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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135914
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】医療用オスコネクタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
A61M39/10 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195939
(22)【出願日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2021033877
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川邉 美浪
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄太
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066JJ03
4C066JJ05
4C066JJ10
(57)【要約】
【課題】オスコネクタにおける操作性を向上できるようにする。
【解決手段】
医療用オスコネクタは、メスコネクタに挿入可能なオスルアー部151を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体150Aと、メスコネクタと螺合し且つオスコネクタ本体150Aに対する相対位置を移動可能なカプラー180と、チューブ上に位置し、カプラー180の移動を制限するカプラーストッパ100とを備え、カプラーストッパ100は、情報を表示する情報タグとして機能する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、
前記メスコネクタと螺合し且つ前記オスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、
前記チューブ上に位置し、前記カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、
前記カプラーストッパは、情報を表示する情報タグとして機能する、医療用オスコネクタ。
【請求項2】
前記情報タグは、情報を記載する旗状のタブを有する、請求項1に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項3】
医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、
前記メスコネクタと螺合し且つ前記オスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、
前記チューブ上に位置し、前記カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、
前記カプラーストッパは、前記チューブが挿通される開口部が設けられたチューブ挿通部を有し、
前記チューブ挿通部は、前記チューブよりも軟質であり、前記チューブが挿通されることにより弾性力をもって変形する、医療用オスコネクタ。
【請求項4】
前記開口部は、長さが幅よりも長いスロット孔であり、一部に幅が広い幅広部を有する、請求項3に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項5】
前記開口部は、複数設けられており、それぞれの開口部の最小幅は互いに異なっている、請求項3又は4に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項6】
前記チューブ挿通部は、前記開口部が形成される開口部周縁部を有し、
前記開口部周縁部は、前記開口部を囲み、前記開口部周縁部の他の部分より肉厚の厚肉部を有する、請求項3~5のいずれか1項に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項7】
医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、
前記メスコネクタと螺合し且つ前記オスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、
前記チューブ上に位置し、前記カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、
前記カプラーストッパは、前記チューブが挿通される開口部が設けられたチューブ挿通部と、前記オスコネクタ本体及び前記カプラーの先端側の開口を塞ぐキャップと、前記キャップと前記チューブ挿通部とを連結する連結部とを有する、医療用オスコネクタ。
【請求項8】
前記チューブ挿通部は、一方の端部に前記連結部が接続された、長さが幅よりも長い外形を有し、
前記開口部は前記チューブ挿通部の長さ方向に延びる長孔であり、
前記チューブ挿通部の前記連結部と反対側の端部は、前記開口部の中央部が位置する部分の幅よりも幅広に形成されている、請求項7に記載の医療用オスコネクタ。
【請求項9】
医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、
前記メスコネクタと螺合し且つ前記オスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、
前記カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、
前記カプラーストッパは、前記オスコネクタ本体を覆うキャップを有している、医療用オスコネクタ。
【請求項10】
医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、
前記メスコネクタと螺合可能なカプラーと、
前記オスルアー部及び前記カプラーの先端側の開口を覆うキャップ部とを備え、
前記キャップ部は、キャップ本体と、前記チューブが挿通される開口部を有し、挿通された前記チューブと摩擦係合するチューブ挿通部と、前記キャップ本体と前記チューブ挿通部とを連結する連結部とを有している、医療用オスコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用オスコネクタに関し、特にカプラーをスライド可能な医療用オスコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器においては、種々の接続部が存在する。接続部の一つとして、カプラーが下流側にスライド自在に設けられたスライドカプラーが存在する。このようなスライドカプラーにおいて、カプラーの下流のチューブ上にカプラーの移動を制限するカプラーストッパを設けることも検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-229550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接続部には様々な太さのチューブが組み合わされるにもかかわらず、従来のカプラーストッパは、太さが異なる様々なチューブに対応することができておらず、チューブの太さに応じて複数のカプラーストッパを準備しなければならないので効率的ではない。
