(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022135988
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】流体吐出ヘッドのための深掘り反応性イオンエッチング処理
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220908BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B41J2/14 209
B41J2/16 507
B41J2/14 613
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028490
(22)【出願日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】17/192,294
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】バーナード・デビッド エル.
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF93
2C057AG46
2C057AP02
2C057AP14
2C057AP32
2C057AQ02
2C057BA04
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】吐出ヘッドチップと、流体吐出装置のための方法と、流体供給ビアと流体吐出器スタックとの間のシリコンシェルフ幅を縮小するための方法。
【解決手段】吐出ヘッドチップは、シリコン基板と、シリコン基板上に堆積された流体吐出器スタックとを含み、流体吐出器スタックの少なくとも1つの金属層は封止材料により吐出ヘッドチップにエッチングされた流体供給ビアから分離される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吐出装置のための吐出ヘッドチップであって、
シリコン基板と、
前記シリコン基板上に堆積された流体吐出器スタックと
を含み、
前記流体吐出器スタックの少なくとも1つの金属層が、前記吐出ヘッドチップにエッチングされた流体供給ビアから封止材料により分離された、
吐出ヘッドチップ。
【請求項2】
前記流体供給ビアと前記流体吐出器スタックとの間のシリコンシェルフ幅が、約0~約20ミクロンの範囲である、
請求項1に記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの金属層がタンタルを含む、
請求項1または2に記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項4】
前記流体供給ビアが、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)処理を用いて、前記シリコン基板の流体吐出器スタック側から前記シリコン基板にエッチングされた、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項5】
前記流体供給ビアが、約60~約520ミクロンの範囲の最小幅を有する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項6】
前記封止材料が、有機ケイ素化合物の化学蒸着に由来する酸化ケイ素又は二酸化ケイ素を保護オーバーコート層として含む、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項7】
前記封止材料が、金属間誘電体層を更に含む、
請求項6に記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項8】
前記金属間誘電体層が、ドープされた又は未ドープのダイヤモンドライクカーボン材料を含む、
請求項7に記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項9】
前記封止材料が、窒化ケイ素層を更に含む、
請求項6から請求項8のいずれかに記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項10】
前記少なくとも1つの金属層が、約1.5~約2.5ミクロンの前記封止材料により前記流体供給ビアのエッジから分離されている、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の吐出ヘッドチップ。
【請求項11】
流体供給ビアと流体吐出器スタックとの間のシリコンシェルフ幅を減少させるための方法であって、
シリコン基板に少なくとも1つの絶縁層を堆積することと、
前記少なくとも1つの絶縁層上に窒化ケイ素層を堆積することと、
前記窒化ケイ素層上に金属層を堆積することと、
