(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136003
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】配線用の発泡シーリングを製造するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/52 20060101AFI20220908BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220908BHJP
H02G 15/04 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01R13/52 301F
H01R43/00 B
H02G15/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022031367
(22)【出願日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】102021000005159
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】519223712
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ イタリア ディストリビューション エッセ エッルレ エッレ
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】マリアンナ マッソーネ
(72)【発明者】
【氏名】マルチェロ ファリノラ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ ジェンタ
【テーマコード(参考)】
5E051
5E087
5G375
【Fターム(参考)】
5E051BA06
5E087EE11
5E087LL03
5E087LL14
5E087RR12
5G375BA08
5G375BB33
5G375DA32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケーブル出口カバーを分配材料で密封するためのシステムを提供する。
【解決手段】少なくとも1本のケーブルの一部を密封するためのケーブル出口カバーであって、第1のカバー部材と、第1のカバー部材に嵌合して、対応するケーブルの一部が通る入口を画定するように構成されている第2のカバー部材とを備え、入口は、シーリングシートと対応するケーブルとの間の隙間を密封する分配シーリング材料を収容するためのシーリングシートを含む、ケーブル出口カバーに関する。シーリングシートは保持手段を含み、保持手段は、シーリングシートに沿った分配シーリング材料の均一な分布をもたらすように構成され、かつケーブル出口カバーの分割線に近い、シーリングシートの臨界領域において、分配シーリング材料が薄くなることを回避するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本のケーブル(200、201、202、203)の一部を密封するためのケーブル出口カバー(100)であって、
-第1のカバー部材(120)と、
-前記第1のカバー部材(120)に嵌合して、前記ケーブル(200、201、202、203)の一部を挿入するための少なくとも1つの入口(111)を含むハウジング(140)を画定するように構成されている第2のカバー部材(130)とを備え、
-前記少なくとも1つの入口(111)は少なくとも1つのシーリングシート(112)を含み、前記少なくとも1つのシーリングシート(112)は、前記ケーブル(200、201、202、203)の一部と、前記少なくとも1つのシーリングシート(112)と前記ケーブル(200、201、202、203)との間の隙間を密封する分配シーリング材料(300)とを収容するためのものである、ケーブル出口カバーにおいて
前記少なくとも1つのシーリングシート(112)は、前記少なくとも1つのシーリングシート(112)に沿った前記分配シーリング材料(300)の均一な分布をもたらすように構成されている保持手段(110)を含むことを特徴とする、ケーブル出口カバー。
【請求項2】
前記保持手段(110)は、前記分配シーリング材料(300)が沿って流れる前記少なくとも1つのシーリングシート(112)の内壁の表面を増大させる複数の突出要素を含む、請求項1に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項3】
前記保持手段(110)は、各々が縁部を含む複数の突出要素を含み、前記少なくとも1つのシーリングシート(112)の内壁に沿って流れる前記分配シーリング材料(300)が複数の縁部にぶつかるようになっている、請求項1または2に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項4】
前記保持手段(110)は、前記少なくとも1つのシーリングシート(112)の前記内壁の曲率半径を局所的に減少させるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項5】
前記保持手段(110)は、前記少なくとも1つのシーリングシート(112)の全幅に沿って延び、かつ前記少なくとも1つのシーリングシートの内面(115)に対して均一な高さ(H)を有する複数の突出要素を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項6】
前記保持手段(110)は前記少なくとも1つのシーリングシート(112)の内壁に沿って対称に分布されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのシーリングシート(112)は、前記ケーブル出口カバー(100)に挿入される前記ケーブル(200、201、202、203)の前記一部の長さよりも小さい幅を持つ環状形状を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項8】
複数のケーブル(200、201、202、203)を挿入するための複数の入口(111)を含み、各入口(111)は、前記ケーブル(200、201、202、203)の半径に一致する曲率半径を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項9】
各入口(111)は、単一のケーブル(200、201、202、203)の一部を収容するための2つのシーリングシート(112)を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項10】
