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特開2022-135948向上された発光効率を有する発光素子、及びそれを含むディスプレイ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135948
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】向上された発光効率を有する発光素子、及びそれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/24 20060101AFI20220908BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220908BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20220908BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H05B33/24
H05B33/14 A
H05B33/28
H05B33/22 D
H05B33/12 C
H01L27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016920
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0028354
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】周 原 提
(72)【発明者】
【氏名】具 賢
(72)【発明者】
【氏名】崔 雅 淨
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107DD10
3K107DD22
3K107DD23
3K107DD27
3K107DD28
3K107DD51
3K107DD71
3K107DD74
3K107EE21
3K107EE33
3K107FF06
3K107FF15
(57)【要約】
【課題】向上された発光効率を有する発光素子、及びそれを含むディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】発光素子は、反射層と、該反射層上に配された第1電極と、該第1電極と対向して配された第2電極と、該第1電極と該第2電極との間に配された部分透過ミラーと、該第1電極と該部分透過ミラーとの間に配された第1発光層と、該部分透過ミラーと該第2電極との間に配された第2発光層と、を含み、該反射層と該部分透過ミラーとの間に、一次以上の共振モードが形成され、該反射層と該第2電極との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、該部分透過ミラーが配されうる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射層と、
前記反射層上に配された第1電極と、
前記第1電極と対向して配された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配された第1発光層と、
前記第1発光層と前記第2電極との間に配された第2発光層と、
前記第1発光層と前記第2発光層との間に配された第1部分透過ミラーと、を含み、
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの間に、一次以上の共振モードが形成され、前記反射層と前記第2電極との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、前記第1部分透過ミラーが配されている、発光素子。
【請求項2】
前記第1電極は、透明電極であり、前記第2電極は、光の一部を反射させ、一部を透過させる部分透過電極である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記反射層と前記第2電極は、共振波長を有するマイクロキャビティを構成し、前記第1部分透過ミラーは、前記マイクロキャビティ内で共振する光波のノードに位置する、請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1部分透過ミラーは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銀合金またはアルミニウム合金を含む、請求項1~3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1部分透過ミラーの厚みは、5nmないし30nmである、請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第2電極の厚みと、前記第1部分透過ミラーの厚みとが異なる、請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1発光層は、
前記第1電極上に配された第1正孔輸送層と、
前記第1正孔輸送層上に配された第1有機発光材料層と、
前記第1有機発光材料層上に配された第1電子輸送層と、を含み、
前記第2発光層は、
前記第1部分透過ミラー上に配された第2正孔輸送層と、
前記第2正孔輸送層上に配された第2有機発光材料層と、
前記第2有機発光材料層上に配された第2電子輸送層と、を含む、請求項1~6のいずれかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記発光素子は、前記第1部分透過ミラー上において、前記第2電極と対向するように配される透明導電体層をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記発光素子は、前記第1発光層と前記第2発光層との間に配される電荷生成層をさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記第2発光層と前記第2電極との間に配された第3発光層と、
前記第2発光層と前記第3発光層との間に配された第2部分透過ミラーと、をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの間に、一次共振モードが形成され、前記反射層と前記第2部分透過ミラーとの間に、二次共振モードが形成され、前記反射層と前記第2電極との間に、三次共振モードが形成されるように、前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーが配されている、請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記反射層と前記第2電極は、共振波長を有するマイクロキャビティを構成し、前記第1部分透過ミラーは、前記マイクロキャビティ内で共振する光波の第1ノードに位置し、前記第2部分透過ミラーは、前記マイクロキャビティ内で共振する光波の第2ノードに位置する、請求項11に記載の発光素子。
【請求項13】
反射層と、
前記反射層上に配された第1電極と、
前記第1電極と対向して配された第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配された位相補正層と、
前記第1電極と前記位相補正層との間に配された第1発光層と、
前記位相補正層と前記第2電極との間に配された第2発光層と、
前記位相補正層と前記第1発光層との間に配された第1部分透過ミラーと、
前記位相補正層と前記第2発光層との間に配された第2部分透過ミラーと、を含み、
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの間に、一次以上の共振モードが形成され、前記反射層と前記第2電極との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーが配されている、発光素子。
【請求項14】
