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特開2022-135962回路基板、回路基板の製造方法および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135962
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】回路基板、回路基板の製造方法および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220908BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220908BHJP
   H01L 23/15 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 T
H05K3/46 Z
H01L23/12 N
H01L23/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022839
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2021034303
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504112447
【氏名又は名称】FICT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 泰治
(72)【発明者】
【氏名】飯田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】高野 憲治
(72)【発明者】
【氏名】中川 隆
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 孝之
(72)【発明者】
【氏名】宮川 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】矢島 章
(72)【発明者】
【氏名】平野 伸
(72)【発明者】
【氏名】青井 孝大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋一
(72)【発明者】
【氏名】江村 美緒
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA32
5E316AA38
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC10
5E316CC14
5E316CC18
5E316CC31
5E316CC32
5E316DD24
5E316EE31
5E316FF04
5E316FF07
5E316FF08
5E316FF10
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH11
5E316HH16
5E316HH33
5E316JJ12
(57)【要約】
【課題】クラックを防止して、広い温度範囲での動作の信頼性に優れた構成の、半導体素子を内蔵した回路基板を提供することを目的とする。
【解決手段】回路基板10Aは、第2絶縁基板2に第1接着層7aを介して第1絶縁基板1が積層されており、第1絶縁基板1に形成された埋め込み部1cに半導体素子9が内蔵されている構成である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層が形成された絶縁基板を耐熱性の接着層を介して積層した多層配線基板であって、
無機材からなる前記絶縁基板のうちの第1絶縁基板は積層方向に抜けた埋め込み部が形成されており、前記埋め込み部に半導体素子が内蔵されている構成であること
を特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記半導体素子は光デバイスであり、前記第1絶縁基板に第1電子部品が実装されており、前記第1絶縁基板に光導波路が形成されており、前記第1電子部品と前記光デバイスとが接続しており、かつ、前記光デバイスと前記光導波路とが結合していること
を特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記無機材はガラスであり、前記接着層は熱可塑性樹脂からなること
を特徴とする請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記接着層のうちの少なくとも前記第1絶縁基板を接着する層は積層構造になっており、前記第1絶縁基板に密着する第1層は熱硬化性樹脂からなり、前記第1層に密着する第2層は熱可塑性樹脂からなること
を特徴とする請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項5】
前記半導体素子における外部電極は前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストによって接続されている構成であること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の回路基板。
【請求項6】
