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特開2022-136021コーティング溶液及び架橋ポリマーフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136021
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】コーティング溶液及び架橋ポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/08 20060101AFI20220908BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220908BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220908BHJP
【FI】
C09D179/08
C08J5/18 CFG
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022032406
(22)【出願日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】63/156,113
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル トーマス クワスニー
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ヘルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ヘンリー ハワード ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ケイシー ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】コスタンティノス コータキス
【テーマコード(参考)】
4F071
4J038
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AB03
4F071AE09
4F071AF05
4F071AG05
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH13
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J038DJ021
4J038HA026
4J038JB01
4J038KA03
4J038KA08
4J038NA04
4J038PA17
4J038PA19
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】コーティング溶液及び架橋ポリマーフィルムを提供する。
【解決手段】第1の態様では、コーティング溶液は、可溶性ポリマーと架橋前駆体とを含む。可溶性ポリマーは、イミド基を含む。架橋前駆体は、架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれかである第1のアミン基と、1つ以上の追加のアミン基とを含み、この1つ以上の追加のアミン基は、架橋前駆体が化学変換、熱変換、光変換又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができるように、架橋に対して不活性化されている。第2の態様では、ポリマーフィルムを形成する方法は、(a)コーティング溶液をキャストすること、(b)外部刺激を使用して架橋前駆体を活性化して、少なくとも2つの反応性アミンを形成し、且つポリマーを架橋すること、及び(c)ポリマーフィルムを乾燥させることを含む。コーティング溶液は、イミド基を含む可溶性ポリマーと、架橋前駆体とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング溶液であって、
イミド基を含む可溶性ポリマー、及び
架橋前駆体であって、
架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれかである第1のアミン基と、
前記架橋前駆体が化学変換、熱変換、光変換又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができるように、架橋に対して不活性化されている1つ以上の追加のアミン基と
含む架橋前駆体
を含むコーティング溶液。
【請求項2】
前記1つ以上の追加のアミン基は、カルバメート、N-アルキルアミン、N,N-ジアルキルアミン、N-アリールアミン、N,N-ジアリールアミン、ベンジルアミン、アミド、スルホンアミド、酸とシリル誘導体とから製造されたアンモニウム塩からなる群から選択される部位を形成するように不活性化されている、請求項1に記載のコーティング溶液。
【請求項3】
カルバメートは、熱的に開裂可能である、請求項2に記載のコーティング溶液。
【請求項4】
熱的に開裂可能なカルバメートは、tert-ブチルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル及びベンジルカルバメートからなる群から選択される、請求項3に記載のコーティング溶液。
【請求項5】
カルバメートは、光開裂可能であり、及び光開裂可能なカルバメートは、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート、m-ニトロフェニルカルバメート及びo-ニトロベンジルカルバメートからなる群から選択される、請求項2に記載のコーティング溶液。
【請求項6】
アミドは、ホルムアミド、トリフルオロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、クロロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3-フェニルプロパンアミド、3-ピリジルカルボキサミド、N-ベンゾイルフェニルアラニル及びベンズアミドからなる群から選択される、請求項2に記載のコーティング溶液。
【請求項7】
アミドは、熱的に開裂されるか、化学的に開裂されるか、光開裂されるか、解離されるか又はこれらの混合であり得る、請求項2に記載のコーティング溶液。
【請求項8】
アンモニウム塩は、酢酸、酪酸、ピバル酸、塩酸及び硫酸からなる群から選択される酸から製造され、及び
前記アンモニウム塩は、熱的に解離されて反応性アミンを形成することができる、請求項2に記載のコーティング溶液。
【請求項9】
前記架橋前駆体は、単一の多官能性前駆体、複数の単官能性前駆体の組み合わせ又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載のコーティング溶液。
【請求項10】
前記可溶性ポリマーは、ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)、ポリ(エーテル-イミド)、ポリ(エステル-イミド)、アミド、エステル又はエーテル基を含むコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング溶液。
【請求項11】
ナノ粒子、着色剤、艶消し剤、サブミクロン粒子、熱伝導性フィラー、導電性フィラー及びこれらの混合物からなる群から選択されるフィラーをさらに含む、請求項1に記載のコーティング溶液。
【請求項12】
着色剤は、低導電率カーボンブラックを含む、請求項11に記載のコーティング溶液。
【請求項13】
ポリマーフィルムを形成する方法であって、
(a)コーティング溶液をキャストすることであって、前記コーティング溶液は、
イミド基を含む可溶性ポリマー、及び
架橋前駆体であって、
架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれかである第1のアミン基と、
前記架橋前駆体が化学的に開裂されるか、熱的に開裂されるか、光開裂されるか又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができるように、架橋に対して不活性化されている1つ以上の追加のアミン基と
含む架橋前駆体
を含む、キャストすること、
(b)外部刺激を使用して前記架橋前駆体を活性化して、少なくとも2つの反応性アミンを形成し、且つ前記ポリマーを架橋すること、及び
(c)前記ポリマーフィルムを乾燥させること
を含む方法。
【請求項14】
前記外部刺激は、熱、光又は異なる化学種である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、コーティング溶液、架橋ポリマーフィルム、電子デバイス及びそれを形成する方法である。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムなどのポリマーフィルムは、エレクトロニクス産業において幅広い用途で使用されており、それらが提供し得る様々な機械的、電気的及び光学的特性並びに様々な電子部品の処理中及び電子デバイスの使用中に必要とされる有益な熱的及び化学的耐久性を利用している。ポリマーフィルムは、フレキシブル回路及び銅張積層板の製造のみならず、カバーウィンドウ、タッチセンサーパネル及び他のデバイス層などのディスプレイデバイスでも使用することができる。しかしながら、これらの特性の望ましい組み合わせを単一のフィルムで実現することは、困難な場合がある。
【0003】
いくつかの用途では、ポリマー前駆体を使用して製造されるフィルムよりも低い温度でポリマーフィルムを形成するために、イミド基を有する可溶性ポリマーを使用することができる。フィルム形成温度を低下させると、低い色(低b*など)のフィルムを製造すること、低粘度のコーティング溶液を使用してより薄いフィルムを製造すること、キャリア基板として使用されるより低温で非常に滑らかなポリマーフィルムを可能にすること、より環境に優しい溶剤系を使用すること及びフィルム製造の全体的なコストを削減することなどの様々な利点を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,166,308号明細書
【特許文献2】米国特許第5,298,331号明細書
【特許文献3】米国特許第4,383,105号明細書
【特許文献4】米国特許第2,801,185号明細書
【特許文献5】米国特許第4,522,958号明細書
【特許文献6】米国特許第5,648,407号明細書
【特許文献7】日本特許第4406921B2号公報
【特許文献8】日本特許第4031624B2号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】P.G.M.Wuts and T.W.Greene,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,4th Ed.,John Wiley&Sons,Inc.(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、イミド基を有する可溶性ポリマーは、製造中のポリマーフィルムの劣化を抑制するために電子部品製造で典型的に必要とされる耐溶剤性を有さない。そのため、良好な耐溶剤性を維持する可溶性ポリマーフィルムを製造することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、コーティング溶液は、可溶性ポリマーと架橋前駆体とを含む。可溶性ポリマーは、イミド基を含む。架橋前駆体は、架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれかである第1のアミン基と、1つ以上の追加のアミン基とを含み、この1つ以上の追加のアミン基は、架橋前駆体が化学変換、熱変換、光変換又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができるように、架橋に対して不活性化されている。
【0008】
