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特開2022-136005ドアセット、ドアハンドルセットおよび殺菌ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136005
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ドアセット、ドアハンドルセットおよび殺菌ユニット
(51)【国際特許分類】
   E05B 1/00 20060101AFI20220908BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
E05B1/00 311P
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031386
(22)【出願日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2021035117
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 徳島新聞2021年10月14日朝刊第6面、一般社団法人徳島新聞社、2021年10月14日 〔刊行物等〕とくしまビジネスチャレンジメッセ2021、アスティとくしま(徳島県立産業観光交流センター)、徳島チャレンジメッセ実行委員会主催、2021年10月21~23日 〔刊行物等〕日本経済新聞電子版、株式会社日本経済新聞社、2021年11月11日 〔刊行物等〕日本経済新聞2021年11月12日朝刊第43面、株式会社日本経済新聞社、2021年11月12日 〔刊行物等〕日経産業新聞2021年11月25日朝刊、株式会社日本経済新聞社、2021年11月25日
(71)【出願人】
【識別番号】391016886
【氏名又は名称】日本フネン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(71)【出願人】
【識別番号】592197108
【氏名又は名称】徳島県
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】山岡 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 一諭
(72)【発明者】
【氏名】芥川 正武
(72)【発明者】
【氏名】中村 怜
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD11
4C058DD13
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK22
(57)【要約】
【課題】ドアのハンドルの内面を適切に殺菌することができる殺菌ユニット、かかる殺菌ユニットを備えたドアハンドルを提供する。
【解決手段】扉5に設けられたドアハンドル6を殺菌する殺菌ユニット10であって、殺菌ユニット10は、ドアハンドル6のハンドルレバー8の内面8aと対向する位置に設けられ、ハンドルレバー8の内面8aに波長が200~365nmの紫外線を照射する光源16を有する紫外線照射部15を備えており、紫外線照射部15は、ハンドルレバー8の内面8aに、0.03mW/cm以上の照射強度の紫外線を光源16から照射する機能を有していることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に設けられたドアハンドルを殺菌する殺菌ユニットであって、
該殺菌ユニットは、
前記ドアハンドルのハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に紫外線を照射し得る位置に設けられ、該ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に波長が200~365nmの紫外線を照射する光源を有する紫外線照射部を備えており、
該紫外線照射部は、
前記ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に、0.03mW/cm以上の照射強度の紫外線を光源から照射する機能を有している
ことを特徴とする殺菌ユニット。
【請求項2】
前記紫外線の照射時間が10~120秒に調整されている
ことを特徴とする請求項1記載の殺菌ユニット。
【請求項3】
前記紫外線照射部は、
前記光源から前記ハンドルレバーの内面までの距離が100mm以下となるように設けられる
ことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌ユニット。
【請求項4】
前記紫外線照射部の光源の作動を制御する制御部を備えており、
該制御部は、
前記光源から紫外線を照射するタイミングを調整するスケジュール機能を有しており、
該スケジュール機能は、
一定の時間間隔で前記紫外線照射部の光源からの紫外線の照射を開始し所定の時間紫外線を照射すると紫外線の照射を停止する、および/または、所定の時間になると前記紫外線照射部の光源からの紫外線の照射を開始し所定の時間紫外線を照射すると紫外線の照射を停止する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の殺菌ユニット。
【請求項5】
前記紫外線照射部の光源の作動を制御する制御部と、
前記扉の開閉を検出する開閉センサと、を備えており、
前記制御部は、
前記扉が開いた状態から該扉が閉じたことを検出すると、前記紫外線照射部の光源からの紫外線の照射を開始し、一定時間経過すると紫外線の照射を停止する機能を有している
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の殺菌ユニット。
【請求項6】
前記紫外線照射部の光源の作動を制御する制御部と、
前記扉近傍に存在する人を検出する人感センサと、を備えており、
前記制御部は、
前記扉近傍に人が存在していることを前記人感センサが検出すると、前記紫外線照射部の光源から紫外線を照射しないよう制御する
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の殺菌ユニット。
【請求項7】
前記ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面には、前記扉の表面に対して傾斜した傾斜面を有しており、
前記紫外線照射部の光源は、
前記ハンドルレバーが操作されていない状態において、その光軸が、前記傾斜面と交差し、かつ、前記扉の表面に対して傾斜するように設置されている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の殺菌ユニット。
【請求項8】
扉に設けられるドアハンドルセットであって、
前記扉の表面に立設される支持部と、
先端部が作動位置と待機位置との間で揺動可能になるように、基端部が前記支持部に連結されたハンドルレバーと、
該ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面を殺菌する殺菌ユニットと、を備えており、
該殺菌ユニットは、
請求項1から7のいずれかに記載の殺菌ユニットである
ことを特徴とするドアハンドルセット。
【請求項9】
前記ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面には、前記扉の表面に対して傾斜した傾斜面を有しており、
前記殺菌ユニットは、
前記紫外線照射部の光源の光軸が、前記ハンドルレバーが待機位置に配置された状態において前記傾斜面と交差するように、前記扉の表面と前記柱状部との連結位置に配置されている
ことを特徴とする請求項8記載のドアハンドルセット。
【請求項10】
前記ハンドルレバーは、
前記扉の表面の法線方向と平行な下面を有しており、
前記殺菌ユニットは、
前記紫外線照射部の光源の光軸が、前記ハンドルレバーが待機位置に配置された状態において前記ハンドルレバーの下面と交差するように配置されている
ことを特徴とする請求項8または9記載のドアハンドルセット。
【請求項11】
前記ハンドルレバーの素材がアルミである
ことを特徴とする請求項8、9または10記載のドアハンドルセット。
【請求項12】
扉と、戸枠と、を備え、
前記扉は、
請求項8から11のいずれかに記載のドアハンドルセットまたは請求項1から7のいずれかに記載の殺菌ユニットを有している
ことを特徴とするドアセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアセット、ドアハンドルセットおよび殺菌ユニットに関する。さらに詳しくは、ドアハンドルを殺菌する機構を備えたドア、ドアハンドルセット、かかるドアやドアハンドルを殺菌する殺菌ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ドアセットを構成するドアには、ドアを開閉する際に人が操作するドアハンドルが設けられている。つまり、ドアハンドルを握ってまわしたりドアハンドルに指を引っ掛けて引っ張ったりすることによって、人はドアを開閉する。
