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特開2022-135891多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、及び該粒子の用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135891
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、及び該粒子の用途
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220908BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220908BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20220908BHJP
   C08B 11/12 20060101ALI20220908BHJP
   B01J 13/02 20060101ALI20220908BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08J3/12 101
A61K8/73
A61Q1/00
A61Q5/00
C08B11/12
B01J13/02
C08L1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157578
(22)【出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021035295
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 美穂
(72)【発明者】
【氏名】前山 洋輔
【テーマコード(参考)】
4C083
4C090
4F070
4G005
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AD271
4C083BB25
4C083CC02
4C083CC31
4C083FF01
4C090AA01
4C090AA10
4C090BA31
4C090BD10
4C090BD14
4C090BD19
4C090BD24
4C090CA04
4C090CA07
4C090CA19
4C090DA11
4C090DA22
4C090DA26
4C090DA31
4F070AA02
4F070AB13
4F070AC12
4F070AE28
4F070DA27
4F070DB01
4F070DB06
4F070DC07
4F070DC09
4F070DC13
4G005AA01
4G005AB06
4G005BA20
4G005BB08
4G005BB24
4G005DB12Z
4G005DB13Z
4G005EA03
4G005EA06
4J002AA001
4J002AB011
4J002AB031
4J002GB01
4J002GB04
4J002GC00
4J002GH01
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光散乱性に優れた多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、及び該粒子の用途を提供する。
【解決手段】表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有する、多糖類含有粒子。円形度が、0.70以上0.97以下であり、アスペクト比が、0.60以上0.85以下であり、前記多糖類が架橋構造を有しており、前記多糖類が、セルロース誘導体であり、体積平均粒子径が、0.1μm~100μmであり、光散乱指数が、0.6~1.0であり、膨潤度が、1.0~5.0であるものが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有する、多糖類含有粒子。
【請求項2】
円形度が、0.70以上0.97以下である、請求項1に記載の多糖類含有粒子。
【請求項3】
アスペクト比が、0.60以上0.85以下である、請求項1又は2に記載の多糖類含有粒子。
【請求項4】
前記多糖類が架橋構造を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
【請求項5】
前記多糖類が、セルロース誘導体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
【請求項6】
体積平均粒子径が、0.1μm~100μmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
【請求項7】
光散乱指数が、0.6~1.0である、請求項1~6のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
【請求項8】
膨潤度が、1.0~5.0である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子の製造方法であって、
多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る噴霧乾燥工程と、
前記噴霧乾燥工程で得られた前駆体を加熱して多糖類含有粒子を得る加熱処理工程と、を備える、多糖類含有粒子の製造方法。
【請求項10】
前記加熱処理工程において、前記噴霧乾燥工程で得られた前駆体を、60~300℃の温度で1時間以上加熱する、請求項9に記載の多糖類含有粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、外用剤。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、コーティング材料。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、ブロッキング防止剤。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、光拡散フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、及び該粒子の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多糖類を含有する球状粒子は、滑りが良いことから、化粧料、医薬品、食品、塗料等への添加剤として幅広い用途に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、多孔性球状セルロース粉末が配合された乳化化粧料が記載されている。
【0004】
特許文献2には、外殻層と多孔性の内核を有し、内核の多孔度が5~50%である球状多孔性セルロース微粒子が記載されている。
【0005】
特許文献3には、水溶性セルロース誘導体等の水溶性高分子を含む真球状粒子が記載されている。
【0006】
特許文献4には、カルボキシメチルセルロースの多価陽イオン塩からなる球状粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6-45534号公報
【特許文献2】特開平6-254373号公報
【特許文献3】特開平5-222208号公報
【特許文献4】特開2009-51781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~4に記載のセルロース誘導体を含む球状粒子は、表面が平滑であることから、光散乱性に劣る点で、しわ、しみ等の肌の欠点を補正するソフトフォーカス効果が十分に得られない問題があり、更なる改善が求められていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、光散乱性に優れた多糖類含有粒子、該粒子の製造方法、及び該粒子の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、多糖類含有粒子の表面に特定の形状を形成させることにより、上記課題を達成できることを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。
【0011】
本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.
表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有する、多糖類含有粒子。
項2.
円形度が、0.70以上0.97以下である、項1に記載の多糖類含有粒子。
項3.
アスペクト比が、0.60以上0.85以下である、項1又は2に記載の多糖類含有粒子。
項4.
前記多糖類が架橋構造を有する、項1~3のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
項5.
前記多糖類が、セルロース誘導体である、項1~4のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
項6.
体積平均粒子径が、0.1μm~100μmである、項1~5のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
項7.
光散乱指数が、0.6~1.0である、項1~6のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
項8.
膨潤度が、1.0~5.0である、項1~7のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子。
項9.
項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子の製造方法であって、
多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る噴霧乾燥工程と、
前記噴霧乾燥工程で得られた前駆体を加熱して多糖類含有粒子を得る加熱処理工程と、
を備える、多糖類含有粒子の製造方法。
項10.
前記加熱処理工程において、前記噴霧乾燥工程で得られた前駆体を、60~300℃の温度で1時間以上加熱する、項9に記載の多糖類含有粒子の製造方法。
項11.
項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、外用剤。
項12.
項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、コーティング材料。
項13.
項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、樹脂組成物。
項14.
項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、ブロッキング防止剤。
項15.