前記第1のカバー部材(120)および前記第2のカバー部材(130)は、前記第1のカバー部材(120)および/または前記第2のカバー部材(130)の内面の周囲に沿って延びる溝(121、131)を含み、前記溝(121、131)は前記分配シーリング材料(300)が充填されるように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項11】
ケーブル(200、201、202、203)ごとに少なくとも1つのシーリングシート(112)が、前記入口(111)に近い前記溝(121、131)に沿って位置決めされている、請求項10に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項12】
90°に設定されたケーブル出口構成に使用される、請求項1から11のいずれか一項に記載のケーブル出口カバー(100)。
【請求項13】
少なくとも1本のケーブル(200、201、202、203)の一部を密封するためのケーブル出口カバー(100)を組み立てる方法であって、
a)少なくとも1つの第1の凹部(122)を有する第1のカバー部材(120)を設けることと、
b)前記少なくとも1つの第1の凹部(122)に嵌合して、少なくとも1つのシーリングシート(112)と、ケーブル(200、201、202、203)の一部が通る少なくとも1つの入口(111)とを画定するように構成されている少なくとも1つの第2の凹部(133)を有する第2のカバー部材(130)を設けることと、
c)分配シーリング材料(300)を前記少なくとも1つの第1の凹部(122)に分配することと、
d)分配シーリング材料(300)を前記少なくとも1つの第2の凹部(133)に分配することと、
e)前記ケーブル(200、201、202、203)の一部を前記少なくとも1つの第1の凹部(122)に挿入することと、
f)前記ケーブル(200、201、202、203)の前記一部を封入するように、前記第1のカバー部材(120)と前記第2のカバー部材(130)とを係合させることとを含む、方法において
g)前記少なくとも1つのシーリングシート(112)に沿った前記分配シーリング材料(300)の均一な分布をもたらすために、前記第1の凹部(122)および前記第2の凹部(133)に保持手段(110)を設けることをさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記ステップg)は、前記分配シーリング材料(300)が沿って流れる前記第1の凹部(122)および前記第2の凹部(133)の内壁に突出要素を形成して、前記内壁の表面を増大させるようにすることによって実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
h)前記第1のカバー部材(120)および/または前記第2のカバー部材(130)の内面の周囲に沿って延びる溝(121、131)を設け、前記溝(121、131)に前記分配シーリング材料(300)を充填するステップをさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルシールの技術分野に関する。特に、本発明は、ケーブル出口カバーを分配材料で密封するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気ケーブルは、一般に、ケーブル導体およびケーブル導体を接合するコネクタへの損傷を防ぐために環境から密封され、例えば、電線内への水および/または埃の侵入から密封される。シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ポリ尿素ゲル、または熱可塑性ゲルなどのゲル材料を使用して、電気ケーブルを密封することができる。
【0003】
例えば、欧州特許第0575520号明細書は、電気通信ケーブルスプライス、同軸ケーブルスプライスなどのケーブル突合せスプライスまたは細長い基板のためのゲル充填エンクロージャを開示している。ケーブルスプライスエンクロージャは、2つの対称な半部を含み、これらの半部を互いに嵌合させて、2本の同軸ケーブルの一部の周りにエンクロージャを形成し、2本の同軸ケーブルを互いに接続する。ケーブルスプライスは、エンクロージャの中央部分内に含まれ、シリコーン、熱可塑性材料、ポリウレタン、ポリ尿素、およびポリイソブチレンなどの適切なゲル材料によって囲まれる。
【0004】
2つのケーブルカバーの所定の溝の内面にゲル材料を分配する標準的な技術は、分配材料が均一に分布されることを保証していない。実際に、分配材料は、通常、2つのケーブルカバーの各々が置かれる平面に平行な平面において移動するように構成されているロボットアプリケーションを使用して、2つのケーブルカバーの所定の溝に注入される。注入の際、分配材料は、重力により溝の底部に向かって流れる傾向があり、底部に蓄積する傾向があるため、ケーブルカバーの分割線に近い溝の部分に残る分配材料は少量になる。このようにして、2つの嵌合半部を組み合わせることによってカバーを形成すると、カバーの分割線に近いケーブルの部分が、環境から十分に保護および密封されない。
これは、その部分における分配材料の半径方向厚さが、溝の底部における分配材料の半径方向厚さに対して小さいからである。ケーブルカバーの分割線に対応して、シーリング材料に隙間が形成されることさえあり得る。
【0005】
ケーブルに保護層を形成するための代替方法は、保護材料の分配中にケーブルを常に回転させることにある。例えば、米国特許出願公開第2005/0074553号明細書は、電気コイルをポリウレタンの層に含浸させて硬化させる方法を記載している。この方法は、コイルを有する物品が、ポリウレタンワニスの粘度が低下して乾燥温度を超える予備加熱温度まで加熱される、予備加熱ステップを含む。この方法は、加熱された物品を一定速度で回転させながらポリウレタンワニスをコイルに連続して塗布する、ワニス塗布ステップも含む。この方法は、ワニス塗布ステップ中のワニスの温度よりも高い乾燥温度でポリウレタンワニスを加熱しながらポリウレタンワニスを乾燥させる、高温回転乾燥ステップをさらに含む。
【0006】
この方法は、電気コイルに保護層を形成するために、回転デバイスを備える複雑な装置が必要であるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決する、ケーブルに保護層を形成するための分配材料の均一な分布を保証するシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電気ケーブルを収容するためのハウジングを画定する2つの嵌合要素を備えるケーブル出口カバーに関する。2つの嵌合要素の各々が少なくとも1つの凹部を有し、2つの嵌合凹部は、1つ以上の対応するケーブルを挿入可能な1つ以上の入口と、分配シーリング材料が充填される1つ以上のシーリングシートとを画定する。シーリングシートの内面は、シーリングシートの内壁に沿った分配材料の均一な分布を保証するように構成されている保持手段を備える。