【0003】
このようなドアハンドルは多数の人が触るため、ウイルスや細菌等がついた手でドアハンドルを操作した後で、他の人がドアハンドルに触ると、ドアハンドルを介して、ウイルスや細菌等がうつされることになる。ドアハンドルに人が触ったあと、または、ドアハンドルに人が触るまえに消毒や殺菌をすれば上記の問題は生じないが、ドアハンドルに触る人が常にドアハンドルを消毒や殺菌をすることは難しい。
【0004】
そこで、ドアハンドルを自動で殺菌する技術として、特許文献1、2が開示されている。
【0005】
特許文献1には、ドアノブの周囲に取り付けた殺菌ランプからドアノブの外面に光を照射して、ドアノブの表面を殺菌する殺菌システムが開示されている。この殺菌システムでは、ドアノブを囲むカバーが設けられており、このカバーに形成された開口から手を入れて人がドアノブを操作するようになっている。そして、殺菌システムは開口内に人の手があるか否かを検出するセンサを有しており、このセンサによって開口への人の手の挿入と人の手の離脱を検出し殺菌ランプの点灯消灯を制御する機能を設けることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、ドアが設けられている壁面に設けられたドア用取手消毒装置が開示されている。このドア用取手消毒装置は、ドアの取手に向かって移動して取手をカバーするカバー部を備えており、このカバー部内には紫外線照射器が設けられている。このため、カバー部によって取手をカバーした状態でドアの取手の表面に紫外線照射器から紫外線を照射すれば、ドアの取手の表面を殺菌することができる。また、特許文献2のドア用取手消毒装置は人感センサを有しており、人感センサによって人の接近を検出し、カバー部の移動と紫外線照射器による紫外線の照射とを制御する機能を設けることが開示されている。
【0007】
しかし、これらの殺菌システムやドア用取手消毒装置では、ドアノブや取手の表面のうち、ドアに対して外方に位置する部分には紫外線等を照射できるものの、ドアノブや取手の内方、つまり、ドアノブや取手においてドアと対向する面(以下、ドアノブ等の内面という場合がある)には紫外線等を照射することができない。
【0008】
ドアノブ等の内面を殺菌する技術として、特許文献3の技術がある。特許文献3には、ドアにおけるドアノブ等の内面と対向する位置に、紫外線を照射する紫外線発生器を設けた技術が開示されている。この技術であれば、ドアノブ等の内面に紫外線を照射することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-307049号公報
【特許文献2】特許6426322号公報
【特許文献3】特開2016-93470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかるに、特許文献3の技術では、単に、ドアノブ等の内面に紫外線を照射すればドアノブ等の内面の殺菌が可能であることが記載されているだけであり、実際にどの程度の紫外線を照射すればドアノブ等の内面を殺菌できるかについては全く記載が無い。
【0011】
とくに、ドアノブ等の場合、人がドアノブ等を操作するタイミングやその頻度は一定ではなく、長期間ドアノブ等を操作しない場合もあれば、頻繁にドアノブ等を操作する場合もある。したがって、単にドアノブ等に紫外線を照射する構成としただけでは、ドアノブ等を適切に殺菌することはできない。
【0012】
本発明は上記事情に鑑み、ドアハンドルの内面、下面、側面を適切に殺菌することができる殺菌ユニット、かかる殺菌ユニットを備えたドアハンドルセットを提供することを目的とする。
また、上述した殺菌機能を有する殺菌ユニットやドアハンドルを備えたドアセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
<殺菌ユニット>
第1発明の殺菌ユニットは、扉に設けられたドアハンドルを殺菌する殺菌ユニットであって、該殺菌ユニットは、前記ドアハンドルのハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に紫外線を照射し得る位置に設けられ、該ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に波長が200~365nmの紫外線を照射する光源を有する紫外線照射部を備えており、該紫外線照射部は、前記ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に、0.03mW/cm以上の照射強度の紫外線を光源から照射する機能を有していることを特徴とする。
第2発明の殺菌ユニットは、第1発明において、前記紫外線の照射時間が10~120秒に調整されていることを特徴とする。
第3発明の殺菌ユニットは、第1または第2発明において、前記紫外線照射部は、前記光源から前記ハンドルレバーの内面までの距離が100mm以下となるように設けられることを特徴とする。
第4発明の殺菌ユニットは、第1、第2または第3発明において、前記紫外線照射部の光源の作動を制御する制御部を備えており、該制御部は、前記光源から紫外線を照射するタイミングを調整するスケジュール機能を有しており、該スケジュール機能は、一定の時間間隔で前記紫外線照射部の光源からの紫外線の照射を開始し所定の時間紫外線を照射すると紫外線の照射を停止する、および/または、所定の時間になると前記紫外線照射部の光源からの紫外線の照射を開始し所定の時間紫外線を照射すると紫外線の照射を停止することを特徴とする。
第5発明の殺菌ユニットは、第1、第2、第3または第4発明において、前記紫外線照射部の光源の作動を制御する制御部と、前記扉の開閉を検出する開閉センサと、を備えており、前記制御部は、前記扉が開いた状態から該扉が閉じたことを検出すると、前記紫外線照射部の光源からの紫外線の照射を開始し、一定時間経過すると紫外線の照射を停止する機能を有していることを特徴とする。
第6発明の殺菌ユニットは、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記紫外線照射部の光源の作動を制御する制御部と、前記扉近傍に存在する人を検出する人感センサと、を備えており、前記制御部は、前記扉近傍に人が存在していることを前記人感センサが検出すると、前記紫外線照射部の光源から紫外線を照射しないよう制御することを特徴とする。
第7発明の殺菌ユニットは、第1、第2、第3、第4、第5または第6発明において、前記ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面には、前記扉の表面に対して傾斜した傾斜面を有しており、前記紫外線照射部の光源は、前記ハンドルレバーが操作されていない状態において、その光軸が、前記傾斜面と交差し、かつ、前記扉の表面に対して傾斜するように設置されていることを特徴とする。
<ドアハンドルセット>
第8発明のドアハンドルセットは、扉に設けられるドアハンドルセットであって、前記扉の表面に立設される支持部と、先端部が作動位置と待機位置との間で揺動可能になるように、基端部が前記支持部に連結されたハンドルレバーと、該ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面を殺菌する殺菌ユニットと、を備えており、該殺菌ユニットは、第1から第7発明のいずれかに記載の殺菌ユニットであることを特徴とする。
第9発明のドアハンドルセットは、第8発明において、前記ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面には、前記扉の表面に対して傾斜した傾斜面を有しており、前記殺菌ユニットは、前記紫外線照射部の光源の光軸が、前記ハンドルレバーが待機位置に配置された状態において前記傾斜面と交差するように、前記扉の表面と前記柱状部との連結位置に配置されていることを特徴とする。
第10発明のドアハンドルセットは、第8または第9発明において、前記ハンドルレバーは、前記扉の表面の法線方向と平行な下面を有しており、前記殺菌ユニットは、前記紫外線照射部の光源の光軸が、前記ハンドルレバーが待機位置に配置された状態において前記ハンドルレバーの下面と交差するように配置されていることを特徴とする。
第11発明のドアハンドルセットは、第8、第9または第10発明において、前記ハンドルレバーの素材がアルミであることを特徴とする。
<ドアセット>
第12発明のドアセットは、扉と、戸枠と、を備え、前記扉は、第8から第11発明のいずれかに記載のドアハンドルセットまたは第1から第7発明のいずれかに記載の殺菌ユニットを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
<殺菌ユニット>
第1~第3発明によれば、0.03mW/cm以上の照射強度でハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に波長が200~365nmの紫外線を照射するので、ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面にウイルスなどが付着してもウイルスなどを殺菌できるし、ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面がウイルスなどに汚染されることを防止し易くなる。
