(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136067
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】冷解凍装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/365 20060101AFI20220908BHJP
F25D 23/12 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A23L3/365 Z
F25D23/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022040764
(22)【出願日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021070011
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509082020
【氏名又は名称】大川 令
(72)【発明者】
【氏名】大川 令
【テーマコード(参考)】
4B022
【Fターム(参考)】
4B022LB01
4B022LP01
4B022LQ09
4B022LT02
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、冷凍及び冷凍保存を可能とする機能を制御システムとして組み込んだ冷解凍装置及びその制御方法を提供する。また、解凍時間の短縮を図り、解凍時に細胞内の氷の再成長を抑制し、細胞液の流出の低減又は防止を図るために、急速解凍を可能とする冷解凍装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】冷解凍装置において、空気での吸収率が低く氷での吸収率の高い波長領域の遠赤外線を解凍対象物に照射し、急速解凍をする。冷解凍装置は冷解凍一体型装置である。その結果、冷凍から冷凍保存、解凍そして冷蔵までを容易に実施出来、食品毎の個性や特徴に併せ、より緻密な、そして使用者の意図に見合ったスケジュールでの冷解凍を可能にする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの装置で、冷凍対象物を冷凍する冷凍機能と、前記冷凍後の冷凍保存機能、冷凍された解凍対象物を解凍する解凍機能、及び、前記解凍後の冷蔵保存機能を有する冷解凍装置において、
対象物を収納するための冷解凍庫、
前記冷解凍庫内の空気を流動又は熱交換するためのファン手段、
前記冷解凍庫に必要な熱量を供給するための熱交換室、
前記冷解凍庫の中に設置され、前記対象物に照射させて急速解凍を促進するためのピーク波長が8μmから10.6μmの間の遠赤外線を発生させる遠赤外線発生手段、
前記冷解凍庫の中に設置され、前記冷解凍庫の中、又は、前記対象物の温度を計測するためのセンサー手段、及び、
前記センサー手段から受信したセンサーデータ、及び、予め設定された又は使用者によりインプットされたもので、前記対象物に係わる温度データと時間データからなる制御データを用いて、前記急速解凍を制御するための制御手段からなる
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷解凍装置において、
前記制御手段は、前記解凍の経過時間に対する前記対象物の温度上昇の変化を表す解凍曲線が緩やかになる変曲点(Tn,Xn)において、前記解凍を進めるために前記遠赤外線の前記放射量を減らす又は中断する制御を行う
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷解凍装置において、
前記対象物を設置する空間の前記冷解凍庫において、該空間の中に放射される遠赤外線の対称性を得るために、該空間の中心に対し同じ仕様の前記遠赤外線発生手段を対称に設置して同じ放射エネルギー量を放射させる
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の冷解凍装置において、
前記制御手段は、前記解凍を進めるための前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を、前記対象物の温度が上昇するに従い、近似的に氷の比熱の温度対比熱特性に比例させて増加させて供給し、前記解凍の制御を行う
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の冷解凍装置において、
前記冷解凍庫内に複数の前記遠赤外線発生手段を備え、
前記制御手段は、前記対象物が解凍されて前記対象物の比熱が増加すると、前記比熱が増加した前記対象物に対応する必要エネルギー量を、前記複数の前記遠赤外線発生手段の内の可動していない前記遠赤外線発生手段を追加稼働させ、若しくは、前記稼働中の複数の前記遠赤外線発生手段の内必要な数の前記遠赤外線発生手段の放射エネルギー量を増加させて、又は、これらを組み合わせて、前記対象物に照射する前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を増加させて供給し、前記対象物の解凍時における前記対象物の一様な解凍を可能とし、解凍対象物の品質を維持する
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項6】
請求項1に記載の冷解凍装置において、
前記対象物を適当な温度で保つ場合、前記制御手段は、(a)冷凍時に冷熱の供給を停止又は弱める制御を行い、(b)解凍時に前記遠赤外線の放射量を減少させ若しくは中断して、必要に応じて前記ファン手段を利用して前記熱交換室から冷熱を前記冷解凍庫に加える制御を行い、前記対象物の温度を使用者が希望する温度に保持する
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の中から選択される1項に記載の冷解凍装置において、
前記遠赤外線発生手段は、絶縁材であり、かつ、前記対象物に又は健康に無害な、耐寒性及び耐水性を有する樹脂又はゴムで導電体を覆ったケーブルからなる
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項8】
請求項7に記載の冷解凍装置において、
前記遠赤外線発生手段が発生する前記遠赤外線は、生物の育成に適する15℃~30℃に相当するもので、それぞれの温度に相当するピーク波長が9.56μm(30℃)~10.06μm(15℃)である
ことを特徴とする冷解凍装置。
【請求項9】
請求項1乃至6の中から選択される1項に記載の冷解凍装置において、
前記制御データを近接又は遠隔で入力するための入力手段と、及び、
前記冷解凍装置を近接又は遠隔で自動起動又は稼働し制御するための前記制御手段とからなることを特徴とする冷解凍装置。
【請求項10】
一つの装置で、冷凍対象物を冷凍する冷凍機能と、前記冷凍後の冷凍保存機能、冷凍された解凍対象物を解凍する解凍機能、及び、前記解凍後の冷蔵保存機能を有する冷解凍装置の制御方法において、
冷解凍庫の中に設置された遠赤外線発生手段により、ピーク波長が8μmから10.6μmの間の、時間的に一定エネルギー量の遠赤外線を放射させ、前記冷解凍庫に収納された対象物に解凍のために照射し、
前記冷解凍庫の中、又は、前記対象物の温度をセンサー手段で計測し、
前記センサー手段で計測したセンサーデータ、及び、予め設定された又は使用者によりインプットされたデータで、前記対象物に係わる温度データと時間データからなる制御データを用いた制御手段によって、前記解凍を制御し、
前記制御において、前記遠赤外線を放射するために、前記遠赤外線発生手段のケーブルに電圧を印加するための電圧制御、又は、前記対象物を特定温度に保持するため冷熱を熱交換室から供給することで、前記対象物の解凍のための時間と温度を前記制御手段で制御し、前記対象物の解凍の温度の時間特性を示す解凍曲線に沿って前記対象物の解凍を制御し、
前記解凍の経過時間に対する温度上昇の変化が緩やかになりカーブを描いて前記対象物の融解温度(氷結温度)に近づき解凍される場合、約-10℃から最大氷結晶生成帯(-5℃~融解温度(氷結温度))の温度帯の間を早く通過させる急速解凍を前記制御手段で制御して行い、細胞内の氷の成長を抑えて前記解凍を行う
ことを特徴とする冷解凍装置の制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の冷解凍装置の制御方法において、
前記遠赤外線発生手段により、前記遠赤外線を一定量放射させ、前記対象物に解凍のために照射して、前記解凍を進めるとき、
前記解凍の経過時間に対する前記対象物の温度上昇の変化を表す解凍曲線が緩やかになる変曲点(Tn,Xn)において、前記解凍を進めるために前記遠赤外線の前記放射量を減らす又は中断する制御を行う
ことを特徴とする冷解凍装置の制御方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の冷解凍装置の制御方法において、
