(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135961
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】印刷されテクスチャ加工された抗微生物特性を有する表面及びその方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/50 20140101AFI20220908BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20220908BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220908BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C09D11/50
B05D1/28
B05D7/24 301M
C09D5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022809
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】17/193,176
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・エム.・ファルジア
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン・チョプラ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4D075BB42Z
4D075CA45
4D075CB33
4D075EA33
4D075EB22
4D075EB45
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC10
4D075EC33
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4J038DB232
4J038DH002
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4J038FA111
4J038HA066
4J038HA166
4J038JB01
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4J038NA27
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4J038PB07
4J039AD09
4J039AD21
4J039BA06
4J039BA12
4J039BA30
4J039BA31
4J039BA35
4J039BA39
4J039BC20
4J039BC33
4J039BE19
4J039BE23
4J039BE27
4J039CA07
4J039EA05
4J039EA46
4J039GA07
4J039GA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】テクスチャ加工され印刷された抗細菌性又は抗微生物性コーティングを提供する。
【解決手段】抗微生物性コーティング組成物は、1つ以上の架橋ポリマーと、光開始剤と、ワックスと、ゲル化剤と、抗微生物性添加剤と、を含み得る、少なくとも1つの硬化相変化インクを含む。組成物はまた、硬化相変化インクによって形成された、工学設計された表面トポグラフィも含む。テクスチャ加工された抗微生物性表面を調製する方法も開示される。本方法は、テクスチャを有するテンプレートを設計することと、未硬化抗微生物性インクを使用して、テンプレートを基材上に印刷することと、未硬化抗微生物性インクを架橋するための光源を提供することと、を含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗微生物性コーティング組成物であって、
(a)硬化相変化インクであって、
架橋ポリマー、
光開始剤、
ワックス、
ゲル化剤、及び
抗微生物性添加剤を含む、硬化相変化インクと、
(b)前記硬化相変化インクによって形成された、工学設計された表面トポグラフィと、を含む、抗微生物性コーティング組成物。
【請求項2】
前記架橋ポリマーが、前記抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約4.0%~約80.0%の量で、1つ以上のアクリレートモノマーを更に含む、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項3】
前記1つ以上のアクリレートモノマーが、二官能性アクリレートモノマー、三官能性アクリレートモノマー、四官能性アクリレートモノマー、及び五官能性アクリレートモノマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項4】
前記抗微生物性コーティング組成物が、五官能性アクリレートモノマー及び二官能性アクリレートモノマーを更に含む、請求項2に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項5】
前記ワックスが、前記抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約2.5%~約15%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項6】
前記ゲル化剤が、前記抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約2.5%~約15.0%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項7】
前記ゲル化剤が、放射線硬化性ゲル化剤を含む、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項8】
前記抗微生物性添加剤が、前記抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約0.01%~約5.00%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項9】
前記抗微生物性添加剤が、金属ナノ粒子、イオン性ポリマー金属複合ナノ粒子、四級アンモニウム化合物、N-ハラミン分子、ビグアニド、金属酸化物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項10】
前記抗微生物性添加剤が、銀ナノ粒子を含む、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項11】
前記抗微生物性添加剤が、四級アンモニウム化合物を含む、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項12】
前記工学設計された表面トポグラフィが、約5~約50の工学設計された粗さ指数(ERI)を有する、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項13】
前記工学設計された表面トポグラフィが、約1~約5000nm離間された突出形状を含む、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項14】
前記工学設計された表面トポグラフィが、約10~約5000nmの高さを有する突出形状を含む、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項15】
前記工学設計された表面トポグラフィが、約2~約40の実際の表面積と幾何学的表面積との比を有する、請求項1に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項16】
抗微生物性コーティング組成物であって、
架橋ポリマーと、
抗微生物性添加剤と、
工学設計された表面トポグラフィと、を含む、抗微生物性コーティング組成物。
【請求項17】
前記抗微生物性添加剤が、銀ナノ粒子を更に含む、請求項16に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項18】
前記抗微生物性添加剤が、四級アンモニウム化合物を更に含む、請求項16に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項19】
前記工学設計された表面トポグラフィが、約5~約50の工学設計された粗さ指数(ERI)を有する、請求項16に記載の抗微生物性コーティング組成物。
【請求項20】
テクスチャ加工された抗微生物性表面を調製する方法であって、
テクスチャを含むテンプレートを設計することと、
未硬化抗微生物性インクを使用して、前記テンプレートを基材上に印刷することと、
前記未硬化抗微生物性インクを架橋するための光源を提供することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、印刷された抗細菌性又は抗微生物性コーティングに関し、より具体的には、テクスチャ加工され印刷された抗細菌性又は抗微生物性コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
材料表面への細菌及びバイオフィルムの付着は、表面のトポグラフィ及び粗さによって大きく影響を受ける。表面への細菌付着は、疎水性、ファンデルワールス力、静電相互作用、及び立体障害などの、多くの要因によって影響され得る。サメの皮、ハスの葉、及びトンボの翅などの、自然界に存在する表面は全て、これらの要因のうちのいくつかに応じて、いくらかの種類の殺菌特性又は抗微生物特性を示す。例えば、トンボの翅は、いくつかの細菌株の成長を阻害するナノスケールのピラー構造を示し、一方、ハスの葉は、超疎水性及び自己洗浄特性を促進するナノスケール及びマイクロスケールの階層構造の両方を有する。サメの皮パターンは、ダイヤモンド様リブレットの外観を有し、これは、抵抗低減及び自己洗浄のために完全に設計されている。これらの自然界に存在する表面及び特性の発見及び研究を通して、多くの研究者らは、生体模倣を探索して、ドアノブ、ベッド又は階段の手すり、タッチスクリーンモニタ、携帯電話などの接触機会の多い表面を含む無生物表面上での細菌汚染の阻害を助ける。現在、感染症が増加し、抗生物質耐性が蔓延していることから、これらの接触機会の多い表面のための新しいコーティングは、特に病院、医療診療所、又は歯科医院などの医療関連の環境において非常に有利である。また、飛行機及びクルーズ船内においても、表面及び物体との接触を通した細菌及び真菌汚染に関する継続的な問題も存在する。例えば、胃腸炎に罹患している個人は、手すり、共有器具、エレベータボタンなどに触れることによって病気を容易に拡散し得る。場合によっては、汚染は、ノロウイルスによって引き起こされるクルーズ船で発生した胃腸炎、又は大腸菌及びサルモネラの特定の株に起因する食中毒の発生の場合、特に致命的になる可能性がある。別の細菌、Staphylococcus aureusは、多くの病気及び皮膚刺激の主要な原因である。抗生物質のメチシリン及びこの種類の他の薬剤に耐性を有するメチシリン耐性(MRSAとして既知)であるStaphylococcus aureusの種類が存在する。
【0003】
生体模倣に基づく抗微生物性コーティングの一例は、抗微生物特性を増強するために材料の表面に突出及び陥凹しているダイヤモンドパターンを有するマイクロパターンの均一な幅を提供する市販製品で見出すことができる。これらのマイクロ構造は、シリコンウェーハモールドが、階層設計及び工学設計された粗さ指数で複製され得るフォトリソグラフィを使用することによってシリコンで製作される。これらのパターン化された表面は、コーティング全体にわたって繰り返され、次いで表面に取り付けられる。いくつかの市販のマイクロパターン化表面の使用によって、24時間のインキュベーション期間後に、平滑なフィルムと比較して、グラム陰性細菌(Escherichia coli)が最大55%、コロニーサイズが76%低減したことがもたらされたことに留意されたい。この研究及び他の研究は、パターン化された表面が、十分な時間の後に、表面に細菌蓄積をもたらすことを見出した。マイクロトポグラフィ単独では、汚損及び細菌蓄積を低減させない。
【0004】
自然界に存在する表面を複製するための追加の手法としては、電子ビーム、X線、及びナノインプリントリソグラフィなどのリソグラフィ方法が挙げられる。前述のように、リソグラフィは、マスターから表面パターンを複製し、それを別の表面に転写することを伴う。これらのリソグラフィ技術のうちのいくつかは、大規模なナノ構造の製作が、壁及び机などの広い領域を被覆するのに必要である場合、時間及び費用を要する可能性がある。他の製作方法は、マイクロスケール構造又はフェムト秒レーザに限定され得る真空キャストを使用することができ、これは、マイクロ及びナノ構造表面パターンが、チタン基材上に直接製作され得る整形外科用インプラントに使用される有望な方法である。従来のコーティング技術はまた、フィルムを表面に接着させるために接着剤バッキングを必要とし、カスタム測定、切断操作、及びコーティング又はフィルムの無生物表面への応用も費用を要する。
【0005】
したがって、コーティングの有効性を増強するために、銀ナノ粒子などの抗微生物性剤を添加して配合され得る多機能性コーティングに対する必要性が存在する。必要に応じて、ピッチ、高さ、幅、及び他のパラメータをインラインで変更しながら、デジタル手段を介して、コーティングされた表面全体にわたる様々なパターンの追加の形状は、フォトリソグラフィの使用では達成できない利点及び迅速な作業時間を提供するであろう。プレパターン化された接着剤コーティングを製作するのではなく、無生物表面に様々なパターン又は異なるパターンの領域を直接印刷する能力によって、コスト削減及び他の利点ももたらされるであろう。更に、従来の製作方法を使用する代わりに、必要に応じてスタンプモールドを印刷する能力も、モールドのデジタル計画及び印刷が、マイクロトポグラフィパターンをインプリントするために必要な逆構造を得るための、混合、注入、オーブン硬化、及びソフトモールドのマスターモールドからの剥離よりも速いので、かなりの時間及びコストを削減するであろう。
【発明の概要】
【0006】
以下は、本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、簡略化された概要を提示する。この概要は、広範な概略ではなく、本教示の主要又は重要な要素を特定することも、本開示の範囲を明示することも意図していない。むしろ、その主な目的は、単に、後に提示される詳細な説明の前置きとして、1つ以上の概念を簡略化された形式で提示するだけである。
【0007】
抗微生物性組成物が開示される。抗微生物性コーティング組成物は、1つ以上の架橋ポリマー、光開始剤、ワックス、ゲル化剤、及び抗微生物性添加剤を含み得る、少なくとも1つの硬化相変化インクを含む。組成物はまた、硬化相変化インクによって形成される、工学設計された表面トポグラフィも含む。
【0008】