【0009】
本出願において、重力が好ましい方向を規定し、開示されたシステムの上部および底部がそれに従って規定されていることを理解しなければならない。特に、重力を受けた物体は、デバイスの上部から底部へ自然に流れる。したがって、凹部および/またはシーリングシートの底部は、分配材料が重力によりシーリングシートの内壁に沿って流れた後に自然に蓄積する、入口および/またはシーリングシートの部分として規定される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1本のケーブルの一部を密封するためのケーブル出口カバーであって、
-第1のカバー部材と、
-第1のカバー部材に嵌合して、ケーブルの一部を挿入するための少なくとも1つの入口を含むハウジングを画定するように構成されている第2のカバー部材とを備え、
-少なくとも1つの入口は少なくとも1つのシーリングシートを含み、少なくとも1つのシーリングシートは、ケーブルの一部と、少なくとも1つのシーリングシートとケーブルとの間の隙間を密封する分配シーリング材料とを収容するためのものである、ケーブル出口カバーが提供され、
このケーブル出口カバーは、少なくとも1つのシーリングシートは、少なくとも1つのシーリングシートに沿った分配シーリング材料の均一な分布をもたらすように構成されている保持手段を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成は、ケーブル出口カバーが簡単で確実なシーリングシステムを備え、アセンブリが少ない部品数で実現されることにより、容易な自動化プロセスの可能性を保証するため、有利である。本発明によるケーブル出口カバーに挿入されるケーブルは、例えば高圧ケーブルであり、分配シーリング材料の存在によって水および埃から有利に保護される。さらに、シーリングシートに保持手段が存在することにより、ケーブル表面の周りにおける材料の正確かつ均一な分布を保証して、ケーブルを適切に密封する。実際には、シーリングシートと対応するケーブルとの間の隙間を密封するために使用される分配シーリング材料は、通常、重力により、滑って各シーリングシートの2つの嵌合部分の各々の底部に蓄積する傾向がある。
分配シーリング材料がケーブルの周りに十分に分布されないと、シーリングの半径方向反力は非対称になり、シールに隙間が生じるリスクが高い。逆に、本発明による保持手段は、分配シーリング材料がシーリングシートの内面に沿って流れるときに分配シーリング材料を保持し、シーリングシートの内面全体に沿って均一な分布を保証する。
【0012】
本出願において、「ハウジング」という用語を使用して、対応するケーブルを収容可能なケーブル出口カバーの内部を示す。ケーブルが挿入されるハウジングの部分を「入口」と呼ぶ。入口は、ケーブルの一部を収容し、かつシールを形成する分配シーリング材料を収容するための1つ以上のシーリングシートを含む。1つ以上のシーリングシートは、ケーブル出口カバーの第1のカバー部材と第2のカバー部材とを嵌合させることによって形成される。したがって、各カバー部材が1つ以上の凹部を有し、2つの対応する凹部が嵌合することによって、ケーブルおよびシールを収容するためのシーリングシートを形成することを理解しなければならない。分配シーリング材料は、支持面に配置されるときに各カバー部材に塗布されることが好ましい。したがって、分配シーリング材料は各カバー部材の1つ以上の凹部に塗布され、塗布ステップ中に、保持手段が各凹部の底部における分配シーリング材料の蓄積を防ぐことを理解しなければならない。
【0013】
好ましい構成において、各シーリングシートは円形断面を有する。本出願において、「各シーリングシートの円形断面」に言及するとき、各シーリングシートが、第1のカバー部材および第2のカバー部材の2つの嵌合凹部によって形成された、ケーブルおよび分配シーリング材料の一部を収容するためのリングとして構成されていることを理解しなければならない。したがって、各シーリングシートの内面の断面は円形である。保持手段は、各シーリングシートの湾曲した内面に形成され、主に円形断面を有するシーリングシートの輪郭を局所的に変化させる。
【0014】
好ましい一実施形態によれば、1つ以上のシーリングシートがケーブルごとに設けられ、ケーブルが挿入される領域の近くに配置される。同じケーブルを収容するための2つ以上のシーリングシートが設けられる場合、それらのシーリングシートは互いに平行に、かつ各ケーブルの挿入方向に沿って順に配置されるように構成されて、ケーブルの第1の部分が第1のシーリングシートに収容され、そのケーブルの第2の部分が第2のシーリングシートに収容されるようになっていることが好ましい。
【0015】
複数の入口が、複数の対応するケーブルを収容するようにケーブル出口カバーに設けられることが好ましい。例えば、寸法が異なるケーブルを、同じケーブル出口カバーに同時に収容することができる。
【0016】
好ましい一実施形態によれば、外部環境に対する効率的なシーリングを保証するために、分配シーリング材料は、第1のカバー部材および第2のカバー部材の両方に塗布される。このようにして、1つ以上のシーリングシートの内面全体が、分配材料で密封される。例えば、ポリウレタンおよびシリコーンを分配シーリング材料として使用することができる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態によれば、保持手段が、分配シーリング材料が沿って流れるシーリングシートの内壁の表面を増大させる複数の突出要素を含んで、内壁に沿った分配シーリング材料の均一な厚さをもたらすようになっている、ケーブル出口カバーが提供される。
【0018】
この構成は、保持手段を形成する突出要素の存在が各シーリングシートの内面を増大させるため、有利である。したがって、分配シーリング材料は、注入後、シーリングシートを形成する2つの嵌合部分の各々の内壁に沿って流れ、保持手段のないシーリングシートの構成に対して、より長い経路または軌跡に沿って流れる。このようにして、分配シーリング材料が受ける摩擦が増大し、ケーブル出口カバーの分割線に近い臨界領域において分配シーリング材料が薄くなることが回避されるため、分配シーリング材料がシーリングシートの2つの嵌合部分の各々の底部に向かって流れることが妨げられる。さらに、保持手段の存在により、臨界領域の形成、すなわち、分配シーリング材料が薄くなるためシールに隙間が形成される、2つのカバー部材間の分割部分に近い領域の形成が回避される。
【0019】