前記対象物の温度が融解温度(氷結温度)に近づく前記急速解凍時、前記対象物の表面から芯部への氷の状態での熱伝導を維持するために、前記遠赤外線の放射の熱量供給を減少させて又は中断し、そして前記冷熱を供給し、前記対象物の表面を冷凍状態に維持し、同時に前記対象物の内部から表面への細胞液の流出を防ぎ、
前記対象物の表面での乾燥を防ぐために、前記対象物の温度を融解温度(氷結温度)以下に保持する
ことを特徴とする冷解凍装置の制御方法。
【請求項13】
請求項9又は10に記載の冷解凍装置の制御方法において、
前記制御手段は、前記解凍を進めるための前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を、前記対象物の温度が上昇するに従い、近似的に氷の比熱の温度対比熱特性に比例させて増加させて供給し、前記解凍の制御を行う
ことを特徴とする冷解凍装置の制御方法。
【請求項14】
請求項10又は11に記載の冷解凍装置の制御方法において、
前記対象物が解凍されて前記対象物の比熱が増加すると、前記比熱が増加した前記対象物に対応する必要エネルギー量を、前記複数の前記遠赤外線発生手段の内の可動していない前記遠赤外線発生手段を追加稼働させ、又は前記稼働中の複数の前記遠赤外線発生手段の内必要な数の遠赤外線発生手段の放射エネルギー量を増加させて、又は上記二つの稼働手段を組み合わせて、前記対象物に照射する前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を増加させて供給し、前記解凍を進める制御を行い、前記対象物の解凍時における前記対象物の一様な解凍を可能とし、解凍対象物の品質を維持する
ことを特徴とする冷解凍装置の制御方法。
【請求項15】
請求項10又は11に記載の冷解凍装置の制御方法において、
前記対象物の冷凍温度の時間特性を示す冷凍曲線において、冷凍が進み、最大氷結晶生成帯(-5℃~融解温度(氷結温度))から約-10℃の温度帯で、時間(T)の微小変化(dt)に対する前記対象物の温度(X)の微小変化(dx)の変化(dx/dt)が、冷凍開始から負(マイナス)の値になっていて、次に正(プラス)の値に変化し、かつ、短時間後に負(マイナス)の方向に変化する温度変化を計測するとき、前記対象物の過冷却と判断する
ことを特徴とする冷解凍装置の制御方法。
【請求項16】
請求項15に記載の冷解凍装置の制御方法において、
前記変化(dx/dt)は、前記冷凍開始から負の値になっていて、正の値に変化し、かつ、所定時間が経過しても正の値を維持するとき、前記制御手段によって前記冷解凍装置の故障と判断する
ことを特徴とする冷解凍装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置で対象物を急速冷凍する機能、及び冷凍保存する機能、解凍装置で急速解凍する機能、及び冷蔵する機能を、同一装置で備える冷解凍装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、冷凍・冷蔵装置の代表としては、それほど低い冷凍温度ではないが冷凍庫を備えた家庭用冷蔵庫が一般的である。そして、業務用として様々なタイプのものがあるが、通常の冷凍装置は-15℃~-30℃程度までの冷凍装置となっている。また、マグロ等の高級魚用としては、褐変防止を可能とする超低温の-40℃以下の冷凍機能を有する冷凍装置がある。さらに、例えばワクチン等の医薬品の冷凍保存を可能とする-70℃で、又はそれ以下の温度で冷凍保存が可能な冷凍装置もある。
【0003】
現在の冷凍装置は、目的の冷凍温度を実現するために必要な冷媒と冷凍システムを採用した、設計仕様に定められた冷凍温度で一義的に冷凍する冷凍装置である。一方、解凍装置も緩慢解凍等の解凍装置で有り適切な解凍技術は適用されていない。対象物を冷凍・冷凍保存から解凍を経て、冷蔵までの各プロセスを、一つの統合したシステムプロセスとして、装置使用者の要求に見合った温度と時間等を考慮に入れた最適な温度-時間制御による予め定められたスケジュールで運転を可能とする冷解凍装置は実現できていない。
【0004】
そのため、使用者が期待する、例えば冷凍機能については次に記述する、複数の対象物それぞれに見合った冷凍温度とその冷凍時間に、冷凍保存温度とその冷凍保存時間に、解凍機能として解凍温度とその解凍時間に、そして冷蔵機能として解凍後の対象物の品質を維持するための冷蔵温度とその冷蔵時間等に、係わる必要なプロセスを組み込むことが求められている。
【0005】
解凍には、自然解凍、流水解凍や氷水解凍等の手法が用いられているが、いずれも解凍時間が長く、また細胞液(旨味:ドリップ)の流出に対し、十分な防止は出来ていない。肉類、魚介類に関わらず、冷凍における急速冷凍技術、そして-60℃以下の-70℃の冷凍を実現する超低温急速冷凍技術はほぼ確立しているが、解凍における急速解凍技術は未完成の状態にある。
【0006】
冷凍時に、急速冷凍及び過冷却冷凍により細胞内の氷結晶の微細化を図っても、解凍時に、微細な氷結晶が再結晶化して成長し、細胞膜を傷つけ、細胞液(旨味:ドリップ)が発生してしまうと、急速冷凍と過冷却冷凍技術等を使用した意味がなくなる。現在、通常行われている解凍方法である、冷蔵庫での緩慢解凍、自然解凍、流水解凍、風解凍、ミスト解凍、高周波(マイクロ波)解凍、氷水温(低温)解凍等の技術に代わる、新たな解凍技術としての急速解凍技術が求められている。
【0007】
食品である、冷凍及び解凍そして冷蔵の対象物を高品質に保持するためにキーとなる冷凍・冷凍保存・解凍そして冷蔵に係わる温度と時間を下記に例として温度の高い方から記述する。
(1)冷凍前及び解凍後に放置すべきでない温度帯
一般的に、細菌の繁殖最適温度は20℃程度以上である。ボツリヌス菌A・B毒素生産限界、ブドウ球菌毒素生産限界、腸炎ビブリオ菌繁殖限界(至適条件:30~37℃、pH7.5~8.5、NaCl濃度3~5%)等の温度は、10℃程度である。
【0008】
(2)冷蔵
[冷蔵について]
冷蔵温度は明確に定義化された温度帯ではなく、様々な温度帯がある。チルド・冷蔵(0℃)貯蔵・パーシャルフリージングの保管の温度領域では、微生物の増殖は遅らせることは出来るが、増殖を止めることは出来ないので、冷蔵時間は限られ(例えば、渡辺悦生他著の書籍「魚の鮮度」(成山堂書店発行)を参考。)、最適な冷蔵温度は冷蔵対象物によって相違する。
なお、以下に記述する冷蔵という言葉に関しては、冷蔵という機能ばかりでなく、冷蔵を継続する時間の長短にかかわらず、冷蔵保存の意味を含む。同時に、冷蔵保存と言う言葉にも冷蔵の意味を含む。
【0009】
冷蔵温度は、一般には、-2℃から-3℃~10℃の温度帯で未凍結状態での貯蔵をいう(例えば、渡辺悦生他著の書籍「魚の鮮度」(成山堂書店発行)を参考。)。冷蔵の温度範囲を、-18℃~10℃との記述もあるが(一般社団法人日本冷蔵庫協会)、JAS法では10℃以下を冷蔵と定義している。
【0010】
[冷蔵温度帯の特徴]
0℃~5℃の冷蔵温度帯は、ボツリヌス菌E毒素生産限界、サルモネラ菌繁殖限界、ブドウ球菌繁殖限界の温度帯である。鶏肉・豚肉・牛肉等の種類により、そして対象とするその肉の大きさにより、冷凍・冷蔵温度と保管期間、そして冷蔵温度と熟成期間等に相違があり、それらはノウハウとしてそれらの取り扱い者が決定している。
【0011】
[チルド温度帯]
チルドとは低温での冷蔵に相当する。チルドの温度帯は、-5℃~5℃としている(日本水産学会監修の書籍「水産物の先進的な冷凍流通技術と品質制御」(恒星社厚生閣発行)を参考。)。また、チルドの温度帯は、JAS法では5℃以下、JIS9607(冷蔵庫の規格)では0℃付近としている。宅配便業者のチルドは0℃~5℃としているが、チルド製品メーカーは0℃~10℃で温度管理している。
【0012】
[パーシャルフリージング貯蔵]
パーシャルフリージング貯蔵とは、半凍結・微凍結状態での-1.5~-3℃で、細胞中の水が凍結し始める温度の限られた温度範囲で冷蔵する方法である(上述の「魚の鮮度」を参考。)。パーシャルフリージング貯蔵の温度帯は、JIS9607(冷蔵庫の規格)では、-3℃付近としている。
【0013】
[氷結温度]
肉類、魚介類等の対象物を冷凍するとき、初めて凍る温度を氷結温度と言う。水の氷結温度は零度である。
図10に代表的な食品の氷結温度を例示している。魚では水分の多いタラは-1℃、マグロは-1.3℃、鰯は-1.3℃であり、夫々の魚種にはそれぞれの氷結温度がある。牛肉の氷結温度は、-1.7℃と、水分が魚介類よりも少ないため一般的に魚介類よりも低い。その他に乳製品等にもそれぞれ氷結温度がある。
【0014】
[冷凍及び解凍時の最大氷結結晶生成帯]
肉類、魚介類に関わらず、冷凍及び解凍するとき、最大氷結結晶生成帯は、氷結温度である-1℃~-5℃(-5℃よりももう少し低い温度としている場合もある)であり、この温度帯を最短時間で通過させることにより対象物の細胞内の結晶成長を抑え、ドリップの発生を抑えることが求められる温度帯を言う。なお、肉等の食品を冷凍及び解凍するとき、細胞内の氷の結晶が大きく成長すると氷の結晶が細胞膜を破るため、細胞内の旨みである細胞液が外に漏れ出す。この細胞液をドリップという。