前記光デバイスは第1外部電極と第2外部電極とを有しており、前記第1外部電極は前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストに接続されており、前記第2外部電極は前記第1電子部品に接続されている構成であること
を特徴とする請求項2に記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の回路基板を有する電子機器。
【請求項8】
金属層が形成された絶縁基板を耐熱性の接着層を介して積層し多層配線基板を製造する製造方法であって、
無機材からなる前記絶縁基板のうちの第1絶縁基板は積層方向に抜けた埋め込み部が形成されており、
前記第1絶縁基板を積層した後に、前記埋め込み部に半導体素子を内蔵すること
を特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記半導体素子は光デバイスであり、前記第1絶縁基板に光導波路を形成して、前記光デバイスと前記光導波路とを結合し、かつ、前記第1絶縁基板に第1電子部品を実装するとともに前記第1電子部品と前記光デバイスとを接続すること
を特徴とする請求項8に記載の回路基板の製造方法。
【請求項10】
前記無機材はガラスであり、前記接着層は熱可塑性樹脂からなること
を特徴とする請求項8または9に記載の回路基板の製造方法。
【請求項11】
前記接着層のうちの少なくとも前記第1絶縁基板を接着する層は積層構造になっており、前記第1絶縁基板に密着する第1層は熱硬化性樹脂からなり、前記第1層に密着する第2層は熱可塑性樹脂からなること
を特徴とする請求項8または9に記載の回路基板の製造方法。
【請求項12】
前記半導体素子における外部電極を前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストによって接続すること
を特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項13】
前記光デバイスは第1外部電極と第2外部電極とを有しており、前記第1外部電極を前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストに接続し、かつ、前記第2外部電極を前記第1電子部品に接続すること
を特徴とする請求項9に記載の回路基板の製造方法。
【請求項14】
前記埋め込み部をエッチングにて形成すること
を特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載の回路基板の製造方法。
【請求項15】
前記光導波路をパターニングまたはイオン交換処理にて形成すること
を特徴とする請求項9に記載の回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板、回路基板の製造方法および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信機器におけるデータ伝送量の増大や高密度実装に伴う発熱量の増大など、基板における実装技術の必要性がより高まっている。一例として、製造プロセスにおける割れを低減するために無機多層基板が提案されている(特許文献1:特開2020-087938号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-087938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機基板に半導体素子を内蔵した構造は、高温環境下では熱歪みの影響を受けてクラックが生じるリスクを有する。無機基板は、有機基板よりも熱膨張率が小さく、平坦度が高く、かつ、広い温度範囲で寸法安定性に優れる。一方、無機基板は、有機基板よりも脆いため、高密度実装に際し、製造プロセスにおけるクラックを防止した接合構造が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされ、クラックを防止して、広い温度範囲での動作の信頼性に優れた構成の、半導体素子を内蔵した回路基板を提供することを目的とする。
【0006】
一実施形態として、以下に開示する解決手段により、前記課題を解決する。
【0007】
本発明に係る回路基板は、金属層が形成された絶縁基板を耐熱性の接着層を介して積層した多層配線基板であって、無機材からなる前記絶縁基板のうちの第1絶縁基板は積層方向に抜けた埋め込み部が形成されており、前記埋め込み部に半導体素子が内蔵されている構成であることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、クラックを防止して、広い温度範囲での動作の信頼性に優れた構成の、半導体素子を内蔵した回路基板にできる。
【0009】
一例として、前記半導体素子は光デバイスである。この構成によって、光インターコネクションに好適な回路基板が容易にできる。一例として、前記半導体素子は光デバイスであり、前記第1絶縁基板に第1電子部品が実装されており、前記第1絶縁基板に光導波路が形成されており、前記第1電子部品と前記光デバイスとが接続しており、かつ、前記光デバイスと前記光導波路とが結合している構成である。一例として、前記半導体素子は光デバイスであり、前記第1絶縁基板に光導波路を形成して、前記光デバイスと前記光導波路とを結合し、かつ、前記第1絶縁基板に第1電子部品を実装するとともに前記第1電子部品と前記光デバイスとを接続する。この構成によれば、光デバイスを内蔵した回路基板にできるとともに、第1電子部品と光デバイスと光導波路との組み合わせによって、光インターコネクションに好適な回路基板にできる。