項1~8のいずれか一項に記載の多糖類含有粒子を含む、光拡散フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多糖類含有粒子は、表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有するため、光散乱性に優れる。特に本発明の多糖類含有粒子は、優れた光散乱性を有することから、化粧料等の外用剤に配合した場合、ソフトフォーカス効果の発現が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で得られた多糖類含有粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で約3000倍の倍率で撮影した写真である。
図2】実施例2で得られた多糖類含有粒子をSEMで約3000倍の倍率で撮影した写真である。
図3】比較例1で得られた粉体をSEMで約3000倍の倍率で撮影した写真である。
図4】比較例2で得られた粉体をSEMで約3000倍の倍率で撮影した写真である。
図5】比較例3で得られた粉体をSEMで約3000倍の倍率で撮影した写真である。
図6】比較例4で得られた粉体をSEMで約3000倍の倍率で撮影した写真である。
図7】比較例5で得られた粒子をSEMで約3000倍の倍率で撮影した写真である。
図8】比較例6で得られた粒子をSEMで約3000倍の倍率で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0016】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0017】
1.多糖類含有粒子
本発明の多糖類含有粒子は、多糖類を含有し、該粒子表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有することを特徴としている。本発明の多糖類含有粒子は、このような構成を備えていることにより、光散乱性に優れる。また、本発明の多糖類含有粒子は、優れた光散乱性を有することから、ソフトフォーカス効果の発現が期待できる点で、化粧料等の外用剤に特に好適に使用することができる。
【0018】
以下、本発明の多糖類含有粒子を、単に「本発明」、「本発明の粒子」又は「多糖類含有粒子」と記載することもある。
【0019】
本明細書において、「クレーター状の凹部」とは、粒子表面の平滑部分において一部が窪んだ部分を意味するだけでなく、凹部の周辺部に盛り上がりがある窪み(凹部の周囲を取り囲む盛り上がった部分を有する窪み)も意味する。本発明の多糖類含有粒子の表面のクレーター状の凹部を上から見た場合、凹部の形状は円形であってもよく、楕円形であってもよい。
【0020】
本明細書において、「クレーター状の凹部」とは、皺状又は襞状の外観を有する溝状の節目のような皺状又は襞状の凹凸構造を意味しない。また、本明細書において、「クレーター状の凹部」とは、花弁状粒子に見られる不定形の凹凸構造を意味しない。
【0021】
クレーター状の凹部は、好ましくは0.1μm~70μmの長径を有する。クレーター状の凹部は、好ましくは0.1μm~50μmの深さを有する。
【0022】
クレーター状の凹部における長径は、多糖類含有粒子の長径に対して、良好な光散乱性の観点から、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、より一層好ましくは15%以上であり、また、良好な光散乱性の観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、より一層好ましくは30%以下である。クレーター状の凹部における長径及び多糖類含有粒子の長径は、例えば、多糖類含有粒子をSEMで約3000倍の倍率で観察して計測することができる。
【0023】
クレーター状の凹部の最大深さは、多糖類含有粒子の長径に対して、良好な光散乱性の観点から、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上であり、より一層好ましくは5%以上であり、また、良好な光散乱性の観点から、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下であり、より一層好ましくは70%以下である。クレーター状の凹部の最大深さは、例えば、多糖類含有粒子をSEMで約3000倍の倍率で観察して計測することができる。
【0024】
本発明の多糖類含有粒子において、良好な光散乱性、優れた吸油性の観点から、クレーター状の凹部の数は、該粒子1個当たりに少なくとも1個以上であり、好ましくは2~20個であり、より好ましくは3~15個、より一層好ましくは4~10個である。
【0025】
本発明の多糖類含有粒子は、粒子の強度をより向上させる観点から、中実構造を有する中実粒子であることが好ましい。本明細書において、中実構造を有する中実粒子とは、中空構造を有していない粒子又は多孔質構造を有していない粒子を意味する。ここで、中空構造とは、殻で囲まれた内部が中空(完全な空洞状態)である構造、または粒子内部に空隙を少なくとも1個有する構造を意味する。ここでいう空隙とは、粒子の断面をSEM等で観察した際に確認することができる粒子内部の孔となった部分を意味する。本発明の多糖類含有粒子は、その内部がセルロース誘導体で充填された中実構造を有することがより好ましく、その内部が架橋構造を有するセルロース誘導体で充填された中実構造を有することがより一層好ましい。
【0026】
本発明において、均一性の高い反射光強度を有する観点から、円形度は0.70以上0.97以下であることが好ましく、0.75以上0.96以下であることがより好ましく、0.80以上0.95以下であることが好ましい。本明細書において、円形度とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる円形度を意味する。
【0027】
本発明の多糖類含有粒子は、適度な滑り性、皮膚への付着性の観点から、アスペクト比が0.60以上0.85以下であり、且つ、表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有する異形粒子(即ち、多糖類含有異形粒子)であることが好ましい。本明細書において、「異形粒子」とは球状粒子ではないこと(非球状粒子)を意味する。また、本明細書において、アスペクト比とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られるアスペクト比を意味する。
【0028】
本発明において、耐水性及び耐溶剤性の観点から、多糖類は架橋構造を有することが好ましい。架橋構造とは、多糖類同士が架橋されている構造を意味する。本発明において、多糖類が架橋構造を有する場合、以下に記載の堅ろう性(弾性率)がより一層向上する。本発明において、多糖類同士が水素結合により架橋されている構造を有することがより好ましい。本発明において、架橋構造を有するセルロース誘導体は、通常、原料として用いられるセルロース誘導体を架橋することにより得られるものである。なお、本明細書において、原料として用いられるセルロース誘導体とは、架橋構造を有していないセルロース誘導体を意味する。
【0029】
本発明において、多糖類はセルロース誘導体であることが好ましい。本明細書において原料として用いられるセルロース誘導体(架橋構造を有していないセルロース誘導体)は、セルロースの水酸基の一部を他の置換基で置換した水溶性高分子を意味する。