第2の態様では、ポリマーフィルムを形成する方法は、(a)コーティング溶液をキャストすること、(b)外部刺激を使用して架橋前駆体を活性化して、少なくとも2つの反応性アミンを形成し、且つポリマーを架橋すること、及び(c)ポリマーフィルムを乾燥させることを含む。コーティング溶液は、イミド基を含む可溶性ポリマーと、架橋前駆体とを含む。架橋前駆体は、架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれである第1のアミン基と、1つ以上の追加のアミン基とを含み、この1つ以上の追加のアミン基は、架橋前駆体が化学的に開裂されるか、熱的に開裂されるか、光開裂されるか又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができるように、架橋に対して不活性化されている。
【0009】
上記の概要及び以下の詳細な説明は、例示的且つ説明的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲において規定されるような本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様では、コーティング溶液は、可溶性ポリマーと架橋前駆体とを含む。可溶性ポリマーは、イミド基を含む。架橋前駆体は、架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれかである第1のアミン基と、1つ以上の追加のアミン基とを含み、この1つ以上の追加のアミン基は、架橋前駆体が化学変換、熱変換、光変換又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができるように、架橋に対して不活性化されている。
【0011】
第1の態様の一実施形態では、1つ以上の追加のアミン基は、カルバメート、N-アルキルアミン、N,N-ジアルキルアミン、N-アリールアミン、N,N-ジアリールアミン、ベンジルアミン、アミド、スルホンアミド、酸とシリル誘導体とから製造されたアンモニウム塩からなる群から選択される部位を形成するように不活性化されている。特定の実施形態では、カルバメートは、熱的に開裂可能である。より具体的な実施形態では、熱的に開裂可能なカルバメートは、tert-ブチルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル及びベンジルカルバメートからなる群から選択される。別の具体的な実施形態では、カルバメートは、光開裂可能であり、及び光開裂可能なカルバメートは、3,5-ジメトキシベンジルカルバメート、m-ニトロフェニルカルバメート及びo-ニトロベンジルカルバメートからなる群から選択される。さらに別の特定の実施形態では、アミドは、ホルムアミド、トリフルオロアセトアミド、トリクロロアセトアミド、クロロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3-フェニルプロパンアミド、3-ピリジルカルボキサミド、N-ベンゾイルフェニルアラニル及びベンズアミドからなる群から選択される。さらに別の特定の実施形態では、アミドは、熱的に開裂されるか、化学的に開裂されるか、光開裂されるか、解離されるか又はこれらの混合であり得る。さらに別の具体的な実施形態では、アンモニウム塩は、酢酸、酪酸、ピバル酸、塩酸及び硫酸からなる群から選択される酸から製造され、及びアンモニウム塩は、熱的に解離されて反応性アミンを形成することができる。
【0012】
第1の態様の別の実施形態では、架橋前駆体は、単一の多官能性前駆体、複数の単官能性前駆体の組み合わせ又はそれらの混合物から選択される。
【0013】
第1の態様のさらに別の実施形態では、可溶性ポリマーは、ポリアミド、ポリ(アミド-イミド)、ポリ(エーテル-イミド)、ポリ(エステル-イミド)、アミド、エステル又はエーテル基を含むコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0014】
第1の態様のさらに別の実施形態では、コーティング溶液は、ナノ粒子、着色剤、艶消し剤、サブミクロン粒子、熱伝導性フィラー、導電性フィラー及びこれらの混合物からなる群から選択されるフィラーをさらに含む。特定の実施形態では、着色剤は、低導電率カーボンブラックを含む。
【0015】
第2の態様では、ポリマーフィルムを形成する方法は、(a)コーティング溶液をキャストすること、(b)外部刺激を使用して架橋前駆体を活性化して、少なくとも2つの反応性アミンを形成し、且つポリマーを架橋すること、及び(c)ポリマーフィルムを乾燥させることを含む。コーティング溶液は、イミド基を含む可溶性ポリマーと、架橋前駆体とを含む。架橋前駆体は、架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれかである第1のアミン基と、1つ以上の追加のアミン基とを含み、この1つ以上の追加のアミン基は、架橋前駆体が化学的に開裂されるか、熱的に開裂されるか、光開裂されるか又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができるように、架橋に対して不活性化されている。
【0016】
第2の態様の一実施形態では、外部刺激は、熱、光又は異なる化学種である。
【0017】
多くの態様及び実施形態を上述したが、これらは、例示的であるにすぎず、限定的ではない。本明細書を読んだ後、当業者は、他の態様及び実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることを認識する。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0018】
一実施形態では、架橋ポリマーフィルムは、可溶性ポリマーと架橋前駆体とを有するコーティング溶液を使用する不活性化架橋プロセスで製造することができ、この可溶性ポリマーは、イミド基を含む。架橋前駆体は、架橋に対して反応性であるか又は不活性化されるかのいずれかである第1のアミン基と、架橋前駆体が外部刺激によって活性化されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成できるように、架橋に対して不活性化された1つ以上の追加のアミン基とを含む。活性化後、ポリマーを架橋することができる。イミド基を有する可溶性ポリマーとしては、ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)、ポリ(エステル-イミド)、ポリ(エーテル-イミド)、イミド、アミド、エステル及びエーテル基を含むコポリマー並びにこれらの混合物を挙げることができる。本明細書で使用される「架橋に対して不活性化される」という用語は、反応性を阻害し、且つ/又は最初の導入時にイミド基を有する可溶性ポリマーに対して非反応性であるが、後に活性化して反応し、及び可溶性ポリマーを架橋できるように官能化されたアミン基を説明するために使用される。この形式では、官能化されたアミン基は、フィルム形成前にポリマーを不溶性にさせることになるポリマーの架橋を大幅に遅らせるか又は阻害する。架橋前駆体は、その後、活性化されて少なくとも2つの反応性アミンを形成することができ、これによりポリマーの架橋を生じさせることができる。架橋反応をフィルム形成後まで不活性化することにより、耐溶剤性に優れたポリマーフィルムを形成することができる。
【0019】
一実施形態では、不活性化された架橋反応は、外部刺激にさらされると変換(例えば、開裂又は解離)されて反応性アミンを形成する不活性化基の存在により、初期のフィルム作製及び処理条件下で不活性のままであるか、又は速度論的に阻害される(すなわち不活性化される)化合物を含む。不活性化基が変換されて反応性アミンを形成すると、これらの化合物が活性化され、フィルム内のポリマー鎖を架橋する化学反応に関与する。一実施形態では、外部刺激は、熱である。この場合、最初に不活性化されたアミン基の1つ以上は、熱的に開始されるプロセスによって開裂又は解離され、反応性になり、架橋剤がフィルムを架橋することを可能にする。一実施形態では、外部刺激は、光源による照射である。この場合、最初に不活性化されたアミン基の1つ以上は、光開始プロセスによって変換されて反応性アミンを形成する。一実施形態では、外部刺激は、異なる化学種である。この場合、最初に不活性化されたアミン基の1つ以上は、化学的に開始されたプロセスによって変換されて反応性アミンを形成する。一実施形態では、外部刺激は、上記刺激の任意の組み合わせである。
【0020】
文脈に応じて、本明細書で用いられる「ジアミン」は、(i)未反応の形態(すなわちジアミンモノマー)、(ii)部分的に反応した形態(すなわちジアミンモノマーに由来するか又は起因するオリゴマー又は他のポリマー前駆体の1つ又は複数の部分)、又は(iii)完全に反応した形態(ジアミンモノマーに由来するか又は起因するポリマーの1つ又は複数の部分)を意味することを意図する。ジアミンは、本発明の実施において選択される具体的な実施形態に応じて1つ以上の部位で官能化され得る。
【0021】
実際には、用語「ジアミン」は、ジアミン成分中のアミン部位の数に関して制限する(又は文字通り解釈される)ことを意図していない。例えば、上の(ii)及び(iii)には、2個、1個又は0個のアミン部位を有し得るポリマー系材料が含まれる。代わりに、ジアミンがさらなるアミン部位で官能化され得る(二無水物と反応してポリマー鎖を成長させるモノマー末端のアミン部位に加えて)。そのような追加のアミン部位は、ポリマーを架橋するか又は他の官能基をポリマーに付与するために用いられ得る。
【0022】
同様に、本明細書で使用される場合、用語「二無水物」は、ジアミンと反応する(補完的な)成分を意味することが意図され、これは、組み合わせで反応して中間体(これは、その後、ポリマーに硬化し得る)を形成することができる。文脈に応じて、本明細書で使用される場合、「無水物」は、無水物部位自体だけでなく、以下のような無水物部位の前駆体も意味する場合がある:(i)カルボン酸基の対(これは、脱水又は同様のタイプの反応によって無水物に変換可能である)、又は(ii)無水物官能基に変換することができる酸ハロゲン化物(例えば、塩化物)エステル官能基(又は現在知られているか若しくは将来開発される任意の他の官能基)。塩化アシルモノマーは、酸塩化物含有モノマーとアミン含有モノマーとの反応により、ポリ(アミド-イミド)又は他のアミド含有コポリマー中にアミド基を形成するための試薬としても使用することができる。
【0023】
文脈に応じて、「二酸無水物」は、(i)未反応の形態(すなわち無水物官能基が真の無水物形態であるか又は前駆体無水物形態であるかに関わらず、上の段落で説明した二無水物モノマー)、(ii)部分的に反応した形態(すなわち二無水物モノマーから反応したか若しくはこれに起因するオリゴマー又は他の部分的に反応した若しくは前駆体のポリマー組成物の1つ又は複数の部分)、又は(iii)完全に反応した形態(二無水物モノマー由来であるか又はこれに起因するポリマーの1つ又は複数の部分)を意味することができる。
【0024】
二無水物は、本発明の実施において選択される特定の実施形態に応じて1つ以上の部位で官能化され得る。実際には、用語「二無水物」は、二無水物成分中の無水物部位の数に関して制限する(又は文字通り解釈される)ことを意図していない。例えば、(i)、(ii)及び(iii)(上の段落中)には、無水物が前駆体状態であるか又は反応した状態であるかに応じて、2個、1個又は0個の無水物部位を有し得る有機物質が含まれる。代わりに、二無水物成分がさらなる無水物型の部位で官能化され得る(ジアミンと反応してポリマーを与える無水物部位に加えて)。このようなさらなる無水物部位は、ポリマーを架橋するか又はポリマーに他の官能基を付与するために用いられ得る。
【0025】
本明細書に記載されるものと類似の又は均等な方法及び材料を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料が本明細書に記載される。
【0026】
