくなればなるほど、温度の誤差が小さくなることが分かる。以上のことから、断熱材3Bの厚みHは、0.5mm以上とすることが好ましく、1mm以上、2mm以上、3mm以上、4mm以上とさらに大きくしていくことがより好ましいことが分かる。断熱材3Bの厚みHは、5mm以上とすることが最適である。
【0043】
温度の測定精度のことだけを考えるのであれば、断熱材3Bの厚みHは、できるだけ大きくすることが好ましいが、哺乳瓶用温度計1の使用のしやすさ等を考慮すると、断熱材3Bの厚みHを大きくしすぎることは好ましくない。上記表1を見ると、例えば、PPSU樹脂製(プラスチック製)の哺乳瓶2の厚みDが3mmのときには、断熱材3Bの厚みHを269.7mmとすると、温度の誤差を0.1%に抑えることができるものの、このような厚みHを有する断熱材3Bを哺乳瓶2に取り付けようとしても、哺乳瓶2の外壁面に沿って断熱材3Bを湾曲させることが難しいし、仮に取り付けることができたとしても、哺乳瓶2を振る操作を行いにくくなる等の不具合が生ずる。このため、断熱材3Bの厚みHは、通常、100mm以下とされる。断熱材3Bの厚みHは、50mm以下とすることが好ましく、30mm以下とすることがより好ましく、20mm以下とすることがさらに好ましい。断熱材3Bの厚みHは、10mm以下とすると最適である。
【0044】
図4(b)のガラス製の哺乳瓶でのx軸方向の温度分布については、T98.5となる断熱材3Bの最小の幅W98.5は、次のシミュレーション式、(数3)にまとめられる。

(数3)
98.5=2*(2.32D+0.51)
【0045】
さらに、T99となる断熱材3Bの最小の幅W99は、次のシミュレーション式、(数4)にまとめられる。

(数4)
99=2*(2.57D+0.59)
【0046】
例えば、(数1)でガラス製の哺乳瓶2の厚みがD=3mmにおいて、断熱材3Bの厚みがH=10mmではr=0.8%となり、H=20mmではr=0.4%となる。(数3)において、哺乳瓶2の厚みがD=2mmではW98.5=10mmとなり、D=3mmではW98.5=15mm、D=4mmではW98.5=20mmとなる。さらに、(数4)において、哺乳瓶2の厚みがD=2mmではW99=12mmとなり、D=3mmではW99=17mm、D=4mmではW99=22mmとなる。断熱材3Bの幅W98.5,W99は、哺乳瓶2の厚みDによって変化する。哺乳瓶2の厚みDが厚い程、幅W98.5,W99は増大する。
【0047】
このように断熱材3Bの厚みHを大きくするほど、また断熱材3Bの幅Wを大きくするほど、哺乳瓶外側で哺乳瓶内側のミルク10の温度を精度よく測定することができる。また逆に、厚みHを小さくすればするほど、また幅Wを小さくするほど、ミルク10の温度測定の精度は低下する。哺乳瓶2の厚みがD=3mmにおける許容できる精度について、r=1.5%とすると断熱材3Bの厚みはH=5mmとなり、幅方向の精度を1.5%とするとそれに対応する断熱材3Bの幅W98.5はW98.5=15mmとなる。この許容できる精度の場合、ミルク10の温度を40℃、冷水の温度を10℃とすると、測定されるミルク10の温度の精度は1℃程度になる。1℃以上の精度で哺乳瓶内側のミルク10の温度を哺乳瓶外側で測定する条件は、断熱材3Bのそれぞれの幅Wが15mm以上、断熱材3Bの厚みHが5mm以上である。
【0048】
99.9,W99.5,W97.5,W95をW98.5と同様に定義し、2次元定常状態の有限要素法によるシミュレーションにおいて、断熱材の幅を100mm、断熱材の厚みを10mmとして、哺乳瓶2の材質がパイレックス(登録商標)ガラス(厚みD=1mm,2mm,3mm,4mm)である場合と、PPSU樹脂(厚みD=0.5mm,1mm,2mm,3mm)である場合とのそれぞれにつき、W99.9,W99.5,W97.5そしてW95を下記表2に示す。

【表2】
【0049】
