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2022-136064牛白血病ウイルス感染フェーズを判定する方法及びそのためのバイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136064
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】牛白血病ウイルス感染フェーズを判定する方法及びそのためのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220908BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220908BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20220908BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20220908BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220908BHJP
【FI】
C12N15/12
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034542
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021035606
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢二
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QR07
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熟練を要さず容易かつ客観的に判断可能であり、特殊な試薬や装置を必要としない、牛から得られた検体中のマイクロRNA(miRNA)を利用した牛白血病ウイルス感染フェーズを判定する方法を提供する。
【解決手段】以下の工程を含む、対象牛の牛白血病ウイルス(BLV)感染に関するフェーズを判別する方法:対象牛から得られる検体中の、bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p等からなる群より選択されるいずれかの牛マイクロRNA(bta-miRNA)の発現レベルを測定する工程。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、対象牛の牛白血病ウイルス(BLV)感染に関するフェーズを判別する方法:
対象牛から得られる検体中の、下記からなる群より選択されるいずれかの牛マイクロRNA(bta-miRNA)の発現レベルを測定する工程:
bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、bta-miR-421-3p、bta-miR-150-5p、bta-miR-29a-3p、bta-miR-363-3p、bta-miR-339b-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-151-3p、bta-miR-361-5p、bta-miR-24-2-3p、bta-miR-142-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-29c-3p、bta-miR-326-3p、bta-miR-30c-5p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-23a-3p、bta-miR-1307-3p、bta-miR-148b-3p、bta-miR-26a-5p、bta-miR-26b-5p、bta-miR-16b-5p、及びbta-miR-16a-5p。
【請求項2】
発現レベルを測定するbta-miRNAが、bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、及びbta-miR-16a-5pからなる群より選択されるいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発現レベルを測定するbta-miRNAが、bta-miR-375-3pを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
bta-miR-375-3pの発現レベルに基づき、地方病性牛白血病(EBL)発症フェーズを判別する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
以下の工程を含む、牛の処置方法:
対象牛について、請求項1~3のいずれか1項に記載したbta-miRNAの発現レベルを測定する工程;及び
測定されたbta-miRNAの発現レベルがBLV感染を示す場合に、対象牛を、分離飼育、生産子牛の隔離、初乳処理、食用、経過観察、及び処分からなる群より選択されるいずれかに供する工程。
【請求項6】
発現レベルを測定するbta-miRNAが、bta-miR-375-3pを含み、
bta-miR-375-3pの発現レベルがEBL発症フェーズを示す場合に、対象牛を処分する工程。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法を、定期的に実施する工程を含む、牛の飼育方法。
【請求項8】
下記を含む、対象牛のBLV感染に関するフェーズを判定するためのキット:
・dNTP混合物
・逆転写酵素
・DNAポリメラーゼ
・PCR用プライマー対
・前記プライマー対による増幅領域を含む、下記からなる群より選択されるいずれかのbta-miRNAの全部又は一部の配列を含むオリゴヌクレオチド:
bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、bta-miR-421-3p、bta-miR-150-5p、bta-miR-29a-3p、bta-miR-363-3p、bta-miR-339b-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-151-3p、bta-miR-361-5p、bta-miR-24-2-3p、bta-miR-142-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-29c-3p、bta-miR-326-3p、bta-miR-30c-5p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-23a-3p、bta-miR-1307-3p、bta-miR-148b-3p、bta-miR-26a-5p、bta-miR-26b-5p、bta-miR-16b-5p、及びbta-miR-16a-5p。
【請求項9】
EBL発症のバイオマーカーとしての、bta-miRNA-375-3pの全部又は一部の使用。
【請求項10】
下記のオリゴヌクレオチド、又はそれを含む、対象牛のBLV感染に関するフェーズを判定するためのキット:
(a)配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチド;
(b)15~30塩基長であり、18塩基長以下である場合は配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と、19塩基長以上である場合は配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの全長と、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ他のプライマーと対にして用いたときにbta-miRNA-375-3pを増幅することができる、オリゴヌクレオチド。
【請求項11】
検体が血清である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法若しくは請求項8に記載のキット、又は血清中のbta-miRNA-375-3pを分析するための、請求項10に記載オリゴヌクレオチド若しくはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛白血病ウイルス感染フェーズを判定する方法に関する。本発明の方法は、牛から得られた検体中のマイクロRNA(miRNA)を利用する。
【背景技術】
【0002】
ウシ白血病ウイルス(BLV)は、レトロウイルス科デルタレトロウイルス属に属するRNAウイルスであり、ヒトT-lymphotropic virus-1(HTLV-1)の近縁種である。悪性B細胞リンパ腫である地方病性牛白血病(EBL)は、BLVの感染が原因で起こる。BLV感染牛ではウイルスはリンパ球に侵入し、ウイルスゲノムが宿主リンパ球のゲノムに組み込まれてプロウイルスとなるため、宿主に抗BLV抗体が出現しても体内から排除されず、生涯にわたって感染が持続する。感染伝播は主として、ウイルスに感染したリンパ球がアブ等の吸血昆虫により非感染牛に持ち込まれることによる。他に、母乳感染、感染妊娠牛から胎仔又は子牛への垂直伝播、汚染された医療器具の使いまわしによる人為的な伝播が知られている。
【0003】
BLV感染牛のほとんどは無症候性キャリアである。そのうち約30%が持続性リンパ球増加症(PL)を発症し、EBLを発症するのはわずか0.1-5%である。体表リンパ節の腫大等の臨床症状を現わした発症牛は、数日-数か月の間に死に至る。無症候性のBLV感染牛は健康であり、食用に供与することは問題ないが、EBL発症牛は全廃棄処分となるため、畜産農家の経済的損失は非常に大きい。
【0004】
