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特開2022-135973圧延機における金属板の傾斜度および曲率の測定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135973
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】圧延機における金属板の傾斜度および曲率の測定
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20220908BHJP
   G01B 7/293 20060101ALI20220908BHJP
   G01B 7/287 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01B7/00 101F
G01B7/293
G01B7/287
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022025568
(22)【出願日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】21160573
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ツラタンスキ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴィーク
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BB02
2F063BC05
2F063BD15
2F063CA09
2F063DA01
2F063DA05
2F063DB04
2F063DD02
2F063GA08
2F063GA28
2F063GA33
2F063LA04
2F063LA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧延機内で加工された金属板の特性を測定する測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置は、送信コイル(108)および受信コイル(110)を含む検査コイルセットを含み、送信コイルは、金属板に時間変動磁場を印加するように構成されており、受信コイルは、金属板から生じる過渡磁場を検出するように構成されている。金属板の特性は、過渡磁場から導出可能である。基準面からの金属板の空間的偏位を検出するための補正コイルセット(116,118,122,124)は、各補正コイルがキャパシタに接続可能であり、共振周波数を有するそれぞれの共振回路を形成する。補正コイルは、それぞれの共振周波数で共振する。金属板の存在下での共振周波数のシフトが検出可能であり、当該シフトから空間的偏位が導出可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機(100)内で加工された金属板(104)の特性を測定するための測定装置(106)であって、前記測定装置は、
送信コイル(108)および受信コイル(110)を含む検査コイルセットであって、前記送信コイルは、前記金属板に時間変動磁場を印加するように構成されており、前記受信コイルは、印加された時間変動磁場に応答して前記金属板から生じる過渡磁場を検出するように構成されており、前記金属板の少なくとも1つの特性は、前記過渡磁場から導出可能である検査コイルセットと、
基準面からの前記金属板の空間的偏位を検出するための補正コイルセット(116,118,122,124)であって、各補正コイルは、キャパシタに接続されて、共振周波数を有するそれぞれの共振回路を形成する補正コイルセット(116,118,122,124)と、
を含み、
前記補正コイルは、それぞれの共振周波数で共振するように構成されており、前記金属板の存在下での前記共振周波数のシフトが検出可能であり、前記共振周波数のシフトから前記空間的偏位が導出可能となる、
測定装置。
【請求項2】
前記補正コイルは、前記検査コイルから実質的に分離されるように配置されている、
請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記共振回路の共振周波数は、印加された磁場に応答して前記金属板から測定される過渡磁場の周波数よりも高い、
請求項1または2記載の測定装置。
【請求項4】
前記補正コイルの前記共振周波数は、印加された磁場に応答して前記金属板から測定される過渡磁場の周波数の少なくとも2倍である、
請求項3記載の測定装置。
【請求項5】
前記補正コイルは、前記送信コイルおよび前記受信コイルから空間的に分離されており、前記送信コイルおよび前記受信コイルの巻線の外側に配置されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項6】