第4発明によれば、ハンドルレバーを効果的に殺菌処理することができる。
第5発明によれば、人が操作した後にハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面を迅速に殺菌することができるので、複数の人がハンドルレバーを操作しても、ハンドルレバーを介したウイルス等の感染を防止できる。
第6発明によれば、人に紫外線が照射されることを防止できる。
第7発明によれば、ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面に傾斜面があっても、その傾斜面を効果的に殺菌することができる。
<ドアハンドル>
第8発明によれば、ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面にウイルスなどが付着してもウイルスなどを殺菌できるし、ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面がウイルスなどに汚染されることを防止し易くなる。
第9~第11発明によれば、ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面を効果的に殺菌することができる。
<ドアセット>
第12発明によれば、扉に設けられたハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面にウイルスなどが付着してもウイルスなどを殺菌でき、ハンドルレバーの内面および/または下面および/または側面がウイルスなどに汚染されることを防止し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の殺菌ユニット10を設けたドアハンドルセットの概略説明図であり、(A)は(B)のA-A線断面矢視図であり、(B)は(A)のX矢視図である。
図2】本実施形態の殺菌ユニット10の概略ブロック図である。
図3】本実施形態の殺菌ユニット10を設けたドアハンドルセットの概略断面図であり、(A)はハンドルレバー8を待機位置に配置した状態であり、(B)はハンドルレバー8を作動位置に配置した状態である。
図4】異なる紫外線照射部15を有する殺菌ユニット10を設けたドアハンドルセットの概略説明図であり、(A)は(B)のA-A線断面矢視図であり、(B)は(A)のX矢視図である。
図5】本実施形態の本実施形態の殺菌ユニット10を設けたドアセット1の概略説明図である。
図6】(A)は他の実施形態の殺菌ユニット10を設けたドアハンドルセットの概略説明図であり、(B)の凹みを有しないハンドルレバー8を殺菌する場合の概略説明図である。
図7】実施例1の実験に使用したドアハンドルおよび紫外線照射部のレイアウトの説明図であり、(A)は(B)のA-A線断面図であり、(B)は(A)のY矢視図であり、(C)は(B)のC-C線断面矢視図である。
図8】(A)は実施例1の実験に使用した紫外線照射部の写真であり、(B)、(C)は実施例1の実験状況を撮影した写真である。
図9】実施例1の実験結果のグラフである。
図10】実施例2の実験に使用したドアハンドルおよび紫外線照射部のレイアウトの説明図であり、(A)は(B)のA-A線断面図であり、(B)は(A)のY矢視図であり、(C)は(B)のC-C線断面矢視図である。
図11】(A)は実施例2の実験に使用した紫外線照射部の写真であり、(B)、(C)は実施例2の実験状況を撮影した写真である。
図12】実施例2の実験結果のグラフである。
図13】他の実施形態の殺菌ユニット10Bを設けたドアハンドルセットの概略説明図であり、(A)は(B)のA-A線断面矢視図であり、(B)は(A)のB-B線断面矢視図である。
図14】他の実施形態の殺菌ユニット10Bの概略説明図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB-B線断面矢視図である。
図15】他の実施形態の殺菌ユニット10Bを設けたドアセット1Bの概略説明図である。
図16】他の実施形態の殺菌ユニット10Bのブロック図である。
図17】実施例3の実験に使用したドアハンドルおよび紫外線LEDの配置の説明図であり、(A)は(B)のA-A線断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面矢視図である。
図18】実施例3の実験状況を撮影した写真である。
図19】実施例3の実験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の殺菌ユニットは、居住用建物や商業用施設等の室内と室外とを連通する入口や隔離された空間を仕切る壁などに設けられるドアセットの扉に設けられる殺菌ユニットであって、ドアハンドルを殺菌できる構造としたことに特徴を有している。
【0017】
本実施形態の殺菌ユニットを備えたドアを有するドアセットが設置される居住用建物や商業用施設はとくに限定されない。例えば、居住用建物であれば、ホテルの各部屋やマンション等の集合住宅における各住戸の玄関等のように、室外と室内とを分離するドアセットに適している。また、商業用施設であれば、オフィスの入口等のように、廊下と室内とを分離するドアセットに適している。さらに、居住用建物や商業用施設などにおいて、階段室用勝手口や駐輪場用の通路、更衣室やスタッフルームなどに設置されるドアセットに適している。
【0018】
本実施形態の殺菌ユニットは、マンションの各住戸の部屋同士の間に設置されるドアセットの扉のドアハンドルや、部屋と廊下との間に設置されるドアセットの扉のドアハンドルを殺菌する器具としても使用することができる。また、居住用建物や商業用施設などにおいて、階段室用勝手口や駐輪場用の通路、更衣室やスタッフルームなどに設置されるドアセットの扉のドアハンドルを殺菌する器具としても使用することができる。
【0019】
以下では、本実施形態の殺菌ユニットを、マンションの住戸の玄関に設置されるドアセットの扉、具体的には、プッシュプルタイプのドアハンドルが設けられた外開きのドアセットにおいて、屋外側のドアハンドルを殺菌するように本実施形態の殺菌ユニットを設けた場合を代表として説明する。もちろん、外開きのドアセット以外にも、扉を開く際に手の指を引っ掛けて引っ張るドアハンドルが設けられたドアセットであれば、ドアハンドルの殺菌に本実施形態の殺菌ユニットを採用できる。
【0020】
<ドアセット1>
図5において、符号EWは玄関側壁を示している。この玄関側壁EWには、本実施形態のドアセット1が取り付けられている。このドアセット1は、戸枠2と、この戸枠2に取り付けられる扉5と、を備えている。この扉5には、扉5を開閉する際に使用するドアハンドル6が設けられており、このドアハンドル6を殺菌するための本実施形態の殺菌ユニット10(以下単に殺菌ユニット10という場合がある)が設けられている。
【0021】
<ドアハンドル6>
図1に示すように、扉5の表面5aにはドアハンドル6が設けられている。このドアハンドル6は、プッシュプルタイプのドアハンドルであり、ドアハンドル6を操作することによって、扉5のラッチの作動がフリーになる構造を有している。具体的には、ドアハンドル6のハンドルレバー8を引っ張ればラッチが倒れるので、そのままハンドルレバー8を引っ張ることによって扉5を開くことができる構造を有している。
【0022】
図1に示すように、このドアハンドル6は、支持部7とハンドルレバー8とから構成されている。
【0023】
支持部7は、基端が扉5の表面5aに固定された状態で立設される部材であり、その先端部にハンドルレバー8の基端部が揺動可能に連結されている。具体的には、ハンドルレバー8は、その基端部を支点として先端部が扉5の表面に対して接近離間するように、基端部が支持部7の先端部に揺動可能に連結されている。ハンドルレバー8は、その先端部が扉5の表面5aに対して接近した待機位置(図1(A)、図3(A)参照)ではラッチが扉5の端面から突出した状態で固定され、その先端部が扉5の表面に対して離間した作動位置(図3(B)参照)ではラッチの作動がフリーになるようになっている。つまり、ハンドルレバー8を待機位置にすると、扉5を戸枠2に連結して扉5を閉じた状態に維持でき、ハンドルレバー8を作動位置にした状態で扉5を引っ張れば、扉5と戸枠2との連結が解除されて扉5を開くことができる。
【0024】
このハンドルレバー8は、その内面8a、つまり、扉5の表面5aと対向する面に凹み部8hを有している。この凹み部8hは、人がハンドルレバー8を操作する際に指を引っ掛ける部分である。この凹み部8hは、ハンドルレバー8を操作する際に人が指を引っ掛けやすくするために、その内面の先端部近傍に扉5の表面5aに対して傾斜した傾斜面8bを有している。具体的には、凹み部8hの傾斜面8bは、ハンドルレバー8を待機位置にすると、その法線方向が支持部7の第一面7a(戸尻側に位置する面)と交差(または第一面7aを延長した面と交差)するように形成されている。