【0005】
また、様々な用途に応じた施術が考えられる中で、操作性の向上の余地がある。例えば、様々な太さのチューブを接続部と組み合わせる場合、使用者がチューブの太さ等を確認できるように、下流側のチューブの表面に、チューブの太さ等の種々の情報を記載することが検討されるが、この情報を、カプラーやカプラーストッパが隠してしまうおそれがある。情報を読み取るためにカプラーの位置を修正したり、あらかじめ情報を隠さない位置を見極めてカプラーを移動させたりすることは煩雑である。
【0006】
さらに、カプラーストッパが硬質である場合、硬質のカプラーストッパでチューブを押さえた際に、チューブが潰れて閉塞するおそれもある。
【0007】
この他、接続部による接続と取り外しとが何度も繰り返される場合、使用されていない状態時において、カプラーストッパが他の器具に引っかかってしまう可能性がある。
【0008】
また、オスコネクタをメスコネクタに接続していない際には、ほこり等の浸入を防止するためにオスコネクタの開口部を塞ぐキャップを取り付けることが好ましい。キャップは、紛失の防止や操作性の向上のために、ループ等によりオスコネクタに接続されることが一般的である。しかし、このような場合、カプラーと雌コネクタとを螺合又は解除させる際にキャップも回転してしまったり、ルアー嵌合及び解除させる際に手に当たってしまったりして取り回し性が悪くなる。
【0009】
本開示の課題は、オスコネクタにおいて生じる上記の問題の少なくとも1つを解決できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の医療用オスコネクタの第1の態様は、医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、メスコネクタと螺合し且つオスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、チューブ上に位置し、カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、カプラーストッパは、情報を表示する情報タグとして機能する。
【0011】
医療用オスコネクタの第1の態様は、チューブ上に位置し、カプラーの移動を制限するカプラーストッパ有しており、カプラーの基端側への自由な移動を制限できる。特に、経腸栄養用のコネクタの場合、カプラーが消毒されていない物品や患者の皮膚等に当接してカプラーが汚染されないようにできる。また、チューブや接続部と異なり、形状自由度が高いカプラーストッパという部材に、情報を表示する情報タグとして機能を設けることで、使用者にわかりやすく情報を伝えることが可能となる。例えば、情報タグは使用者が書き込むスペースであってもよく、留置した日、患者内に埋め込んだチューブの長さ、チューブの太さといった情報を使用者が書き込むことで、情報を表示することができる。また、例えば、情報タグは製造時において特定の色が付与されて、カプラーストッパを見るだけで使用者が用途を判別できるようにすることもできる。
【0012】
医療用オスコネクタの第1の態様において、情報タグは、情報を記載する旗状のタブを有していてもよい。このような構成とすることにより、情報を記載する部分を大きく確保することができると共に、情報がカプラーによって隠れないようにすることができる。
【0013】
医療用オスコネクタの第2の態様は、医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、メスコネクタと螺合し且つオスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、チューブ上に位置し、カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、カプラーストッパは、チューブが挿通される開口部が設けられたチューブ挿通部を有し、チューブ挿通部は、チューブよりも軟質であり、チューブが挿通されることにより弾性力をもって変形する。
【0014】
医療用オスコネクタの第2の態様は、チューブ上に位置し、カプラーの移動を制限するカプラーストッパが、チューブ挿通部を有し、チューブ挿通部は、チューブよりも軟質であり、チューブが挿通されることにより弾性力をもって変形する。このため、1種類のカプラーストッパが、太さが異なる種々のチューブに対応することができる。また、軟質のチューブ挿通部は、チューブを押し潰して閉塞させるおそれを低減することができる。
【0015】
医療用オスコネクタの第2の態様において、開口部は、長さが幅よりも長いスロット孔であり、一部に幅が広い幅広部を有していてもよい。開口部をスロット孔とすることにより、太さが異なる種々のチューブに摩擦係合させることができる。また、スロット孔の一部に幅広部を設けることにより、細いチューブに合わせた幅が狭いスロット孔であっても、太いチューブを挿入した際にスロットが大きく変形して裂ける事態を低減することができ、細いチューブから太いチューブまで対応するチューブストッパを実現できる。なお、スロット孔は複数が放射状に配置されていてもよい。
【0016】
医療用オスコネクタの第2の態様において、開口部は、複数設けられており、それぞれの開口部の最小幅は互いに異なっていてもよい。このような構成であっても、種々の太さのチューブに対してカプラーストッパを摩擦係合させることが容易にできる。
【0017】
医療用オスコネクタの第2の態様において、チューブ挿通部は、開口部が形成される開口周縁部を有し、開口周縁部は、開口部を囲み、開口周縁部の他の部分より肉厚の厚肉部を有していてもよい。このような構成とすることにより、カプラーストッパの開口部の周りの部分が補強されるので、カプラーストッパが開口部から裂けてしまうような事態も生じにくくできる。また、カプラーストッパを相対移動させた時に、開口部が捲れ、裏返ってしまい、相対移動がスムーズに行うことができない事態を低減することができる。
【0018】
医療用オスコネクタの第3の態様は、医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、メスコネクタと螺合し且つオスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、チューブ上に位置し、カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、カプラーストッパは、チューブが挿通される開口部が設けられたチューブ挿通部と、オスコネクタ本体及びカプラーの先端側の開口を塞ぐキャップと、キャップとチューブ挿通部とを連結する連結部とを有する。