特定の実装形態は、抗微生物性コーティング組成物を含み得、そこで、1つ以上のアクリレートモノマーが、抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約4.0%~約80.0%の量で存在する。これらの1つ以上のアクリレートモノマーとしては、二官能性アクリレートモノマー、三官能アクリレートモノマー、四官能性アクリレートモノマー、及び五官能性アクリレートモノマー、又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。抗微生物性コーティング組成物は、五官能性アクリレートモノマー及び二官能性アクリレートモノマーを更に含み得る。ワックスは、抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約2.5%~約15%の範囲の量で存在し得る。ワックスとしては、架橋性アクリレートワックスを更に挙げることができる。ゲル化剤は、抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約2.5%~約15.0%の範囲の量で存在する。ゲル化剤としては、放射線硬化性ゲル化剤が挙げられ得る。放射線硬化性ゲル化剤としては、更に、アミドゲル化剤が挙げられ得る。抗微生物性添加剤は、抗微生物性コーティング組成物の総重量に基づいて、約0.01%~約5.00%の範囲の量で存在し得る。抗微生物性添加剤としては、金属ナノ粒子、イオン性ポリマー金属複合ナノ粒子、四級アンモニウム化合物、n-ハラミン分子、ビグアニド、金属酸化物、又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。抗微生物性添加剤としては、銀ナノ粒子が挙げられ得る。抗微生物性組成物の特定の実施形態は、約5~約50の工学設計された粗さ指数(ERI)を有する工学設計された表面トポグラフィを含み得る。工学設計された表面トポグラフィは、約10~約5000nmの高さを有するか、又は約2~約40の実際の表面積と幾何学的表面積との比を有する、約1~約5000nm離間された突出形状を含み得る。
【0009】
テクスチャ加工された抗微生物性表面を調製する方法が開示される。本方法は、テクスチャを有するテンプレートを設計することと、未硬化抗微生物性インクを使用して、テンプレートを基材上に印刷することと、未硬化抗微生物性インクを架橋するための光源を提供することと、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を示し、説明と共に本教示の原理を説明する役割を果たす。
【0011】
【
図1】実施形態による、転写ロールプロセスを使用して、抗微生物性インクを基材に塗布するためのプロセスを示す概略図である。
【0012】
【
図2A】実施形態による、抗微生物特性を有する印刷されテクスチャ加工された表面を作成するための代替的な方法を示すいくつかのフロー図である。
【
図2B】実施形態による、抗微生物特性を有する印刷されテクスチャ加工された表面を作成するための代替的な方法を示すいくつかのフロー図である。
【
図2C】実施形態による、抗微生物特性を有する印刷されテクスチャ加工された表面を作成するための代替的な方法を示すいくつかのフロー図である。
【0013】
図のいくつかの詳細は簡略化されており、厳密な構造精度、詳細、及び縮尺を維持するのではなく、実施形態の理解を容易にするために示されていることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、本開示の実施形態を詳細に参照する。以下の説明は、単なる例示である。
【0015】
以下の説明では、その一部をなし、本教示を実践することができる特定の例示的な実施形態を実例として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本教示を実施することを可能にするために十分詳細に記載され、他の実施形態が利用され得ること、及び本教示の範囲から逸脱することなく変更が行われ得ることが理解される。したがって、以下の記述は、単なる例示に過ぎない。
【0016】
本明細書の開示の実施形態は、この点に関して限定されるものではないが、本明細書で使用するとき、「複数(plurality)」及び「複数(a plurality)」という用語は、例えば、「多数の(multiple)」又は「2つ以上の(two or more)」を含み得る。「複数(plurality)」又は「複数(a plurality)」という用語は、2つ以上の構成要素、デバイス、要素、ユニット、パラメータなどを説明するために、本明細書全体を通して使用され得る。例えば、「複数の抵抗器」は、2つ以上の抵抗器を含み得る。
【0017】
本明細書で使用される場合、量に関連して使用される「約」という修飾語は、記述された値を含み、文脈によって規定される意味を有する(例えば、それは、少なくとも特定の量の測定に関連する誤差の程度を含む)。実施形態では、関心対象の用語は、記載された値から約10%未満の変動を含む。範囲の文脈で使用される場合、「約」という修飾語は、2つの終点の絶対値によって定義される範囲を開示するものとしてもみなされるべきである。例えば、「約2~約4」という範囲は、「2~4」という範囲も開示する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アクリル酸銀(複数可)」などの「金属アクリレート(複数可)」は、ポリマーに使用される銀原子などの少なくとも1つの金属原子を含むアクリレートモノマー、例えば、銀を含むポリマー用のモノマーであるアクリル酸銀及びメタクリル酸銀などの集合体である。
【0019】
本明細書で使用される場合、「抗細菌性」という用語は、細菌の成長を阻害又は破壊するための組成物の特性を指す。言い換えれば、抗細菌特性を含むインク又はインク構成成分は、細菌を死滅させるのに有効であるか、又は印刷された画像又は構造として含む細菌の成長又は増殖を阻害するのに有効である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「抗微生物性」という用語は、微生物(microorganism)又は微生物(microbe)の成長を死滅又は阻害する薬剤、又は薬剤によって付与される特性を指す。抗細菌性剤又はその特性は、抗微生物性剤である。微生物としては、例えば、細菌、真菌、藻類、他の単細胞生物、原生生物、線虫、寄生虫、他の多細胞生物、他の病原体などが挙げられる。言い換えれば、抗微生物特性を含むインク又はインク構成成分は、微生物を死滅させるのに有効であるか、又は印刷された画像又は構造として含む微生物の成長及び増殖を阻害するのに有効である。
【0021】
「銀ナノ粒子」で使用される場合、「ナノ」という用語は、約1000ナノメートル(nm)未満の粒子径を示す。実施形態では、銀ナノ粒子は、約0.5nm~約1000nm、約1nm~約500nm、約1nm~約100nm、約1nm~約20nmの粒子径を有する。粒子径は、本明細書では、TEM(透過型電子顕微鏡法)によって決定されるような、銀ナノ粒子の平均直径として定義される。実施形態では、複合ナノ粒子は、約10~約600ナノメートル、又は約10~約300ナノメートル、又は約10~約200ナノメートルの体積平均粒子直径(D50)を有する。
【0022】
ポリマーは、重合後に、モノマーが変化して元の反応物と同一でなくなったとしても、ポリマーを構成するために使用される2つ以上の構成モノマーによって、本明細書で特定又は命名され得る。したがって、例えば、ポリエステルは、多くの場合、ポリ酸モノマー又は構成成分、及びポリアルコールモノマー又は構成成分からなる。したがって、トリメリット酸反応物が、ポリエステルポリマーを作製するために使用される場合、得られたポリエステルポリマーは、トリメリットポリエステルとして本明細書で特定され得る。また、ポリマーは、スチレンモノマー及びアクリレートモノマーからなり得、その場合、重合されると、使用されるモノマーに基づいて特定され得る。したがって、アクリレートがブチルアクリレートである場合、得られたポリマーは、スチレンポリマー、ブチルアクリレートポリマー、スチレン/アクリレートポリマーなどと称され得る。
【0023】
2-Dなどの「二次元」又はその文法形態は、機械的測定デバイスを使用せずに、実質的に測定可能な又は識別可能な深度を有さない構造又は表面に関連することを意味する。一般的に、表面は平坦であると特定され、高さ及び幅を強調し、深さ又は厚さの錯覚を欠いている。したがって、例えば、トナーが表面に塗布されて、画像又はコーティングを形成し、一般的に、溶融トナーの層は、厚さ約1マイクロメートル(μm)~約10μmである。それにもかかわらず、平坦な表面へのトナーの塗布は、本明細書では二次元用途としてみなされる。表面は、例えば、シート又は紙であり得る。この定義は、分子レベルでの数学的又は科学的定義であることを意味するものではなく、視認者又は観察者の眼に対するものであり、厚さの錯覚は存在しない。表面上の「隆起レタリング」を提供するものとして特定され得るものなどのトナーのより厚い層は、本明細書の目的のために、2-Dの定義に含まれる。
【0024】
3-Dなどの「三次元」又はその文法形態は、例えば、表面又は構造に適用される必要がない形態、形状、構築物、物体などをもたらすために、集合又は組み立てられるトナーの複数層又は粒子堆積からなる構造に関連することを意味し、自律性であり得、かつ/又は厚さ若しくは深さを有する。本明細書で使用されるような印刷は、3-D構造を生成することを含む。表面又は構造上の印刷もまた使用されて、本明細書では、トナーの複数層の堆積によって3-D構造を形成することを含む。多くの場合、第1の層は、支持体、表面、基材、又は構造上に印刷される。トナーの連続層がその上に配置され、既に堆積した(及び任意選択的に接着した、又は固化した)トナー層又は層は、本明細書では表面又は基材であるとみなされる。
【0025】
「基材」、「媒体基材」、「印刷基材」、及び「印刷媒体」という用語は、プリカット又はウェブ供給に関わらず、画像用の紙、ポリマー、マイラー(登録商標)材料、プラスチック、又は他の好適な物理的印刷媒体基材、布地、シート、ウェブなどの、通常は柔軟な物理的シートを一般的に指す。
【0026】
本明細書で使用される「印刷装置」又は「印刷システム」という用語は、デジタル複写機若しくはプリンタ、スキャナ、画像印刷機、電子写真装置、静電写真装置、デジタル生産プレス、文書処理システム、画像再生機、製本機械、ファクシミリ機、複合機、又は一般的に、印刷プロセスなどを実行するのに有用な装置を指し、いくつかのマーキングエンジン、供給機構、走査アセンブリ、並びに給紙装置、フィニッシャなどの他の印刷媒体処理ユニットを指す。「印刷デバイス」は、基材の上面より上に隆起し得る様式で表面上に印刷することができ、更に二次元(2D)、2.5次元(2.5D)、又は三次元(3D)として記載され、「印刷デバイス」によって印刷されるような、テクスチャ加工された、構造化された、又は隆起した印刷表面をもたらす。「印刷システム」は、シート、ウェブ、基材などを取り扱うことができる。印刷システムは、任意の表面にマークを配置することができ、入力シート上のマークを読み取る任意の機械、又はそのような機械の任意の組み合わせである。
【0027】
以下に定義される全ての物理的特性は、特に指定のない限り、20℃~25℃で測定される。「室温」という用語は、特に指定がない限り、約22℃などの、約20℃~約25℃の範囲の温度を指す。
【0028】
放射線硬化性又は架橋性アクリレートモノマー、光開始剤、ワックス、ゲル化剤、任意選択的な着色剤、任意選択的なUV安定剤、及び抗微生物性添加剤を含む、抗微生物性インクを含む、抗微生物性組成物が提供される。抗微生物性コーティングは、テクスチャ加工された表面又は工学設計された表面トポグラフィを更に含み、表面は、約1~約1000nm離間された突出形状、及び約5~約50の粗さ指数を含む。工学設計された表面トポグラフィは、約10~約500nmの高さを有する突出形状を含み得る。工学設計された表面トポグラフィは、約X~約Yの実際の表面積と幾何学的表面積との比を有し得る。工学設計された表面トポグラフィ又はテクスチャ加工された表面は、コーティングの組成物との効果の組み合わせを介して、抗微生物性コーティング組成物の微生物耐性を増強し得、これは、そのようなコーティングの抗微生物有効性を増強するための銀ナノ粒子などの抗微生物性剤の添加を含み得る。
【0029】
特定の実施形態では、テクスチャ加工された抗微生物性表面は、テクスチャを含むテンプレートを設計することと、テンプレートのネガをスタンピング基材上に印刷することと、スタンピング基材を未硬化の抗微生物性インクを使用して印刷された表面上に型押しすることと、未硬化の抗微生物性インクを架橋するための光源を提供することとによってテクスチャ加工された抗微生物性表面を調製することを含む、1つ以上の方法によって提供され得る。テクスチャ加工された抗微生物性表面を提供するための実施形態は、テクスチャを含むテンプレートを設計することと、未硬化抗微生物性インクを使用して、テンプレートを基材上に印刷することと、未硬化抗微生物性インクを架橋するための光源を提供することと、を含み得る。工学設計された表面トポグラフィを有するテクスチャ加工された抗微生物性表面を提供するための更に他の実施形態は、未硬化の抗微生物性インクを、テクスチャ加工されたロールに塗布することと、未硬化の抗微生物性インクを、テクスチャ加工されたロールから基材に転写することと、未硬化抗微生物性インクを架橋するための光源を提供することと、を含み得る。
【0030】
本明細書の抗微生物性相変化インク組成物及び方法は、インクジェット印刷ヘッドを使用して、インクが、ドラム、ベルトなどの中間受容部材上に最初に画像状に塗布される間接印刷用途に応用され得る。インクは、中間受容部材上に濡れて広がり、過渡的な画像を形成する。次いで、過渡的な画像は、部分的又は完全な乾燥、熱硬化又は光硬化、ゲル化などの特性の変化を受け、次いで、得られた過渡的な画像は、最終画像受容基材に転写される。インクは、高速で高品質の印刷を可能にする、噴射、転写などを含む、異なるサブシステムに適合するように設計及び最適化され得る。本明細書の抗細菌性又は抗微生物性相変化インク組成物はまた、直接印刷用途にも応用され得る。
【0031】
インクジェット印刷は、最も成長している画像形成技術の1つである。他の印刷方法と比較したインクジェット印刷のいくつかの利点は、単純化、より低い生産コスト、低減された流出液廃棄物、並びにより少ない水及びエネルギー消費である。特に健康と衛生に関連する場合、高性能製品への必要性の高まりに基づいて、抗細菌特性を有する現在の水系デジタル印刷インクは、市場のニーズを満たし、任意の印刷可能な表面に対して堅牢で、効果的、かつ持続的な抗微生物保護を、消費者に提供する。本抗微生物性相変化インク組成物を用いる印刷から利益を得ることができるいくつかの重要な環境としては、病院、デイケアセンター、介護施設、学校、歯科医院、医院、病院(例えば、チャートメモ、写真)、他の種類の医療機関、動物病院、法律事務所及び裁判所(例えば、法律文書)、キッチン、及びレストラン(例えば、メニュー)が挙げられる。本抗微生物性インク、それと共に印刷された画像又は工学設計された表面は、任意の製品をより衛生的にし、臭気の原因となる微生物又は汚れの原因となる微生物を完全に低減又は回避することによって、製品を新鮮な外観に維持するのを助け、また、重要な識別タグ、ラベル、又は薬剤識別番号(DIN)が微生物によって劣化するのを回避する。実施形態では、抗微生物性インク組成物は、銀複合ナノ粒子を含む。銀は、広範囲の微生物に対して抗微生物活性を示す。銀は、広範囲の関連微生物に対して高い有効性を有し、特に効果的な汚染除去に必要な低濃度を考慮して、非毒性とみなされるため、理想的な抗微生物性剤とみなされる。
【0032】