量、濃度又は他の値若しくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲又は上方の好ましい値及び下方の好ましい値の列挙のいずれかとして示される場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、任意の上限範囲又は好ましい値と、任意の下限範囲又は好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示していると理解されるべきである。ある範囲の数値が本明細書において列挙される場合、特に明記しない限り、その範囲は、その終点並びにその範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図する。本発明の範囲は、範囲を明確にする場合に列挙された具体的な値に限定されることを意図しない。
【0027】
特定のポリマーの記載において、それらを作製するために使用されるモノマー又はそれらを作製するために使用されるモノマーの量により、本出願人がポリマーに言及する場合があることが理解されるべきである。このような記載は、最終的なポリマーを記述するために用いられる特定の命名法を含まなくてもよいか、又はプロダクトバイプロセス用語を含まなくてもよいが、モノマー及び量へのいかなるこのような言及も、ポリマーがそれらのモノマー又はその量のモノマーから作製されること並びに対応するポリマー及びこれらの組成を意味すると解釈されるべきである。
【0028】
本明細書における材料、方法及び例は、例示的であるにすぎず、具体的に述べられる場合を除き、限定的であることを意図しない。
【0029】
本明細書で用いられる場合、用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」又はそれらのいかなる他の変形も非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素の一覧を含む方法、プロセス、物品又は装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確に列挙されていないか、又はこのような方法、プロセス、物品若しくは装置に固有の他の要素を包含し得る。さらに、明確にそれとは反対を述べられない限り、「又は」は、包括的な又はを意味し、排他的な又はを意味しない。例えば、条件A又はBは、下記のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)、且つBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)、且つBが真である(又は存在する)、並びにA及びBが両方とも真である(又は存在する)。
【0030】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本発明の要素及び成分を表すために用いられる。これは、便宜上及び本発明の一般的な意味を示すために行われるにすぎない。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように解釈されるべきであり、単数形は、そうではないことを意味していることが明らかでない限り、複数形も包含する。
【0031】
有機溶媒
本発明の可溶性ポリマーの合成に有用な有機溶媒は、好ましくは、ポリマー前駆体材料を溶解することができる。そのような溶媒は、適度な(すなわちより便利な及びあまりコストがかからない)温度でポリマーを乾燥させることができるように、225℃未満などの比較的低い沸点を有するべきでもある。210、205、200、195、190又は180℃未満の沸点が好ましい。
【0032】
有用な有機溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、メチルエチルケトン(MEK)、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチル尿素(TMU)、グリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(モノグリム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、1,2-ビス-(2-メトキシエトキシ)エタン(トリグリム)、ガンマ-ブチロラクトン及びビス-(2-メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、ヒドロキシエチルアセテートグリコールモノアセテート、アセトン及びそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、好ましい溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)及びジメチルアセトアミド(DMAc)が挙げられる。
【0033】
ジアミン
一実施形態では、可溶性ポリマーを形成するための適切なジアミンとしては、1,2-ジアミノエタン、1,6-ジアミノヘキサン(HMD)、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン(DMD)、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン(DDD)、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン、トランス-1,4-ジアミノシクロヘキサン(CHDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミン及びこれらの組み合わせなどの脂肪族ジアミンを挙げることができる。本発明の実施に適した他の脂肪族ジアミンとしては、6~12個の炭素原子を有するものが挙げられるか、又は現像性と柔軟性との両方が維持される限り、長鎖ジアミンと短鎖ジアミンとの組み合わせが挙げられる。長鎖脂肪族ジアミンは、柔軟性を高めることができる。
【0034】
一実施形態では、可溶性ポリマーの形成に適したジアミンとしては、シクロブタンジアミン(例えば、シス-及びトランス-1,3-ジアミノシクロブタン、6-アミノ-3-アザスピロ[3.3]ヘプタン及び3,6-ジアミノスピロ[3.3]ヘプタン)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1,4-ジアミン、イソホロンジアミン及びビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4ジアミンなどの脂環式ジアミン(完全に又は部分的に飽和であり得る)を挙げることができる。他の脂環式ジアミンとしては、シス-1,4シクロヘキサンジアミン、トランス-1,4シクロヘキサンジアミン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチル-シクロヘキシルアミン)、ビス(アミノメチル)ノルボルナンを挙げることができる。
【0035】
一実施形態では、可溶性ポリマーを形成するのに適したジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、トリフルオロメチル-2,4-ジアミノベンゼン、トリフルオロメチル-3,5-ジアミノベンゼン、2,2’-ビス-(4-アミノフェニル)-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、3,3’-ジアミノ-5,5’-トリフルオロメチルジフェニルオキシド、9.9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-トリフルオロメチル-2,2’-ジアミノビフェニル、4,4’-オキシ-ビス-[2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン](1,2,4-OBABTF)、4,4’-オキシ-ビス-[3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-チオ-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼン-アミン]、4,4’-チオビス[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-スルホキシル-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン、4,4’-スルホキシル-ビス-[(3-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、4,4’-ケト-ビス-[(2-トリフルオロメチル)ベンゼンアミン]、1,1-ビス[4’-(4’’-アミノ-2’’-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロペンタン、1,1-ビス[4’-(4’’-アミノ-2’’-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、2-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル;1,4-(2’-トリフルオロメチル-4’,4’’-ジアミノジフェノキシ)-ベンゼン、1,4-ビス(4’-アミノフェノキシ)-2-[(3’,5’-ジトリフルオロメチル)フェニル]ベンゼン、1,4-ビス[2’-シアノ-3’(“4-アミノフェノキシ)フェノキシ]-2-[(3’,5’-ジトリフルオロ-メチル)フェニル]ベンゼン(6FC-ジアミン)、3,5-ジアミノ-4-メチル-2’,3’,5’,6’-テトラフルオロ-4’-トリ-フルオロメチルジフェニルオキシド、2,2-ビス[4’(4’’-アミノフェノキシ)フェニル]フタレイン-3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)アニリド(6FADAP)及び3,3’,5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ジアミノ-ジフェニルメタン(TFDAM)などのフッ素化芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0036】
可溶性ポリマーを形成するために有用な他のジアミンとしては、p-フェニレンジアミン(PPD)、m-フェニレンジアミン(MPD)、2,5-ジメチル-1,4-ジアミノベンゼン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレンジアミン(DPX)、2,2-ビス-(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’’-ジアミノターフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス-(4-(4-アミノフェノキシ)フェニルスルホン(BAPS)、4,4’-ビス-(アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-イソプロピリデンジアニリン、2,2’-ビス-(3-アミノフェニル)プロパン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)-n-ブチルアミン、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、m-アミノベンゾイル-p-アミノアニリド、4-アミノフェニル-3-アミノベンゾエート、N,N-ビス-(4-アミノフェニル)アニリン、2,4-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミン-5-クロロトルエン、2,4-ジアミン-6-クロロトルエン、2,4-ビス-(ベータ-アミノ-t-ブチル)トルエン、ビス-(p-ベータ-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、p-ビス-2-(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、m-キシリレンジアミン及びp-キシリレンジアミンを挙げることができる。
