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特開2022-135868振動監視装置、過給機、及び振動監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135868
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】振動監視装置、過給機、及び振動監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220908BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117896
(22)【出願日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2021035140
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正
(72)【発明者】
【氏名】西村 英高
(72)【発明者】
【氏名】田中 彬史
(72)【発明者】
【氏名】小川 真司
(72)【発明者】
【氏名】冨田 勲
(72)【発明者】
【氏名】水田 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 領士
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD04
2G024AD05
2G024BA27
2G024CA09
2G024DA09
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
2G064AA14
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064CC03
(57)【要約】
【課題】回転軸の回転信号から回転軸の振動を評価することができる。
【解決手段】振動監視装置は、回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、回転信号から算出される回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力する出力装置と、回転信号とフィルタ指令値とが入力されることで、フィルタ指令値に応じて設定される通過帯域の信号を回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として回転信号から抽出する少なくとも1つのフィルタと、を備える。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力する出力装置と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として前記回転信号から抽出する少なくとも1つのフィルタと、
を備える、振動監視装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフィルタは、第1ローパスフィルタを含み、
前記第1ローパスフィルタは、前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される第1遮断周波数よりも小さい通過帯域の信号を前記振動信号として抽出する、
請求項1に記載の振動監視装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフィルタは、前記第1遮断周波数よりも小さい第2遮断周波数を有する第2ローパスフィルタを更に備える、
請求項2に記載の振動監視装置。
【請求項4】
前記第2ローパスフィルタは、前記第1ローパスフィルタによって抽出された前記振動信号が入力されることで、前記第2遮断周波数よりも小さい通過帯域の信号を前記回転軸の浮き上がり情報を取得可能な浮上信号として前記振動信号から抽出する、
請求項3に記載の振動監視装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフィルタは、バンドパスフィルタを含み、
前記バンドパスフィルタは、前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される中心周波数を含む通過帯域の信号を前記振動信号として前記回転信号から抽出する、請求項1から4の何れか一項に記載の振動監視装置。
【請求項6】
前記中心周波数をFc、前記回転軸の回転数をCとすると、0.8C≦Fc≦1.2Cを満たす、請求項5に記載の振動監視装置。
【請求項7】
前記回転信号と、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記振動信号とに基づいて、前記振動信号の振幅と、前記回転信号を基準とした前記振動信号の位相角とを表示する表示部を更に備える、請求項5又は6に記載の振動監視装置。
【請求項8】
前記フィルタ指令値は、前記回転信号から算出される前記回転軸の前記回転数を変換した電流値又は電圧値である、
請求項1から7の何れか一項に記載の振動監視装置。
【請求項9】
前記回転軸は、前記回転信号がパルス波形を有するように構成されるマーカ部を含む、
請求項1から8の何れか一項に記載の振動監視装置。
【請求項10】
前記マーカ部は、前記回転軸の外周面に形成される少なくとも2つ以上の溝を含み、
前記回転センサは、前記回転軸の前記外周面に渦電流を発生させることで前記回転軸の前記外周面までの距離を検出する渦電流式変位センサである、
請求項9に記載の振動監視装置。
【請求項11】
前記マーカ部は、前記回転軸の外周面に形成される少なくとも2つ以上の溝を含み、
前記回転センサは、前記回転軸の前記外周面にレーザー光を照射して、前記レーザー光の反射光により前記回転軸の前記外周面までの距離を検出するレーザー式変位センサである、
請求項9に記載の振動監視装置。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の振動監視装置と、
前記回転軸の一端部に設けられる圧縮機と、
前記回転軸の他端部に設けられるタービンと、を備える、
過給機。
【請求項13】
エンジンの振動を検出するための加速度センサと、
前記加速度センサの出力から取得された前記エンジンの振動情報と、前記少なくとも1つのフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動情報とを同時に表示する表示部と、
を更に備える、請求項12に記載の過給機。
【請求項14】
前記回転軸を回転可能に支持する軸受と、
前記軸受の温度を検出する軸受温度センサと、
前記過給機における潤滑油の出口の温度を検出する潤滑油出口温度センサと、
前記軸受温度センサによって検出された前記軸受の温度と、前記潤滑油出口温度センサによって検出された前記潤滑油の出口の温度と、前記少なくとも1つのフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動情報とを同時に表示する表示部と、
を備える、請求項12又は13に記載の過給機。
【請求項15】
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力するステップと、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として前記回転信号から抽出するステップと、を備える、