【0030】
セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム等が挙げられる。これらのセルロース誘導体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、セルロース誘導体は、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びカルボキシメチルセルロースアンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。本発明において、セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びカルボキシメチルセルロースアンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。本発明において、セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースアンモニウムが特に好ましい。
【0031】
本発明において、触感特性の観点から、体積平均粒子径は、0.1μm~100μmであることが好ましい。本明細書において、体積平均粒子径とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる体積平均粒子径を意味する。
【0032】
本発明において、均一性の高い反射光強度を有する観点から、光散乱指数は0.6~1.0であることが好ましい。光散乱指数をこの範囲内とすることにより、光散乱性がより向上し、且つ、化粧料等に本発明の粒子を配合した場合にソフトフォーカス特性がより向上する。本発明において、光散乱指数は、好ましくは0.65~0.95、より好ましくは0.7~0.9である。本明細書において、光散乱指数とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる光散乱指数を意味する。
【0033】
本発明において、水系の処方での触感や外観への影響の観点から、膨潤度は好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.5~4.5、より一層好ましくは2.0~4.0である。本明細書において、膨潤度とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる膨潤度を意味する。
【0034】
本発明において、撹拌、混合等の加工工程における外力に対する耐久性の観点から、堅ろう性は高いほうが好ましい。本明細書において、堅ろう性とは、後述する実施例の項で説明する測定方法により得られる弾性率(MPa)を意味する。
【0035】
本発明において、耐久性の観点から、堅ろう性(弾性率)は、好ましくは110MPa以上270MPa以下、より好ましくは120MPa以上240MPa以下、より一層好ましくは130MPa以上210MPa以下である。
【0036】
2.多糖類含有粒子の製造方法
本発明の製造方法は、多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る噴霧乾燥工程と、該噴霧乾燥工程で得られた前駆体を加熱して多糖類含有粒子を得る加熱処理工程と、を備えることを特徴としている。本発明の製造方法は、このような構成を備えていることにより、表面にクレーター状の凹部を少なくとも1個有する多糖類含有粒子を、簡便な方法で製造することができる。
【0037】
本発明の製造方法によって製造された多糖類含有粒子の詳細は、特に言及がない限り、上記「1.多糖類含有粒子」に記載したとおりである。
【0038】
以下、本発明の多糖類含有粒子の製造方法について、詳述する。
【0039】
(噴霧乾燥工程)
噴霧乾燥工程は、多糖類を含む溶液を噴霧乾燥して前駆体を得る工程である。
【0040】
噴霧乾燥工程において使用する多糖類はセルロース誘導体であることが好ましい。
【0041】
セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム等が挙げられる。これらのセルロース誘導体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明において、セルロース誘導体は、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びカルボキシメチルセルロースアンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。本発明において、セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム及びカルボキシメチルセルロースアンモニウムからなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。本発明において、セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロースアンモニウムが特に好ましい。
【0042】
噴霧乾燥工程において使用する溶液は、容器内で多糖類を溶媒中で混合して調製することが好ましい。容器の種類は特に限定されず、例えば、公知の容器を広く採用することができる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられ、これらの中でも、水が好ましい。水としては、例えば、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等が挙げられ、これらの中でも、イオン交換水が好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の脂肪族1価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族化合物等が挙げられる。なお、本明細書において、有機溶媒には、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エリスリトール等の多価アルコールは含まれない。
【0043】
噴霧乾燥工程において使用する溶液は、多糖類及び水からなる水溶液であることが好ましく、多糖類及びイオン交換水からなる水溶液であることがより好ましい。
【0044】
噴霧乾燥工程において使用する溶液はポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エリスリトール等の多価アルコールを含まないことが好ましい。
【0045】
多糖類を含む溶液100質量部に対して、多糖類の含有量は、好ましくは0.5~20質量部、より好ましくは0.75~15質量部、より一層好ましくは1~10質量部である。
【0046】
噴霧乾燥工程では、多糖類を含む溶液から前駆体を得るために噴霧乾燥を行う。前駆体の形状は、好ましくは粉体である。
【0047】
噴霧乾燥工程では、通常、スプレードライヤー等の噴霧乾燥機を用いて、多糖類を含む溶液を噴霧して乾燥させる。噴霧乾燥機における、多糖類を含む溶液の供給速度、入口温度、出口温度、滞留時間、アトマイザ回転数及び噴霧圧力等を適宜に調節することにより、得られる前駆体の大きさ、形状を調整することが可能である。
【0048】