【0015】
(3)加工可能温度
肉類でも魚介類でも、表面温度が-3℃~-5℃程度であり、その芯温が-5℃程度以上の温度であれば、包丁等により人力で、腱鞘炎の発生を抑制した状態で容易に加工が可能である。
【0016】
(4)過冷却発生温度
過冷却は、最大氷結結晶生成帯(約-1℃~-5℃)で、細胞内に氷の核が生じないように、ゆっくりと、対象物を冷却するとき、-1℃から-10℃程度までの温度帯で発生する。過冷却が破れるとき、急速に対象物の温度が上昇し、同時に結氷するが、細胞中の氷の結晶の大きさは急速冷凍により冷凍する場合よりも小さく、細胞膜の破損を抑制出来るため、細胞から旨味(ドリップ)の発生を防ぐことが出来る。
【0017】
(5)冷凍温度のポイント
一般的に、-18℃以下を冷凍とし、通常の冷凍温度は-25℃~-30℃であり、-40℃以下を超低温と呼ぶ。また、超低温急速冷凍技術により-60℃以下、例えば-70℃の冷凍が実現している。なお、JAS法では-15℃以下を冷凍としている。-10℃は全ての細菌の繁殖限界であり、-18℃以下での保管は保管中に微生物の増殖を防止することができる。
【0018】
-20℃以下で、24時間以上の冷凍処理をすることにより、魚中のアニサキスを完全に殺すことが可能である。海水魚及び淡水魚ともに、寄生虫対策として-20℃で24時間以上の冷凍処理が必要になる。なお、アニサキス等に対応する冷凍温度と冷凍時間は国によって相違する。
【0019】
(8)褐変防止温度
褐変とは魚の酸素貯蔵の蛋白ミオグロビン(赤色)が酸素を放出して褐色に変色することを言う。褐変化率をメト化率というが、メト化率は魚種により、また凍結貯蔵温度により変化する。なお、メト化率は、凍結貯蔵温度が下がるに従い減少し、-40℃以下(超低温)になると魚種に関わらず変性速度が遅くなり、魚種間の差が小さくなる。
【0020】
すなわち、冷凍保管温度を-40℃まで下げると、魚肉のたんぱく質の変性を長期間抑制することが可能になる。従い、必要とする貯蔵期間で、魚種により褐変に至らない凍結貯蔵温度を設定することが可能になる。
【0021】
(9)解凍前温度制御によるドリップ抑制
高ATP量のカツオ、イワシ、メバチ等の冷凍肉を、-10℃程度で一定期間保管し、その後改めて解凍すると、急速解凍しても解凍硬直が起きず、ドリップの発生を抑制する事が出来る。ここで、ATPはアデノシン三リン酸の略字であり、アデノシン三リン酸は魚の筋肉の中のエネルギー源の物質である。
【0022】
(10)冷凍及び解凍対象物の乾燥防止
冷凍の場合、食品よりも食品周囲の容器内温度が先に低下する時、食品内の水蒸気圧が周囲の水蒸気圧より大きくなる。このため、水分が食品から周囲に移行し、食品表面の乾燥が進む。解凍の場合、上記の逆の蒸気圧になるが、食品から一旦外に出た水分は食品の内部の細胞には戻らない。
【0023】
一般的に、各種冷凍技術に、食品表面の乾燥対策として下記の方策を適用する。すなわち、食品の保存温度を周囲の温度と同じ温度又は周囲よりも低い温度として、食品内部の蒸気圧を周囲と同じ蒸気圧又は周囲よりも低い蒸気圧に下げる方法がある。また、温度変化を避けること、きちんと包装することも一般的に採用されている。水産物等の食品の表面を氷で覆うグレージング(氷の薄膜で覆う)も行われている。
【0024】
(11)冷凍・冷蔵の賞味期間
冷凍・冷蔵対象物は、それぞれ最適な、冷凍温度、冷凍保存温度と期間、冷蔵温度と期間そして賞味期間がある。例えば、マグロの冷凍と冷蔵に関して例示する。マグロは、船上で放血、水洗後-5℃~-10℃で予冷、次に超低温の-45℃~-55℃で冷凍し、表面温度が-40℃以下に、魚肉の温度が-35℃まで急速冷凍(約1日)する。次にグレージング(氷の薄膜でマグロの表面を覆う)をして、-40℃以下で冷凍保存する。なお、魚肉の退色の低下を防ぐため-40℃以下の冷凍保存が有効である。-1℃~0℃で冷蔵するとき、活きが良い期間は2週間で、6週間が限度とされている。
【0025】
(12)魚種によるノウハウ
魚種により、また魚の大きさにより、取扱者により、冷凍温度、冷凍保存温度、解凍温度、その手順、冷蔵温度、そしてその期間に関しては相違があり、ノウハウとなっている。
【0026】
以上のように、冷凍における急速冷凍技術、-60℃以下の-70℃の冷凍を実現する超低温急速冷凍技術はほぼ確立しているが、解凍における急速解凍技術はこれまで未完成の状態にある。冷凍時に、急速冷凍及び過冷却冷凍により細胞内の氷結晶の微細化を図っても、解凍時に、微細な氷結晶が再結晶化して成長し、細胞膜を傷つけ、細胞液(旨味:ドリップ)が発生してしまうと、急速冷凍や過冷却冷凍技術を使用した意味がなくなる。
【0027】
現在、通常の解凍方法である、冷蔵庫での緩慢解凍、自然解凍、流水解凍、風解凍、ミスト解凍、高周波(マイクロ波)解凍、氷水温(低温)解凍等に代わる、新たな解凍技術として急速解凍技術が求められている。
【0028】
食品の解凍に関して、多数の提案がなされ開示されている。例えば、特許文献1には冷凍された対象物を品質維持するとともに短時間で解凍する解凍装置が開示されている。この装置は、解凍の開始時に、収納室内の温度を、対象物を解凍する目標温度よりも高い所定の温度に設定し、温度変化が予め定められる第1条件に達すると、対象物を解凍する目標温度に応じて定められる第2条件に達するまで、収納室内の温度を初期の温度よりも低い所定の温度に制御している。
【0029】
特許文献2には、冷凍された解凍対象物を品質維持するとともに短時間で解凍する解凍装置を提案している。この装置では、放電電極又は接地電極のいずれか一方が解凍対象物と接し、他方が解凍対象物との間に空間を設けて配置されている。初期制御温度で暖熱を供給するように暖熱供給装置を制御するとともに、放電電極に電圧を印加するように電源装置を制御する初期制御を実行し、前記初期制御が終了した時点から第1温度センサーの計測値が解凍の目標温度である第2所定値となるまでの期間は、初期制御温度より低く第2所定値より高い第1制御温度で暖熱を供給するように暖熱供給装置を制御するとともに放電電極に電圧の印加を継続させるように前記電源装置を制御する第1制御を実行するとしている。
【0030】
特許文献3には、魚類等の被解凍物を色落ちや肉質の低下を生じさせることなく冷凍に近い状態でほぐすことができる冷凍魚体ブロックの解凍方法を提案している。この装置では、-25℃~-30℃の温度で冷凍された冷凍魚体ブロックを+5℃の温度に設定された解凍室に収納し、-5℃~-6℃の温度で冷凍された冷凍魚体になるまで段階的に解凍させる。
【0031】
具体的には、解凍室の内壁面に配置された遠赤外線ヒーターを使用して120℃の温度で実行し、解凍室内に配置された温度センサーの温度制御指令に基づいて、ヒーターによる加熱と冷凍機による冷却との交互切替により、+5℃~-5℃の温度範囲で1℃ずつ低下させている。上記送風は順方向送風機及び逆方向送風機の交互切替送風により実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2015-216909号広報(特許第6230154号)
【特許文献2】特開2017-099369号広報(特許6645819号)
【特許文献3】特開2008-259514号広報(冷凍魚体ブロックの解凍方法)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
現在、対象物の冷凍手段として、緩慢冷凍、急速冷凍、過冷却冷凍等の冷凍手段が採用されているが、対象物を冷凍するにあたり最適な冷凍が行われているわけではない。対象物それぞれに必要とする冷凍を実施するとき、事前に対象物に見合った冷凍温度と時間とを事前にスケジュールとして設定し、例えば上述した温度・時間等をスケジュールに取り入れて、目的とする冷凍温度と冷凍時間で冷凍を可能とする冷凍システムを備えた冷解凍装置が求められている。
【0034】
冷凍時に、冷凍対象物である魚介・家畜の肉等が有する、特に上述した寄生虫や細菌を殺し又は細菌の活動を封じる等の課題に見合った温度と時間をスケジュールに導入することで食品の安全・安心の確保や維持に必要な冷凍を行うことが出来る機能を有する冷解凍装置が求められている。
【0035】
冷凍に関しては、緩慢冷凍に対し、急速冷凍や過冷却冷凍を適用することにより、細胞内の氷の結晶の成長を抑え、細胞内の細胞液(旨味:ドリップ)が細胞外に流れないようにしているが、対象物によっては制御をもって過冷却冷凍を適切に起こす事は難しい。従い過冷却冷凍が生じたかどうかを把握し、それによって、過冷却冷凍が起きなかったと判断される場合は、新たな対応をすることが出来る機能を有する冷解凍装置が求められている。
【0036】