保持要素は、各シーリングシートの内面に沿って形成された突出要素として構成されている。言い換えると、各シーリングシートは、保持手段の突出要素が形成される支持面となる平滑な表面を有する。したがって、保持手段を備えるシーリングシートは、内面に追加の要素が存在するため、保持手段のないシーリングシートに対して、より広い全内面を有することが明らかである。その結果、保持手段を備えるシーリングシートの上部から底部に向かって移動する物体は、保持手段なしでシーリングシートの内面に沿って上部から底部へ移動する物体に対して、より長い軌跡をたどる。
【0020】
好ましい構成において、保持手段は、各シーリングシートの内壁に形成され、かつ各シーリングシートの全幅に沿って延びる段として構成される。保持手段の段は、2つの収束面によって形成された縁部を有する。各縁部の2つの面は鋭角を形成し、したがって、段は直交断面(orthogonal section)を有していないことが好ましい。
【0021】
本発明のさらなる実施形態によれば、保持手段が、各々が縁部を含む複数の突出要素を含んで、少なくとも1つのシーリングシートの内壁に沿って流れる分配シーリング材料が複数の縁部にぶつかり、少なくとも1つのシーリングシートの内壁に沿って分配シーリング材料の均一な厚さが得られるようになっている、ケーブル出口カバーが提供される。
【0022】
この構成は、各シーリングシートの内壁に保持手段が存在することにより、分配シーリング材料が、流れる際に多数の縁部または角部を通るため、有利である。このようにして、分配シーリング材料が自然に外側角部で薄くなり、内側角部で厚くなる傾向がある場合でも、分配シーリング材料の全厚は、各シーリングシートの内壁において略均一になる。実際には、分配シーリング材料の流れは、内壁の縁部のある輪郭(edged profile)によって促され、分配材料は、(保持手段なしの構成で生じるように)シーリングシートを形成する2つの嵌合凹部の主要な内側角部のみに蓄積するのではなく、内壁に沿って均一に分布される。
【0023】
保持手段は、各シーリングシートの内壁に沿って均一に分布されることが好ましい。保持手段は、各シーリングシートの内壁から突出する突出要素として構成されているが、シーリングシートを形成する2つの嵌合凹部の各々の底部には形成されないことが好ましい。
【0024】
本発明のさらなる実施形態によれば、保持手段が、少なくとも1つのシーリングシートの内壁の曲率半径を局所的に減少させるように構成されている、ケーブル出口カバーが提供される。
【0025】
この構成は、保持手段が各シーリングシートの内壁の曲率変化を増大させることにより、分配シーリング材料がシーリングシートを形成する2つの嵌合凹部の各々の底部に向かって直接流れること、およびケーブル出口カバーの分割線に近い臨界領域において分配シーリング材料が薄くなることを防ぐため、特に有利である。このようにして、シーリングシートの内面に沿った分配シーリング材料の均一な分布が保証され、分配シーリング材料がより小さい半径方向厚さを有する臨界領域の形成が回避される。
【0026】
好ましい一実施形態によれば、各シーリングシートは、曲率半径を有する円形断面を有する。シーリングシートの内壁の曲率半径は、シーリングシートの内面から突出し、かつ円形断面を有する保持手段の存在によって局所的に減少する。言い換えると、各保持手段の断面は、例えば円形であってよく、保持手段が配置されているシーリングシートの全曲率半径よりも小さい曲率半径を有することができる。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によれば、保持手段が、少なくとも1つのシーリングシートの全幅に沿って延び、かつ少なくとも1つのシーリングシートの内面に対して均一な高さを有する複数の突出要素を含み、分配シーリング材料が少なくとも1つのシーリングシートに沿って流れるときに、分配シーリング材料を保持するように構成されている、ケーブル出口カバーが提供される。
【0028】
この構成は、保持手段が、シーリングシートを形成する2つの嵌合部分の各々の底部に向かって分配シーリング材料が流れることを妨げ、分配シーリング材料の均一な分布を保証するため、特に有利である。このようにして、ケーブルに対するシールの半径方向圧力は対称になり、2つのカバー部材間の分割線に近い臨界領域に隙間が生じるリスクが低下する。
【0029】
好ましい一実施形態によれば、各シーリングシートは、対応するケーブルの一部およびシーリング材料を収容するための所定の幅を有する。保持手段は、各シーリングシートの全幅に沿って延びる。保持手段は、各シーリングシートの内面から突出し、均一な高さを有し、すなわち、保持手段の突出要素の縁部は、各シーリングシートの内面から一定の距離を有する。本出願において、「各シーリングシートの内面」という表現は、保持手段のない、各シーリングシートの平滑な内面を示す。言い換えると、保持手段は、シーリングシートの全幅に沿って位置する小高い部分(hill)として構成されるのではなく、均一な高さを有することが好ましい。
保持手段を、各シーリングシートの内壁から突出する段として説明することができ、各段の幅はシーリングシートの幅に等しい。シーリングシートの内面からの各段の縁部の距離(すなわち、保持手段の各突出要素の高さ)は、段の全幅に沿って一定であることが好ましい。
【0030】
シーリングシートは環状構成を有し、保持手段は、環状シートの幅に等しい幅を有することが好ましい。
【0031】
本発明のさらなる実施形態によれば、保持手段が少なくとも1つのシーリングシートの内壁に沿って対称に分布されている、ケーブル出口カバーが提供される。
【0032】
この構成の利点は、シーリングシートの内壁に沿った保持手段の対称な分布により、ケーブルの周りの分配シーリング材料の均一な分布と、ケーブルに対するガスケットの均一かつ一定の半径方向圧力が保証されることである。
【0033】
本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも1つのシーリングシートが、ケーブル出口カバーに挿入される対応するケーブルの一部の長さよりも小さい幅を持つ環状形状を有する、ケーブル出口カバーが提供される。
【0034】
この構成の利点は、分配シーリング材料が、各シーリングシートに塗布され、ケーブル出口カバーに挿入されるケーブルの全長に沿って分布されないことである。このようにして、シーリングを設けるために使用される分配シーリング材料の量が減少するため、生産コストも削減される。しかしながら、水および埃に対して安全かつ確実なシーリングが保証される。
【0035】
ケーブルが挿入されるケーブル出口カバーの部分の近くに、ケーブルごとに2つのシーリングシートが設けられることが好ましい。保持手段は、各シーリングシートの全幅に沿って延びることが好ましい。
【0036】
好ましい一実施形態によれば、分配シールは6mmの幅および6.5mmの高さを有する。分配シールの寸法は、製品の必要性に応じて変化し得ることが好ましい。