振動監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動監視装置、過給機、及び振動監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、圧縮機羽根車(回転体)の回転に同期した回転信号を出力し、この出力した回転体の回転信号のピーク値の変化から回転体の振動を演算する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-224847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転軸の振動を直接的に検出可能な振動センサを設けることなく、回転軸の振動を監視したいという要望がある。しかしながら、回転軸の回転信号から回転軸の振動に関する情報を取得する手法が確立されていなかった。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、回転軸の回転信号から回転軸の振動を評価することができる振動監視装置、及び振動監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視装置は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力する回転センサと、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力する出力装置と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として前記回転信号から抽出する少なくとも1つのフィルタと、を備える。
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る振動監視方法は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップと、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力するステップと、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として前記回転信号から抽出するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の振動監視装置及び振動監視方法によれば、回転軸の回転信号から回転軸の振動を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る振動監視装置を適用した過給機の構成を概略的に示す図である。
図2】第1実施形態に係るマーカ部の構成を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態に係る回転センサが出力する回転信号の波形図である。
図4】第1実施形態に係る出力装置の概略的な機能ブロック図である。
図5図3の回転信号を分周した回転パルス信号の波形図である。
図6】第1実施形態に係る第1ローパスフィルタの特性表を示す図である。
図7】第1実施形態に係る振動信号の波形図である。
図8】第2実施形態に係る振動監視装置の構成を概略的に示す図である。
図9】本開示に係る振動監視方法のフローチャートである。
図10】第3実施形態に係る振動監視装置の構成を概略的に示す図である。
図11】バンドパスフィルタの振幅-周波数特性を示す図である。
図12】第1ローパスフィルタによって抽出された振動信号、バンドパスフィルタによって抽出された振動信号、及び回転軸の振動によって発生する正味の実振動信号の各々の波形を示す波形図である。
図13】第4実施形態に係る振動監視装置の構成の一部を概略的に示す図である。
図14】第5実施形態に係る振動監視装置の構成の一部を概略的に示す図である。
図15】表示部の表示内容の一例を示す図である。
図16】第6実施形態に係る振動監視装置の構成の一部を概略的に示す図である。
図17】表示部の表示内容の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態による振動監視装置、過給機、及び振動監視方法について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0011】
<第1実施形態>
(過給機の構成)
図1は、第1実施形態に係る振動監視装置1を適用した過給機100の構成を概略的に示す図である。過給機100は、特に限定されないが、例えば、船舶に搭載され、エンジンの吸気を過給するための排気ターボ過給機である。本開示では、この排気ターボ過給機を例にして説明する。
【0012】
図1に示すように、過給機100は、回転軸102と、圧縮機104と、タービン106と、第1実施形態に係る振動監視装置1と、を備える。回転軸102の軸線O方向における一端部(図1において左端部)には、圧縮機104が設けられている。回転軸102の軸線O方向における他端部(図1において右端部)には、タービン106が設けられている。回転軸102は、圧縮機104とタービン106とを連結している。
【0013】
圧縮機104は、吸気を圧縮して不図示のエンジンに供給する。タービン106は、エンジンから排出された排ガスがタービン106を通過する際に、排ガスのエネルギをタービン106の回転エネルギに変換する。そして、回転軸102は、タービン106の回転とともに軸線Oを中心として回転する。圧縮機104は、回転軸102が回転することで駆動する。
【0014】
図1に例示する形態では、回転軸102は、後述する回転信号Aがパルス波形を有するように構成されるマーカ部108を含む。マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104とタービン106との間に設けられている。マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104とタービン106との間のうちタービン106側に設けられている。幾つかの実施形態では、マーカ部108は、軸線O方向において、圧縮機104より回転軸102の一端側に設けられる。
【0015】
マーカ部108の構成例について説明する。図2は、第1実施形態に係るマーカ部108の構成を概略的に示す図である。図2に例示する形態では、回転軸102は、内側回転体110と、外側回転体112と、を含む。回転軸102の内側回転体110は、タービン106の回転とともに軸線Oを中心として回転する。外側回転体112は、内側回転体110が嵌め込まれる孔114が形成されている。言い換えると、外側回転体112は、内側回転体110の外周面を覆うように、内側回転体110に取り付けられている。外側回転体112は、孔114に嵌め込まれている内側回転体110が回転するとともに回転する。外側回転体112は、外周面116に形成される溝118を含む。溝118が非形成であるとき、外側回転体112の外周面116は円形状を有している。溝118は、この円形状の外周面116の一部117から軸線Oに向かって切り欠くことで形成される。図2に例示する形態では、外側回転体112は2つの溝118を含んでおり、外周面116は長円形状を有している。一方の溝118は、軸線Oを挟んで他方の溝118とは反対側に位置している。外側回転体112は、軸線Oを中心として左右対称となるように、2つの溝118が形成されている。このような外側回転体112がマーカ部108に相当する。