冷凍に関しては、急速冷凍や過冷却冷凍を適用し、細胞内の細胞液(旨味:ドリップ)の細胞外への流出を防いでいるが、解凍に関しては、解凍時における急速冷凍や過冷却冷凍に相当する解凍方法が開発されていない。そのため、冷凍時に細胞液(旨味:ドリップ)の細胞外への流出を抑えても、解凍時に細胞内の氷の再成長が生じた場合は細胞液(旨味:ドリップ)の流出が生じてしまう。そういった氷の再成長を抑制することが求められる。
【0037】
現在、解凍には、自然解凍、流水解凍や氷水解凍等の手法が使用されているが、解凍時間の短縮や細胞液(旨味:ドリップ)の流出の十分な防止に至っていない。解凍における、解凍時間の短縮を図り、同時に解凍時における細胞液(旨味:ドリップ)の流出の低減又は防止に有効な冷解凍装置が求められている。
【0038】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、冷凍及び冷凍保存を可能とする機能と同時に解凍及び冷蔵を可能とする機能を制御システムとして組み込んだ冷解凍装置及びその制御方法を提供する。
【0039】
本発明の他の目的は、対象物を冷凍から、冷凍保存そして解凍を経て、冷蔵までの各プロセスを、一つの統合プロセスとして、システム的に、最適な温度-時間制御により稼働を可能とし、予め定められたスケジュールで稼働を可能とする冷解凍装置及びその制御方法を提供する。
【0040】
本発明の更に他の目的は、解凍時間の短縮を図り、解凍時に細胞内の氷の再成長を抑制し、細胞液(旨味:ドリップ)の流出の低減又は防止を図るために、急速解凍を可能とする冷解凍装置及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の冷解凍装置は、
一つの装置で、冷凍対象物を冷凍する冷凍機能と、前記冷凍後の冷凍保存機能、冷凍された解凍対象物を解凍する解凍機能、及び、前記解凍後の冷蔵保存機能を有する冷解凍装置において、
対象物を収納するための冷解凍庫、
前記冷解凍庫内の空気を流動又は熱交換するためのファン手段、
前記冷解凍庫に必要な熱量を供給するための熱交換室、
前記冷解凍庫の中に設置され、前記対象物に照射させて急速解凍を促進するためのピーク波長が8μmから10.6μmの間の遠赤外線を発生させる遠赤外線発生手段、
前記冷解凍庫の中に設置され、前記冷解凍庫の中、又は、前記対象物の温度を計測するためのセンサー手段、及び、
前記センサー手段から受信したセンサーデータ、及び、予め設定された又は使用者によりインプットされたもので、前記対象物に係わる温度データと時間データからなる制御データを用いて、前記急速解凍を制御するための制御手段
からなることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の冷解凍装置は、次の点を有すると良い。
【0043】
前記制御手段は、前記解凍の経過時間に対する前記対象物の温度上昇の変化を表す解凍曲線が緩やかになる変曲点(Tn,Xn)において、前記解凍を進めるために前記遠赤外線の前記放射量を減らす又は中断する制御を行うと良い。
【0044】
また、本発明の冷解凍装置は、前記対象物を設置する空間の前記冷解凍庫において、該空間の中に放射される遠赤外線の対称性を得るために、該空間の中心に対し同じ仕様の前記遠赤外線発生手段を対称に設置して同じ放射エネルギー量を放射させると良い。
【0045】
更に、前記制御手段は、前記解凍を進めるための前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を、前記対象物の温度が上昇するに従い、近似的に氷の比熱の温度対比熱特性に比例させて増加させて供給し、前記解凍の制御を行うと良い。
【0046】
本発明の冷解凍装置は、更に、
前記冷解凍庫内に複数の前記遠赤外線発生手段を備え、
前記制御手段は、前記対象物が解凍されて前記対象物の比熱が増加すると、前記比熱が増加した前記対象物に対応する必要エネルギー量を、前記複数の前記遠赤外線発生手段の内の可動していない前記遠赤外線発生手段を追加稼働させ、若しくは、前記稼働中の複数の前記遠赤外線発生手段の内必要な数の前記遠赤外線発生手段の放射エネルギー量を増加させて、又は、これらを組み合わせて、前記対象物に照射する前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を増加させて供給し、前記対象物の解凍時における前記対象物の一様な解凍を可能とし、解凍対象物の品質を維持すると良い。
【0047】
また、前記対象物を適当な温度で保つ場合、前記制御手段は、(a)冷凍時に冷熱の供給を停止又は弱める制御を行い、(b)解凍時に前記遠赤外線の放射量を減少させ若しくは中断して、必要に応じて前記ファン手段を利用して前記熱交換室から冷熱を前記冷解凍庫に加える制御を行い、前記対象物の温度を使用者が希望する温度に保持すると良い。
【0048】
前記遠赤外線発生手段は、絶縁材であり、かつ、前記対象物に又は健康に無害な、耐寒性及び耐水性を有する樹脂又はゴムで導電体を覆ったケーブルからなると良い。
【0049】
前記遠赤外線発生手段が発生する前記遠赤外線は、生物の育成に適する15℃~30℃に相当するもので、それぞれの温度に相当するピーク波長が9.56μm(30℃)~10.06μm(15℃)であると良い。
【0050】
また、本発明の冷解凍装置は、更に、
前記制御データを近接又は遠隔で入力するための入力手段と、及び、
前記冷解凍装置を近接又は遠隔で自動起動又は稼働し制御するための前記制御手段と
からなると良い。
【0051】
本発明の冷解凍装置の制御方法は、
一つの装置で、冷凍対象物を冷凍する冷凍機能と、前記冷凍後の冷凍保存機能、冷凍された解凍対象物を解凍する解凍機能、及び、前記解凍後の冷蔵保存機能を有する冷解凍装置の制御方法において、
冷解凍庫の中に設置された遠赤外線発生手段により、ピーク波長が8μmから10.6μmの間の、時間的に一定エネルギー量の遠赤外線を放射させ、前記冷解凍庫に収納された対象物に解凍のために照射し、
前記冷解凍庫の中、又は、前記対象物の温度をセンサー手段で計測し、
前記センサー手段で計測したセンサーデータ、及び、予め設定された又は使用者によりインプットされたデータで、前記対象物に係わる温度データと時間データからなる制御データを用いた制御手段によって、前記解凍を制御し、
前記制御において、前記遠赤外線を放射するために、前記遠赤外線発生手段のケーブルに電圧を印加するための電圧制御、又は、前記対象物を特定温度に保持するため冷熱を熱交換室から供給することで、前記対象物の解凍のための時間と温度を前記制御手段で制御し、前記対象物の解凍の温度の時間特性を示す解凍曲線に沿って前記対象物の解凍を制御し、
前記解凍の経過時間に対する温度上昇の変化が緩やかになりカーブを描いて前記対象物の融解温度(氷結温度)に近づき解凍される場合、約-10℃から最大氷結晶生成帯(約-5℃~融解温度(氷結温度))の温度帯の間を早く通過させる急速解凍を前記制御手段で制御して行い、細胞内の氷の成長を抑えて前記解凍を行う
ことを特徴とする。
【0052】
また、本発明の冷解凍装置の制御方法は、次の点を有すると良い。
【0053】
本発明の冷解凍装置の制御方法は、
前記遠赤外線発生手段により、前記遠赤外線を一定量放射させ、前記対象物に解凍のために照射して、前記解凍を進めるとき、
前記解凍の経過時間に対する前記対象物の温度上昇の変化を表す解凍曲線が緩やかになる変曲点(Tn,Xn)において、前記解凍を進めるために前記遠赤外線の前記放射量を減らす又は中断する制御を行うと良い。
【0054】
更に、本発明の冷解凍装置の制御方法は、
前記対象物の温度が融解温度(氷結温度)に近づく前記急速解凍時、前記対象物の表面から芯部への氷の状態での熱伝導を維持するために、前記遠赤外線の放射の熱量供給を減少させて又は中断し、そして前記冷熱を供給し、前記対象物の表面を冷凍状態に維持し、同時に前記対象物の内部から表面への細胞液の流出を防ぎ、
前記対象物の表面での乾燥を防ぐために、前記対象物の温度を融解温度(氷結温度)以下に保持すると良い。
【0055】
前記制御手段は、前記解凍を進めるための前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を、前記対象物の温度が上昇するに従い、近似的に氷の比熱の温度対比熱特性に比例させて増加させて供給し、前記解凍の制御を行うと良い。
【0056】
更にまた、本発明の冷解凍装置の制御方法は、前記対象物が解凍されて前記対象物の比熱が増加すると、前記比熱が増加した前記対象物に対応する必要エネルギー量を、前記複数の前記遠赤外線発生手段の内の可動していない前記遠赤外線発生手段を追加稼働させ、又は前記稼働中の複数の前記遠赤外線発生手段の内必要な数の遠赤外線発生手段の放射エネルギー量を増加させて、又は上記二つの稼働手段を組み合わせて、前記対象物に照射する前記遠赤外線の前記放射エネルギー量を増加させて供給し、前記解凍を進める制御を行い、前記対象物の解凍時における前記対象物の一様な解凍を可能とし、解凍対象物の品質を維持すると良い。
【0057】