【0037】
可溶性ポリマーを形成するための他の有用なジアミンとしては、1,2-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(RODA)、1,2-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-3-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1-(4-アミノフェノキシ)-4-(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス-(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)プロパン(BAPP)、2,2’-ビス-(4-フェノキシアニリン)イソプロピリデン、2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼン及び2,4,6-トリメチル-1,3-ジアミノベンゼンを挙げることができる。
【0038】
二無水物
一実施形態では、可溶性ポリマーの形成において任意の数の適切な二無水物を使用することができる。二無水物は、それらのテトラ酸形態において(又はテトラ酸のモノ、ジ、トリ若しくはテトラエステルとして)又はそれらのジエステル酸ハロゲン化物(塩化物)として使用することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、二無水物形態は、それが一般に酸又はエステルよりも反応性が高いために好ましいものである可能性がある。
【0039】
好適な二無水物の例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンズイミダゾール二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾオキサゾール二無水物、2-(3’,4’-ジカルボキシフェニル)5,6-ジカルボキシベンゾチアゾール二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ-[2,2,2]-オクテン-(7)-2,3,5,6-テトラカルボン酸-2,3,5,6-二無水物、4,4’-チオ-ジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物(DSDA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニルオキサジアゾール-1,3,4)p-フェニレン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)2,5-オキサジアゾール1,3,4-二無水物、ビス2,5-(3’,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル)1,3,4-オキサジアゾール二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、ビスフェノールA二無水物(BPADA)、ビスフェノールS二無水物、ビス-1,3-イソベンゾフランジオン、1,4-ビス(4,4’-オキシフタル酸無水物)ベンゼン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、シクロペンタジエニルテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレン3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス-(4,4’-オキシジフタル酸無水物)ベンゼン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物及びチオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0040】
一実施形態では、適切な二無水物としては、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、ヘキサヒドロ-4,8-エタノ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン(BODA)、3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物(TCA)及びメソ-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物などの脂環式二無水物を挙げることができる。一実施形態では、脂環式二無水物は、ポリマーの二無水物の総含有量を基準として約70モルパーセント以下の量で存在することができる。
【0041】
一実施形態では、可溶性ポリマーを形成するための適切な二無水物としては、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)及び9,9-ビス(トリフルオロメチル)-2,3,6,7-キサンテンテトラカルボン酸二無水物などのフッ素化二無水物を挙げることができる。
【0042】
一実施形態では、ポリ(アミド-イミド)を形成するための有用な塩化アシル含有モノマーとしては、テレフタロイルクロリド(TPCI)、イソフタロイルクロリド(IPCI)、ビフェニルジカルボニルクロリド(BPCI)、ナフタレンジカルボニルクロリド、テルフェニルジカルボニルクロリド、2-フルオロ-テレフタロイルクロリド及びトリメリット酸無水物を挙げることができる。
【0043】
一実施形態では、ポリ(エステル-イミド)は、カルボン酸又はエステル酸ハロゲン化物と反応してエステル結合を生成することができるポリオールをさらに含むことができる。
【0044】
二価アルコール成分は、2つのエステル化可能なヒドロキシル基を含むほとんど全てのアルコール性ジオールであり得る。適切なジオールの混合物も含まれ得る。本明細書で使用するのに適したジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチグリコール等が挙げられる。
【0045】
多価アルコール成分は、本発明の上述した合成プロセスの利点を提供するために、エステル化可能な少なくとも3つのヒドロキシル基を含むほぼ全ての多価アルコールであり得る。そのような多価アルコールの混合物を適切に使用することができる。適切な多価アルコールとしては、例えば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリン、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
場合により、有用なジアミン及び二無水物モノマーは、エステル基を含む。これらのモノマーの例は、4-アミノフェニル4-アミノベンゾエート、4-アミノ-3-メチルフェニル-4-アミノベンゾエートなどのジアミン及びp-フェニレンビス(トリメリテート)二無水物などの二無水物である。
【0047】
場合により、有用なジアミン及び二無水物モノマーは、アミド基を含む。これらのモノマーの例は、4,4’-ジアミノベンズアミド(DABAN)などのジアミン並びにN,N’-(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキサミド)及びN,N’-(9H-フルオレン-9-イリデンジ-4,1-フェニレン)ビス[1,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-5-イソベンゾフランカルボキサミド]などの二無水物である。
【0048】
イミド基を有するより高次コポリマーは、上記モノマーのいずれかを含むことができる。
【0049】
架橋前駆体
一実施形態では、架橋前駆体は、ポリマーフィルムを形成するコーティング溶液中で使用される。ポリマーを架橋することにより、ポリマーフィルムは、改善された機械的特性だけでなく、改善された耐薬品性も有することができる。架橋前駆体としては、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)D-2010、Jeffamine(登録商標)D-4000、Jeffamine(登録商標)ED-600、Jeffamine(登録商標)ED-900、Jeffamine(登録商標)D-2003、Jeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)THF-100、Jeffamine(登録商標)THF-170、Jeffamine(登録商標)SD-2001、Jeffamine(登録商標)D-205及びJeffamine(登録商標)RFD-270などのポリエーテルアミンを挙げることができる。
【0050】
一実施形態では、架橋前駆体は、m-キシリレンジアミンなどの芳香族一級ジアミン及びp-キシリレンジアミンを含むことができる。
【0051】
一実施形態では、架橋前駆体としては、脂肪族一級ジアミン、例えば1,2-ジアミノエタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,4-ジアミノブタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン(DMD)、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン(DDD)、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン、イソホロンジアミン、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジアミン及びこれらの組み合わせを挙げることができる。本発明を実施するのに適した他の脂肪族ジアミンとしては、6~12個の炭素原子を有するものが挙げられるか、又は長鎖及び短鎖ジアミン若しくは脂環式ジアミンの組み合わせが挙げられる。
【0052】
一実施形態では、架橋前駆体としては、ピペラジン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-1,3-プロパンジアミン及びN,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミンなどの二級アミン並びに2,4,6-トリアミノピリミジン(TAP)、メラミン、ジエチレントリアミン、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)T-3000、Jeffamine(登録商標)T-5000などのトリアミンを挙げることができる。加えて、上述したように、ポリマーのためのジアミンモノマーとして使用され得る多くのジアミンが架橋前駆体として有用な場合もある。
【0053】
一実施形態では、架橋前駆体は、ポリマーの架橋に対してそれぞれ反応性であるか又は不活性である1つ以上のアミン基を含むことができる。不活性化されたアミン基を含む場合、架橋前駆体は、その後、化学変換、熱変換、光変換又は解離されて、少なくとも2つの反応性アミンを形成することができる。
【0054】
一実施形態では、架橋前駆体は、N-アルキル又はN,N-ジアルキル鎖などの不活性化基として、例えばメチル及びtert-ブチル鎖などのアルキル鎖を含むことができる。一実施形態では、架橋前駆体は、N-アリール及びN,N-ジアリール基などの芳香族不活性化基含むことができる。一実施形態では、架橋前駆体は、ベンジル不活性化基を含む化合物であり得る。一実施形態では、架橋前駆体は、不活性化基としてtert-ブチルジフェニルシリルなどのシリル誘導体を含む化合物であり得る。イミド基を有する可溶性ポリマーに対するアミンの保護基として、多くの官能基が機能することができる。例えば(非特許文献1)(「Greene’s」)を参照されたい。
【0055】