BLV感染に対し、諸外国では国家レベルでの組織的な清浄化対策が行われており、多くのEU加盟国で清浄化が達成されている。またニュージーランド、オーストラリアでもほぼ清浄化が達成されている。一方、日本、米国、カナダ、イスラエル、韓国ではBLV 感染が認められ、発症牛が確認されている。EBLに対する治療法はないことから、対策としては、発生地域での定期検査、感染を媒介する吸血昆虫の駆除、抗体陽性牛の分離飼育、生産子牛の隔離、陽性牛の初乳の子牛への給与中止、抗体陽性牛の早期摘発・淘汰等が挙げられる。
【0005】
EBLの診断方法としては、臨床症状に基づくほか、塗抹した血液細胞の観察により腫瘍細胞の出現の有無・出現率を判定する血液学的診断方法、血中の乳酸脱水素酵素(LDH)活性値、シアル酸濃度、又はチミジンキナーゼ活性に基づく臨床生化学的診断方法、ウイルス分離、抗体検査法として寒天ゲル内沈降試験(AGID)や受け身赤血球凝集試験(PHA)、ELISA等のウイルス学的・免疫学的が開発されている。近年はPCR法がBLV遺伝子検出に応用されるようになった。BLV遺伝子検出は、通常血液中には抗BLV抗体が存在するためウイルス粒子が存在しないことから、宿主のリンパ球のゲノムに組み込まれているプロウイルス遺伝子を検出する。例えば、特許文献1は、BLVに由来するDNA断片、具体的には宿主のゲノムに組み込まれたプロウイルスDNAの形態のDNAの一部を増幅可能な、PCR法のためのプライマーセットを提案する。またBLVウイルス検出キットが市販されており、このキットではBLVの逆転写酵素であるpol遺伝子をターゲットとしてリアルタイムPCRによりBLVを検出する(非特許文献1)。このキットによると、牛ゲノムDNAをリファレンスとした相対定量解析により、牛ゲノムRPPH1(RNase P)遺伝子に対するBLV遺伝子の相対量(感染率)が算出できる。本発明者は、RPPH1遺伝子が牛ゲノムに1コピーとして存在することを見出しており、RPPH1遺伝子量は全細胞数に相当する(特許文献2)。
【0006】
一方、マイクロRNA (miRNA)は20-30塩基長の小さな1本鎖RNAであり、細胞の分化、増殖、生存、アポトーシス、転移に関与する遺伝子を標的とすることで、がん遺伝子や腫瘍の抑制因子として作用することが示唆されている。miR-375は最初にマウス膵臓b細胞株MIN 6から同定されたが、近年ではヒトの複数のタイプのがんにおいて有意にダウンレギュレーションされていることが知られている。がんの進行におけるmiR-375の腫瘍抑制的役割、miR-375の制御異常の根底にあるメカニズム、がんの予後・診断・治療におけるmiR-375の利用可能性などが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2014/027663(特許第6164590号)
【特許文献2】特開2016-93147号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jun-Wei Yan, et al. The Emerging Role of miR-375 in Cancer. Int. J. Cancer: 135, 1011-1018 (2014)
【非特許文献2】製品コードRC201A. TaKaRa ウシ白血病ウイルス検査キット説明書(2020). https://catalog.takara-bio.co.jp/PDFS/rc201a_j.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、EBLの診断方法として汎用といえる方法は存在しない。熟練を要さず容易かつ客観的に判断可能であり、特殊な試薬や装置を必要としないなEBLの診断方法の開発が望まれている。
【0010】
また、牛の養育の適切な時期にEBLの発症を見極めることができれば、と畜検査においてEBLと診断され、その場で全廃棄となるような事態を防ぐことができる。すなわち、EBLの発症を見極めることは畜産業において経済的損失を防ぐ重要な手立てとなりうる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、BLVの感染程度・EBL発症の病態ステージとともに発現が変化するmiRNAを特定した。そしてそのようなmiRNA発現の増減の現象を必要に応じ組み合わせて、非感染-感染-発症のフェーズを判定することを着想し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は下記を提供する。
[1] 以下の工程を含む、対象牛の牛白血病ウイルス(BLV)感染に関するフェーズを判別する方法:
対象牛から得られる検体中の、下記からなる群より選択されるいずれかの牛マイクロRNA(bta-miRNA)の発現レベルを測定する工程:
bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、bta-miR-421-3p、bta-miR-150-5p、bta-miR-29a-3p、bta-miR-363-3p、bta-miR-339b-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-151-3p、bta-miR-361-5p、bta-miR-24-2-3p、bta-miR-142-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-29c-3p、bta-miR-326-3p、bta-miR-30c-5p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-23a-3p、bta-miR-1307-3p、bta-miR-148b-3p、bta-miR-26a-5p、bta-miR-26b-5p、bta-miR-16b-5p、及びbta-miR-16a-5p。
[2] 発現レベルを測定するbta-miRNAが、bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、及びbta-miR-16a-5pからなる群より選択されるいずれかを含む、1に記載の方法。
[3] 発現レベルを測定するbta-miRNAが、bta-miR-375-3pを含む、1又は2に記載の方法。
[4] bta-miR-375-3pの発現レベルに基づき、地方病性牛白血病(EBL)発症フェーズを判別する、3に記載の方法。
[5] 以下の工程を含む、牛の処置方法:
対象牛について、1~3のいずれか1項に記載したbta-miRNAの発現レベルを測定する工程;及び
測定されたbta-miRNAの発現レベルがBLV感染を示す場合に、対象牛を、分離飼育、生産子牛の隔離、初乳処理、食用、経過観察、及び処分からなる群より選択されるいずれかに供する工程。
[6] 発現レベルを測定するbta-miRNAが、bta-miR-375-3pを含み、
bta-miR-375-3pの発現レベルがEBL発症フェーズを示す場合に、対象牛を処分する工程。
[7] 1~4のいずれか1項に記載の方法を、定期的に実施する工程を含む、牛の飼育方法。
[8] 下記を含む、対象牛のBLV感染に関するフェーズを判定するためのキット:
・dNTP混合物
・逆転写酵素
・DNAポリメラーゼ
・PCR用プライマー対
・前記プライマー対による増幅領域を含む、下記からなる群より選択されるいずれかのbta-miRNAの全部又は一部:
bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、bta-miR-421-3p、bta-miR-150-5p、bta-miR-29a-3p、bta-miR-363-3p、bta-miR-339b-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-151-3p、bta-miR-361-5p、bta-miR-24-2-3p、bta-miR-142-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-29c-3p、bta-miR-326-3p、bta-miR-30c-5p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-23a-3p、bta-miR-1307-3p、bta-miR-148b-3p、bta-miR-26a-5p、bta-miR-26b-5p、bta-miR-16b-5p、及びbta-miR-16a-5p。
[9] EBL発症のバイオマーカーとしての、bta-miRNA-375の全部又は一部の使用。
[10] 下記のオリゴヌクレオチド、又はそれを含む、対象牛のBLV感染に関するフェーズを判定するためのキット:
(a)配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチド;
(b)15~30塩基長であり、18塩基長以下である場合は配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と、19塩基長以上である場合は配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの全長と、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ他のプライマーと対にして用いたときにbta-miRNA-375-3pを増幅することができる、オリゴヌクレオチド。
[11]
検体が血清である、1~7のいずれか1項に記載の方法若しくは請求項8に記載のキット、又は血清中のbta-miRNA-375-3pを分析するための、10に記載オリゴヌクレオチド若しくはキット。
【発明の効果】
【0013】
本発明はBLVの感染程度・EBL発症の病態ステージとともに発現上昇するmiRNAの発見を基にしたものであり、それを測定することで,生前に発症診断が可能となる。
【0014】
本発明により、EBLの発症時期を見極めることができ、畜産業に大きく貢献できる可能性がある。
【0015】
本発明の方法は、核酸を検出するものであり、通常のウイルス検査室などに備えられているPCR装置があれば実施できる。
【0016】