前記第1電極は、透明電極であり、前記第2電極は、光の一部を反射させ、一部を透過させる部分透過電極である、請求項13に記載の発光素子。
【請求項15】
前記反射層と前記第2電極は、共振波長を有するマイクロキャビティを構成し、前記位相補正層は、前記マイクロキャビティ内で共振する光波のノードに位置する、請求項13または14に記載の発光素子。
【請求項16】
前記反射層、前記第2電極、前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーは、前記反射層、前記第2電極、前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーによって反射された光につき、180°より大きい位相変調を起こす、請求項13~15のいずれかに記載の発光素子。
【請求項17】
前記位相補正層は、透明導電性材料によってなる、請求項13~16のいずれかに記載の発光素子。
【請求項18】
前記位相補正層の厚みは、5nmないし150nmである、請求項17に記載の発光素子。
【請求項19】
前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銀合金またはアルミニウム合金を含む、請求項13~18のいずれかに記載の発光素子。
【請求項20】
前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーの厚みは、5nmないし30nmである、請求項19に記載の発光素子。
【請求項21】
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの間に、一次共振モードまたは二次共振モードが形成されるように、前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの光学的距離が選択され、
前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との間に、一次共振モードまたは二次共振モードが形成されるように、前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との光学的距離が選択される、請求項13~20のいずれかに記載の発光素子。
【請求項22】
前記第1発光層は、
前記第1電極上に配された第1正孔輸送層と、
前記第1正孔輸送層上に配された第1有機発光材料層と、
前記第1有機発光材料層上に配された第1電子輸送層と、を含み、
前記第2発光層は、
前記第2部分透過ミラー上に配された第2正孔輸送層と、
前記第2正孔輸送層上に配された第2有機発光材料層と、
前記第2有機発光材料層上に配された第2電子輸送層と、を含む、請求項13~21のいずれかに記載の発光素子。
【請求項23】
前記第1有機発光材料層と前記第2有機発光材料層とが、同一波長の光を生じさせる、請求項22に記載の発光素子。
【請求項24】
前記第1有機発光材料層及び前記第2有機発光材料層から生じた光の波長について、共振モードが形成されるように、前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの光学的距離、及び前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との光学的距離が選択される、請求項23に記載の発光素子。
【請求項25】
前記第1有機発光材料層は、第1波長の光を生じさせ、前記第2有機発光材料層は、第1波長と異なる第2波長の光を生じさせる、請求項22に記載の発光素子。
【請求項26】
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの光学的距離は、第1波長について、共振モードが形成されるように選択され、
前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との光学的距離は、第2波長について、共振モードが形成されるように選択される、請求項25に記載の発光素子。
【請求項27】
複数の画素を含み、
それぞれの画素が請求項1~26のいずれかに記載の発光素子を含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、及びそれを含むディスプレイ装置に係り、さらに詳細には、向上された発光効率を有する有機発光素子及び有機発光ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子(OLED:organic light emitting device)は、正極(anode)から供給される正孔(hole)と、負極(cathode)から供給される電子(electron)とが有機発光層内で結合して光を放出することにより、画像を形成するディスプレイ素子である。そのような有機発光素子は、広い視野角、迅速な応答速度、薄厚、低廉な製造コスト、及び高コントラスト(contrast)のような優秀なディスプレイ特性を示すことができる。
【0003】
また、該有機発光素子において、有機発光層の材料として適切な物質を選択することにより、所望する色を放出させることができる。そのような原理により、該有機発光素子を利用し、カラーディスプレイ装置の具現が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、向上された発光効率を有する有機発光素子及び有機発光ディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態による発光素子は、反射層と、前記反射層上に配された第1電極と、前記第1電極と対向して配された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配された部分透過ミラーと、前記第1電極と前記部分透過ミラーとの間に配された第1発光層と、前記部分透過ミラーと前記第2電極との間に配された第2発光層と、を含み、前記反射層と前記部分透過ミラーとの間に、一次以上の共振モードが形成され、前記反射層と前記第2電極との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、前記部分透過ミラーが配されうる。
【0006】
前記第1電極は、透明電極であり、前記第2電極は、光の一部を反射させ、一部を透過させる部分透過電極でもある。
【0007】
前記反射層と前記第2電極は、共振波長を有するマイクロキャビティを構成し、前記部分透過ミラーは、前記マイクロキャビティ内で共振する光波のノードに位置しうる。
【0008】
例えば、前記部分透過ミラーは、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銀合金またはアルミニウム合金を含んでいてもよい。
【0009】
例えば、前記部分透過ミラーの厚みは、5nmないし30nmでもある。
【0010】
前記第2電極の厚みと、前記部分透過ミラーの厚みが異なっていてもよい。
【0011】
前記第1発光層は、前記第1電極上に配された第1正孔輸送層と、前記第1正孔輸送層上に配された第1有機発光材料層と、前記第1有機発光材料層上に配された第1電子輸送層と、を含み、前記第2発光層は、前記部分透過ミラー上に配された第2正孔輸送層と、前記第2正孔輸送層上に配された第2有機発光材料層と、前記第2有機発光材料層上に配された第2電子輸送層と、を含んでもよい。
【0012】
前記発光素子は、前記部分透過ミラー上において、前記第2電極と対向するように配される透明導電体層をさらに含んでもよい。
【0013】
前記発光素子は、前記第1発光層と前記第2発光層との間に配される電荷生成層をさらに含んでもよい。
【0014】
前記発光素子は、前記第2発光層と前記第2電極との間に配された第3発光層をさらに含み、前記部分透過ミラーは、前記第1発光層と前記第2発光層との間に配された第1部分透過ミラー、及び前記第2発光層と前記第3発光層との間に配された第2部分透過ミラーを含んでもよい。
【0015】