一実施形態では、架橋前駆体は、不活性化基としてカルバメートを含むことができる。カルバメート不活性化基は、様々な方法により変換して反応性アミンを形成することができる。多くのカルバメートは、典型的には、150℃を超える温度で熱を加えることにより、変換されて反応性アミンを形成することができる。カルバメート官能基を変換して反応性アミンを形成するために、様々な化学的経路を使用することもできる。例えば、カルバメートを変換して反応性アミンを形成するために、tert-ブチルアルコールなどの塩基又はリン酸若しくはトリフルオロ酢酸などの酸の導入を使用することができる。カルバメートを開裂させて反応性アミンを形成するために、光誘起反応も使用することができる。様々なカルバメートを変換する様々な方法がGreene’sに記載されている。一実施形態では、架橋前駆体は、tert-ブチルオキシカルボニル、フルオレニルメトキシカルボニル及びベンジルカルバメートなどの熱的に開裂可能なカルバメート不活性化基を含む化合物又は3,5-ジメトキシベンジルカルバメート、m-ニトロフェニルカルバメート、びo-ニトロベンジルカルバメートなどの光開裂可能なカルバメート不活性化基を含む化合物であり得る。
【0056】
一実施形態では、架橋前駆体は、異なる化学種の導入によって開裂されて反応性アミンを形成することができるアミド不活性化基を含む。例えば、異なる化学種は、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、アンモニア又は三級アミンなどの塩基を含むことができる。別の例では、塩酸などの酸又はペニシリンアシラーゼ若しくはα-キモトリプシンなどの酵素を使用して、アミドを切断して反応性アミンを形成することができる。
【0057】
一実施形態では、アミド不活性化基を含む架橋前駆体は、245nmの光を照射することなどによって光開裂することができるか、又は65℃を超える温度で熱開裂することができる。Greene’sに記載されているような幅広いアミドを架橋前駆体として使用することができる。一実施形態では、架橋前駆体は、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、ホルムアミド、スルホンアミドなどのアミド不活性化基を含む化合物、例えばp-トルエンスルホンアミド、トリクロロアセトアミド、クロロアセトアミド、フェニルアセトアミド、3-フェニルプロパンアミド、3-ピリジルカルボキサミド、N-ベンゾイルフェニルアラニル及びベンズアミドであり得る。
【0058】
一実施形態では、架橋前駆体は、酢酸、酪酸、ピバル酸、塩酸又は硫酸などの酸から製造されたアンモニウム塩であり得る。架橋前駆体中のアミンを不活性化するために使用できるアンモニウム塩は、有機及び/又は無機のブレンステッド酸の添加によって形成することができる。酸と、アミンを含む架橋前駆体との直接反応により、アンモニウム塩が形成される。アンモニウム塩は、熱を加えることによる架橋を可能にするために解離することができる。速度論的阻害は、酸-アンモニウム平衡定数によっても制御される。酸-アンモニウム平衡定数によって決定される溶液中の酸が十分でない場合、アンモニウム塩が解離して、架橋前駆体中に反応性アミンを形成し得る。一実施形態では、アンモニウム塩は、アミンと酢酸又はトリフルオロ酢酸との反応から製造することができ、その後、熱により解離させることができる。
【0059】
一実施形態では、架橋前駆体は、単一の多官能性前駆体、複数の単官能性前駆体の組み合わせ又はこれらの混合物から選択される。
【0060】
着色剤
一実施形態では、ポリマーフィルムは、約1~約40重量%の、顔料又は染料などの着色剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、約1~約40重量%の、顔料と染料との混合物を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、以下の任意の2つを含めてその間を含む:1、5、10、15、20、25、30、35及び40重量%の着色剤。
【0061】
事実上、いずれの顔料(又は顔料の組合せ)も本発明の実施において使用することができる。いくつかの実施形態では、有用な顔料は、以下のものを含むが、これらに限定されない:バリウムレモンイエロー、カドミウムイエローレモン、カドミウムイエローレモン、カドミウムイエローライト、カドミウムイエローミドル、カドミウムイエローオレンジ、スカーレットレーキ、カドミウムレッド、カドミウムバーミリオン、アリザリンクリムゾン、パーマネントマゼンタ、バンダイクブラウン、ローアンバーグリーン又はバーントアンバー。いくつかの実施形態では、有用な黒色顔料としては、酸化コバルト、Fe-Mn-Biブラック、Fe-Mn酸化物スピネルブラック、(Fe,Mn)23ブラック、亜クロム酸銅ブラックスピネル、ランプブラック、ボーンブラック、ボーンアッシュ、ボーンチャー、赤鉄鉱、ブラック酸化鉄、雲母酸化鉄、ブラック錯体無機色顔料(CICP)、(Ni,Mn,Co)(Cr,Fe)24ブラック、アニリンブラック、ペリレンブラック、アントラキノンブラック、クロムグリーンブラック赤鉄鉱、クロム鉄酸化物、ピグメントグリーン17、ピグメントブラック26、ピグメントブラック27、ピグメントブラック28、ピグメントブラウン29、ピグメントブラウン35、ピグメントブラック30、ピグメントブラック32、ピグメントブラック33又はこれらの混合物が挙げられる。
【0062】
いくつかの実施形態では、顔料は、リトポン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化コバルト、イエロー酸化鉄、オレンジ酸化鉄、レッド酸化鉄、ブラウン酸化鉄、赤鉄鉱、ブラック酸化鉄、雲母酸化鉄、クロム(III)グリーン、ウルトラマリンブルー、ウルトラマリンバイオレット、ウルトラマリンピンク、シアン化鉄ブルー、カドミウム顔料又はクロム酸鉛顔料である。
【0063】
いくつかの実施形態では、顔料は、スピネル顔料、ルチル顔料、ジルコン顔料又はバナジウム酸ビスマスイエローなどの錯体無機色顔料(CICP)である。いくつかの実施形態では、有用なスピネル顔料としては、これらに限定されないが、Zn(Fe,Cr)24ブラウン、CoAl24ブルー、Co(AlCr)24ブルーグリーン、Co2TiO4グリーン、CuCr24ブラック又は(Ni,Mn,Co)(Cr,Fe)24ブラックが挙げられる。いくつかの実施形態では、有用なルチル顔料としては、これらに限定されないが、Ti-Ni-Sbイエロー、Ti-Mn-Sbブラウン、Ti-Cr-Sbバフ、ジルコン顔料又はバナジウム酸ビスマスイエローが挙げられる。
【0064】
別の実施形態では、顔料は、有機顔料である。いくつかの実施形態では、有用な有機顔料としては、これらに限定されないが、アニリンブラック(顔料ブラック1)、アントラキノンブラック、モノアゾタイプ、ジアゾタイプ、ベンズイミダゾロン、ジアリライドイエロー、モノアゾイエロー塩、ジニタニリンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、アゾレッド、ナフトールレッド、アゾ縮合顔料、レーキ顔料、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、キナクリドン、ジアリールピロロピロール、アミノアントラキノン顔料、ジオキサジン、イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、フタロシアニン顔料、イダントロン顔料、ピグメントバイオレット1、ピグメントバイオレット3、ピグメントバイオレット19又はピグメントバイオレット23が挙げられる。また別の実施形態では、有機顔料は、これらに限定されないが、ペリレン、ペリレンブラック、ペリノン又はチオインジゴなどの建染染料顔料である。単離された個々の顔料粒子(凝集体)の均一な分散体は、均一な色強度を生じる傾向がある。いくつかの実施形態では、顔料は、粉砕される。いくつかの実施形態では、顔料の平均粒径は、以下のサイズの任意の2つの間(任意選択的にそれを含めて)を含む:0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9及び1.0μm。いくつかの実施形態では、単独で又は他の顔料若しくは染料と組み合わせて発光性(蛍光性若しくはリン光性)又は光沢性顔料を使用することができる。
【0065】
一実施形態では、着色剤は、低導電率カーボンブラックを含み得る。いくつかの実施形態では、着色剤は、以下の任意の2つを含めてその間を含む:1、5、10、15及び20重量%の低導電率カーボンブラック。さらに別の実施形態では、着色剤は、約2~約9重量%の低導電率カーボンブラックを含む。
【0066】
低導電率カーボンブラックは、チャネルタイプブラック、ファーネスブラック又はランプブラックを意味することを意図する。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、表面酸化カーボンブラックである。(カーボンブラックの)表面酸化の範囲を評価する1つの方法は、カーボンブラックの加熱減量を測定することである。加熱減量は、950℃で7分間焼成したときの重量損失を計算することで測定することができる。一般的に、高度に表面酸化されたカーボンブラック(高い加熱減量)は、ポリマー前駆体溶液に容易に分散可能であり、これは、次に、本開示の(十分に分散された)充填されたポリマーにイミド化することができる。カーボンブラック粒子(凝集体)が互いに接触しない場合、電子トンネル効果、電子ホッピング又は他の電子流機構は、通常、抑制され、低い導電率が得られると考えられる。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、1%以上の加熱減量を有する。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、5、9又は13%以上の加熱減量を有する。いくつかの実施形態では、ファーネスブラックは、加熱減量を増加させるために表面処理され得る。典型的には、低導電率カーボンブラックは、約6未満のpHを有する。
【0067】
単離されたカーボンブラック粒子(凝集体)の均一な分散体は、導電率を減少させるのみならず、追加的に、均一な色強度を生じる傾向がある。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックは、製粉される。いくつかの実施形態では、低導電率カーボンブラックの平均粒径は、以下のサイズの任意の2つの間(任意選択的にそれを含めて)を含む:0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9及び1.0μm。
【0068】
艶消し剤
一実施形態では、ポリマーフィルムは、約0.5~約20重量%の、シリカ、アルミナ、ジルコニア、窒化ホウ素、硫酸バリウム、ポリイミド粒子、リン酸カルシウム、タルク又はこれらの混合物からなる群から選択される艶消し剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、以下の任意の2つを含めてその間を含む:0.5、1、5、10、15及び20重量%の艶消し剤。一実施形態では、艶消し剤は、約2~約10μm、又は約3~約9μm、又は約5~約7μmの範囲の粒径を有する。
【0069】
サブミクロン粒子
一実施形態では、ポリマーフィルムは、約39重量%までの、サブミクロンのヒュームド金属酸化物(発熱性金属酸化物としても知られる)若しくはサブミクロンのコロイド状金属酸化物又はこれらの混合物などの少なくとも1つのサブミクロン粒子を含む。いくつかの実施形態では、サブミクロンのヒュームド金属酸化物は、ヒュームドアルミナ、ヒュームドシリカ又はこれらの混合物である。一実施形態では、ポリマーフィルムは、約20重量%まで又は約10重量%までの少なくとも1つのサブミクロン粒子を含む。一実施形態では、サブミクロン粒子は、約1μm未満の粒径を有する。一実施形態では、サブミクロン粒子は、約0.01~約1μm又は約0.05~約0.5μmの範囲の粒径を有する。