【0025】
<殺菌ユニット10>
図5に示すように、扉5の表面5aには、殺菌ユニット10が設けられている。この殺菌ユニット10は、扉5の表面5aに固定されるベース部材11と、ベース部材11に設けられる紫外線照射部15と、制御部20と、を有している。
【0026】
<ベース部材11>
ベース部材11は、扉5の表面5aと、ドアハンドル6のハンドルレバー8の内面8aと、支持部7の第一面7aと、に囲まれた空間(以下設置空間という場合がある)に設けられている。このベース部材11は、その底面11bが扉5の表面5aに接触し、その背面11cが支持部7の第一面7aに接触するように設置されている。このベース部材11の上部には、その上面から凹んだ凹み部11hが形成されている。この凹み部11hの底面は、ベース部材11の底面11bに対して傾斜した傾斜面11dとなっている。言い換えれば、殺菌ユニット10を上記設置空間に設置した状態で扉5の表面5aに対して傾斜するように、凹み部11hの底面が傾斜面11dとなっている。この傾斜面11dは、ベース部材11の背面11cからベース部材11の前面11fに向かうに従って底面11bからの距離が短くなるように形成されている(図1(A)参照)。
【0027】
<紫外線照射部15>
図1に示すように、ベース部材11の傾斜面11dには紫外線照射部15が設けられている。この紫外線照射部15は、基板17と、基板17の表面上に設けられた紫外線を照射できるLED光源などの複数の光源16(図1(B)では2個)とを有しており、基板17の背面を傾斜面11dに接触させた状態で設置されている。なお、基板17に設けられる光源16の数は限定されず、1個でもよいし3個以上でもよい。
【0028】
図1に示すように、複数の光源16は基板17の表面上に並んで配設されている。具体的には、基板17を傾斜面11dに設置した状態において、傾斜方向と直交する方向(図1(B)では左右方向)に並ぶように複数の光源16が配設されている。各光源16は、波長が200~365nmの紫外線を照射することができる機能を有するものである。しかも、各光源16は、ハンドルレバー8の内面、とくに、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bにおいて、照射される紫外線の照射強度を0.03mW/cm以上、好ましくは0.05mW/cmとすることができるものである。
【0029】
例えば、ハンドルレバー8の幅W(図1(B)では左右方向)が120mm、奥行きD(支持部7の第一面7aから先端までの距離、図1(A)参照)が60mmとする。そして、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bから紫外線照射部15の光源16までの距離L(図1(A)参照)を50mmとする。この条件であれば、光源16として紫外線LED(日亜化学工業社製:型番 NCSU334B)を使用し、ハンドルレバー8の幅方向の中心線CAを挟んで対称となるように2つの光源16を50mm離して配置すれば(つまり2つの光源16が中心線CAからそれぞれ25mmとなるように配置すれば)、2つの光源16から照射される紫外線の照射強度を、ハンドルレバー8の内面のどの位置でも(少なくとも傾斜面8bよりも先端側の内面のほぼ全体を)0.066mW/cm以上とすることができる。
【0030】
なお、光源16は上述した紫外線の照射強度を実現できるものであればよく、とくに限定されない。上述した紫外線LED以外にも、紫外線ランプ(低圧水銀ランプ等)を光源16として使用することができる。
【0031】
また、光源16には、上述したように、UVA~UVCの領域の紫外線を照射できるものを使用できるが、光源16が照射する紫外線の波長域は上記範囲に限られない。しかし、光源16は、少なくともUVCの領域(200~300nm)の波長の光を含む紫外線を照射できるものを使用することが望ましい。もちろん、UVCの領域(200~300nm)の波長の光だけを含む紫外線を照射できる光源16を使用してもよい。
【0032】
また、光源16を複数設けた場合、ハンドルレバー8の内面において、位置によっては、複数の光源16からの紫外線が重畳して照射される位置と、一つの光源16だけから紫外線が照射される位置が生じる可能性がある。上記紫外線の照射強度は、複数の光源16からの紫外線が重畳して照射される位置では複数の光源16から照射される全ての紫外線の合計強度であり、一つの光源16だけから紫外線が照射される位置では一つの光源16から照射される紫外線の強度である。
【0033】
<制御部20>
図2および図5に示すように、殺菌ユニット10は、紫外線照射部15の作動を制御する制御部20を備えている。この制御部20は、扉5に設けられるケース20c内に収容された制御器21を備えている。この制御器21は、紫外線照射部15の作動を制御するものであり、紫外線照射部15に電気的に接続されている。具体的には、制御器21は、紫外線照射部15の光源16の点灯消灯、点灯時間を制御する機能を有している。また、制御器21は、光源16に供給する電流量を調整してその発光強度を制御する機能も有している。
【0034】
殺菌ユニット10が以上のような構成を有しているので、ドアハンドル6のハンドルレバー8の内面8aにウイルスなどが付着しても光源16から照射される紫外線によってウイルスなどを殺菌できる。すると、ドアハンドル6のハンドルレバー8を複数の人が操作することによる、ハンドルレバー8を介したウイルスなどの感染を抑制することができる。
【0035】
しかも、制御部20によって殺菌ユニット10によるハンドルレバー8への紫外線の照射状態を制御できるので、ウイルスなどの殺菌を効果的に実施できる。
【0036】
なお、制御器21や紫外線照射部15の光源16に電力を供給する電源は、ケース20c内に内蔵されていてもよいし、他の場所(例えば扉5内や枠2内等)に設けてもよい。また、商用電力が供給されるようになっていてもよい。
【0037】
<開閉センサ22>
制御部20の制御器21は、種々の方法で紫外線照射部15の光源16の作動を制御することができる。例えば、制御部20が扉5の開閉を検出するマグネットセンサ等の公知の開閉センサ22を備えていれば、人がハンドルレバー8を操作した後、短期間で紫外線によるハンドルレバー8の殺菌を実施することができるように、紫外線照射部15の光源16の作動を制御することができる。
【0038】
例えば、開閉センサ22としてマグネットセンサを採用した場合であれば、扉5に設けられるケース20c内にマグネットセンサのセンサ本体22aを内蔵し、対になる磁石22bを戸枠2に設ける。また、ケース20c内の開閉センサ22のセンサ本体22aは電気的に制御部20の制御器21に接続する。すると、開閉センサ22のセンサ本体22aに扉5の開閉に関する信号を制御部20の制御器21に供給する機能が設けられていれば、制御部20の制御器21は、扉5の開閉に基づいて、紫外線照射部15の光源16の点灯消灯を制御することができる。具体的には、開閉センサ22のセンサ本体22aからの信号によって扉5が開いている状態から扉5が閉じた状態になったと制御部20の制御器21が判断すると、扉5が閉じられた直後からまたは扉5が閉じてから一定期間ののち(例えば数秒後)、制御器21によって紫外線照射部15の光源16を点灯させることができる。このような機能を制御器21に設けて光源16の点灯消灯を制御すれば、人がハンドルレバー8を操作した後、短期間で紫外線によるハンドルレバー8の殺菌を実施することができる。
【0039】
なお、扉5の開閉を検出する開閉センサ22を設けた場合には、扉5が閉じてから紫外線照射部15の光源16を点灯した後、一定の時間が経過すると、光源16を消灯させる機能を制御部20の制御器21が有していることが望ましい。この場合、扉5が閉じてから光源16が点灯している時間は10~120秒が好ましい。120秒程度、少なくとも60秒以上の間、ハンドルレバー8の内面に紫外線を照射すれば、照射される紫外線の照射強度がハンドルレバー8の内面において0.03mW/cmであっても、積算光量を10mJ/cm以上、好ましくは13mJ/cm以上とすることができるので、ハンドルレバー8の内面を十分に殺菌することができる。もちろん、紫外線の照射強度を強くすれば、光源16が点灯している時間を短くすることができる。例えば、照射される紫外線の照射強度をハンドルレバー8の内面において0.85mW/cm以上とすれば、紫外線を照射する時間が10秒程度でも、ハンドルレバー8の内面を十分に殺菌することができる。
【0040】
<殺菌ユニット10の設置について>
また、殺菌ユニット10は、ドアセット1の扉5等に予め設置されていてもよいが、殺菌ユニット10を既設の扉に設置するようにしてもよい。上述したように、殺菌ユニット10として、紫外線照射部15をベース部材11に設けられ、制御部20の制御器21等がケース20c内に内蔵されていれば、ベース部材11や制御部20等を既設の扉の適切な位置に設置することで、既設の扉を殺菌ユニット10を有する扉とすることができる。