噴霧乾燥工程において、入口温度(多糖類を含む溶液が噴霧乾燥機に導入される導入口の温度)の下限は、好ましくは80℃、より好ましくは90℃、より一層好ましくは100℃、特に好ましくは110℃である。噴霧乾燥工程において、入口温度の上限は、好ましくは250℃、より好ましくは240℃、より一層好ましくは230℃、特に好ましくは220℃である。
【0049】
噴霧乾燥工程において、出口温度(多糖類を含む溶液が噴霧乾燥されて前駆体として排出される排出口の温度)の下限は、好ましくは40℃、より好ましくは45℃、より一層好ましくは50℃、特に好ましくは55℃である。噴霧乾燥工程において、出口温度の上限は、好ましくは140℃、より好ましくは130℃、より一層好ましくは120℃、特に好ましくは110℃である。
【0050】
噴霧乾燥工程において、滞留時間(多糖類を含む溶液が噴霧乾燥に供される時間)は、好ましくは0.5秒~2秒である。
【0051】
(加熱処理工程)
加熱処理工程は、噴霧乾燥工程で得られた前駆体を加熱して多糖類含有粒子を得る工程である。前駆体を加熱することによって、多糖類同士が架橋して多糖類含有粒子を得ることができる。
【0052】
加熱処理工程では、通常、恒温槽等の装置を用いて、前駆体を加熱する。
【0053】
加熱処理工程において、加熱温度及び加熱時間を調節することにより、多糖類同士を十分に架橋させることができ、光散乱性に優れる多糖類含有粒子を製造することができる。
【0054】
加熱処理工程において、噴霧乾燥工程で得られた前駆体を、60~300℃の温度で1時間以上加熱することが好ましく、60~300℃の温度で1時間以上20時間以下加熱することがより好ましい。
【0055】
加熱処理工程において、160℃以下の低温で長時間加熱して多糖類同士を架橋させることができ、200℃以上の高温で短時間加熱して多糖類同士を架橋させることもできる。低温の場合は、60~160℃で6時間以上20時間以下加熱することが好ましく、80~150℃で3時間超20時間以下加熱することがより好ましい。高温の場合は、200~300℃で1時間以上3時間以下加熱することが好ましい。
【0056】
本発明の製造方法は、架橋剤(ジビニル化合物、ビスエポキシド等の有機架橋剤;塩化カルシウム、その他二価の金属塩等のイオン架橋剤等)の添加工程を含まないことが好ましい。
【0057】
3.多糖類含有粒子の用途
本発明の多糖類含有粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤;塗料用艶消し剤、粉体塗料等のコーティング材料の添加剤;自動車材料、建築材料等の樹脂組成物の添加剤;ブロッキング防止剤の添加剤;又は光拡散フィルムの添加剤等として好適に使用することができる。
【0058】
本発明の多糖類含有粒子は、外用医薬品、化粧料等の外用剤の添加剤としてより好適に使用することができる。本発明の多糖類含有粒子は、化粧料の添加剤として特に好適に使用することができる。
【0059】
(外用剤)
本発明の多糖類含有粒子を含む外用剤の態様について、以下に例示する。本態様において、外用剤は、本発明の多糖類含有粒子を含む。本発明の外用剤は、肌に塗布されることで、毛穴、シミ、シワ等を目立たなくすることができる。
【0060】
本態様において、外用剤における本発明の多糖類含有粒子の含有割合は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、より一層好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より一層好ましくは40質量%以下である。
【0061】
本態様において、外用剤は、例えば、外用医薬品、化粧料として使用できる。外用医薬品としては、例えば、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤;制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0062】
本態様において、上記化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤又は添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤又は添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0063】
上記油脂及びロウ類としては、例えば、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0064】
上記炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0065】
上記高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、オキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0066】
上記高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0067】
上記ステロールとしては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0068】
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2-エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0069】
上記金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0070】
上記保湿剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0071】
上記界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N-アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0072】
上記高分子化合物としては、例えば、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリスモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、シリカ粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。
【0073】
上記色材原料としては、例えば、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0074】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0075】
上記粘土鉱物類としては、例えば、体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、マイカ、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、白雲母、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0076】
上記香料としては、例えば、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。
【0077】
上記防腐・殺菌剤としては、例えば、メチルパラペン、エチルパラペン、プロピルパラペン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0078】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。