本明細書に記載される実施形態では、抗微生物性添加剤と組み合わされた、畝のついたテクスチャ加工されたパターンの間接又は直接印刷は、微生物の付着を阻害するように工学設計された表面トポグラフィと、抗微生物性添加剤又は抗細菌性添加剤の殺菌効果とを組み合わせるという利点を提供する。これらのテクスチャ加工されたマイクロパターンは、高スループット及び大面積パターン化が必要とされる場合、様々な堆積パターンを有する表面上、又はスタンプマスク若しくはローラ上に直接デジタル印刷され得る。テクスチャ加工されたパターンを印刷するためのUV硬化性相変化インクを使用し得るこれらの手法は、新しいマイクロパターンを利用するか、又は抗微生物性効果について評価する必要があるたびに、新しいシリコンウェーハモールド又はポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプを製作する代わりに、様々な表面トポグラフィを物品上に迅速かつ直接印刷するための費用対効果が高い方法である。
【0033】
本明細書の抗微生物性相変化インク及びトポグラフィ工学設計方法は、任意の好適な又は所望の用途に使用され得る。インクは、カスタマイズ可能な、デジタル化された抗細菌性印刷画像、テキスト、表面コーティングなどを生成する最終目標を有する抗細菌性印刷用途に特に好適である。用途の例としては、カテーテル、温度計、及び他の医療デバイスなどの医療デバイス上の印刷コード、ラベル、又はロゴ、メニュー、食品包装材料、化粧品ツール、及び製品等への印刷が挙げられる。
【0034】
特定の実施形態では、本抗微生物性相変化インク及びトポグラフィ工学設計方法は、表面又は物体が、抗微生物性剤を有する印刷されテクスチャ加工されたフィルムを、接触機会の多い表面上に直接印刷又は接着することによって、微生物から清潔に保つことを可能にし得る。病院及び医療診療所は、抗微生物性保護の追加層を必要とするいくつかの領域であるが、これらのコーティングは、ハンドル、バス、列車、及び空港のパブリックシート、チェックインキオスク、トイレ、カウンタ、プッシュカート/トロリー、エレベータボタン、及びエレベーターの手すりなどの、任意の交通量の多い領域及び物体に応用され得る。医療用インプラント表面は、持続的な微生物汚染の別の問題であり、すなわち、致命的なバイオフィルム関連の感染症を引き起こす、インプラントと組織との界面での微生物の増殖を患っている、周術期(手術中)及び術後患者に多く見られる問題である。他の用途としては、デジタル印刷されたIDコード、短期印刷可能材料、カテーテル、心臓ステント、プログラム可能なペースメーカーなどの三次元医療構成要素上の印刷、及び任意の他の所望の三次元基材が挙げられる。
【0035】
微生物の源は、細菌、ウイルス、又は真菌であり得る。微生物汚染は、物体及び紙などの典型的な取り扱い、くしゃみ及び咳を介した空気浮遊の微生物、並びに汚染された人からの感染拡大、又は汚染された物体との接触の他の様式に由来し得る。本抗微生物性相変化インク組成物を用いて調製された印刷画像又はテキストとの接触を含む、これらの微生物と本抗微生物性相変化インク組成物との接触は、微生物の成長を阻害し、実施形態では、接触部位での任意の可能なコロニー形成を破壊する。
【0036】
表面構造のマイクロ/ナノトポグラフィの変更又は構造化は、構造への微生物付着の程度において重要な役割を果たす可能性があるが、一部の細菌細胞は、それらの形状に応じて特定の程度の粗さで表面上で繁殖し得るため、表面粗さ又はトポグラフィだけでは、細菌の接着を防止し得ない。細菌の表面への付着は、それらの膜の剛性及び細胞膜を延伸させて表面に適合させる能力に基づいて変化し得る。球状細胞は、接着に対してより高い粗さを好む棒形状の細菌よりも、容易には変形しにくく、平滑な表面へより効果的に接着し得ることが見出された。
【0037】
トポグラフィ粗さ以外で、微生物付着に関与し得る表面の追加の特性としては、基材化学、平滑性及び粒子径、ナノパターン化又はナノ構成、表面自由エネルギー、疎水性の程度、表面電荷、形状、マルチオーダー構造化、スケーリングなどが挙げられる。自然界に存在する表面に見られる抗細菌性表面の周知例が存在する。これらの自然界の表面は、マイクロ構造形状及びナノ構造形状を含む、トポグラフィにおいて異なり、自己洗浄であり、組み込まれた防汚特性を有し、超疎水性を示す。記載される特性の多くの組み合わせを表示する自然界に存在する表面の例としては、トンボ及びセミのものなどの昆虫の翅、ヤモリの足、サメの皮、及び植物の葉であり、最も一般的なものは、蓮の葉である。
【0038】
更に、いくつかの昆虫は、細菌の細胞壁を破裂又は変形させて、細菌の死滅を引き起こし得る鋭利な表面のナノ構造の物理的手段を通して微生物を殺傷する能力を有することが既知である。鋭利なナノ構造は通常、50~250nmの直径、80~250nmの高さ、及び100~250nmのピッチを有するナノピラー形状である。自然界に存在する表面の早期の研究は、表面への細菌の成長を防止する表面湿潤性及び防汚特性に重点がおかれていた。これらの自然界に存在する殺菌機構は、湿潤性及び接着性だけでなく、微生物の物理機械的破壊をもたらすナノピラーの配置、高さ、ピッチ、及び直径も伴う。様々な表面及び物体に抗細菌性保護を提供するために、印刷技術を介して模倣され得る自然界に存在する細菌表面のいくつかの例も既知である。表面の寸法及び他のトポグラフィ形状に応じて、表面の細菌の有効性は、特定の種類又はクラスの細菌に向けられ得る。このような表面トポグラフィ設計を、銀ナノ粒子又は四級アンモニウム化合物(QAC)などの抗微生物性剤、並びに後述する他のものと組み合わせることによって、長寿命の接触系抗細菌性表面が効率的に設計されて、十分効果的かつ長期の抗微生物活性を提供し得る。
相変化インク
【0039】
実施形態では、工学設計された表面トポグラフィ又は三次元物体を有する構造化又はテクスチャ加工された表面を製作するための材料として使用される放射線硬化性相変化インク組成物は、約0.01~約5GPaの室温弾性率を有し得る。これらのインクは、放射線硬化性モノマー、光開始剤、ワックス、及びゲル化剤を含み得る。顔料、着色剤、又は他の機能性添加剤は、所望の用途に応じて任意選択的に含まれ得る。更なる実施形態では、そのような放射線硬化性相変化インクを使用して、工学設計された表面トポグラフィを有するテクスチャ加工された表面を作製する方法が開示される。本明細書に記載されるような放射線硬化性相変化インクは、UV硬化性相変化インク組成物又は抗微生物性相変化インク組成物とも称され得る。
【0040】
本開示で言及されるように、室温弾性率値は、組成物が重合及び硬化された後のインク組成物の室温弾性率値を指す。更に、モノマーは、反応性及び硬化性であるモノマーを指す。
モノマー
【0041】
上記のように、インク組成物は、モノマーを含み得る。好適なモノマーとしては、相変化インク担体としての使用に好適であるアクリレート及びメタクリレートモノマー化合物などの放射線硬化性モノマー化合物が挙げられる。モノマーの例としては、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SartomerのSR-9003など)、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化グリセロールトリアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートメチルエーテルモノアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、これらの混合物などが挙げられる。比較的非極性のモノマーとして、イソデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、及びブチルアクリレートが言及され得る。加えて、二官能性アクリレートモノマー、三官能性アクリレートモノマー、四官能性アクリレートモノマー、五官能性アクリレートモノマーなどの、多官能性アクリレートモノマー/オリゴマーは、反応性希釈剤としてだけでなく、硬化画像の架橋密度を増加させ、それによって硬化画像の靭性を増強し得る材料としても、使用され得る。
【0042】
実施形態では、モノマーは、アクリルモノマー、無水マレイン酸で付加されたポリブタジエン、脂肪族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びアクリルオキシプロピルt-構造化シロキサン、又はこれらの混合物からなる群から選択され得る。他の例示的なモノマーとしては、Sartomerの製品リストの「単官能性モノマー」(http://www.sartomer.com/)に列挙されている任意のモノマーが挙げられる。
【0043】
実施形態では、組成物は、約20~約55重量%又は約25~約50重量%など、組成物の約15~約80重量%の量で、モノマーを含み得る。他の実施形態では、組成物は、組成物の約15~約35重量%、又は組成物の約40~約60重量%の量で、モノマーを含み得る。
【0044】
実施形態では、上記のモノマーは、約0.51~約4.5GPa、約1.01~約4GPa、約1.51~約3.5GPa、又は約2.01~約3GPaなどの、約0.01~約5GPaの室温弾性率を、硬化インクに付与し得る。室温弾性率はまた、約0.01~約1.7GPa、約1.7~約3.4GPa、又は約3.4~約5GPaであり得る。
【0045】
実施形態では、相変化インクセットは、各インク組成物が、異なる室温弾性率範囲を付与する異なるインク組成物を含み得る。実施形態では、相変化インクセットは、第1のインク組成物及び少なくとも1つの他のインク組成物を含み得、各インク組成物は、約0.01~約5GPaの間の異なる室温弾性率を有する。例えば、相変化インクセットは、約0.01~約1.25又は約1.25~約2.5GPaなどの、約0.01~約2.5GPaの室温弾性率を有する第1のインク組成物、及び約2.5~約3.75GPa又は約3.75~約5GPaなどの、約2.5~約5GPaの室温弾性率を有する第2のインク組成物を含み得る。
【0046】
相変化インクセットは、約0.01~約0.9又は約0.9~約1.7などの、約0.01~約1.7GPaの室温弾性率を有する第1のインク組成物、約1.7~約2.6GPa又は2.6~約3.4GPaなどの、約1.7~約3.4GPaの室温弾性率を有する第2のインク組成物、及び約3.4~約4.3又は約4.3~約5GPaなどの、約3.4~約5GPaの室温弾性率を有する第3のインク組成物を含み得る。
【0047】
実施形態では、相変化インクセットは、3~8、又は4~6、又は2~4、又は5~9種の異なるインク組成物などの、2~10種の異なるインク組成物を含み得る。
【0048】
実施形態では、多官能性アクリレート及びメタクリレートモノマー並びにオリゴマーは、反応性希釈剤として、かつ硬化画像の架橋密度を増加させ、それによって硬化画像の靭性を増強し得る材料として、相変化インク担体に含まれ得る。硬化物体の可塑性又は弾性を調整するために、異なるモノマー及びオリゴマーが添加され得る。好適な多官能性アクリレート及びメタクリレートモノマー並びにオリゴマーの例としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、1,2-エチレングリコールジアクリレート、1,2-エチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(SartomerからSR238として入手可能)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12-ドデカノールジアクリレート、1,12-ドデカノールジメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SartomerからSR 9003として入手可能)、ネオペンチルグリコールジアクリレートエステル(SartomerからSR247として入手可能)、1,4-ブタンジオールジアクリレート(BDDA、SartomerからSR213として入手可能)、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート(DOGDA、SartomerからCD536として入手可能)、アミン変性ポリエーテルアクリレート(PO 83 F、LR 8869、及び/又はLR 8889として入手可能、全てBASF Corporationから入手可能)、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(SartomerからSR454として入手可能)、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SartomerからSR 494として入手可能)など、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0049】
反応性希釈剤は、任意の所望の又は有効な量で添加され得る。例えば、反応性希釈剤は、担体の約10~約70重量%、又は約30~約50重量%などの、担体の約1~約80重量%の量で添加され得る。
【0050】
実施形態では、硬化性モノマーは、炭化水素粘着付与剤などの粘着付与剤と共に、インク組成物に添加され得る。他の例示的な粘着付与剤としては、水素化アビエチン(ロジン)酸のグリセロールエステルである(Herculesから市販されている)FORAL 85、ヒドロアビエチン(ロジン)酸のペンタエリスリトールエステルである(Herculesから市販されている)FORAL 105、フタル酸のヒドロアビエチン(ロジン)アルコールエステルである(Herculesから市販されている)CELLOLYN 21、水素化アビエチン(ロジン)酸のトリグリセリドである(荒川化学工業から市販されている)ARAXAWA KE-311樹脂、(Neville Chemical Companyから市販されている)NEVTAC 2300、NEVIAC 100、及びNEVRAC 80などの合成ポリテルペン樹脂、変性合成ポリテルペン樹脂である(Goodyearから市販されている)WINGTACK 86などが挙げられる。粘着付与剤は、存在する場合、インクの少なくとも約0.1重量%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、又は約50%以下などの、任意の所望の又は有効な量で、インク中に存在し得る。
光開始剤
【0051】
