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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135950
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】液処理方法、及び液処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20220908BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20220908BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/72 Z
C02F1/461 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018099
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021033805
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599055382
【氏名又は名称】学校法人東邦大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】井関 正博
(72)【発明者】
【氏名】加茂川 恵司
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 亜麻音
(72)【発明者】
【氏名】江口 栄拠
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D037AA02
4D037AA11
4D037AA12
4D037AA13
4D037BA18
4D037CA04
4D037CA11
4D050AA04
4D050AA13
4D050AA15
4D050AB13
4D050AB19
4D050BB02
4D050BB09
4D050CA07
4D061DA03
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC09
4D061EA03
4D061EB29
4D061EB30
4D061EB31
4D061ED17
(57)【要約】
【課題】処理対象液中に含まれる難分解性物質を、エネルギー効率が高く、有害な中間生成物を生じずに処理することができる液処理方法及び液処理装置の提供。
【解決手段】難分解性物質を含む処理対象液に対して、紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射工程と、前記紫外線照射工程の後に、前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する物理化学的な分解工程と、を有する液処理方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
難分解性物質を含む処理対象液に対して、紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程の後に、前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する物理化学的な分解工程と、
を有することを特徴とする液処理方法。
【請求項2】
前記紫外線照射工程における、紫外線の照射時間が15分間以上60分間以下である、請求項1に記載の液処理方法。
【請求項3】
前記難分解性物質が、有機フッ素化合物、環状エーテル、有機ハロゲン化合物、医薬品、及び農薬の少なくともいずれかである、請求項1から2のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項4】
前記物理化学的手法が、電気分解、促進酸化、及び紫外線照射と電気分解とを同時に行う処理のいずれかである、請求項1から3のいずれかに記載の液処理方法。
【請求項5】
難分解性物質を含む処理対象液に対して、紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射手段と、
前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する物理化学的な分解手段と、
を有することを特徴とする液処理装置。
【請求項6】
前記物理化学的な分解手段が、紫外線の照射と電気分解を同時に行う併用手段である、請求項5に記載の液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液処理方法、及び液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS:Perfluorooctanesulfonic acid)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA:Perfluorooctanoic acid)等の有機フッ素化合物は、テフロン(登録商標)製造時の乳化剤等の界面活性体や半導体工場の廃水等に含まれる難分解性物質である。前記有機フッ素化合物は、安定的なC-F結合の構造を有するため、微生物でも分解不可能な難分解性であることや高い生体蓄積性があることが知られており、発がん作用をはじめとした有害性が報告されている。PFOS及びPFOAに関する規制において、現在も議論されているが、現状では環境中の濃度が基準値以下となるよう希薄化されたうえで、工場排水等として河川に排出されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
同様に難分解性物質である医薬品において、医薬品メーカーから出る排水処理では医薬品が除去しきれないことが問題となっている。また、抗生物質等の医薬品は、化粧品や塗り薬等の洗い流し後の排水、抗生物質を服薬している患者の排泄後の排水中に含まれており、環境中の微生物を殺し耐性菌を生むという悪循環を助成しているとの問題がある。
【0004】