前記補正コイルは、前記送信コイルおよび前記受信コイルよりも実質的に小さい、
請求項1から5までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項7】
前記金属板の空間的偏位は、前記金属板の曲率および前記金属板の傾斜度のうちの少なくとも一方である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項8】
前記基準面からの前記金属板の空間的偏位は、共振周波数シフトを互いに比較することによって検出される、
請求項1から7までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項9】
前記送信コイルおよび前記受信コイルは、平面コイルである、
請求項1から8までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項10】
前記補正コイルは、平面コイルである、
請求項1から9までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項11】
前記測定装置は、前記検査コイルセットおよび前記補正コイルセットを支持するためのキャリア基板(126)を含む、
請求項1から10までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項12】
前記測定装置は、制御ユニット(120)に接続可能であり、前記制御ユニット(120)は、
前記共振周波数における前記補正コイルへの電気信号の供給を制御し、
前記金属板の存在下での前記共振周波数のシフトを検出し、
検出された前記シフトに基づいて空間的偏位を導出する、
ように構成されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の測定装置。
【請求項13】
金属板をその間で加工するように構成された少なくとも2つのワークロール(102a,102b)と、
請求項1から12までのいずれか1項記載の測定装置と、
を備えた圧延機(100)。
【請求項14】
圧延機内で加工された金属板の基準面からの空間的偏位を検出するための方法であって、前記金属板は、前記金属板の少なくとも1つの特性を求めるための過渡磁場測定を実行するように構成された送信コイルおよび受信コイルによる測定に供されており、前記方法は、
それぞれのキャパシタに接続された補正コイルのセットの各々を、それぞれの共振周波数で共振させるステップ(S102)と、
各補正コイルについて前記金属板の存在下での前記共振周波数のシフトを検出するステップ(S104)であって、これにより、前記共振周波数のシフトから前記空間的偏位が導出可能となるステップ(S106)と、
を含む方法。
【請求項15】
前記方法は、前記過渡磁場測定を実行するために、前記送信コイルが前記金属板に時間変動磁場を印加していないときにのみ、前記補正コイルを共振させるステップを含む、
請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機内で加工された金属板の特性を測定する測定装置に関する。本発明はさらに、圧延機および圧延機内で加工された金属板の基準面からの空間的偏位を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の圧延は、概して、2つの回転するワークロールの間で金属ワークピースを圧延することによって、薄く均一な厚さを有する金属ワークピースを製造することに関する。
【0003】
高い製品品質を保証するために、ワークピースの厚さは正確に監視され、制御されている。
【0004】
従来から用いられているパルス式渦電流測定技術は、金属板に印加された磁場が急激に変化することによって金属板に誘導される渦電流を測定することに基づいている。測定された渦電流に基づいて、例えば、抽出された金属板の抵抗率および厚さが求められる。
【0005】
金属板がセンサに対して完全に平行である場合、金属板の特性を正確に測定するために必要なコイルは2つのみである。しかしながら、実際には、金属板はセンサに対して必ずしも平行ではないため、センサに対する金属板の曲率および傾斜度が測定に影響を及ぼし、金属板の特性の推定が不正確となる。
【0006】
したがって、圧延機における金属板測定の精度を改善することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の上記および他の欠点に鑑みて、本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に軽減する測定装置を提供することである。提案する実施形態は、圧延機内で加工された金属板の曲率および傾斜度などの空間的偏位を検出する改善された方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、圧延機内で加工された金属板の特性を測定する測定装置が提供される。