実施形態では、本明細書に開示される相変化インクは、任意の好適な光開始剤を含み得る。インクの硬化性構成成分の硬化を開始するために、放射線、例えば、UV光放射線を吸収する光開始剤が使用され得る。アクリレート基を含有するインク組成物、又はポリアミドからなるインクは、ベンゾフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アルコキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン、IRGACURE及びDAROCURの商品名で販売されているアシルホスフィン光開始剤(BASFから入手可能)などの、光開始剤を含み得る。好適な光開始剤の例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFからLUCIRIN TPOとして入手可能)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASFからLUCIRIN TPO-Lとして入手可能)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド(BASFからIRGACURE 819として入手可能)及び他のアシルホスフィン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-(4-モルホルリニル)-1-プロパン(BASFからIRGACURE 907として入手可能)及び1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン(BASFからIRGACURE 2959として入手可能)、2-ベンジル2-ジメチルアミノ1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1(BASFからIRGACURE 369として入手可能)、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)-ベンジル)-フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン(BASFからIRGACURE 127として入手可能)、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イルフェニル)-ブタノン(BASFからIRGACURE 379として入手可能)、チタノセン、イソプロピルチオキサントン(BASFからDarocur ITXとして入手可能)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパン)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン、ベンジル-ジメチルケタール、及びこれらの混合物が挙げられる。アミン相乗剤も使用され得る。アミン相乗剤は、水素原子を光開始剤に供与し、それによって重合を開始するラジカル種を形成する共開始剤である(アミン相乗剤は、インク中に溶解した酸素も消費し得、酸素は、フリーラジカル重合を阻害するため、その消費は、重合速度を増加させる)。例示的なアミン相乗剤としては、例えば、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート及び2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノ-ベンゾエート挙げられる。このリストは、網羅的ではなく、UV光などの放射線の所望の波長への曝露時に、フリーラジカル反応を開始する任意の既知の光開始剤が、限定されることなく使用され得る。
【0052】
任意選択的に、相変化インクはまた、アミン相乗剤も含有し得、アミン相乗剤は、水素原子を光開始剤に供与し得、それによって重合を開始するラジカル種を形成し、フリーラジカル重合を阻害する溶解した酸素も消費し得、それによって重合速度を増加させる共開始剤である。好適なアミン相乗剤の例としては、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエートなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
光開始剤は、約200~約420nmの波長の放射線を吸収して、硬化を開始し得るが、最大560nmを吸収し得るチタノセンなどの、より長い波長を吸収する開始剤の使用もまた、制限なく使用され得る。
【0054】
インク組成物中に含まれる開始剤の総量は、例えば、約1~約10重量%などの、インク組成物の約0.5~約15重量%であり得る。
反応性ワックス
【0055】
本明細書に開示される相変化インク組成物は、反応性ワックスを含み得る。実施形態では、反応性ワックスは、他の構成成分と混和性であり、硬化性モノマーと重合して、ポリマーを形成する硬化性ワックス構成成分を含み得る。ワックスを含めることによって、噴射温度から冷却されるにつれて、インクの粘度の増加が促進される。
【0056】
例示的なワックスは、硬化性基で官能化されたものを含む。実施形態では、硬化性基としては、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシド、及びオキセタンが挙げられ得る。これらのワックスは、カルボン酸又はヒドロキシルなどの、変換可能な官能基を備えたワックスの反応によって合成され得る。
【0057】
硬化性基を用いて官能化され得るヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの好適な例としては、構造CH3-(CH2)n-CH2OHを有する炭素鎖の混合物が挙げられ、そこで、鎖長nの混合物が存在し、実施形態では、平均鎖長は、約16~約50の範囲内であり、同様の平均鎖長の直鎖状低分子量ポリエチレンである。そのようなワックスの好適な例としては、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550、及びUNILIN(登録商標)700が挙げられ、それぞれ、375、460、550、及び700g/molにほぼ等しいMnを有する。これらのワックスは全て、Baker-Petroliteから市販されている。2,2-ジアルキル-1-エタノールとして特徴付けられるゲルベアルコールもまた、好適な化合物である。ゲルベアルコールの具体的な実施形態としては、16~36個の炭素を含有するものが挙げられ、その多くは、Jarchem Industries Inc.(Newark、NJ)から市販されている。実施形態では、PRIPOL(登録商標)2033が選択され、PRIPOL(登録商標)2033は、C-36二量体ジオール混合物、並びにUniqema(New Castle、DE)から入手可能な不飽和基及び環状基を含み得る他の分岐異性体である。これらのアルコールは、UV硬化性部分を備えたカルボン酸と反応して、反応性エステルを形成し得る。これらの酸の例としては、Sigma-Aldrichから入手可能なアクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。具体的な硬化性モノマーとしては、UNILIN(登録商標)350、UNILIN(登録商標)425、UNILIN(登録商標)550、及びUNILIN(登録商標)700のアクリレートが挙げられる。
【0058】
硬化性基を用いて官能化され得るカルボン酸末端ポリエチレンワックスの好適な例としては、構造CH3-(CH2)n-COOHを有する炭素鎖の混合物が挙げられ、そこで、鎖長nの混合物が存在し、選択された実施形態では、平均鎖長は、約16~約50の範囲内であり、同様の平均鎖長の直鎖状低分子量ポリエチレンである。そのようなワックスの好適な例としては、UNICID(登録商標)350、UNICID(登録商標)425、UNICID(登録商標)550、及びUNICID(登録商標)700が挙げられ、それぞれ、390、475、565、及び720g/molにほぼ等しいMnを有する。他の好適なワックスは、構造CH3-(CH2)n-COOH、例えば、n=14で、ヘキサデカン酸又はパルミチン酸、n=15で、ヘプタデカン酸又はマルガリン酸又はダチュリック酸(daturic acid)、n=16で、オクタデカン酸又はステアリン酸、n=18で、エイコサン酸又はアラキジン酸、n=20で、ドコサン酸又はベヘン酸、n=22で、テトラコサン酸又はリグノセリン酸、n=24で、ヘキサコサン酸又はセロチン酸、n=25で、ヘプタコサン酸又はカルボセル酸、n=26で、オクタコサン酸又はモンタン酸、n=28で、トリアコンタン酸又はメリシン酸、n=30で、ドトリアコンタン酸又はラセロー酸、n=31で、トリトリアコンタン酸又はセロメリス酸又はサイリシン酸、n=32で、テトラトリアコンタン酸又はゲジン酸、n=33で、ペンタトリアコンタン酸又はセロプラティック酸を有する。2,2-ジアルキルエタン酸として特徴付けられるゲルベ酸もまた、好適な化合物である。選択されたゲルベ酸としては、16~36個の炭素を含有するものが挙げられ、その多くは、Jarchem Industries Inc.(Newark、NJ)から市販されている。Uniqema(New Castle、DE)から入手可能なPRIPOL(登録商標)1009並びに不飽和基及び環状基を含み得る他の分岐異性体も使用され得る。これらのカルボン酸は、UV硬化性部分を備えたアルコールと反応して、反応性エステルを形成し得る。これらのアルコールの例としては、Sigma-Aldrichの2-アリルオキシエタノール、
【0059】
【0060】
Sartomer Company,Inc.のSR495B、
【0061】
【0062】
Sartomer Company,Inc.のCD572(R=H、n=10)及びSR604(R=Me、n=4)が挙げられる。
【0063】
実施形態では、任意選択的な硬化性ワックスは、インクの約2~約20重量%、又はインクの約2.5~約15重量%などの、例えば、インクの約1~約25重量%の量でインク中に含まれる。
【0064】
硬化性モノマー又はプレポリマー及び硬化性ワックスは共に、インクの約50重量%超、又はインクの少なくとも70重量%、又はインクの少なくとも80重量%を形成し得る。
ゲル化剤
【0065】
本明細書に開示される抗微生物性相変化インク組成物は、任意の好適なゲル化剤を含み得る。ゲル化剤は、所望の温度範囲内で、インクビヒクル及びインク組成物の粘度を劇的に増加させるように機能する。特に、ゲル化剤は、インク組成物が噴射される特定の温度未満の温度で、インクビヒクル中に半固体ゲルを形成する。半固体ゲル相は、1つ以上の固体ゲル化剤分子及び液体溶媒からなる動的平衡として存在する物理的ゲルである。半固体ゲル相は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族非結合相互作用、イオン性又は配位結合、ロンドン分散力などの非共有結合相互作用によって一緒に保持された分子構成成分の動的にネットワーク化されたアセンブリであり、温度、又は機械的撹拌、又はpH若しくはイオン強度などの化学力などの物理力による刺激時に、巨視的レベルで液体から半固体状態に可逆的に転移し得る。インク組成物は、温度がゲル相転移の上下に変化した場合、半固体ゲル状態と液体状態との間の熱的に可逆的な転移を示す。半固体ゲル相と液相との間の転移のこの可逆的サイクルは、インク組成物中で多数回繰り返され得る。1つ以上のゲル化剤の混合物を使用して、相変化転移を行い得る。
【0066】
ゲル化剤の相変化性質を使用して、基材へのインクの噴射後の、噴射インク組成物において急速な粘度増加を引き起こし得る。特に、噴射されたインク液滴は、相変化転移の作用を通じて、インク組成物のインク噴射温度よりも低い温度で受容基材上の位置に固定され得る。
【0067】
インク組成物がゲル状態を形成する温度は、インク組成物の噴射温度未満の任意の温度、例えば、インク組成物の噴射温度よりも約10℃以上低い任意の温度である。インク組成物が液体状態にある噴射温度から、インク組成物がゲル状態に変換されるゲル転移温度までの冷却時に、インク粘度の急速かつ大きな増加が存在する。いくつかの実施形態のインク組成物は、少なくとも102.5倍の粘度増加を示し得る。
【0068】
好適なゲル化剤は、インクビヒクル中のモノマー/オリゴマーを急速かつ可逆的にゲル化し得、例えば約20℃~約85℃の温度範囲内の狭い相変化転移を実証する。例示的なインク組成物のゲル状態は、噴射温度での粘度と比較して、基材温度、例えば、約30℃~約70℃での粘度増加、102.5mPa・s以上、例えば103mPa・sを示すべきである。いくつかの実施形態では、ゲル化剤含有インク組成物は、噴射温度よりも5℃~10℃低い温度内で、粘度が急速に増加し、最終的に噴射粘度の104倍を超える粘度、例えば噴射粘度の約105倍に達する。
【0069】
好適なゲル化剤としては、硬化性アミド、硬化性ポリアミド-エポキシアクリレート構成成分、及びポリアミド構成成分からなる放射線硬化性ゲル化剤、硬化性エポキシ樹脂及びポリアミド樹脂からなる硬化性複合ゲル化剤、これらの混合物などが挙げられ、これらは、米国特許第8,334,026号に開示され、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物中にゲル化剤を含めることによって、組成物を、例えば、基材の1つ以上の部分、及び/又は基材上に事前に形成された画像の1つ以上の部分などの、基材上に、塗布後に組成物が冷却されると組成物の粘度が急速に増加するため、基材に過度に浸透することなく塗布することが可能になる。紙などの多孔質基材への液体の過剰な浸透は、基材不透明度の望ましくない減少をもたらし得る。硬化性ゲル化剤はまた、組成物のモノマー(複数可)の硬化に関与し得る。
【0070】
ゲル化剤は、組成物がシリコーン又はその上に他の油を有する基材上に使用される場合、本質的に濡れ性を改善する両親媒性であり得る。「両親媒性」とは、分子の極性部及び非極性部の両方を有する分子を指す。例えば、ゲル化剤は、長い非極性炭化水素鎖及び極性アミド結合を有し得る。
【0071】
アミドゲル化剤としては、米国特許第7,531,582号、同第7,276,614号、及び同第7,279,587号に記載されるものが挙げられ、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
アミドゲル化剤は、以下の式(I)の化合物であり得、
【0073】
【0074】
式(I)において、R1は、
【0075】
(i)約1個~約8個、若しくは約1個~約5個の炭素原子などの、約1個~約12個の炭素原子を有するアルキレン基(アルキレン基は、直鎖状及び分岐鎖状、飽和及び不飽和、環状及び非環式、並びに置換及び非置換アルキレン基を含む、二価脂肪族基又はアルキル基であり、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキレン基中に存在する又は存在しない場合がある)、
【0076】
(ii)約3個~約10個、若しくは約5個~約8個の炭素原子などの、約1個~約15個の炭素原子を有するアリーレン基(アリーレン基は、置換及び非置換アリーレン基を含む、二価芳香族基又はアリール基であり、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリーレン基中に存在する又は存在しない場合がある)、
【0077】
(iii)約6個~約22個、若しくは約6個~約12個の炭素原子などの、約6個~約32個の炭素原子を有するアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、置換及び非置換アリールアルキレン基を含む、二価アリールアルキル基であり、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖状又は分岐鎖状、飽和又は不飽和、及び環状又は非環式であり得、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アリールアルキレン基のアリール部分又はアルキル部分中に存在する又は存在しない場合がある)、又は、
【0078】
(iv)約6個~約22個、若しくは約7個~約15個の炭素原子などの、約5個~約32個の炭素原子を有するアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、置換及び非置換アルキルアリーレン基を含む、二価アルキルアリール基であり、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖状又は分岐鎖状、飽和又は不飽和、及び環状又は非環式であり得、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキルアリーレン基のアリール部分又はアルキル部分中に存在する又は存在しない場合がある)であり得る。
【0079】