前記有機フッ素化合物、前記医薬品などの難分解性物質は、活性汚泥法などの生物的手法が有効ではないため、UV照射、電気分解などの物理化学的手法が研究されており、処理対象液に含まれる難分解性物質の分解において、紫外線の照射と電気分解とを同時に行う方法等が挙げられる(例えば、特許文献1、非特許文献2参照)。
しかしながら、前記物理化学的手法は、エネルギー消費が大きい、有害な中間生成物が生じる可能性があるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】経済産業省:ストックホルム条約第9回締約国会議(COP9),2019年5月14日(https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/files/pops/SCCOP9.pdf)
【非特許文献2】D. Montanaro et al.,UV-assisted electrochemical degradation of coumarin on boron-doped diamond electrodes,Chemical Engineering Journal,323,2017,512-519
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-157256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、処理対象液中に含まれる難分解性物質を、エネルギー効率が高く、有害な中間生成物を生じずに処理することができる液処理方法及び液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、難分解性物質を含有する処理対象液に対して紫外線を照射する紫外線照射工程を行った後に、前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する物理化学的な分解工程を行うことで、前記難分解性物質の分解量が上昇することを知見した。さらに、本発明では、前記難分解性物質を無機化(二酸化炭素と水に分解)することができる。
また、本発明者らは、紫外線照射工程によって、前記難分解性物質を中間生成物に分解することで、前記処理対象液中にイオン(一般的には、カルボン酸イオン)が増加し、その後の物理化学的な分解工程として、例えば、電気分解を行うことで、電解(定電流電解)時の電圧の低下、導電率の上昇が起こるため、電気分解のみを行うよりもエネルギー効率が高くなることを知見した。即ち、紫外線を照射して前記難分解性物質を中間生成物に分解し、その後、ヒドロキシラジカル等のラジカル種を用いた分解を行うことで、より少ないエネルギーで前記難分解性物質を無機化できることを知見した。
また、先行技術では、紫外線の照射と電気分解とを同時に行うため、エネルギー(例えば、電力)を消費し、前記難分解性物質の分解におけるエネルギー効率が低いという問題があった。これに対して、本発明は、紫外線照射工程と物理化学的な分解工程とを同時に行う必要がないため、前記難分解性物質の分解において、高いエネルギー効率を得ることができる。
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 難分解性物質を含む処理対象液に対して、紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程の後に、前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する物理化学的な分解工程と、
を有することを特徴とする液処理方法である。
<2> 前記紫外線照射工程における、紫外線の照射時間が15分間以上60分間以下である前記<1>に記載の液処理方法である。
<3> 前記難分解性物質が、有機フッ素化合物、環状エーテル、有機ハロゲン化合物、医薬品、及び農薬の少なくともいずれかである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の液処理方法である。
<4> 前記物理化学的手法が、電気分解、促進酸化、及び紫外線照射と電気分解とを同時に行う処理のいずれかである、前記<1>から<3>のいずれかに記載の液処理方法である。
<5> 難分解性物質を含む処理対象液に対して、紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する紫外線照射手段と、
前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する物理化学的な分解手段と、
を有することを特徴とする液処理装置である。
<6> 前記物理化学的な分解手段が、紫外線の照射と電気分解を同時に行う併用手段である、前記<5>に記載の液処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、処理対象液中に含まれる難分解性物質を、エネルギー効率が高く、有害な中間生成物を生じずに処理することができる液処理方法及び液処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の液処理装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の液処理方法を用いたときの難分解性物質を分解するまでの反応経路の一例を示す概略図である。
図3A図3Aは、実施例1から3、比較例1及び2における0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、210分間、240分間、及び300分間における処理対象液中のジクロフェナクナトリウムの濃度比率(%)を示す概略図である。
図3B図3Bは、実施例1から3、比較例1及び2における0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、210分間、240分間、270分間、及び300分間における処理対象液中のTOCの濃度比率(%)を示す概略図である。
図3C図3Cは、実施例1から3、比較例1及び2のジクロフェナクナトリウムの分解における、分解開始から300分後のエネルギー効率を示す概略図である。