【0079】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸、パラアミノ安息香酸、アントラニリック酸、サルチル酸、桂皮酸、ベンゾフェノン、ジベンゾイルメタン等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0080】
上記特殊配合添加物としては、例えば、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルムニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂材剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸-L-アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0081】
(コーティング剤)
本発明の多糖類含有粒子を含むコーティング剤の態様について、以下に例示する。本態様において、コーティング剤は、本発明の多糖類含有粒子を含む。本態様において、コーティング剤における本発明の多糖類含有粒子の含有割合は、コーティング剤の種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0082】
本態様において、コーティング材料は、必要に応じてバインダー樹脂、紫外線硬化樹脂、溶剤を含むことができる。バインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
上記紫外線硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂がより好ましい。1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多価アルコール多官能(メタ)アクリレート樹脂としては、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線硬化性樹脂に光重合開始剤を加えてバインダー樹脂とする。光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001-139663号公報等に記載)、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、オニウム塩類、ボレート塩、活性ハロゲン化合物、α-アシルオキシムエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
上記溶剤としては、例えば、油系塗料であれば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられ、水系塗料であれば、水、アルコール類等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
本態様において、コーティング材料には、必要に応じて、公知の塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、金属顔料、マイカ粉顔料、染料等が含まれていてもよい。
【0087】
本態様において、コーティング材料を使用した塗膜の形成方法としては、例えば、スプレー塗装法、ロール塗装法、ハケ塗り法等の公知の塗膜形成方法が挙げられる。コーティング材料は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤で希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
また、基材等の任意の塗工面に塗工して塗工膜を作製し、この塗工膜を乾燥させた後、必要に応じて塗工膜を硬化させることによって、架塗膜を形成することができる。なお、コーティング材料を使用した塗膜は各種基材にコーティングして使用され、金属、木材、ガラス、プラスチックス等特に限定されない。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂等の透明基材にコーティングして用いることもできる。
【0089】
(樹脂組成物)
本発明の多糖類含有粒子を含む樹脂組成物の態様について、以下に例示する。本態様において、樹脂組成物は、基材樹脂及び本発明の多糖類含有粒子を含む。基材樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルサルファイド、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA樹脂)、ポリエーテルケトン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
本態様において、樹脂組成物における本発明の多糖類含有粒子の含有量は、基材樹脂と本発明の多糖類含有粒子との総質量を基準にして、好ましくは0.1~70質量%であり、より好ましくは0.5~50質量%であり、より一層好ましくは1~30質量%である。
【0091】
本態様において、樹脂組成物には、必要に応じて、公知の添加剤が含まれていても良い。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維などの強化繊維、難燃剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、体質顔料、着色顔料、金属顔料、染料などを挙げることができる。
【0092】
本態様において、樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、基材樹脂と本発明の多糖類含有粒子とを機械式粉砕混合方法等のような従来広く知られている方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて、基材樹脂と本発明の多糖類含有粒子とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0093】
本態様において、樹脂組成物を使用した成形体の形成方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、基材樹脂と本発明の多糖類含有粒子とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出、射出、ブロー等で成形することにより、自動車材料、建築材料、包装材料等に適した任意の形状の成形体を得ることができる。
【0094】
(ブロッキング防止剤)
本発明の多糖類含有粒子を含むブロッキング防止剤の態様について、以下に例示する。本発明の多糖類含有粒子は、樹脂フィルムを巻き取ったときなどに、互いに接した樹脂フィルム表面同士が密着して剥がれなくなること(ブロッキング)を防止するために、樹脂フィルムの表面に凹凸を付与するブロッキング防止剤として使用できる。
【0095】
本態様において、ブロッキング防止剤は、本発明の多糖類含有粒子の他、必要に応じて、公知の酸化防止剤、流動性調整剤、光安定剤、着色顔料等が含まれていてもよい。
【0096】
本態様において、ブロッキング防止剤における本発明の多糖類含有粒子の含有量は、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは80~100質量%であり、より一層好ましくは90~100質量%である。