【0016】
尚、マーカ部108は、回転信号Aがパルス波形を有するように構成されるのであれば、図2に例示する形態に限定されない。例えば、マーカ部108(外側回転体112)は、溝118に代わり、外周面116の一部117より径方向外側に向かって突出する突出部を含んでもよい。
【0017】
(第1実施形態に係る振動監視装置の構成)
図1に示すように、振動監視装置1は、回転センサ2と、出力装置4と、第1ローパスフィルタ6と、を備える。出力装置4及び第1ローパスフィルタ6のそれぞれは、回転センサ2と電気的に接続されており、回転センサ2の出力値(回転信号A)を取得できるようになっている。第1ローパスフィルタ6は、出力装置4と電気的に接続されており、出力装置4の出力値(フィルタ指令値D)を取得できるようになっている。
【0018】
回転センサ2は、回転軸102の回転に同期した回転信号Aを出力する。回転センサ2は、回転軸102の外周面116に渦電流を発生させることで回転軸102の外周面116までの距離dを検出する渦電流式変位センサである。より具体的には、この回転センサ2は、高周波磁束を発生するコイルにより構成され、該コイルから発生した高周波磁束によって、ターゲット(測定対象)である回転軸102の外周面116に発生する渦電流の変化をコイルのインピーダンスの変化として検出する。即ち、回転センサ2は、回転軸102の回転に伴う距離dの変化をコイルのインピーダンスの変化として検出するもので、回転軸102の外周面116が最も回転センサ2に接近する際に最大の出力が得られる構成となっている。
【0019】
尚、回転センサ2は、渦電流式変位センサに限定されない。幾つかの実施形態では、回転センサ2は、レーザー光を照射するレーザーヘッドを備え、該レーザーヘッドから回転軸102の外周面116にレーザー光を照射して、このレーザー光の反射光によりレーザーヘッドから回転軸102の外周面116までの距離を検出するレーザー式変位センサである。
【0020】
図3は、第1実施形態に係る回転センサ2が出力する回転信号Aの波形図である。図3に示すように、回転信号Aは、上述した回転軸102のマーカ部108(外側回転体112)が溝118を含んでいるので、回転軸102の回転に伴って形成されるパルス波形を有する。即ち、回転軸102の回転中において、回転センサ2と溝118とが互いに対向する際に変位が大きく変化する。一方で、回転軸102の回転中において、回転センサ2と溝118とが互いに対向していない際には、変位の変化は小さい。第1実施形態では、マーカ部108は2つの溝118を有しているので、回転軸102の1回転中に2つのパルス(波形の変位が大きく変化する部分120)が出現している。
【0021】
出力装置4は、回転信号Aから算出される回転軸102の回転数Cに対応するフィルタ指令値Dを出力する。このような、出力装置4は、電子制御装置などのコンピュータであって、図示しないCPUやGPUといったプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、及びI/Oインターフェイスなどを備える。出力装置4は、メモリにロードされたプログラムの命令に従ってプロセッサが動作(演算等)することで、出力装置4が備える各機能部を実現する。図4を参照して、第1実施形態に係る出力装置4の各機能部について説明する。
【0022】
図4は、第1実施形態に係る出力装置4の概略的な機能ブロック図である。図4に示すように、出力装置4は、分周部122と、カウンタ部124と、表示部126と、フィルタ指令値出力部8と、を含む。
【0023】
図5は、図3の回転信号Aを分周した回転パルス信号Bの波形図である。図5に示すように、分周部122は、回転センサ2が出力した回転信号Aを分周して、回転軸102の1回転中に1つのパルス(波形の変位が大きく変化する部分130)を含む回転パルス信号Bに変換する。
【0024】
カウンタ部124は、単位時間当たりにおける回転パルス信号Bに含まれるパルスの回数をカウントし、回転軸102の回転数Cを算出する。表示部126は、カウンタ部124が算出した回転軸102の回転数Cを、モニタのような表示装置に表示させる。尚、表示装置は、出力装置4に含まれてもよいし、出力装置4とは別体に設けられてもよい。
【0025】
フィルタ指令値出力部8は、カウンタ部124が算出した回転軸102の回転数Cに対応するフィルタ指令値Dを出力する。第1実施形態では、フィルタ指令値Dは、回転軸102の回転数Cを予め設定されている変換方法で変換した電圧値である。この変換方法は、後述する第1ローパスフィルタ6の特性に基づいて設定される。第1実施形態では、回転軸102の回転数Cが大きくなると、フィルタ指令値D(電圧値)も大きくなる。幾つかの実施形態では、回転軸102の回転数Cとフィルタ指令値Dとは互いに比例する。幾つかの実施形態では、フィルタ指令値Dは、回転軸102の回転数Cを予め設定されている変換方法で変換した電流値である。
【0026】
図1に示すように、第1ローパスフィルタ6は、回転信号Aとフィルタ指令値Dとが入力されることで、振動信号Eを出力(抽出)する。この振動信号Eは、回転軸102の振動情報を取得可能な信号である。振動情報は、例えば、振動数、振動の大きさ、または振動の速度などである。
【0027】
第1ローパスフィルタ6は、フィルタ指令値D(電圧値)に応じて第1遮断周波数P1が設定されるように構成されている。第1ローパスフィルタ6は、回転センサ2が出力した回転信号Aのうち、第1遮断周波数P1よりも小さい回転信号Aを通過させ、第1遮断周波数P1以上の回転信号Aを遮断する。第1ローパスフィルタ6は、この第1遮断周波数P1よりも小さい回転信号Aを振動信号Eとして抽出する。このように、第1ローパスフィルタ6における信号の通過帯域(第1遮断周波数P1よりも小さい周波数帯)は、フィルタ指令値Dに応じて設定され、第1ローパスフィルタ6は、フィルタ指令値Dに応じて設定される通過帯域の信号を、回転信号Aから振動信号Eとして抽出する。
【0028】
ここで、第1遮断周波数P1の設定について説明する。図6は、第1実施形態に係る第1ローパスフィルタ6の特性表を示す図である。図6において、横軸は対数目盛で示された周波数であり、縦軸はデシベル値を示している。図6において、電圧値(フィルタ指令値D)が0.01Vである場合の第1ローパスフィルタ6の特性をV1、電圧値が0.1Vである場合の第1ローパスフィルタ6の特性をV2、電圧値が1Vである場合の第1ローパスフィルタ6の特性をV3、電圧値が10Vである場合の第1ローパスフィルタ6の特性をV4で示している。
【0029】
デシベル値は信号強度に相当し、デシベル値が0未満である場合、第1ローパスフィルタ6が抽出する振動信号Eは減衰している。図6に示すように、各電圧値(V1~V4)において、周波数が大きくなるほどデシベル値が減少しており、振動信号Eの減衰率が大きくなっている。より具体的には、第1ローパスフィルタ6に入力される電圧値が0.1Vである場合(図6におけるV2)、第1ローパスフィルタ6に入力される回転信号Aのうち、1kHz以上の回転信号Aを遮断することで振動信号Eを抽出する。第1実施形態では、第1ローパスフィルタ6は、デシベル値が0となるように第1遮断周波数P1を設定する。例えば、第1ローパスフィルタ6は、電圧値が0.1Vである場合、第1遮断周波数を1kHzに設定する。