【0041】
なお、上記殺菌ユニット10とドアハンドル6の組み合わせが、請求項8~11に記載のドアハンドルセットに相当する。上記例では、ドアハンドル6の支持部7の第一面7aに殺菌ユニット10のベース部材11が取り付けられているが、殺菌ユニット10の紫外線照射部15はドアハンドル6の支持部7に内蔵されていてもよい。もちろん上述した制御部20の制御器21や開閉センサ22も支持部7に内蔵されていてもよい。そして、紫外線照射部15、制御部20の制御器21、開閉センサ22のうち、一部が支持部7または扉5のいずれかに内蔵されていてもよい。
【0042】
上記殺菌ユニット10が設けられたドアセット1が、請求項12に記載のドアセットに相当する。上記例では、殺菌ユニット10や制御部20が扉5の表面5aに取り付けられているが、殺菌ユニット10や制御部20は扉5に内蔵されていてもよい。つまり、殺菌ユニット10の紫外線照射部15や制御部20の制御器21、開閉センサ22の全てまたは一部が扉5に内蔵されていてもよい。例えば、開閉センサ22がマグネットセンサであれば、センサ本体21aを戸枠2において戸先端面と対向する部分に設け、対になる磁石22bは扉5の戸先端面近傍に設けることができる。逆に、センサ本体21aは扉5の戸先端面近傍に設け、対になる磁石22bを戸枠2において戸先端面と対向する部分に設けることもできる。
【0043】
また、図6(A)に示すように、扉5にドアハンドル6が取り付けられた状態において、ハンドルレバー8の凹み部8hと紫外線照射部15が対向するように、扉5の表面5aに殺菌ユニット10を埋設してもよい。この場合、ベース部材11において紫外線照射部15が設けられる面は、上述したような傾斜面11dとなっていてもよいし、扉5の表面5aと平行な面となっていてもよい(図6(A)参照)。
【0044】
殺菌ユニット10を設置した状態において、紫外線照射部15の光源16とハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bとの相対的な位置は、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bに照射される紫外線の照射強度が、0.03mW/cm以上、好ましくは0.05mW/cm以上となるように配置されていればよい。しかし、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bの殺菌効果を高める上では、光源16は、その光軸LAがハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bと直交するように配置されていることが望ましい。図6(A)に示すように、殺菌ユニット10が扉5の表面5aに埋設されている場合も同様である。
【0045】
また、殺菌ユニット10を設置した状態において、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bから紫外線照射部15の光源16までの距離Lはとくに限定されない。ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bにおいて、照射される紫外線の照射強度が0.03mW/cm以上、好ましくは0.05mW/cm以上となる距離とすればよい。しかし、距離Lを100mm以下とすれば、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bにおける紫外線の照射強度を上記範囲としつつ、光源16自体の発光強度をある程度抑えることが可能となる。すると、光源16に供給する電力も抑えることができるので、光源16の発熱を抑制できるし、光源16の寿命を長くできる。また、殺菌ユニット10の電源が電池であれば、電池交換の間隔を長くできる。
【0046】
また、紫外線照射部15の光源16から紫外線が照射される領域は、ハンドルレバー8の内面全面が望ましい。しかし、ハンドルレバー8の内面において、人がハンドルレバー8を操作する際に頻繁に接触する領域だけに紫外線が照射されるようにしてもよい。例えば、人がハンドルレバー8を操作する際には、通常、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bとハンドルレバー8の内面において傾斜面8bよりも先端部側の部分には接触するが、傾斜面8bよりも奥の部分(支持部7側の部分)には接触しない。したがってハンドルレバー8の内面8aにおいて、ハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bと傾斜面8bよりも先端部側の部分とその周辺だけに紫外線が照射される(またはハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bと傾斜面8bよりも先端部側の部分とその周辺だけが紫外線の照射強度が0.03mW/cm以上、好ましくは0.05mW/cm以上となる)ように、使用する光源16の指向角や配置、ベース部材11の設置位置などを調整してもよい。
【0047】
また、紫外線照射部15は、光源16から照射される紫外線が直接外部に放出されないように、光源16を配置することが望ましい。「紫外線が直接外部に放出されない」とは、光源16から照射される全ての紫外線が、ベース部材11の凹み部11hの内壁やハンドルレバー8の内面8aのいずれかに照射され、そのベース部材11の凹み部11hの内壁やハンドルレバー8の内面8aで反射した後でなければ、設置空間よりも外方の空間には放出されないことを意味している。なお、紫外線が直接外部に放出される場合であっても、放出される紫外線の強度が一定の強度以下となるように、光源16を配置してもよい。
【0048】
<ベース部材11について>
殺菌ユニット10を扉5の表面5aに設ける場合(つまり殺菌ユニット10を扉5に内蔵しない場合)において、上記例では、殺菌ユニット10のベース部材11は、その底面11bおよび背面11cが扉5の表面5aと支持部7の第一面7aにそれぞれ接触する場合を説明した。この場合、紫外線照射部15の光源16とハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bとの相対的な位置を合せやすくなるという利点がある。しかし、紫外線照射部15の光源16とハンドルレバー8の凹み部8hの傾斜面8bとの相対的な位置が上記関係になるように配置できるのであれば、殺菌ユニット10のベース部材11は、扉5の表面5aと支持部7の第一面7aのいずれか一方にのみ接触するように設置されていてもよい。ベース部材11が扉5の表面5aや支持部7の第一面7aに接触する状態には、ベース部材11が扉5の表面5aや支持部7の第一面7aとスペーサ等を介して接触する場合も含んでいる。
【0049】
ベース部材11の大きさもとくに限定されないが、扉5をその表面5a側から見たときにベース部材11全体がハンドルレバー8によって隠れる大きさに形成されていることが望ましい。
【0050】
上記例では、ベース部材11の上部に凹み部11hを設け、この凹み部11hの底面を傾斜面11dとした場合を説明した。しかし、ベース部材11は、上部の凹み部11hを設けずに、単にベース部材11の上面を傾斜面として、この傾斜面に紫外線照射部15を設けてもよい。もちろん、ベース部材11を扉5の表面5a等に取り付けた際に、ベース部材11の上面が扉5の表面5aと平行となるように形成し、この上面に紫外線照射部15を設けてもよい。
【0051】
<制御部20について>
【0052】
制御部20は、上述した開閉センサ22に加えて、または、開閉センサ22に代えて人感センサ23を備えていてもよい。人感センサ23を備えていれば、人が扉5の近くにいる場合に紫外線照射部15の光源16から光を照射しないよう制御することができる。例えば、ケース20c内に人感センサ23を設けておき、扉5(言い換えれば人感センサ23)から2m以内に人がいることを人感センサ23が検出すると、人感センサ23からの信号が制御部20の制御器21に送信されるようにする。そして、人感センサ23が人を検出しなくなるまで、制御部20の制御器21は紫外線照射部15の光源16から光を照射しない(点灯している場合は消灯する)ように制御する。すると、たまたまドアハンドル6のハンドルレバー8と扉5の表面5aの間を人が除き込んだ場合等に、紫外線が人の目に入ることを防止できる。また、扉5を閉めた後も人がハンドルレバー8に手を掛けている状況が生じたり、扉5を閉めた後にすぐに扉5を開くようにハンドルレバー8を操作する状況が生じたりしても、紫外線が人の手等に照射されることを防止できる。
【0053】
使用する人感センサ23はとくに限定されない。例えば、赤外線や可視光線、超音波、静電容量等を利用した種々のセンサを人感センサ23として使用できる。とくに、人感センサ23は、ある程度の範囲、例えば、人感センサ23の位置を中心として、上下左右方向の±45°の範囲にいる人を検出できるものが望ましい。なお、人感センサ23は、扉5やドアハンドル6の支持部7、殺菌ユニット10に内蔵されていてもよい。
【0054】