更に、本発明の冷解凍装置の制御方法は、前記対象物の冷凍温度の時間特性を示す冷凍曲線において、冷凍が進み、最大氷結晶生成帯(-5℃~融解温度(氷結温度))から約-10℃の温度帯で、時間(T)の微小変化(dt)に対する前記対象物の温度(X)の微小変化(dx)の変化(dx/dt)が、冷凍開始から負(マイナス)の値になっていて、次に正(プラス)の値に変化し、かつ、短時間後に負(マイナス)の方向に変化する温度変化を計測するとき、前記対象物の過冷却と判断すると良い。
【0058】
更に、本発明の冷解凍装置の制御方法は、前記変化(dx/dt)は、前記冷凍開始から負の値になっていて、正の値に変化し、かつ、所定時間が経過しても正の値を維持するとき、前記制御手段によって前記冷解凍装置の故障と判断すると良い。
【0059】
以下、本発明の冷解凍装置の構成と機能、及び本発明の冷解凍装置の制御方法については、詳しく説明する。
【0060】
対象物を冷凍するとき、冷凍対象物の表面から内部に冷凍が進む。この時、急速冷凍では、冷凍対象物の表面から冷凍し、解凍対象物の表面と内部の温度差を大きくして、冷凍対象物の表面から冷凍対象物内部への冷熱の伝導速度を上げ、細胞内の氷結晶の成長を抑え、発生する氷の微細化を図る。
【0061】
過冷却冷凍では、過冷却が破れるとき冷凍対象物の細胞内の氷が急激に発生するため個々の氷の結晶は成長せず微細なままに留まる。そして、さらに冷凍を進めるとき、冷凍対象物の冷凍温度が下がるに従い、氷の熱伝導率の値が上昇し、同時に氷の比熱が小さくなるため、冷凍対象物の表面の温度を下げ表面と内部の温度差を大きくする事により、表面から内部への冷熱の急速な熱伝導を図ることが可能になり、冷凍を深化することが出来る。
【0062】
詳しくは、本発明は肉類、魚介類に関わらず、冷凍時も解凍時も、最大氷結晶生成帯(融解温度(氷結温度)~約-5℃)から-10℃程度を最短時間(急速冷凍技術では約30分)で通過させ、冷凍時及び解凍時に、対象物の細胞内の氷結晶の微細化をはかり、氷結晶の肥大化により氷結晶が細胞膜を破壊し、細胞液(旨味でありドリップ)の発生を抑えるために、氷の結晶成長を抑える。
【0063】
本発明は、冷凍及び解凍対象物の冷凍及び解凍における温度-時間推移を、すなわち冷凍及び解凍対象物に共通の又は固有の下記に記載された温度そしてその温度を保持する時間等を、考慮に入れて、冷凍そして冷凍保存及び解凍そして冷蔵の機能を備える。
【0064】
本発明の冷解凍装置は、対象物に見合った冷凍温度やその冷凍時間及び冷凍保存やその冷凍保存時間、そして解凍温度やその解凍時間、及び必要に応じて解凍後の対象物の品質を維持するための冷蔵温度やその冷蔵時間等に係わる必要なプロセスを組み込み、データのインプット機能や制御システムを搭載する。
【0065】
解凍時は、冷凍された対象物を、解凍対象物として、解凍対象物の表面の温度を上げ、解凍対象物の表面と解凍対象物の内部との熱落差を大きくして急速解凍を実現する。この時、解凍対象物に発生する現象は、冷凍する場合とは逆の現象が生じ、表面の温度が上がるに従い氷の比熱が大きくなり、氷の熱伝導率も下がる。そのため解凍スピードはゆっくりとなり対象物芯部の温度上昇のスピードが落ちる。
【0066】
この時、外部から熱量を与えすぎると、解凍対象物の表面の温度上昇が先行し、解凍対象物の表面温度が融解(氷結)温度以上となり、解凍対象物表面の全面又は一部が融解し、解凍対象物の表面に水が生じる場合がある。水は氷よりも熱伝導率が低く、また水や温度の高い氷の比熱は温度の低い氷の比熱よりも大きくなるため、解凍対象物の表面から内部への熱伝導が下がり、解凍対象物の芯部の温度が上昇しないまま冷凍状態で残り消費者にわたることになる。
【0067】
そのような状態が生じることを防ぐために、解凍対象物を解凍するとき、解凍対象物の表面温度を解凍対象物の融解温度(氷結温度)又は融解温度(氷結温度)よりも多少低い冷凍温度の状態に維持し、解凍対象物表面から内部への熱伝導を、氷の状態で維持して解凍対象物の内部の温度上昇を図り、解凍対象物の内部の温度を解凍対象物の表面の温度に近づけ、表面及び内部共に可能な限り同じ温度の融解温度(氷結温度)(
図5~
図7のX1を参照。以下同様。)で又は融解温度(氷結温度)より多少低い温度(
図5~
図7のX2を参照。以下同様。)の間の温度での解凍を実現する。
【0068】
解凍に当たっては、急速解凍を図るため、解凍対象物の表面のみならず内部も早期に解凍するために、大気による吸収が少なく、同時に水や氷による吸収率の高い、波長の、0℃(ピーク波長で10.6μm相当の温度)~89℃(ピーク波長が8μm相当の温度)の間に相当する温度の遠赤外線を解凍対象物の表面に照射し、解凍対象物の内部に対して解凍対象物の表面の温度を上げ解凍対象物の表面と内部の熱落差を大きくして、内部への熱伝導を上げ、解凍スピードを上げることにより急速解凍する。
【0069】
解凍対象物に一定の熱量を与え、解凍対象物の解凍を図るとき、解凍対象物の温度-時間特性は、解凍対象物の温度が低く比熱が小さい状態では急速に温度が上昇するが、解凍対象物の温度が上昇し比熱が大きくなるに従い、単位温度を上げるための必要熱量が増大するため、解凍対象物の温度上昇は緩やかになる。-10℃程度から最大氷結晶生成帯(約-5℃~解凍対象物の融解温度(氷結温度)を通過するとき、解凍対象物の温度上昇は徐々に緩慢になり、解凍対象物の融解温度(氷結温度)(温度X1)に接近する。
【0070】
解凍対象物に一定の熱量を与え、解凍対象物の解凍を図るとき、解凍対象物の温度上昇と共に、解凍対象物の時間-温度特性(T,X)において、時間(T)及び温度(X)が共にゼロである(0,0)に一番近い点(Tn,Xn)を近似計算で算出し、その点(Tn,Xn)を温度制御のポイントとして利用し、遠赤外線の照射を弱め又は止め(中断し)、また解凍対象物の融解温度(氷結温度)(X1)に相当する又は少し低い温度(X2)に相当する温度の冷熱の供給に切り替え、解凍対象物の温度を融解温度(氷結温度)(X1)又は融解温度(氷結温度)(X1)よりも少し低い温度(X2)又は上記X1~X2の間の温度に収斂することを可能とすることにより、急速解凍する。
【0071】
冷凍・解凍及び冷蔵対象物の温度計測を適確に行うために、単数または複数の必要な温度センサーを設置し、冷凍及び解凍そして冷蔵が的確に実行されていることを確認する。そのため、異常が生じた場合は、冷凍機能、遠赤外線の照射機能及び冷蔵機能を精査し、解凍対象物の温度制御の不具合の有無のチェックをそして必要に応じて修正を可能とし、冷解凍実施者(使用者)が期待するスケジュールに従い冷凍・冷凍保存・解凍そして融解温度(氷結温度)又は氷結温度(融解温度)よりも少し低い温度又は上記X1~X2の間の温度で、冷蔵状態で維持する。
【発明の効果】
【0072】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明によると、本発明の冷解凍装置を利用し、対象物を一つの装置で、冷凍、冷凍保存、解凍そして冷蔵までを、適切な温度と時間の制御のもと予め設定したスケジュールに従って行うことが可能になった。
【0073】
本発明によると、本発明の冷解凍装置を利用することで、冷凍、冷凍保存、解凍そして冷蔵までを、一つの装置で可能とする一つの冷解凍システム装置として提供することが可能になった。
【0074】
本発明の冷解凍装置を誰でも容易に使用出来るようになれば、本発明の冷解凍装置を利用し産地で冷凍を行い、本発明の冷解凍装置をコンテナーとして輸送し、消費地で解凍そして冷蔵保管そして販売に繋げることが可能になる。いわば対象物を冷凍装置や解凍装置そしてまた冷蔵装置の間を、その都度、工数をかけて移動させる必要もなくなり、対象物の生産後の冷凍から冷凍保存、解凍そして冷蔵した対象物が消費者にわたるまでの工数を低減できる。これに併せ品質向上も期待されるので、様々な冷凍対象物として扱われる生産物の輸出等含め、関連する産業の拡大が期待される。
【0075】
本発明の冷解凍装置の利用により、緻密な温度や時間管理に基づく冷解凍のスケジュールによる稼働を冷凍・冷凍保存・解凍・冷蔵システムに導入することで、装置の使用者も冷解凍を容易に行うことが出来、同時に消費者にさらなる安全と安心な食品をもたらすことが可能になった。
【0076】
本発明の冷解凍装置の利用により、高ATP(アデノシン三リン酸)量のカツオ、イワシ、メバチ等の冷凍肉を-10℃程度で一定期間保管し、その後、急速解凍しても解凍硬直が起きず、pHが高く維持され、ドリップの発生を抑制することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態の冷解凍装置1を示す図であり、
図1(A)は冷解凍装置1の外観を示す概念図であり、