【0030】
(第1実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
本発明者らによれば、図7に示すように、回転軸102の回転信号Aから第1遮断周波数P1よりも小さい回転信号A(振動信号E)を抽出すると、回転軸102の振動によって発生する正味の実振動信号Zの波形と類似する。また、本発明者らによれば、回転軸102の回転数Cに応じて第1遮断周波数P1を設定することで、回転信号Aから振動信号Eを高精度に抽出できることを見出した。
【0031】
第1実施形態によれば、図1に示すように、第1ローパスフィルタ6は、回転軸102の回転信号Aとフィルタ指令値Dとが入力されることで、フィルタ指令値Dに応じて設定される第1遮断周波数P1よりも小さい回転軸102の回転信号Aを振動信号Eとして抽出する。このため、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の振動を評価することができる。また、回転軸102の振動を直接的に検出可能な振動センサを設けることなく、回転軸102の振動を監視することができる。
【0032】
尚、不図示であるが、幾つかの実施形態では、振動監視装置1は、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号Eから振動情報(振動数、振動の大きさ、振動の速さなど)を取得し、この振動情報を通知する振動通知装置をさらに備える。このような振動通知装置は、例えば、振動情報を表示するモニタであってもよいし、振動信号Eから取得した振動情報が予め設定されている閾値を超えた場合、警告音や警告灯を発生させる警告装置であってもよい。
【0033】
第1実施形態によれば、フィルタ指令値Dは回転軸102の回転数Cに対応している値であるため、回転軸102の回転数Cに応じて第1遮断周波数P1が設定される。具体的には、回転軸102の回転数Cが大きくなると、第1遮断周波数P1も大きくなる。このように、第1遮断周波数P1は、回転軸102の回転数Cに追従するように設定されるので、回転信号Aから振動信号Eを高精度に抽出できる。
【0034】
第1ローパスフィルタ6は、電圧値に応じて第1遮断周波数P1が設定可能である場合が多い。第1実施形態によれば、フィルタ指令値Dは電圧値であるので、第1遮断周波数P1を回転軸102の回転数Cに応じて任意に設定することができる。また、このような第1ローパスフィルタ6は、一般的に安価で市販されているので、振動監視装置1の設置コストの増加を抑制することができる。
【0035】
第1実施形態によれば、回転軸102はマーカ部108を含むので、回転センサ2は、マーカ部108を含まない回転軸102から回転信号Aを出力する場合と比較して、精度の高い回転信号Aを出力することができる。
【0036】
第1実施形態によれば、回転センサ2は、渦電流式センサを適用することができる。また、第1実施形態によれば、回転軸102の外周面116には2つの溝118が形成されているので、回転センサ2は、回転軸102の1回転中に2つのパルスを有する回転信号Aを出力する。過給機100の回転軸102のような高速回転体は、回転軸102の軸断面視において1つの溝118だけが形成されていると、アンバランスな形状を有することになり、この回転軸102のアンバランスな形状が回転軸102の振動を大きくする原因となる虞がある。これに対して、第1実施形態で例示するように、回転軸102の外周面116に2つの溝118を形成することで、回転軸102がアンバランスな形状を有することを抑制できる。尚、幾つかの実施形態では、回転軸102の外周面116には1つの溝118が形成されており、回転軸102にタービン106及び圧縮機104が取り付けられると、1つの溝118だけが形成されることによるアンバランスの影響を低減するようになっている。この場合、出力装置4は分周部122を含んでいなくてもよい。
【0037】
過給機100の運転中、過給機100に設けられた回転軸102の回転数Cは変動していることが多い。第1実施形態によれば、振動監視装置1の第1ローパスフィルタ6は、回転軸102の回転数Cに応じて第1遮断周波数P1が設定される。このため、過給機100が振動監視装置1を備えることで、過給機100の回転軸102の回転信号Aから過給機100の回転軸102の振動を評価可能な過給機100を提供することができる。尚、船舶に搭載される排気ターボ過給機は回転軸102の回転数Cが特に変動しやすいので、排気ターボ過給機に本開示に係る振動監視装置1を適用することは非常に有効である。
【0038】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第2実施形態は、第2ローパスフィルタ10をさらに備えている点で第1実施形態とは異なるが、それ以外の構成は第1実施形態で説明した構成と同じである。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
(第2実施形態に係る振動監視装置の構成)
図8は、第2実施形態に係る振動監視装置1の構成を概略的に示す図である。図8に示すように、振動監視装置1は、第2ローパスフィルタ10をさらに備える。
【0040】
図8に例示する形態では、第2ローパスフィルタ10は、第1ローパスフィルタ6と電気的に接続されており、第1ローパスフィルタ6から抽出された振動信号Eが入力される。第2ローパスフィルタ10は、振動信号Eが入力されることで、浮上信号Fを出力(抽出)する。この浮上信号Fは、回転軸102の浮き上がり情報を取得可能な信号である。浮き上がり情報は、例えば、回転軸102が無回転であるときの回転軸102の上下方向の位置と回転軸102が回転しているときの回転軸102の上下方向の位置との差(浮き上がり量)である。
【0041】
第2ローパスフィルタ10は、第1遮断周波数P1よりも小さい第2遮断周波数P2を有する。この第2遮断周波数P2は、固定値であってもよい。幾つかの実施形態では、第2遮断周波数P2は、10Hz未満である。第2遮断周波数P2を10Hz未満とすることで、回転軸102の回転同期振動の影響、他機器における外乱の影響を除去できる。
【0042】
第2ローパスフィルタ10は、振動信号Eのうち、第2遮断周波数P2よりも小さい振動信号Eを通過させ、第2遮断周波数P2以上の振動信号Eを遮断する。第2ローパスフィルタ10は、この第2遮断周波数P2よりも小さい振動信号Eを浮上信号Fとして抽出する。このように、第2ローパスフィルタ10における信号の通過帯域(第2遮断周波数P2よりも小さい周波数帯)は、フィルタ指令値Dに応じて設定され、第2ローパスフィルタ10は、フィルタ指令値Dに応じて設定される通過帯域の信号を、回転信号Aから浮上信号Fとして抽出する。
【0043】
(第2実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