前記流体供給ビアの2つの側に接する封止材料内に前記金属層を封止することと、
前記流体供給ビアの位置を定義するためエッチングマスクを前記流体吐出器スタックに施すことと、
約0~約20ミクロンの範囲の幅を有するシリコンシェルフを提供するため、約60~約520ミクロンの範囲の最小幅で前記流体供給ビアを前記シリコン基板にエッチングすることと
を含む、方法。
【請求項12】
前記金属層がタンタルを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記流体供給ビアが、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)処理を用いて前記シリコン基板の流体吐出器スタック側から前記シリコン基板にエッチングされた、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記封止材料が、有機ケイ素化合物の化学蒸着に由来する酸化ケイ素又は二酸化ケイ素を保護オーバーコート層として含む、
請求項11から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記封止材料が、金属間誘電体層を更に含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属間誘電体層が、ドープされた又は未ドープのダイヤモンドライクカーボン材料を含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記封止材料が、窒化ケイ素層を更に含む、
請求項14から請求項16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記金属層が、約1.5~約2.5ミクロンの前記封止材料により前記流体供給ビアのエッジから分離されている、
請求項11から請求項17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械システム(MEMS)デバイスに関するものであり、特に、改善された流体ジェット吐出ヘッド及び流体ジェット吐出ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体ジェット吐出ヘッドは、インクジェット吐出ヘッド、電子流体分注装置、薬剤ジェット噴霧装置を含むがこれらに限定されない、多様な応用に用いられる。流体ジェット吐出装置の主要な部品は、金属及び非金属の層が堆積されたシリコン基板で製造されたMEMS装置である。
図1に示すように、複数の吐出ヘッドチップ10が、様々な堆積及びエッチング処理を用いてシリコンウェハ12上に形成される。完全に形成されると、ノズルプレートが吐出ヘッドチップ10に取り付けられ、吐出ヘッドチップがシリコンウェハ12から切り出され、流体カートリッジに取り付けられる。
【0003】
各流体ジェット吐出ヘッドチップ10は、吐出ヘッドチップ10に取り付けられたノズルプレートのノズル孔20を介し流体を吐出するため、ヒータレジスタといった流体吐出器18を含む流体チャンバ16へ流体を供給するための流体供給ビア14を含む(
図2~3)。y方向において流体供給ビア14から見た吐出ヘッドチップ10のための先行技術の流体吐出器スタックの断面図を
図4と
図5に表す。シリコン基板24に隣接した第1番目の層22はフィールド酸化層である。層26は、リンがドープされた酸化ケイ素ガラス層といったドープガラス層であってよい絶縁層である。フィールド酸化層22と絶縁層26は、合わせて約8,000~約30,000オングストロームの範囲の厚さを有する。層28は、炭化ケイ素が上層である複合窒化ケイ素/炭化ケイ素層といったパッシベーション層である。パッシベーション層28は約1,000~約8,000オングストロームの範囲の厚さを有する。層30は、吐出ヘッド10のためのヒータレジスタ上の耐キャビテーション層として用いられるタンタルといった金属層である。層30は約1,500~約8,000オングストロームの範囲の厚さを有する。層32は、ドープされた又は未ドープのダイヤモンドライクカーボン(DLC)層といった誘電体層である。誘電体層32は、約2,000~約6,000オングストロームの範囲の厚さを有する。平坦化層34が、ノズルプレートを吐出ヘッドチップ10の流体吐出器スタック36に取り付けるための平面を提供するため、スピンオングラスで提供される。平坦化層34は、約1~約10ミクロンの範囲の厚さを有する。ノズルプレートはノズル孔20を含み、流体チャンバ16と、流体供ビア14から流体チャンバ16へと導く流体チャネル38とを含むか、流体供給チャネル38と流体チャンバ16とを含む別個のフロー特徴層が平坦化層34に取り付けられてよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンタル層30を吐出ヘッドから吐出される流体による腐蝕から保護するため、流体供給ビア14は、流体供給チャネル38への入口と流体供給ビア14との間にx方向において露出したシリコン基板23のシェルフ40を提供するエッチングマスクを用いて、シリコンウェハ12の流体吐出器スタック36側から吐出ヘッドチップ10にエッチングされる。