【0019】
医療用オスコネクタの第3の態様は、チューブ上に位置し、カプラーの移動を制限するカプラーストッパが、オスコネクタ本体及びカプラーの先端側の開口を塞ぐキャップを有する。このため、オスコネクタを使用していないときに、ほこり等がオスコネクタやカプラー内に浸入することを防ぐことができる。また、キャップとチューブ挿通部とが連結部により連結部されているため、キャップの紛失を防ぐと共に、キャップがカプラーを移動させる際に邪魔にならないようにすることができる。
【0020】
医療用オスコネクタの第3の態様において、チューブ挿通部は、長さが幅よりも長い外形を有し、開口部はカプラーストッパの長さ方向に延びる長孔であり、連結部と反対側の端部が、開口部の中央部が位置する部分の幅よりも幅広に形成されていてもよい。このような構成とすることにより、開口部を容易に変形できるようにすると共に、チューブ挿通部の端部が裂けてしまうような事態を生じにくくすることができる。
【0021】
医療用オスコネクタの第4の態様は、医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、メスコネクタと螺合し且つオスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、カプラーストッパは、カプラーに設けられており、チューブと摩擦係合する摩擦係合部を有している。
【0022】
医療用オスコネクタの第4の態様は、カプラーの移動を制限するカプラーストッパが、カプラーに設けられており、チューブと摩擦係合する摩擦係合部を有している。このため、カプラーをカプラーストッパと共にチューブ上に留めることができる。また、カプラーとカプラーストッパとを別々に移動する必要がなく、操作が容易となる。
【0023】
医療用オスコネクタの第4の態様において、カプラーを最も先端側に移動させた状態において、摩擦係合部は、チューブ上に位置していてもよい。このような構成とすることにより、カプラーをメスコネクタと螺合させる際に、摩擦係合部がオスルアー部と係合して、螺合の妨げとなることを避けることができる。
【0024】
医療用オスコネクタの第5の態様は、医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、メスコネクタと螺合し且つオスコネクタ本体に対する相対位置を移動可能なカプラーと、カプラーの移動を制限するカプラーストッパとを備え、カプラーストッパは、オスコネクタ本体を覆うキャップを有している。
【0025】
医療用オスコネクタの第5の態様において、使用していない時のカプラーストッパの位置を所定の範囲に留めることができ、カプラーストッパが他の器具に引っかかってしまうといった事態を低減することができる。また、キャップの移動範囲も制御できるので、キャップのずれ落ちや紛失等も防ぐことができる。
【0026】
医療用オスコネクタの第6の態様は、医療用のメスコネクタに挿入可能なオスルアー部を先端側に有し、基端側にチューブが接続されるオスコネクタ本体と、メスコネクタと螺合可能なカプラーと、オスルアー部及びカプラーの先端側の開口を覆うキャップ部とを備え、キャップ部は、キャップ本体と、チューブが挿通される開口部を有し、挿通されたチューブと摩擦係合するチューブ挿通部と、キャップ本体とチューブ挿通部とを連結する連結部とを有している。
【0027】
医療用オスコネクタの第6の態様によれば、キャップ部は、チューブ挿通部により、チューブと接続されているため、オスコネクタ本体やカプラーに接続されている場合と比べて、カプラーと雌コネクタとを螺合又は解除させる際にキャップが回転しないようにすることができる。また、チューブ挿通部はチューブと摩擦係合するため、自由に移動させることができる。このため、キャップの着脱が容易にできると共に、オスコネクタに種々の操作をする際に、外したキャップが手に当たったりしないようにすることもできる。また、意図しない移動が生じないようにすることもできるので、キャップが意図せずに移動して患者に触れるようなことも生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示の医療用オスコネクタによれば、操作性に優れたオスコネクタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施形態に係る医療用オスコネクタを示す斜視図である。
図2】カプラーを第2の位置に移動させた状態を示す斜視図である。
図3】カプラーストッパを示す斜視図である。
図4】カプラーストッパを示す平面図である。
図5】細いカテーテルを接続した状態を示す斜視図である。
図6】チューブ挿通部の第1変形例を示す平面図である。
図7】チューブ挿通部の第2変形例を示す平面図である。
図8】チューブ挿通部の第3変形例を示す平面図である。
図9】オスコネクタ本体の変形例を示す斜視図である。
図10】医療用オスコネクタの第1変形例を示す斜視図である。
図11】第1変形例の医療用オスコネクタに細いカテーテルを接続した状態を示す斜視図である。
図12】医療用オスコネクタの第2変形例を示す斜視図である。
図13】医療用オスコネクタの第2変形例を示す断面図である。
図14】医療用オスコネクタの第3変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一実施形態に係る医療用オスコネクタは、例えば経腸栄養用のオスコネクタであり、図1図4に示すように、オスコネクタ本体150Aと、カプラー180と、カプラーストッパ100とを備えている。以下においては、経腸栄養用途を例示し、患者と反対側を上流側(先端側)、患者側を下流側(基端側)として説明する。経腸栄養用途以外の場合には、上流側と下流側とが逆である場合もあり得る。
【0031】
オスコネクタ本体150Aは、上流側のメスコネクタ(図示せず)に挿入されるオスルアー部151と、チューブが接続可能なチューブ接続部152とを有している。本実施形態においてチューブは、患者(下流側)の体腔内に挿入される柔軟なカテーテル200Aである。カテーテル200Aの上流側端部はチューブ接続部152に固着されており、体腔外に露出している。カテーテル200Aの下流側は患者の体腔内に挿入され、下流側端部に形成された開口部である側孔から栄養液が胃や腸に流出可能とされている。
【0032】
カプラー180は、メスコネクタの外表面に設けられた雄ネジと螺合可能な雌ネジを有する筒状であり、メスコネクタの雄ねじと螺合可能な第1の位置(図1)と、第1の位置よりも下流側でオスルアー部151が露出する第2の位置(図2)との間を移動可能である。カプラー180はオスルアー部151と患者(例えば、患者の腹部)との間の外部に露出しているカテーテル200A上を移動可能である。なお、医療用オスコネクタは患者に挿入されたカテーテル200Aに直接固定されている形態に限らない。例えば、体腔内に留置される胃瘻ボタンと容器とをつなぐ延長チューブに本実施形態の医療用オスコネクタを設けることもできる。
【0033】