本発明者らによれば、振動信号Eから第2遮断周波数P2よりも小さい振動信号Eを抽出すると、直流成分の信号が抽出され、この直流成分の信号が浮上信号Fに相当することを見出した。第2実施形態によれば、第2ローパスフィルタ10は、振動信号Eが入力されることで第2遮断周波数P2よりも小さい振動信号Eを浮上信号Fとして抽出する。このため、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の浮き上がりを評価することができる。
【0044】
尚、第2実施形態では、第2ローパスフィルタ10は、振動信号Eが入力されるように構成されていたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、第2ローパスフィルタ10は回転センサ2と電気的に接続されており、回転センサ2が出力した回転信号Aが入力される。そして、第2ローパスフィルタ10は、回転信号Aが入力されることで、浮上信号Fを出力(抽出)する。不図示であるが、幾つかの実施形態では、振動監視装置1は、浮上信号Fから浮き上がり情報を取得し、この浮き上がり情報を通知する浮上量通知装置をさらに備える。
【0045】
(振動監視方法)
図9は、本開示に係る振動監視方法のフローチャートである。図9に示すように、振動監視方法は、回転信号出力ステップS2と、フィルタ指令値出力ステップS4と、抽出ステップS6と、を備える。
【0046】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0047】
回転信号出力ステップS2では、回転軸102の回転に同期した回転信号Aを出力する。フィルタ指令値出力ステップS4では、回転信号Aから算出される回転軸102の回転数Cに対応するフィルタ指令値Dを出力する。抽出ステップS6では、回転信号Aとフィルタ指令値Dとが入力されることで、フィルタ指令値Dに応じて設定される第1遮断周波数P1よりも小さい回転信号Aを回転軸102の振動情報を取得可能な振動信号Eとして抽出する。このような振動監視方法によれば、回転軸102の回転信号Aから回転軸102の振動を評価することができる。
【0048】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第3実施形態に係る振動監視装置1において、第1実施形態に係る振動監視装置1の各構成と共通の符号は、特記しない限り第1実施形態に係る振動監視装置1の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0049】
(第3実施形態に係る振動監視装置の構成)
図10は、第3実施形態に係る振動監視装置1の構成を概略的に示す図である。図10に示すように、振動監視装置1は、第1実施形態に係る構成に加えて、バンドパスフィルタ20を更に備える。
【0050】
バンドパスフィルタ20は、回転センサ2によって出力された回転信号Aと出力装置4によって出力されたフィルタ指令値Dとがバンドパスフィルタ20に入力されることで、フィルタ指令値Dに応じて設定される通過帯域の信号Gを回転軸の振動情報を取得可能な振動信号Gとして回転信号Aから抽出し、振動信号Gを出力する。この振動情報は、例えば振動信号Gの振動数、振動の大きさ(振幅)、または振動の速度などである。なお、図10に示す例では、フィルタ指令値Dは出力装置4から第1ローパスフィルタ6を介してバンドパスフィルタ20に入力されているが、フィルタ指令値Dは出力装置4から第1ローパスフィルタ6を介さずにバンドパスフィルタ20に入力されてもよい。
【0051】
図11は、バンドパスフィルタ20の振幅-周波数特性を示す図である。図11において、横軸は対数目盛で示された周波数であり、縦軸はデシベル値を示している。図11において、電圧値(フィルタ指令値D)が0.1Vである場合のバンドパスフィルタ20の特性をV5、電圧値が1Vである場合のバンドパスフィルタ20の特性をV6、電圧値が10Vである場合のバンドパスフィルタ20の特性をV7で示している。
【0052】
図11において、デシベル値は信号強度に相当し、デシベル値が0未満である場合、バンドパスフィルタ20が抽出する振動信号Eは減衰している。図11に示すように、各電圧値(V5~V7)において、バンドパスフィルタ20の通過帯域の中心周波数Fcから周波数が離れるにつれてデシベル値が減少しており、振動信号Gの減衰率が大きくなっている。この中心周波数Fcは、出力装置4によって出力されたフィルタ指令値D(回転数Cに対応する値)に応じて設定される。具体的には、この中心周波数Fcは、出力装置4のカウンタ部124(図4参照)によってカウントされた回転軸102の回転数Cに一致又はほぼ一致するように設定される。例えばバンドパスフィルタ20は、フィルタ指令値Dに応じて、0.8C≦Fc≦1.2Cを満たすように振動信号Gを減衰させてもよい。また、回転軸102の回転数Cとフィルタ指令値Dとが比例する場合には、フィルタ指令値Dと中心周波数Fcとが比例するように中心周波数Fcが設定されてもよい。また、バンドパスフィルタ20の通過帯域の上限及び下限は、フィルタ指令値Dに応じて中心周波数Fcの両側に設定される。
【0053】
(第3実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
図12は、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号E、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号G、及び回転軸102の振動によって発生する正味の実振動信号Zの各々の波形を示す波形図である。上述のように、第3実施形態では、バンドパスフィルタ20の通過帯域の中心周波数Fcが回転軸102の回転数Cに一致又はほぼ一致するように(例えば0.8C≦Fc≦1.2Cを満たすように)設定される。このため、図12に示すように、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gは、回転軸102の振動によって発生する正味の実振動信号Zの波形と類似しており、振動信号Gに基づいて回転軸102の回転に同期した振動(回転数Cの1倍の振動数を有する振動)を高精度に評価することができる。これにより、過給機100のロータのアンバランス(例えばスケール付着によるアンバランス)、ロータの曲がり、ロータと車室との接触等を評価及び判定することが可能となり、過給機100の最適なメンテナンスの提案や故障を未然に防止すること等が可能となる。
【0054】
尚、不図示であるが、第3実施形態では、振動監視装置1は、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号E及びバンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gの各々から振動情報(振動数、振動の大きさ、振動の速さなど)を取得し、この振動情報を通知する振動通知装置を更に備える。このような振動通知装置は、例えば、振動情報を表示するモニタであってもよいし、振動信号Eから取得した振動情報が予め設定されている閾値を超えた場合、警告音や警告灯を発生させる警告装置であってもよい。
【0055】
<第4実施形態>