【0070】
サブミクロン粒子、カーボンブラック及び艶消し剤の粒径は、LA-930(Horiba,Instruments,Inc.,Irvine CA)、Mastersizer 3000(Malvern Instruments,Inc.,Westborough,MA)又はLS-230(Beckman Coulter,Inc.,Indianapolis,IN)などの粒径分析装置を使用したレーザー回折によってスラリーで測定することができる。ただし、サブミクロン粒子は、凝集する傾向があるため、光学顕微鏡で観察することにより、これらの粉砕されたスラリーの粒径を測定する方が正確な場合がある。
【0071】
ポリマーフィルム
一実施形態では、ポリマーフィルムは、ジアミン及び二無水物(モノマー又は他のポリマー前駆体形態)を溶媒と一緒に混ぜ合わせることでポリアミック酸(ポリアミド酸とも呼ばれる)溶液を形成することにより製造することができる。二無水物及びジアミンは、約0.90~1.10のモル比で組み合わせることができる。それらから形成されるポリアミック酸の分子量は、二無水物とジアミンとのモル比を調整することによって調節することができる。
【0072】
本発明に従ってポリアミック酸溶液を製造するための有用な方法は、それらにおける全ての教示について参照により本明細書に援用される(特許文献1)及び(特許文献2)に見出すことができる。以下のような多数の変形形態も可能である:
(a)ジアミン成分及び二無水物成分が事前に一緒に混合され、その後、混合物が撹拌されている間に溶媒に少しずつ添加される方法。
(b)溶媒がジアミン成分と二無水物成分との撹拌混合物に添加される方法。(上記の(a)とは反対に)
(c)ジアミンが溶媒中に排他的に溶解され、その後、反応速度を制御することを可能にするような比率で二無水物がそれに添加される方法。
(d)二無水物成分が溶媒中に排他的に溶解され、その後、反応速度を制御することを可能にするような比率でアミン成分がそれに添加される方法。
(e)ジアミン成分及び二無水物成分が溶媒中に別個に溶解され、その後、これらの溶液が反応器内で混合される方法。
(f)過剰なアミン成分を含むポリアミック酸及び過剰な二無水物成分を含むまた別のポリアミック酸が事前に形成され、その後、特にノンランダムコポリマー又はブロックコポリマーを形成できるような方法で反応器内において相互に反応される方法。
(g)アミン成分及び二無水物成分の特定部分が最初に反応され、その後、残留ジアミン成分が反応されるか又はその逆の方法。
(h)成分が部分的に又は全体として、任意の順序で溶媒の一部又は全部のいずれかに添加され、さらに任意の成分の一部又は全部も溶媒の一部又は全部の溶液として添加され得る方法。
(i)二無水物成分の1つをジアミン成分の1つと最初に反応させて第1のポリアミック酸を生じさせる方法。次いで、別の二無水物成分を別のアミン成分と反応させて、第2のポリアミック酸を得る。その後、イミド化前にいくつかの方法のいずれか1つでアミック酸を結合させる。
【0073】
一実施形態では、ポリアミック酸溶液は、以下のような変換化学物質と組み合わせることができる:(i)脂肪族酸無水物及び/又は芳香族酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水n-酪酸、無水安息香酸、無水トリフルオロ酢酸等)などの1種以上の脱水剤、及び(ii)脂肪族第三級アミン(トリエチルアミン等)、芳香族第三級アミン(ジメチルアニリン等)及びヘテロ環第三級アミン(ピリジン、アルファ、ベータ及びガンマピコリン(2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン)、イソキノリン等)などの1種以上の触媒。無水物である脱水物質は、多くの場合、ポリアミック酸中のアミド酸基の量と比べてモル過剰で使用される。使用される無水酢酸の量は、典型的には、ポリアミック酸の当量(繰り返し単位)当たり約2.0~4.0モルである。一般に、同等の量の第三級アミン触媒が使用される。
【0074】
一実施形態では、変換化学物質は、イミド化温度を低下させ、イミド化時間を短縮することを促進し得るイミド化触媒(「イミド化促進剤」と呼ばれる場合もある)であり得る。典型的なイミド化触媒は、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジン(メチルピリジン、ルチジン及びトリアルキルアミンなど)及びヒドロキシ酸(ヒドロキシ安息香酸の異性体など)などの塩基からの範囲であり得る。ポリアミック酸層中のこれらの触媒の比率及びこれらの濃度は、イミド化の反応速度及びフィルムの特性に影響する。
【0075】
一実施形態では、ポリアミック酸溶液は、ポリアミック酸を部分的に又は完全にイミド化し、それを、イミド基を有するポリマーに変換するために、任意選択的にイミド化触媒の存在下で加熱することができる。温度、時間並びにイミド化触媒の濃度及び選択は、ポリアミック酸溶液のイミド化の程度に影響を与える場合がある。好ましくは、溶液は、十分にイミド化されるべきである。一実施形態では、十分に重合された溶液では、赤外分光法により決定した場合、アミック酸基の85%超、90%超又は95%超は、イミド基を有するポリマーに変換される。
【0076】
一実施形態では、ポリマーフィルムを形成するために溶媒和混合物(十分にイミド化された溶液)をキャストすることができる。別の実施形態では、溶媒和混合物(第1の十分にイミド化された溶液)は、水又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)などの貧溶媒を用いて析出させることができ、固体ポリマー樹脂を単離することができる。例えば、単離は、濾過、デカンテーション、遠心分離及び上澄み液のデカンテーション、蒸気相での蒸留若しくは溶媒除去又はスラリーから固体析出物を分離するための他の公知の方法によって行うことができる。一実施形態では、触媒を除去するために析出物を洗浄することができる。洗浄後、析出物は、十分に乾燥され得るが、完全に乾燥される必要はない。ポリマー析出物は、第2の十分にイミド化された溶液(キャスティング溶液)を形成するためにメチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸メチル、テトラヒドロフラン、アセトン、DMAc、NMP及びこれらの混合物などの第2の溶媒中に再び溶解され得、これは、キャストされてポリマーフィルムを形成することができる。
【0077】
一実施形態では、十分に重合された溶液は、これらに限定されないが、脂肪族スペーサー、エーテル、チオエーテル、置換アミン、アミド、エステル及びケトン、弱い分子間相互作用、嵩高い置換基、非共鳴性、非線形性及び非対称性などの柔軟な結合を含む、溶解度に重要な構造的特性を有するモノマー(ジアミン又は二無水物)を使用して形成される。これらの特性のいくつかを組み込んだジアミンの例は、HMD、CHDA及びIPDAなどの脂肪族ジアミン並びにMTB TFMB、MPD、RODA、BAPP及び3,4-ODAなどの芳香族ジアミンである。これらの特性のいくつかを組み込んだ二無水物の例は、6FDA、BPADA、ODPA、DSDA及びBODAである。
【0078】
一実施形態では、溶媒和混合物(十分にイミド化された溶液)を架橋前駆体及び顔料又は染料などの着色剤と混合し、次いでキャストしてポリマーフィルムを形成することができる。一実施形態では、着色剤は、低導電率カーボンブラックであり得る。別の実施形態では、溶媒和混合物(第1の十分にイミド化された溶液)は、水又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)などの貧溶媒で析出させることができる。一実施形態では、触媒を除去するために析出物を洗浄することができる。洗浄後、析出物は、十分に乾燥され得るが、完全に乾燥される必要はない。ポリマー析出物は、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、シクロペンタノン、酢酸エチル、アセトン、DMAc、NMP及びこれらの混合物などの第2の溶媒に再溶解して、第2の十分にイミド化された溶液(キャスト溶液)を形成することができる。第2の十分にイミド化された溶液に架橋前駆体及び着色剤を添加して、次いでキャストしてポリマーフィルムを形成することができる。一実施形態では、ポリマーフィルムは、約80~約99重量%の範囲の架橋ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、以下の任意の2つを含めてその間を含む:80、85、90、95及び99重量%の架橋ポリマー。さらに別の実施形態では、ポリマーフィルムは、約91~約98重量%の架橋ポリマーを含む。
【0079】
一実施形態では、ポリ(アミド-イミド)は、塩化アシルとジアミン及び無水物との反応によって形成することができる。
【0080】
一実施形態では、ポリ(エステル-イミド)又はポリ(アミド-イミド)は、上述したものと同様のプロセスにおいて、エステル又はアミド含有ジアミン又は二無水物を使用して形成することができる。一実施形態では、ポリ(エステル-イミド)は、エステル含有ジアミン又は二無水物の直接反応によって形成することができる。一実施形態では、ポリ(アミド-イミド)は、アミド含有ジアミン又は二無水物の直接反応によって形成することができる。
【0081】
一実施形態では、ポリ(エステル-イミド)は、(特許文献3)に記載されているように、イミド基を有するモノマーを含むカルボン酸でジオールをエステル化することによって形成することができる。
【0082】
ポリマーの架橋は、様々な方法によって決定することができる。一実施形態では、ポリマーのゲル分率は、架橋前及び後の乾燥されたフィルムの重量を比較し、平衡膨潤方法を使用することによって決定することができる。一実施形態では、架橋ポリマーは、約20~約100%、又は約40~約100%、又は約50~約100%、又は約70~約100%、又は約85~約100%の範囲のゲル分率を有することができる。一実施形態では、架橋ネットワークは、レオロジー方法を用いて同定することができる。特定の歪み、周波数及び温度での振動時間掃引測定は、架橋ネットワークの形成を確認するために使用することができる。最初に、損失弾性率(G’’)値は、貯蔵弾性率(G’)値よりも高く、これは、ポリマー溶液が粘性液体のように挙動することを示す。時間の経過と共に、架橋ポリマーネットワークの形成は、G’及びG’’曲線の交差によって証明される。「ゲル点」と呼ばれる交差は、弾性成分が粘性成分を超えて優勢であるときを表す。
【0083】
キャスティング溶液は、加工助剤(例えば、オリゴマー)、酸化防止剤、光安定剤、難燃性添加剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、無機フィラー又は様々な強化剤などの多数の添加剤のいずれか1つをさらに含み得る。無機フィラーとしては、熱伝導性フィラー、金属酸化物、無機窒化物及び金属炭化物並びに金属のような導電性フィラーを挙げることができる。一般的な無機フィラーは、アルミナ、シリカ、ダイヤモンド、粘土、タルク、セピオライト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、二酸化チタン、リン酸二カルシウム及びヒュームド金属酸化物である。ポリジアルキルフルオレンなどの低着色有機フィラーも使用することができる。
【0084】
一実施形態では、導電性フィラーは、カーボンブラックである。一実施形態では、導電性フィラーは、アセチレンブラック、超摩耗性ファーネスブラック、導電性ファーネスブラック、導電性チャネル型ブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、ファインサーマルブラック及びこれらの混合物からなる群から選択される。低導電率カーボンブラックについて前述したように、炭素粒子の表面の酸素複合体は、電気絶縁層として機能する。したがって、通常、高い導電性のために低揮発性成分が望ましい。ただし、カーボンブラックを分散させることの難しさを考慮する必要もある。表面酸化は、カーボンブラックの解凝集及び分散を促進する。いくつかの実施形態では、導電性フィラーがカーボンブラックである場合、カーボンブラックは、1%以下の揮発性成分を有する。