【0097】
本態様において、ブロッキング防止剤を使用できる樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコ-ル酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブシレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ(エチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート・テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート・テレフタレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)、ポリアミド4、ポリ(3-ヒドロキシブチレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシバリレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシカプロレ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシヘプタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシオクタノエ-ト)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート・3-ヒドロキシバリレート)、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、グルコサミン系樹脂等の生分解性樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0098】
本態様において、樹脂フィルムにおける本発明の多糖類含有粒子の含有量は、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.01~5質量%であり、より一層好ましくは0.01~3質量%であり、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0099】
(光拡散フィルム)
本発明の多糖類含有粒子を含む光拡散フィルムの態様について、以下に例示する。本態様において、光拡散フィルムは、本発明の多糖類含有粒子を含む。本態様において、光拡散フィルムにおける本発明の多糖類含有粒子の含有量は、光拡散フィルムの種類に応じて適宜設定できるが、好ましくは1~90質量%、より好ましくは3~80質量%である。
【0100】
本態様において、光拡散フィルムは、例えば、本発明の多糖類含有粒子、バインダー樹脂、希釈剤などを公知の方法により混合して分散液を調製し、これを公知の方法により基材となるフィルム上に塗布・乾燥することにより製造することができる。
【0101】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する基材としては、例えば、ガラス;ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等からなるプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等が挙げられる。
【0102】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アモルファスポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
本態様において、光拡散フィルムの製造に使用する希釈剤としては、希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族化合物;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等の水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。これらの希釈剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例0104】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。まず、実施例の項における測定方法及び評価方法について説明する。なお、測定方法及び評価方法において、各実施例、各比較例で得られた粒子又は粉体を、単に「測定対象の粒子」と称する。
【0105】
(表面形状の観察)
試料台に導電性テープを貼り付け、その上に、測定対象の粒子を搭載した。日本電子株式会社製「オートファインコータ JFC-1300」スパッタ装置を用いて、表面処理(40mA、180秒)を行った。次いで、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡の二次電子検出器を用いて、表面処理した測定対象の粒子の表面形状を撮影し、以下の評価基準に従って評価した。
A:測定対象の粒子が非球状であり、表面にクレーター状の凹部があった。
B:測定対象の粒子が球状であり、表面にクレーター状の凹部がなかった。
【0106】
(円形度の測定及びアスペクト比の測定)
フロー式粒子像分析装置(商品名「FPIA(登録商標)-3000S」、シスメックス株式会社製)を用いて測定対象の粒子の円形度を測定した。具体的な測定方法としては、0.25%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液20mlに、測定対象の粒子0.2gを加え、分散機としてBRANSON社製の超音波分散機「BRANSON SONIFIER 450」(出力400W、周波数20kHz)を用いて超音波を5分間照射して、測定対象の粒子を界面活性剤水溶液中に分散させ、測定用の分散液を調製した。
【0107】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した上記フロー式粒子像分析装置を用い、上記フロー式粒子像分析装置に使用するシース液としては、パーティクルシース(商品名「PSE-900A」、シスメックス株式会社製)を使用した。
【0108】
上記手順に従い調製した測定用の分散液を上記フロー式粒子像分析装置に導入し、下記測定条件にて測定した。測定にあたっては、測定開始前に標準ポリマー粒子の懸濁液(例えば、ThermoFisher Scientific社製の「5200A」(標準ポリスチレン粒子をイオン交換水で希釈したもの))を用いて上記フロー式粒子像分析装置の自動焦点調整を行った。
<円形度及びアスペクト比の測定条件>
・測定モード:HPFモード
・粒子の最大長径の測定範囲:0.996μm~200μm
・粒子の円形度の測定範囲:0.5~1.0
・粒子のアスペクト比の測定範囲:0~1.00
・粒子の測定個数:1000個
【0109】
円形度とは、測定対象の粒子を撮像した画像と同じ投影面積を有する真円の直径から算出した周囲長を、測定対象の粒子を撮像した画像の周囲長で除した値である。
【0110】
アスペクト比とは、測定対象の粒子の最大長垂直長を、該粒子の最大長で除したものである。測定対象の粒子の最大長とは、粒子画像の輪郭上の2点における最大の長さである。測定対象の粒子の最大長垂直長とは、上記最大長に平行な2本の直線で画像を挟んだ時、2直線間を垂直に結ぶ最短の長さである。