【0037】
本発明のさらなる実施形態によれば、複数のケーブルを挿入するための複数の入口を含み、各入口が、対応するケーブルの半径に一致する曲率半径を有する、ケーブル出口カバーが提供される。
【0038】
この構成は、複数のケーブルを単一のケーブル出口カバーに収容して密封することができるという利点を有する。ケーブルは異なる寸法を有することができ、入口は挿入される各ケーブルの寸法に一致するように設計される。
【0039】
高圧ケーブルがケーブル出口カバーに収容されることが好ましい。ケーブルは、6mm2、25mm2、50mm2、または95mm2の断面を有することが好ましい。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によれば、各入口が、単一のケーブルの一部を収容するための2つのシーリングシートを含む、ケーブル出口カバーが提供される。
【0041】
この構成は、各ケーブルが二重シーリングを有するため、水および/または埃の侵入から効率的に保護されるという利点を有する。
【0042】
本発明のさらなる実施形態によれば、各入口は、単一のケーブルの一部を収容するための2つ以上、例えば、3つ、4つ、または5つのシーリングシートを含む。
【0043】
本発明のさらなる実施形態によれば、第1のカバー部材および第2のカバー部材が、第1のカバー部材および/または第2のカバー部材の内面の周囲に沿って延びる溝を含み、溝は分配シーリング材料が充填されるように構成されている、ケーブル出口カバーが提供される。
【0044】
この構成は、ケーブル出口カバーの周囲全体に沿って、簡単で確実なシーリングが保証され、部品数の少ないアセンブリにより、容易な自動化プロセスの可能性を保証するという利点を有する。
【0045】
好ましい構成によれば、各シーリングシートの幅に等しい幅を有する溝が、2つのカバー部材の各々の内面の周囲に沿って設けられている。言い換えると、第1のカバー部材および第2のカバー部材の両方が、それらの内面の周囲に沿って延びる溝を特徴とする。本発明において、「内面」という用語は、ケーブル出口カバーに挿入されるケーブルの方を向く面を示す。
【0046】
分配シーリング材料は、第1のカバー部材および/または第2のカバー部材の内面に沿って移動するように構成されているロボットアプリケーション手段を使用して、溝の全範囲に分配されることが好ましい。分配材料の塗布中、第1のカバー部材および第2のカバー部材は、支持面に配置され、溝を含む内面がロボットアプリケーション手段の方を向くように配される。このようにして、ケーブルが挿入されるケーブル出口カバーの一部が密封され保護されるだけでなく、ケーブル出口カバーの他の側面部分も外部環境から保護され密封される。
【0047】
本発明のさらなる実施形態によれば、対応するケーブルごとに少なくとも1つのシーリングシートが、入口に近い溝に沿って位置決めされている、ケーブル出口カバーが提供される。
【0048】
この構成は、ケーブルをシーリングシートおよびケーブル出口カバーの入口に収容することができ、連続したシーリングを提供することができるという利点を有する。
【0049】
入口ごとおよび対応するケーブルごとに2つのシーリングシートが設けられることが好ましい。例えば、2つのシーリングシートは、互いに平行であり、ケーブルの挿入方向に沿って配置されてよい。2つのシーリングシートのうちの一方を溝に沿って配置して、ケーブルの連続したシーリングを保証するようにすることが好ましい。
【0050】
本発明のさらなる実施形態によれば、90°に設定されたケーブル出口構成(ケーブルの出口構成、cable exit configuration)に使用されるケーブル出口カバーが提供される。
【0051】
この構成は、ケーブルが90°に配置され接続されるケーブル出口構成に、安定した確実なシーリングが設けられるという利点を有する。さらに、この構成により、ケーブル出口カバーの組立プロセスを自動化し、簡略化し、迅速化することができる。
【0052】
90°に設定されたケーブル出口構成は、1本以上のケーブルの一端が、対応する端子に圧着され、カバーの組立て前に、第1のカバーの表面に垂直な第1の方向に沿ってケーブル出口カバーのハウジング内に挿入され、その後90°に曲げられて、ケーブルが第1のカバーの第1の凹部内に配置されるようになっている、ケーブル出口構成を示す。ケーブルの圧着端が最初に第2のカバーの第2の凹部内に配置される、90°に設定されたケーブル出口構成も可能であることが明らかである。
【0053】
本発明のさらなる実施形態によれば、少なくとも1本のケーブルの一部を密封するためのケーブル出口カバーを組み立てる方法であって、
a)少なくとも1つの第1の凹部を有する第1のカバー部材を設けることと、
b)少なくとも1つの第1の凹部に嵌合して、少なくとも1つのシーリングシートと、対応するケーブルの一部が通る少なくとも1つの入口とを画定するように構成されている少なくとも1つの第2の凹部を有する第2のカバー部材を設けることと、
c)分配シーリング材料を少なくとも1つの第1の凹部に分配することと、
d)分配シーリング材料を少なくとも1つの第2の凹部に分配することと、
e)対応するケーブルの一部を少なくとも1つの第1の凹部に挿入することと、
f)対応するケーブルの一部を封入するように、第1のカバー部材と第2のカバー部材とを係合させることと、
g)少なくとも1つのシーリングシートに沿った分配シーリング材料の均一な分布をもたらすために、第1の凹部および第2の凹部に保持手段を設けることとを含む方法が提供される。
【0054】
この方法は、容易な自動化プロセスの可能性を保証する、簡単で確実なシーリングシステムおよび部品数の少ないアセンブリを提供する。保持手段の存在により、分配材料の分布を制御することが可能になるため、ケーブルの効率的なシーリングが保証される。実際には、分配シーリング材料は、第1のカバー部材の第1の凹部に沿って、かつ第2のカバー部材の第2の凹部に沿って自然に流れ、第1の凹部および第2の凹部のそれぞれの底部に蓄積する傾向がある。しかしながら、保持手段の存在によって、分配シーリング材料が重力により各凹部の底部に向かって流れることを妨げるため、分配シーリング材料のシーリングシートの内面に沿った均一な分布が保証される。
【0055】
好ましい一実施形態によれば、分配シーリング材料の分配は自動化された方法で実現される。分配材料の塗布中、第1のカバー部材および第2のカバー部材は、支持面に配置され、少なくとも1つの凹部を含む内面がロボットアプリケーション手段の方を向くように配されることが好ましい。システムのシーリングを保証するために、分配材料を両方のカバーに塗布しなければならない。分配シーリング材料は、ポリウレタンまたはシリコーンであり得ることが好ましい。