【0085】
フィラーは、少なくとも1つの寸法において550nm未満のサイズを有し得る。他の実施形態において、フィラーは、500nm未満、450nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、250nm未満又は200nm未満のサイズを有することが可能である(フィラーは、任意の寸法において様々な形状をとることができ、フィラーの形状は、任意の寸法に沿って変動可能であるため、「少なくとも1つの寸法」は、その寸法に沿った数値平均であることが意図されている)。フィラーの平均アスペクト比は、1以上であり得る。いくつかの実施形態において、サブミクロンフィラーは、針状フィラー(アシキュラー)、繊維状フィラー、板状フィラー、ポリマー繊維及びこれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、サブミクロンフィラーは、実質的に凝集していない。サブミクロンフィラーは、中空、多孔性又は固体であり得る。一実施形態において、本開示のサブミクロンフィラーは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12又は少なくとも15対1のアスペクト比を示す。
【0086】
いくつかの実施形態において、サブミクロンフィラーのサイズは、100nm以下である。いくつかの実施形態において、フィラーは、球形又は楕円形の形状であり、ナノ粒子である。一実施形態において、サブミクロンフィラーとしては、ケイ素、アルミニウム及びチタンの酸化物、中空(多孔質)ケイ素酸化物、アンチモン酸化物、ジルコニウム酸化物、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、混合チタン/スズ/ジルコニウム酸化物並びにケイ素、チタン、アルミニウム、アンチモン、ジルコニウム、インジウム、スズ、亜鉛、ニオブ及びタンタルから選択される1種以上のカチオンの二元、三元、四元及びより高次の複合酸化物などの無機酸化物を挙げることができる。一実施形態において、1つの粒子中で1種の酸化物が別の酸化物を封入しているナノ粒子複合材料(例えば、単一又は複数のコア/シェル構造)が使用され得る。
【0087】
一実施形態において、サブミクロンフィラーとしては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ホウ素とアルミニウムと窒素を含む三元以上の化合物、窒化ガリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、テルル化亜鉛、炭化ケイ素及びこれらの組み合わせ又は複数のカチオンと複数のアニオンとを含むより高次の化合物などの他のセラミック化合物を挙げることができる。
【0088】
一実施形態において、固体ケイ素酸化物ナノ粒子は、ケイ素酸化物のゾル(例えば、液体媒体中の固体ケイ素酸化物ナノ粒子のコロイド分散液)、特にアモルファス、半結晶性及び/又は結晶性シリカのゾルから製造することができる。そのようなゾルは、様々な手法により、ヒドロゾル(すなわち水が液体媒体として機能する)、オルガノゾル(すなわち有機液体が液体媒体として機能する)及び混合ゾル(すなわち液体媒体が水と有機液体との両方を含む)などの様々な形態で調製することができる。例えば、(特許文献4)、(特許文献5)及び(特許文献6)に開示の技術及び形態の説明を参照されたい。一実施形態において、ナノ粒子は、極性、非プロトン性溶媒、例えばDMAC又はポリアミック酸若しくはポリ(アミドアミック酸)と相溶性である他の溶媒中に懸濁される。別の実施形態において、固体ナノシリカ粒子は、例えば、DMAC-ST(Nissan Chemical America Corporation,Houston TX)、0.5パーセント未満の水を含み、20~21重量%のSiO2を含む、ナノシリカ粒子のメジアン径d50が約16nmである、ジメチルアセトアミド中の固体シリカコロイドなど、極性非プロトン性溶媒中に分散されているコロイド分散液又はゾルとして商業的に得ることができる。
【0089】
一実施形態において、サブミクロンフィラーは、多孔質であり得、任意の形状の細孔を有し得る。1つの例は、細孔が、ケイ素酸化物などの酸化物のシェル内に形成された低密度且つ低屈折率の空隙(例えば、空気を含む空隙)を含む場合、すなわち中空ケイ素酸化物ナノ粒子である。サブミクロンフィラーのシェルの厚さは、サブミクロンフィラーの強度に影響を与える。中空のケイ素酸化物粒子は、屈折率を下げ、空隙率を上げるため、シェルの厚さが減少してサブミクロンフィラーの強度(すなわち耐破壊性)が低下する。そのような中空のケイ素酸化物ナノ粒子の製造方法は、例えば、(特許文献7)及び(特許文献8)に記載されているように公知である。中空ケイ素酸化物ナノ粒子は、日本の日揮触媒化成株式会社から入手可能である。
【0090】
一実施形態において、サブミクロンフィラーは、カップリング剤でコーティングされ得る。例えば、ナノ粒子は、アミノシラン、フェニルシラン、対応するアルコキシシランから誘導されるアクリル又はメタクリルカップリング剤でコーティングすることができる。サブミクロンフィラーとヘキサメチルジシラザンとの反応により、トリメチルシリル表面キャッピング剤がナノ粒子表面に導入され得る。一実施形態において、サブミクロンフィラーは、分散剤でコーティングされ得る。一実施形態において、サブミクロンフィラーは、カップリング剤と分散剤との組み合わせでコーティングされ得る。代わりに、カップリング剤、分散剤又はそれらの組み合わせは、ポリイミドフィルムに直接組み込まれ得、必ずしもサブミクロンフィラー上にコーティングされる必要はない。
【0091】
一実施形態では、十分にイミド化されたポリマー溶液は、フィルムを形成するためにエンドレスベルト又は回転ドラムなどの支持体にキャスト又は塗布され得る。代わりに、これは、PET、他の形態のKapton(登録商標)ポリイミドフィルム(例えば、Kapton(登録商標)HN又はKapton(登録商標)OLフィルム)又は他のポリマー支持体などのポリマー支持体上にキャストされ得る。次に、溶媒を含むフィルムは、溶媒を部分的に又は完全に除去するために加熱することにより、フィルムに変換され得る。本発明のいくつかの態様では、フィルムは、完全に乾燥する前に支持体から剥がされる。最終的な乾燥工程は、フィルムの寸法支持又は安定化と共に行うことができる。他の態様では、フィルムは、支持体上で直接加熱される。
【0092】
ポリマーフィルムの厚さは、フィルムの意図する目的又は最終用途の仕様に応じて調整することができる。一実施形態では、ポリマーフィルムは、約10~約150μm、又は約10~約100μm、又は約25~約80μmの範囲の総厚さを有する。
【0093】
一実施形態では、ポリマーフィルムは、D65照明及び10°の観察者を使用して、デュアルビーム分光光度計で360~780nmの波長範囲にわたって全透過モードで測定した場合、約50μmのフィルム厚で約1.25未満、又は約1.0未満、又は約0.8未満のb*を有する。一実施形態では、ポリマーフィルムは、ASTM E313に記載の手順を使用して測定した場合、約50μmのフィルム厚で約2.25未満、又は約2.0未満、又は約1.75未満の黄色度(YI)を有する。
【0094】
用途
一実施形態では、ポリマーフィルムは、プリント回路基板のためのカバーレイ又は電子デバイス内の他の電子部品などの電子デバイス用途で使用することができ、物理的損傷、酸化及び電子部品の機能に悪影響を与え得る他の汚染物質からの保護を提供する。架橋ポリマーを用いたポリマーフィルムの非常に細いカバーレイは、より耐薬品性が高く、良好な光学特性を維持しながら、回路製造において使用される処理中に耐エッチング性を有することができる。
【0095】
一実施形態において、光によりパターン化することが可能なポリマーフィルムは、電子回路用途の誘電体として使用することができる。例えば、ポリマーフィルムを形成した後、遮光マスクを使用して、ポリマーフィルムを所望のパターンで露光することができ、フィルムの露光部分は、感光性ポリマーに光を照射することによって光架橋される。その後、得られるポリマーフィルムは、フィルムの露光された(架橋された)領域と、露光されていない領域との間に大きい溶解度の差を有し、露光されていない領域の容易な除去を可能にする。
【0096】
一実施形態では、ポリマーフィルムは、有機電子デバイスにおける多くの層のために使用することができる。このような層の非限定的な例としては、デバイス基板、タッチパネル、カラーフィルターシート用基板、カバーフィルムなどが挙げられる。各用途向けの特定の材料の特性要件は、ユニークであり、本明細書に開示されるポリマーフィルムに適した組成及び加工条件によって対処され得る。コーティングされたフィルムを有することから恩恵を受け得る有機電子デバイスには、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、照明デバイス、照明器具又はダイオードレーザー)、(2)エレクトロニクスプロセスによって信号を検出するデバイス(例えば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスター、フォトスイッチ、フォトトランジスター、光電管、赤外検出器、バイオセンサー)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電デバイス又は太陽電池)、(4)1つの波長の光をより長い波長の光に変換するデバイス(例えば、ダウンコンバート蛍光体デバイス)、及び(5)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品を含むデバイス(例えば、トランジスター又はダイオード)が含まれるが、それらに限定されない。
【0097】
本発明の有利な特性は、本発明を例示するが、それを限定しない以下の実施例を参照することによって見ることができる。全ての部及び百分率は、特に明記しない限り、重量による。
【実施例0098】
試験方法
ゲル分率
ポリマーのゲル分率は、平衡膨潤法を用いて測定した。溶液からポリマーフィルムをキャストし、80℃で20~25分間ホットプレート上で乾燥させた。次いで、フィルムを、120から250℃まで(16℃/分)加熱する炉内でさらに乾燥させ、続いて250℃で20分間保持した。冷却した後、次いでフィルムの一部の質量(典型的には0.1~0.5g)を秤量し、約100mlのDMAc中に浸漬した。DMAcを毎日新しいDMAcに交換しながら、フィルムをDMAc中で3~5日間保管した。その後、フィルムをDMAc溶液から取り出し、ホットプレート上において80℃で10分間乾燥させ、次いで同じ加熱プロファイルに従って炉内でさらに乾燥させた(120~250℃で昇温、その後、250℃で20分間保持)。次に、フィルムを最終質量について再度秤量した。その差がゲル分率を表した。
【0099】
比較例1
比較例1(CE1)については、CBDA 0.6/6FDA 0.4//TFMB 1.0のモノマー組成のポリイミドのDMAc溶液をフィルム製造で使用した。CE1では、ポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサー(THINKY USA,Laguna Hills,CA)を用いて9.6重量%のポリマー溶液50gを脱気した。
【0100】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、1~2ミルの硬化フィルムを製造した。ガラス基板上のフィルムを80℃に10分間加熱し、その後、ガラス表面から持ち上げ、8×12インチのピンフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉に入れた。炉を120℃から250℃(16℃/分)に加熱し、次いで250℃で20分間保持した。250℃に20分間加熱した後、フィルムを炉から「高温」で取り出し、空気中で放冷した。