【0009】
測定装置は、送信コイルおよび受信コイルを含む検査コイルセットを含み、送信コイルは、金属板に時間変動磁場を印加するように構成されており、受信コイルは、印加された時間変動磁場に応答して金属板から生じる過渡磁場を検出するように構成されており、金属板の少なくとも1つの特性は、過渡磁場から導出可能である。
【0010】
測定装置は、基準面からの金属板の空間的偏位を検出するための補正コイルセットを含み、各補正コイルは、キャパシタに接続可能であり、共振周波数を有するそれぞれの共振回路を形成し、補正コイルは、それぞれの共振周波数で共振するように構成されており、金属板の存在下での共振周波数のシフトが検出可能であり、当該共振周波数のシフトから空間的偏位が導出可能となる。
【0011】
本発明は、少なくとも部分的には、共振周波数で共振する補正コイルによって空間的偏位を測定することおよび共振周波数が金属板の存在下でシフトされることの実現に基づいている。
【0012】
周波数シフトは、補正コイルを含む共振回路の共振周波数のシフトであり、このシフトは、補正コイルの近傍に配置された金属板からの誘導の寄与によって引き起こされる。したがって、共振回路の公称共振周波数は、金属板が存在しない状態で最初に測定または推定することができ、周波数のシフトは、公称共振周波数からの共振周波数の偏移である。
【0013】
例えば、金属板が例えばセンサヘッドまたは補正コイルの平面によって提供される基準面に対して平行でない場合、2つの補正コイルの共振回路の誘導成分は、金属板の異なる誘導の寄与に起因して互いに異なるものとなる。したがって、補正コイルの周波数シフトは互いに異なり、これにより金属板の傾斜度を検出することができる。
【0014】
提案する測定装置では、検査コイルシステムに付加的な極性および寄生容量が追加されることを回避することができる。
【0015】
基準面は任意に選択できるが、補正コイルの平面に対して平行であることが好ましい。補正コイルによって生成される磁場の主軸は、基準面に対して垂直でありうる。
【0016】
好ましくは、補正コイルは、検査コイルとの結合およびクロストークを最小にするように配置される。これは、考えられる種々の手法で達成することができる。1つの手法は、補正コイルを検査コイルから遠くに配置することである。例えば、補正コイルおよび検査コイルが共通の支持体を共有する場合、補正コイルは支持体の縁部または角部の近くに配置されてよく、検査コイルは支持体の中心の近くに配置されてよい。かかる支持体は、例えば、平坦でありうるキャリア基板であってよい。
【0017】
検査コイルによって測定される金属板の特性は、センサヘッドまでの距離、金属板の抵抗率、および金属板の厚さのうちの少なくとも1つでありうる。
【0018】
金属板の空間的偏位は、金属板の曲率および金属板の傾斜度のうち少なくとも1つでありうる。曲率は、例えば金属板の局所的な曲率であってよい。
【0019】
検査コイルは、金属板内の渦電流に依存する測定技術によって動作する。送信コイルは、金属板に印加される時間変動磁場を生成する。これに応答して、印加された時間変動磁場の結果として、金属板内に渦電流が生じる。渦電流は、金属板から所定の距離に配置された受信コイルによって検出可能である。ワークピース内の渦電流によって生じる磁場の時間微分によって、受信コイル内に電圧信号が誘導される。電圧信号は、例えばデータ取得システムにおける多くの場合のように増幅されて、金属板の特性を求めるために使用される取得信号を生成するように処理される。
【0020】
印加される時間変動磁場は、送信コイル内のバイアスDC電流を遮断することによって生成されることが好ましい。したがって、パルス磁場が印加され、受信コイルは、パルスに応答して、好ましくは磁場が除去されるときのパルスの負のエッジに応答して、渦電流によって生じた磁場を測定する。
【0021】
特性を求めることは、例えば、理論的モデルによって、または渦電流減衰の時間依存性と金属板特性とを関連付ける経験的に決定されたモデルを使用することによって実行されてもよい。誘導測定、例えば磁気過渡測定に基づいて金属板からかかる特性を抽出するために、それ自体公知の種々の方法が存在する。
【0022】
有利には、補正コイルの共振周波数は、印加された磁場に応答して金属板から測定される過渡磁場の周波数よりも高くてよい。これにより、検査コイルによる測定と補正コイルによる測定との干渉を低減することができる。それぞれのキャパシタを有する補正コイルの共振周波数は、金属板から測定された過渡的に存在する最大周波数よりも高くてよい。
【0023】
好ましくは、補正コイルを含む共振回路の共振周波数は、印加された磁場に応答して金属板から測定される過渡磁場の周波数の少なくとも2倍でありうる。