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの間に、一次共振モードが形成され、前記反射層と前記第2部分透過ミラーとの間に、二次共振モードが形成され、前記反射層と前記第2電極との間に三次共振モードが形成されるように、前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーが配されうる。
【0016】
前記反射層と前記第2電極は、共振波長を有するマイクロキャビティを構成し、前記第1部分透過ミラーは、前記マイクロキャビティ内で共振する光波の第1ノードに位置し、前記第2部分透過ミラーは、前記マイクロキャビティ内で共振する光波の第2ノードに位置しうる。
【0017】
他の実施形態による発光素子は、反射層と、前記反射層上に配された第1電極と、前記第1電極と対向して配された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配された位相補正層と、前記第1電極と前記位相補正層との間に配された第1発光層と、前記位相補正層と前記第2電極との間に配された第2発光層と、前記位相補正層と前記第1発光層との間に配された第1部分透過ミラーと、前記位相補正層と前記第2発光層との間に配された第2部分透過ミラーと、を含み、前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの間に、一次以上の共振モードが形成され、前記反射層と前記第2電極との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーが配されうる。
【0018】
前記反射層と前記第2電極は、共振波長を有するマイクロキャビティを構成し、前記位相補正層は、前記マイクロキャビティ内で共振する光波のノードに位置しうる。
【0019】
前記反射層、前記第2電極、前記第1部分透過ミラー及び前記第2部分透過ミラーは、反射光に対し、180°より大きい位相変調を起こしうる。
【0020】
例えば、前記位相補正層は、透明導電性材料を含んでいてもよい。
【0021】
例えば、前記位相補正層の厚みは、5nmないし150nmでもある。
【0022】
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの間に、一次共振モードまたは二次共振モードが形成されるように、前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの光学的距離が選択され、前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との間に、一次共振モードまたは二次共振モードが形成されるように、前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との光学的距離が選択されうる。
【0023】
前記第1発光層は、前記第1電極上に配された第1正孔輸送層と、前記第1正孔輸送層上に配された第1有機発光材料層と、前記第1有機発光材料層上に配された第1電子輸送層と、を含み、前記第2発光層は、前記第2部分透過ミラー上に配された第2正孔輸送層と、前記第2正孔輸送層上に配された第2有機発光材料層と、前記第2有機発光材料層上に配された第2電子輸送層と、を含んでもよい。
【0024】
前記第1有機発光材料層と前記第2有機発光材料層とが、同一波長の光を生じさせることができる。
【0025】
前記第1有機発光材料層及び前記第2有機発光材料層から生じた光の波長について、共振モードが形成されるように、前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの光学的距離、及び前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との光学的距離が選択されうる。
【0026】
前記第1有機発光材料層は、第1波長の光を生じさせ、前記第2有機発光材料層は、第1波長と異なる第2波長の光を生じさせることができる。
【0027】
前記反射層と前記第1部分透過ミラーとの光学的距離は、第1波長について、共振モードが形成されるように選択され、前記第2部分透過ミラーと前記第2電極との光学的距離は、第2波長について、共振モードが形成されるように選択されうる。
【0028】
さらに他の実施形態によるディスプレイ装置は、複数の画素を含み、それぞれの画素は、反射層と、前記反射層上に配された第1電極と、前記第1電極と対向して配された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配された部分透過ミラーと、前記第1電極と前記部分透過ミラーとの間、及び前記部分透過ミラーと前記第2電極との間に配された発光層と、を含み、前記反射層と前記部分透過ミラーとの間に、一次以上の共振モードが形成され、前記反射層と前記第2電極との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、前記部分透過ミラーが配されうる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、マイクロキャビティ基板の発光素子が厚い発光層を備え、二次または三次以上の共振モードが形成された場合でも、マイクロキャビティ内部に部分透過ミラーを配し、一次共振条件を満足させることにより、高次共振モードにおいてパーセル効果が低減される物理的現象を抑え、最終的には、発光素子の発光効率や駆動寿命を向上させることができる。
【0030】
また、反射層を構成する金属による位相遅延を考慮し、位相補正層を配することにより、反射層における位相遅延が180°より大きい場合でも、一次以上の共振条件を全て満足させ、発光素子の発光効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
図2図1に示された発光素子のマイクロキャビティ構造を示す概念図である。
図3A図1に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図3B図1に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図4】他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
図5】さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
図6図5に示された発光素子のマイクロキャビティ構造を示す概念図である。
図7A図5に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図7B図5に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図7C図5に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図8図5に示された発光素子において、共振次数による発光体の発光特性の変化を、比較例と比較して例示的に示すグラフである。
図9図5に示された発光素子において、共振次数による発光素子の光放出特性の変化を、比較例と比較して例示的に示すグラフである。
図10】さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
図11】さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
図12A図11に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図12B図11に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図12C図11に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す図である。
図13図11に示された発光素子において、位相補正層の厚み変化による二次共振器の共振波長の変化を例示的に示す図である。