【0111】
(体積平均粒子径の測定)
測定対象の粒子の体積平均粒子径は、コールターMultisizerTM 3(ベックマン・コールター株式会社製の測定装置)により測定した。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施した。なお、測定に用いるアパチャーは、測定対象の粒子の大きさによって、適宜選択した。Current(アパチャー電流)及びGain(ゲイン)は、選択したアパチャーのサイズによって、適宜設定した。例えば、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は-800と設定し、Gain(ゲイン)は4と設定した。
【0112】
試料としては、測定対象の粒子0.1gをイオン交換水10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT-31」)及び超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用した。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了した。測定対象の粒子の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均とした。
【0113】
(膨潤度の測定)
測定対象の粒子0.25gをイオン交換水2.5gに分散させた後、高速冷却遠心分離機(HITACHI社製、製品名「CR21N」)を用いて遠心分離(2500rpm、20分間、20℃)を行い、上澄みを静かに除去した後、膨潤した測定対象の粒子の重量を測定した。膨潤した測定対象の粒子の重量から初期の測定対象の粒子の重量(0.25g)を引いた値を、初期の測定対象の粒子の重量(0.25g)で除することにより、膨潤度を算出した。算出した膨潤度を以下の評価基準に従って評価した。
○:5.0未満
△:5.0以上10.0未満
×:10.0以上
【0114】
(光散乱指数の測定)
(i)反射光度分布の測定
以下に示す方法により、測定対象の粒子の表面で反射した光の散乱性を評価した。ソーダガラス(アズワン株式会社製「アズラボ スライドガラス」)上にナイスタック(登録商標)NW-10S(ニチバン株式会社製)を用いて、黒色の画用紙PI-N86D(株式会社マルアイ製)を貼り付けた。次いで、上述の黒色画用紙の上にナイスタック(登録商標)NW-10Sを貼付し、その上に測定対象の粒子を押し当てた後、余分な粒子を圧力0.2MPaに調整したエアーガンにて除いた。このようにして得られた試験片を反射光度分布測定用の試験片とした。反射光度分布の測定は、三次元光度計(日本電色工業株式会社製の「GC-500L」)を用いて実施した。
【0115】
得られた試験片の法線(0°)に対して-45°の角度で、光源から光を該試験片に入射させ、反射した反射光の反射角-90°~+90°における光度分布を三次元光度計により測定した。測定に際しては全ての入射光が試験片の黒色部分に入射するように試験片の位置を調整した。
【0116】
(ii)+45°の反射光強度100に対する0°の反射光強度の算出
上記反射光度分布の測定により得られた反射角0°、+45°における反射光強度データから、反射角+45°の反射光強度を100としたときの、反射角0°における反射光強度を求めた。反射角+45°の反射光強度を100としたとき、反射角0°の反射光強度が100に近づくほど、化粧料に粒子を配合したときのソフトフォーカス効果が大きくなる。
【0117】
光散乱指数は下記式により算出した。
光散乱指数=(0°の散乱光強度)/(45°の散乱光強度)
光散乱指数がより1.0に近い値を示すほど、角度依存性のない高い光散乱特性を示すといえる。算出した光散乱指数について、以下の評価基準に従って評価した。
○:0.75以上
△:0.55以上0.75未満
×:0.55未満
【0118】
(堅ろう性の評価方法)
測定対象の粒子の堅ろう性(弾性率)は、微小圧縮試験機(商品名「MCT-210」、株式会社島津製作所製)を用いて、下記測定条件にて測定した。
<堅ろう性(弾性率)の測定条件>
試験温度及び湿度: 室温(20℃)、相対湿度65%
上部加圧圧子: 直径50μmの平面圧子(材質:ダイヤモンド)
下部加圧板: SKS平板
試験種類: 圧縮試験(MODE1)
最大試験荷重: 9.81mN
負荷速度: 0.732mN/sec
変位フルスケール: 20μm
【0119】
まず、エタノール中に測定対象の粒子を添加し、分散機として株式会社ヴェルヴォクリーア製の超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア製、「ULTRASONIC CLEANER VS-150」)を用いて、測定対象の粒子を界面活性剤水溶液中に分散させ、測定用の分散液を調製した。調製した分散液を鏡面仕上げした鋼製試料台に塗布し、乾燥させて、測定用試料を調製した。
【0120】
次いで、室温20℃、相対湿度65%の環境下、MCT-210搭載の光学顕微鏡で一個の独立した微細な粒子(少なくとも直径50μmの範囲内に他の粒子が存在しない状態)を選び出し、選び出した粒子の長径を、MCT-210搭載の粒子径測定カーソルで測定した。選び出した粒子は、長径が6μm~12μmの範囲内の微粒子であり、この範囲外の粒子は圧縮強度の測定に用いないこととした。
【0121】
次に、選び出した粒子に試験用圧子を下記の負荷速度で降下させることにより、最大荷重9.81mNまで、徐々に粒子に荷重をかけ、荷重をかける前の粒子の長径が10%変位した時点の荷重を10%試験力とし、以下の算出式により堅ろう性(弾性率)を求めた。
【0122】
<堅ろう性(弾性率)の算出式>
測定対象の粒子の堅ろう性(弾性率)は、光学顕微鏡で一粒ずつ計測した粒子長径と、粒子断面を円とみなして粒子長径から算出した断面積と、微小圧縮試験機により算出された10%試験力、圧縮変位から次式によって算出した。
堅ろう性(弾性率)=σ÷ε=(P÷A)÷(λ÷L)
σ:垂直応力(mN/μm
P:10%試験力(mN)
A:粒子断面積(μm
ε:ひずみ(単位なし)
λ:圧縮変位(μm)
L:粒子長径(μm)
【0123】
算出した堅ろう性(弾性率)について、以下の評価基準に従って評価した。
○:130MPa以上
△:110MPa以上130MPa未満
×:110MPa未満
【0124】
(実施例1)
容器に、多糖類としてカルボキシメチルセルロースアンモニウム(NHCMC、ニチリン化学工業株式会社製の製品名「NA-3L」)2gと、イオン交換水98gとを入れ、攪拌して溶解させ、水溶液を作製した。該水溶液をスプレードライヤー(日本ビュッヒ株式会社社製の製品名「ミニスプレードライヤーB-290」)を用いて、以下の装置条件下、噴霧乾燥することにより、粉体を得た。
<装置条件>
・水溶液の供給速度:40mL/min
・風量:8m/min
・入口温度(水溶液が装置内に導入される入口の温度):185℃
・出口温度(水溶液が噴霧乾燥されて粉体として排出される出口の温度):102℃
・滞留時間:2秒間
・ノズル:2流体ノズル
【0125】
得られた粉体を恒温槽(アドバンテック東洋株式会社製の製品名「DRM420DD」)を用いて、110℃で16時間加熱して多糖類含有粒子を得た。
【0126】
得られた粒子のSEM写真を図1に示す。図1に示すように、実施例1で得られた多糖類含有粒子は非球状であり、表面にクレーター状の凹部を有することがわかった。