流体供給ビア14の入口の幅W1は、吐出ヘッドチップ10の設計に依存する。従って、マスクは約60~約500ミクロンの範囲のエッチングされた入口流体供給幅W1を提供する。シェルフ幅W2は典型的に約3~約20ミクロンまでであり、このため流体供給ビア14の最大入口幅W3は約57~約520ミクロンである。流体供給ビア14の対向する側にあるタンタル層30の間のx方向における距離D1は、約60~約520ミクロンの範囲である。流体供給ビア14が同時にウェハ12上の全ての吐出ヘッドチップ10にエッチングされることから、層34の施工の僅かな変化、又は流体吐出器スタック36へのエッチングマスクの位置合わせは重要であり、
図5に表すように、タンタル層30を吐出ヘッドにより吐出される流体による腐蝕に晒すこととなる可能性がある。従って、シェルフ幅W2は、タンタル層が吐出ヘッドチップ10における流体供給ビア14のエッチング以降に露出されないことを確実にするために重要であることが分かった。
【0005】
適切なシェルフ幅W2を維持することは吐出ヘッドチップ製造において時間を要し問題を起こしやすい。シェルフ幅W2の要件は、DRIEエッチング技術を用いたより広い流体供給ビア14の設計を強いる。従来の知識では、タンタル層30といった金属層が流体吐出ヘッドにより吐出される流体に晒されることを防ぐのに十分であるシリコンシェルフ幅W2を要した。従来、シェルフ幅W2は約3~約20ミクロンの間である。マスクの解像度とバイアス、マスクと基板の位置合わせの問題、シリコン基板のアンダーカットとオーバーエッチングを引き起こすDRIEチャンバ内の安定した熱環境を維持できないこと、そしてエッチング後の残留物の浄化を含むがこれらに限定されないいくつかの要因により、再現可能なシェルフ幅W2を提供することは困難である。従って、シリコンシェルフ40のための要件は時間を要し高価で非常に詳細な自動測定処理となり、生産時間と生産コストが増加する。オーバーエッチングされたシェルフ40は、流体供給ビア14の長さを増加させ、様々な溶液系流体に用いられるとき吐出ヘッドチップ10の強度を低減させる結果となる。このため、シリコンシェルフ40の完全性を維持することの難しさは、シリコンウェハ12からの使用可能な吐出ヘッドチップ10の歩留まりの低下をもたらす。このため、吐出ヘッドにより吐出される流体との接触による腐食から金属層を保護するためのシリコンシェルフ40への依存を低減又は排除する吐出ヘッドチップ設計が必要とされる。また、吐出ヘッドチップ10の全体的なサイズを増加させることなく、流体吐出器18への流体フローを増加させるために、より広い流体供給ビア14である必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記を考慮し、本発明の実施形態は、流体吐出装置のための吐出ヘッドチップを提供する。吐出ヘッドチップは、シリコン基板と、シリコン基板上に堆積された流体吐出器スタックとを含み、流体吐出器スタックの少なくとも1つの金属層が封止材料により吐出ヘッドチップにエッチングされた流体供給ビアから分離される。
【0007】
もう1つの実施形態において、流体供給ビアと流体吐出器スタックとの間のシリコンシェルフ幅を減少させるための方法を提供する。該方法は、(a)シリコン基板上に少なくとも1つの絶縁層を堆積することと、(b)少なくとも1つの絶縁層上に窒化ケイ素層を堆積することと、(c)窒化ケイ素層上に金属層を堆積することと、(d)流体供給ビアの2つの側に接する封止材料に金属層を封止することと、(e)流体供給ビアのための位置を定義するため流体吐出器スタックにエッチングマスクを施すことと、(f)約0~20ミクロンの範囲の幅を有するシリコンシェルフを提供するため、約60~約520ミクロンの範囲の最小幅で流体供給ビアをシリコン基板にエッチングすることというステップを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの金属層がタンタルを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、流体供給ビアは深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)処理を用いて基板の流体吐出器スタック側からシリコン基板にエッチングされる。
【0010】