制御部20の制御器21が、開閉センサ22のセンサ本体の信号に基づいて、扉5が閉じてから紫外線照射部15の光源16を点灯した後一定の時間が経過すると、光源16を消灯させる機能を有している場合、光源16を点灯している時間はとくに限定されない。上述したように、照射強度を強くすれば点灯している時間を短くしてもハンドルレバー8に照射される紫外線の積算光量を所定の積算光量(ウイルスを不活化できる積算光量)以上にできるし、照射強度を弱くすれば点灯している時間を長くしなければハンドルレバー8に照射される紫外線の光量を所定の積算光量(ウイルスを不活化できる積算光量)以上とすることができない。ここで、照射強度を強くすれば消費電力が大きくなるので、長期間使用する上では、照射強度は弱い方が好ましい。一方、比較的短時間での殺菌を必要とする場合であれば、照射強度は強い方が好ましい。そこで、制御部20にスケジュール機能を持たせて、扉5が閉じてから光源16が点灯する時間と照射強度を時間に応じて変更するようにしてもよい。例えば、人が扉5を開閉する間隔が長い時間帯には照射強度を弱くする代わりに照射時間を長くすることによって所定の積算光量を確保し、人が扉5を開閉する間隔が短い時間帯には照射時間を短くする代わりに照射強度を強くすることによって所定の積算光量を確保するようにしてもよい。例えば、深夜などのように通常人が扉5を開閉しない時間帯では、ある程度の長期間(例えば数分~数十分程度)、光源16からハンドルレバー8の内面に紫外線を照射するようにしてもよい。すると、ハンドルレバー8の殺菌をより確実に実施できる。この場合、数分~数十分程度を一回で照射しても良いし、短時間(例えば1分間程度)の照射を数回や数十回に分けて実施し、合計の照射時間が数分~数十分間になるように照射を調整しても良い。もちろん、人が扉5を開閉する間隔が短い時間帯であっても、人が扉5を開閉する間隔が比較的長い時間帯では、照射強度を弱くして照射時間を長く(例えば数分程度)してもよい。
【0055】
制御部20にスケジュール機能を設ける場合、扉5の開閉に関係なく、紫外線照射部15の光源16を点灯消灯させてもよい。例えば、深夜等の人が扉5を開閉する間隔が長い時間帯には、所定の時間になると光源16を点灯し一定期間紫外線を照射すると光源16を消灯するようにしてもよい。この場合、人が扉5を開閉する間隔が長いので、照射強度を弱くして照射時間を長くすることによって所定の積算光量を確保することが望ましい。また、一定の時間間隔で光源16を点灯し所定の時間紫外線を照射すると光源16を消灯するようにして、合計の照射光量が所定の積算光量となるようにしてもよい。例えば、1時間間隔で光源16を点灯し一定期間紫外線を照射すると光源16を消灯するようにして所定の積算光量を確保してもよい。この場合も、人が扉5を開閉する間隔が長い時間帯には照射強度を弱くする代わりに照射時間を長くすることによって所定の積算光量を確保し、人が扉5を開閉する間隔が短い時間帯には照射時間を短くする代わりに照射強度を強くすることによって所定の積算光量を確保することが望ましい。さらに、最後に扉5の開閉動作があったのち、一定時間が経過すると光源16を点灯し一定期間紫外線を照射すると光源16を消灯するようにしてもよい。
【0056】
なお、上記のように、スケジュール機能によって扉5の開閉に関係なく紫外線照射部15の光源16を点灯消灯させる場合には、必ずしも開閉センサ22や人感センサ23は設けなくてもよい。しかし、開閉センサ22や人感センサ23を設けておけば、扉5が開いたことを開閉センサ22が検出した場合や、扉5に人が接近していることを人感センサが検出した場合には、制御部20は光源16を消灯させる、または、点灯させないように制御することが可能となる。すると、紫外線が人の手等に照射されることを防止し易くなる。
【0057】
上記例では、制御部20の制御器21がベース部材11とは別に設けられている場合を説明したが、制御部20の制御器21はベース部材11に内蔵されていてもよい。
【0058】
<ドアハンドル6>
上記例では、ドアハンドル6のハンドルレバー8の内面8aに凹み部8hが形成されている場合を説明したが、ハンドルレバー8の形状はとくに限定されない。例えば、ハンドルレバー8の内面に、その先端から基端に向かうに従って扉5の表面5aから離間するような傾斜面(例えば、図1(A)の傾斜面8bのような傾斜面)のみが形成されていてもよい。この場合でも、ハンドルレバー8が待機位置に配置された状態において、光源16の光軸LAがハンドルレバー8の傾斜面と直交するように配置されていれば、この傾斜面の殺菌効果を高めることができる。
【0059】
また、ハンドルレバー8の内面に上記のような凹み部や傾斜面が無い場合でも、その内面(少なくとも人が接触する面)に紫外線照射部15の光源16から紫外線を照射すれば、本実施形態の殺菌ユニット10によってハンドルレバーの内面を殺菌することは可能である。例えば、図6(B)に示すように、ハンドルレバー8が待機位置に配置された状態において、ハンドルレバー8の内面が扉5の表面5aと平行な平坦面に形成されている場合や、ハンドルレバー8の内面に扉5の表面5aに向かって突出する部分を有している場合でも、紫外線照射部15の光源16から紫外線を照射すれば、本実施形態の殺菌ユニット10によってハンドルレバーの内面を殺菌することができる。
【0060】
ハンドルレバー8の素材には抗菌性や抗ウイルス性の高い素材が好ましいが、ハンドルレバー8の素材は特に限定されない。例えば、アルミ等をハンドルレバー8の素材として採用することができる。
【0061】
<レバーハンドルを有するドアセットの場合>
上記例では、本実施形態の殺菌ユニットを、プッシュプルタイプのドアハンドル6が設けられたドアセット1に設置した場合を説明した。本実施形態の殺菌ユニットは、レバーハンドルタイプのドアハンドルが設けられたドアセットに設置して、レバーハンドルタイプのドアハンドル(以下単にレバーハンドルという場合がある)の殺菌に使用することも可能である。以下では、レバーハンドルタイプのドアハンドル6Bが設けられたドアセット1Bに本実施形態の殺菌ユニット10Bを設けた場合について説明する。
【0062】
なお、以下の説明では、上述した本実施形態の殺菌ユニット10や、上述したプッシュプルタイプのドアハンドル6が設けられたドアセット1と共通する部材や装置の構造、機能等の説明は適宜割愛する。
【0063】
<ドアセット1>
図15には、共用部などの壁EWBにドアセット1Bが取り付けられた状態を示している。このドアセット1Bは、上述したドアセット1と同様に、戸枠2Bと、この戸枠2Bに取り付けられる扉5Bと、を備えており、この扉5Bにドアハンドル6Bおよび本実施形態の殺菌ユニット10B(以下単に殺菌ユニット10Bという場合がある)が設けられている。
【0064】
<ドアハンドル6B>
図13および図15に示すように、扉5Bの表面5fにはドアハンドル6Bが設けられている。このドアハンドル6Bは、一般的なレバーハンドルタイプのドアハンドルであり、ドアハンドル6Bを操作することによって、扉5Bのラッチが作動する構造を有している。具体的には、ドアハンドル6Bのハンドルレバー8Bを下方に押し下げればラッチが没入するので、ハンドルレバー8Bを下方に押し下げたままハンドルレバー8Bを引っ張れば、扉5Bを開くことができる。なお、ドアハンドル6Bでは、ハンドルレバー8Bに対して下方に押し下げる力を加えていない状態が待機位置に相当する(図13(B)、図15参照)。
【0065】
図13に示すように、このドアハンドル6Bは、支持部7Bとハンドルレバー8Bとから構成されている。
【0066】
支持部7Bは扉5Bの表面5fに立設された軸状の部材であり、その基端部が扉5Bに回転可能に設けられている。つまり、支持部7Bは、その軸周りに回転できるように扉5Bに設けられている。
【0067】
この支持部7Bの側面には、ハンドルレバー8Bが設けられている。具体的には、ハンドルレバー8Bは、その基端部が支持部7Bの側面に連結された部材である。このハンドルレバー8Bは、支持部7Bの軸方向(図13(A)の上下方向、以下ではハンドルレバー8Bの幅方向という場合がある)の長さよりも支持部7Bの軸方向と直交する方向(図13(A)の左右方向、以下ではハンドルレバー8Bの軸方向という場合がある)の長さが長い形状に形成されている。また、ハンドルレバー8Bは、ドアハンドル6Bを扉5Bに取り付けた状態では、ハンドルレバー8Bの下面8fが扉5Bの表面5fの法線方向と略平行となり、下面8fと交差するハンドルレバー8Bの軸方向の端面8gは扉5Bの表面5fと対向する(例えば端面8gが扉5Bの表面5fと平行になる)ように形成されている(図13(B)参照)。
【0068】
ここでいう「ハンドルレバー8Bの下面8fが扉5Bの表面5fの法線方向と略平行」には、ハンドルレバー8Bの下面8fが扉5Bの表面5fの法線方向と平行な平坦面である場合に限られず、扉5Bの表面5fの法線方向に対して若干傾斜した面、例えば±90°以下の傾きを有する傾斜面となっている場合も含まれている。また、「ハンドルレバー8Bの下面8fが扉5Bの表面5fの法線方向と略平行」には、ハンドルレバー8Bの下面8fが曲面となっている場合も含まれる。例えば、ハンドルレバー8Bの軸方向と直交する断面(図13(B)参照)では、下面8fが下方に凸の曲面や下面8fが上方に凹んだ曲面となっている場合や、ハンドルレバー8Bの軸方向において下面8fが下方に凸の曲面や下面8fが上方に凹んだ曲面となっている場合も含まれる。