【0010】
前記無機材はガラスであることが好ましい。ガラスは、平坦度が高く、かつ、広い温度範囲で寸法安定性に優れているので、積層体を形成することが容易にできる。一例として、前記接着層は熱可塑性樹脂からなる。これにより、硬化の際の熱歪みが小さくなって積層体を形成する際にクラックを防止できる。
【0011】
一例として、前記接着層のうちの少なくとも前記第1絶縁基板を接着する層は積層構造になっており、前記第1絶縁基板に密着する第1層は熱硬化性樹脂からなり、前記第1層に密着する第2層は熱可塑性樹脂からなる構成である。前記熱硬化性樹脂は前記熱可塑性樹脂の軟化点よりも軟化点が低い樹脂成分を含んでいる。これにより、硬化の際の熱歪みが小さくなって積層体を形成する際にクラックを防止できることに加えて、第1絶縁基板との密着力をさらに向上できる。
【0012】
一例として、半導体素子は多層基板の外層のうちの第1絶縁基板に収まった状態で当該半導体素子の外部電極と多層基板の外層に実装された電子部品の外部電極とが接続される構成である。一例として、半導体素子は多層基板の内層のうちの第1絶縁基板に収まった状態で当該半導体素子の外部電極と多層基板の外層に配された配線パターンとが接続される構成である。
【0013】
一例として、前記半導体素子における外部電極は前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストによって接続されている構成である。一例として、前記半導体素子における外部電極を前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストによって接続する。一例として、前記光デバイスは第1外部電極と第2外部電極とを有しており、前記第1外部電極は前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストに接続されており、前記第2外部電極は前記第1電子部品に接続されている構成である。一例として、前記光デバイスは第1外部電極と第2外部電極とを有しており、前記第1外部電極を前記絶縁基板のうちの第2絶縁基板に充填された導電性ペーストに接続し、かつ、前記第2外部電極を前記第1電子部品に接続する。この構成によれば、内蔵された光デバイス等の半導体素子の外部電極と多層基板の外層における配線パターンとの層間接続が容易にできる。
【0014】
本明細書において、前記光デバイスには、光電気変換素子を有する構成、光スイッチを有する構成、光集積回路を有する構成、光変調器を有する構成、光導波路を有する構成、またはそれらの一種以上を有する構成が含まれる。また本明細書において、前記第1電子部品や後述する第2電子部品には、能動素子を有する構成、受動素子を有する構成、半導体素子を有する構成、集積回路を有する構成、コネクタを有する構成、またはそれらの一種以上を有する構成が含まれる。
【0015】
一例として、前記埋め込み部はエッチングにて形成されている構成である。一例として、前記埋め込み部をエッチングにて形成する。この構成によれば、原理上、埋め込み部は加工プロセスにてクラックが生じない。一例として、積層プロセスの後に、第1絶縁基板の表面に保護層を設けて前記埋め込み部をエッチングにて形成するとともに、ダイシングのための溝をエッチングにて形成し、その後、形成したダイシングのための溝に合わせてダイシングして個片化する。この製造方法によれば、加工プロセスにてクラックが生じないように埋め込み部を形成することが容易にできる。尚且つ、個片化する際に、エッチングにて形成したダイシングのための溝に合わせてダイシングするので基板エッジ部のクラックを防止して効率的に個片化することができる。ここで、個片化は、積層プロセスにて得られた積層体を、電子機器に用いられるモジュールまたはデバイスとして必要な機能単位に分ける個片化プロセスである。
【0016】
前記光導波路は一例として、パターニングまたはイオン交換処理にて形成される。前記光導波路は一例として、パターニングまたはイオン交換処理にて形成する。この構成によれば、原理上、加工プロセスにてクラックが生じない光導波路が形成できる。一例として、1価のNaイオンを含むとともに当該NaイオンがAgイオンに置換されてなる光導波路が形成される。
【0017】
本発明に係る回路基板の製造方法は、金属層が形成された絶縁基板を耐熱性の接着層を介して積層し多層配線基板を製造する製造方法であって、無機材からなる前記絶縁基板のうちの第1絶縁基板は積層方向に抜けた埋め込み部が形成されており、前記第1絶縁基板を積層した後に、前記埋め込み部に半導体素子を内蔵することを特徴とする。
【0018】