図4A図4Aは、実施例1から3、比較例1及び2における0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、210分間、240分間、及び300分間における処理対象液中のジクロフェナクナトリウムの濃度比率(%)を示す概略図である。
図4B図4Bは、実施例4及び5、比較例3における0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、210分間、240分間、270分間、及び300分間における処理対象液中のTOCの濃度比率(%)を示す概略図である。
図4C図4Cは、実施例4及び5、比較例3のジクロフェナクナトリウムの分解における、分解開始から300分後のエネルギー効率を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(液処理方法、及び液処理装置)
本発明の液処理方法は、難分解性物質を含む処理対象液の前記難分解性物質を分解する液処理方法であって、紫外線照射工程と、物理化学的な分解工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
本発明の液処理装置は、紫外線照射手段と、物理化学的な分解手段とを少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の手段を含む。
【0013】
<難分解性物質>
前記難分解性物質とは、前記処理対象液中に含まれる物質であって、前記処理対象液が排水である場合は、従来から行われている活性汚泥法などの微生物を用いた手法では分解することができない物質のことである。
前記難分解性物質としては、例えば、有機フッ素化合物、環状エーテル、有機ハロゲン化合物、医薬品、農薬などが挙げられる。
【0014】
前記有機フッ素化合物とは、炭素(C)-フッ素(F)結合を有する有機化合物のことであり、例えば、ペルフルオロオクタンスルホン酸、ペルフルオロオクタン酸などが挙げられる。
【0015】
前記環状エーテルとは、エーテル結合を含む環状の有機化合物であり、例えば、1,4-ジオキサン、イソベンゾフラン、エポキシド、クラウンエーテル、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ピラン、フランなどが挙げられる。
【0016】
前記医薬品及び前記農薬としては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、承認を受けたものである。
【0017】
前記医薬品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジクロフェナク、メトプロロール、クラリスロマイシンなどが挙げられる。
【0018】
前記農薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ネオニコチノイド系農薬などが挙げられる。
【0019】
<処理対象液>
前記処理対象液としては、前記難分解性物質を含有する液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲料水、下水処理水、工業排水、医薬品メーカーから排出される排水などが挙げられる。
前記処理対象液中の前記難分解性物質の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1mg/L以上が好ましい。濃度が低い場合は、前段に濃縮する手段を設けることができる。
【0020】
<紫外線照射工程、及び紫外線照射手段>
前記紫外線照射工程としては、前記処理対象液に対して、紫外線を照射して、前記難分解性物質を分解する工程である。前記紫外線照射工程としては、前記紫外線照射手段によって行うことができる。
【0021】
前記紫外線の波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10nm以上400nm以下が好ましい。
前記紫外線を、前記被処理水に照射することで、前記被処理水に含まれる難分解性物質を中間生成物に分解することができる。また、前記難分解性物質は、前記紫外線を照射することで、前記中間生成物を形成せずに無機物(CO及びHO)に分解されてもよい。
【0022】
前記紫外線の照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5時間以上1時間以下が好ましい。前記照射時間が0.5時間以上であると、前記難分解性物質を分解することができ、前記照射時間が1時間以下であると、高いエネルギー効率が得られる。
【0023】
前記紫外線を照射する装置としては、前記波長の紫外線を照射することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UV-C(三共電気株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
<物理化学的な分解工程、及び物理化学的な分解手段>
前記物理化学的な分解工程としては、前記紫外線照射工程の後に、前記難分解性物質を物理化学的手法によって分解する工程である。前記物理化学的な分解工程としては、前記物理化学的な分解手段によって行うことができる。
【0025】
前記物理化学的手法とは、ヒドロキシラジカルを発生させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電気分解、促進酸化、紫外線照射と電気分解とを同時に行う処理(以下、「併用処理」と称することがある)などが挙げられる。なお、電気分解の場合は、電極上での直接酸化の効果も期待できる。
なお、前記物理化学的手法として、前記併用処理を行う場合であっても前記物理化学的な分解工程の前に前記紫外線照射工程を行うことが好ましい。これにより、前記紫外線照射工程を行わずに前記併用処理のみを行う場合よりも、前記難分解性物質の無機化のエネルギー効率が高くなる。
【0026】
前記電気分解における陽極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、BDD電極(Boron Doped Diamond電極)、白金電極、酸化鉛電極、酸化スズ電極、酸化タンタル電極、DSA電極(白金族金属酸化物型電極)などが挙げられる。これらの中でも、通常の電極では行うことができない酸化還元反応を行うことができる点から、BDD電極が好ましい。