【0069】
また、「ハンドルレバー8Bの端面8gが扉5Bの表面5fと平行」という場合には、ハンドルレバー8Bの端面8gが扉5Bの表面5fと平行な平坦面である場合に限られない。ハンドルレバー8Bの端面8gが扉5Bの表面5fに対して上下方向に若干傾斜した面、例えば±90°以下の傾きを有する傾斜面となっている場合も「ハンドルレバー8Bの端面8gが扉5Bの表面5fと平行」に含まれる。また、ハンドルレバー8Bの幅方向において若干傾斜した面、例えば±90°以下の傾きを有する面となっている場合、つまり、ハンドルレバー8Bの幅が基端から先端に向かって細くなっているまたはハンドルレバー8Bの幅が基端から先端に向かって太くなっている場合も「ハンドルレバー8Bの端面8gが扉5Bの表面5fと平行」に含まれている。さらに、「ハンドルレバー8Bの端面8g」は、必ずしも平坦な面となっていなくてもよく扉5Bの表面5f側に凸の曲面となっていてもよい。
【0070】
<殺菌ユニット10>
図13に示すように、殺菌ユニット10Bは、扉5Bの表面5fに固定されるベース部材11Bと、ベース部材11Bに設けられる紫外線照射部15Bと、制御部20B(図15図16参照)と、を有している。
【0071】
<ベース部材11>
図13および図15に示すように、扉5Bの表面5fにおいて、ドアハンドル6Bよりも下方には、開口5hが設けられており、この開口5hにベース部材11Bが設けられている。具体的には、ドアハンドル6Bを扉5Bの表面5fに取り付けた状態において、ドアハンドル6Bの支持部7Bよりもハンドルレバー8Bの先端側かつ待機位置にあるハンドルレバー8Bの下面8fよりも下方に位置するように開口5hが設けられており、この開口5hにベース部材11Bが設けられている。
【0072】
<紫外線照射部15>
図13および図14に示すように、ベース部材11Bの前面11fには、紫外線照射部15Bが設けられている。紫外線照射部15Bは、基板17Bと、基板17Bの表面上に設けられた紫外線を照射できるLED光源などの複数の光源16B(図14(B)では1個)とを有しており、基板17Bの背面をベース部材11Bの前面11fに接触させた状態で設置されている。光源16Bは、波長が200~365nmの紫外線を照射する機能を有するものである。しかも、光源16Bは、ハンドルレバー8Bの下面8fにおいて、照射される紫外線の照射強度を0.03mW/cm以上、好ましくは0.05mW/cmとすることができるものである。
【0073】
例えば、ハンドルレバー8Bとして、幅W(図13(B)では左右方向)が23mm、長さLG(支持部7Bとの連結位置から先端までの距離、図13(A)参照)が88mmとする。そして、ハンドルレバー8Bの断面中心Cから紫外線照射部15Bの光源16Bまでの距離L2(図13(B)参照)を57mmとする。この条件であれば、光源16Bとして紫外線LED(日亜化学工業社製:型番 NCSU334B)を使用することによって照射される紫外線の照射強度を、ハンドルレバー8Bの下面8fや端面8gのどの位置でも0.05mW/cm以上とすることができる。
【0074】
<制御部20B>
図15および図16に示すように、殺菌ユニット10Bの紫外線照射部15Bは、紫外線照射部15Bに電力を供給し紫外線照射部15Bの作動を制御する制御部20Bに電気的に接続されている。この制御部20Bは、ケース20cに収容された状態で扉5Bの内部に設置される制御器21Bを備えている。制御器21Bは、実質的に制御器21と同じ機能を有するものであり、紫外線照射部15Bの光源16Bの点灯消灯、点灯時間、光源16Bに供給する電流量を調整してその発光強度を制御するものである。
なお、制御器21Bや紫外線照射部15Bの光源16Bに電力を供給する電源は、ケース20d内に内蔵されていてもよいし、他の場所(例えば扉5B内や枠2B内等)に設けてもよい。また、商用電力が供給されるようになっていてもよい。
【0075】
上記のごとき構成とすれば、ドアハンドル6Bとしてレバーハンドルタイプのドアハンドルを使用した場合に、ハンドルレバー8Bにウイルスなどが付着しても光源16Bから照射される紫外線によってウイルスなどを殺菌できる。すると、ドアハンドル6Bのハンドルレバー8Bを複数の人が操作することによる、ハンドルレバー8Bを介したウイルスなどの感染を抑制することができる。
【0076】
なお、制御部20Bが制御部20と同様に開閉センサ22Bや人感センサ23Bを備えていれば(図15図16参照)、制御部20と同様に光源16Bから紫外線を照射するタイミングや強度などを制御することができる。人感センサ23Bは、制御部20と同様にケース20dに設けてもよいが、図15に示すように、人感センサ23Bはベース部材11Bに設けてもよい。同様に、開閉センサ22Bのセンサ本体22eや磁石22fは、扉5Bや戸枠2Bにおいてケース20dが設けられている位置と異なる位置(例えば、図15に示すような扉5Bの上部や戸枠2Bの上枠等)に設けてもよい。
【0077】
<ベース部材11Bについて>
ベース部材11Bの表面11fにおいて、紫外線照射部15Bの基板17Bが取り付けられる部分は扉5Bの表面5fと平行となっていてもよいが、扉5Bの表面5fに対して傾斜した傾斜面となっていてもよい。具体的には、ドアハンドル6Bを向いた傾斜面(つまり若干上方を向いた傾斜面)としてもよい。かかる構成としておけば、ドアハンドル6Bのハンドルレバー8Bの下面8fに効果的に紫外線を照射することができる。なお、ベース部材11Bの表面11fを傾斜面としなくても、紫外線照射部15Bの光源16Bの光軸がドアハンドル6Bを向いた状態になるように設置すれば同様の効果を得ることができる。しかし、ベース部材11Bの表面11fを傾斜面とすれば、ドアハンドル6Bが傾斜面を有する場合に、紫外線照射部15Bの光源16Bの光軸をドアハンドル6Bの傾斜面に合わせる(つまり、光源16Bの光軸とドアハンドル6Bが傾斜面とが直交するようにする)ことによって、より強い紫外線をドアハンドル6Bが傾斜面に照射できる点で好ましい。
【0078】
<紫外線照射部15Bについて>
紫外線照射部15Bに設ける光源16Bの数は限定されず、1個でもよいし2個以上設けてもよい。複数の光源16Bを設ける場合には、ベース部材11Bを開口5hに取り付けた状態において複数の光源16Bが上下方向に沿って並ぶように設けてもよいし、ベース部材11Bを開口5hに取り付けた状態において複数の光源16Bが水平方向や待機位置に配置されたドアハンドル6Bのハンドルレバー8Bの軸方向に沿って並ぶように設けてもよいし。
【0079】
また、紫外線照射部15Bは、光源16Bが露出した状態となるようにベース部材11Bに設置されていてもよいし、紫外線を透過する素材によって形成された窓部13Wを有するカバー部材13Bによって紫外線照射部15Bが覆われていてもよい。
【0080】
なお、上記殺菌ユニット10Bと、レバーハンドルタイプのドアハンドルであるドアハンドル6Bとの組み合わせが、請求項8~11記載のドアハンドルセットに相当する。
【0081】
また、上記殺菌ユニット10Bが設けられたドアセット1Bが、請求項12記載のドアセットに相当する。上記例(図13図15参照)では、殺菌ユニット10Bや制御部20Bが扉5Bに内蔵されていている場合を説明したが、殺菌ユニット10Bや制御部20Bは扉5Bの表面5fに取り付けられていてもよい。つまり、殺菌ユニット10Bの紫外線照射部15Bや制御部20Bの制御器21B、開閉センサ22Bの一部は扉5Bに内蔵されるが、他の部材や機器は扉5Bの表面5f等に取り付けられていてもよい。
【実施例0082】
本発明の殺菌ユニットを使用した場合に、ハンドルレバーの殺菌ができることを確認した。
<実施例1、2>
【0083】
実験では、ハンドルレバー(GOAL社製:型番 PYGOM364 素材:アルミ)の内面にヒトコロナウイルス(HCoV-OC43)を250μL/cmとなるように塗布し、紫外線LED(日亜化学工業社製:型番 NCSU334B)から紫外線を順電流0.35Aの条件で照射して、照射強度と照射時間がヒトコロナウイルスの不活性化に与える状況を確認した。
【0084】
実験では、紫外線LED2個から紫外線を照射した場合(実施例1)と(図7、8参照)、紫外線LED1個から紫外線を照射した場合(実施例2)と(図10、11参照)、について、ヒトコロナウイルスの不活性化に与える状況を確認した。
【0085】
実施例1では、2個の紫外線LEDはハンドルレバーの幅方向の中心線CLを挟んで対称となるように50mm離して配置した(図7(B)、(C)参照)。紫外線LEDとハンドルレバーの位置関係は図7(A)に示すとおりとした。
【0086】
実施例2では、1個の紫外線LEDがハンドルレバーの幅方向の中心線CL上に位置した(図10(B)、(C)参照)。紫外線LEDとハンドルレバーの位置関係は図10(A)に示すとおりとした。