【0024】
さらに、補正コイルを含む共振回路の共振周波数は、印加された磁場に応答して金属板から測定される過渡磁場の周波数の少なくとも3倍でありうる。
【0025】
さらに、補正コイルを含む共振回路の共振周波数は、印加された磁場に応答して金属板から測定される過渡磁場の周波数の少なくとも4倍でありうる。
【0026】
さらに、補正コイルを含む共振回路の共振周波数は、印加された磁場に応答して金属板から測定される過渡磁場の周波数の少なくとも5倍でありうる。
【0027】
金属板から測定される過渡磁場の周波数は、印加される時間変動磁場の周波数に依存する。したがって、共振回路は、補正コイルを含む共振回路の共振周波数と過渡磁場の周波数との間の所望の関係を保証するために、印加される時間変動磁場の周波数に関して適合させることができる。
【0028】
結合およびクロストークをさらに低減するために、実施形態では、補正コイルは、送信コイルおよび受信コイルから空間的に分離され、かつ送信コイルおよび受信コイルの巻線の外側に配置されうる。換言すれば、補正コイルは、検査コイルの巻線によって囲まれた内側領域の外側に配置される。
【0029】
補正コイルは、検査コイルによって生成され捕捉される磁場を実質的に遮蔽しない領域に配置され、これにより、検査コイルと補正コイルとの間の相互作用が最小限に抑えられる。
【0030】
実施形態において、補正コイルは、送信コイルおよび受信コイルよりも実質的に小さくてよい。これにより、補正コイルと検査コイルとの間の結合およびクロストークをさらに低減することができる。さらに、空間的偏位の測定の分解能は、より小さい補正コイルを使用してより局所的な測定を可能にすることで改善することができる。
【0031】
さらに、補正コイルは、送信コイルが金属板に磁場を印加する励起位相にあるときにのみ共振することができる。これにより、検査コイルによって実行される測定と補正コイルによって実行される測定との間の干渉が有利に回避される。
【0032】
実施形態において、基準面からの金属板の空間的偏位は、周波数シフトを互いに比較することによって検出されうる。例えば、2つ以上の補正コイル間の相対的なシフトを比較することによって、金属板の傾斜度が検出可能である。3つ以上の共振補正コイルの周波数シフトを分析することによって、金属板の曲率を検出することができる。周波数シフトは、金属板の傾斜度および/または曲率の瞬間画像を提供するために、同じ時点で取得されることが好ましい。
【0033】
実施形態では、送信コイルおよび受信コイルは平面コイルでありうる。平面検査コイルは同じ平面を共有しうる。
【0034】
実施形態において、補正コイルは平面コイルでありうる。平面補正コイルは同じ平面を共有しうる。
【0035】
平面補正コイルおよび平面検査コイルは、同じ平面を共有しうる。
【0036】
平面コイルは、例えばプリント回路基板上の平面設計を可能にする、費用効率の高い測定装置を提供する。
【0037】
実施形態において、測定装置は、検査コイルおよびキャリアコイルを支持するためのキャリア基板を含みうる。キャリア基板は、プリント回路基板でありうる。
【0038】
実施形態において、測定装置は、共振周波数における補正コイルへの電気信号の供給を制御し、金属板の存在下での共振周波数のシフトを検出し、検出されたシフトに基づいて空間的偏位を導出するように構成された制御ユニットに接続可能でありうる。
【0039】
本発明の第2の態様によれば、金属板をその間で加工するように構成された少なくとも2つのワークロールと、本明細書で論じられる実施形態による測定装置と、を備えた圧延機が提供される。
【0040】
本発明の第2の態様のさらなる効果および特徴は、本発明の第1の態様に関連して上述したものとほぼ同様である。
【0041】
本発明の第3の態様によれば、圧延機内で加工された金属板の基準面からの空間的偏位を検出するための方法が提供され、金属板は、金属板の少なくとも1つの特性を求めるための過渡磁場測定を実行するように構成された送信コイルおよび受信コイルによる測定に供されており、方法は、それぞれのキャパシタに接続された補正コイルのセットの各々をそれぞれの共振周波数で共振させることと、各補正コイルについて金属板の存在下での共振周波数のシフトを検出し、これにより、共振周波数のシフトから空間的偏位が導出可能となることと、を含む。
【0042】
実施形態では、本方法は、過渡磁場測定を実行するために、送信コイルが金属板に時間変動磁場を印加していないときにのみ補正コイルを共振させることを含みうる。換言すれば、補正コイルは、送信コイルによって印加される時間変動磁場がない場合にのみ共振する。したがって、補正コイルは、有利には、送信コイルが時間変動磁場を印加しておらず、受信コイルが金属板からの渦電流応答を測定していないときに、時間ウィンドウ内で補正測定を実行するために共振される。補正コイルは、例えば、検査コイルによって実行される金属板検査測定をトリガする前に、または変更された磁場が除去された後に共振されうる。これにより、送信コイルおよび受信コイルによって実行される測定と、補正コイルによって実行される空間的偏位の測定と、の間の干渉を低減または回避することができる。