図14図11に示された発光素子において、共振次数による発光体の発光特性の変化を、比較例と比較して例示的に示すグラフである。
図15】さらに他の実施形態による発光素子のマイクロキャビティ構造を示す概念図である。
図16】さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
図17】一実施形態によるディスプレイ装置の構造を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付された図面を参照し、向上された発光効率を有する発光素子、及びそれを含むディスプレイ装置について詳細に説明する。以下の図面において、同一参照符号は、同一構成要素を称し、図面上において、各構成要素の大きさは、説明の明瞭さと便宜さとのために誇張されてもいる。また、以下で説明される実施形態は、単に例示的なものに過ぎず、そのような実施形態から、多様な変形が可能である。
【0033】
以下において、「上部」である、あるいは「上」であると記載されたところは、接触して真上にあるものだけではなく、非接触で上にあるものを含んでもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、多数の表現を含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0034】
「前記」の用語、及びそれと類似した指示用語の使用は、単数及び多数のいずれにも該当しうる。方法を構成する段階について明白に順序を記載するか、あるいは反対となる記載がなければ、そのような段階は、適切な順序で遂行され、必ずしも記載された順序に限定されるものではない。
【0035】
また、明細書に記載された「…部」、「モジュール」というような用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、それは、ハードウェアまたはソフトウェアによって具現されるか、あるいはハードウェアとソフトウェアとの結合によっても具現される。
【0036】
図面に示された構成要素間の線の連結、または連結部材は、機能的な連結、及び/または物理的または回路的な連結を例示的に示したものであり、実際の装置においては、代替可能であったり追加されたりする多様な機能的な連結、物理的な連結、または回路連結としても示される。
【0037】
全ての例、または例示的な用語の使用は、単に技術的思想について詳細に説明するためのものであり、特許請求の範囲によって限定されない以上、そのような例、または例示的な用語によって範囲が限定されるものではない。
【0038】
図1は、一実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。図1を参照すれば、一実施形態による発光素子200は、反射層110、反射層110上に配された第1電極120、第1電極120と対向して配された第2電極150、第1電極120と第2電極150との間に配された部分透過ミラー140、第1電極120と部分透過ミラー140との間に配された第1発光層130a、及び部分透過ミラー140と第2電極150との間に配された第2発光層130bを含んでもよい。また、発光素子200は、第2電極150上に配され、第2電極150を保護する透明な保護層(passivation layer)160をさらに含んでもよい。
【0039】
発光素子200は、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)としても知られた有機発光素子でもあり、第1発光層130aと第2発光層130bは、有機発光材料を含む有機発光層でもある。例えば、第1発光層130aは、第1電極120上に配された第1正孔輸送層(hole transfer layer)132a、第1正孔輸送層132a)上に配された第1有機発光材料層131a、及び第1有機発光材料層131a上に配された第1電子輸送層(electron transfer layer)133aを含んでもよい。第2発光層130bは、部分透過ミラー140上に配された第2正孔輸送層132b、第2正孔輸送層132b上に配された第2有機発光材料層131b、及び第2有機発光材料層131b上に配された第2電子輸送層133bを含んでもよい。
【0040】
第1正孔輸送層132a及び第2正孔輸送層132bは、正孔注入層(hole injection layer)の機能をさらに遂行することができ、第1電子輸送層133a及び第2電子輸送層133bは、電子注入層(electron injection layer)の機能をさらに遂行することができる。または、第1電極120と第1正孔輸送層132aとの間、及び部分透過ミラー140と第2正孔輸送層132bとの間に、別途のさらなる正孔注入層がそれぞれ配され、第1電子輸送層133aと部分透過ミラー140との間、及び第2電子輸送層133bと第2電極150との間に、別途のさらなる電子注入層がそれぞれ配されうる。また、図示されていないが、第1発光層130a及び第2発光層130bは、必要により、多様なさらなる層をさらに含んでもよい。例えば、第1発光層130a及び第2発光層130bは、電子阻止層(electron block layer)、正孔阻止層(hole block layer)などをさらに含んでもよい。
【0041】
そのような構造において、第1正孔輸送層132a及び第2正孔輸送層132bを介して提供された正孔と、第1電子輸送層133a及び第2電子輸送層133bを介して提供された電子とが、第1有機発光材料層131a及び第2有機発光材料層131bで結合して光が発生することになる。第1有機発光材料層131a及び第2有機発光材料層131bは、有機物ホスト(host)にドーパント物質をドーピングしても形成される。第1有機発光材料層131a及び第2有機発光材料層131bから発生する光の波長は、有機物ホスト物質と有機物ドーパント物質との特性によっても決定される。
【0042】
第1電極120は、第1発光層130a及び第2発光層130bに、正孔を提供する正極の役割を行い、第2電極150は、第1発光層130a及び第2発光層130bに、電子を提供する負極の役割を行うことができる。そのために、第1電極120は、相対的に高い仕事関数(work function)を有する材料によってなり、第2電極150は、相対的に低い仕事関数を有する材料によってもなる。
【0043】
また、第1電極120は、色(例えば、可視光)を透過させる性質を有する透明電極にもなる。例えば、第1電極120は、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、AZO(aluminum zinc oxide)のような透明伝導性酸化物(transparent conductive oxide)を含んでもよい。
【0044】
第2電極150は、光の一部を反射させ、一部を透過させる部分透過電極にもなる。そのために、第2電極150は、非常に薄厚の反射性金属を含む。例えば、第2電極150は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銀合金またはアルミニウム合金などを含んでいてもよい。例えば、銀合金としては、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)との混合層、アルミニウム合金としては、アルミニウム(Al)とリチウム(Li)との混合層がある。そのような第2電極150の全体厚は、約5nmないし30nmでもある。第2電極150の厚みが非常に薄いために、光の一部が反射性金属を通過することができる。
【0045】
反射層110は、第1発光層130a及び第2発光層130bによって生じ、第1電極120を透過した光を反射させるようにも構成される。そのために、反射層110は、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、またはそれらを含む合金を含んでいてもよい。しかし、必ずしもそれらに限定されるものではなく、反射層110は、他の反射性材料を含んでもよい。