特に指定がない限り、上記及び以下に開示される置換アルキル、アリール、アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン基、及びアルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルフィド基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アゾ基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などから選択され得る。任意選択的に、2つ以上の置換基は、一緒に結合して、環を形成し得る。
【0080】
式(I)において、R2及びR2’は各々、他方とは独立して、
【0081】
(i)約1個~約48個、若しくは約1個~約36個の炭素原子などの、約1個~約54個の炭素原子を有するアルキレン基、
【0082】
(ii)約5個~約13個、若しくは約5個~約10個の炭素原子などの、約5個~約15個の炭素原子を有するアリーレン基、
【0083】
(iii)約7個~約33個、若しくは約8個~約15個の炭素原子などの、約6個~約32個の炭素原子を有するアリールアルキレン基、又は、
【0084】
(iv)約6個~約22個、若しくは約7個~約15個の炭素原子などの、約6個~約32個の炭素原子を有するアルキレンアリーレン基であり得る。
【0085】
式(I)において、R3及びR3’は各々、他方とは独立して、
【0086】
(a)式(II)の1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンから誘導された基などの光開始基、
【0087】
【0088】
式(III)の1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導された基、
【0089】
【0090】
式(IV)の2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンから誘導された基、
【0091】
【0092】
式(V)のN,N-ジメチルエタノールアミン又はN,N-ジメチルエチレンジアミンから誘導された基、
【0093】
【0094】
など、又は、
【0095】
(b)
【0096】
(i)約3個~約60個、若しくは約4個~約30個の炭素原子などの、約2個~約100個の炭素原子を有するアルキル基(アルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状、環状及び非環式、並びに置換及び非置換アルキル基を含み、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子は、アルキル基中に任意選択的に存在し得る)、
【0097】
(ii)約5個~約60個、若しくは約6個~約30個の炭素原子などの、約5個~約100個の炭素原子を有する、フェニルなどのアリール基(アリール基は、置換及び非置換アリール基を含む)、
【0098】
(iii)約5~約60個、若しくは約6~約30個の炭素原子などの、約5~約100個の炭素原子を有する、ベンジルなどのアリールアルキル基、若しくは
【0099】
(iv)約5~約60個、若しくは約6~約30個の炭素原子などの、約5~約100個の炭素原子を有する、トリルなどのアルキルアリール基である基であり得る。
【0100】
加えて、式(I)において、X及びX’は、各々、他方とは独立して、酸素原子又は式-NR4-の基であり得、式中、R4は、
【0101】
(i)水素原子、
【0102】
(ii)約5個~約60個、若しくは約6個~約30個の炭素原子などの、約5個~約100個の炭素原子を有するアルキル基、
【0103】
(iii)約5個~約60個、若しくは約6個~約30個の炭素原子などの、約5個~約100個の炭素原子を有するアリール基、
【0104】
(iv)約5個~約60個、若しくは約6個~約30個の炭素原子などの、約5個~約100個の炭素原子を有するアリールアルキル基、又は、
【0105】
(v)約5個~約60個、若しくは約6個~約30個の炭素原子などの、約5個~約100個の炭素原子を有するアルキルアリール基である。
【0106】
更なる詳細は、例えば、米国特許第7,279,587号及び同第7,276,614号に見られ得る。
【0107】
ゲル化剤は、複合ゲル化剤、例えば、硬化性エポキシ樹脂及びポリアミド樹脂からなるゲル化剤であり得る。好適な複合ゲル化剤は、一般に付与された米国特許第7,563,487号に記載され、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
複合ゲル化剤中のエポキシ樹脂構成成分は、任意の好適なエポキシ基含有材料であり得る。エポキシ基含有構成成分としては、ポリフェノール系エポキシ樹脂又はポリオール系エポキシ樹脂のいずれかのジグリシジルエーテル、又はこれらの混合物が挙げられる。すなわち、エポキシ樹脂は、分子の末端に位置する2つのエポキシ官能基を有する。ポリフェノール系エポキシ樹脂は、2つ以下のグリシジルエーテル末端基を有するビスフェノールA-co-エピクロロヒドリン樹脂である。ポリオール系エポキシ樹脂は、2つ以下のグリシジルエーテル末端基を有するジプロピレングリコール-co-エピクロロヒドリン樹脂であり得る。好適なエポキシ樹脂は、約300~約700などの、約200~約800の範囲内の重量平均分子量を有する。エポキシ樹脂の市販の供給源は、例えば、Dow Chemical CorpのDER 383などのビスフェノールA系エポキシ樹脂、Dow Chemical CorpのDER 736などのジプロピレングリコール系樹脂である。植物又は動物由来のエポキシ化トリグリセリド脂肪エステル、例えば、エポキシ化亜麻仁油、菜種油など、又はこれらの混合物などの、天然供給源に由来するエポキシ系材料の他の供給源が使用され得る。Arkema Inc.(Philadelphia、PA)製品のVIKOFLEXラインなどの、植物油から誘導されたエポキシ化合物も使用され得る。したがって、エポキシ樹脂構成成分は、不飽和カルボン酸又は他の不飽和試薬との化学反応によって、アクリレート又は(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、アリルエーテルなどで官能化される。例えば、樹脂の末端エポキシド基は、この化学反応において開環され、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応によって(メタ)アクリレートエステルに変換される。
【0109】
エポキシ-ポリアミド複合ゲル化剤のポリアミド構成成分として、任意の好適なポリアミド材料が使用され得る。ポリアミドは、天然供給源(例えば、パーム油、菜種油、ひまし油など、これらの混合物を含む)から得られるものなどの重合脂肪酸、又はオレイン酸、リノール酸などの二量体化C-18不飽和酸原料から調製される一般的に既知の炭化水素「ダイマー酸」と、ジアミン(例えば、DYTEKシリーズジアミン、エチレンジアミン、ポリ(アルキレンオキシ)ジアミンなどのアルキレンジアミン)、又はポリエステル-ポリアミド及びポリエーテル-ポリアミドなどのポリアミドのコポリマーなどのポリアミンと、から誘導されたポリアミド樹脂からなる。1つ以上のポリアミド樹脂は、ゲル化剤の形成に使用され得る。ポリアミド樹脂の市販の供給源としては、例えば、ポリアミドのVERSAMIDシリーズ(Cognis Corporation(旧Henkel Corp.)から入手可能)が挙げられ、特に、VERSAMID 335、VERSAMID 338、VERSAMID 795、及びVERSAMID 963の全ては、低分子量及び低アミン数を有し、SYLVAGELポリアミド樹脂(Arizona Chemical Companyから入手可能)、及びポリエーテル-ポリアミド樹脂を含むその多様体が用いられ得る。Arizona Chemical Companyから入手したSYLVAGEL樹脂の組成は、一般式(IX)を有するポリアルキレンオキシジアミンポリアミドとして記載され、
【0110】
【0111】
式中、R1は、少なくとも17個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2は、ポリアルキレンオキシドを含み、R3は、C-6炭素環式基を含み、nは、少なくとも1の整数である。
【0112】
ゲル化剤はまた、硬化性ポリアミド-エポキシアクリレート構成成分及びポリアミド構成成分、例えば、一般に付与された米国特許第7,632,546号に開示されているものなどを含み得、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。硬化性ポリアミド-エポキシアクリレートは、その中に少なくとも1つの官能基を含むことによって硬化性である。例として、ポリアミド-エポキシアクリレートは、二官能性である。アクリレート基(複数可)などの官能基(複数可)は、フリーラジカル開始を介して放射線硬化性であり、ゲル化剤の硬化インクビヒクルへの化学結合を可能にする。市販のポリアミド-エポキシアクリレートは、CognisのPHOTOMER RM370である。硬化性ポリアミド-エポキシアクリレートはまた、硬化性エポキシ樹脂及びポリアミド樹脂からなる硬化性複合ゲル化剤について上記の構造内から選択され得る。
【0113】
インク組成物は、インクの約1~約50重量%、又は約2~約20重量%、又は約3~約10重量%などの、任意の好適な量でゲル化剤を含み得る。
【0114】
このように調製された化合物の多くは、溶液中に存在する場合、ゲル様挙動を示し得る。本化合物が溶解され得る材料の例としては、例えば、Sartomer Co.Inc.から市販されているSR9003(登録商標)などの、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの硬化性モノマーが挙げられ、「ゲル様挙動」とは、化合物が比較的狭い温度範囲にわたって粘度の比較的急激な増加を受けることを指す。本明細書に開示されるようないくつかの化合物は、少なくとも約5℃、少なくとも約10℃、又は少なくとも約30℃の温度範囲にわたって、少なくとも約103センチポアズ、少なくとも約105センチポアズ、又は少なくとも約106センチポアズの粘度の変化を受けるが、粘度変化及び温度範囲は、これらの範囲外であり得、これらの範囲内で変化を受けない化合物も本明細書に含まれる。
着色剤
【0115】
本明細書に開示される抗微生物性相変化インク組成物は、任意選択的に着色剤を含み得る。任意選択的な着色剤は、存在する場合、任意の所望の量、例えば、マーキング材料の約1~約50重量%、又は約1~約25重量%などの、マーキング材料の約0.5~約75重量%で、着色マーキング材料中に存在し得る。
【0116】
任意の好適な着色剤は、本明細書の実施形態において使用され得、染料、顔料、又はこれらの組み合わせを含む。着色剤の例としては、ビヒクル中に分散又は溶解され得る任意の染料又は顔料が挙げられ得る。好適な顔料の例としては、例えば、Paliogen Violet 5100(BASF)、Paliogen Violet 5890(BASF)、Heliogen Green L8730(BASF)、Lithol Scarlet D3700(BASF)、SUNFAST(登録商標)Blue 15:4(Sun Chemical 249-0592)、HOSTAPERM Blue B2G-D(Clariant)、Permanent Red P-F7RK、HOSTAPERM Violet BL(Clariant)、Lithol Scarlet 4440(BASF)、Bon Red C(Dominion Color Company)、Oracet Pink RF(Ciba)、Paliogen Red 3871 K(BASF)、SUNFAST(登録商標)Blue 15:3(Sun Chemical 249-1284)、Paliogen Red 3340(BASF)、SUNFAST(登録商標)Carbazole Violet 23(Sun Chemical 246-1670)、Lithol Fast Scarlet L4300(BASF)、Sunbrite Yellow 17(Sun Chemical 275-0023)、Heliogen Blue L6900、L7020(BASF)、Sunbrite Yellow 74(Sun Chemical 272-0558)、SPECTRA PAC(登録商標)C Orange 16(Sun Chemical 276-3016)、Heliogen Blue K6902、K6910(BASF)、SUNFAST(登録商標)Magenta 122(Sun Chemical 228-0013)、Heliogen Blue D6840、D7080(BASF)、Sudan Blue OS(BASF)、Neopen Blue FF4012(BASF)、PV Fast Blue B2GO1(Clariant)、Irgalite Blue BCA(Ciba)、Paliogen Blue 6470(BASF)、Sudan Orange G(Aldrich)、Sudan Orange 220(BASF)、Paliogen Orange 3040(BASF)、Paliogen Yellow 152、1560(BASF)、Lithol Fast Yellow 0991 K(BASF)、Paliotol Yellow 1840(BASF)、Novoperm Yellow FGL(Clariant)、Lumogen Yellow D0790(BASF)、Suco-Yellow L1250(BASF)、Suco-Yellow D1355(BASF)、Suco Fast Yellow Dl 355、Dl 351(BASF)、Hostaperm Pink E 02(Clariant)、Hansa Brilliant Yellow 5GX03(Clariant)、Permanent Yellow GRL 02(Clariant)、Permanent Rubine L6B 05(Clariant)、Fanal Pink D4830(BASF)、Cinquasia Magenta(Du Pont)、Paliogen Black L0084(BASF)、Pigment Black K801(BASF)、及びREGAL 330(商標)(Cabot)、Carbon Black 5250、Carbon Black 5750(Columbia Chemical)、これらの混合物などのカーボンブラックが挙げられる。好適な染料の例としては、Ushanti Colorから入手可能なUsharect Blue 86(Direct Blue 86)、Classic Dyestuffsから入手可能なIntralite Turquoise 8GL(Direct Blue 86)、Chemiequipから入手可能なChemictive Brilliant Red 7BH(Reactive Red 4)、Bayerから入手可能なLevafix Black EB、Atlas Dye-Chemから入手可能なReactron Red H8B(Reactive Red 31)、Warner-Jenkinsonから入手可能なD&C Red #28(Acid Red 92)、Global Colorから入手可能なDirect Brilliant Pink B、Metrochem Industriesから入手可能なAcid Tartrazine、Clariantから入手可能なCartasol Yellow 6GF Clariant、Carta Blue 2GLなどが挙げられる。溶媒染料の例としては、Neozapon Red 492(BASF)、Orasol Red G(Ciba)、Direct Brilliant Pink B(Global Colors)、Aizen Spilon Red C-BH(Hodogaya Chemical)、Kayanol Red 3BL(Nippon Kayaku)、Spirit Fast Yellow 3G、Aizen Spilon Yellow C-GNH(Hodogaya Chemical)、Cartasol Brilliant Yellow 4GF(Clariant)、Pergasol Yellow CGP(Ciba)、Orasol Black RLP(Ciba)、Savinyl Black RLS(Clariant)、Morfast Black Conc.A(Rohm and Haas)、Orasol Blue GN(Ciba)、Savinyl Blue GLS(Sandoz)、Luxol Fast Blue MBSN(Pylam)、Sevron Blue 5GMF(Classic Dyestuffs)、Basacid Blue 750(BASF)、Neozapon Black X51(C.I.Solvent Black、C.I.12195)(BASF)、Sudan Blue 670(C.I.61554)(BASF)、Sudan Yellow 146(C.I.12700)(BASF)、Sudan Red 462(C.I.260501)(BASF)、これらの混合物などの、揮発性溶媒溶解性染料が挙げられる。