いくつかの実施形態において、封止材料は、保護オーバーコート層として有機シリコン化合物の化学蒸着に由来する酸化ケイ素又は二酸化ケイ素から選択される。他の実施形態において、封止材料は金属間誘電体層を更に含む。いくつかの実施形態において、金属間誘電体層はドープされた又は未ドープのダイヤモンドライクカーボン材料である。他の実施形態において、封止材料は窒化ケイ素層を更に含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの金属層は約1.5~約2.5ミクロンの封止材料により流体供給ビアのエッジから分離されている。
【0012】
流体吐出器スタック中の金属層を保護するため封止材料を用いる利点は、流体供給ビアと流体吐出器スタックとの間のシリコンシェルフの必要性が低下し、これによりウェハ検査が大幅に簡略化されることにある。流体吐出器スタックの改善された保護により、流体供給ビアのエッジ粗さも低減される。流体供給ビアに隣接するシリコンシェルフのx方向における幅を減少することにより流体チャンバの増加した流体再充填速度を提供するため、流体ビア幅が増加される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、流体吐出ヘッドの製造に用いられる複数の吐出ヘッドチップを含む先行技術のシリコンウェハの、縮尺通りでない、平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のシリコンウェハから製造される先行技術の吐出ヘッドチップの、縮尺通りでない、平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の吐出ヘッドチップの一部の、縮尺通りでない、拡大図である。
【
図4】
図4は、先行技術の処理により製造された
図2の吐出ヘッドチップを通るy方向における、縮尺通りでない、断面図である。
【
図5】
図5は、先行技術の処理により製造された
図2の吐出ヘッドチップを通るy方向における、縮尺通りでない、断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の1つの実施形態による吐出ヘッドチップを通るy方向における、縮尺通りでない、断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の1つの実施形態による吐出ヘッドチップを通るy方向における、縮尺通りでない、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図4~5に示すように、先行技術の流体吐出器スタック36のための流体供給ビア14の最大入口幅は、約60(W1)~約520(W3)ミクロンの範囲である。このような流体供給幅は、
図5に示すような流体吐出器スタック36のアンダーエッチングと、吐出ヘッドにより吐出される流体による腐蝕に金属層30を晒すこととを防止するために維持される。
【0015】
シリコンシェルフへの依存が減るよう金属層30をより好ましく保護するため、吐出ヘッドチップ52のための改善された流体吐出器スタック50を
図6~7に提供する。流体吐出器スタック50を、流体供給ビア14を通るy方向における断面図にて示す。
【0016】
先行技術の吐出ヘッドチップ10のように、吐出ヘッドチップ52は、シリコン基板24に隣接したフィールド酸化層54を含む。次いで、リンがドープされた酸化ケイ素ガラス層といったドープガラス層であってもよい絶縁層56がフィールド酸化層54上に堆積されるか成長させられる。フィールド酸化層54と絶縁層56は、合わせて約8,000~約30,000オングストロームの範囲の厚さを有する。窒化ケイ素層58がパッシベーション層として絶縁層56上に堆積され、金属層60の一部の下地となり、下地部分はシリコン基板24と金属層60との間となる。パッシベーション層58は、約1,000~約15,000オングストロームの範囲の厚さを有する。層60は、約1,500~約10,000オングストロームの範囲の厚さを有する。次いで、ドープされた又は未ドープのダイヤモンドライクカーボン(DLC)層といった誘電体層62が金属層60上に堆積され、金属層60は窒化ケイ素層58と誘電体層62との間に完全に封止される。誘電体層62は、約2,000~約10,000オングストロームの範囲の厚さを有する。最後に、酸化ケイ素又は二酸化ケイ素から選択された封止層64が、有機ケイ素化合物から化学蒸着処理により誘電体層62上に堆積される。封止層64は、約2,000~約10,000オングストロームの範囲の厚さを有する。封止層64はエッチングにも耐性があり、流体供給ビア14を形成するためのDRIE処理の間、エッチングマスクとしての役割を果たす。封止層64は、ノズルプレート、又は流体供給チャネル38と流体チャンバ18とを含むフロー特徴層を取り付けるための平面を提供することもできる。
【0017】