【0087】
ハンドルレバーの内面における紫外線の照射強度は、フォトダイオードセンサ(Ophir社製:型番PD-300UV)によって測定した。測定は、実施例1では図7(C)に示す位置(A~Eの5個所)で実施し、実施例2では図10(C)に示す位置(F~Hの3個所)で実施した。
実施例1、2では同じハンドルレバーを使用した。使用したハンドルレバーは、その幅Wは120mmであり、凹みの幅W1は112mmである。
実施例1では、測定位置Cは中心線CL上に配置し、測定位置A、B、E、Dは、測定位置Cから25mm間隔に設定した(図7(C)参照)。
実施例2では、測定位置Gは中心線CL上に配置し、測定位置F、Hは、測定位置Gから50mm間隔に設定した(図10(C)参照)。
【0088】
ヒトコロナウイルスの不活化は、ヒトコロナウイルスに紫外線LEDから紫外線を照射した後、そのヒトコロナウイルスをVeroE6/TMPRSS-2細胞に感染させて、ウイルス力価TCID50/mL(以下単にウイルス力価という)を測定した(図9図12参照)。なお、照射によるウイルス力価の変化(以下単にウイルス力価の変化という場合がある)は、実施例1では5回の実験の平均値(n=5)であり、実施例2では3回の実験の平均値(n=3)である。
【0089】
まず、ハンドルレバーの内面における紫外線の照射強度は、実施例1、2ともに、ハンドルレバーの幅方向の中央部で強く幅方向の端部で弱くなっている。
実施例1では、紫外線の照射強度が最大となる位置は、図7(C)の位置Bでありその強度は0.85mW/cmであり、紫外線の照射強度が最小となる位置は、図7(C)の位置Eでありその強度は0.45mW/cmであった。
実施例2では、紫外線の照射強度が最大となる位置は、図10(C)の位置Gでありその強度は0.82mW/cmであり、紫外線の照射強度が最小となる位置は、図10(C)の位置Hでありその強度は0.085mW/cmであった。
【0090】
そして、図9(A)に示すように、実施例1では、最大強度の位置Bでは、約10秒でウイルス力価の変化が10-2を下回り、約20秒ではウイルス力価の変化が10-3を下回り10-4程度になっている。このことから、紫外線によりヒトコロナウイルスを不活性化できることが確認できる。また、最小強度位置Eでも、約20秒でウイルス力価の変化が10-2程度になり、約30秒ではウイルス力価の変化が10-3程度まで低下しており、弱い強度の紫外線であってもある程度の時間照射すればヒトコロナウイルスを不活性化できることが確認された。
【0091】
また、図12(A)に示すように、実施例2では、最大強度の位置Gでは、約10秒でウイルス力価の変化が10-2を下回り、約20秒ではウイルス力価の変化が10-3を下回っており、紫外線によりヒトコロナウイルスを不活性化できることが確認できる。また、最小強度位置Hでも、約60秒でウイルス力価の変化が10-2程度になっており、弱い強度の紫外線であってもある程度の時間照射すればヒトコロナウイルスを不活性化できることが確認された。
<実施例3>
【0092】
実験では、ハンドルレバー(美和ロック社製:型番LA-22 素材:アルミ)の下面および内端面にヒトコロナウイルス(HCoV-OC43株)、A型インフルエンザウイルス(H1N1亜型・PR8株)、大腸菌(ATCC25922株)の懸濁液を30μL/cmとなるように塗布し、紫外線LED(日亜化学工業社製:型番 NCSU334B)から順電流0.35Aの条件で紫外線を照射して、照射強度と照射時間がヒトコロナウイルスの不活性化に与える状況を確認した。
【0093】
実験では、紫外線LED1個から紫外線を照射した場合について、ヒトコロナウイルスの不活性化に与える状況を確認した(図18参照)。
【0094】
実施例3では、紫外線LEDとハンドルレバーとの位置関係は図17にようにした。つまり、ハンドルレバーの中心軸CLから紫外線LEDの中心までの距離DSが53.4mm、ハンドルレバーの中心Cから紫外線LEDの中心までの高さHが25mmとした。また、ハンドルレバーを下方から見たときに水平方向におけるハンドルレバーの軸方向の中間と紫外線LEDの中心とが一致するように紫外線LEDを配置した。この場合、ハンドルレバーを下方から見たときに、ハンドルレバーの中心軸CL方向の中間と紫外線LEDの中心とを通過する面HA上では、紫外線LEDからハンドルレバーの中心Cまでの距離L2は57mmとなり、紫外線LEDからハンドルレバーの内端面までの距離L3は47mmとなる。
【0095】
ハンドルレバーの下面および内端面における紫外線の照射強度は、フォトダイオードセンサ(Ophir社製:型番PD-300UV)によって測定した。測定は、図17(A)に示すように、ハンドルレバーの下面の3個所(P1~P3)と、ハンドルレバーの内端面の3個所(P4~P6)で実施した。なお、P2およびP5は、ハンドルレバーを下方から見たときに、面HA上に位置する点であり、P1、P3はハンドルレバーの中心軸CL方向においてP2から35mm離れた位置であり、P4、P6はハンドルレバーの中心軸CL方向においてP5から35mm離れた位置である。
【0096】
使用したハンドルレバーは、図17に示すような形状であり、その幅Wは23mm、長さLGが88mmである。
【0097】
ヒトコロナウイルスの不活化は、ヒトコロナウイルスに紫外線LEDから紫外線を照射した後、そのヒトコロナウイルスをVeroE6/TMPRSS-2細胞に感染させて、ウイルス力価PFU/mL(以下単にウイルス力価という)を測定した。なお、照射によるウイルス力価の変化(以下単にウイルス力価の変化という場合がある)は、実施例3では、P3の位置(遠距離)とP5の位置(近距離)の2カ所で確認した。なお、P3は5回の実験の平均値(n=5)であり、P5は6回の実験の平均値(n=6)である。
【0098】
まず、P1~P6における紫外線の照射強度は、P1が0.071mW/cm、P2が0.086mW/cm、P3が0.066mW/cm、P4が0.115mW/cm、P5が0.183mW/cm、P6が0.102mW/cmであった。
【0099】
そして、図19(B)に示すように、P5の位置(近距離)では、約10秒でA型インフルエンザウイルスおよび大腸菌のウイルスの力価の変化が10-2を下回り、約30秒ではヒトコロナウイルスのウイルス力価の変化も10-3を下回り、ヒトコロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、大腸菌の全てのウイルスの力価の変化が10-3を下回っている。
【0100】
また、図19(A)に示すように、P3の位置(遠距離)でも、約30秒でヒトコロナウイルス、A型インフルエンザウイルス、大腸菌の全てのウイルスの力価の変化が10-2下回っている。
【0101】
実施例1~3の結果より、紫外線によりヒトコロナウイルスを不活性化できることが確認され、本発明の殺菌ユニットを使用した場合に、ハンドルレバーの殺菌が可能であることが確認された。
【0102】
また、弱い強度の紫外線であってもある程度の時間照射すればヒトコロナウイルスを不活性化できることが確認された。
【0103】
なお、実施例1、2の結果を積算光量で確認すると、図9(B)および図12(B)に示すように、どちらの結果でも、積算光量が約10mJ/cm以上となればウイルス力価の変化が10-2を下回っており、積算光量が約13mJ/cm以上となればウイルス力価の変化が10-3を下回っていることが確認できる。つまり、紫外線の光量がある程度弱くても、積算光量が一定以上になると、ヒトコロナウイルスを不活性化できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の殺菌ユニットは、マンション等の居住用建物の玄関やホテルの客室などに使用されるドアセットのドアのドアハンドルを殺菌する装置や、非常用のドアや勝手口等のドアハンドルを殺菌する装置に適している。
【符号の説明】
【0105】
1 ドアセット
2 戸枠
5 扉
5a 表面
6 ドアハンドル
7 支持部
7a 第一面
8 ハンドルレバー
8a 内面
8h 凹み部
8b 傾斜面
10 殺菌ユニット
11 ベース部材
11a 前面
11b 底面
11c 背面
11d 傾斜面
11h 凹み部
15 紫外線照射部
16 光源
17 基板
20 制御部
20c ケース
21 制御器
22 開閉センサ
22a センサ本体
22b 磁石
23 人感センサ
1B ドアセット
2B 戸枠
5B 扉
5f 表面
5h 開口
6B ドアハンドル
7B 支持部
8B ハンドルレバー
8g 端面
8f 下面
10B 殺菌ユニット
11B ベース部材
11f 前面
13B カバー部材
13W 窓部
15B 紫外線照射部
16B 光源
17B 基板
20B 制御部
20d ケース
22e センサ本体
22f 磁石
21B 制御器
22B 開閉センサ
23B 人感センサ
EW 玄関側壁
EWB 玄関側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19