bta-miRNA-375の発現レベルを測定する態様によれば、ウイルスに感染しているが健康な牛とEBL発症牛を明瞭に区別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】BLV陰性、感染及び地方病性牛白血病(EBL)の牛における、BLVプロウイルス量とBLV miRNA (blv-miR)又は牛由来miRNA (bta-miR) との相関、並びにbta-miR-375発現量。(A-F) BLV感染牛に由来するB細胞におけるblv-miR又はbta-miRとの相関。blv-miR及びbta-miRの全リード数は、bta-miR-16a-5pのリード数によって標準化した。データ解析はPearsonの相関係数検定により行った。r:相関係数。p: p値。(G) bta-miR-375 BLV陰性牛 (n=3) に由来するB細胞、BLV感染牛 (n=5)に由来するB細胞、及びEBL発症牛(n=5)に由来するB細胞リンパ腫における、bta-miR-375発現。データ解析は、Tukeyのpost hoc試験を用いた一元配置分散分析により行った。示されたデータは、平均値±標準偏差。ns;有意ではない。p: p値。
図2】bta-miR-375 BLV陰性牛 (n=3) に由来するB細胞、BLV感染牛 (n=5)に由来するB細胞、及びEBL発症牛(n=5)に由来するB細胞リンパ腫における、bta-miR-375発現の詳細。
図3】BLV非感染牛(BLV-)、EBL未発症BLV感染牛(BLV+)、EBL発症牛(EBL)の血清中bta-miR-375の発現量の比較。Barは中央値。解析はKruskal-Wallis test。****; P<0.0001
図4】Receiver Operator Characteristic (ROC) 解析による血清中bta-miR-375発現量のEBL発症診断能の評価。血清中のbta-miR-375が検出できたEBL発症牛(n=28)、EBL未発症BLV感染牛(n=47)の2群について、ROC解析によりEBL発症の診断能を評価した。縦軸は感度,横軸は1-特異度を示す。ROC曲線下面積 0.9821 標準誤差 0.01255 95%信頼区間 0.9575~1.000 P値 <0.0001
【発明を実施するための形態】
【0018】
[判定方法]
本発明は、対象牛の牛白血病ウイルス(BLV)感染に関するフェーズを判別する方法に関する。本発明の方法は、対象牛から得られる検体中の牛マイクロRNA(bta-miRNA)の発現レベルを測定する工程を含む。本発明の方法はin vitroで実施される方法である。BLVに関するフェーズは、非感染段階、及び感染段階を含み、感染段階は、無症候性キャリアである段階、及び地方病性牛白血病(EBL)を発症している段階を含む。
【0019】
本発明に関し、miRNAというときは、少なくとも10個、かつ35個以下のヌクレオチドが共有結合した短鎖RNA分子を指す。本発明の一態様では、miRNAは、10~33塩基長、15~30塩基長、17~27塩基長、18~26塩基長、即ち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35塩基長のヌクレオチド分子である。
【0020】
本発明の判定方法は、下記の33種類からなる群より選択されるいずれかのbta-miRNAの発現レベルを測定する工程を含む。
bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、bta-miR-421-3p、bta-miR-150-5p、bta-miR-29a-3p、bta-miR-363-3p、bta-miR-339b-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-151-3p、bta-miR-361-5p、bta-miR-24-2-3p、bta-miR-142-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-29c-3p、bta-miR-326-3p、bta-miR-30c-5p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-23a-3p、bta-miR-1307-3p、bta-miR-148b-3p、bta-miR-26a-5p、bta-miR-26b-5p、bta-miR-16b-5p、及びbta-miR-16a-5p。
【0021】
上記のbta-miRNAの、miRBase(http://www.mirbase.org/)における登録番号、及び典型的な配列は、本明細書の実施例の項の表6に示されている。
【0022】
本発明に関し、bta-miR-375-3pというときは、特に記載した場合を除き、下記の(1)、(2)、又は(3)のmiRNAをいう。他の32種類のbta-miRNAについても同様である。
(1)表6に示された配列(bta-miR-375-3p については、UUUUGUUCGUUCGGCUCGCGUGA (SEQ ID NO:56)からなるmiRNA;
(2)その配列と同一性の高い配列からなるmiRNA;
(3)その配列において1又は複数の塩基が欠失、置換、又は付加された配列からなるmiRNA。
【0023】
本発明に関し、配列について同一性が高いとは、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.9%、同一である場合をいう。同一性の値は、2つの配列を最適な状態で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致した塩基の個数に基づく。すなわち、同一性=(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出できる。同一性に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズム又はプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。
【0024】
本発明に関し、1又は複数の塩基が欠失、置換、又は付加された配列というときの欠失等された塩基の個数は、好ましくは1~9個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個である。
【0025】
好ましい態様において、発現レベルを測定するbta-miRNAは、bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、及びbta-miR-16a-5pからなる群より選択されるいずれかである。
【0026】
好ましい態様において、発現レベルを測定するbta-miRNAは、bta-miR-375-3pを含む。bta-miR-375-3pの発現量は、プロウイルス量と正の相関がある。なお、ヒトmiR-375-3pの配列は, bta-miR-375-3pの5'側にUが一つ付加されているが、それ以外は同じである。表6には、bta-miRNAに対応するヒトのmiRNAも示した。
【0027】
好ましい態様においては、bta-miR-375-3pの発現レベルに基づき、対象牛がEBL発症フェーズにあると判別することができる。
【0028】
判別のために発現レベルが測定されるbta-miRNAは、1つでもよく、複数であってもよい。一般に、診断は一つのマーカーよりも複数のマーカーを用いたほうが診断力が向上するとの観点からは、複数のbta-miRNAの発現レベルを測定し、判別したほうが好ましい。
【0029】
検体中のmiRNAの発現レベルの測定は、miRNAの量として測定される。発現レベルは、当該技術分野で既知の方法、例えばRT-PCR等によって、測定可能である。発現レベルは、絶対量として表してもよく、多くの牛において安定的に存在するmiRNAの発現レベルに基づいて標準化された相対量として表してもよい。このような標準化のためのmiRNAの一例は、bta-miR-16a-5pである。
【0030】
発現レベルに基づく判定は、適切なコントロールにおける発現レベルを基準として、それと比較して差があるといえるかどうかに基づいて行うことができる。このためのコントロールは、例えば、BLVに感染していない牛である。
【0031】
コントロールと比較して差がある場合とは、対象牛の検体中での目的のbta-miRNAの発現レベルが、コントロールと比較して高い場合であってもよく、低い場合であってもよい。
【0032】
本発明の一態様では、対象牛に由来する検体におけるbta-miR-375-3pの発現レベルが、コントロールと比較して高い場合に、その対象牛を、BLV感染フェーズ、より特定すると、EBL発症フェーズ(発症リスクが高い場合を含む。)にあると判定することができる。コントロールと比較して高いとは、例えばコントロールを1としたときに、1.05以上であることをいい、1.10以上、1.15以上、1.20以上、1.25以上、1.30以上、1.35以上、1.40以上、1.45以上、1.50以上であってもよい。
【0033】
別の一態様では、表6にプロウイルス量と負の相関があるとして掲載されているmiRNA、具体的には、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、bta-miR-421-3p、bta-miR-150-5p、bta-miR-29a-3p、bta-miR-363-3p、bta-miR-339b-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-151-3p、bta-miR-361-5p、bta-miR-24-2-3p、bta-miR-142-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-29c-3p、bta-miR-326-3p、bta-miR-30c-5p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-23a-3p、bta-miR-1307-3p、bta-miR-148b-3p、bta-miR-26a-5p、bta-miR-26b-5p、及びbta-miR-16b-5pからなる群より選択されるいずれか、好ましくはbta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、及びbta-miR-142-5pからなる群より選択されるいずれか、より好ましくはbta-miR-28-5pの対象牛に由来する検体における発現が、コントロールと比較して低い場合に、その対象牛を、BLV感染フェーズにあると判定することができる。コントロールと比較して低いとは、例えばコントロールを1としたときに、0.95以下であることをいい、0.90以下、0.85以下、0.80以下、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.55以下であってもよい。