本開示の第4実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第4実施形態に係る振動監視装置1において、第3実施形態に係る振動監視装置1の各構成と共通の符号は、特記しない限り第3実施形態に係る振動監視装置1の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0056】
(第4実施形態に係る振動監視装置の構成)
図13は、第4実施形態に係る振動監視装置1の構成の一部を概略的に示す図である。図13に示すように、振動監視装置1は、第3実施形態に係る構成に加えて、ベクトルモニタ30(表示装置)を更に備える。
【0057】
ベクトルモニタ30には、回転センサ2の出力信号(図示する例では分周部122の出力である回転パルス信号B)と、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gとが入力される。ベクトルモニタ30は、入力されたこれらの信号(回転パルス信号B及び振動信号G)に基づいて、振動信号Gの振幅と振動信号Gの位相角(例えば回転パルス信号Bのパルス130を基準とした位相角)とを検出する検出部32と、検出部32によって検出した振動信号Gの振幅と振動信号Gの位相角とを表示する表示部34とを含む。
【0058】
(第4実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
回転軸102の回転に同期した振動(回転数Cの1倍の振動数を有する振動)の振幅及び位相を検出して表示部34に表示することにより、回転軸102の回転に同期した振動を高精度に評価することができ、例えば過給機100の軸系の危険速度、接触事象、上述のアンバランスの判定を高精度に行うことが可能となる。
【0059】
<第5実施形態>
本開示の第5実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第5実施形態に係る振動監視装置1において、第3実施形態に係る振動監視装置1の各構成と共通の符号は、特記しない限り第3実施形態に係る振動監視装置1の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0060】
(第5実施形態に係る振動監視装置の構成)
図14は、第5実施形態に係る振動監視装置1の構成の一部を概略的に示す図である。第5実施形態に係る振動監視装置1は、第3実施形態に係る構成に加えて、過給機100に接続されたエンジン(不図示)の振動を検出するためのMEMSセンサ40(MEMS: Micro Electro Mechanical Systems)を更に備える。MEMSセンサ40はエンジンの振動を検出するための加速度センサである。
【0061】
第5実施形態に係る振動監視装置1は、回転センサ2を収容する筐体42(ジャンクションボックス)を備えており、MEMSセンサ40は、回転センサ2とともに筐体42の内部に設置されている。筐体42は、例えば過給機100とエンジンとの間に配置されており、過給機100がエンジンの上に取り付けられている場合には、過給機100の下部に筐体42が配置される。
【0062】
また、振動監視装置1は、MEMSセンサ40の出力から取得されたエンジンの振動情報と、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号Eから取得された回転軸102の振動情報と、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gから取得された回転軸102の振動情報と、を同時に表示するように構成された表示部44を備える。これらの振動情報は、例えば振動数、振動の大きさ(振幅)、または振動の速度などである。
【0063】
図15は、表示部44の表示内容の一例を示す図である。図15に示す例では、表示部44は、MEMSセンサ40の出力から取得されたエンジンの振動情報として、エンジンの振動の振幅を表示している。また、表示部44は、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号Eから取得された回転軸102の振動情報として、振動信号Eの振幅(オーバーオール振幅)を表示している。また、表示部44は、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gから取得された回転軸102の振動情報として、振動信号Gの振幅(回転1倍振幅:回転数Cの1倍の振動数を有する振動の振幅)を表示している。
【0064】
(第5実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
MEMSセンサ40でエンジンの振動情報を間接的に取得でき、エンジンの振動情報と過給機100の回転軸102の振動情報とを表示部44に同時に表示させることにより、過給機100の回転軸102の振動とエンジンの振動とを混同せずに評価することができるため、過給機100の回転軸102の振動を精度良く評価して判定することができる。また、MEMSセンサ40は安価であり、仮設の振動センサを設置することなく過給機100の回転軸102の振動を安価且つ精度良く評価することができる。
【0065】
なお、幾つかの実施形態では、図14に示す例において、MEMSセンサ40の出力から取得されたエンジンの振動情報と、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号Eから取得された回転軸102の振動情報と、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gから取得された回転軸102の振動情報と、を収録するように構成されたデータ収録部を、表示部44に代えて又は表示部44とともに、備えていてもよい。
【0066】
<第6実施形態>
本開示の第6実施形態に係る振動監視装置1について説明する。第6実施形態に係る振動監視装置1において、第5実施形態に係る振動監視装置1の各構成と共通の符号は、特記しない限り第3実施形態に係る振動監視装置1の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0067】
(第6実施形態に係る振動監視装置の構成)
図16は、第6実施形態に係る振動監視装置1の構成の一部を概略的に示す図である。図16に示すように、第6実施形態に係る振動監視装置1は、第5実施形態に係る構成に加えて、過給機100における回転軸102(図10参照)を回転可能に支持する軸受50の温度を検出する軸受温度センサ52と、過給機100における潤滑油(軸受50に供給された潤滑油)の出口の温度を検出する潤滑油出口温度センサ54とを更に備える。
【0068】
第6実施形態における表示部44は、MEMSセンサ40の出力から取得されたエンジンの振動情報と、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号Eから取得された回転軸102の振動情報と、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gから取得された回転軸102の振動情報と、軸受温度センサ52によって検出された軸受50の温度と、潤滑油出口温度センサ54によって検出された過給機100の潤滑油の出口における潤滑油の温度とを同時に表示する。
【0069】