本実施形態において、カプラーストッパ100は、オスルアー部151の開口を塞ぐキャップ101と、カテーテル200Aが挿入される開口部を有するチューブ挿通部120と、キャップ101とチューブ挿通部120とを連結する連結部103とを有している。
【0034】
本実施形態においてチューブ挿通部120は、図3及び図4に示すように、開口部であるスロット孔121を有する細板状の部材である。チューブ挿通部120は比較的軟質の部材であり、スロット孔121は挿入されたカテーテル200Aによって弾性力をもって押し拡げられるように変形し、スロット孔121に挿入されたカテーテル200Aと摩擦係合する。このため、チューブ挿通部120は、手で引っ張る等して力を加えることにより、スロット孔121を通したカテーテル200Aの上を滑らせて位置を移動することができるが、意図的に力を加えていない場合には、カテーテル200A上に固定され位置が移動しない。また、スロット孔121は、図5に示すような細いカテーテル200Bとも摩擦係合するようにスロット孔121の幅及び長さが設定されている。例えば、スロット孔121の幅を1.0mm以下、長さを8mm~12mm程度とすることにより、経腸栄養法において通常用いられる太さが1mm~6mm程度のカテーテルのいずれに取り付けた場合にも、位置の固定と移動とを行うことができる。なお、挿入するカテーテルの太さによっては、スロット孔121をほぼ隙間がないスリット状にすることもできる。
【0035】
本実施形態の。チューブ挿通部120は、カテーテル200Aと摩擦係合しているので、カプラー180が重力によりカテーテル200Aに沿って落下してチューブ挿通部120に当たった程度では移動しない。このため、カプラー180が第2の位置よりも下流側に移動しないようにするストッパとして機能し、カプラー180が患者に当たるまでカテーテル200A上を滑り落ちるような事態を生じないようにすることができる。このため、カプラーが当たって患者を傷つけたり、消毒されていない部分に当たったカプラーが汚染されたりすることを防ぐことができる。一方、カプラー180を手で引っ張って力を加えた場合には、チューブ挿通部120はカプラー180と共に移動するため、チューブ挿通部120がオスルアー部151を露出させることができる第2の位置よりも上流側に位置していたとしても、カプラー180を第2の位置まで移動させることが容易にできる。
【0036】
本実施形態において、チューブ挿通部120と連結部103により連結されたキャップ101は、オスルアー部151に外嵌する内筒部111と、カプラー180に外嵌する外筒部112とを有している。このため、カプラー180が第1の位置にある場合に、キャップ101はオスルアー部151及びカプラー180の両方の開口部を塞ぐことができる。なお、キャップ101はオスルアー部151の開口を塞ぎつつカプラー180を保持できるような構成が好ましい。
【0037】
本実施形態のキャップ101は、カテーテル200Aと摩擦係合しているチューブ挿通部120と連結されているので、キャップ101がオスルアー部151に取り付けられていない場合に、キャップ101の位置が大きく移動してしまうような事態を避けることができる。また、キャップ101をオスルアー部151に取り付ける際には、チューブ挿通部120を手で引っ張る等して、取り付けやすい位置に移動させることができる。このため、連結部103の長さを、チューブ挿通部120をオスコネクタ本体150Aの下流端付近に移動させた場合にキャップ101の取り付けが容易にできる長さとすることができる。オスコネクタ本体の長さ等にもよるが、例えば、一般的な経腸栄養用オスコネクタの場合、連結部の長さを30mm~50mm程度とすることができる。これにより、連結部103の端部が第2の位置に動かないように固定されている場合と比べて、連結部103の長さを短くでき、キャップ101をオスルアー部151に取り付けた際にループ状になった長い連結部103が引っかかるような事態を生じにくくすることができる。また、取り外したキャップ101がカテーテル200Aから大きく離れてしないようにすることもできる。細いカテーテル200Bが接続されている場合も同様である。
【0038】
本実施形態の医療用オスコネクタをメスコネクタと連結する際には、まず、キャップ101をオスルアー部151及びカプラー180から取り外す。次に、図4に示すようカプラー180を第2の位置に移動させてオスルアー部151を露出させる。カプラー180はカプラーストッパ100のチューブ挿通部120により下流端に向かって意図せずスライドしてしまう事態が防止される。オスルアー部151を露出させた状態で、オスルアー部151をメスコネクタに挿入すれば、挿入の際に経腸栄養液があふれ出したとしても、下流側に離れたカプラー180内に経腸栄養液が付着することはほとんどない。また、オスルアー部151が露出しているため、オスルアー部151がメスコネクタに挿入された状態であっても、あふれ出した経腸栄養液を容易に拭き取ることができる。経腸栄養液を拭き取った後で、カプラー180を第1の位置に移動させれば、カプラー180の内側に経腸栄養液が付着することなくカプラー180をメスコネクタと係合させてロックさせることができる。このため、コネクタを清潔にした状態で、医療操作を行うことができる。
【0039】
コネクタを分離する際には、まずカプラー180とメスコネクタとの係合を解除して、カプラー180を第2の位置に移動させる。次に、オスルアー部151をメスコネクタから引き抜く。このようにすれば、オスルアー部151をメスコネクタから引き抜く際に経腸栄養液があふれ出したとしても、オスルアー部151が露出しているため容易に拭き取ることができる。また、カプラー180がオスルアー部151の上流側端部から離れているため、カプラー180の内側にあふれ出した経腸栄養液が入り込むことはほとんどない。この後、カプラー180を第1の位置に戻し、キャップ101が連結されたチューブ挿通部120も上流側に移動させる。これにより、キャップ101をオスルアー部151及びカプラー180の開口部に取り付けて開口部を塞ぐことができる。
【0040】
第2の位置は、オスルアー部151が露出して拭き取ることができる位置であればよいが、さらに下流側のオスコネクタ本体150Aが完全に露出する位置とすることができる。この場合、第2の位置においてカテーテル200Aを少し曲げることにより、オスコネクタ本体150Aの軸方向と、カプラー180の軸方向とをずらすことが容易にできる。オスコネクタ本体150Aの軸方向と、カプラー180の軸方向とをずらして、オスルアー部151の抜き差しをすれば、あふれ出した経腸栄養液がカプラー180の中へさらに入りにくくすることができる。細いカテーテル200Bが接続されている場合も同様である。
【0041】
本実施形態の医療用オスコネクタは、カプラーを上流側に抜き取るのではなく、下流のチューブ側にスライドさせることにより、オスルアー部を露出させている。このため、操作が容易であるだけでなく、取り外したカプラーを落としたり、紛失したりするおそれがない。