【0034】
本発明の一態様では、BLV感染に関するフェーズを判定するための発現レベルの客観的な基準を、予め定めておくことができる。これにより、予め定めた基準を満たすか否かの判定は、医師(獣医師を含む。)ではない者によって行うことができ、また機械的に行うことができる。
【0035】
本発明の一態様では、対象牛から採取する検体は、目的のmiRNAが含まれていればよく、BLVが感染可能なB細胞が含まれる血液、又はそのような血液由来の血清若しくは血漿であることが好ましい。限定はされないが、検体は、目的のmiRNAが含まれている限り、B細胞、末梢血、末梢血以外の血液、血清、血漿、リンパ液、リンパ組織、腫瘍組織、腫瘍湿潤液、腹腔液、胸水、尿、唾液、涙、精液、羊水、母乳、初乳、気管支洗浄液、脳脊髄液、間質液であり得る。
【0036】
本明細書中に記載の方法のいずれにおいても、対象牛は特に限定されない。肉牛であってもよく、乳牛であってもよく、様々な品種、系統の牛であり得る。年齢、性別も限定されない。
【0037】
bta-miRNA-375を定量することで,ウイルスに感染しているが健康な牛とEBL発症牛を明瞭に区別することができることから,bta-miRNA-375をEBL発症の血液細胞バイオマーカーとして利用可能である。
【0038】
[判定方法の利用]
本発明はまた、以下の工程を含む、牛の処置方法を提供する。
対象牛について、請求項1~3のいずれか1項に記載したbta-miRNAの発現レベルを測定する工程;及び
測定されたbta-miRNAの発現レベルがBLV感染を示す場合に、対象牛を、分離飼育、生産子牛の隔離、初乳処理、食用、経過観察、及び処分からなる群より選択されるいずれかに供する工程。
【0039】
好ましい態様において、発現レベルを測定するbta-miRNAは、bta-miR-375-3pを含み、bta-miR-375-3pの発現レベルが、EBL発症フェーズを示す場合には対象牛を処分し、BLVに感染しているが感染EBL発症フェーズではないことを示す場合には対象牛を分離飼育、生産子牛の隔離、初乳処理、食用、経過観察とすることができる。本発明に関し、処分とは、飼養を中止することを含む。飼養を中止した牛は、殺処分としてもよい。
【0040】
BLV感染牛は健康であり、食用に供与することは問題ないため、本発明の方法の利用により、牛がEBLを発症する前にと畜場に出荷して食肉とすること、またEBL発症フェーズにあることが判明した時点でその牛を処分することで,当該農家の経済的損失を抑えることができる。
【0041】
本発明の判定方法は、牛の飼育期間中に、複数回実施することができる。複数回の実施は、定期的に行うことができる。
【0042】
[判定キット]
本発明は、対象牛のBLV感染に関するフェーズを判定するためのキットを提供する。キットは、下記を含むことができる:
・dNTP混合物(4種類の各デオキシ核酸dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)
・逆転写酵素
・DNAポリメラーゼ
・PCR用プライマー対
・前記プライマー対による増幅領域を含む、下記からなる群より選択されるいずれかのbta-miRNAの全部又は一部:
bta-miR-375-3p、bta-miR-28-5p、bta-miR-22-3p、bta-miR-221-3p、bta-miR-151-5p、bta-miR-146a-5p、bta-miR-186-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-425-5p、bta-miR-142-5p、bta-miR-421-3p、bta-miR-150-5p、bta-miR-29a-3p、bta-miR-363-3p、bta-miR-339b-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-151-3p、bta-miR-361-5p、bta-miR-24-2-3p、bta-miR-142-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-29c-3p、bta-miR-326-3p、bta-miR-30c-5p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-23a-3p、bta-miR-1307-3p、bta-miR-148b-3p、bta-miR-26a-5p、bta-miR-26b-5p、bta-miR-16b-5p、及びbta-miR-16a-5p。
【0043】
特に好ましい態様において、PCR用プライマー対は、下記のいずれかの配列を有するオリゴヌクレオチドを含む。
(a)bta-miR-375-F TTTTGTTCGTTCGGCTCG (SEQ ID NO: 23)
(b)15~30塩基長であり、18塩基長以下である場合は配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と、19塩基長以上である場合は配列番号23の配列からなるオリゴヌクレオチドの全長と、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ他のプライマーと対にして用いたときにbta-miRNA-375-3pを増幅することができる、オリゴヌクレオチド。
(c)bta-miR-16a-F TAGCAGCACGTAAATATTGGTG (SEQ ID NO: 24)
(d)15~30塩基長であり、22塩基長以下である場合は配列番号24の配列からなるオリゴヌクレオチドの等しい長さの部分と、23塩基長以上である場合は配列番号24の配列からなるオリゴヌクレオチドの全長と、少なくとも90%の配列同一性を有し、かつ他のプライマーと対にして用いたときにbta-miR-16aを増幅することができる、オリゴヌクレオチド。
【0044】
PCR用プライマー対の一方は、ユニバーサルプライマーであってもよい。例えば、bta-miR-375及びbta-miR-16aのうちの少なくとも一方を測定する場合、リバースプライマーとしてユニバーサルプライマーを用いることができる。ユニバーサルプライマーの例は、cDNA 5'末端のユニバーサルTag配列に結合するものである。このようなプライマーとして、公知のものを用いることができる。公知のユニバーサルプライマーの例は、miScript SYBR green PCR Kits (Qiagen K.K., Japan)に含まれるものである。
【0045】
キットは、上記以外にさらに、キットは、対象牛から得られる検体由来のmiRNAの単離に用いられる試薬、容器、採取器具、緩衝液をさらに含んでもよい。キットはまた、ポジティブコントロール反応及び/又はネガティブコントロール反応用の核酸鋳型(複数可)を含む場合がある。
【0046】
[血清中の測定、ROC解析]
本発明の判定方法は、対象牛の血清を検体として行うことができる。血清からのマイクロRNAの抽出、及び目的のマイクロRNAの定量は、従来技術を用いて行うことができる。
【0047】
本発明者は、EBL未発症BLV感染牛及びEBL発症牛を用いて、ROC(Receiver Operating Characteristic)解析を実施し、血清bta-miR-375によるEBLの判定能力を評価している。その結果、牛の血清中のbta-miR-375を定量することにより、EBLの診断が行えることを見出している。
【0048】
ROC解析とは、ROC 曲線(Receiver Operating Characteristic 曲線)を用いた解析方法であり、一般に、ある検査値について適切なカットオフ値(特定の疾患に罹患した群(罹患群)と罹患していない群(非罹患群)とを分ける値)を検索するのに使われている。詳細には、1つのスクリーニング方法について陽性・陰性のカットオフ値を最小値から最大値まで段階的に変えると、偽陽性率(= 1-特異度)も感度も0 から1 まで変わる。偽陽性率を横軸に、感度を縦軸にとって線で結ぶと、カットオフ値の変化に対応する曲線(POC曲線)を引くことができる。曲線の最も左上の点(グラフ上の(0, 1)に最も近い点。理想は偽陽性率0 で感度1)を与えるカットオフ値が、陽性・陰性を分けるポイントとして最も有効性が高いと判断されるため、ある検査値について適切なカットオフ値を検索できる。なお、感度は、陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率をいい、真陽性の数/本当に陽性である対象の合計数(すなわち、真陽性の数+偽陰性の数)で表される。特異度は、陰性と判定されるべきものを正しく陰性と判定する確率をいい、真陰性の数/本当に陰性である対象の合計数(すなわち、真陰性の数+偽陽性の数)で表される。
【0049】
本発明における判定は、このようなROC解析により、最も有効性が高いカットオフ値として求めた値を、血清を検体とする場合のEBL発症牛とEBL未発症牛を判定する値として採用してもよい。例えば、EBL未発症BLV感染牛とEBL発症牛との判別を行うために牛血清中のbta-miRNA-375を前述の(a)又は(b)の配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマー対の一方として用いるPCRで分析する場合、相対発現量14(このとき、感度91.5%、特異度96.4%である。)を診断基準値とすることでEBL発症牛を診断できる。