前記BDD電極は、絶縁体のダイヤモンドが含まれており、ホウ素をドーピングすることで電気伝導性が付与されている。前記BDD電極は、電位窓が広いことから、通常の電極では行うことができない酸化還元反応を行うことができる。
【0027】
前記陰極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Pt電極(白金電極)、グラッシーカーボン電極等の炭素系電極などが挙げられる。これらの中でも、酸素を還元して過酸化水素を生成する能力に優れるグラッシーカーボン電極等の炭素系電極が好ましい。
【0028】
前記促進酸化(Advanced Oxidation Process:AOP法)としては、ヒドロキシラジカルを発生させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、過酸化水素(H)と紫外線(hν)とを組み合わせて発生させる方法、過酸化水素(H)とオゾン(O)とを組み合わせて発生させる方法、紫外線とオゾン(O)とを組み合わせて発生させる方法などが挙げられる。
【0029】
図1は、本発明の液処理装置における前記物理化学的な分解手段としての電気分解の一例を示す概略図である。
本発明の液処理装置10としては、例えば、図1に記載のとおり処理対象液11に含まれる難分解性物質を分解するために、前記物理化学的な分解手段として、陽極12及び陰極13と、前記陽極12及び陰極13が接続されている電源14と、紫外線照射装置15と、を有する。
前記紫外線照射装置15から、紫外線を照射することで、前記処理対象液中の前記難分解性物質を分解することができる。
【0030】
図2は、本発明の液処理方法の物理化学的な分解工程としての電気分解における難分解性物質を分解するまでの反応経路の一例を示す概略図である。
図2に示すとおり、陰極では、陽極から発生した酸素を含む気体(例えば、酸素O)の下記式(1)の反応によって、過酸化水素(H)が発生する。
[式(1)]
+2H+2e→H・・・式(1)
陽極では、水(HO)の下記式(2)の反応によって、オゾン(O)が発生する。
[式(2)]
3HO→O+6H+6e・・・式(2)
【0031】
前記陰極で発生した過酸化水素(H)と、前記陽極で発生したオゾン(O)との下記式(3)の反応によって、ヒドロキシラジカル(・OH)が発生する。前記ヒドロキシラジカルは、活性酸素の一種であり、オゾン(O)よりも強力な酸化力を有する。
[式(3)]
+2O→2・OH+3O・・・式(3)
前記ヒドロキシラジカルは、微生物では分解することができない、難分解性物質及びその分解における中間生成物を分解して、無機物を生成することができる。また、反応速度が速いため、反応時間を短縮することができることから、高いエネルギー効率を得ることができる。
【0032】
前記陽極では、下記式(4)の反応によって、直接酸化による難分解性物質(R)の分解も起こる。
[式(4)]
R→ROH→ROOH→HO+CO・・・式(4)
【0033】
<その他の工程及びその他の手段>
前記その他の工程及びその他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機化確認工程などが挙げられる。
【0034】
前記無機化確認工程としては、前記物理化学的な分解工程後の前記処理対象液中における前記難分解性物質が無機化されていることを確認する工程であり、例えば、全有機体炭素計を用いて前記難分解性物質が無機化されていることを測定することができる。
【0035】
前記全有機体炭素計は、前記処理対象液中に存在する有機物の総量を、有機物に含まれる炭素量で示したものであり、「水の汚れ」を示す指標の一つとして用いられる。
前記全有機体炭素計としては、特に制限はなく、目的に応じて選択することができ、例えば、TOC-L(島津製作所製)などを用いることができる。
【実施例0036】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0037】
<難分解性物質を含む処理対象液の調製例1>
難分解性物質としてのジクロフェナクナトリウム(和光純薬工業株式会社製、濃度:>98.0%)1gを電子天秤で量り、1000mLメスフラスコを用いて超純水で1000mLに定容した(以下、1g/Lジクロフェナクナトリウム水溶液と称する)。次に、電解質としての過塩素酸ナトリウム一水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)14.046gを電子天秤で量り、1000mLメスフラスコを用いて超純水で1000mLに定容した(以下、0.1MのNaClO水溶液と称する)。
得られた1g/Lジクロフェナクナトリウム水溶液と、0.1MのNaClO水溶液をそれぞれ100mLメスフラスコで量り、1000mLメスフラスコを用いて超純水で1000mLに定容し、ジクロフェナクナトリウムを含む処理対象液(100mg/Lジクロフェナクナトリウム+0.01MNaClO水溶液)を調製した。
【0038】
(実施例1)
1Lビーカー中に50mmの撹拌子(スターラー)と、調製例1の難分解性物質を含む処理対象液を入れ、電極及び紫外線ランプ(波長:254nm、UV-Cランプ、三共電気株式会社製)を前記処理対象液中に浸し、ビーカーの周りをアルミホイルで覆った。電極としては、陽極にBDD電極(5cm×4cm、基体:Nb、端子棒:Nb、デノラ・ペルメレック株式会社製)、陰極にPt電極(5cm×4cm、基体:Ti、端子棒:Ti、デノラ・ペルメレック株式会社製)をそれぞれ用いて、前記陽極と前記陰極との電極間距離は5mmとした。
図1は、実施例1に用いた装置の模式図の一例を示す概略図である。
次に、撹拌子の回転数300rpmで前記処理対象液を攪拌しながら、下記紫外線照射条件で紫外線照射工程を30分間行い、その後、下記電気分解条件で物理化学的な分解工程としての電気分解を270分間行い、難分解性物質の分解を行った。
[紫外線照射条件]
・紫外線ランプ :UV-Cランプ(波長:254nm)