【0043】
本発明の第3の態様のさらなる効果および特徴は、本発明の第1の態様および第2の態様に関連して上述したものとほぼ同様である。
【0044】
制御ユニットがさらに提供され、当該制御ユニットは、共振周波数における補正コイルへの電気信号の供給を制御することであって、補正コイルは、基準面からの金属板の空間的偏位を検出するように配置されており、各補正コイルは、キャパシタに接続可能であり、共振周波数を有するそれぞれの共振回路を形成し、補正コイルは、それぞれの共振周波数で共振するように構成されており、金属板の存在下での共振周波数のシフトが検出可能であり、共振周波数のシフトから空間的偏位が導出可能となる、ことと、金属板の存在下での共振周波数のシフトを検出し、検出されたシフトに基づいて空間的偏位を導出することと、を行うように構成されている。
【0045】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の特許請求の範囲および以下の説明を検討することによって明らかとなるであろう。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に記載されるもの以外の実施形態を作成することができることを理解する。
【0046】
本発明のこれらおよび他の態様を、本発明の例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の一実施形態による圧延機内で加工された金属板を概念的に示す図である。
図2】本発明の実施形態による測定装置を概念的に示す図である。
図3】本発明の実施形態による共振回路の等価回路を概略的に示す図である。
図4A】基準面に対して傾斜した金属板を概念的に示す図である。
図4B】基準面に対して傾斜した金属板を概念的に示す図である。
図4C】曲率を有する金属板を概念的に示す図である。
図4D】曲率を有する金属板を概念的に示す図である。
図5】本発明の実施形態による方法ステップのフローチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の詳細な説明では、本発明の種々の実施形態が、特定の実現形態を参照して本明細書で説明される。実施形態を説明する際には、明確化のために特定の用語が使用される。しかしながら、本発明は、選択されたこのような特定の用語に限定されることを意図していない。特定の例示的な実施形態について説明するが、これは例示目的のためだけに行われることを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく他の構成要素および構成を使用できることを認識するであろう。
【0049】
図1は、金属板104を加工するように適応化されたワークロール102aおよび102bのセットを備えた圧延機100を概念的に示している。ワークロール102a~bは、金属板104がワークロール102a~bの間に供給されている間、回転する。当業者には理解されるように、ワークロール102a~bは、ワークピースの厚さを減少させる。図1には、金属板104の断面が示されている。
【0050】
金属板104が圧延機100内で加工される際に、移動する金属板104の特性を正確に測定することが望ましい。このために測定装置106が設けられている。測定装置106は、送信コイル108および受信コイル110を含む検査コイルセットを含む。送信コイル108は、時間変動磁場を金属板104に印加するように構成されている。受信コイル110は、印加された磁場に応答して生じる金属板104内の渦電流によって生じる過渡磁場を検出するように構成されている。金属板の特性は、過渡磁場から導出可能である。かかる特性は、センサヘッド112までの距離d、金属板104の抵抗率および金属板104の厚さtでありうる。
【0051】
金属板104は、製造ライン上を図1の左方から右方へ移動する、すなわち左方から右方へ転回していくので、センサヘッド112と必ずしも平行にならない。センサヘッドに対する金属板の曲率および傾斜度は、読み取り値に影響を及ぼし、距離、抵抗率および厚さの誤った推定値をもたらす。この問題に対処するために、測定装置106は、この例示的な実施形態において、補正コイル116および118を含む補正コイルセットを含む。補正コイル116および118は、基準面からの金属板104の空間的偏位を検出するように構成されている。各補正コイル116,118はキャパシタに接続可能であり、共振周波数を有するそれぞれの共振回路を形成する。測定装置106は、後続の図面を参照して明らかとなるように、例えば3つ以上の補正コイルなど、2つ超の補正コイルを含んでもよい。図1には、2つの補正コイル116,118のみが示されている。