【0046】
そのような反射層110は、第2電極150と共にマイクロキャビティを構成する役割を行う。言い換えれば、発光素子200の反射層110と第2電極150との間に、マイクロキャビティが形成される。例えば、第1発光層130a及び第2発光層130bから生じた光は、反射層110と第2電極150との間を往復して共振した後、マイクロキャビティの共振波長に該当する光が、第2電極150を介して外部にも放出される。
【0047】
反射層110と第2電極150との間に形成されたマイクロキャビティの共振波長は、マイクロキャビティの光学的長さ(optical length)Lによっても決定される。例えば、マイクロキャビティの共振波長をλとするとき、マイクロキャビティの光学的長さLは、nλ/2(nは、自然数である)でもある。そのようなマイクロキャビティの光学的長さLは、反射層110と第2電極150との間のマイクロキャビティを形成する層の光学的厚み、第2電極150による位相遅延、及び反射層110による位相遅延の和によっても決定される。ここで、反射層110と第2電極150との間のマイクロキャビティを形成する層の光学的厚みは、単純な物理的な厚みではなく、マイクロキャビティを形成する層の材料の屈折率を考慮した厚みである。例えば、マイクロキャビティを形成する層の光学的厚みは、反射層110と第2電極150との間にある全ての層の光学的厚みの和である。
【0048】
発光素子200の発光効率を向上させるために、マイクロキャビティの光学的長さLは、マイクロキャビティの共振波長を、第1発光層130a及び第2発光層130bの発光波長にマッチングさせるようにも決定される。言い換えれば、マイクロキャビティの共振波長λは、第1発光層130a及び第2発光層130bの発光波長と同じでもある。そのために、第1発光層130a及び第2発光層130bの発光波長を考慮し、反射層110と第2電極150との間に配される層の光学的厚みを調節することができる。そのようなマイクロキャビティを利用することにより、発光素子200から放出される光に直進性を付与することができ、狭い波長帯域内にある光だけが選択的に抽出されるので、発光素子200から放出される光の色純度が高まりうる。
【0049】
一方、マイクロキャビティ構造においては、マイクロキャビティが有するQ因子とモード体積(mode volume)との影響を受け、マイクロキャビティ内にある光源の放射崩壊速度(radiative decay rate)が変わることになるが、それをパーセル効果(Purcell effect)と言う。パーセル効果を増進させれば、光源の放射崩壊速度が速くなり、自発発光率(spontaneous emission rate)が向上されうる。有機発光素子の場合、光源は、発光ドーパントを意味するが、ドーパントのPLQY(photoluminescence quantum yield)がパーセル効果によって上昇し、素子の発光効率をさらに向上させることができる。もしドーパントのPLQYがほぼ1に近い場合においても、マイクロキャビティによるパーセル効果によって放射崩壊速度が速くなれば、発光素子の寿命が延長される効果を期待することができる。
【0050】
そのようなパーセル効果は、一般的にn=1、言い換えれば、マイクロキャビティの光学的長さLがλ/2である一次共振モードで強く、nが増大し、共振次数が増大するにつれ、急減することになる。共振器長が長くなるほど、自由スペクトル範囲(free spectral range)が狭くなり、マイクロキャビティが形成する光学的状態密度(ODOS:optical density of state)を低減させ、マイクロキャビティ内部にある発光体の効率が低下するためである。従って、一次共振モードのマイクロキャビティが、発光素子に適用されることが最も効率的であるが、発光素子の駆動安定性のために、正孔輸送層や発光層の厚みを厚くしなければならなかったり、多重発光層を適用したりするか、あるいは複数の発光素子を積層するタンデム(tandem)構造を適用する場合には、高次共振モードを適用することができる。
【0051】
本実施形態によれば、マイクロキャビティ内部にある部分透過ミラー140は、二次または三次以上の共振モードを有するマイクロキャビティにおいても、一次共振モードを有するように、パーセル効果を増進させる役割を行う。例えば、図2は、図1に示された発光素子のマイクロキャビティ構造を示す概念図である。図2を参照すれば、反射層110と第2電極150とにより、二次共振モードを有するマイクロキャビティが形成される。部分透過ミラー140は、マイクロキャビティ内部で共振する光波の電場強度が最も弱い領域、言い換えれば、マイクロキャビティ内部で共振する光波のノード(node)に配される。それにより、部分透過ミラー140に入射する光の一部が、部分透過ミラー140によって反射されながら、新たな小共振器が形成される。従って、マイクロキャビティ内には、複数の共振モードが形成されうる。
【0052】
図3A及び図3Bは、図1に示された発光素子のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す。まず、図3Aを参照すれば、反射層110と部分透過ミラー140とにより、一次共振モードを有する共振器が形成されうる。また、図3Bに示されているように、反射層110と第2電極150とにより、二次共振モードを有する共振器が形成されうる。このように、マイクロキャビティ内に、部分透過ミラー140をさらに配することにより、マイクロキャビティが一次共振モードをさらに有することができ、それにより、光学的状態密度を上昇させることができる。図示されていないが、部分透過ミラー140と第2電極150とによっても、一次共振モードを有する一次共振器が形成されうる。従って、一次共振モードを有する2個の一次共振器が連結され、二次共振モードを有する1つの二次共振器が形成されうる。
【0053】
部分透過ミラー140は、第2電極150と同一材料を含んでいてもよい。言い換えれば、部分透過ミラー140は、反射性及び導電性を有する金属材料、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銀合金またはアルミニウム合金を含んでいてもよい。部分透過ミラー140が光の一部を透過させることができるように、部分透過ミラー140は、薄厚にも形成される。例えば、部分透過ミラー140は、約5nmないし30nmの厚みを有することができる。必要により、部分透過ミラー140の厚みは、発光素子200の外部に光を出光させる第2電極150の厚みと異なるようにも選択される。言い換えれば、部分透過ミラー140の反射度は、第2電極150の反射度と異なるようにも選択される。
【0054】
また、反射層110と部分透過ミラー140との間に配された第1発光層130aは、マイクロキャビティ内部で共振する光波の電場強度が最大である領域、言い換えれば、マイクロキャビティ内部で共振する光波のアンチノード(antinode)に位置しうる。電極から注入される正孔及び電子をして、発光層において、励起子(exciton)を効率的に生成させるために、電子輸送層及び正孔輸送層の厚みと素材とを選定することができ、発光層がマイクロキャビティのアンチノードに位置することが光学的に最も有利でもある。部分透過ミラー140と第2電極150との間に配された第2発光層130bも、やはりマイクロキャビティ内部で共振する光波のアンチノードに位置しうる。
【0055】
図4は、他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。図4を参照すれば、発光素子210は、部分透過ミラー140の上部表面上において、第2電極150と対向するように配される透明導電体層141をさらに含んでもよい。透明導電体層141は、第1電極120と類似した役割を行うことができる。部分透過ミラー140と第2発光層130bとの間に位置する透明導電体層141は、第2発光層130bに正孔を提供するために、高い仕事関数を有する材料によってもなる。例えば、透明導電体層141は、ITO、IZO、AZOなどを含んでいてもよい。