上記表2を見ると、誤差が5.0%で必要とされる断熱材3Bの幅W95は、パイレックス(登録商標)ガラス製の哺乳瓶2の厚みDが1mmのときにはW95=2.5mmとなり、Dが4mmのときにはW95=12.6mmとなることが分かる。また、PPSU樹脂製(プラスチック製)の哺乳瓶の厚みDが0.5mmのときにはW95=0.5mmとなり、Dが3mmのときにはW95=10.6mmとなることが分かる。いずれの場合においても、断熱材3Bの幅Wが大きくなればなるほど、温度の誤差が小さくなることが分かる。以上のことから、断熱材3Bの幅Wは、0.5mm以上とすることが好ましく、1mm以上、5mm以上、10mm以上、20mm以上とさらに大きくしていくことがより好ましいことが分かる。断熱材3Bの幅Wは、30mm以上とすることが最適である。
【0050】
温度の測定精度のことだけを考えるのであれば、断熱材3Bの幅Wは、できるだけ大きくすることが好ましいが、W99.9の2倍よりも大きくしてもあまり意味はない。また、哺乳瓶用温度計1の使用のしやすさ等を考慮すると、断熱材3Bの幅Wを大きくしすぎることは好ましくない。というのも、断熱材3Bの幅Wを大きくしすぎると、断熱材3Bを哺乳瓶2の外壁面に取り付けにくくなるからである。加えて、哺乳瓶2の外壁面における広い範囲が断熱材3Bで覆われるようになるため、哺乳瓶2の中のミルク10を冷水で冷却しにくくなる。このため、断熱材3Bの幅Wは、通常、100mm以下とされる。断熱材3Bの幅Wは、70mm以下とすることが好ましく、50mm以下とすることがより好ましい。断熱材3Bの幅Wは、40mm前後とすると最適である。
【0051】
実施例3の哺乳瓶用温度計1では、断熱材3Bとしてk=0.027W/mKの発泡スチロールを用いている。発泡スチロールの熱伝導率は空気の熱導電率k=0.026W/mKとほぼ同じであり高い断熱効果を有している。断熱材3Bとして高い断熱効果があれば発泡スチロールに限定することなく、同程度の熱伝導率をもつウレタンフォーム等の発泡プラスチックを断熱材3Bとして用いることができる。断熱材3Bとして発泡プラスチックを用いる場合には、連通気泡型のものより、発泡ポリエチレンのような独立気泡型のものを採用することで、その断熱性をより高める(熱伝導率kを小さく抑える)ことができる。断熱材3Bの熱伝導率kは、0.1W/mK以下、0.07W/mK以下、0.05W/mK以下、0.03W/mK以下と、低ければ低いほど好ましい。ただし、空気でも0.024W/mK以上の熱伝導率kを有する。このため、断熱材3Bの熱伝導率kは、現実的には、0.025W/mK以上とされる。
【実施例0052】
実施例4の哺乳瓶用温度計1では、上述した第一から第九までの手段のうち、第一、第二、第三、第四、第六及び第九の手段を採用している。図5は、本発明の実施例4に係るの哺乳瓶用温度計について実施した実験を説明する図である。図5(a)に実験器具の配置を示す。哺乳瓶2の哺乳瓶外壁面2Cにセンサ部3が密着している。温度測定素子3A及びリード線4は線径0.1mmのTypeTの熱電対であり、断熱材3Bは幅の一辺が40mm、厚みが10mmの独立気泡型発泡ポリエチレンである。哺乳瓶2の内側に哺乳瓶内側温度計15を挿入するとともに、哺乳瓶外壁面2Cに哺乳瓶外側温度計16を密着させている。
【0053】
図5(b)に、100℃の熱湯14を哺乳瓶2に注入した後、14.7℃の冷水11の中で哺乳瓶2を揺さぶりながら冷却したときの、哺乳瓶内側温度計15、哺乳瓶外側温度計16、そして温度測定素子3Aの経時的な温度変化を示す。熱湯14を注ぎ冷水11の中で哺乳瓶2を揺さぶると、哺乳瓶内側の温度が急激に低下する。熱湯注入180秒後には哺乳瓶内側温度計15の温度は40.5℃に低下し、温度測定素子3Aの温度は40.9℃に低下している。哺乳瓶外側温度計16の温度は25.2℃を示している。熱湯注入210秒後に、哺乳瓶2を冷水11から取り出している。このように温度測定素子3Aに断熱材3Bを密着させることにより、哺乳瓶内のミルク10の温度を哺乳瓶外側から精度良く測定することができる。
【0054】
温度測定素子3Aで表示される温度の精度は、断熱材の厚みと断熱材の幅に大きく依存するが、さらにリード線4による熱移動にも依存する。温度測定素子3Aとして、サーミスタや熱電対が考えられる。サーミスタでは電子回路が安価である。熱電対を用いた温度測定素子3Aは、2本の異種金属からなるリード線の接点であり、その接点における熱起電力の差を応用したものである。そのことから、熱電対を使用した温度測定素子3Aは可能な限り小さく、そしてリード線4も可能な限り細くすることができる。実施例4では線径0.1mmの熱電対を用いてリード線4による熱移動を小さくしているが、線径0.01mmの熱電対を用いることもできる。