【0050】
[その他]
本発明に基づき、bta-miRNA-375を定量することで,ウイルスに感染しているが健康な牛とEBL発症牛を明瞭に区別することができる。したがって、bta-miRNA-375は、EBL発症の血液細胞バイオマーカーとして利用可能である。
【実施例0051】
本研究では、BLVに自然感染した牛とBLVに未感染の牛との間で、B細胞におけるmiRNAの発現について比較解析を行った。そして、miRNAの発現とBLVプロウイルス量、tax/rex遺伝子発現、あるいはAS-1遺伝子発現との関係を調べた。
【0052】
<BLV自然感染牛由来B細胞におけるマイクロRNA発現の特性評価>
1.材料及び方法
[血液・組織試料採取、血清分離、DNA/RNA抽出]
岩手大学フィールドサイエンスセンターで飼育されている黒毛和種のBLV感染牛16頭とBLV非感染牛6頭の頸静脈から血液を採取した。また、岩手大学フィールドサイエンスセンターのEBL牛3頭からリンパ腫組織を得た。使用動物を表1に示した。岩手大学動物実験委員会は、本研究のための動物の使用及び実験手順(A201704号)を承認した。
【0053】
【表1】
【0054】
ゲノムDNAは、magLEAD 12GC (Precision System Science, Chiba, Japan)を用いてEDTA処理全血から抽出した。PAXgene Blood RNAチューブ(PreAnalytix, Hombrechtikon, Switzerland)で採取した全血からRNAを抽出した。また、Trisol試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を用いることにより、牛B細胞白血病細胞株KU-17[15]からRNAを抽出した。
【0055】
[末梢血単核細胞(PBMC)からのB細胞の単離]
PBMCを60%パーコール(GE Healthcare, Tokyo, Japan)を含むLeucosepチューブ(Greiner bio one, Kremsmunster, Austria)を用いることによりEDTA処理全血から単離した。細胞(10個の8細胞)を、MACS緩衝液(2mM EDTA、PBS中0.5% BSA(pH 7.2))で希釈した抗牛IgMマウスモノクローナル抗体(BIG73A; VMRD, Pullman, WA, USA)で4℃で15分間染色した。細胞を4℃で15分間、抗マウスIgGマイクロビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Gemany)で染色した。細胞を細胞ストレイナー(EASYストレイナー;孔径40μm、Greiner Bio-one)に通し、MACSセパレータ(Miltenyi Biotech)の磁場のMACS LSカラム(Miltenyi Biotech)に適用した。MACs緩衝液で3回洗浄した後、カラムをMACSセパレータから除去し、磁気標識した細胞を採取管にフラッシュした。
【0056】
この細胞(106細胞)を抗牛IgMマウスモノクローナル抗体(PIG45A2; VMRD)で4℃、15分間染色した。細胞をFITC結合抗マウスIgG+IgM抗体(#115-096-068; Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc., West Grove, PA, USA)で4℃、15分間染色した。PBSで2回洗浄した後、細胞を1%パラホルムアルデヒド/PBSで固定した。IgM+細胞の割合はフローサイトメーター(Bay Bioscience, Kobe, Japan)を用いて分析した。フローサイトメトリーデータ解析には、FlowJOソフトウェア(Becton, Dickinson and Company, Franklin Lakes, USA)を用いた。
【0057】
[miRNAライブラリー調製]
miRNeasyミニキット(Qiagen K.K., Tokyo, Japan)を用いて、B細胞及びリンパ腫組織108からmiRNAを含む全RNAを抽出した。RNA完全性番号(RIN)は、Agilent RNA 6000 ナノバイオアナライザー(Agilent Technologies, Santa Clara, Calif., USA)で測定した。
【0058】
単離されたB細胞から抽出された全RNAに対する3'及び5'アダプターのライゲーションは、TruSeq Small RNA Library Preparation Kits (Illumina, San Diego, CA, USA)を用いて行った。3'アダプターライゲーションのために、全RNAを70℃で2分間インキュベートした後、氷上に移した。続いて、以下の試薬を混合物に添加した:5μlの1μg全RNA、1μlのRNA 3'アダプター、2μlのLigation Buffer、1μlのRNase Inhibitor、1μlの10X T4 RNA Ligase2欠失突然変異体(Epicentre、Madison、WI、USA)。この反応を28℃で60分間インキュベートした。停止液(Stop oligo)1μlを加え、反応混合物を28℃で15分間インキュベートした。5'アダプターライゲーションのために、5' RNAアダプターを70℃で2分間加熱して変性させ、氷上に移した。次に、以下の試薬を3'アダプターライゲーション混合物に加えた:1μlのRNA 5'アダプター、1μlのATP (10mM)、1μlのT4 RNAリガーゼ、及び11μlの3'アダプターライゲーション混合物。反応混合物を28℃で60分間インキュベートした後、氷上に移した。RNAの3'アダプター、5'アダプター及びStopオリゴの配列を表2に示した。
【0059】
【表2】
【0060】
なお、bta-miR-375とbta-miR-16aのためのリバースプライマー(R)としては、miScript SYBR green PCR Kits (Qiagen K.K., Tokyo, Japan)のユニバーサルプライマーを使用した。
【0061】
[アダプター連結生成物の逆転写反応]
1μlのRNA RT Primerを上記アダプターライゲーション混合物6μlに加え、70℃で2分間加熱した後、直ちに氷上に置いた。次の試薬をライゲーション混合物に添加した:5× First Strand Buffer 2μl、12.5mM dNTP mix 0.5μl、100mM DTT 1μl、RNaseインヒビター1μl、SuperScript II逆転写酵素(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)1μl。その後、反応混合物を50℃で60分間インキュベートした。RNA RT Primerの配列を表2に示す。
【0062】
[PCR増幅及びPCR産物の精製]
逆転写反応12.5μlに以下の試薬を添加した:PCR Mix 25μl、miRNA PCRプライマー2μl、miRNA PCRプライマー指数2μl及びヌクレアーゼを含まない精製水8.5μl。全反応混合物は50μlであった。PCRは98℃で30秒間の最初の変性後、98℃で10秒間の熱変性を15サイクル、60℃で30秒間のアニール、72℃で15秒間の伸長反応を行った。最終伸展反応を1分間行った。プライマーの配列を表2に示す。PCR産物(145-160bp)は、製造業者の指示に従い、6% Novex TBEゲル(Life Technologies、Waltham、MA、USA)を用いてゲル精製した。PCR産物はMutiNA (Shimadzu, Tokyo, Japan)を用いて評価し、濃度はQubit蛍光光度計(Thermo Fisher Scientific)を用いて測定した。
【0063】
[miRNAのディープシークエンシングと分析]
MiniSeq (Ilumina)を用いてmiRNA分析を行った。ライブラリーを10mM Tris HCl (pH 8.5)で1 nMに希釈し、5μlずつ混合した。5μlの2倍希釈水酸化ナトリウム溶液(Fluka Analytical、St.Gallen、Switzerland)を混合反応5μlに加えた。この混合物を室温で5分間インキュベートした後、200mM Tris HCl (pH 7)5μlを加え、氷上に置いた。混合ライブラリー反応をハイブリダイゼーション緩衝液(Ilumin)で1.8 pMまで希釈した後、500μlの反応をMiniSeq高出力試薬カートリッジ(Ilumin)に適用した。ディープシークエンス分析は、メーカーの推奨するsmall RNAシークエンシングのプロトコールに従って実施した。
【0064】
miRBase 22 [16](http://www.mirbase.org/blog/2018/03/mirbase-22-release/)の牛miRNAデータベースを用いて、牛miRNAリードのアノテーションを行った。CLC Genomics Workbenchソフトウェア(Ver.9.5.5; Qiagen KK)を用いてデータ解析を行った。
【0065】
[BLVプロウイルスの定量]