この製造方法によれば、ビルドアップ工法によってクラックを防止して、広い温度範囲での動作の信頼性に優れた構成の、半導体素子を内蔵した回路基板にできる。各絶縁基板および半導体素子は、各々の熱膨張率のオーダを合致させることが好ましく、各々の熱膨張率を第1絶縁基板の0.5倍~1.5倍以内にすることがより好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、クラックを防止して、広い温度範囲での動作の信頼性に優れた構成の、半導体素子を内蔵した回路基板が実現できる。そして、本発明に係る回路基板を有する電子機器は、情報通信機器におけるデータ伝送量の増大や高密度実装に伴う発熱量の増大などに対応した構成にできる。特に、前記半導体素子を光デバイスにして内蔵した構成によって、光インターコネクションに好適な回路基板が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の実施形態に係る回路基板の第1例を模式的に示す断面図である。
図2図2は本発明の実施形態に係る回路基板の第2例を模式的に示す断面図である。
図3図3は本発明の実施形態に係る回路基板の第3例を模式的に示す断面図である。
図4図4は本発明の実施形態に係る回路基板の第4例を模式的に示す断面図である。
図5図5は第2例における半導体素子を内蔵する前段階を模式的に示す断面図である。
図6図6は第1例の変形例であり、半導体素子を内蔵する前段階を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳しく説明する。実施形態の回路基板は、図1図4に示すように、半導体素子9が内蔵された多層配線基板であり、電子部品が実装されるなどして電子機器が構成される。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0022】
[第1例]
第1例は、光信号処理回路と電気信号処理回路とを備えた電子機器20Aである。回路基板10Aは、第1金属層1aが下面に形成された第1絶縁基板1が、第1接着層7aを介して、第2金属層2aが下面に形成された第2絶縁基板2に積層されている。そして、第1絶縁基板1は積層方向に抜けた埋め込み部1cが形成されており、第1絶縁基板1に形成された埋め込み部1cに半導体素子9が内蔵されている構成である。ここで、上面は積層方向における上層側であり、下面は積層方向における下層側である。上面は第1主面と読み換えることができ、下面は第1主面の逆側の第2主面と読み換えることができる。上記の構成以外に、上面は積層方向における下層側として、下面は積層方向における上層側としても本実施形態は成立する。
【0023】
第1絶縁基板1はガラス製であり、第1金属層1aが下面に形成され、第4金属層1bが上面に形成されている。第1金属層1aと第4金属層1bは、一例としてシード層はチタン(Ti)層及び銅(Cu)層を含み、めっき層はCu層である。シード層はCu層またはNi層にする場合がある。第1金属層1aと第4金属層1bの厚みは、一例として1~40[μm]である。第1金属層1aと第4金属層1bは、いずれも銅からなる配線パターンが形成されている。第1絶縁基板1の厚みは半導体素子9のチップ厚みと同じに設定されているかまたはチップサイズ公差の上限値に合わせて設定されており、埋め込み部1cは半導体素子9のチップが収まるサイズに設定されている。ガラスは既知の電子材料から選択され、半導体素子のチップ筐体が有する熱膨張率と同じに設定されているかまたはチップ筐体が有する熱膨張率の0.5倍~1.5倍以内に設定されている。一例として、第1絶縁基板1の熱膨張率は1~7[ppm/℃]である。第1絶縁基板1は、一例として石英ガラス、合成石英ガラス、ボロシリケイトガラス、アルカリフリーガラスである。第1絶縁基板1の厚みは、一例として100~500[μm]である。
【0024】
第2絶縁基板2はガラス製であり、第2金属層2aが下面に形成され、第5金属層2bが上面に形成されている。第2金属層2aと第5金属層2bは、第1金属層1aと第4金属層1bと同じ材質からなり、いずれも配線パターンが形成されている。第2絶縁基板2は、第1絶縁基板1と同じ材質からなり、第2絶縁基板2の厚みは第1絶縁基板1よりも薄く設定されている。第4絶縁基板4と第5絶縁基板は第2絶縁基板と同じ材質で同じ厚みになっており、それぞれ配線パターンが形成されている。後述する第3絶縁基板3についても第2絶縁基板と同じ材質で同じ厚みになっており、配線パターンが形成されている。
【0025】
第1接着層7aは耐熱性に優れた熱可塑性樹脂からなり、一例としてフッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)が挙げられる。第1接着層7aには、フィラーやガラス繊維は含有されていない。第3接着層7cと第4接着層7dは第1接着層7aと同じ材質からなる。後述する第2接着層7bについても第1接着層7aと同じ材質からなる。第1接着層7aの厚みは、一例として1~50[μm]である。第2接着層7bの厚みは第1接着層7aと同じ厚み、若しくは第2接着層7bの厚みは第1接着層7aよりも薄く設定されている。
【0026】
第1絶縁基板1における埋め込み部1cは一例としてエッチングにて形成されている。または、第1絶縁基板1における埋め込み部1cは一例としてシート成形の際に、成形するなどして予め形成されている。そして、埋め込み部1cと半導体素子9との隙間には熱可塑性樹脂からなる充填材6が充填されている。充填材6は、一例として第1接着層7aと同じ材質からなる。
【0027】