【0056】
また、発光素子210は、第1発光層130aと第2発光層130bとの間に配される電荷生成層(charge generation layer)142をさらに含んでもよい。電荷生成層142は、第1有機発光材料層131aと第2有機発光材料層131bとの間の電荷移動を向上させる役割を行うことができる。図4には、電荷生成層142が、部分透過ミラー140の下部表面と、第1発光層130aの上部表面との間に配されているように示されているが、それに限定されるものではなく、電荷生成層142は、第1発光層130aと第2発光層130bとの間のどこにも位置しうる。
【0057】
発光素子210の残り構成は、図1に示された発光素子200の構成と同一でもある。従って、図4に示された発光素子210に係わる詳細な説明を省略する。
【0058】
図5は、さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。図5を参照すれば、発光素子220は、反射層110、反射層110上に配された透明な第1電極120、第1電極120上に配された第1発光層130a、第1発光層130a上に配された第1部分透過ミラー140a、第1部分透過ミラー140a上に配された第2発光層130b、第2発光層130b上に配された第2部分透過ミラー140b、第2部分透過ミラー140b上に配された第3発光層130c、第3発光層130c上に配された第2電極150を含んでもよい。また発光素子220は、第2電極150上に配された保護層160をさらに含んでもよい。
【0059】
図1及び図4に示された発光素子200,210と比較するとき、発光素子220は、第2発光層130bと第2電極150との間に配された第3発光層130c、及び第2発光層130bと第3発光層130cとの間に配された第2部分透過ミラー140bをさらに含む。図1及び図4に示された発光素子200,210は、マイクロキャビティが二次共振モードを有するように構成されたが、図5に示された発光素子220のマイクロキャビティは、三次共振モードを有する。また、マイクロキャビティの共振次数は、それに限定されるものではなく、四次以上の高次共振モードを有するように、マイクロキャビティを形成することもできる。
【0060】
図6は、図5に示された発光素子220のマイクロキャビティ構造を示す概念図である。図6を参照すれば、反射層110と第2電極150との間に、三次共振モードを有するマイクロキャビティが形成される。第1発光層130aと第2発光層130bとの間に配された第1部分透過ミラー140aは、マイクロキャビティ内で共振する光波の第1ノード領域に位置し、第2発光層130bと第3発光層130cとの間に配された第2部分透過ミラー140bは、マイクロキャビティ内で共振する光波の第2ノード領域に位置しうる。その場合、第1発光層130aは、マイクロキャビティ内で共振する光波の第1アンチノード領域に、第2発光層130bは、マイクロキャビティ内で共振する光波の第2アンチノード領域に、第3発光層130cは、マイクロキャビティ内で共振する光波の第3アンチノード領域に位置しうる。
【0061】
図7Aないし図7Cは、図5に示された発光素子220のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す。図7Aないし図7Cを参照すれば、反射層110と第1部分透過ミラー140aとの間に、一次共振モードが形成され、反射層110と第2部分透過ミラー140bとの間に、二次共振モードが形成され、反射層110と第2電極150との間に、三次共振モードが形成されうる。そのような多重共振モードは、図6のように、第1部分透過ミラー140a及び第2部分透過ミラー140bを、マイクロキャビティ内で共振する光波の互いに異なるノード領域に位置させることによって形成される。
【0062】
このように、1つの大きいマイクロキャビティ内に、複数の小さい共振器がさらに形成されることができ、そのような複数の小さい共振器が光学的に連結されうる。これにより、一次共振、二次共振及び三次共振の相互作用を介する光学的効果を得ることができる。例えば、図8は、図5に示された発光素子220において、共振次数による発光体の発光特性の変化を、比較例と比較して例示的に示すグラフであり、図9は、図5に示された発光素子220において、共振次数による発光素子220の光放出特性の変化を、比較例と比較して例示的に示すグラフである。言い換えれば、図8のグラフは、マイクロキャビティ内に位置する発光体が生じさせる光の強度を比較例と比較して示すものであり、図9のグラフは、マイクロキャビティ内で共振した光が、第2電極150を介し、発光素子220の外部に出力される光の強度を比較例と比較して示すものである。
【0063】
図8を参照すれば、一次共振モードから二次共振モード、三次共振モードに行くほど、共振次数が増加するにつれ、発光体が生じさせる光の強度が低減されるということが分かる。これは、前述のパーセル効果による結果であると解釈することができる。一方、本実施形態におけるように、第1部分透過ミラー140a及び第2部分透過ミラー140bを利用し、マイクロキャビティ内において、一次共振モードと二次共振モードとをさらに発生させれば、一次共振モードのみを有する場合よりも、発光体の発光特性がさらに向上するということを確認することができる。これは、多様な共振モードの相互補強干渉により、補強特性が強化された結果であると見られる。また、図9を参照すれば、本実施形態による発光素子220の外部に出力される光の強度が、一次共振モードのみを有する場合より、2倍ほど向上するので、光抽出効率も、やはり向上するということを予測することができる。
【0064】
前述のように、反射層110と部分透過ミラー140,140a,140bの間に、一次以上の共振モードが形成され、反射層110と第2電極150との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、部分透過ミラー140,140a,140bを配することができる。それにより、マイクロキャビティ基板の発光素子が、多重発光層を含むか、あるいは厚い有機層を具備し、二次または三次以上の共振モードが形成される場合にも、マイクロキャビティ内部において、部分透過ミラーにより、一次共振条件を満足させることができる。その結果、パーセル効果の増大により、効率がさらに向上するか、あるいは発光素子の駆動寿命が延長される効果を期待することができる。
【0065】
図10は、さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。図10を参照すれば、発光素子230は、第1部分透過ミラー140aの上部表面と、第2発光層130bとの間に配される第1透明導電体層141a、及び第2部分透過ミラー140bの上部表面と、第3発光層130cとの間に配される第2透明導電体層141bをさらに含んでもよい。また、発光素子230は、第1発光層130aと第2発光層130bとの間に配される第1電荷生成層142a、及び第2発光層130bと第3発光層130cとの間に配される第2電荷生成層142bをさらに含んでもよい。図10に示された発光素子230の残り他の構成は、図5に示された発光素子220の構成と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0066】
図11は、さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。図11を参照すれば、発光素子240は、反射層110、反射層110上に配された透明な第1電極120、第1電極120と対向して配され、部分透過性を有する第2電極150、第1電極120と第2電極150との間に配された位相補正層144、第1電極120と位相補正層144との間に配された第1発光層130a、位相補正層144と第2電極150との間に配された第2発光層130b、位相補正層144と第1発光層130aとの間に配された第1部分透過ミラー145、及び位相補正層144と第2発光層130bとの間に配された第2部分透過ミラー146を含んでもよい。また、発光素子240は、第2電極150上に配された保護層160をさらに含んでもよい。