【0042】
本実施形態においてチューブ挿通部120のスロット孔121は、両端に他の部分よりも孔の幅が広い幅広部122を有している。幅広部122を設けることにより、長さ方向と直交する方向への変形性が向上するため、取り付けることができるカテーテルの太さの範囲を広くすることができる。幅広部122の形状を角部がない略円形状とすることにより、スロット孔121を押し拡げた際に力が集中しないようにでき、スロット孔121を裂けにくくすることができる。なお、スロット孔121の幅及び取り付けるカテーテルの太さ等によっては、幅広部122を一方の端部にだけ設けてもよい、設けなくてもよい。または、スロット孔121の両端を曲線状とすることにより、幅広部を形成し、スロット孔121を裂けにくくすることができる。
【0043】
本実施形態においてチューブ挿通部120は細板状であり、スロット孔121が形成された開口周縁部124を有している。開口周縁部124は、スロット孔121を囲む肉厚部125を有している。本実施形態において肉厚部125は、開口周縁部124のスロット孔121を囲む部分がスロット孔121に向かってなだらかに盛り上がっており、開口周縁部124の他の部分よりも肉厚となっている。スロット孔121を囲む肉厚部125を設けることにより、強度を高くしてスロット孔121を裂けにくくすることができる。また、チューブ挿通部120のカテーテル表面と接する部分が肉厚となることにより、カテーテルとの間の摩擦力を大きくすることができる。さらに、チューブ挿通部120のスロット孔121の両側方の部分が捻れたり、裏返ったりしにくくする効果も得られる。
【0044】
本実施形態においてチューブ挿通部120は、連結部103と反対側の端部に、スロット孔121の中央部が位置する中間部の最小幅よりも最大幅が大きい拡幅端部126を有している。チューブ挿通部120が細長い板状の場合に拡幅端部126を設けることにより、スロット孔121を裂けにくくすることができる。また、拡幅端部126を設けることにより把持しやすくすることもできる。一方、中間部においてチューブ挿通部120の幅を狭くすることにより、スロット孔121を拡げやすくして太いカテーテルにも対応できるようにすることができる。
【0045】
本実施形態においてチューブ挿通部120が、開口部として連結部103側から反対側の端部に向かって伸びる1本のスロット孔121を有する細板状である例を示した。このような構成とすれば、チューブ挿通部120の幅を狭くしても、種々の太さのカテーテルに対応することができる。しかし、チューブ挿通部120は他の形状とすることもできる。例えば、図6に示す第1変形例のように、開口部130を互いに独立した第1のスロット孔131及び第2のスロット孔132を有する形状とすることができる。開口部を複数のスロット孔とすることにより、対応できるカテーテルの太さの範囲をさらに拡げることができる。図6においては、第1のスロット孔131は、幅W1が第2のスロット孔132の幅W2よりも小さくなっており、カテーテルが細い場合は第1のスロット孔131を使用し、カテーテルが太い場合は第2のスロット孔132を使用することができる。図6において、第2のスロット孔132の長さは第1のスロット孔131の長さよりも短くなっているが、対応するカテーテルに応じて、同じ長さとしたり、第2のスロット孔132の方を長くしたりすることもできる。また、第1のスロット孔131と第2のスロット孔132とを並行に配置したが、長手方向に順次配置することもできる。さらに、開口部130は3以上の独立したスロット孔とすることもできる。
【0046】
開口部130はカテーテルを通して摩擦係合させることができれば、スロット孔に限らず他の形状とすることができる。例えば、図7に示す第2変形例においては、開口部130を直径がφ1の第1の孔133、φ2の第2の孔134及びφ3の第3の孔135としている。直径が互いに異なる複数の孔を設けることにより、太さが異なる複数のカテーテルに対応することができる。図7において、3つの孔が長手方向に一列に配置されているが、どのように配置してもかまわない。また、孔の数は3つに限らず、2つであっても、4つ以上であってもよい。孔は真円に限らず、歪んだ形状や楕円状とすることもできる。真円ではない場合は、開口部の最大幅が互いに異なるようにすればよい。図7においては、3つの孔は互いに独立しているが、孔同士を繋ぐスリット状の連結孔部が設けられていてもよい。
【0047】
図8に示す第3変形例のように、放射状に拡がる複数のスロット孔136により開口部130を形成することもできる。放射状に拡がるスロット孔136により対応できるカテーテルの太さの範囲を広くすることができる。図8においては、各スロット孔136の端部に幅広部137を設けている。幅広部137を設けることにより太いカテーテルを挿入した場合にもスロット孔136を裂けにくくすることができる。幅広部137は角がない略円形状とすることが好ましい。但し、幅広部137は設けなくてもよく、一部のスロット孔だけに設けることもできる。図8において、スロット孔136が6方向に拡がる例を示したが、スロット孔136は3方向以上に拡がるようにすることができる。なお、スロット孔136は、ほぼ隙間がないスリット状とすることもできる。また、全てのスロット孔136において長さや隙間の幅が同じになっていなくてもよい。
【0048】
チューブ挿通部120が閉じた開口部を有している例を示したが、チューブ挿通部120の外側と開口部とを繋ぐ切り込み等を設けることもできる。切り込み等を設けて開口部を外側と繋げることにより、カテーテルを切り込みの位置から開口部に挿入することができるので、カテーテルの下流端が患者の体腔内に挿入された状態でもチューブ挿通部120をカテーテルに取り付けることが可能となる。
【0049】
チューブ挿通部120は、カテーテルを開口部に挿入した際に弾性変形が生じるような比較的軟質の材料により形成することができる。例えば、軟質塩化ビニル並びにシリコンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム及び各種エラストマー等により形成することができる。チューブ挿通部120はカテーテルよりも軟質としてもよい。チューブ挿通部120を軟質とすることにより、比較的太いカテーテルであっても容易に挿入することが可能となる。また、チューブ挿通部120は、十分な摩擦係合力が生じるように、開口部に挿入されたカテーテルをある程度圧迫することが好ましいが、軟質の材料を用いることにより、カテーテルを圧迫しすぎてカテーテルを閉塞させてしまうような事態を避けることができる。但し、第2変形例のようなカテーテルの外径に合わせた複数の開口部を設ける構成の場合には、カテーテルの挿入により開口部が変形しない構成とすることもできる。このため、硬質の材料によりチューブ挿通部120を形成することもできる。
【0050】