【実施例0055】
図6に、本発明の実施例5及び実施例6に係る哺乳瓶用温度計1の断熱材3Bに取り付けたベルトを示す。実施例5の哺乳瓶用温度計1では、第一、第二、第三及び第七の手段を採用しており、図6(a)に示すように、粘着材を付加した粘着材付きベルト8をセンサ部3に取り付けている。粘着材付きベルト8を引っ張りながら哺乳瓶2に粘着させることにより、断熱材内側面3B2を哺乳瓶2に密着させることができる。
【実施例0056】
実施例6の哺乳瓶用温度計1でも、上記の実施例5の哺乳瓶用温度計1と同様、第一、第二、第三及び第七の手段を採用している。ただし、実施例6の哺乳瓶用温度計1では、図6(b)に示すように、吸盤を付加した吸盤付きベルト9をセンサ部3に取り付けている。吸盤付きベルト9を引っ張りながら哺乳瓶2に吸盤を吸着させることにより、断熱材内側面3B2を哺乳瓶2に密着させることができる。
【実施例0057】
実施例7の哺乳瓶用温度計1でも、上記の実施例5や実施例6の哺乳瓶用温度計1と同様、第一、第二、第三及び第七の手段を採用している。ただし、実施例7の哺乳瓶用温度計1では、図8に示すように、環状を為す巻回ベルト18をセンサ部3に取り付けており、この巻回ベルト18を哺乳瓶2の外周部に掛け回すことによって、哺乳瓶用温度計1を哺乳瓶2に取り付けるようにしている。巻回ベルト18は、その両端部を互いに固定する位置を変更することで長さ調節可能とした有端ベルトとしてもよいが、ゴム等の伸縮性素材で形成した無端ベルトとしてもよい。これにより、哺乳瓶2の外径等が変わっても、センサ部3を哺乳瓶外壁面2Cに密着させることができる。
【0058】
本発明によれば、哺乳瓶2の外壁にセンサ部3を熱接触させ、その上から断熱材3Bを密着させることにより、哺乳瓶2の内部にあるミルク10の温度を測定することができる。本発明の哺乳瓶用温度計1の使用は哺乳瓶2に限定するものではなく、紙容器、プラスチック容器、プチスチック製袋、さらに厨房の金属鍋等の容器に対しても応用することができ、それらに入れられた内容物の温度を容器の外側から測定することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 哺乳瓶用温度計
2 哺乳瓶
2A 哺乳瓶壁
2B 哺乳瓶外側
2C 哺乳瓶外壁面
2D 哺乳瓶内壁面
2E 哺乳瓶内側
2F くぼみ
3 センサ部
3A 温度測定素子
3B 断熱材
3B1 断熱材外側面
3B2 断熱材内側面
3B3 断熱材内側面辺縁
3B4 断熱材内側面中央
4 リード線
5 温度表示部
5A 電源スイッチ
5B 電池
5C 電子回路
5D 温度表示パネル
6 良熱伝導性薄膜
7 粘着薄膜
8 粘着材付きベルト
9 吸盤付きベルト
10 ミルク
11 冷水
12 防水ケース
13 ケース
14 熱湯
15 哺乳瓶内側温度計
16 哺乳瓶外側温度計
17 断熱材
18 巻回ベルト
D 哺乳瓶の厚み[mm]
W 断熱材の幅[mm]
H 断熱材の厚み[mm]
Tm ミルクの温度[℃]
Tw 冷水の温度[℃]
Ts 温度測定素子の温度[℃]
Tms 哺乳瓶壁内で低下する温度(Tms=Tm-Ts)[℃]
Tsw 断熱材内で低下する温度(Tsw=Ts-Tw)[℃]
Tmw ミルクと冷水との温度差(Tmw=Tm-Tw)[℃]
r 哺乳瓶壁内で低下する温度の割合の百分率(r=100*Tms/Tmw)[%]
98.5 断熱材内側面辺縁3B3からTmsの98.5%まで温度が上昇するに必要な断熱材の幅に2を掛けた値
99 断熱材内側面辺縁3B3からTmsの99%まで温度が上昇するに必要な断熱材の幅に2を掛けた値
99.9 断熱材内側面辺縁3B3からTmsの99.9%まで温度が上昇するに必要な断熱材の幅に2を掛けた値
99.5 断熱材内側面辺縁3B3からTmsの99.5%まで温度が上昇するに必要な断熱材の幅に2を掛けた値
97.5 断熱材内側面辺縁3B3からTmsの97.5%まで温度が上昇するに必要な断熱材の幅に2を掛けた値
95 断熱材内側面辺縁3B3からTmsの95%まで温度が上昇するに必要な断熱材の幅に2を掛けた値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8