BLV tax/rex遺伝子領域と牛RNaseP遺伝子を内部コントロールとするduplex quantitative PCR (qPCR)を行った。95℃で20秒間の最初の変性の後、qPCRを、1秒間の95℃での変性及び20秒間の60℃でのアニーリング/伸長からなる40の増幅サイクルで行った。反応混合物は、5μLの全血由来のテンプレートゲノムDNA、10μLのPremix Ex Taq (Probe qPCR; Takara Bio、Shiga、Japan)、0.4μLの10μMのタックス/レックスフォワード及びリバースプライマー、0.3μLの10μMのRNase Pフォワード及びリバースプライマー、0.8μLの2.5μMのFITC標識TaqMan MGBタックス/レックスプローブ(Life Technologies Japan、Tokyo、Japan、Tokyo、Japan)、0.8μLの2.5μMのVIC標識TaqMan MGB RNase Pプローブ(Life technologies)、0.4μLのROX記載色素(Takara Bio)を使用し、脱イオン水で20μLとした。使用したプライマー配列を表2に示す。qPCRは、QuantStudio3リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、Life technologies、Foster City、CA、USA)で行った。BLV tax/rex及びPCRプライマーにより増幅した牛RPPH1のそれぞれの遺伝子を含む標準プラスミドの10倍段階希釈液を用いて、100から105コピー/反応の範囲で重複して標準曲線を作成した。BLVコピーは10ng DNAあたりのプロウイルス量として示された。BLV感染細胞の割合は、細胞あたり2コピーのRNaseP遺伝子が存在することから、以下の式により算出した。
【0066】
BLV感染細胞%= BLV tax/rexコピー数/RNase Pコピー数/2) x 100
【0067】
[定量的RT-PCR (qRT-PCR)によるmRNA発現の定量]
tax/rex、AS-1及びbta-miR-375用の牛HMGbox含有タンパク質1(bHBP1) mRNA又はmiScript II RTキット(Qiagen KK)用のSYBR Prime Script RT-PCRキット(Takara Bio)をそれぞれ用いた。tax/rex、AS-1及びbHBP1 mRNAについては、逆転写反応混合物は、全血由来の鋳型RNA 400ng/μl、5 x primeScript Buffer 4μl、50μM Oligo-dTプライマー 1μl、100μM Random 6 mer プライマー 1μl、PrimeScript RT 酵素Mix1 1μl及びRNase Free water 最大10μlから構成された。反応物を37℃で15分間インキュベートし、次いで酵素不活性化のために85℃で5秒間加熱し、氷上に置いた。bta-miR-375については、逆転写反応混合物は、単離されたB細胞及びリンパ腫組織に由来する鋳型RNA300ng、5 x Script HiFlex緩衝液4μl、10 x Script核酸混合物2μl、miScript Reverse Transcriptase Mix 2μl及びRNase遊離水20μlから構成された。反応物を37℃で60分間インキュベートし、次いで95℃で5分間加熱して酵素を不活性化し、氷上に置いた。cDNA濃度はNanoDrop One (Thermo Fisher Scientific K.K.)を用いて260nmでの吸光度により算出した。
【0068】
tax/rexとAS-1 mRNAを標的としたqPCRを内部コントロール遺伝子としてGAPDH mRNAを用いて行った。牛HMGbox含有タンパク質1(HBP1) mRNAを標的とするqPCRも、内部コントロール遺伝子としてアクチンβmRNAを用いて行った。bta-miR-375を標的とするqPCRも、内部コントロールとしてbta-miR-16aを用いて実施した。tax/rex、AS-1及びbHBP1 mRNAについて、反応混合物は、cDNA 40ng/5μl、10μMフォワードプライマー及びリバースプライマー各0.8μl、SYBR Premix Ex Taq (Takara Bio)10μl、Rox Reference Dye (Takara Bio)0.4μl、滅菌超純水3μlから構成された。95℃で30秒間の最初の変性後にPCRを行い、続いて95℃で5秒間の40サイクルの熱変性と60℃で30秒間のアニーリング/伸長を行った。遺伝子コピー数は標準曲線法により算出した。bta-miR-375はmiScript SYBR green PCRキット(Qiagen KK)を使用した。反応混合物は、3ngのcDNA、2.5μlの10mix Scriptユニバーサルプライマー、2.5μlのマイクロRNA特異的プライマー、12.5μlの2x QuantiTect SYBR green PCRマスターミックス及び25μlまでの滅菌超純水から構成された。95℃で15分間の最初の変性後にPCRを行い、続いて94℃で15秒間の熱変性の40サイクル、55℃で30秒間のアニール、及び70℃で30秒間の延長を行った。相対miRNA発現レベルは、Quantstudio設計・解析ソフト(Version 2.4、Thermo Fisher Scientific社製)によるΔΔCT比較法を用いて算出した。使用したプライマーの配列を表2に示す。
【0069】
[統計解析]
BLV感染牛とBLV非感染牛又はBLV AS-1高発現牛と低発現牛とのBLV miRNA (blv-miR)及び牛miRNA (bta-miR)の意義を、それぞれWelchのt検定又はMann-Whitney検定を用いて評価した。BLV感染牛におけるパラメータ間の相関は、ピアソンの相関係数を算出して評価した。BLV陰性、BLV陽性及びEBL牛におけるbta-miR-375発現の意義を、Tukeyのpost hoc試験を用いた一元配置分散分析により評価した。GraphPad Prism 8(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA)を用いてデータを分析し、有意性をp < 0.05と判定した。
【0070】
2.結果
[BLV感染牛及び非感染牛のB細胞におけるmiRNA発現レベル]
BLV感染牛16頭と非感染牛6頭から分離したB細胞の純度は82-97%であった。B細胞由来RNA試料のRNA Integrity Number (RIN)は6.9-10であった。これらのRNA試料中の1.33-4.12万のmiRNAが読まれた。そのうち、現在データベース(miR Base)に登録されている牛ゲノム由来miRNA(bta-miR)1064個のうち560個が検出された。さらに、既報[10]の10のBLVプロウイルス由来miRNA(blv-miR)のうち10が検出された(表3)。
【0071】
BLV非感染牛では、牛ゲノム由来bta-miR-191-5p(13%)、bta-miR-26a-5p(13%)、bta-miR -150-5p(11%)及びbta-miR-142-5p(10%)がB細胞で高発現していた(表4)。これらの4つのbta-miRはB細胞の全miRNAの47%を占めた。一方、BLV感染牛では、BLVプロウイルス由来blv-miR-B4-3p(25%)がB細胞に高発現しており、blv-miRはB細胞の全miRNAの38%を占めていた(表3)。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
bta-miR-16a-5pのリード数は、22頭すべての牛の中で最も安定していた。次に、BLV感染牛と非感染牛の間でbta-miR-16a-5pリード数を用いて標準化(normalize)したbta-miRのリード数を比較した。BLV感染牛と非感染牛との間で有意差を示した32のbta-miRにおいて、BLV感染牛の31のbta-miRは非感染牛と比較して有意に減少していた(p <0.05-0.001、表5)。特に、5 つのbta-miR (bta-miR-425-5p,bta-miR-142-3p,bta-miR-221-3p,bta-miR-28-5p及びbta-miR-363-3p)は他よりも高いp値(P<0.001)で有意に減少した。BLV感染牛におけるbta-miR-375-3p発現のみが非感染牛と比較して有意に増加していた(p <0.01)。
【0075】
【表5】
【0076】
[BLV感染牛におけるmiRNA発現とBLVプロウイルス量(PVL)の相関]
末梢血中のBLVプロウイルス量はqPCR法により定量した。miRNA発現とBLVプロウイルス量との相関を統計学的に解析した。3つのblv-miR (blv-miR-B2-5p、blv-miR-B4-3p、blv-miR-B5-5p)の発現はBLVプロウイルス量(r >0.7)と強い正の相関を示した(図1A-C)。BLV感染牛と非感染牛の間で有意差を示した32のbta-miRにおいて、21のbta-miRはPVLと負の相関を示した(表4)。特に、bta-miR-28-5pはプロウイルス量と強い負の相関を示し(r >0.7、p=0.0010)、続いて9つのbta-miR (bta-miR-22-3p,bta-miR-221-3p,bta-miR-151-5p,bta-miR-146a-5p,bta-miR-186-5p,bta-miR-106b-5p,miR-2285f-3p,bta-miR-425-5p,bta-miR-142-5p) が0.6以上の有意な負の相関を示した(P<0.01又は0.05)(図1D、E)。bta-miR-375-3pのみPVLと正の相関(r = 0.619、P<0.05)を認めた(図1F、表6)。BLV陰性、BLV感染及びEBLの間でbta-miR-375発現を比較すると、EBL牛における発現レベルはBLV陰性及び感染牛よりも有意に高かった(BLV vs EBL;それぞれp = 0.0018及びBLV感染 vs EBL; p = 0.0009)(図1G、及び図2)。
【0077】
【表6】
【0078】
[BLV感染牛におけるmiRNA発現とBLV tax/rex及びAS-1発現との相関]