図17は、表示部44の表示内容の一例を示す図である。図17に示す例では、表示部44は、図15に例示した内容に加えて、軸受50の温度(軸受温度)と、過給機100の潤滑油の出口における潤滑油の温度(潤滑油出口温度)とを同時に表示している。
【0070】
(第6実施形態に係る振動監視装置の作用・効果)
第5実施形態で説明した効果が得られるとともに、軸受50の温度と過給機100における潤滑油の出口の温度とから過給機100の状態を精度良く評価することができ、過給機100の予防保全の評価精度の向上に繋がる。
【0071】
なお、幾つかの実施形態では、図16に示す例において、MEMSセンサ40の出力に基づくエンジンの振動情報と、第1ローパスフィルタ6によって抽出された振動信号Eから取得された回転軸102の振動情報と、バンドパスフィルタ20によって抽出された振動信号Gから取得された回転軸102の振動情報と、軸受温度センサ52によって検出された軸受50の温度と、潤滑油出口温度センサ54によって検出された過給機100における潤滑油の出口の温度と、を収録するように構成されたデータ収録部(不図示)を、表示部44に代えて又は表示部44とともに、備えていてもよい。
【0072】
なお、本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。例えば、上述した第3実施形態では、振動監視装置1は、第1ローパスフィルタ6とバンドパスフィルタ20とを備える構成を例示したが、振動監視装置1は、第1ローパスフィルタ6、第2ローパスフィルタ10及びバンドパスフィルタ20のうち少なくとも1つのフィルタを備えていればよい。
【0073】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0074】
[1]本開示に係る振動監視装置(1)は、
回転軸(102)の回転に同期した回転信号(A)を出力する回転センサ(2)と、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数(C)に対応するフィルタ指令値(D)を出力する出力装置(4)と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される通過帯域の信号(E又はG)を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号(E又はG)として前記回転信号から抽出する少なくとも1つのフィルタ(6,10,20)と、
を備える。
【0075】
上記〔1〕に記載の構成によれば、少なくとも1つのフィルタの通過帯域を回転軸の回転数に応じて適切に設定することにより、回転軸の回転に同期した回転信号から回転軸の振動の評価に適した通過帯域の信号を抽出することができる。このため、回転軸の回転信号から回転軸の振動を評価することができる。
【0076】
〔2〕幾つかの実施形態では、上記〔1〕に記載の構成において、
前記少なくとも1つのフィルタは、第1ローパスフィルタ(6)を含み、
前記第1ローパスフィルタは、前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される第1遮断周波数(P1)よりも小さい通過帯域の信号(E)を前記振動信号(E)として抽出する。
【0077】
本発明者らによれば、回転軸の回転信号から第1遮断周波数よりも小さい回転信号を抽出すると、回転軸の振動によって発生する正味の実振動信号と波形が類似することを見出した。また、本発明者らによれば、回転軸の回転数に応じて第1遮断周波数を設定することで、回転信号から振動信号を高精度に抽出できることを見出した。上記[2]に記載の構成によれば、第1ローパスフィルタは、回転軸の回転信号とフィルタ指令値とが入力されることで、フィルタ指令値に応じて設定される第1遮断周波数よりも小さい回転軸の回転信号を振動信号として抽出する。このため、回転軸の回転信号から回転軸の振動を評価することができる。
【0078】
また、上記[2]に記載の構成によれば、フィルタ指令値は回転軸の回転数に対応している値であるため、回転軸の回転数に応じて第1遮断周波数が設定される。つまり、第1遮断周波数は回転数に追従するように設定されるので、回転軸の回転信号から振動信号を高精度に抽出できる。
【0079】
[3]幾つかの実施形態では、上記[2]に記載の構成において、
前記少なくとも1つのフィルタは、前記第1遮断周波数よりも小さい第2遮断周波数(P2)を有する第2ローパスフィルタ(10)を更に備える。
【0080】
上記[3]に記載の構成によれば、第2遮断周波数よりも小さい信号(例えば、第2遮断周波数よりも小さい振動信号)を抽出することができる。
【0081】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]に記載の構成において、
前記第2ローパスフィルタは、前記第1ローパスフィルタによって抽出された前記振動信号が入力されることで前記第2遮断周波数よりも小さい通過帯域の信号(E)を前記回転軸の浮き上がり情報を取得可能な浮上信号(F)として抽出する。
【0082】
本発明者らによれば、振動信号から第2遮断周波数よりも小さい振動信号を抽出すると、回転軸の浮き上がり情報を取得可能な浮上信号に相当することを見出した。上記[4]に記載の構成によれば、第2ローパスフィルタは、更に第2遮断周波数で振動信号を削除して直流信号(浮上信号)として抽出する。このため、回転軸の回転信号から回転軸の浮き上がりを評価することができる。
【0083】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記少なくとも1つのフィルタは、バンドパスフィルタを含み、
前記バンドパスフィルタは、前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される中心周波数(Fc)を含む通過帯域の信号(G)を前記振動信号(G)として前記回転信号から抽出する。
【0084】
上記[5]に記載の構成によれば、バンドパスフィルタの通過帯域の中心周波数を回転軸の回転数と同一又は略同一に設定することにより、バンドパスフィルタによって抽出された振動信号に基づいて回転軸の回転に同期した振動(回転数Cの1倍又は略1倍の振動数を有する振動)を高精度に評価することができる。これにより、過給機のロータのアンバランス(例えばスケール付着によるアンバランス)、ロータの曲がり、又はロータと車室との接触等を評価及び判定することが可能となり、過給機の最適なメンテナンスの提案や故障を未然に防止すること等が可能となる。
【0085】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]に記載の構成において、
前記中心周波数をFc、前記回転軸の回転数をCとすると、0.8C≦Fc≦1.2Cを満たす。
【0086】
上記[6]に記載の構成によれば、バンドパスフィルタの通過帯域の中心周波数が回転軸の回転数と同一又は略同一(0.8C≦Fc≦1.2C)に設定されるため、バンドパスフィルタによって抽出された振動信号に基づいて回転軸の回転に同期した振動を高精度に評価することができる。これにより、過給機のロータのアンバランス、ロータの曲がり、又はロータと車室との接触等を評価及び判定することが可能となり、過給機の最適なメンテナンスの提案や故障を未然に防止すること等が可能となる。