【0056】
分配シーリング材料が、第1のカバー部材および第2のカバー部材の第1の凹部および第2の凹部の両方のそれぞれに塗布された後、ケーブルの一部が第1のカバー部材または第2のカバー部材の対応する凹部に収容される。次いで、ケーブルを含まない相補カバー部材を、ケーブルを含むカバー部材と組み合わせて、ケーブルを収容および密封するためのケーブル出口カバーの入口を形成する。2つのカバー部材をねじによって互いに固定することが好ましい。
【0057】
本発明のさらなる実施形態によれば、上記の方法は、ステップg)が、分配シーリング材料が沿って流れる第1の凹部および第2の凹部に突出要素を形成して、第1の凹部および第2の凹部の内壁の表面を増大させ、内壁に沿った分配シーリング材料の均一な厚さを提供するようにすることを含むように実行される。
【0058】
この構成は、各凹部の内面を増大させる保持手段を設けることによって、各凹部の内壁に沿った分配シーリング材料の均一な分布が保証されるため、有利である。実際には、分配シーリング材料は、注入後、各凹部の内壁に沿って流れ、保持手段のない凹部の構成に対して、より長い経路に沿って流れる。このようにして、分配シーリング材料が受ける摩擦が増大し、各凹部の底部に大量の分配シーリング材料が蓄積することが回避されるため、分配シーリング材料が各凹部の底部に向かって流れることが妨げられる。さらに、保持手段の存在により、臨界領域の形成、すなわち、分配シーリング材料が薄くなるためシールに隙間が形成される、2つのカバー部材間の分割部分に近い領域の形成が回避される。
【0059】
本発明のさらなる実施形態によれば、
h)第1のカバー部材および/または第2のカバー部材の内面の周囲に沿って延びる溝を設け、溝に分配シーリング材料を充填するステップをさらに含む方法が提供される。
【0060】
この方法の利点は、安定した確実なシーリングがケーブル出口カバーの表面全体に設けられることである。したがって、シーリングが分配されたケーブル出口カバーを、水および/または埃の侵入から保護することができる。
【0061】
材料を分配するプロセスは、第1のカバー部材および/または第2のカバー部材の溝の全範囲に沿って一定の速度で動作するロボットアプリケーション手段によって実行されることが好ましい。例えば、シーリングシートに分配シーリング材料を充填するときに、ロボットアプリケーション手段の速度を、特定の必要性に応じて増減することができる。
【0062】
添付図面を参照しながら、本発明について説明する。図中、同一の参照番号および/または符号は、機械の同じ部分および/または同様の部分および/または対応する部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の一実施形態による、閉構成のケーブル出口カバーの概略立体図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、カバー部材の概略立体図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、開構成のケーブル出口カバーの概略立体図である。
図3では、ケーブルと分配シーリング材料とを含むケーブル出口カバーの内部構成が明確に視認できる。
【
図4】本発明の一実施形態による、保持手段が詳細に示されている、第1のカバー部材および第2のカバー部材に形成された凹部の概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、密封されたケーブルに対するシーリング部材の圧力分布を示す概略図である。
【
図6】従来技術による、シーリングシートにおけるシール部材の分布を示す概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態による、異なる直径を有する4本のケーブルを収容する第1のカバー部材の概略断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態による、ロボットアプリケーション手段による分配材料の塗布中の、単一のカバー部材の概略立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下で、添付図面に示す特定の実施形態を参照しながら、本発明について説明する。それにもかかわらず、本発明は、以下の詳細な説明に記載され図示される特定の実施形態に限定されず、代わりに、記載される実施形態は、添付の特許請求の範囲によってその範囲が定義される、本発明のいくつかの態様を単に例示する。
【0065】
本発明のさらなる変更および変形形態が、当業者に明らかであろう。したがって、本説明は、添付の特許請求の範囲によってその範囲が定義される、本発明のすべての変更および/または変形形態を含むものとして考慮されなければならない。
【0066】
簡単にするために、同一または対応する構成要素は同じ参照番号で図示されている。
【0067】
簡単にするために、本発明による構成要素は、装飾のない参照番号(plain reference number)で示され、従来技術による対応する構成要素は、プライム記号付きの参照番号で示される。
【0068】
本発明により実現可能なより多くのケーブル200、201、202、203のうちの1本の一部を密封するためのケーブル出口カバー100が、
図1に概略的に示されている。
図1のケーブル出口カバー100は、4本の電気ケーブルを収容している。しかしながら、本発明のケーブル出口カバーに、任意の数の電気ケーブル、例えば、1本、2本、3本、5本以上の電気ケーブルを収容することができる。
【0069】
ケーブル出口カバー100は、第1のカバー部材120と第2のカバー部材130とを備え、第2のカバー部材130は、第1のカバー部材120に嵌合して、4本の対応するケーブル200、201、202、203の一部を挿入可能な4つの入口111を画定するように構成されている。各入口111は、対応するケーブル200、201、202、203の一部を収容するための2つのシーリングシート112を含むことが好ましい。シーリングシート112を形成する2つの嵌合部分のうちの一方の断面が、拡大図に概略的に示されている。しかしながら、本発明による各入口111は、任意の好ましい数のシーリングシート112、例えば、1つ、3つ、4つ以上のシーリングシートを含むことができる。
【0070】
シーリングシート112と対応するケーブル200、201、202、203との間の隙間に、分配シーリング材料300が充填されている。
図1の拡大図に詳細に見られるように、シーリングシート112の内面は保持手段110を備え、この保持手段110は、塗布時に分配シーリング材料300の均一な分布をもたらすように構成されている。以下でより詳細に説明するように、実際には、分配シーリング材料は、塗布されるときに、シーリングシート112を形成する2つの嵌合部分の各々の底部に向かって自然に流れる傾向があり、ケーブル出口カバー100の分割線に近いシーリングシート112の領域で薄くなる傾向がある。