酸化防止剤
【0117】
本明細書に開示される抗微生物性相変化インク組成物はまた、任意選択的に、酸化防止剤を含有し得る。任意選択的な酸化防止剤は、酸化から画像を保護することができ、インク調製プロセスの加熱部分中にインク構成成分を酸化から保護することもできる。好適な酸化防止安定剤の具体例としては、Crompton Corporation(Middlebury、CT)から市販されているNAUGARD(登録商標)524、NAUGARD(登録商標)635、NAUGARD(登録商標)A、NAUGARD(登録商標)I-403、及びNAUGARD(登録商標)959、Ciba Specialty Chemicalsから市販されているIRGANOX(登録商標)1010、及びIRGASTAB(登録商標)UV 10、Rahn AG(Zurich、Switzerland)から市販されているGENORAD 16、及びGENORAD 40など、並びにこれらの混合物が挙げられる。存在する場合、任意選択的な酸化防止剤は、任意の所望の又は有効な量でインク中に存在する。例えば、任意選択的な酸化防止剤は、インク担体の約0.1~約10重量%、又は約1~約5重量%などの、約0.01~約20重量%の量で存在し得る。
抗微生物性添加剤
【0118】
実施形態では、本抗微生物性相変化インク組成物は、イオン性ポリマー金属複合体を含み得、そこで、イオン性ポリマー金属複合ナノ粒子は、抗細菌効果、抗真菌効果、抗ウイルス殺生物剤効果、又はこれらの組み合わせのための金属イオンの供給のためのリザーバとして作用する。特定の実施形態では、複合ナノ粒子は、コア及びシェルを含み、そこで、コアは、任意選択的に金属を含むスチレン/アクリレートポリマーコア樹脂を含み、シェルは、金属を含む。
【0119】
任意の好適な所望の金属は、金属が所望の抗細菌効果、抗真菌効果、抗ウイルス殺生物剤効果、又はこれらの組み合わせを付与する場合、本明細書の実施形態のために選択され得る。他の金属が使用され得るが、特定のもののみが抗細菌特性を有する。実施形態では、Co、Cu、Ni、Au、及びPdは、銀複合体で使用され得、そこで、Co、Cu、Ni、Au、Pd、又はこれらの混合物若しくは組み合わせは、抗細菌特性及び/又は抗微生物特性を付与し得る。例えば、Co、Cu、Ni、並びにAu(及びPd)を記載する、Yasuyuki M,Kunihiro K,Kurissery S,et al.Biofouling 2010 Oct;26(7):851-8)を参照されたい。実施形態では、Ag及びCuが選択される。他の実施形態では、Pt、Al、Cr、In、並びにこれらの混合物及び組み合わせを含む複合体が選択され得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は、銀元素のみを含み得るか、又は他の金属との複合体若しくは合金を含む、銀複合体若しくは合金であり得る。そのような金属-銀複合体は、(i)1つ以上の他の金属、及び(ii)1つ以上の非金属、のいずれか又は両方を含み得る。好適な他の金属としては、例えば、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、及びNi、特に、遷移金属、例えば、Au、Pt、Pd、Cu、Cr、Ni、並びにこれらの混合物が挙げられる。例示的な金属複合体は、Au-Ag、Ag-Cu、Au-Ag-Cu、及びAu-Ag-Pdである。金属複合体中の好適な非金属としては、例えば、Si、C、及びGeが挙げられる。銀複合体の様々な構成成分は、例えば、約0.01重量%~約99.9重量%、特に、約10重量%~約90重量%の範囲の量で存在し得る。実施形態では、銀複合体は、銀と、1つ、2つ以上の他の金属と、からなる金属合金であり、銀は、例えば、ナノ粒子の少なくとも約20重量%、特に、ナノ粒子の約50重量%超を構成する。特に記載がない限り、銀含有ナノ粒子の構成成分に関して、本明細書に列挙される重量パーセンテージは、安定剤を含まない。
【0121】
当業者は、銀以外の金属が有用であり得、本明細書に開示される方法に従って、抗微生物性相変化インク組成物で調製され得るか、又はそれと組み合わされ得ることを理解する。したがって、例えば、複合体は、銅、金、パラジウム、又はそのような例示的な金属の複合体のナノ粒子で調製され得る。例えば、抗微生物性剤としてパラジウムを記載している、Adams CP,Walker KA,Obare SO,Docherty KM,PLoS One.2014 Jan 20;9(1):e85981.doi:10.1371/journal.pone.0085981,eCollection 2014を参照されたい。
【0122】
実施形態では、任意選択的なコア金属は、存在する場合、銀、コバルト、銅、ニッケル、金、パラジウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、シェル金属は、銀、コバルト、銅、ニッケル、金、パラジウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、任意選択的なコア金属が存在する場合、銀であり、シェル金属は、銀である。
【0123】
実施形態では、複合ナノ粒子シェルは、樹脂を含み、樹脂は、銀アクリレートモノマー、銀メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される銀複合モノマーを含む。特定の実施形態では、複合ナノ粒子シェルは、樹脂を含み、樹脂は、銀アクリレートモノマー、銀メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される銀複合モノマーを含み、銀複合モノマーは、シェル樹脂の総重量に基づいて、約0.01重量パーセント~約10重量パーセント、又は約0.05重量パーセント~約8重量パーセント、又は約0.05重量パーセント~約4重量パーセントの量でシェル樹脂中に存在する。
【0124】
実施形態では、複合ナノ粒子シェルは、樹脂を含み、シェル樹脂は、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ジアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、スチレン、メタクリル酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるコモノマーを含む。
【0125】
実施形態では、コア樹脂は、銀アクリレートモノマー、銀メタクリレートモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される銀複合モノマーを含む。
【0126】
実施形態では、任意選択的なコア金属が存在する場合、シェル金属は、銀及び1つ以上の他の金属を含む複合体を含むか、任意選択的なコア金属が存在する場合、シェル金属は、銀及び1つ以上の非金属を含む複合体を含むか、又は任意選択的なコア金属が存在する場合、シェル金属は、銀、1つ以上の他の金属、及び1つ以上の非金属を含む複合体を含む。
【0127】
実施形態では、複合体は、限定されないが、カーボンナノチューブ(単層、二層、及び多層を含むCNT)、グラフェンシート、ナノリボン、ナノアニオン、中空ナノシェル金属、ナノワイヤなどの更なるナノ構造化材料を含み得る。実施形態では、CNTは、電気伝導率及び熱伝導率を増強させる量で添加され得る。シェルは、金属又は還元金属を含む樹脂を含み得、コア粒子又はその一部の表面全体を被覆し得る。したがって、シェルは、粒子の外側表面全体を包含し、それによってコア粒子を封入することができるか、又は例えば、コアの表面上の部位に、様々なサイズ、島などの単離されたパッチとして見られ得る。
【0128】
実施形態では、複合コア/シェルナノ粒子が提供され、コアは、任意選択的に金属を含んで、スチレン/アクリレート樹脂を含み得、シェルは、上記の銀イオノマーなどの少なくとも1つの複合スチレン/アクリレート-金属イオンポリマー樹脂を含む。コアは、アクリレート及びスチレンモノマーの乳化重合などの重合によって調製され得る。シェル樹脂は、上記のように調製されて、次いでコア粒子のエマルジョンに添加されて、コア樹脂粒子を封入するシェルを形成し得る。実施形態では、シェル樹脂は、コア粒子上で合成され、適切なシェルモノマー及び開始剤がコア粒子に添加される。実施形態では、金属イオンは、樹脂上又はコア粒子上で還元されて、その上にシェルを形成する。実施形態では、金属は、コアの形成中に還元され得る。実施形態では、金属は、コア上で還元され得る。実施形態では、金属は、シェル上で還元され得る。
【0129】
実施形態では、本明細書に開示されるような抗微生物性相変化インク組成物は、銀金属イオンを含み得る。銀金属イオンは、抗微生物特性を有することが既知であり、抗微生物性金属イオンと称され得る。好適な抗微生物性金属、金属ナノ粒子、及び金属イオンとしては、上記で考察されたもの、並びに銀、銅、亜鉛、金、水銀、スズ、鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、バリウム、カドミウム、クロム、及びタリウムが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、銀、銅、亜鉛、及び金、又はこれらの組み合わせの金属イオンは、人間が使用しても安全であると考えられる。したがって、銀イオンは、単独で、又は銅若しくは亜鉛若しくはその両方と組み合わせて、毒性に対する有効性の比が高い、すなわち有効性が高く、毒性が低い。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような抗微生物性相変化インク組成物は、酸化銅、銀、金、酸化亜鉛、ジンクピリチオン、酸化カルシウム、酸化鉄(III)、二酸化チタン、及び酸化マグネシウム、並びに当該技術分野において既知である他のものを含む、抗微生物活性及び殺生物活性を示す、他の金属性又は金属酸化物又は金属酸化物ナノ粒子を含み得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような抗微生物性相変化インク組成物は、ビグアニド又はビスビグアニドを含み得る。ビグアニドは、一般式HN(C(NH)NH2)2を有する有機化合物である。ほとんどのビグアニドは、水溶性の無色の固体であり、非常に塩基性の溶液をもたらす。これらのビグアニド溶液は、アンモニア及び尿素にゆっくりと加水分解し得る。ビスビグアニドは、それらの殺菌特性についても既知である化学的に関連する化合物の関連カテゴリである。これらの化合物としては、防腐剤クロルヘキシジン、ポリアミノプロピルビグアニド(PAPB)、ポリヘキサニド、及びアレキシジンが挙げられる。クロルヘキシジンは、例えば、微生物の細胞膜を破壊し、細胞内容物を沈殿させるカチオン性ビスビグアニドであり、獣医学における皮膚の防腐剤として広く使用されている。クロルヘキシジンは、皮膚上で持続的な活性を有し、非刺激性であり、体液の存在下で活性であり、急速な殺菌活性を有する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような抗微生物性相変化インク組成物は、N-ハラミン分子を含み得る。N-ハロアミン含有複合体及びコーティングは、広範囲の微生物に対する殺生物効果、長期安定性、再生可能性、人及び環境に対する安全性、並びに低コストを有することが既知である。N-ハラミンは、イミド、アミド、又はアミン基のハロゲン化によって、一般的に形成される1つ以上の窒素-ハロゲン共有結合を含む化合物である。N-ハラミン又はN-ハラミン含有材料と接触すると、微生物は、ハロゲン交換反応を受け、細胞の寿命が尽きる。塩素又は臭素などの無機ハロゲンと比較して、有機N-ハラミンは、より安定であり、腐食性が低く、ハロゲン化炭化水素を発生させる傾向がはるかに少ない。抗微生物性組成物に有用なN-ハラミンの例としては、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、3-ブロモ-1-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、及び1-クロロ-2,2,5,5-テトラメチル-4-イミダゾリジノンなどのモノマーN-ハロアミンが挙げられる。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような抗微生物性相変化インク組成物は、四級アンモニウム化合物(QAC)を含み得る。四級アンモニウム化合物(QAC)はまた、クワットとも称されることもあり、創傷包帯材、ローション、クレンザ、及び本明細書に記載されるようなものなどの、いくつかの用途において殺生物剤として有用であり得る。これらの化合物は、比較的長い接触時間後に、細胞壁及び細胞膜に影響を与えるカチオン性界面活性剤、又は正に帯電した表面活性剤である。QACの永久正電荷は、それらをほとんどの微生物の負に帯電した表面に容易に結合させる。QACは、一般的に非常に安定であり、ほとんどの場合、pHレベルの影響を受けず、長期間表面上で有効なままである。抗微生物活性QACは、他の殺菌剤よりも選択的であり得るが、それらは一般的に、細菌バイオフィルムに対して非常に効果的である。QACの例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セタルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、セトリミド、塩化ドファニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ドミフェン、及び当該技術分野において既知である他のものが挙げられる。
【0133】
抗細菌性添加剤、抗微生物性添加剤、又は殺生物剤添加剤の典型的な配合量は、抗微生物性相変化インク組成物の総重量の約0.01重量%~約30重量%、又は抗微生物性相変化インク組成物の総重量の約0.1重量%~約2.0重量%、又は約1重量%~約10重量%の範囲であり得る。
工学設計された表面トポグラフィ及びテクスチャ加工された表面の特性評価