【0087】
[7]幾つかの実施形態では、[5]又は[6]に記載の構成において、
前記回転信号と、前記バンドパスフィルタによって抽出された前記振動信号とに基づいて、前記振動信号の振幅と、前記回転信号を基準とした前記振動信号の位相角とを表示する表示部(34)を更に備える。
【0088】
上記[7]に記載の構成によれば、回転軸の回転に同期した振動(回転数Cの1倍の振動数を有する振動)の振幅及び位相を検出して表示部に表示することにより、回転軸の回転に同期した振動を高精度に評価することができ、例えば過給機の軸系の危険速度、接触事象、上述のアンバランスの判定を高精度に行うことが可能となる。
【0089】
[8]幾つかの実施形態では、上記[1]から[7]の何れか1つに記載の構成において、
前記フィルタ指令値は、前記回転信号から算出される前記回転軸の前記回転数を変換した電流値又は電圧値である。
【0090】
第1ローパスフィルタは、電流値又は電圧値に応じて第1遮断周波数が設定可能である場合が多い。上記[8]に記載の構成によれば、フィルタ指令値は電流値又は電圧値であるので、第1遮断周波数を回転数に応じて任意に設定することができる。また、上述したような第1ローパスフィルタは、一般的に安価で市販されているので、コストの増加を抑制することができる。
【0091】
[9]幾つかの実施形態では、上記[1]から[8]の何れか1つに記載の構成において、
前記回転軸は、前記回転信号がパルス波形を有するように構成されるマーカ部(108)を含む。
【0092】
上記[9]に記載の構成によれば、回転軸はマーカ部を含むので、回転センサは、マーカ部を含まない回転軸から回転信号を出力する場合と比較して、精度の高い回転信号を出力することができる。
【0093】
[10]幾つかの実施形態では、上記[9]に記載の構成において、
前記マーカ部は、前記回転軸の外周面(116)に形成される少なくとも2つ以上の溝(118)を含み、
前記回転センサは、前記回転軸の前記外周面に渦電流を発生させることで前記回転軸の前記外周面までの距離(d)を検出する渦電流式変位センサである。
【0094】
上記[10]に記載の構成によれば、回転センサは渦電流式センサを適用することができる。また、回転軸の外周面には少なくとも2つ以上の溝が形成されているので、回転センサは、回転軸の1回転中に2つ以上のパルスを有する回転信号を出力するので、回転軸の1回転中に1つのパルスを有する回転信号を出力する場合と比較して、振動信号を高精度に抽出できる。
【0095】
[11]幾つかの実施形態では、上記[9]に記載の構成において、
前記マーカ部は、前記回転軸の外周面に形成される少なくとも2つ以上の溝を含み、
前記回転センサは、前記回転軸の前記外周面にレーザー光を照射して、前記レーザー光の反射光により前記回転軸の前記外周面までの距離を検出するレーザー式変位センサである。
【0096】
上記[11]に記載の構成によれば、回転センサは、レーザー式変位センサを適用することができる。
【0097】
[12]本開示に係る過給機(100)は、
上記[1]から[11]の何れか1つに記載の振動監視装置と、
前記回転軸の一端部に設けられる圧縮機(104)と、
前記回転軸の他端部に設けられるタービン(106)と、を備える。
【0098】
過給機の運転中、過給機に設けられた回転軸の回転数は変動していることが多い。上記[12]に記載の構成によれば、振動監視装置の第1ローパスフィルタは、回転軸の回転数に応じて第1遮断周波数が設定される。このため、過給機が振動監視装置を備えることで、過給機の回転軸の回転信号から過給機の回転軸の振動を評価可能な過給機を提供することができる。
【0099】
[13]幾つかの実施形態では、上記[12]に記載の構成において、
エンジンの振動を検出するための加速度センサと、
前記加速度センサの出力から取得された前記エンジンの振動情報と、前記少なくとも1つのフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動情報とを同時に表示する表示部(44)と、
を更に備える。
【0100】
上記[13]に記載の構成によれば、加速度センサでエンジンの振動情報を間接的に取得でき、エンジンの振動情報と過給機の回転軸の振動情報とを表示部に同時に表示させることにより、過給機の回転軸の振動とエンジンの振動とを混同せずに評価することができるため、過給機の回転軸の振動を精度良く評価して判定することができる。また、例えば加速度センサとしてMEMSセンサを用いる場合、MEMSセンサは安価であるため、過給機の回転軸の振動を安価且つ精度良く評価することができる。
【0101】
[14]幾つかの実施形態では、上記[12]又は〔13〕に記載の構成において、
前記回転軸を回転可能に支持する軸受(50)と、
前記軸受の温度を検出する軸受温度センサ(52)と、
前記過給機における潤滑油の出口の温度を検出する潤滑油出口温度センサ(54)と、
前記軸受温度センサによって検出された前記軸受の温度と、前記潤滑油温度センサによって検出された前記潤滑油の出口の温度と、前記少なくとも1つのフィルタによって抽出された前記振動信号から取得された前記回転軸の振動情報とを同時に表示する表示部(44)と、
を備える。
【0102】
上記[14]に記載の構成によれば、軸受の温度情報と過給機における潤滑油の出口の温度情報とから過給機の状態を精度良く評価することができ、過給機の予防保全の評価精度の向上に繋がる。
【0103】
[15]本開示に係る振動監視方法は、
回転軸の回転に同期した回転信号を出力するステップ(S2)と、
前記回転信号から算出される前記回転軸の回転数に対応するフィルタ指令値を出力するステップ(S4)と、
前記回転信号と前記フィルタ指令値とが入力されることで、前記フィルタ指令値に応じて設定される通過帯域の信号を前記回転軸の振動情報を取得可能な振動信号として前記回転信号から抽出するステップ(S6)と、を備える。
【0104】
上記[15]に記載の方法によれば、少なくとも1つのフィルタの通過帯域を回転軸の回転数に応じて適切に設定することにより、回転軸の回転に同期した回転信号から回転軸の振動の評価に適した通過帯域の信号を抽出することができる。このため、回転軸の回転信号から回転軸の振動を評価することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 振動監視装置
2 回転センサ
4 出力装置
6 第1ローパスフィルタ
10 第2ローパスフィルタ
20 バンドパスフィルタ
30 ベクトルモニタ
32 検出部
34,44,126 表示部
40 センサ
42 筐体
50 軸受
52 軸受温度センサ
54 潤滑油出口温度センサ
100 過給機
102 回転軸
104 圧縮機
106 タービン
108 マーカ部
116 回転軸の外周面
118 溝
130 パルス
A 回転信号
C 回転数
D フィルタ指令値
E 振動信号
F 浮上信号
G 振動信号
d 距離
S2 回転信号出力ステップ
S4 フィルタ指令値出力ステップ
S6 抽出ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
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