【0067】
図1ないし図10においては、反射層110、第2電極150、部分透過ミラー140,140a,140bによって反射される光の位相が180°(すなわち、π)ほど変更されると仮定した。しかし、金属ミラーの場合、実際においては、消失波(evanescent wave)効果により、約1.1倍ないし1.3倍大きい位相変調が生じることになる。例えば、銀(Ag)ミラーにおいては、1.3×180°の位相変調が起こる。それにより、一次共振器の光学的長さが、実際においては、λ/2より短くもなる。例えば、共振波長が450nmである場合、一次共振器の実際の光学的長さは、225nmではなく、約170nmほどである。共振器の長さが約55nmほど短くなった理由は、銀薄膜による反射位相変調が、πではなく、1.3πであるためである。
【0068】
そのように、金属ミラーで生じるπより大きい位相変調は、倍数の一次共振器を直列連結し難くしてしまう。πより大きい位相変調を考慮して構成した2個の一次共振器を直列連結する場合、結果としての共振器の長さは、二次共振条件を満足する長さより短くなり、結果としての共振器の実際共振波長は、目標にした共振波長より短くなることになる。例えば、共振波長が450nmである2個の一次共振器を直列に連結すれば、二次共振器は、約420nmほどの共振波長を有することができる。πより大きい位相変調を考慮して構成した3個の一次共振器を直列連結する場合には、結果としての共振器の長さは、三次共振条件を満足する長さよりさらに短くなる。これにより、複数の共振器の共振条件を満足する多様な共振モード間の補強干渉が起こらないのである。
【0069】
図11に示された発光素子240は、二次以上の共振器の長さが短くミならないように、マイクロキャビティ内に位相を補正するためのさらなるキャビティをさらに含んでもよい。位相補正層144は、発光に直接寄与せず、位相を補正するためのそのようなさらなるキャビティの役割を行うことができる。位相補正層144は、位相補正層144の両面に配された一次共振器を直列に連結しながら、最終的な二次以上の共振器の共振波長を目標にした共振波長に一致させることができる。言い換えれば、最終的な二次以上の共振器の共振波長は、位相補正層144の厚みD(図12C)によっても決定される。最終的な二次以上の共振器の共振波長を目標にした共振波長に一致させる位相補正層144の正確な厚みDは、例えば、有限差分時間領域シミューレータ(finite-differential time-domain simulator)などを利用して計算することができる。
【0070】
図12Aないし図12Cは、図11に示された発光素子240のマイクロキャビティが有する共振モードを例示的に示す。図12Aを参照すれば、反射層110と第1部分透過ミラー145とにより、一次共振器が形成される。また、図12Bを参照すれば、第2部分透過ミラー146と第2電極150とにより、他の一次共振器が形成される。また、図12Cを参照すれば、反射層110と第2電極150との間に、2個の一次共振器が連結された二次共振器が形成される。第1部分透過ミラー145と第2部分透過ミラー146との間には、二次共振器の共振波長が短くならないように、位相補正層144が配される。位相補正層144は、反射層110と第2電極150との間のマイクロキャビティ、または二次共振器内で共振する光波のノードに位置しうる。第1部分透過ミラー145と第2部分透過ミラー146は、位相補正層144の両表面に直接接触しても配される。
【0071】
反射層110、第2電極150、第1部分透過ミラー145及び第2部分透過ミラー146は、反射光に対し、180°より大きい位相変調を起こしうる。位相補正層144の厚みDは、反射層110、第2電極150、第1部分透過ミラー145及び第2部分透過ミラー146の180°より大きい位相変調を考慮しても決定される。特に、2個の一次共振器の共振波長と、二次共振器の共振波長とが一致するように、位相補正層144の厚みDが決定されうる。例えば、位相補正層144の厚みDは、約5nmないし150nmの範囲内で決定されうる。そのような位相補正層144は、高屈折率を有する透明導電性材料を含んでいてもよい。
【0072】
図13は、図11に示された発光素子240において、位相補正層144の厚み変化による二次共振器の共振波長の変化を例示的に示す。2個の一次共振器は、約450nmの共振波長を有するように設計されている。反射層110は、約200nm厚の銀薄膜を含み、第1部分透過ミラー145と第2部分透過ミラー146は、約10nm厚を有し、第2電極150は、約20nm厚を有する。反射層110と第1部分透過ミラー145との距離、及び第2部分透過ミラー146と第2電極150との距離は、約168nmに固定した。位相補正距離、言い換えれば、位相補正層144の厚みを10nmから150nmまで変化させながら、二次共振器の共振特性を計算した。図13を参照すれば、位相補正層144の厚みが約10nmであるとき、共振波長が約410nmにおいて形成されるということが分かる。位相補正層144の厚みが厚くなりながら、共振波長がだんだんと大きくなり、位相補正層144の厚みが約90nmであるとき、約450nmの共振波長が形成される。
【0073】
図14は、図11に示された発光素子240において、共振次数による発光体の発光特性の変化を、比較例と比較して例示的に示すグラフである。図14のグラフは、マイクロキャビティ内に位置する発光体が生じさせる光の強度を比較例と比較して示すものである。図14を参照すれば、一次共振モードから二次共振モード、三次共振モードと、共振次数が増大するにつれ、発光体が生じさせる光の強度が低減されるということが分かる。一方、本実施形態によれば、一次共振モードのみを有する場合よりも、発光体の発光特性がさらに向上するということを確認することができる。このように、反射層110、第2電極150、第1部分透過ミラー145及び第2部分透過ミラー146を構成する金属による位相遅延を考慮し、位相補正層144を配することにより、反射層110、第2電極150、第1部分透過ミラー145及び第2部分透過ミラー146において、位相遅延が180°より大きい場合にも、一次以上の共振条件をいずれも満足させ、発光素子240の発光効率を向上させることができる。
【0074】
図12Aないし図12Cにおいては、2個の一次共振器を連結し、最終的なマイクロキャビティが二次共振モードを有すると説明した。しかし、必ずしもそれに限定されるものではない。例えば、図15は、さらに他の実施形態による発光素子250のマイクロキャビティ構造を示す概念図である。図15を参照すれば、反射層110と第1部分透過ミラー145との間に形成される共振器は、二次共振モードを有する二次共振器である。また、第2部分透過ミラー146と第2電極150との間に形成される共振器も、やはり二次共振モードを有する二次共振器である。結果として、反射層110と第2電極150との間に形成される共振器は、四次共振モードを有する四次共振器である。その場合、位相補正層144は、四次共振器内で共振する光波の2番目ノードに位置しうる。
【0075】
前述のように、反射層110と第1部分透過ミラー145との間に、一次以上の共振モードが形成され、反射層110と第2電極150との間に、二次以上の共振モードが形成されるように、第1部分透過ミラー145と第2部分透過ミラー146とが配され、位相補正のために、第1部分透過ミラー145と第2部分透過ミラー146との間に、所定厚を有する位相補正層144が配されうる。また、反射層110と第1部分透過ミラー145との光学的距離L1は、反射層110と第1部分透過ミラー145との間に、一次共振モードまたは二次共振モードが形成されるようにも選択され、第2部分透過ミラー146と第2電極150との光学的距離L2も、やはり第2部分透過ミラー146と第2電極150との間に、一次共振モードまたは二次共振モードが形成されるようにも選択される。