図1(B)は冷解凍装置1の棚を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態の冷解凍装置1の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態の冷解凍装置1の遠赤外線ヒーターの例で、棒状遠赤外線ヒーターを示す概念図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態の冷解凍装置1の遠赤外線ヒーターの例で、遠赤外線ヒーティングマットの例を示す概念図である。
【
図5】
図5は、過冷却の温度特性を表すグラフである。
【
図6】
図6は、対象物を冷凍・冷凍保存・解凍・冷蔵保存する場合の温度変化を表すグラフである。
【
図7】
図7は、急速解凍における解凍曲線の模式図と時間・温度特性の変曲点を表すグラフである。
【
図8】
図8は、氷の比熱を表すグラフであり、解凍開始温度から氷結温度までの氷の比熱の範囲を表すグラフである。
【
図9】
図9は、氷の熱伝導率を表すグラフであり、解凍開始温度から氷結温度までの氷の熱伝導率を表すグラフである。
【
図11】
図11は、大気による赤外線の吸収を表すグラフである。
【
図12】
図12は、水の赤外線吸収波長依存性を示すグラフである。
【
図13】
図13は、水の赤外線吸収波長依存性を示すグラフである。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態の冷解凍装置1の遠赤外線ヒーターの他の例で、棒状遠赤外線ヒーターを示す概念図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態の冷解凍装置1の遠赤外線ヒーターの他の例で、遠赤外線ヒーティングマットの例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明の実施の形態に関し図面を参照しながら説明する。
図1には、本発明の実施の形態の冷解凍装置1の概要を、
図2には、本発明の実施の形態の冷解凍装置1の構成をブロック図で図示している。本発明の実施の形態の冷解凍装置1は、冷凍・冷凍保存・解凍そして冷蔵機能を有する装置である。冷解凍装置1は、基本的に、予め設定された条件、例えば温度データと時間データに基づいて自動運転する。また、冷解凍装置1の使用者は、対象物の特性に見合った温度や時間を、冷解凍装置1を稼働する制御用データとして使用し入力することによって、冷解凍装置1を近接又は遠隔で操作して稼働させることができる。
【0079】
冷解凍装置1は、冷凍においては、細胞から細胞液(旨味:ドリップ)の流出を防止するため、急速冷凍の機能に加え、過冷却冷凍の発生を温度変化で感知する機能を有する。冷解凍装置1は、解凍においては、遠赤外線ヒーター14を装置内に設置し、遠赤外線ヒーター14から放射された空気の窓と言われるそして氷に吸収されやすい8~10.6μmの遠赤外線を解凍対象物に照射し、解凍対象物表面の温度を上昇させ急速解凍を実施する。冷解凍装置1は、冷蔵においては、期待される冷蔵温度で、対象物を冷蔵する機能を有する。
【0080】
冷凍及び解凍は、解凍対象物の表面と芯部との熱落差を大きくし、その大きな熱落差を利用し、特に芯部の冷凍及び解凍を急速に進める。そして、冷凍時及び解凍時には、対象物の表面温度が、「-10℃から最大氷結晶生成帯(約-5度と融解温度(氷結温度)(X1))の間」又は「-10℃から、融解温度(氷結温度)(X1)に近く融解温度(氷結温度)(X1)より低い温度(X2)の間」を急速に通過させることにより実現する。
【0081】
本発明の冷解凍装置1は、冷解凍システムの一つの装置として、一つの統合的なプロセスで、装置に搭載した冷解凍・冷蔵制御装置18により、装置の使用者が、希望するスケジュールで、対象物の冷凍・冷凍保存・解凍そして冷蔵保存までを連続して稼働することができる。
【0082】
本発明の、冷凍・冷凍保存・解凍そして冷蔵保存を、一つの装置で実施出来る冷解凍装置1で、装置の使用者が、様々な対象物を、希望するスケジュールで、細胞液(旨味:ドリップ)の流出を防ぎつつ、寄生虫や細菌の死滅や細菌の増殖等を防ぎ、同時に褐変防止を防ぐことができ、いわば対象物の品質の劣化を防いだ高品質な解凍品を提供することができる。
【0083】
本発明の冷解凍装置1は、冷凍・冷凍保存・解凍そして冷蔵保存に係わる機能を搭載する。なお、本発明の冷解凍装置1は、冷凍装置としても解凍装置としても個別に利用することができる。また、冷凍装置には上記冷解凍装置の冷凍・冷凍保存に係わる機能を搭載、又は、解凍装置には上記冷解凍装置の解凍に係わる機能を搭載、そしていずれの冷凍装置又は解凍装置も冷蔵機能を搭載し、それぞれの装置において現在の販売されている製品以上に高品質の解凍対象物を提供することができる。
【0084】
本発明の冷解凍装置1を冷凍に使用する時は、細胞から細胞液(旨味:ドリップ)の流出を防ぐため、急速冷凍や過冷却冷凍が適用されるが、さらに寄生虫や細菌を殺し、又は細菌の増殖を防止そして褐変防止等のため希望する温度で、そして必要とする時間で冷凍を実施し、そして冷凍保存ができる。
【0085】
空気の窓と言われる遠赤外線の特性、言い換えると大気による赤外線の吸収特性は、
図11のグラフに図示している。
図12のグラフに、水の赤外線吸収波長依存性を示している。急速解凍においては、対象物の温度の上昇と共に氷の比熱が上昇し(
図8の氷の比熱を参照。)、また、熱伝導率が低下し(
図9の氷の熱伝導率を参照。)、氷が融解し水になると、熱伝導率はさらに低下する。
【0086】
解凍対象物に遠赤外線ヒーター14により、予め設定した、氷が多く吸収する波長に相当する遠赤外線で、解凍対象物に時間的に一定の熱量を与え、解凍対象物の解凍を図る。このとき、解凍対象物の温度上昇の過程で、比熱の値の上昇に伴い、解凍対象物の時間(T)・温度(X)特性が緩やかになる変曲点(Tn,Xn)を感知し、この変曲点を、遠赤外線の照射を弱めるか止める(中断する)制御点として利用する。また、この変曲点は、新たに、対象物の融解温度(氷結温度)(X1)に相当する冷熱、又は、(X1)より少し低い温度(X2)の冷熱を供給する制御点としても利用する。
【0087】
解凍対象物の解凍にあたり、ピーク波長が8μmから10.6μmの間で、予め設定した氷が多く吸収する波長の遠赤外線を放射する遠赤外線ヒーター14を稼働する。対象物に照射する遠赤外線の放射エネルギーを増やす場合は、遠赤外線ヒーター14を用意し対応することができる。例えば、予め設定した電圧で、予め設定した温度に相当する波長の遠赤外線を放射する遠赤外線ヒーター14の稼働数を増やして対応する。さらに対象物に照射する遠赤外線の放射エネルギー量の微調整を必要とする場合も、放射エネルギー量が小さな遠赤外線ヒーターを用意・設置し、上記の遠赤外線ヒーターと組合せて対応する。例えば、前述の予め設定した温度ですなわち予め設定した波長の遠赤外線を放射する放射エネルギー量が小さな遠赤外線ヒーターを、上記のメインの遠赤外線ヒーターと組合せて稼働することにより、微調整する。
【0088】
そして本手法を、必要に応じて、後述する急速解凍及び超急速解凍に適用する。冷解凍装置1に設置した同じエネルギーを放射する遠赤外線ヒーター14の設置数のうち、稼働する遠赤外線ヒーター14の数は、
図8に示した「氷の比熱」のグラフに示す氷の温度対比熱の推移を利用し、解凍開始時の冷凍温度における氷の比熱の数値「α」に対し、融解(氷結)温度X1になるまで、解凍の進展と共に氷の温度が上昇し氷の比熱が上昇し、氷の比熱の数値が「β1,β2,・・・βn」と変化するとき、増やして行く。
【0089】
すなわち、比熱β1に到達した時点で、次のβ2の達成を目指すように、例えば稼働する遠赤外線ヒーターに印可する電圧を上昇させるか又は稼働する遠赤外線ヒーター数を増やすか又はその組合せで遠赤外線放射エネルギー量を「β1/α、β2/α、・・・βn/α」の近似値で増加させ、より超急速解凍を可能とする。
【0090】
上述のように急速解凍をはかる場合、解凍対象物の温度が融解温度(氷結温度)に近づき解凍される場合、解凍対象物の温度が解凍対象物の温度を期待する温度で保持するために、冷熱を熱交換室から供給することで、対象物の温度を、融解温度(氷結温度)又は融解温度(氷結温度)よりも少し低い温度に保持する制御をする。
【0091】
解凍対象物の表面は、乾燥を防ぎ融解しない氷の状態に保持し、表面から芯部への氷の状態での熱伝導率を維持した状態で、対象物の表面の温度そして併せ芯部の温度を対象物の融解(氷結)温度(X1)に導く。この時、遠赤外線の照射による解凍は、ファンヒーターのような温風利用による解凍ではないので、対象物の表面の乾燥を穏やかにする効果がある。
【0092】
本発明の冷解凍装置1は、対象物の急速解凍後、対象物を利用するまで時間がある場合には、対象物の品質を維持するために、対象物の融解温度(氷結温度)、又は、それよりも若干上下する冷蔵温度で、又は使用者が期待する温度で保持する。
【0093】