本実施形態においてキャップ101は、連結部103と反対側に径方向外側に突出したキャップ把持部113を有している。キャップ把持部113を設けることによりキャップ101の取り付け及び取り外しが容易となる。また、キャップ把持部113にカテーテルと係合する切欠等を設けることもできる。キャップ101がオスルアー部151と係合していない場合に、キャップ把持部113をカテーテルに固定すれば、キャップ101がじゃまにならない。また、カプラー180が第2の位置にある場合に、第2の位置よりも上流側においてキャップ把持部113をカテーテルに固定すれば、カプラー180が意図せずに上流側に戻らないようにすることもできる。キャップ把持部113は、キャップ101を把持しやすくできればどのような形状としてもよい。また、必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0051】
本実施形態において連結部103は、チューブ挿通部120よりも肉薄の板状に形成されている。このため、取り外されたキャップ101のチューブ挿通部120に対する相対位置が大きく変動しないように支えることができると共に、キャップ101を取り付ける際に容易に曲げられる程度の弾性を実現できる。連結部103に肉薄の部分と肉厚の部分とを設け、連結部103を曲げやすくすると共にキャップ101を一定の位置に支えるための強度を確保することもできる。なお、連結部103は紐状とすることもできる。
【0052】
キャップ101及び連結部103は、チューブ挿通部120と一体に成型することが好ましいが、複数の部分に別けて成型した後で組み立てて一体とすることもできる。キャップ101はチューブ挿通部120と同じ材料により形成することができるが、チューブ挿通部120と異なる材料により形成することもできる。
【0053】
本実施形態において、カプラーストッパ100が、キャップとしての機能を有している例を示した。チューブ挿通部120に連結部103を介してキャップ101が連結されていることにより、通常の操作ではカプラー180がカプラーストッパ100を乗り越えることがない。しかし、キャップ101及び連結部103は、必要に応じて設ければよく、カプラーストッパ100をチューブ挿通部120のみとすることもできる。この場合、チューブ挿通部120に外接する円の直径(最大外径)をカプラー180の最小内径よりも大きくすれば、カプラー180がチューブ挿通部120を乗り越えないようにできる。また、チューブ挿通部120から径方向外側に突出する凸部等を設けてカプラーストッパ100の最大外径を大きくしてもよい。なお、キャップ101は、チューブ挿通部120とは別の部材を用いてカテーテルに取り付けてもよく、カプラー180に取り付けてもよい。
【0054】
本実施形態において、カプラー180は、メスコネクタと螺合する雌ネジが内面設けられた筒状の雌ネジ部181と、雌ネジ部181よりも下流側に設けられ、雌ネジ部181よりも内径が小さい小径部182とを有している。オスコネクタ本体150A及び150Bは、オスルアー部151よりも下流側に径方向外側に突出した鍔状部155を有し、鍔状部155の外径は、カプラー180の雌ネジ部181の内径よりも小さく、小径部182の内径よりも大きい。このため、カプラー180の小径部182は鍔状部155を通過することができず、カプラー180が第1の位置を超えて上流側に移動しないようになっている。また、カプラー180をメスコネクタと螺合させた際に、小径部182が鍔状部と当接することにより摩擦力が生じ、カプラー180を緩みにくくすることができる。カプラー180が第1の位置よりも上流側に移動しないようにする機構はどのようなものであってもよく、鍔状部155を設ける以外の方法により実現してもよい。
【0055】
例えば、図9に示すように、鍔状部155に代えて径方向外側に突出する複数の抜け止め凸部157を設けてもよい。抜け止め凸部157は、その外接円の直径が、雌ネジ部181の内径よりも小さく、小径部182の内径よりも大きくすればよい。リング状の鍔状部155に代えて複数の抜け止め凸部157とすることにより、小径部182との接触面積を小さくして緩み止めの効果を調節することができる。抜け止め凸部157の数は特に限定されないが、カプラー180の上流側への移動を防止する観点から等間隔に4つ又は6つ設けることが好ましい。また、カプラー180を上流側へ抜き取れる様にすることもできる。なお、第1の位置においても、カプラー180は、オスコネクタ本体150A及び150Bの周りを自由に回転することができる。
【0056】
オスコネクタ本体150A及び150Bは、鍔状部155よりも下流側にチューブ接続部152を有している。チューブ接続部152は、カプラー180が第1の位置にある場合に、少なくともその一部がカプラー180よりも下流側に突出しており、容易に把持することができる。このため、チューブ接続部152は、カプラー180をメスコネクタに着脱する際に把持する把持部として機能する。また、第1の位置にあるカプラー180を第2の位置に移動させる際にも把持することができる。比較的太いカテーテル200Aの場合には、カテーテルを把持してカプラー180を下流側に引っ張ることが容易であるが、細いカテーテル200Bの場合にはカテーテルが曲がりやすくうまく引っ張ることができない。しかし、チューブ接続部152を把持することにより、細いカテーテル200Aの場合にも、カプラー180を容易に下流側に移動させることができる。また、本実施形態において、チューブ接続部152はカプラー180が第2の位置にある場合も把持できるため、カプラー180を上流側に移動させる場合もチューブ接続部152を把持して操作することができる。なお、本実施形態においてチューブ接続部152は、鍔状部155より下流側の部分であり、カテーテルが挿入されて接続される部分以外の部分も含まれる。
【0057】
本実施形態において、チューブ接続部152の外面には、径方向外側に突出する複数のリブ153を有している。このため、リブ153に指がかかるため、容易に把持することができる。また、リブ153の間の面を内側に窪んだ曲面とすれば、リブ153の間の面154を指の腹でしっかり押さえることができるので、把持がさらに容易となる。カプラー180が第1の位置及び第2の位置のいずれにある場合にも容易に把持できる把持部を設けることにより、カプラー180を第2の位置に移動させてオスルアー部151を清拭したり、カプラー180が第2の位置にある状態でオスルアー部151の挿抜を行ったりするように操作者を誘導することができ、オスコネクタを清潔に保つことが容易となる。
【0058】
また、細いカテーテル200Bをチューブ接続部152に直接連結すると、連結部において折れ曲がりが発生しやすくなる。このため、本実施形態においては、カテーテル200Bよりも太いチューブ156を介してチューブ接続部152と接続している。これにより連結部において細いカテーテル200Bであっても折れ曲がりを生じにくくすることができる。
【0059】
チューブ接続部152にリブ153を設けるのではなく、チューブ接続部152の断面を4角形状や6角形状等の多角形状とすることにより、チューブ接続部152を把持しやすくすることもできる。この場合、チューブ接続部152を形成する外表面を内側に窪んだ湾曲面とすれば、指がフィットしやすくなり把持がさらに容易となる。