【0101】
実施例1
実施例1(E1)については、CBDA 0.6/6FDA 0.4//TFMB 1.0のモノマー組成のポリイミドのDMAc溶液をフィルム製造で使用した。E1では、DMAc中の3.55gの10重量%のトランス-N-boc-1,4-シクロヘキサンジアミン(boc-CHDA)を50gの9.6重量%ポリマー溶液に添加し、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを使用して混合した。その後、ポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。
【0102】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、CE1について上述した通りに1~2ミルのフィルムを製造した。
【0103】
実施例2
実施例2(E2)については、CBDA 0.6/6FDA 0.4//TFMB 1.0のモノマー組成のポリイミドのDMAc溶液をフィルム製造で使用した。E2では、DMAc中の20重量%のboc-CHDA 7.1gを9.6重量%のポリマー溶液50gに添加し、2200rpmで2分間遠心遊星ミキサーを使用して混合した。その後、ポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。
【0104】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、CE1について上述した通りに1~2ミルのフィルムを製造した。
【0105】
実施例3
実施例3(E3)については、CBDA 0.6/6FDA 0.4//TFMB 1.0のモノマー組成のポリイミドのDMAc溶液をフィルム製造で使用し、最初にポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて脱気した。E3では、10重量%の1,4-シクロヘキサンジアミン(CHDA)と、4.5重量%の酢酸と、85.5重量%のDMAcとを含む1.89gの溶液を9.6重量%のポリマー溶液50gに添加し、これを、遠心遊星ミキサーを使用して2200rpmで30秒間混合した。
【0106】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、CE1について上述した通りに1~2ミルのフィルムを製造した。
【0107】
比較例2
比較例2(CE2)については、CBDA 0.6/6FDA 0.4//TFMB 1.0のモノマー組成のポリイミドのDMAc溶液をフィルム製造で使用し、最初にポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて脱気した。CE2では、10重量%のCHDAと、6.6重量%の酢酸と、83.4重量%のDMAcとを含む1.89gの溶液を9.6重量%のポリマー溶液50gに添加し、これを、遠心遊星ミキサーを使用して2200rpmで30秒間混合した。
【0108】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、CE1について上述した通りに1~2ミルのフィルムを製造した。
【0109】
実施例4
実施例4(E4)については、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物//3-(4-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダナミン(BTDA 1.0//PIDA 1.0)のモノマー組成の可溶性熱可塑性ポリイミド(Matrimid(登録商標)9725,Huntsman Corp.,The Woodlands,TX)を乾燥粉末として使用した。
【0110】
E4では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を9.73gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAc中に9.75重量%のHMDと7.60重量%の酢酸とが入っている溶液0.52gをポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて混合した。
【0111】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、1~2ミルの硬化フィルムを製造した。ガラス基板上のフィルムを90℃に25分間加熱し、その後、ガラス表面から持ち上げ、8×12インチのピンフレームに取り付けた。取り付けたフィルムを炉に入れ、CE1について上述した加熱プロファイルに従って加熱した。
【0112】
実施例5
実施例5(E5)では、4,4’-ビスフェノールA二無水物//p-フェニレンジアミン(BPADA 1.0//PPD 1.0)のモノマー組成の可溶性熱可塑性ポリイミド(Ultem(商標)1000,GE Plastics,Boston,MA)を乾燥粉末として使用した。
【0113】
E5では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を9.51gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAc中に9.75重量%のHMDと7.60重量%の酢酸とが入っている溶液0.49gをポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて混合した。
【0114】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、E4について上述した通りに1~2ミルのフィルムを製造した。
【0115】
実施例6
実施例6(E6)については、6FDA 1.0//TFMB 0.75/HMD 0.25のモノマー組成の可溶性ポリイミドを乾燥粉末として使用した。TFMB及びHMDをDMAc中に溶解し、40℃に加熱した。次いで、6FDAを添加し、40℃で一晩反応させた。十分にイミド化された溶液を得るために、4.0モル当量のベータ-ピコリン及び4.0モル当量の無水酢酸をポリ(アミック酸)溶液に添加した。次に、この混合物を45℃で18時間撹拌し、その後、これを室温まで冷却し、次いで析出させ、メタノールで洗浄した。得られたポリイミド粉末を、一定の重量になるまで50℃で真空乾燥させた。
【0116】
E6では、2.5gの乾燥ポリマー樹脂を9.57gのDMAcに添加し、遠心遊星ミキサー中で混合して溶液を得た。ポリマーから気体を追い出すために、2000rpmで10分間、遠心遊星ミキサーを用いて溶液を脱気した。DMAc中に9.75重量%のHMDと7.60重量%の酢酸とが入っている溶液0.43gをポリイミド溶液に添加した。この溶液を、2200rpmで30秒間遠心遊星ミキサーを用いて混合した。
【0117】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、E4について上述した通りに1~2ミルのフィルムを製造した。
【0118】
表1は、実施例1~6並びに比較例1及び2をまとめている。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例7
実施例7(E7)については、6FDA 0.2/BPDA 0.3/TCP 0.5//TFMB 1.0の組成を有するポリマーを調製するために、窒素パージした1Lのレジンケトルに32.0213gのTFMBを384.5gのDMAcと共に入れた。8.8932gのビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び8.8953gの6FDAを添加した。10.1510gのテレフタロイルクロリド(TCP,Sigma Aldrich)を1/3ずつ添加し、最終溶液を形成した。
【0121】
396.96gのポリアミド-アミック酸溶液を使用し、さらに200mlのDMAcを溶液に添加した。撹拌しながら反応物を40℃に加熱した。26.85gの無水酢酸と24.49gのベータピコリンとを合わせ、次いで滴下漏斗を使用して30分かけてポリアミド-アミック酸溶液にゆっくり添加した。反応混合物を80℃に加熱し、次いで2時間撹拌した後、12時間で室温まで放冷した。
【0122】
反応混合物を過剰の水中に注ぎ入れ、樹脂を析出させ、ブレンダーで粉砕してから濾過により回収した。析出した固体をメタノールで十分に洗浄した。ポリマーを真空下、25℃で約16時間乾燥させることで最終的な樹脂を形成した。
【0123】
3.50gの樹脂を0.166gのN-Boc-1,6-ヘキサンジアミンと共に31.45gのDMAcに溶解させた。遠心惑星ミキサーを使用して、混合物を8分間の2サイクルで撹拌した。この物質を、10μmの濾過媒体を通して濾過し、再度混合し、再度濾過することで最終配合物を調製した。
【0124】
溶液を25℃でガラス基板上にキャストして、約2ミルのフィルムを製造した。40mmのクリアランスを有するドクターブレードを使用して、組成物のコーティング溶液を25℃でガラス基板上にキャストし、硬化後、約2ミルのフィルムを製造した。ガラス基板上のフィルムをホットプレート上で50℃に30分間、次いで90℃に30分間加熱した。フィルムを室温まで放冷した。コーティングをホットプレート上に置き、空気中で50℃に30分間、次いで80℃に30分間加熱した。かみそりを使用してフィルムを剥がし、4×8インチのピンフレームに取り付け、炉(Carbolite Gero,Sheffield,UK)内に入れた。その後、炉を窒素でパージし、以下の温度プロトコルに従って加熱した:
25℃から90℃まで(7℃/分)、45℃で5分間保持;
90℃から150℃まで(7℃/分)、150℃で10分間保持;
150℃から250℃まで(7℃/分)、250℃で20分間保持。
【0125】
250℃に20分間加熱した後、フィルムを炉から取り出し、空気中で放冷した。
【0126】
フィルムのゲル分率は、95.5重量%であった。DMAc中に5日間浸漬した後、フィルムは、あまり溶解しなかった。
【0127】
比較例3
比較例3(CE3)については、N-Boc-1,6-ヘキサンジアミンがコーティング配合物に添加されなかったことを除いてE7の手順を使用した。このポリマーは、DMAcに可溶であった(ゲル分率=0%)。
【0128】
表2は、実施例7及び比較例3をまとめている。
【0129】
【表2】
【0130】
一般的記載において上述した行為の全てが必要とされるわけではないこと、特定の行為の一部が必要とされなくてもよいこと及びさらなる行為が、記載されたものに加えて行われ得ることに留意されたい。さらに、行為のそれぞれが列挙される順番は、必ずしもそれらが行われる順番であるわけではない。本明細書を読んだ後、当業者は、その具体的な必要性又は要望のためにいずれの行為を用いることができるかを決定することができるであろう。
【0131】
前述の本明細書において、本発明は、具体的な実施形態に関連して説明されてきた。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び変更形態がなされ得ることを理解する。本明細書で開示される全ての特徴は、同じ、均等な又は同様の目的に役立つ代わりの特徴によって置き換えられ得る。したがって、本明細書は、限定的な意味ではなく、例示的なものと見なすべきであり、こうした改変形態の全ては、本発明の範囲内に包含されることを意図する。
【0132】
特定の実施形態に関して、利益、他の利点及び問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかしながら、これらの利益、利点、問題の解決法並びに何らかの利益、利点又は解決法を発生させるか又はより顕著にすることがあるいずれの要素も、特許請求の範囲のいずれか又は全ての重要な、必要な又は本質的な特徴又は要素であるとして解釈すべきではない。
【外国語明細書】