【0052】
さらに説明するように、補正コイル116,118は、それぞれの共振周波数で共振するように構成されており、金属板104の存在下での共振周波数のシフトが検出可能であり、当該共振周波数のシフトから空間的偏位が導出可能となる。好ましくは、測定装置106は少なくとも3つの補正コイルを含む。
【0053】
概して、測定装置106は、渦電流技術によって金属板の特性を測定するように適応化されている。したがって、送信コイル108は、例えば制御ユニット120によって制御されて、電流源または電圧源から電流を受け取り、時間変動磁場すなわちパルス磁場を金属板104内に生成および印加する。受信コイル110は、金属板104内の渦電流によって生じた磁場を検出する。制御ユニット120は、検出された磁場を示す信号を受信し、当該信号から金属板104の特性を導出することができる。
【0054】
測定装置106は、ここではワークロール102a~bの下流に配置されている。しかし、当然ながら、測定装置106は、ワークロール102a~bの上流などの他の場所に配置されてもよい。
【0055】
制御ユニット120は、測定装置106からデータ信号を受信することができるよう、無線または有線で通信可能に測定装置106に接続されている。いくつかの実施形態では、制御ユニット120は、共振周波数における補正コイルへの電気信号の供給を制御し、金属板の存在下での共振周波数のシフトを検出し、検出されたシフトに基づいて空間的偏位を導出するように構成されている。
【0056】
図2は、例示的な実施形態による測定装置106を概念的に示している。測定装置106は、送信コイル108および受信コイル110を含み、これらは、ここではコイル108,110を支持するキャリア基板126上に同心円状に配置されている。さらに、補正コイル116,118,122,124のセットも基板126上に配置されている。換言すれば、この実施形態には、検査コイル108,110および補正コイル116,118,122,124を支持するためのキャリア基板126が含まれる。さらに、キャリア基板126は、補正コイル116,118,122,124と共に共振回路を形成するオンチップキャパシタ(図示せず)を支持することができる。補正コイルと共に共振回路を形成するキャパシタは、測定装置106に含まれうる。
【0057】
また、本実施形態では、送信コイル108および受信コイル110は平面コイルである。さらに、補正コイル116,118,122,124も平面コイルである。平面コイルは、概して巻線が平面上にあり、その高さは単層または数層のワイヤからなる比較的「平坦な」コイルである。
【0058】
好ましくは、補正コイルは、検査コイルから実質的に分離されるように配置される。図2に示した実施形態では、これは、補正コイル116,118,122,124を検査コイル108および110から可能な限り遠くに配置することによって達成される。検査コイル108および110は、キャリア基板126の中心に配置されており、補正コイル116,118,122,124は、基板の端部側に、ここでは基板126の角部の近くに配置されている。
【0059】
さらに、補正コイル116,118,122,124は、送信コイル108および受信コイル110から空間的に分離されており、かつ送信コイルおよび受信コイルの巻線の外側に配置されている。換言すれば、補正コイル116,118,122,124は、送信コイル108および受信コイル110の巻線によって囲まれたコアの内側には配置されない。いくつかの可能な実現形態では、補正コイル116,118,122,124は、基準面に対して平行となりうるかまたは基準面として機能しうる同じ平面内に配置される。この例示的な実施形態では、補正コイル116,118,122,124、送信コイル108および受信コイル110は、同じ平面内に配置される。この平面は、金属板の空間的偏位が検出される基準面に対して平行でありうる。送信コイルは、基板126の平面に対する法線でありかつ基準面に対する法線である主軸線に沿って時間変動磁場を生成する。
【0060】
補正コイルを検査コイルから分離するための他の構成も考えられることを理解されたい。例えば、補正コイルは別個のキャリア基板上に配置されてもよく、これにより、同じキャリア基板上に補正コイルを有する場合と比較して、より大きな自由度で補正コイルを検査コイルから離して配置することが可能になる。しかしながら、図2に示されるような単一のキャリア基板を使用することで、容易に設置される単一部品として提供される一体型の測定装置が得られる。
【0061】
図2をさらに参照すると、補正コイル116,118,122,124は、送信コイル108および受信コイル110よりも実質的に小さい。ここでいうサイズとは、コイルの外径を指す。