末梢血白血球におけるBLV tax/rex及びAS-1遺伝子発現をqRT-PCR法により定量した。BLV mRNA発現とmiRNA発現の相関を統計学的に解析した。BLV tax/rex mRNAは1.6-91コピー、AS-1 mRNAは2.1-1,388.2コピーであった。tax/rexとAS-1 mRNA発現の間に相関があった(r=0.61、P<0.05)。BLV tax/rex mRNA発現は4 blv-miR (blv-miR-B4-3p、blv-miR-B2-5p、blv-miR-B5-5p、blv-miR-B2-3p)と正の相関を示した。しかし、tax/rexとbta-miRの発現の間に相関は観察されなかった。AS-1発現では、AS-1と2 blv-miR(blv-miR-B1-5pとblv-miR-B2-5p)の発現s間に正の相関が認められた。BLV感染牛と非感染牛の間で有意差を示した32のbta-miRにおいて、20のbta-miRはAS-1発現と有意な負の相関を示した(表4)。特に、AS-1とbta-miR-150-5pの間に強い負の相関が認められた(r=0.7424)。6つのbta-miR(bta-miR-28-5p、bta-miR-106b-5p、bta-miR-151-5p、bta-miR-425-5p、bta-miR-146a-5p及びbta-miR-221-3p)は、係数値が0.6を超えるAS-1 mRNA表現に対しても負の相関を示した(表6)。
【0079】
BLV AS-1 mRNAの発現レベルに関しては、AS-1のコピー数が500以上の牛を高発現牛、そのコピー数が500未満の牛を低発現牛と定義した。AS-1発現と有意な負の相関を示したbta-miR-150-5p及び他の19bta-miRの発現レベルは、AS-1高発現牛の方が低発現牛よりも有意に低下していた(表6)。
【0080】
[HMG-box転写因子1(HBP1)発現]
BLV感染牛由来のB細胞におけるHBP1 mRNA発現は、BLV非感染牛と変わらなかった。牛B細胞腫瘍細胞株におけるHBP1 mRNA発現は、BLV感染牛及び統一牛の双方に由来するB細胞における発現よりも低かった(データは示していない)。
【0081】
3.考察
本研究では、miRNAとBLVの病因との相関を明らかにするために、ディープシークエンシング解析を行い、BLV感染健康牛由来のBリンパ球に発現するmiRNAとBLV非感染牛由来のmiRNAを網羅的に比較した。さらに、miRNAとBLVプロウイルス量(PVL)、BLV tax/rex又はAS-1 mRNA発現との相関も調べた。
【0082】
BLV感染牛由来のBリンパ球では10種類のBLVプロウイルス由来miR(blv-miR)が検出され、これらのblv-miRは検出されたすべてのmiRNAの38%を占めていた。これはBLV実験感染ヒツジに由来するB細胞リンパ腫において、全miRNAの約40%がblv-miRであったという報告と一致している[10]。これらの結果から、BLV感染健康牛のB細胞では、無症候期からEBL発症までblv-miRが高率に常時発現していることが示唆された。
【0083】
より高いPVLを保有するBLV感染牛におけるEBL発症リスクは、より低いPVLを保有するBLV感染牛よりも高い[56]。blv-miR-B2-5p,blv-miR-B4-3p及びblv-miR-B5-5pはPVLと強い正の相関を示した。これらのblv-miRのうち、blv-miR-B4-3pが最も高い発現レベルを示した。これは、BLV実験的感染ヒツジに由来するB細胞リンパ腫において、blv-miR-B4-3pのリード数が最も多かったという以前の結果と一致している[10]。blv-miR-B4-3pは宿主ゲノム由来miR-29ファミリー(miR-29a、miR-29b、miR-29c) [7]の5'フランキング領域に7塩基を共有しており、blv-miR-B4-3pとmiR-29ファミリーは類似の機能を有することが示唆された。miR-29ファミリーは、様々な腫瘍細胞において細胞増殖、アポトーシス、血管新生及び転移に関与している[29,57]。また、blv-miR-B4-3pはin vitroでヒツジ悪性B細胞リンパ腫の細胞周期を抑制する転写抑制因子HMG box-containing protein 1(HBP1)の発現をダウンレギュレートすることで細胞増殖を促進する[7,10,58]。しかし、本研究の結果から、BLV感染健康牛由来のB細胞ではHBP1の発現は減少していないことが示された。これらの結果は、blv-miR-B4-3pを含むBLVプロウイルス由来miRがHBP1非依存的にBLV感染B細胞の増殖とアポトーシスを調節し、EBL発症前のプロウイルス量の増加に寄与することを示唆する
【0084】
BLV感染牛と非感染牛との間で有意差が認められた32のbta-miRのうち、PVLと関連があるとされたのは22のbta-miRであった(表4)。21のbta-miRは負の相関を示し、1つのbta-miR-375-3pのみがPVLと正の相関を示した。21の負の相関のあるmiRから、6つのbta-miR (bta-miR-28-5p,bta-miR-22-3p,bta-miR-221-3p,bta-miR-151-5p,bta-miR-146a-5p及びbta-miR-186-5p)をより高いP値(P<0.001)で抽出した。これら6種類のmiRのうち、5種類は細胞の増殖や転移を抑制する役割を果たしており、miR-221は様々な腫瘍において細胞の増殖や遊走を促進する[25,28,40,59,60]。特に、miR-28は白血病細胞の増殖を抑制し[40,59]、HTLV-1の複製と感染を減少させる[61]。したがって、このことは、PVLの増加がbta-miRをダウンレギュレートし、そのほとんどが細胞増殖及びウイルス複製において抑制機能を有することを示唆した。
【0085】
tax/rex mRNAの発現と4つの blv-miR (blv-miR-B4-3p,blv-miR-B2-5p,blv-miR-B5-5p及びblv-miR-B2-3p)の発現との間には正の相関があった。一方、tax/rex mRNAの発現とbta-miRとの間には相関は認められなかった。HTLV感染では、HTLV-1プロウイルスは極めて低いレベルのmiRNAしか産生しないか、産生しない[62]。一般に、HTLV Taxタンパク質は成人T細胞白血病において宿主ゲノム由来miRの発現を抑制する[63,64]。これらの結果は、BLV Taxタンパク質が、PVLを増加させるためにblv-miR-B4-3pのようなプロウイルス由来miRの発現をアップレギュレートするが、宿主由来miRNA発現には影響しないことを示唆する。対照的に、HTLV-1 Tax蛋白質はプロウイルス由来miRNAの発現には影響しないが、宿主由来miRNAをダウンレギュレートする。このように、Taxタンパク質がプロウイルス由来のmiRNAを調節することによって腫瘍発生にどのように寄与するかは、BLVとHTLV-1とでは異なる。
【0086】
BLV AS-1遺伝子の機能についてはほとんど知られていない。AS-1 遺伝子はBLVプロウイルスのマイナス鎖によってコードされている。AS-1 転写産物は細胞質には存在せず、AS-1タンパク質は同定されていない[8]ことから、AS-1遺伝子は転写産物(RNA)として機能するが、タンパク質としては機能しないことが示唆される。本研究では、AS-1転写物と4つのうちの2つの blv-miR (blv-miR-B1-5pとblv-miR-B2-5p)発現との間に正の相関が認められたが、AS-1と残りの blv-miR (blv-miR-B4-3pとblv-miR-B5-5p)との間に相関は認められなかった。理由は不明であるが、bta-miRとの相互作用は、5'フランキング領域から転写されたtax/rexと3'フランキング領域から転写されたAS-1との間、及びblv-miR-B1-5pとblv-miR-B2-5pの両方との間で異なる可能性があり、blv-miR-B4-3pとblv-miR-B5-5pよりもAS-1転写に対して強い影響を与える可能性がある。
【0087】
PVLと負の相関を示す21のbta-miRのうち、16のbta-miRはAS-1発現と負の相関を示し、ほとんどのbta-miRは腫瘍抑制因子として機能していた(表4)。さらに、これらの20のbta-miRのうち19は、高いPVLを保有するAS-1高発現牛において有意な低下を示した。特に、Nanog (幹細胞の多能性に関与するホメオボックス転写調節因子)を標的とすることで白血病/リンパ腫の本質的な腫瘍抑制因子の役割を担うbta-miR-150-5pは強い負の相関を示した[20,65]。miR-150は成熟T細胞及びB細胞に高レベルで発現し、Foxp3の作用を介して制御性T細胞(Treg)でダウンレギュレートされ(Cobb et al.,2006)、HTLV 1感染細胞ではダウンレギュレートされるが、ATLL細胞ではアップレギュレートされる[66,67]。HTLV 1感染細胞におけるmiR-150のダウンレギュレーションは、BLV感染B細胞における本研究のデータと一致した。miR-28は細胞増殖を制御し、B細胞リンパ腫ではダウンレギュレートされ[40]、前述のようにHTLVの複製と感染を減少させる[61]。さらに、HIV-1 mRNAの3'UTRはmiR-150及びmiR-28の標的であり、これらの相互作用はウイルスのCD4+ T細胞及び単球/マクロファージへの増殖性感染能に影響を及ぼす[68,69]。 ADDIN EN.CITE ADDIN EN.CITE.DATA ADDIN EN.CITE ADDIN EN.CITE.DATA ADDIN EN.CITE ADDIN EN.CITE.DATA ADDIN EN.CITE ADDIN EN.CITE.DATA ADDIN EN.CITE ADDIN EN.CITE.DATA したがって、これらの細胞性miRNAは、BLV潜在能力miR-146aにおける中枢である。
【0088】
miR-146aはNF-kB依存性の遺伝子であり、Toll類似受容体及びサイトカインシグナルの制御において役割を果たす[70]。miR-146aはまた、HTLV-1感染T細胞株において高度に発現され、NF-kBシグナル伝達の活性化を介してTaxによって直接誘導される[71,72]。しかし、今回の結果はHTLV 1感染細胞における結果と一致しなかった。BLV taxとHTLV taxは、miR-146a とは異なる機能を持つ場合がある。本研究の結果は、miR-106b-5pとmiR-363-3pの両方がAS-1発現との負の相関が存在する中でダウンレギュレートされたが、miR-363-3pと整合的であり、miR-106a-5pはHTLV-1無症状キャリアにおいて有意にダウンレギュレートされた[73]。結果から、AS-1は、腫瘍形成又はBLV複製を抑制するbta-miRの発現をダウンレギュレートする機能を有する可能性が示唆された。