第1絶縁基板1、第2絶縁基板2、第3絶縁基板3、第4絶縁基板4、および第5絶縁基板5は、それぞれ貫通孔が形成されており、シード層とめっき層は当該貫通孔の内面にも形成されている。前記貫通孔には一例としてめっきが貫通孔に形成されためっきビア、導電ペーストが貫通孔に充填されたペーストビア、または導電ペーストが金属めっきされた貫通孔に充填されたハイブリッドビアが配設されている。貫通孔の半径は、一例として5~20[μm]であり、導電ペーストは、一例として銀(Ag)ペースト、はんだペースト、銅(Cu)ペースト、金属錯体またはナノペーストである。はんだは、一例としてスズ(Sn)、銅(Cu)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、金(Au)等の2種以上を含む合金を用いることができる。一例として、めっきからなる第3ビア8cとめっきからなる第4ビア8dとが導電ペースト14によって通電可能に接続されている。
【0028】
図6は第1例の変形例であり、半導体素子9を内蔵する前段階の積層体を模式的に示す断面図である。積層体の製造方法は、第5絶縁基板5、第4接着層7d、第4絶縁基板4、第3接着層7c、第2絶縁基板2、第1接着層7a、第1絶縁基板1の順にビルドアップされて一括して熱圧着される積層プロセスを有する。ここで、第1接着層7aは第2層71の上に第1層72が配された積層構造になっている。第1接着層7aのうちの第2層71は熱可塑性樹脂からなり、第2層71の下面が第2絶縁基板2に密着し、第2層71の上面が第1層72に密着する。第1接着層7aのうちの第1層72は熱硬化性樹脂からなり、第1層72の下面が第2層71に密着し、第1層72の上面が第1絶縁基板1に密着する。前記熱硬化性樹脂は前記熱可塑性樹脂の軟化点よりも軟化点が低い樹脂成分を含んでいる。ここで、第1層72の厚みは第2層71の厚みよりも薄く設定される。
【0029】
第1接着層7aのうちの第2層71を構成する熱可塑性樹脂は、一例としてフッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)が挙げられる。また、第1接着層7aのうちの第1層72を構成する熱硬化性樹脂は、一例としてエポキシ樹脂、ポリイミド(PI)が挙げられる。これにより、硬化の際の熱歪みが小さくなって積層体を形成する際にクラックを防止できることに加えて、第1絶縁基板1との密着力をさらに向上できる。一例として、第1接着層7aのうちの第2層71は液晶ポリマーであり、第1接着層7aのうちの第1層72はエポキシである。積層体は熱圧着された後、徐冷されて、常温にされる。
【0030】
一例として、積層プロセスの後に、第1絶縁基板1の表面に保護層を設けて、フッ酸に浸漬し、保護層においてパターニングされた露出部をエッチングする。ここで、埋め込み部1cをエッチングにて形成するとともに、ダイシングのための溝をエッチングにて形成し、その後、形成した前記ダイシングのための溝に合わせてダイシングして個片化する。これにより、埋め込み部1cの位置精度の向上が見込める。また、ダイシング時間を短縮できる。上記以外の構成として、予め埋め込み部1cが形成された第1絶縁基板1を用いる場合がある。
【0031】
第1絶縁基板1における埋め込み部1cに半導体素子9を内蔵し、埋め込み部1cと半導体素子9との隙間に充填材6を充填し硬化する。そして、半導体素子9は多層基板の外層のうちの第1絶縁基板1に収まって内蔵された状態で当該半導体素子9の第2外部電極9bと多層基板の外層に実装された第1電子部品15aの複数の外部電極のうちの一部とがはんだ13によって接続される。また、多層基板の外層のうちの第4金属層1bの配線パターンと第1電子部品15aの複数の外部電極のうちの他の一部とがはんだ13によって接続される。一例として、第1電子部品15aは面実装型のCPUであり、半導体素子9はチップ形状の光デバイス(フォトニクスチップ)である。
【0032】
一例として、光導波路15bはパターニングにて形成されており、光デバイス9と光導波路15bとが結合している。上記以外の構成として、光導波路15bをイオン交換処理にて形成する場合がある。また上記以外の構成として、光導波路15bに代えて、光導波路接続用のコネクタにすることも可能である。
【0033】
第1電子部品15aは、光デバイス9を介して導波路15bと信号接続される。ここで、第1電子部品15aや導波路15bを回路基板10Aに搭載し、その後、外周枠が取り付けられて電子機器20Aになる。
【0034】
続いて、第2例について第1例との相違点を中心に以下に説明する。
【0035】
[第2例]
第2例は、光信号処理回路と電気信号処理回路とを備えた電子機器20Bである。回路基板10Bは、第1金属層1aが下面に形成されたガラス製の第1絶縁基板1が、熱可塑性樹脂からなる第1接着層7aを介して、第2金属層2aが下面に形成されたガラス製の第2絶縁基板2に積層されており、第1絶縁基板1に形成された埋め込み部1cに光デバイス9が内蔵されている構成である。一例として、光デバイス9は、第1絶縁基板1が積層される前段階の多層基板に実装されて、光デバイス9の下側に配された第1外部電極9aが導電ペースト14を介して第5金属層2bにおける配線パターンに接続される。そして、光導波路15bが形成された状態の第1絶縁基板1が、第1接着層7aを介して第2絶縁基板2に積層されて一体構造になる。その後、第1電子部品15aが実装される。
【0036】