【0062】
補正コイルの測定方式は、共振周波数のシフトを測定することに依存する。図3は、かかる1つの共振回路300の等価回路を概略的に示している。
【0063】
回路300は、その共振周波数で回路300を駆動するための電圧/電流源302に接続されており、電圧センサが回路300の両端の電圧Vを測定する。電源302は交流電源でありうる。回路300は、補正コイルの近くに金属板が存在しない場合の補正コイルのインダクタンスであるインダクタLcと、これに並列に接続されたキャパシタンスCを有するキャパシタと、によって表される。この場合、共振周波数は1/√(C×Lc)に比例する。したがって、動作中、キャパシタCに接続された補正コイルLcを備えた共振回路300は、その共振周波数1/√(C×Lc)で駆動される。キャパシタは、例えばNP0チップキャパシタなどのチップキャパシタの形態でキャリア基板上に設けられてもよい。
【0064】
補正コイルおよび/またはキャパシタは、共振回路の共振周波数が、送信コイルによって生成される印加された磁場に応答して金属板から測定される過渡磁場の周波数よりも高くなるように設計される。共振回路の共振周波数は、印加された磁場に応答して金属板から測定される過渡磁場の周波数の少なくとも2倍である。
【0065】
金属板が補正コイルの近くに存在する場合、付加的なインダクタンスLm(図示せず)が回路内のインダクタンスに寄与する。これは、金属板、例えば図1に示した金属板104の寄与インダクタンスである。金属板が完全に平面である場合、すなわち曲率も傾斜度もゼロである場合、寄与インダクタンスLmは全ての補正コイルについて等しくなり、これにより各補正コイルの周波数シフトも実質的に等しくなる。ただし、頻繁に発生することであるが、金属板にはある程度の曲率または傾斜度があるため、寄与インダクタンスLmは全ての補正コイルで等しくならない。全体的なインダクタンスの差は、概して1/√(C×Lc’)に比例する、補正コイルの各々の共振周波数のシフトを引き起こす。ここで、Lc’は、金属板Lmおよび補正コイルLcからの合成寄与インダクタンスである。概して、Lc’<Lcである。
【0066】
図4A図4Dを参照して概念的に説明するように、基準面からの金属板の空間的偏位は、共振周波数シフトを互いに比較することによって検出することができる。
【0067】
図4Aは、基準面400に対して傾斜した金属板104の側面図を概念的に示している。金属板104は、ここでは、図4Aにおいて明確化のために曲率なしで示されている。補正コイル116および118は基準面400内に配置されるように示されているが、基準面は他の場所にあってもよい。傾斜した金属板104は、一方端部104aにおいて他方端部104bよりも基準面400に近くなっている。コイル118の共振周波数のシフトがコイル116の共振周波数のシフトと比較されると、その間の相対的なシフト、例えばコイル116のシフトとコイル118のシフトとの比または当該シフト間の差が、金属板104の傾斜度の指標を提供する。
【0068】
図4Aは、図2のコイル116および118が表現された側面図を示している。別の側面図が考慮される場合、例えば、図4Bに示されているように、代わりに補正コイル118および124を示す側面図が提示されている場合にも、類似の説明が適用されることに留意されたい。ここで、傾斜した金属板104は、一方端部104cにおいて他方端部104dよりも基準面400に近くなっている。コイル118の共振周波数のシフトがコイル124の共振周波数のシフトと比較されると、その間の相対的なシフトが金属板104の傾斜度の指標を提供する。
【0069】
図4Cは、曲率を有する金属板104の断面側面図を概念的に示している。図4Cでは、3つの補正コイル116,118,122が、基準面400内にあるように概念的に示されている。金属板の曲率を求めるために、3つのコイル116,122および118の各々の共振シフトが求められる。3つの共振シフトから曲率を計算することができる。例えば、共振シフトの各々は、補正コイルの位置における板と基準面400との間のそれぞれの空間的偏位d1,d2,d3を示している。3つの空間的偏位d1,d2,d3またはこれらを示す共振シフトが、金属板の局所的な曲率を求めるために使用されうる。これは経路の曲率を求めることと同様であり、曲率を求めるために、経路のうちの少なくとも3つの点を既知とする必要がある。
【0070】
図4Dは、概念的に示されたここでは4つの補正コイル116,118,122,124を考慮して、曲率を有する金属板104の別の断面側面図を概念的に示している。上述したように、金属板104の曲率は、補正コイル116,118,122および118の各々の共振シフトから求めることができる。共振シフトの各々は、それぞれの補正コイルの位置における金属板104と基準面400との間のそれぞれの空間的偏位d3,d4,d5およびd6を示している。4つの空間的偏位d3,d4,d5およびd6またはこれらを示す共振シフトが、金属板の局所的な曲率を求めるために使用されうる。