本発明の冷解凍装置1は、冷解凍庫2と熱交換室3から構成され、冷凍及び冷蔵時には熱交換室3に設置された冷解凍・冷蔵保存用機能部12からファン15により冷熱を冷解凍庫2に導入する。解凍時には、冷解凍庫2に設置された遠赤外線ヒーター14により遠赤外線を対象物に放射するとき、冷解凍・冷蔵制御装置18により希望するスケジュールで、急速冷凍・冷凍保存及び急速解凍そして冷蔵で稼働する。これにより、細胞からの細胞液(旨味:ドリップ)の流出を防ぐことができる。
【実施例0094】
以下に、本発明の実施の形態の実施例を説明する。魚介類・畜産生産物・農産物・医薬品等を、一つの装置で冷凍・冷凍保存と解凍の機能、そして冷蔵の機能を有する装置としての冷解凍装置1を説明する。冷解凍装置1は、食品の地産地消の場合、食品を装置内に冷凍状態で積載したまま産地から消費地まで輸送し、消費地で同じ装置を使用して対象物(商品)を解凍する場合、有効な装置である。例えば、食品以外にも利用でき、例えば、医薬品を装置内に冷凍状態で輸送しそれを使用先で解凍し使用する場合等にも有効な装置である。
【0095】
冷解凍装置1は、これらの場合、対象物を装置内に冷凍・冷凍保存し、そしてその解凍及び冷蔵するために別の装置を必要とせず、同じ装置で解凍及び冷蔵する機能を有する。すなわち、冷解凍装置1は、例えば人手で、対象物を、冷凍・冷凍保存する装置と、その解凍・冷蔵する装置との間を移動することなく、同一設備で冷凍・冷凍保存・解凍そして冷蔵することを可能とする統合機能を有する装置である。
【0096】
冷解凍装置1に搭載する機能は、機能毎に別々に備えることができる。例えば、冷解凍装置1は、冷凍・冷凍保存に関しては冷凍装置として稼働し、解凍に関しては解凍装置として稼働し、冷蔵に関しては冷蔵装置として稼働する、それぞれ個別に稼働を可能とする機能を備えた冷解凍装置1にすることができる。
【0097】
魚介類・畜産生産物・農産物・医薬品等の冷凍・冷凍保存・解凍・冷蔵等を行う場合、寄生虫、細菌等を殺し、又は、細菌の増殖を抑制する場合、冷凍温度と冷凍時間、解凍温度と解凍時間、冷蔵温度と冷蔵時間等の温度と時間の制御が重要になる。対象品の温度と時間の関係では、例えば、冷蔵熟成のための温度と保持時間、アニサキスを冷凍で殺す温度と保持時間、細菌の増殖を抑える温度と保持時間、魚肉の褐変を防止する温度と保持時間、ワクチンを安定冷凍する温度とその冷蔵温度そして保持時間が重要である。
【0098】
対象物の冷凍・冷凍保存・解凍・冷蔵に関する、様々な温度と時間に関わる、ノウハウに基づく様々な制御をすることができる。例えば、上述たように対象物により解凍時に-10℃程度で一定時間保持し、その後改めて解凍する事により、解凍硬直が生じないようにして、細胞液(旨味:ドリップ)の発生を抑える。
【0099】
[冷解凍装置1の構成]
図1に図示したように、冷解凍装置1は、冷解凍庫2と熱交換室3からなる。冷解凍庫2と熱交換室3は、一体の筐体に入っても、別々の筐体に格納され各筐体が互いに固定されても良い。冷解凍庫2と熱交換室3の底面に架台5が設置されている。架台5は、冷解凍装置1の架台であり、底面に摺動手段、ロック機能付きキャスターを有することができる。
【0100】
冷解凍装置1は、図示しないが、運ぶときに利用する、取っ手、ハンドル等を備えることができる。冷解凍庫2と熱交換室3は、隣接して設置され、その間は、隔壁4が設けられている。冷解凍庫2と熱交換室3は、両方とも箱型の形状になっている。冷解凍庫2の中には、
図1(B)に図示したような棚9が設置され、棚9には冷解凍対象物、冷凍対象物、冷凍保存対象物、解凍対象物、冷蔵対象物等が置かれ、冷解凍、冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵等の、目的に見合った処理が行われる。
【0101】
冷解凍対象物、冷凍対象物、冷凍保存対象物、解凍対象物、冷蔵対象物等は、以下に対象物、被冷凍物、被解凍物、被冷蔵物等と書くこともある冷解凍装置1は、棚9を内蔵し、棚9の棚板7に対象物を置いて処理しながら、搬送されることができる。棚9は、対象物を冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵するとき、これらの処理に必要な温度、遠赤外線照射強度に耐久性がある材料で製造される。棚9は、処理する食品等に影響しない、人の健康にも無害な材料で製造される。
【0102】
棚9は、本例では、棒状の複数の棚の柱8と棚の梁10から構成され、例えば、3段2列の構成であり、各段に棚板7を横に設置したものである。対象物は、棚板7の上に置かれる。棚板7は、板状のものであり、複数の棚板の孔11を設ける。この棚板の孔11を通して、空気との熱交換が維持され、遠赤外線が通過し対象物に照射される。
【0103】
冷解凍装置1の構成を
図2にブロック図で図示している。冷解凍装置1は、冷解凍庫2、熱交換室3、制御システム部16、データ記憶部17、冷解凍・冷蔵制御装置18等からなる。冷解凍装置1は、
図2に図示したように、表示手段(ディスプレイ)、タッチパネル、パソコン、遠隔通信設備等の操作部、スケジュール設定部等からなる制御システム部16を有する。この制御システム部16は、冷解凍装置1の制御に必要なデータを入出力するためのものである。
【0104】
制御システム部16は、表示手段(ディスプレイ)、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段、パソコン、タブレット等の電子計算機、無線通信アダプタ、ネットワークカード、携帯電話等の無線通信手段を始め、操作者が直接操作しデータを入出力し、制御を必要とする装置と機器に適用できる。無論、無線通信アダプタ等を利用し、操作者が遠隔からデータを入力し、制御システム部16及び冷解凍・冷蔵制御装置18を介して、冷解凍装置1を制御できる。
【0105】
制御システム部16は、入力されたデータに基づいて、冷解凍装置1を操作し、その運転スケジュールを設定する。よって、制御システム部16は、冷解凍装置1の操作部又は操作手段、スケジュール設定部又はスケジュール設定手段とも言うことができる。制御システム部16には、データを表示する表示手段(ディスプレイ)があり、タッチ式のディスプレイを利用し、入出力手段を兼ねる。
【0106】
冷解凍装置1は、冷解凍・冷蔵対象物に関わる温度・時間データを記録するデータ記憶部17からなる。データ記憶部17は、冷解凍装置1が運転中に冷解凍・冷蔵対象物を処理するとき、それに関わる温度データと時間データを取得し、記録するものである。データ記憶部17は、制御システム部16と接続されてデータを送受信し、冷解凍装置1の運転データ取得し、必要であれば、温度データと時間データをデータ記憶部17へ送信し、データ記憶部17はこれを受け取り、上述のスケジュール設定に利用する。
【0107】
データ記憶部17は、他の装置から取得した温度データと時間データを格納し、これを制御システム部16へ送信しても良い。データ記憶部17は、電子データを記録し、保管、他機器へ送信する機能を持つ電子計算機、記録媒体等であることができる。冷解凍・冷蔵制御装置18は、冷解凍・冷蔵制御装置であり、冷解凍装置1の全体の動作を制御する基本ユニットである。
【0108】
冷解凍・冷蔵制御装置18は、冷解凍装置1が対象物を冷凍する制御、冷凍保存する制御、解凍する制御、そして冷蔵する制御等を行う。冷解凍・冷蔵制御装置18は、冷解凍庫2の中の温度の制御(調整)、遠赤外線の照射の制御等を行う。冷解凍装置1は、温度センサー22、ファン15、遠赤外線ヒーター14、冷解凍・冷蔵保存用機能部12、遠赤外線ヒーター用機能部13等からなる。温度センサー22は、冷解凍庫2の中の設置箇所の温度そして対象物の温度を測定するための機器であり、冷解凍庫2の中に設置される。
【0109】
温度センサー22は、例えば、冷解凍庫2の内壁、冷解凍庫2の中に設置された棚9や棚板7等に設置される。温度センサー22は、
図2に図示したように2個あっても、2個以上あってもよく、対象物の種類、冷解凍、冷蔵の目的に合わせて変更できる。ここで、温度センサー22のみを例示しているが、他の臭気等のセンサーがあっても良い。
【0110】
ファン15は、冷解凍庫2の中の空気の流れを制御するものであり、冷解凍庫2の中に冷気を流入させる場合、そして必要に応じて外部の空気を冷解凍庫2の中に流入させる場合や冷解凍庫2の中の空気を外部へ流出させる場合等に利用する。遠赤外線ヒーター14は、遠赤外線を発生させ、解凍対象物に照射するものであり、基本的に導電線又は導電体26や、導電線又は導電体26を囲む、人の健康や食品に無害な防水や絶縁機能を有する絶縁・防水被腹膜30等からなる。
【0111】
遠赤外線ヒーター14は、冷解凍庫2の内壁、棚板7、棚の柱8、棚9、棚の梁10等、そして棚板の上に置かれた処理する対象物(食品等)の温度制御に必要とする箇所に設置される。冷解凍・冷蔵保存用機能部12は、ファン15を介して冷熱を冷解凍庫2に挿入する機能を有し、冷凍・冷蔵保存用制御部20により冷熱温度や冷熱量を制御する。遠赤外線ヒーター用機能部13は、遠赤外線ヒーター14に電圧を印加して照射対象物に遠赤外線を放射するため、遠赤外線ヒーター14に電圧を印加する機能を有し、遠赤外線ヒーター電圧制御部19により電圧を制御する。