このように、ケーブル200、201、202、203の周りの分配シーリング材料300の分布は均一ではなく、特に、ケーブル200、201、202、203は、ケーブル出口カバー100の分割線に近い領域において保護されない。保持手段110は、シーリングシート112の内面から突出し、流れる分配シーリング材料が進む内面を増大するように構成されているため、シーリングシート112の内壁に沿った分配シーリング材料300の流れを妨げるように構成されている。
【0071】
第1のカバー部材120および第2のカバー部材130は、ポリアミド、ポリアミドPA-GF30、または高温、例えば-40°C~130°Cの温度に対して高い耐性を有する任意の他の材料で実現され得る。ケーブル出口カバー100は、例えば、高電圧用途で使用される電線の一部を覆うために使用され得る。
【0072】
図2に概略的に示すように、2つのカバー部材120、130の各々は、凹部、すなわち、第1の凹部122および第2の凹部133をそれぞれ備える。2つのカバー部材120、130が組み合わされると、カバー部材120、130は電気部品を収容するための閉じたハウジング140を形成し、2つの凹部122、133は嵌合されて、対応するケーブルを挿入可能な4つの入口111を形成する。分配シーリング材料が塗布される各入口111の部分は、シーリングシート112を形成する。
図2では、単一のカバー部材120または130のみが示され、したがって、各シーリングシート112の半分だけが見えている。実際には、第1のカバー部材120の第1の凹部122と第2のカバー部材130の第2の凹部133とが組み合わされたときに、完全なシーリングシート112が形成される。
各シーリングシート112は、円形断面を有する対応するケーブル200、201、202、203を収容するための円形断面を有する。以下で詳述するように、各シーリングシート112の内面は保持手段110を備え、この保持手段110は、重力による分配シーリング材料の流れを妨げるように構成されている。
【0073】
図2に見られるように、各シーリングシート112は、円形断面を有し、かつケーブル出口カバー100に挿入されるケーブルの一部の長さよりも小さい幅Wを持つ略環状形状を有する。
図2では、入口111ごとに2つのシーリングシート112が示されている。入口111ごとに2つのシーリングシート112が示されていても、ケーブル出口カバー100の入口111ごとに任意の数のシーリングシート112を設けることができ、特定の必要性に応じて、例えば、1つ、3つ、4つ以上のシーリングシートを設けることができることが明らかである。第1のカバー部材120および第2のカバー部材130の各々は、その内面の周囲全体に沿って延びる溝121、131をさらに備える。各カバー部材120、130の内面は、ケーブルの方を向く面である。
【0074】
図3に見られるように、2つのシーリングシート112を形成する凹部122、133と第1のカバー部材120および第2のカバー部材130の内溝121、131とに、分配シーリング材料300が充填される。このようにして、ケーブル出口カバー100は、挿入されたケーブル200、201、202、203を、ケーブルが挿入される入口部分の近くだけでなく、ケーブル出口カバーの側面部分においても、環境から保護する。分配シーリング材料300がシーリング部分に分配された後、電気ケーブル200、201、202、203が、対応する入口111に挿入されて収容される。
図3からも明らかなように、ケーブルの寸法は同じである必要はなく、ある許容範囲内で異なる直径のケーブルを使用することができる。例えば、6mm
2、25mm
2、50mm
2、または95mm
2の断面を有するケーブルを採用することができる。
【0075】
本発明による保持手段110が、
図4に詳細に示されている。各シーリングシート112は、曲率半径Rを持つ円形断面を有する。保持手段110は、各シーリングシート112の内面115に形成された突出要素を含む。各シーリングシートの内面115は、シーリングシート112の中心から距離Rに配置されたすべての点を含む表面である。言い換えると、内面115は、保持手段110を含まないシーリングシート112の表面である。保持手段110は、分配シーリング材料300の塗布中に、分配シーリング材料300がシーリングシート112の各凹部122、133の底部に向かって蓄積することを防ぐ。これは、分配シーリング材料300の分配後に、保持手段110の縁部114が分配シーリング材料300を凹部122、133の上部に保持するからである。
【0076】
保持手段110は、シーリングシート112の内面115に形成され、かつシーリングシート112の全幅に沿って延びる「段」と説明することができる。保持手段110の段は、シーリングシート112の湾曲した内面115に対して高さHに配置された縁部114を有する。高さHは全幅Wに沿って一定であることが好ましい。各段の2つの表面は、縁部114で収束して鋭角を形成し、したがって、段は直交断面を有していないことが好ましい。保持手段110は、第1のカバー部材120の第1の凹部122および第2のカバー部材130の第2の凹部133の両方に形成されて、シーリングシート112が、ケーブル200、201、202、203の周りに対称に分布された保持手段110を含むようになっている。しかしながら、保持手段110は、シーリングシート112に均一に分布されておらず、各凹部122、133の底部113には存在しない。
【0077】
保持手段110は、縁部114で収束する2つの表面の各々が、シーリングシート112の曲率半径Rよりも小さい曲率半径rを有するように構成され得る。したがって、シーリングシート112の内面115の曲率が局所的に減少する。
【0078】
保持手段110は、各シーリングシート112の内壁の表面を増大させ、それらの内壁の縁部114の数を増加させる。このようにして、分配シーリング材料300の流れは、縁部のある内壁によって促され、シーリングシート112を形成する凹部122、133の底部に分配材料300が蓄積することが回避される。
【0079】
図5と
図6とを比較することによって、従来技術に対する本発明の利点が明らかになろう。
【0080】