・ランプの定格消費電力 :6.3W
・紫外線照射時間 :30分間
・スターラーの回転数 :300rpm
[電気分解条件]
・電流密度 :20mA/cm
・電極間距離 :5mm
・陽極 :BDD電極
・陰極 :Pt電極
・時間 :270分間
・スターラーの回転数 :300rpm
【0039】
(実施例2)
実施例1において、紫外線照射工程における紫外線照射時間を「30分間」から「15分間」に変更した以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0040】
(実施例3)
実施例1において、紫外線照射工程における紫外線照射時間を「30分間」から「60分間」に変更した以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0041】
(比較例1)
実施例1において、紫外線照射工程のみを300分間行った以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0042】
(比較例2)
実施例1において、電気分解のみを300分間行った以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0043】
実施例1から3、比較例1及び2について、以下のようにして、分解開始から0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、240分間及び300分間の「ジクロフェナクナトリウムの分解量」、「ジクロフェナクナトリウムの分解におけるエネルギー効率」、「TOCの分解量」及び「TOCの分解におけるエネルギー効率」を評価した。
【0044】
<ジクロフェナクナトリウムの分解量>
実施例1から3、比較例1及び2において、分解開始から0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、240分間及び300分間毎に、処理対象液2mLを採取し、メンブレンフィルターでろ過後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、下記分析条件にて各時間経過後の処理対象液中におけるジクロフェナクナトリウムの濃度を測定した。各時間における処理対象液中のジクロフェナクナトリウムの濃度比率(%)を図3Aに示す。
[分析条件]
・測定波長 :276nm
・移動相 :0.1%ギ酸:アセトニトリル=40:60
・流速 :0.5mL/min
・カラム :Kinetex EVO C18(粒径:5μm,150mm×4.6mm)
・カラム温度 :40 ℃
【0045】
測定したジクロフェナクナトリウムの濃度から、下記式(5)に基づき、ジクロフェナクナトリウムの分解量を算出した。結果を表1に示す。また、各時間における処理対象液中のジクロフェナクナトリウムの濃度の比率(C/C)(%)を図3Aに示す。
ジクロフェナクナトリウムの分解量(mg/L)=C-C・・・式(5)
上記式(5)において、Cは、反応開始から0分後のジクロフェナクナトリウムの濃度(mg/L)を表し、Cは、反応開始から各時間経過後のジクロフェナクナトリウムの濃度(mg/L)を表す。
【0046】
<TOCの分解量>
実施例1から3、比較例1及び2において、分解開始から0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、240分間及び300分間毎に、処理対象液2mLを採取し、10倍希釈を行った後、全有機体炭素量計TOC-L(島津製作所製)を用いて、各時間経過後の処理対象液中におけるTOC(全有機炭素)の濃度を測定した。
【0047】
測定したTOCの濃度、及び下記式(7)に基づき、TOCの分解量を算出した。結果を表1に示す。また、各時間における処理対象液中のTOCの濃度比率(TOC/TOC)(%)を図3Bに示す。
TOCの分解量(mg/L)=TOC-TOC・・・式(7)
上記式(7)におけるTOCは、反応開始から0分後のTOCの濃度を表し、TOCは、反応開始から各時間経過後のTOCの濃度を示す。
【0048】
<TOCの分解におけるエネルギー効率>
算出したTOCの分解量から、下記式(8)に基づき、分解開始から300分後のTOCの分解におけるエネルギー効率を算出した。結果を表1及び図3Cに示す。
エネルギー効率(mg/Wh)=(C-C300)×V/E・・・式(8)
上記式(8)において、Cは、反応開始から0分後のTOCの濃度(mg/L)を表し、C300は、反応開始から300分後のTOCの濃度(mg/L)を表し、Vは溶液量(L)を表し、Eは消費電力量(Wh)を表す。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例4)
実施例1において、紫外線照射工程を30分間行った後に、紫外線照射と電気分解とを同時に行う処理(以下、併用処理と称することがある)を270分間行った以外は、実施例1と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0051】
(実施例5)
実施例4において、紫外線照射工程を60分間行った後に、併用処理を240分間行った以外は、実施例4と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
(比較例3)
実施例4において、紫外線照射工程を行わずに、併用処理を300分間行った以外は、実施例4と同様にして、難分解性物質の分解を行った。
【0052】
実施例4及び5、比較例3について、実施例1と同様にして、分解開始から0分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、180分間、240分間、及び300分間の「ジクロフェナクナトリウムの分解量」、「TOCの分解量」及び「TOCの分解におけるエネルギー効率」を評価した。評価結果を、表2、図4Aから図4Cに示す。
【0053】
【表2】
【符号の説明】
【0054】
10 液処理装置
11 処理対象液
12 陽極
13 陰極
14 電源
15 紫外線照射装置
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C