【0060】
本実施形態の医療用オスコネクタには、カプラー180がメスコネクタに螺合した状態において、カプラー180が緩むことを防ぐ弱嵌合機構を設けることもできる。弱嵌合機構は、例えばオスコネクタ本体の外面をテーパーにしたり、カプラー180の内面の寸法を調整したりすることで実現できるが、他の方法により実現してもよい。
【0061】
カプラーストッパは、カプラー180の下流側への移動を阻止できるものであればよい。例えば、図10に示す第1変形例に係る医療用オスコネクタのカプラーストッパ140は、カテーテル等の情報を表示する情報タグとしての機能を有する。本変形例のカプラーストッパ140は、情報が記載される情報表示部であるタブ141と、カテーテルに取り付けられる取付部142とを有している。本変形例のタブ141は、カテーテル200Aの径方向外側に旗状に突出しており、カプラー180は、無理矢理引っ張ったりしない限り、タブ141を越えて下流側に移動できない。
【0062】
タブ141には、カテーテルの太さ、長さ、用途等の製品情報、ロット等の製造情報、及びその他種々の情報を表示できる。このような情報をカテーテルの表面に刻印した場合、カテーテル上に移動させたカプラー及びカプラーストッパがその上に重なり読み取りができなくなるおそれがある。しかし、カプラーストッパである情報タグはカプラーによって隠されることがないので、カプラーの移動が情報の読み取りを妨げることがない。また、細いカテーテルの場合、情報の刻印や読み取りが困難になるが、図11に示すように、タブの大きさはチューブの太さと無関係に設定することができるので、細いカテーテルにおいても、情報の書き込み及び読み取りが容易にできる。このような情報は、文字により表示するだけでなく、記号やバーコード等により表示することもできる。また、色表示とすることもできる。例えば、神経麻酔用、経腸栄養用及び血管用等の用途ごとに色を変えることにより誤使用を生じにくくできる。さらに、使用者が、使用時に自由に情報を追記できるようにすることもできる。例えば、カテーテルの留置日や体内への挿入長等を記載することにより、医療行為をより安全に行うことができる。タブには複数の情報が表示されていてもよい。
【0063】
本実施形態において、情報タグであるカプラーストッパ140は、粘着剤が塗布された1枚のシートを、カテーテルを挟んで粘着面同士を貼り合わせることにより形成できる。このような方法であれば、極めて安価に且つ容易に、カプラーストッパ140を設けることができる。また、2枚のシートをカテーテルを挟んで貼り合わせて形成したり、一方の端部付近にのみ粘着剤が塗布されたシートの粘着剤が塗布された側の端部をカテーテルに貼り付けることにより形成したりすることができる。さらに、取付部はカテーテルに貼り付けるものに限らず、カテーテルと摩擦係合するものであってもよい。例えば、一方の端部付近にスリットを有するリボン状のシートの他方の端部をスリットに差し込むことにより形成したループ状の部分を取付部とすることができる。なお、取付部とタブとは別体となった構成とすることもできる。
【0064】
情報表示部は、情報が記載できれば旗状のタブに限らない。例えば、カテーテルにカプラーが通過できない大径のチューブ等を取り付け、チューブの表面を情報表示部とすることができる。また、シート状の情報表示部の長手方向の両端部をカテーテルに固定する構成とすることもできる。
【0065】
図10及び図11には、カプラー180とカプラーストッパ140との間にキャップ160が取り付けられている例を示している。キャップ160は、キャップ本体161とカテーテルが挿通されるリング状部162と、キャップ本体161とリング状部162とを接続する連結部163とを有している。リング状部162は、カプラーストッパ140を乗り越えない構成となっている。このような構成とすれば、カプラー180だけでなくキャップ160も下流側に移動しないように規制することができる。リング状部162は、カテーテルと摩擦係合する必要はないが、カテーテルと摩擦係合しても構わない。また、カテーテルから容易に脱落しなければ、リングに限らず一部が切れたC字状等であってもよい。なお、キャップ160は、カプラー180に取り付けられている構成とすることもできる。また、キャップ160は設けなくてもよい。
【0066】
図12及び図13に示す第2変形例に係る医療用オスコネクタのカプラーストッパ170は、カプラー180に取り付けられている。カプラーストッパ170は、カテーテル200Aが挿通されるチューブ挿通部172と、キャップ本体171と、キャップ本体171とチューブ挿通部172とを連結する連結部173とを有している。チューブ挿通部は、カテーテル200Aが挿通されることにより弾性変形する挿通孔175を有し、挿通されたカテーテル200Aと摩擦係合する摩擦係合部174を有している。また、チューブ挿通部172は、カプラー180の下流側の外周面に設けられた係合凹部183と嵌合する係合凸部176を有しており、カプラー180に取り付けられている。このため、カプラー180は、使用者が意図的に操作して動かさない場合にはカテーテル200A上の任意の位置に停止させることができる。
【0067】
摩擦係合部174に設ける挿通孔175をスロット状とすることにより、太さが異なるカテーテルに対しても摩擦係合部174を摩擦係合させることが容易にできる。挿通孔175は、図8に示すような複数のスロットが組み合わされた形状とすることもできる。挿通孔175を設ける摩擦係合部174は、ゴムや、ポリウレタン等の比較的軟質の樹脂により形成することが好ましい。カテーテルよりも軟質の材料により形成することもできる。
【0068】
チューブ挿通部172の係合凸部176を、カプラー180の係合凹部183と係合させて、チューブ挿通部172をカプラー180に取り付ける例を示したが、チューブ挿通部172をカプラー180に取り付ける機構は、どのようなものであってもよく、螺合や接着であってもよい。また、チューブ挿通部172とカプラー180とを一体に成型することもできる。チューブ挿通部172がカプラー180に対して相対回転可能な構成とすることもできる。このようにすれば、カプラー180をメスコネクタに容易に螺合させることができる。
【0069】
図12及び図13において、円盤状の摩擦係合部174をチューブ挿通部172の他の部分と別体とする構成とした。このような構成とすることにより、摩擦係合部174をカテーテルよりも軟質とすることが容易にできる。但し、摩擦係合部174を含むチューブ挿通部172を一体に形成することもできる。また、摩擦係合部174以外のチューブ挿通部172をカプラー180と一体に成型することもできる。
【0070】
カプラー180をメスコネクタと螺合させた際に、摩擦係合部174は、カテーテル上に位置することが好ましい。このようにすれば、カテーテルよりも大径のチューブ接続部152が挿通孔175を挿通できるようにする必要がない。このため、挿通孔175を幅が狭いスロット状として、細いカテーテルにも摩擦係合させることが容易にできる。