図5は第2例における光デバイス9を内蔵する前段階の積層体を模式的に示す断面図である。積層体の製造方法は、第5絶縁基板5、第4接着層7d、第4絶縁基板4、第3接着層7c、第2絶縁基板2、第1接着層7a、第1絶縁基板1の順にビルドアップされて一括して熱圧着される積層プロセスを有する。積層体は熱圧着された後、徐冷されて、常温にされる。
【0037】
一例として、光導波路15bはイオン交換処理にて形成されており、光デバイス9と光導波路15bとが結合している。上記以外の構成として、光導波路15bをパターニングにて形成する場合がある。また上記以外の構成として、光導波路15bに代えて、光導波路接続用のコネクタを後付けすることも可能である。
【0038】
続いて、第3例について第1例や第2例との相違点を中心に以下に説明する。
【0039】
[第3例]
第3例は、半導体素子9が内蔵された回路基板10Cを備えた電子機器20Cである。回路基板10Cは、第1金属層1aが下面に形成されたガラス製の第1絶縁基板1が、熱可塑性樹脂からなる第1接着層7aを介して、第2金属層2aが下面に形成されたガラス製の第2絶縁基板2に積層されており、かつ、第3金属層3aが上面に形成されたガラス製の第3絶縁基板3が、熱可塑性樹脂からなる第2接着層7bを介して、第1絶縁基板1に積層されており、第1絶縁基板1に形成された埋め込み部1cに半導体素子9が内蔵されている構成である。一例として、半導体素子9は、第1絶縁基板1が積層される前段階の多層基板に実装されて、半導体素子9の下側に配された第1外部電極9aが導電ペーストを貫通孔に充填した第1ビア8aを介して第2金属層2aにおける配線パターンに接続される。そして、半導体素子9が実装された後に、第1絶縁基板1が第1接着層7aを介して第2絶縁基板2に積層される。そして、第1絶縁基板1が積層された後に、第3絶縁基板3が第2接着層7bを介して第1絶縁基板1に積層されて一体構造になる。第3絶縁基板3が積層される際に、半導体素子9の上側に配された第2外部電極9bが導電ペーストを貫通孔に充填した第2ビア8bを介して第3金属層3aにおける配線パターンに接続される。その後、第2電子部品15cが実装される。一例として、半導体素子9はチップ状の集積回路である。
【0040】
続いて、第4例について第3例との相違点を中心に以下に説明する。
【0041】
[第4例]
第4例は、半導体素子9が内蔵された回路基板10Dを備えた電子機器20Dである。回路基板10Dは、放熱板17、第3接着層7c、第2絶縁基板2、第1接着層7a、第1絶縁基板1、第2接着層7b、第3絶縁基板の順にビルドアップされて一括して熱圧着される積層プロセスを有する。熱圧着された後、徐冷されて、常温にされる。一例として、半導体素子9は、第1絶縁基板1が積層される前段階の多層基板に実装されて、半導体素子9の下側に配された第1外部電極9aが導電ペーストを貫通孔に充填した第1ビア8aを介して第2金属層2aにおける配線パターンに接続される。そして、半導体素子9が実装された後に、第1絶縁基板1が第1接着層7aを介して第2絶縁基板2に積層される。そして、第1絶縁基板1が積層された後に、第3絶縁基板3が第2接着層7bを介して第1絶縁基板1に積層されて一体構造になる。第3絶縁基板3が積層される際に、半導体素子9の上側に配された第2外部電極9bが導電ペーストを貫通孔に充填した第2ビア8bを介して第3金属層3aにおける配線パターンに接続される。その後、多層基板の外層にソルダーレジスト16が印刷によって形成されて、第2電子部品15cが実装される。一例として、半導体素子9はパワー半導体である。
【0042】
上述の第1例では、第1絶縁基板1が第1接着層7aを介して第2絶縁基板2に積層されている積層構造で説明したが、上述の例に限定されず、第2絶縁基板2が第1接着層7aを介して第1絶縁基板1に積層されている積層構造にする場合もある。上述の第2例の変形例では、第1接着層7aは第2層71の上に第1層72が配された積層構造になっている例で説明したが、上述の例に限定されない。例えば第2接着層7bを積層構造にする場合があり、一部ないしはすべての接着層をそれぞれ積層構造にする場合もある。
【0043】
絶縁基板の積層数は上述の例に限定されない。例えば積層数を合計3にすることや、積層数を合計5以上にすることができる。積層体の形成はMSAPやETSなど既知の加工技術を適用することができる。本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 第1絶縁基板、1a 第1金属層、1b 第4金属層、1c 埋め込み部
2 第2絶縁基板、2a 第2金属層、2b 第5金属層
3 第3絶縁基板、3a 第3金属層、
4 第4絶縁基板、
5 第5絶縁基板、
6 充填材
7a 第1接着層、7b 第2接着層、7c 第3接着層、7d 第4接着層
8a 第1ビア、8b 第2ビア、8c 第3ビア、8d 第4ビア
9 光デバイス(半導体素子)、9a 第1外部電極、9b 第2外部電極
10A、10B、10C、10D 回路基板
13 はんだ
14 導電ペースト
15a 第1導波路15b 光導波路、15c 第2電子部品、15d 光導波路
16 ソルダーレジスト
17 放熱板
20A、20B、20C、20D 電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6