【0127】
(実施例2)
噴霧乾燥時の入口温度を120℃、出口温度を60℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、水溶液の作製、噴霧乾燥及び加熱処理を行い、多糖類含有粒子を得た。
【0128】
得られた粒子のSEM写真を図2に示す。図2に示すように、実施例2で得られた多糖類含有粒子は非球状であり、表面にクレーター状の凹部を有することがわかった。
【0129】
(比較例1)
容器に、多糖類としてカルボキシメチルセルロースアンモニウム(NHCMC、ニチリン化学工業株式会社製の製品名「NA-3L」)2gと、多価アルコールとしてポリエチレングリコール(PEG、日油株式会社製、重量平均分子量20000)2gと、イオン交換水96gとを入れ、攪拌して溶解させ、水溶液を作製した。
【0130】
次いで、実施例2と同様の方法で、作製した水溶液に対して噴霧乾燥を行うことにより、粉体を得た。比較例1では、得られた粉体に対して加熱処理を行わなかった。
【0131】
得られた粉体のSEM写真を図3に示す。図3に示すように、比較例1で得られた粉体は球状であり、表面にクレーター状の凹部を有しないことがわかった。
【0132】
(比較例2)
多価アルコールとしてポリビニルアルコール(PVA、三菱ケミカル株式会社製の製品名「ゴーセノール(登録商標)GL-05」)2gを使用した以外は、比較例1と同様の方法で、水溶液を作製した。次いで、実施例1と同様の方法で、作製した水溶液に対して噴霧乾燥を行うことにより、粉体を得た。比較例2では、得られた粉体に対して加熱処理を行わなかった。
【0133】
得られた粉体のSEM写真を図4に示す。図4に示すように、比較例2で得られた粉体は球状であり、表面にクレーター状の凹部を有しないことがわかった。
【0134】
(比較例3)
多価アルコールとしてエリスリトール(富士フィルム和光純薬株式会社製)2gを使用した以外は、比較例1と同様の方法で、水溶液を作製した。次いで、噴霧乾燥時の入口温度を220℃、出口温度を120℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で、作製した水溶液に対して噴霧乾燥を行うことにより、粉体を得た。比較例3では、得られた粉体に対して加熱処理を行わなかった。
【0135】
得られた粉体のSEM写真を図5に示す。図5に示すように、比較例3で得られた粉体は球状であり、表面にクレーター状の凹部を有しないことがわかった。
【0136】
(比較例4)
多糖類として、酢酸セルロース粒子(株式会社ダイセル社製の製品名「BELLOCEA(登録商標)」)を使用した。比較例4では、酢酸セルロース粒子に噴霧乾燥及び加熱処理を行わなかった。なお、比較例4では酢酸セルロース粒子を表面形状の観察及び物性評価にのみ使用したため、以下の表1の「配合組成」の項目において、酢酸セルロース粒子の配合量を具体的に記載せず、単に「-」と記載している。
【0137】
粒子のSEM写真を図6に示す。図6に示すように、比較例4の粒子は球状であり、表面にクレーター状の凹部を有しないことがわかった。
【0138】
実施例1~2及び比較例1~4の配合組成、噴霧乾燥の条件及び加熱処理の有無、物性並びに評価項目を表1に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
表1中の円形度及びアスペクト比の項目において、測定不可とは、測定用の溶液に粉体が溶解してしまい、円形度及びアスペクト比の測定試験を実施できなかったことを意味する。
【0141】
表1中の体積平均粒子径の項目において、測定不可とは、測定用の溶液に粉体が溶解してしまい、体積平均粒子径の測定試験を実施できなかったことを意味する。
【0142】
(考察)
実施例1~2の膨潤度は、比較例1~3の膨潤度の4分の1以下であった。このように膨潤度に差が生じたのは、加熱処理を行うことによって、実施例1~2で得られた多糖類含有粒子では多糖類同士が水素結合により架橋された構造を有するためであると推測される。更に、光散乱指数の結果から、比較例1~4で得られた粉体又は粒子とは異なり、実施例1~2で得られた多糖類含有粒子では、良好な光散乱性を有するため、化粧料等に好適に使用可能であることが示された。
【0143】
(比較例5)
脱イオン水1000重量部に対してピロリン酸マグネシウム15重量部を分散させた水性媒体を、攪拌機、温度計を備えた2L重合器に加え、さらにラウリル硫酸ナトリウム0.02重量部を加えた。これに予め調製しておいたメタクリル酸メチル(MMA)260重量部(単官能ビニルモノマー)、エチレングリコールジメタクリレート(EDGMA)40重量部(多官能ビニルモノマー)、メタクリル変性シリコーンオイル40重量部(メタクリル変性シリコーンオイル系ビニルモノマー、信越化学工業株式会社製、製品名「X-22-174DX」)及びアゾビスイソブチロニトリル0.9重量部(重合性開始剤)からなる混合液を重合器中に加えた。次いで、混合液を、攪拌機(特殊機化工業株式会社製の製品名「T.Kホモミキサー」)で水性媒体中に分散することにより、10μm程度の液滴径の懸濁液を調製した。攪拌機で攪拌しながら、懸濁液を65℃に加熱し6時間重合を行った後、100℃に昇温し、100℃で2時間加熱し、室温(約20℃)まで冷却した。得られた懸濁液を濾過、洗浄、乾燥して粒子を得た。得られた粒子のSEM写真を図7に示す。
【0144】
(比較例6)
固形分が5質量%の竹由来セルロースナノファイバー(CNF、中越パルプ工業株式会社製の製品名「nanoforest(登録商標)」)50gにイオン交換水128gを加えた後、メカニカルスターラーにて撹拌し、セルロースナノファイバーを分散させた。この分散液を、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)により撹拌しながら5分間分散させることで、噴霧乾燥用の水溶液を作製した。作製した水溶液に対して、入口温度180℃、出口温度110℃としたこと以外実施例1と同様の方法で、噴霧乾燥を行うことにより、粉体を得た。得られた粉体を、実施例1と同様の方法で、110℃で16時間加熱して粒子を得た。得られた粒子のSEM写真を図8に示す。
【0145】
実施例1~2及び比較例5~6の配合組成、噴霧乾燥の条件及び加熱処理の有無、並びに評価項目を表2に示す。なお、表2中の未測定とは、測定を行わなかったことを意味する。
【0146】
【表2】
【0147】
表2中の膨潤度の項目において、測定不可とは、比較例5の粒子が水に浮いてしまい、膨潤度の測定試験を実施できなかったことを意味する。
【0148】
(考察)
実施例1~2の膨潤度は、比較例6の膨潤度の2分の1以下であった。このように膨潤度に差が生じたのは、加熱処理を行うことによって、実施例1~2で得られた多糖類含有粒子では多糖類同士が水素結合により架橋された構造を有するためであると推測される。さらに、実施例1~2の堅ろう性は、比較例6の堅ろう性の約1.7倍と優れた数値を示した。このように堅ろう性に差が生じたのは、比較例6の粒子は、セルロース繊維が凝集した粒子であり内部構造が不均一である一方で、実施例1~2で得られた多糖類含有粒子では、粒子内部が均一な構造に加え、多糖類同士が水素結合により架橋された構造を有するためであると推測される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8