図5は、本発明による、ケーブル200、201、202、203の周りに設けられた分配シーリング材料300を示す。保持手段110は、シーリングシート112の各凹部122、133の底部に向かう分配材料300の流れに対抗するので、2つの凹部122、133が組み合わされてシーリングシート112を形成すると、分配シーリング材料300は、シーリングシート112の内壁に沿ってケーブル200、201、202、203の周りに均一に分布される。このようにして、ケーブル200、201、202、203に対するガスケットの半径方向反力および半径方向圧力は対称になり、ケーブル200、201、202、203の円形断面の周囲全体に沿ったシーリングが保証される。特に、ケーブル出口カバー100の分割線に近いシーリングシート112の部分における分配シーリング材料300の半径方向厚さは、シーリングシート112の上部および底部における分配シーリング材料300の半径方向厚さに等しい。
【0081】
逆に、従来技術によれば、第1のカバー部材120’および第2のカバー部材130’に保持手段110が設けられず、分配シーリング材料300は、凹部122’、133’の角部で薄くなり、シーリングシート112’の凹部122’、133’の底部で厚くなる傾向がある。したがって、従来技術の構成では、ケーブル出口カバー100の分割線に近い領域301’における分配シーリング材料300の半径方向厚さは、シーリングシート112’の底部および上部(第1の凹部122’および第2の凹部133’の底部にそれぞれ対応する)における分配シーリング材料300の半径方向厚さよりも小さい。このようにして、分配シーリング材料300は、十分に分布されず、ガスケットの半径方向反力はケーブル200、201、202、203の周りで対称ではない。
【0082】
本発明の保持手段110の存在は、ケーブル200、201、202、203の周りにおける分配シーリング材料300の均一な半径方向分布を保証するために非常に重要である。実際には、分配シーリング材料300が最初にカバー120、130の両方に塗布され、その後、2つのカバー120、130が互いに嵌合されて、システムのシーリングを保証する。各カバー部材120、130が分配シーリング材料300の均一な分布を有していない場合、2つのカバーが互いに嵌合されたときに、ケーブルの周りの領域301が十分な量の分配シーリング材料300を含まないため、シーリングに隙間が形成される。
【0083】
図7は、本発明によるケーブル出口カバー100を異なる寸法および直径のケーブル200、201、202、203に使用することができ、それでも効率的で確実なシーリングを提供することを概略的に示す。
図7に示す第1のカバー部材120は、異なる曲率半径を有する凹部122を特徴とする。各シーリングシート112は、分配シーリング材料300の均一な分配を保証するための保持手段110を備える。寸法、例えば、保持手段110の高さH、幅W、および局所的な曲率半径rは、対応するケーブル200、201、202、203の寸法、したがって、対応するシーリングシート112の寸法に適合する。このようにして、ケーブル出口カバー100の分割線に対応する部分301は、分配シーリング材料300の厚さを有し、この厚さは、すべてのケーブル寸法について、各凹部122の底部における分配シーリング材料300の厚さに等しい。
【0084】
シーリング材料の分配は、ケーブル出口カバーに収容されるケーブルの寸法に関係なく、常に同じ方法で行われる。
【0085】
本発明はまた、1本以上のケーブル200の一部を水および/または埃の侵入から密封するためのケーブル出口カバー100を組み立てる方法に関する。
【0086】
方法は、
図2に示すもののような、第1の凹部122および第1の溝121を有する第1のカバー部材120と、第2の凹部133および第2の溝131を有する対称な第2のカバー部材130とを設けることを含む。2つの嵌合凹部によって形成されたシーリングシート112における分配シーリング材料300の均一な分布を保証するために、第1のカバー部材120および第2のカバー部材130の凹部122、133が保持手段110を備えることができると有利である。
【0087】
分配シーリング材料300は、第1のカバー部材120および第2のカバー部材130の凹部122、133および溝121、131の両方にそれぞれ分配される。これらの動作は同時に行われることが好ましい。
図8に概略的に示すように、これらの動作は、分配シーリング材料300を分配するためのロボットアプリケーション手段310、例えばノズルを使用して行われることが好ましい。
【0088】
溝121、131および凹部122、133への充填後、ケーブル200、201、202、203は、第1のカバー部材120の対応する入口111およびシーリングシート112に挿入される。第1のカバー部材120および第2の部材130は対称であり、ケーブル200、201、202、203を、第2のカバー部材130の対応するシートにも挿入できることが明らかである。その後、ケーブル200、201、202、203の一部を収容して覆うために、第2のカバー部材130を第1のカバー部材120と組み合わせる。例えば、第1のカバー部材120と第2のカバー部材130とを、ねじを使用して互いに固定することができる。このようにして、ケーブル200、201、202、203に対して確実なシーリングを提供するケーブル出口カバー100が得られる。
【0089】
本発明を、本発明により構成される好ましい物理的実施形態に関して説明したが、上記の教示に照らして、本発明の趣旨および意図する範囲から逸脱することなく添付の特許請求の範囲内で、本発明の様々な変更、変形形態、および改良を行うことができることが当業者には明らかであろう。
【0090】
例えば、分配シーリング材料300をシーリングシート112の内壁に沿って均一に分配する方法がケーブル出口カバー100に関して説明されていても、粘性材料を分配する必要がある任意の他のデバイスに同じ方法を使用できることが明らかである。例えば、本発明による保持手段110を、絶縁層および保護層を備える多層ケーブルを形成するための成形体の内面に設けることができる。
【0091】
加えて、記載された本発明を不必要に曖昧にしないために、当業者が精通していると考えられる部分は本明細書に記載されていない。したがって、本発明は、特定の例示的な実施形態によって制限されるべきではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0092】
100 ケーブル出口カバー
110 保持手段
111 入口
112 シーリングシート
113 凹部の底部
114 保持手段の突出縁部
115 シーリングシートの内面
120 第1のカバー
121 第1のカバーの溝
122 第1のカバーの凹部
130 第2のカバー
131 第2のカバーの溝
133 第2のカバーの凹部
140 ハウジング
200、201、202、203 ケーブル
300 分配シーリング材料
301 分割線に近い分配シーリング材料の領域
301’ 従来技術における分割線に近い分配シーリング材料の領域
310 ロボットアプリケーション手段
R 分配シートの曲率半径
r 局所的な曲率半径
H 保持手段の高さ
W 保持手段の幅
【外国語明細書】