【0076】
一方、第1発光層130aと第2発光層130bは、図1ですでに説明した第1発光層130a及び第2発光層130bと同一構成を有することができる。例えば、第1発光層130aは、第1電極120上に配された第1正孔輸送層、第1正孔輸送層上に配された第1有機発光材料層、及び第1有機発光材料層上に配された第1電子輸送層を含んでもよい。また、第2発光層130bは、第2部分透過ミラー146上に配された第2正孔輸送層、第2正孔輸送層上に配された第2有機発光材料層、及び第2有機発光材料層上に配された第2電子輸送層を含んでもよい。
【0077】
第1発光層130a内の第1有機発光材料層と、第2発光層130b内の第2有機発光材料層は、同一波長の光を生じさせる有機物材料を含んでいてもよい。反射層110と第1部分透過ミラー145との光学的距離L1、及び第2部分透過ミラー146と第2電極150との光学的距離L2は、互いに同一であり、第1有機発光材料層及び第2有機発光材料層で生じた光の波長につき、共振モードが形成されるようにも選択される。
【0078】
他の例において、第1発光層130a内の第1有機発光材料層は、第1波長の光を生じさせる有機物材料を含み、第2発光層130b内の第2有機発光材料層は、第1波長と異なる第2波長の光を生じさせる有機物材料を含んでいてもよい。その場合、反射層110と第1部分透過ミラー145との光学的距離L1は、第1波長について、共振モードが形成されるように選択され、第2部分透過ミラー146と第2電極150との光学的距離L2は、第2波長について、共振モードが形成されるように選択されうる。また、位相補正層144の厚みを調節することにより、第1波長と第2波長とのうちから選択されたいずれか1波長について共振モードを有するように、反射層110と第2電極150との光学的距離Lを選択することができる。または、第1及波長及び第2波長と異なる第3波長について共振モードを有するように、補正層144の厚みを調節することもできる。その場合、発光素子240は、マルチカラーの光を放出することができる。
【0079】
図11には、2層の発光層が示されているが、第2発光層130bと第2電極150との間に、さらなる第1部分透過ミラー、位相補正層、第2部分透過ミラー及び発光層がさらに配されうる。その場合、3層の発光層が、互いに異なる波長の光を生じさせることができる。または、3層の発光層が互いに同一波長の光を生じさせることもできる。
【0080】
図16は、さらに他の実施形態による発光素子の構造を概略的に示す断面図である。図16を参照すれば、発光素子250は、第2部分透過ミラー146の上部表面と、第2発光層130bとの間に配される透明導電体層141をさらに含んでもよい。また発光素子250は、第1発光層130aと第2発光層130bとの間に配される電荷生成層142をさらに含んでもよい。図16に示された発光素子250の残り他の構成は、図11に示された発光素子240の構成と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0081】
前述の発光素子は、ディスプレイ装置の複数の画素にも適用される。図17は、一実施形態によるディスプレイ装置の構造を概略的に示す断面図である。図17を参照すれば、ディスプレイ装置1000は、互いに異なる色相の光を放出する複数の画素を含む。ここで、多数の画素は、基板1001の同一平面上において、互いに隣接して配される赤色画素1100、緑色画素1200及び青色画素1300を含んでもよい。図17には、便宜上、赤色画素1100、緑色画素1200及び青色画素1300によって構成された1つの単位画素だけが示されているが、実際においては、基板1001上に非常に多数の赤色画素1100、緑色画素1200及び青色画素1300が反復されて配列される。
【0082】
赤色画素1100は、基板1001上に配された反射層110、反射層110上に配された第1電極120、第1電極120と対向して配された第2電極150、第1電極120と第2電極150との間に配された部分透過ミラー140、第1電極120と部分透過ミラー140との間に配された第1赤色発光層130Ra、部分透過ミラー140と第2電極150との間に配された第2赤色発光層130Rb、及び第2電極150上に配された保護層160を含んでもよい。第1電極120と部分透過ミラー140との光学的距離、及び部分透過ミラー140と第2電極150との光学的距離は、赤色光について、一次以上の共振モードを有するように決定され、第1電極120と第2電極150との光学的距離は、赤色光について、二次以上の共振モードを有するように決定される。
【0083】
緑色画素1200と青色画素1300は、赤色画素1100と類似した構造を有する。緑色画素1200は、赤色発光層130Ra、130Rbの代わりに、第1緑色発光層130Ga及び第2緑色発光層130Gbを含み、青色画素1300は、赤色発光層130Ra、130Rbの代わりに、第1青色発光層130Ba及び第2青色発光層130Bbを含む。緑色画素1200において、第1電極120と部分透過ミラー140との光学的距離、及び部分透過ミラー140と第2電極150との光学的距離は、緑色光について、一次以上の共振モードを有するように決定され、第1電極120と第2電極150との光学的距離は、緑色光について、二次以上の共振モードを有するように決定される。また、青色画素1300において、第1電極120と部分透過ミラー140との光学的距離、及び部分透過ミラー140と第2電極150との光学的距離は、青色光について、一次以上の共振モードを有するように決定され、第1電極120と第2電極150との光学的距離は、青色光について、二次以上の共振モードを有するように決定される。
【0084】
図17には、赤色画素1100、緑色画素1200及び青色画素1300が、図1に示された発光素子200と同一構造を有するように示されているが、必ずしもそれに限定されるものではない。ディスプレイ装置1000は、図1に示された発光素子200だけではなく、他の実施形態による発光素子210,220,230,240,250を、赤色画素1100、緑色画素1200及び青色画素1300に適用することもできる。
【0085】
前述の発光素子とディスプレイ装置は、多様な大きさと多様な用途との装置に、制限なしに適用されうる。例えば、前述の発光素子とディスプレイ装置は、モバイルフォンまたはスマートフォンのディスプレイパネルにも適用され、タブレットまたはスマートタブレットのディスプレイパネルにも適用され、ノート型パソコン、テレビ、スマートテレビのディスプレイパネルにも適用され、あるいはヘッド装着型ディスプレイ、めがね型ディスプレイ、ゴーグル型ディスプレイなどで使用される小型ディスプレイパネルにも適用される。
【0086】
前述の向上された発光効率を有する発光素子、及びそれを含むディスプレイ装置は、図面に示された実施形態を参照して説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該分野で当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解するであろう。従って、開示された実施形態は、限定的な観点ではなく、説明的な観点から考慮されなければならない。権利範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異は、権利範囲に含まれたものであると解釈されなければならないのである。
【符号の説明】
【0087】
110 反射層
120 第1電極
130a,130b 発光層
140,145,146 部分通過ミラー
141 透明導電体層
142 電荷生成層
144 位相補正層
150 第2電極
160 保護層
200,210,220,230,240,250 発光素子
1000 ディスプレイ装置
1001 基板
1100 赤色画素
1200 緑色画素
1300 青色画素
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17