【0134】
特定の実施形態では、本明細書に記載される抗微生物性相変化インク組成物と、工学設計された表面トポグラフィとの組み合わせは、細菌及び微生物の成長及び/又は汚染からの表面の有利な耐性を提供する。これらの工学設計されたトポグラフィ表面及びそれらのそれぞれの形状は、いくつかの様式で特徴付けられ得るか、又は記載され得る。表面の形状は、抗微生物性相変化インク組成物を様々な基材に直接印刷又は転写することによって生成される突出、陥凹、又は他の形状を含み得る。特定の実施形態におけるこれらの形状は、様々な微生物又は他の潜在的に有害な胞子又は生物学的材料との有利な表面相互活性を達成するために、高さ、間隔、物理的特性、又はこれらの組み合わせの範囲を含み得る。より単純な表面を有する実施形態では、粗さ係数(R)は、生体接着制御又は維持に関連する表面粗さ又はトポグラフィ特性の尺度として使用され得る。粗さ係数又はRは、実際の表面積(Ract)と幾何学的表面積(Rgeo)との比;R=Ract/Rgeoとして定義され得る。単純な表面の場合、この粗さ係数は、表面形状測定などのいくらか従来の測定から計算され得る。1cm2の材料の細片の例では、例の試料が完全に平坦である場合、実際の表面積及び幾何学的表面積は両方とも1cm2であろう。得られた粗さ係数は、1であろう。代替的に、フォトリソグラフィ及び/又は選択的エッチングを使用するなどの、パターン化によって平坦な表面が粗面化された場合、得られた実際の表面積は、発生した陥凹形状及び/又は突出形状の側壁によって提供される追加の表面積に起因して、元の幾何学的表面積と比較してはるかに大きくなる。例として、得られた露出表面積が元の平坦な表面の表面積の2倍である場合、R値は、したがって2であろう。本明細書に記載されるような抗微生物性コーティング組成物の実施形態では、工学設計された表面トポグラフィは、約X~約Y、又は約X~約Y、又は約X~約Yの実際の表面積と幾何学的表面積との比を有し得る。そのような表面の粗さは、測定されたプロファイル面積の算術平均偏差を測定するRa、表面上の単一のサンプリング長内のプロファイルの平均的な山から谷までの高さを測定するRz、又は当業者に既知である他の表面形状測定方法などの、接触及び非接触手段を使用して測定され得る。特定の実施形態では、Ra測定は、滑り表面の平滑性を特徴付けするために使用され得、一方Rz測定は、表面又はそこからの特定の突出若しくは陥凹の高さを特徴付けするために使用され得る。Ra単独の使用は、単一の突出などのいくつかの点を見落とす可能性があるが、Ra及びRzの両方を一緒に使用することは、有利であり得る。接触表面形状測定方法の例としては、約1nmの測定分解能及び最大1mmの高さ測定を有し得るスタイラス型粗さ試験機、<0.01nmの測定分解能及び最大10マイクロメートルの高さ測定を有し得る原子間力顕微鏡(AFM)が挙げられる。非接触表面形状測定方法としては、<0.1nmの測定分解能及び最大約3mmの高さ測定を有する白色光干渉計、又は約0.1nmの測定分解能及び最大約7mmの高さ測定を有するレーザ顕微鏡法が挙げられる。
【0135】
工学設計された粗さ指数又はERIは、そのような工学設計された表面の別の特性評価方法である。ERIは、生体接着制御又は維持に使用される表面トポグラフィの特性評価に関連する当該技術分野において既知である無次元比である。ERIを使用した特性評価は、工学設計されたトポグラフィ表面を有する特定の基材材料のトポグラフィ形状及び機械的特性の用途固有の変形を説明し得る。更に、そのような工学設計された表面トポグラフィ特性評価は、Wenzel R N.1936に記載されているような、水による濡れに対する固体表面の抵抗であるWenzelの粗さ係数と比較して、工学設計された表面トポグラフィのより包括的定量的考察を提供し得る。Ind Eng Chem 28:988-994、これは、参照によりその全体が組み込まれる。Wenzelの考察単独では、本開示に記載されるような、工学設計されたトポグラフィの複雑な表面を適切に捕捉できない可能性がある。
【0136】
ERIは、Wenzelの粗さ係数、押下表面割合、及び以下のような胞子の動きの自由度に基づく無次元比として表され得、
【数1】
【0137】
ここで、rは、Wenzel粗さ比であり、実際の表面積と投影された平面表面積との比を指し、実際の表面積は、形状の頂部、形状の壁、及び形状間の押下領域に関連する面積を含み、投影された平面表面積は、形状の頂部及び押下部のみを含み、nは、表面の設計中の異なる表面形状の数であり、φは、異なる表面形状の頂部の面積割合である。例として、完全に平滑な表面は、ERI=0を有するであろう。特定の実施形態では、海洋用途における防汚特性に関連する当該技術分野において既知であるものに加えて、この等式の使用は、1平方ミリメートル当たりの微小汚損胞子の量のモデリングを可能にし得る。ERI値の増加は、既知の用途における微小汚損定着の低減のための指標である。特定の実施形態では、ERI=5.0を有する2μm直径の円形ピラー、又はERI=6.1を有する2μm幅の隆起部などの、人工的にパターン化されていないナノスケールの粗い表面は、それぞれ36%及び31%汚損定着を低減する一方、2μm直径の円形ピラー、及びERI=8.7を有する10μmの正三角形からなるより規則的にパターン化された表面は、58%胞子定着を低減する。
【0138】
当該技術分野における追加の情報源では、例えば、Callowらの「Trends in the development of environmentally friendly fouling-resistant marine coatings」Nature Communications(2011)は、参照によりその全体が組み込まれるが、ERII及びERIIIにも言及しており、これらは、表面の追加の幾何学的パラメータを伴っており、
【数2】
【0139】
ここで、rは、Wenzelの粗さ係数であり、(1-φs)は、形状頂部の面積割合、すなわち、形状間の押下表面積と投影された平面表面積との比であり、dfは、胞子の動きの自由度(1又は2)である。胞子定着は、ERIIの増加と共に減少することが示され得る。表面材料の、接触角によって測定されるような疎水性、又は当該技術分野で既知である他の表面測定値はまた、いくつかの実施形態では、Wenzel粗さ係数によって得られるような表面粗さにも関連する。特定の実施形態では、曲げモーメント又は剛性などのトポグラフィ形状の特性もまた、胞子の定着につながるナノ力勾配をもたらし得る。言い換えれば、ナノ力勾配の発生は、細胞が接触している突出トポグラフィ形状の曲げモーメント又は剛性の関数としてみなされ得る。この概念は、トポグラフィ表面における多数の異なる形状を考慮すると、当業者に既知である改定されたERIモデル(ERIII)において、dfをnに置換することにつながったトポグラフィによる阻害の別の予測因子であり得る。
【0140】
本明細書に記載されるような抗微生物性コーティング組成物は、約5~約50、又は約5~約30、又は約7~約20の、記載される任意のモデルによって特徴付けられるような工学設計された粗さ指数(ERI)を有し得る。本明細書に記載されるような抗微生物性コーティング組成物は、約2~約40、又は約4~約30、又は約10~約30の実際の表面積と幾何学的表面積との比を有する工学設計された表面トポグラフィを有し得る。
本明細書に記載されるような抗微生物性コーティング組成物は、約1~約5000nm、又は約250nm~約2000、又は約500nm~約1000nm離間された突出形状を含む工学設計された表面トポグラフィを有し得る。本明細書に記載されるような抗微生物性コーティング組成物は、約10~約5000nm、又は約400nm~約2000nm、又は約500nm~約1000nmの高さを有する突出形状を有し得る。
印刷装置及びプロセス
【0141】
本放射線硬化性抗微生物性相変化インク組成物、並びに本明細書の方法は、ソリッドオブジェクトプリンタ、サーマルインクジェットプリンタ(室温で液体のインク及び相変化インクの両方)、圧電インクジェットプリンタ(室温で液体のインク及び相変化インクの両方)、アコースティックインクジェットプリンタ(室温で液体のインク及び相変化インクの両方)、熱転写プリンタ、グラビア印刷機、静電写真式印刷方法(乾式マーキング材料を用いるもの及び液体マーキング材料を用いるものの両方)などの、三次元物体を調製するのに好適なシステムを含む、任意の所望の印刷システムに用いられ得る。他の実施形態では、インク材料は、モールドの使用を通して、又はインク材料の手動堆積によって、三次元物体の手動調製に使用されて、所望の構造化された又はテクスチャ加工された表面、又は三次元物体を調製し得る。
【0142】
インクジェット印刷デバイスは、当該技術分野において既知である。例えば、インクジェット印刷デバイスは、一般的に、2つのタイプ、連続流及びドロップオンデマンドである。連続流インクジェットシステムでは、インクは、少なくとも1つのオリフィス又はノズルを通って圧力下で連続流として射出される。流れが乱されることで、オリフィスから一定の距離で液滴に分解される。分解点において、液滴を再循環用のガター又は記録媒体上の特定位置へと向けるために、液滴はデジタルデータ信号に従って帯電され、各液滴の軌跡を調節する静電場を通過させられる。ドロップオンデマンドシステムでは、液滴は、デジタルデータ信号に従って、記録媒体上の位置に直接オリフィスから吐出される。液滴は、記録媒体上に配置される場合以外、形成も吐出もされない。
【0143】
一般的に、3種類のドロップオンデマンドインクジェットシステムが存在する。1つの種類のドロップオンデマンドシステムは、主要構成要素として、一端にノズルを有するインク充填チャネル又は通路と、もう一方の端付近に圧力パルスを生成する圧電振動子を有する圧電デバイスである。別の種類のドロップオンデマンドシステムは、音響インク印刷として既知である。既知のように、音響ビームは、衝突する物体に対して放射圧をかける。したがって、音響ビームが下から液体のプールの自由表面(すなわち、液体/空気界面)に衝突すると、プールの表面に対してかかる放射圧は、表面張力の拘束力にもかかわらず十分に高いレベルに到達可能であり、プールから液体の個々の液滴を放出し得る。プールの表面上又はその近くにビームを集中させると、所与の量の入力電力に応じてかける放射圧が増大する。更に別の種類のドロップオンデマンドシステムは、熱インクジェット又はバブルジェットとして既知であり、高速液滴を生成する。この種類のドロップオンデマンドシステムの主要構成要素は、一端にノズルを有するインク充填チャネル、及びノズル付近の発熱抵抗器である。デジタル情報を表す印刷信号は、オリフィス又はノズル付近の各インク通路内の抵抗層内の電流パルスを発し、すぐ近傍のインク媒体(通常は水)をほぼ瞬時に蒸発させ、気泡を生じる。オリフィスにおいてインクは、気泡が膨張するにつれて推進液滴として押し出される。
【0144】
圧電インクジェットデバイスの典型的な設計では、インク噴射ヘッドに対する画像受容部材又は中間転写部材などの、基材の4~18回転(増分運動)中に、適切に着色されたインクを噴射することによって、画像が適用される。すなわち、各回転の間に基材に対する印刷ヘッドの小さな並進がある。この手法によって、印刷ヘッドの設計が簡略化され、小さな動きにより液滴の良好な位置合わせが確実になる。噴射操作温度では、液体インクの液滴が、印刷デバイスから排出される。インク液滴が記録基材の表面に接触する場合、それらは急速に固化して、固化インク液滴の所定のパターンを形成する。
【0145】
実施形態では、インクジェット印刷デバイスが用いられ得る。インクジェット印刷装置は、少なくともインクジェット印刷ヘッド、及びインクがインクジェット印刷ヘッドから噴射される印刷領域表面を含み、そこで、インクジェット印刷ヘッドと印刷領域表面との間の高さ距離が調節可能である。この場合、インクジェット印刷ヘッドが、通常の高さの印刷のための第1の位置から、第1の高さの距離よりも大きい(すなわち、インクジェット印刷ヘッドと印刷領域表面との間の間隔がより大きい)第2の高さの距離まで移動することを可能にするように、インクジェット印刷ヘッドは、印刷領域表面に対して間隔を調節可能である。第2の高さの距離は、固定されず、所与の印刷の必要に応じて変化させることができる。更に、必要に応じて、印刷中に第2の高さの距離自体を変更することができる。例えば、インクジェット印刷ヘッドによって画像が形成する際に、高さの距離を第1の位置から第2の位置に調節し、次いで、画像の形成が進むにつれて、インクジェット印刷ヘッドを第2の位置から、印刷領域表面からの間隔がまた更に増加する第3の位置まで調節して、必要に応じて、物体の形成を完成させることが望ましい場合がある。
【0146】
実施形態では、インクジェット印刷ヘッド又は目標ステージは、三次元、x、y、及びzで移動可能であり得、任意の所望のサイズの物体の形成を可能にする。更に、三次元物体は、所望の物体の高さ及び形状を達成するために、インクジェット印刷ヘッドを領域上に適切に複数回通過させて形成され得る。インクジェット印刷ヘッドの複数の異なるインク噴射口から、1回の通過で画像の同じ位置に向けてインクを噴射することも、隆起した高い物体を形成するために使用され得る。以下で考察されるように、実施形態では、インクの各層は、約1~約6mmの高さを画像の高さに加え得る。所望の総印刷高さを知ることによって、適切な数の通過又は噴射が容易に決定され得る。
【0147】
次いで、コントローラは、インクジェット印刷ヘッドを制御して、画像の位置にインクの適切な量及び/又は層を堆積させて、所望の印刷高さ及びその中の全体的な形状を有する画像を得ることができる。特定の実施形態では、印刷システムは、基材を連続的に印刷システムに通して供給する方法を利用しながら、1回の通過で目標の又は特定の表面トポグラフィを構築するように追加の印刷ヘッドを用い得る。
【0148】
インクジェット印刷ヘッドは、単一色又はフルカラー印刷に対応し得る。フルカラー印刷では、インクジェット印刷ヘッドは、典型的には、異なる色を印刷するための異なるチャネルを含む。インクジェット印刷ヘッドは、4つの異なるチャネルセット、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各々に対して1つを含み得る。そのような実施形態では、インクジェット印刷ヘッドは、インクジェット印刷ヘッドが印刷領域表面から最小距離に設定されている場合、フルカラーの通常の高さの印刷、又はインクジェット印刷ヘッドが印刷領域表面から最小距離よりも大きい距離にある場合、任意の色の隆起した高さの印刷のいずれかを印刷することが可能である。
【0149】
本明細書で調製される工学設計された表面トポグラフィを有する構造化された若しくはテクスチャ加工された組成物又は三次元物体は、自立型部品又は物体、ラピッドプロトタイピングデバイス、例えば、トポグラフィマップなどの基材上の隆起構造、又は他の所望の物体であり得る。任意の好適な基材、記録シート、又は取り外し可能な支持体、ステージ、プラットフォームなどは、その上に三次元物体を堆積させるために用いられ得、XEROX(登録商標)4024紙、XEROX(登録商標)Image Series紙、Courtland 4024 DP紙、罫線入りのノート紙、ボンド紙など普通紙、Sharp Companyシリカコート紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT(登録商標)紙などのシリカコート紙、XEROX(登録商標)Digital Color Gloss、Sappi Warren Papers LUSTROGLOSS(登録商標)など光沢性コート紙、透明材料、布地、織物製品、プラスチック、ポリマーフィルム、金属及び木材など無機基材、並びにワックス又は塩など溶融可能な又は溶解可能な基材(自立物体などの取り外し可能な支持体の場合)が含まれる。