【0089】
AS-1と4つのbta-miR (bta-miR-23a-3p、bta-miR-27a-3p、bta-miR-26a-5p及びbta-miR-30c-5p)の間には負の相関があり、これらはPVLと関連しなかった。4つのmiRはがん抑制遺伝子として機能するが、miR-23a-3pとmiR-27a-3pはがん遺伝子とがん抑制遺伝子の両方として機能する[74-77]。興味深いことに、miR-27aは急性白血病において腫瘍抑制因子として機能している[38]。これらのbta-miRとPVLとの間に関連性がないことから、これらの4つのbta-miRはAS-1によって特異的に影響を受ける可能性がある。
【0090】
5つのbta-miR(bta-miR-151-3p、bta-miR-2285f-3p、bta-miR-32-5p、bta-miR-194-5p、bta-miR-142-3p)はPVLと負の相関を示したが、これらはtax/rex及びAS-1の両方とは関連しなかった。理由は不明であるが、これらのbta-miRはtax/rex及びAS-1よりも他のアクセサリー遺伝子、G4又はR3を介してPVLに影響を受ける可能性がある。
【0091】
興味深いことに、bta-miR-375発現はBLV感染健康牛のPVLと有意に相関し、EBLの発症時、その発現はBLV感染牛及び非感染牛よりも有意に高かった。miR-375はいくつかの臓器で発現し、複数の種類のがんで有意にダウンレギュレートされているが、miR-375は前立腺がんや乳がんでアップレギュレートされていることがわかっている[24]。miR-375は、貧食細胞の浸潤及びその後の腫瘍形成微小環境の進展においてきわめて重要な調節因子としての役割を果たしている[78]。EBLでは、アップレギュレートされたmiR-375が、腫瘍形成に重要な役割を果たす可能性がある。さらに、本研究の結果は、bta-miR-375発現レベルがBLV感染牛とEBL牛の区別に使用できることを確認している。このことは、bta-miR-375がEBL発症の診断バイオマーカーとして使用できる可能性を示している。
【0092】
miR-15/16クラスターの欠失は、細胞周期の進行を制御するように遺伝子の発現を調節することにより、ヒト及びマウスのB細胞の増殖を加速し、EBLに類似したCD5+ B細胞のクローン性増殖を示す。B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)症例の3分の2で、miR-15/16の発現が欠失又はダウンレギュレートされた[2,79,80]。本研究では、bta-miR-16aの発現はBLV感染牛及び非感染牛内の全22頭の牛の中でB細胞において最も安定しており、他のbta-miRのリード数を正常化するための内部コントロールとして用いた。bta-miR-16bは、BLV免疫牛において有意にダウンレギュレーションされたが、そのダウンレギュレーションはPVL及びAS-1発現に影響されなかった。さらに、bta-miR-15a及び15bの発現はいずれも、BLVin感染牛のB細胞では有意に変化しなかった。このことから、bta-miR-15/16クラスターはBLVによるB細胞リンパ腫には関与していない可能性が示唆された。
【0093】
結論として、BLVプロウイルス由来のblv-miRは、BLV感染牛ではB細胞で優先的に発現し、PVLと相関していることが明らかになった。一方、腫瘍抑制に関与すると考えられている牛ゲノム由来のbta-miRの発現は有意に低下していた。これらの結果は、BLVが腫瘍抑制機能を持つbta-miRの発現をダウンレギュレートすることでリンパ腫形成を促進していることを示唆しており、Tax / rexではなく、PVLの増加に起因するAS-1とblv-miRの両方の発現がダウンレギュレートされていることが示唆された。今後、BLVによって誘導された病態におけるblv-miR及びbta-miRの分子機能を解明するためには、さらなる研究が必要である。
【0094】
<血清中のbta-miR-375の測定>
1.材料及び方法
[血清からのmiRNAを含むトータルRNAの抽出]
EBL発症牛32頭、EBL未発症BLV感染牛50頭、BLV非感染牛30頭の血清からmiRNAを含むtotal RNAを抽出した。採取した血清からmiRNAをmiRNeasy serum/plasma Advanced kit(QIAGEN社製)を用いて添付のプロトコルにしたがって抽出した。簡単に説明すると、miRNA抽出には、200μLの血清サンプルを使用し、手順は、miRNA抽出効率とデータ正規化の両方の評価のために合成した外来の線虫(C. elegans)miR-39を添加することを含む、メーカーが推奨するものあった。RNA濃度は、Nano Drop One (Thermo Fisher Scientific) を用いて260/280 nmと260/230 nmの吸光度比で測定した。
【0095】
[bta-miR-375の定量化]
miScript II RTキットを用いてtotal RNAを逆転写し、cDNAを取得した。反応液は、5×miScript HiFlex buffer 2μL、10×miScript Nucleics Mix 1μL、miScript Reverse Transcriptase Mix 1μL、total RNA 5μL、RNase free waterからなり、全量10μLとなるようにした。総容量は10 μLでした。37℃、1時間のインキュベーションによる逆転写後、95℃、5分のインキュベーションで酵素を失活させた。得られたcDNAをTE(PH 8.0)で200倍に希釈し、定量RT-PCRに供した。PCR反応には、miScript SYBR Green PCR kit(Qiagen)を使用した。
【0096】
両Forward PCRプライマーは以下の通りである;
bta-miR-375: 5'- TTTTGTTCGTTCGGCTCG -3' (SEQ ID NO: 57)
cel-miR-39-3p: 5'- TCACCGGGTGTAAATCAGCTTG -3' (SEQ ID NO: 91)
リバースプライマーには、miScript SYBER Green PCR kit(Qiagen)に付属のユニバーサルプライマーを使用した。
【0097】
反応混合物は、2×Quantitect SYBR Green PCR master mix 12.5μL、10×miScript universal primer 2.5μL、各forward primer (5μM) 2.5μL、滅菌超純水 6.5μL、cDNA 1.0μLから構成された。総量は25μLとした。リアルタイムPCRには、QuantStudio3(Thermo Fisher Scientific)を使用した。PCRは95℃15分の初期変性、94℃15秒の熱変性、55℃30秒のアニーリング、70℃30秒の伸長からなり、合計40サイクルを実施した。PCR反応後、QuantStudio3ソフトウェア(Ver.1.7, Applied Biosystems, Thermo Fisher Scientific)に付属の融解曲線解析により、非特異的反応の有無を確認した。すべてのサンプルは二重にテストされた。相対的なmiRNAの発現量は、Gene Expression suite software (Ver. 1.3, ABI, Thermo Fisher Scientific)を用いて算出した。
【0098】
[ROC解析]
EBL未発症BLV感染牛44頭及びEBL発症牛25頭を用いて、bta-miR-375のEBLの判定能力を評価するために、ROC(Receiver Operating Characteristic)解析を実施した。
【0099】
[図の作成]
データは、GraphPad Prism 9 (GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA, USA)を用いて解析した。P<0.05を有意差とみなした。
【0100】
2.結果
[血清中bta-miR-375の発現量の比較]
結果を図3に示す。図中、Barは中央値を表す。解析はKruskal-Wallis testにより行った。リンパ腫を発症すると血清中のbta-miR-375は大きく上昇した。P値 <0.0001であった。
【0101】
[ROC解析による血清中bta-miR-375発現量のEBL発症診断能の評価]
血清中のbta-miR-375が検出できたEBL発症牛(n=28)、EBL未発症BLV感染牛(n=47)の2群について、ROC(Receiver Operator Characteristic)解析によりEBL発症の診断能を評価した。AUCが1に近くなるほど診断法としての評価が高くなる。
【0102】
結果を図4に示す。ROC曲線下面積 0.9821、標準誤差 0.01255、95%信頼区間 0.9575~1.000、P値 <0.0001であった。診断基準値としては相対発現量14のときに、感度91.5%、特異度96.4%を示す。
【0103】
[実施例中で引用した文献]
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【配列表フリーテキスト】
【0104】
SEQ ID NOs:1-24 primers or probes
SEQ ID NOs:25-58 bta-miRNAs
SEQ ID NOs:59-90 has-miRNAs
SEQ ID NOs:91 primer
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022136064000001.app