図6~7に示すように、金属層60は、パッシベーション層58と、誘電体層62と封止層64との組合せとにより、流体供給ビア14から完全に分離されている。封止層64は、吐出ヘッドチップ52に流体供給ビア14を形成するためのDRIE処理に耐性のある他の材料から選択されてよい。本発明の目的のため、パッシベーション層58、誘電体層62、及び封止層64を集合的に「封止材料」と呼称する。
【0018】
流体供給ビア14のための位置を提供するため、封止層64が撮像されて現像された後、ポジ型フォトレジストマスクが封止層64上に堆積されてよい。従って、ポジ型フォトレジストマスクは、流体供給ビア14の両エッジに隣接するシリコンシェルフを提供する必要なしに、封止層64の開口と即座に位置合わせされることができる。シリコンシェルフ70のシェルフ幅W6は、約0~約20ミクロンの範囲である。
【0019】
図7に示すように、たとえ封止層64と誘電体層62が、エッチングマスクの配置ずれ、エッチングの温度変化、又は他のエッチング処理の変動により、流体供給ビア14の形成のためのDRIE処理の間にアンダーカットされたとしても、金属層60は、窒化ケイ素層58、誘電体層62、そして封止層64により、流体供給ビア14を通って流れる流体から完全に分離されたままである。3つの層58、62、64の全てはDRIE処理に耐性があり、このため金属層60を囲んで損なわれない。従って、シリコン基板24に隣接する封止層64の厚さ72は約6,000~約12,000オングストロームの範囲であってよい。シリコン基板24に隣接する誘電体層の厚さ74もまた約6,000~約12,000オングストロームの範囲であってよい。シリコン基板24に隣接する窒化ケイ素層58の厚さ76は約10,000~約20,000オングストロームの範囲であってもよい。
【0020】
改良された流体吐出器スタック50の使用の利点として、腐食防止のためのシリコンシェルフ幅W2への依存が排除される。従って、10~20ミクロンの目標シェルフ幅の代わりに、シェルフ幅目標は8ミクロン以下であってよい。ただし、減少したシェルフ幅を有しても、金属層が封止材料内に完全に封止されるため、たとえシリコン基板がx方向においてアンダーカットされたとしても、除外された吐出ヘッドチップの量が大幅に削減される。従って、流体供給ビア14の入口の幅W4を決定するための用いる計算においてシェルフ幅を含める必要性が低下する。このため、処理設定時間を短縮するため、DRIEマスク配置は封止層中の開口全体を用いることができる。DRIE後のウェハ検査が単純化され、これにより製品スループットが向上する。
【0021】
追加される利点として、封止材料がエッチング耐性を有することから、DRIE処理の間のマスク失敗による流体供給ビアのエッジ粗さも低減される。DRIE処理の間のウェハ温度変化による流体供給ビアのエッジ粗さは、チップ強度を低下させることが知られている。
【0022】
減少されたシェルフ幅W5の使用は、吐出ヘッドチップの全体幅を減少させることにより、吐出ヘッドチップのコストも削減できることを理解されたい。吐出ヘッドチップの同一の全体幅において、シェルフ幅W5を減少させることにより、より広い流体供給ビア14を用いることができ、これにより流体チャンバへの流体再充填速度を向上させ、より速い流体分注速度のための、より速い流体吐出サイクルをもたらすことになる。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「a」、「an」、「the」は、明示的かつ明確に1つの指示物に限定されない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。本明細書で用いられる「include」という用語およびその文法上の変形は、リスト内の項目の列挙が、リストされた項目を置換または追加できる他の同様の項目を除外しないよう、非限定的であることを意図している。
【0024】
特定の実施形態について説明したが、出願人又は他の当業者には、現在予測してない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、提出された添付の特許請求の範囲及び補正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0025】
10:吐出ヘッドチップ
12:ウェハ
14:流体供給ビア
16:流体チャンバ
18:流体吐出器
20:ノズル孔
22:フィールド酸化層
24:シリコン基板
26:絶縁層
28:パッシベーション層
30:金属層
32:誘電体層
34:平坦化層
36:流体吐出スタック
38:流体チャネル
40:シリコンシェルフ
50:流体吐出器スタック
52:吐出ヘッドチップ
54:フィールド酸化層
56:絶縁層
58:パッシベーション層
60:金属層
62:誘電体層
64:封止層
70:シリコンシェルフ
72:封止層の厚さ
74:誘電体層の厚さ
76:窒化ケイ素層の厚さ
W1、W4:流体供給ビアの入口の幅
W2、W3:シェルフ幅