【0071】
チューブ挿通部120が、カテーテルと摩擦係合してカプラーストッパとして機能する例を示したが、チューブ挿通部120がカテーテルと摩擦係合しない構成とすることもできる。チューブを挟持する状態と非挟持状態とに切り替えることができる構成として、一時的にチューブに対してカプラーストッパを移動させやすくすることもできる。例えば、チューブの軸直方向にスライド可能な構成とし、挟持状態と非挟持状態を切り替えられるようにすることできる。
【0072】
カテーテルと摩擦係合するチューブ挿通部をカプラーストッパとして用いる例を示したが、チューブ挿通部がカプラーストッパとしての機能を有していない構成とすることもできる。例えば、図14に示す第3変形例に係るオスコネクタは、オスコネクタ本体150Cの基端に形成され、径方向外側に突出する突出部197がカプラー180の下流側への移動を規制するカプラーストッパとして機能する。チューブであるカテーテル200Aには、図3等に示すカプラーストッパ100と同じ構成を有する、キャップ部190が挿通されている。
【0073】
キャップ部190は、オスコネクタ本体150Cやカプラー180ではなく、チューブ挿通部120を介してチューブに取り付けられている。チューブ挿通部120は、チューブと摩擦係合しており、チューブ上を自由に移動させることができるので、キャップを着脱がしやすい位置に移動したり、オスコネクタを操作する際に手が当たらない位置に移動したりすることが容易にできる。また、意図した位置に止めることもできるため、キャップが患者に触れる位置に意図せずに移動してしまうような事態も生じにくくすることができる。
【0074】
キャップ部がカプラーに固定されている場合、カプラーをメスコネクタと螺合又は解除する際にカプラーと共にキャップ部も回転してしまうため、操作性が大きく低下する。カプラーがオスコネクタ本体に対して自由に相対回転する、フリーロックタイプやスライドタイプのカプラーの場合には、キャップ部をオスコネクタ本体に取り付ければ、キャップ部とカプラーとが一緒に回転しないようにすることができる。しかし、この場合も、キャップ部をカプラーの近くに取り付けざるを得ないので、カプラーを回転させたり、カプラーを移動させたりする際に手に当たる等して邪魔になるおそれがある。また、カプラーがオスコネクタ本体と一体に回転する固定ロックタイプのカプラーの場合には、オスコネクタ本体にキャップ部を取り付けた場合にも、キャップ部がカプラーと共に回転してしまう。固定ロックタイプのカプラーにおいては、チューブもカプラーと一緒に回転してしまうため、キャップ部をチューブに動かないように固定した場合にも、カプラーと共にキャップが回転してしまう。しかし、本変形例のキャップ部190は、チューブ挿通部120を介してチューブと摩擦係合しているため、どのようなタイプのカプラーにおいても、例えばキャップ部190を軽く押さえれば、キャップ部190がカプラーと一緒に回転しないようにすることが容易にできる。このように、チューブ挿通部120によりチューブに取り付けられたキャップ部190は、スライドタイプのカプラーを有するコネクタだけでなく、フリーロックタイプのカプラや、固定ロックタイプのカプラーを有するコネクタにおいても有用である。
【0075】
図3等に示す縦長のスロットを有するチューブ挿通部120は、太いチューブだけでなく、細いチューブにも対応することができ、チューブの閉塞も生じにくくすることができる。但し、チューブ挿通部120は、実施形態及び各変形例において例示した種々の構成とすることができる。
【0076】
本変形例において、カプラーストッパをオスコネクタ本体150Cの基端部に形成された一対の翼状の突出部197としたが、カプラー180の通過を阻止できる種々の構成を採用することができる。例えば、片側だけに突出した凸部や、鍔状の凸部とすることもできる。また、カプラーストッパはオスコネクタ本体に形成されているものに限らない。例えば、オスコネクタ本体の下流側にオスコネクタ本体と離間して形成することもできる。さらに、図10に示した、タブのような構成とすることもできる。
【0077】
なお、本変形例においては、カプラー180に突出部197が挿入される切欠195を設けており、切欠195と突出部19とを係合させることにより、カプラー180とオスコネクタ本体150Cとを一体に回転させることができる。これにより、カプラー180を把持して、オスコネクタ本体150Cを回転させることができるので、ルアー部の挿抜が容易となる。但し、カプラー180とオスコネクタ本体150Cとの相対回転を制限する機構は、このような構成に限らない。また、必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0078】
また、本変形例においては、突出部197の近傍に鍔状の凸部196が形成されている。カプラー180の小径部182の内面には、凸部196と着脱可能に係合する凹凸が形成されており、カプラー180を一時的にカプラーストッパの位置に保持することができる。このため、カプラー180の意図しない上流側への移動を生じにくくできるので、カプラーの汚染をさらに生じにくくすることできる。なお、カプラーをカプラーストッパの位置に保持する構成は、このような構成に限らない。また、必要に応じて設ければよく、設けなくてもよい。
【0079】
医療用オスコネクタが経腸栄養用のオスコネクタである例を示したが、他の医療用オスコネクタにおいても、同様の構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示のオスコネクタは操作性に優れ、医療用分野において特に有用である。
【符号の説明】
【0081】
100 カプラーストッパ
101 キャップ
103 連結部
111 内筒部
112 外筒部
113 把持部
120 チューブ挿通部
121 スロット孔
122 幅広部
124 開口周縁部
125 肉厚部
126 拡幅端部
130 開口部
131 第1のスロット孔
132 第2のスロット孔
133 第1の孔
134 第2の孔
135 第3の孔
136 スロット孔
137 幅広部
140 カプラーストッパ
141 タブ
142 取付部
150A、150B、150C オスコネクタ本体
151 オスルアー部
152 チューブ接続部
153 リブ
154 面
155 鍔状部
156 チューブ
157 抜け止め凸部
160 キャップ
161 キャップ本体
162 リング状部
163 連結部
170 カプラーストッパ
171 キャップ本体
172 チューブ挿通部
173 連結部
174 摩擦係合部
175 挿通孔
176 係合凸部
180 カプラー
181 雌ネジ部
182 小径部
183 係合凹部
190 キャップ部
195 切欠
196 凸部
197 突出部
200A カテーテル
200B カテーテル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14