【0071】
上述したように、金属板の空間的偏位は、金属板の曲率および金属板104の傾斜度のうち少なくとも一方である。
【0072】
各々が補正コイルを含む2つ以上の共振回路間の共振周波数の相対シフトは、曲率データおよび傾斜度データを共振周波数シフトに関連付ける予め記憶されたデータと比較することができる。例えば、ルックアップテーブルが、多数の共振周波数シフトデータ対曲率データおよび傾斜度データを含むことができ、これにより、測定された周波数シフトに基づいて、制御ユニットが一致するまたは少なくともほぼ一致する曲率データおよび傾斜度データを見出すことができる。
【0073】
曲率データおよび傾斜度データを取得するための別の考えられる手法は、大量の共振周波数シフトデータならびに対応する曲率データおよび傾斜度データを用いてモデルを構築する経験的モデルを使用することである。
【0074】
曲率データおよび傾斜度データを取得する別の考えられる手法は、事前学習データ、共振周波数シフトデータ、ならびに対応する曲率データおよび傾斜度データに関して教示されている機械学習モデルによるものである。
【0075】
曲率データおよび傾斜データを取得するための理論モデルも考えられる。
【0076】
さらに、曲率および傾斜度は、ルックアップテーブル、経験的モデル、理論的モデルおよび機械学習方法を含む上述した方法のうちの2つ以上の組み合わせによって求められうることが理解される。
【0077】
金属板の曲率および/または傾斜度が求められると、これらを用いて、それ自体公知の手法で検査コイルによって測定された金属板の特性を補正することができる。
【0078】
図5は、本発明の実施形態による方法ステップのフローチャートである。本方法は、圧延機内で加工された金属板の基準面からの空間的偏位を検出する方法である。金属板は、金属板の少なくとも1つの特性を求めるための過渡磁場測定を実行するように構成された送信コイルおよび受信コイルによる測定に供される。
【0079】
本方法は、ステップS102において、それぞれのキャパシタに接続された補正コイルのセットの各々をそれぞれの共振周波数で共振させることを含む。
【0080】
本方法は、各補正コイルについて金属板の存在下での共振周波数のシフトを検出することを含むステップS104をさらに含み、これにより、ステップS106において、共振周波数のシフトから空間的偏位が導出可能となる。
【0081】
好ましくは、補正コイルを共振させるステップS102は、送信コイルが過渡磁場測定を実行するために時間変動磁場を金属板に印加していないときにのみ実行される。したがって、補正コイルは、磁場が変更される前または後に共振される。
【0082】
制御ユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、または別のプログラマブルデバイスを含みうる。これに加えてもしくはこれに代えて、制御ユニットは、特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイもしくはプログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジックデバイス、またはデジタル信号プロセッサを含んでもよい。制御ユニットが上述したマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはプログラマブルデジタル信号プロセッサなどのプログラマブルデバイスを含む場合、プロセッサは、プログラマブルデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能コードをさらに含みうる。
【0083】
本明細書で説明されるデバイス、制御ユニット、または他のモジュールの間の通信は、適切となるように、また特定の場合に適切なプロトコルを実装するように、無線または有線でありうる。
【0084】
本発明をその特定の例示的な実施形態を参照して説明してきたが、多くの異なる変更形態、修正形態などが当業者には明らかであろう。
【0085】
加えて、開示した実施形態に対する変形形態も、図面、開示および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解可能かつ達成可能となる。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」なる語は、他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されていることは単なる事実であって、これらの手段の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
【外国語明細書】