【0150】
上記の印刷装置で使用されるインク組成物は、任意の所望の又は好適な方法によって調製され得る。例えば、インク成分を一緒に混合し、続いて約80℃~約120℃の実施形態の温度に加熱し、均質なインク組成物が得られるまで撹拌し、続いてインクを周囲温度(典型的には約20℃~約25℃)に冷却することができる。
【0151】
インク組成物は、一般的に、約5~約20センチポアズ、又は約7~約15センチポアズなどの、約2~約30センチポアズの、噴射温度(例えば、噴射温度は、例えば約60℃~約110℃、又は約70℃~約100℃などの、約50℃~約120℃であり得る)での溶融粘度を有する。
【0152】
実施形態では、インクは、低温、特に、約40℃~約110℃、又は約50℃~約110℃、又は約60℃~約90℃などの、約110℃未満の温度で噴射される。そのような低い噴射温度では、従来のように噴射インクとインクが噴射される基材との間の温度差を使用して、インク中の急速な相変化(すなわち、液体から固体)を行うことは、有効ではない場合がある。したがって、ゲル化剤は、基材上の噴射インク中の急速な粘度増加に影響を与えるために使用され得る。特に、噴射されたインク液滴は、紙若しくは透明材料などの最終記録基材、又はインクが液体状態からゲル状態(又は半固体状態)へと著しい粘度変化を受ける相変化転移の作用を通して、インクのインク噴射温度よりも低い温度に維持される転写ドラム若しくはベルトなどの中間転写部材などの受容基材上の位置に固定され得る。
【0153】
実施形態では、インクがゲル状態を形成する温度は、インクの噴射温度未満の任意の温度、例えば、インクの噴射温度よりも約5℃以上低い任意の温度である。実施形態では、ゲル状態は、約30℃~約70℃などの、約25℃~約100℃の温度で形成され得る。インク粘度の急速かつ大きな増加は、インクが液体状態にある噴射温度から、インクがゲル状態にあるゲル温度まで冷却すると生じる。粘度増加は、実施形態では、粘度の少なくとも102.5倍の増加である。
【0154】
インクがゲル状態にある場合、インクの粘度は、一実施形態では、少なくとも約1,000センチポアズ、別の実施形態では、少なくとも約10,000センチポアズ、更に別の実施形態では、少なくとも約100,000センチポアズである。ゲル状態での粘度値は、一実施形態では、少なくとも約103センチポアズ、別の実施形態では、少なくとも約104.5センチポアズ、一実施形態では、約109センチポアズ以下、別の実施形態では、約106.5センチポアズ以下である。好ましいゲル相粘度は、印刷プロセスによって変化し得る。例えば、インクのブリード及びフェザリングの影響を最小限に抑えるために、多孔質紙に直接噴射する場合、又は中間転写を用いる場合、最高粘度が好ましい。一方、プラスチックなどの多孔質性の低い基材は、ドットゲイン及び個々のインクピクセルの凝集を制御する、より低いインク粘度の使用をもたらし得る。ゲル粘度は、インク配合物及び基材温度によって制御され得る。放射線硬化性インクのゲル状態の更なる利点は、粘度が約103~約104センチポアズと高くなると、インク中の酸素の拡散が低減され得、これによって、フリーラジカル開始におけるより速い硬化速度につながり得ることである。本システムでは、到達した最大粘度は、これらの値(約105~約106センチポアズ)を超える。
【0155】
実施形態では、硬化性インクの連続層を堆積させて、選択された高さ及び形状を有する物体を形成し得る。例えば、高さ約1~約10,000マイクロメートルの物体。硬化性インクの連続層は、三次元物体を層状様式で形成するために、構築プラットフォーム又は固化材料の先の層に堆積し得る。実施形態では、マイクロサイズスケールからマクロサイズスケールの、事実上任意の設計の物体が作成され得、単純な物体から複雑な形状を有する物体を含み得る。本明細書のインクジェット材料及び方法は、(コンピュータ数値制御機械加工などの除去プロセスとは対照的に)非接触付加プロセスを更に有利なことに提供し、それは、時間的及び空間的に正確な位置に、定量の本発明のインク材料を供給する組み込み能力を提供する。
【0156】
実施形態では、相変化インク組成物の第1及び各連続層の厚さは、約0.52~約5.5mm、約1.02~約5mm、約1.52~約4.5mm、又は約2.02~約4mmなどの、約0.02~約6mmであり得る。
【0157】
室温での本材料のゲルの性質は、印刷された液滴の拡散又は移動を防止し、三次元構造の容易な形成を可能にする。作成され得る物体の高さ又は全体的なサイズに限定はないが、非常に大きな物体は、堆積プロセスにおける中間硬化を必要とし得る。この材料の放射線硬化性の性質に起因して、印刷物体は、製作プロセス中の任意の時点での紫外線への曝露によって硬化し得、高度の機械的強度を有するより堅牢な物体をもたらす。「硬化」とは、インク中の硬化性化合物が、化学線への曝露時に、架橋、鎖延長などの分子量の増加を受けることを意味する。
【0158】
実施形態では、本明細書に開示される放射線硬化性相変化インクは、三次元物体の各層が堆積した後に硬化し得る。他の実施形態では、インクは、三次元物体の全ての層の堆積完了時に硬化し得る。上記のように、約0.02~約6mmの厚さを有する印刷層は、機械的に安定な物体を構築するために必要な硬化工程を低減し、各堆積後に各層を硬化させる必要性を更に低減する。
【0159】
インクの硬化は、任意の所望の又は有効な波長でのインク画像の化学線への曝露によって影響を受ける可能性がある。例えば、波長は、約200~約480ナノメートルであり得る。化学線への曝露は、任意の所望の又は有効な期間であり得る。例えば、露光は、約1~約15秒などの、約0.2~約30秒間行われ得る。
【0160】
実施形態では、x、y、z可動性基材、ステージ、又は構築プラットフォームが、自立型物体を作成するために用いられる。すなわち、三次元製品は、自立型で、印刷された物体、又は製作された物体であり、基材上の画像ではないので、最終的な基材は存在しない。取り外し可能な構築プラットフォーム又は支持材料は、任意の好適な材料、例えば、実施形態では、非硬化性材料であり得る。好適な非硬化性支持体材料の具体例としては、中でも、ワックス、プラスチック、金属、木材、及びガラスが挙げられる。
【0161】
実施形態では、構造化表面又は三次元物体は、剛直性及びゴム状構成成分の両方を有し得る。例えば、1つの構成成分は、物体の別の構成成分の硬化性モノマーよりも低い又は高い室温弾性率を付与する硬化性モノマーを含む材料を使用することによって印刷され得る。実施形態では、三次元物体は、端部にハードキャップを有するゴム様支柱などの単一の物体内に交互の剛性及び可撓性層を有し得る。そのような例では、低弾性率材料が最初に、続いて後続の高弾性率材料が印刷され得、その後、印刷材料を硬化させることができる。代替の実施形態では、非硬化性インク、水系インク、又は高ビルド粘性インクは、本明細書に記載されるような方法において利用され得る。代替的な実施形態は、インクが乾燥、加熱、又は放射線若しくは外部放射線若しくは光源を使用せずに架橋若しくは硬化し得るため、放射線硬化又は架橋されていないインクを利用し得る。
【0162】
図1は、実施形態による、転写ロールプロセスを使用して、抗微生物性インクを基材に塗布するためのプロセスを示す概略図である。この方法では、操作時に回転方向106に回転するテクスチャ加工された表面104を有するローラ102を有する転写ロールシステム100が示される。ローラ102が回転すると、インク供給システム108は、未硬化の抗微生物性インク110を、ローラ102又はインク110の表面に接触するドクターブレードアセンブリ112によって部分的に調節された厚さまで、ローラ102上に堆積又は塗布する。基材114は、上側のローラ102と、基材114の反対側に圧力を与える下側の押圧ローラ116の両方に接触するシステムを通して、回転方向118に移動しながら方向120に移動し、このように、未硬化の抗微生物性インク110をテクスチャ加工されたロール102から基材114に転写する。この様式で、ローラ102のテクスチャ加工された表面104の押圧は、硬化前にインク110の印刷表面に付与される。基材114がローラを出ると、インク110は、使用されるインクの種類を硬化させるのに好適なUVレーザ又は他の放射線源などの放射線源122に供される。代替の実施形態は、赤外線若しくは可視、又はこれらの組み合わせなどの、紫外線以外の波長の熱源又は放射線を提供し得る。代替の実施形態はまた、インク内での硬化又は架橋を開始するために必要な放射線を提供することが可能であるUVランプ、UV LED光源、他のUV若しくは放射線源、又はこれらの組み合わせを利用し得る。出ると、硬化したインク表面は、基材114の表面上にテクスチャ加工されたインク組成物124をもたらす。
【0163】
図2A~
図2Cは、実施形態による、抗微生物特性を有する印刷されテクスチャ加工された表面を作成するための代替的な方法を示すいくつかのフロー図である。
図2Aに示されるのは、テクスチャ206を含むテンプレートを設計することを含む、テクスチャ加工された抗微生物性表面を調製する方法200であり、これは、当業者に既知である任意のデジタルコンピュータ支援設計又は物理的方法に従って行われ得る。次に、テンプレートのネガをスタンピング表面208上に印刷することが行われ、これは、シリコーン、ポリウレタン、又はそのような様式での転写印刷において有用な他の好適な媒体を含む、様々な好適な基材上で行われ得る。次いで、スタンピング基材は、未硬化の抗微生物性インク210でプレ印刷された基材上に型押しされ、したがって、本明細書に記載されるように、インクが塗布された表面にテクスチャ加工又は工学設計されたトポグラフィ表面を付与する。最後に、基材の表面上の未硬化の抗微生物性インク212を硬化又は架橋するために、光源又は放射線源が提供される。
図2Bは、前述のようにテクスチャ214を含むテンプレートを設計することと、未硬化の抗微生物性インク216及び本明細書に記載されるような好適な印刷方法を使用してテンプレートを基材上に直接印刷することとを含む、テクスチャ加工された抗微生物性表面を調製する第2のプロセス202を示す。最後に、この方法202は、未硬化の抗微生物性インク218を基材の表面上に硬化又は架橋するために提供される光源又は放射線源を含む。
図2Cは、
図1において、より詳細に示されるプロセスを記載するフロー図を示す。テクスチャ加工された抗微生物性表面を調製するこの第3のプロセス204は、未硬化の抗微生物性インクをテクスチャ加工されたロール220に塗布することと、未硬化の抗微生物性インクをテクスチャ加工されたロールから基材222に転写することと、最後に、未硬化の抗微生物性インク224を基材の表面上に硬化又は架橋させるために提供される光源又は放射線源を提供することとを含む。
【0164】
代替の実施形態では、硬化性抗微生物性相変化インク組成物を使用して、ナノ構造化表面トポグラフィパターン化を実証するための代替手法としては、抗微生物性インク組成物を基材又は物体へ直接印刷すること、インクジェット印刷を介してマイラー基材上にスタンプを作成すること、ナノ構造の具体的な配置及び形状を含有するメタルマスクを通して抗微生物性相変化インク組成物を展延すること、又はこれらの組み合わせが挙げられ得る。具体的な方法の実施形態は、処理される基材、又は利用可能な印刷機器に応じて選択され得る。他の実施形態では、所望の基材に転写される前のインクを部分的に硬化させるためのパターン化の前に、UVレーザを含む追加の光源がある場合がある。フルオロカーボン系剥離コーティング又は類似の材料などの、剥離剤又は剥離コーティングの基材への塗布を含む追加の方法工程は、自立型硬化抗微生物性相変化インク組成物の解放を促進するために、用途又は処理される材料に応じて使用され得る。
【実施例0165】
以下の実施例は、本開示の様々な種類を更に定義するために提示される。これらの実施例は、例示のみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。特に指示がない限り、分率及び百分率は重量である。
【0166】
UV硬化性ゲル化剤インクは、インクジェット系印刷用途又は様々な塗布方法を使用する他の隆起印刷用途で使用され得る。これらの材料は、放射線硬化性モノマー及び/又はオリゴマー、光開始剤パッケージ、反応性ワックス、及びゲル化剤からなる。隆起印刷材料は、高温での堅牢な噴射(10~15cPs)、及び周囲基材温度(すなわち室温)である程度の機械的安定性(105~106cPs)を有する。印刷後、マーキングが硬化して、堅牢な構造を提供する。典型的な配合組成物が以下に開示される。
【表1】
【0167】
上記配合の代替実施形態は、金属イオン、銀ナノ粒子、ビグアニド、N-ハラミン分子(例えば、1-クロロ-2,2,5,5-テトラメチル-4-イミダゾリジノン(MC))、及び四級アンモニウム化合物(QAC)を含み得、これらの全ては、創傷包帯材、ローション、及びクレンザなどの用途に一般的に使用される殺生物剤である。殺生物剤の典型的な配合量は、最終的なUV硬化性相変化硬化性インク組成物の0.05%~2%の範囲であり得る。グラム陽性及び陰性細菌の両方の広範囲に対して優れた抗微生物活性及び殺生物活性を示した関心対象のナノ粒子としては、酸化銅、銀、金、酸化亜鉛、ジンクピリチオン、酸化カルシウム、酸化鉄(III)、二酸化チタン、及び酸化マグネシウムが挙げられる。
【0168】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載する数値は、可能な限り正確に報告する。しかしながら、いかなる数値も、それぞれの試験測定において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。更に、本明細書に開示される全ての範囲は、その中に含まれる任意及び全てのサブ範囲を包含すると理解されるべきである。
【0169】
本教示は1つ以上の実装形態に関して示されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示された実施例に対して変更及び/又は修正を行うことができる。加えて、本教示の特定の特徴がいくつかの実装形態のうちの1つにのみ関して開示されていることがあり得るが、そのような特徴は、任意の所与の機能又は特定の機能のために所望されかつ有利であり得るものとして、他の実装形態の1つ以上の他の特徴と組み合わされ得る。更に、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、又はそれらの変形が発明を実施するための形態及び特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の方法で包括的であることが意図されている。更に、本明細書における考察及び特許請求の範囲内の「約」という用語は、変更が示された実装形態へのプロセス又は構造の非適合性をもたらさない限り、列挙された値が幾分変更され得ることを示す。最後に、「例示的な」は、説明が理想的であることを示唆するのではなく、例として使用されていることを示す。
【0170】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、若しくは改善が、以後に当業者によってなされ得、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。