【0112】
冷解凍・冷蔵保存用機能部12と遠赤外線ヒーター用機能部13は、熱交換室3に格納される。ファン15は、
図1(A)に図示したように、冷解凍庫2と熱交換室3の間の隔壁4上のファン設置位置6の部分に設置される。ファン15を隔壁4のファン設置位置6の部分に設置し、冷解凍・冷蔵保存用機能部12から冷解凍庫2にファン15を介して冷熱を供給する。ファン15は、冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵の温度変化に対する耐久性を有する。遠赤外線ヒーター14も冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵の温度変化に対する耐久性のある被腹膜を有する。
【0113】
冷解凍・冷蔵制御装置18は、温度制御部21,冷凍・冷蔵保存用制御部20、遠赤外線ヒーター電圧制御部19、温度データ設定部24、熱量データ設定部23等からなる。冷解凍・冷蔵制御装置18は、冷解凍装置1の外壁、熱交換室3内、冷解凍装置1の開閉ドア等に設置した制御装置用筐体に格納されても良い。
【0114】
温度制御部21は、各温度センサー22と接続され、温度センサー22からそのセンシングデータを取得するものであり、取得したデータを温度データ設定部24に出力する。冷凍・冷蔵保存用制御部20は、冷解凍・冷蔵保存用機能部12と接続されており、冷解凍・冷蔵保存用機能部12を制御するためのものである。冷凍・冷蔵保存用制御部20は、冷解凍・冷蔵保存用機能部12を制御することで、ファン15の動作、特に、ファン15の稼働、停止、その回転速度を間接的に制御する。
【0115】
冷解凍・冷蔵保存用機能部12は、冷解凍室2の中の温度を制御するものであり、このため、冷凍・冷蔵保存用制御部20は冷解凍・冷蔵保存用機能部12を介して冷解凍室2の中の温度を制御する。遠赤外線ヒーター電圧制御部19は、遠赤外線ヒーター用機能部13を介して遠赤外線ヒーター14の動作を制御するものであり、特に、遠赤外線ヒーター14の稼働、停止、放射する遠赤外線の出力を制御する。遠赤外線ヒーター14は導電体26や被膜30等から構成され、遠赤外線ヒーター14の被膜30から放射される遠赤外線の波長は印加される電圧等で決定される。
【0116】
[制御]
そのため、遠赤外線ヒーター電圧制御部19は、遠赤外線ヒーター用機能部13を介して遠赤外線ヒーター14に印加する電圧を制御し、結果的に、冷解凍庫2内の対象物を解凍するために解凍対象物に照射する遠赤外線の波長すなわち放射エネルギー量を制御する。
【0117】
温度データ設定部24は、冷解凍庫2内の温度及び対象物の温度に関するデータを温度制御部21から受信し、冷解凍庫2内の温度に関するデータを、制御システム部16そして熱量データ設定部23を介して、冷凍・冷蔵保存用制御部20へ出力し冷解凍時の冷解凍・冷蔵保存用機能部12を制御し冷解凍庫2内の動作温度の設定と制御をするものである。温度データ設定部24は、制御システム部16そして熱量データ設定部23を介して、遠赤外線ヒーター電圧制御部19へ出力し、遠赤外線ヒーター用機能部13を介して、解凍時の遠赤外線ヒーター14に印可する動作電圧の設定と制御を行う。そして解凍対象物に照射する遠赤外線の波長を制御する。
【0118】
冷解凍・冷蔵保存用機能部12から冷解凍庫2内に供給される冷熱の熱量を設定するため、冷解凍庫2内及び対象物の温度に関するデータを温度制御部21、温度データ設定部24、制御システム部16,熱量データ設定部23を介して、冷凍・冷蔵保存用制御部20へ出力し、冷解凍・冷蔵保存用機能部12から冷解凍庫2内に供給する冷熱の熱量を制御する。そして設定した冷凍温度を保持するように冷熱の熱量を制御する。
【0119】
冷解凍庫2に設定される遠赤外線ヒーター14に供給される電力量は、一定数の赤外線ヒーターで解凍を進める場合、一定数の赤外線ヒーター14のそれぞれに一定電圧を印加することにより、対象物に氷が吸収しやすい波長で、予め設定した波長の遠赤外線を放射し対象物を解凍する場合、遠赤外線の照射によって、対象物の温度が上昇するが、これに伴い、対象物の比熱も上昇する。
【0120】
対象物の比熱が上昇しても、それぞれの遠赤外線ヒーター14から放射される遠赤外線の波長を氷が吸収しやすく対象物に適切な波長の範囲で、遠赤外線ヒーター14に供給する解凍用電力量を増大させて、すなわち一定数の遠赤外線ヒーター14に印可する電圧を、それぞれの遠赤外線ヒーター14に印可される電圧が、同じ電圧になるように昇圧し、対象物に照射する遠赤外線放射量を増大させる。
【0121】
一定数の赤外線ヒーターで解凍を進める場合は、制御システム部16で、氷が吸収しやすい遠赤外線の波長に相当する温度になるように、遠赤外線ヒーター14に印可する電圧を指示する。このとき、制御システム部16の指示で、熱量データ設定部23,遠赤外線ヒーター電圧制御部19を介して遠赤外線ヒーター用機能部13で遠赤外線ヒーター14に印可する電圧を設定する。そして、その結果、解凍が進む対象物の温度変化を感知し、温度制御部21,温度データ設定部24を介して、制御システム部16で管理する。
【0122】
また、遠赤外線を放射する遠赤外線ヒーター14の稼働数を増大させることにより、対象物に照射する同じ波長の遠赤外線放射量を増大させることもできる。対象物の温度の上昇に伴う比熱の上昇に伴い、遠赤外線の波長を氷が吸収しやすい波長に定めたまま、より早い急速解凍を進める場合は、遠赤外線を放射する遠赤外線ヒーター14の数を増大させ、遠赤外線の放射量を増やし、解凍を進める。
図8に記載した氷の比熱量の増加に従い、稼働する遠赤外線ヒーター14の数を増加させて対応する。
【0123】
遠赤外線ヒーター14から放射する遠赤外線の照射により対象物の温度が上昇するとき、温度制御部21、温度データ設定部24、制御システム部16、熱量データ設定部23、そして遠赤外線ヒーター電圧制御部19を介して、遠赤外線ヒーター用機能部13に接続される稼働する遠赤外線ヒーター14の数を増やして対応する。
【0124】
いずれの解凍方法でも、対象物の温度が、対象物の融解温度(氷結温度)、又は、それよりも若干上下する冷蔵温度、又は使用者が期待する温度に到達したことを温度制御部21で感知するとき、遠赤外線ヒーター14の稼働を弱める(稼動する遠赤外線ヒーター14の数を減らす)か止める操作をし、温度データ設定部24、制御システム部、熱量データ設定部23、そして遠赤外線ヒーター電圧制御部19を介して遠赤外線ヒーター用機能部13で、稼働する遠赤外線ヒーター14の数を減少させるか、ストップする。
【0125】
上述したように、いずれの解凍方法でも、対象物の温度が、対象物の融解温度(氷結温度)、又は、それよりも若干上下する冷蔵温度、又は、使用者が期待する温度に到達したとき、制御システム部16の指示に基づき、熱量データ設定部23,そして冷凍・冷蔵保存用制御部20を介して、冷解凍室2に、冷解凍・冷蔵保存用機能部12から希望する温度の冷熱の供給をする制御を行う。
【0126】
熱量データ設定部23と温度データ設定部24は、それぞれ制御システム部16に接続され、制御システム部16から、冷解凍装置1の稼働に必要な温度データ、熱量データ、時間データ等を受信する。同時に、熱量データ設定部23、そして温度データ設定部24に入力した温度データ、熱量データ、時間データ等を制御システム部16へ出力する。
【0127】
冷解凍装置1は、冷凍・冷凍保存・解凍・冷蔵を行う場合、対象物毎のデータに基づき、必要とされる様々なデータが制御システム部16等にインプットされ、この制御システム部16等に接続された冷解凍・冷蔵制御装置18に取り込まれ、装置の使用者の希望するスケジュールにより装置を稼働する。その冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵のスケジュールは、事前にデータ記憶部17に搭載された様々なデータにより妥当性の検証をすることができ、そして他の装置、当該装置等で新たに取得されたデータも冷解凍・冷蔵対象物に関わる温度・時間データがデータ記憶部17にインプットされ、制御システム部16を介して、冷解凍装置1に取り込まれ利用されることが可能である。
【0128】
データ記憶部17にインプットされた冷解凍・冷蔵対象物に関わる温度・時間データは、
図2に図示したように、冷解凍装置1に設置された冷解凍・冷蔵保存用機能部12、解凍に使用する遠赤外線ヒーター用機能部13の制御に利用される。また、冷解凍装置1において、冷解凍装置1に備えられた温度センサー22、必要に応じて設置されたもので臭い等の計測可能なセンサー等からの複数のデータを集約・管理し、データを、そしてそれらの分析結果を、冷解凍・冷蔵対象物に関わる温度・時間データをデータ記憶部17にインプットし可視化を可能とする。
【0129】
冷解凍装置1は、対象物に係わる冷凍・冷凍保存から解凍を経て冷蔵までの各プロセスを、一つの統合した統合プロセスとして、システム的に、最適な温度時間制御により稼働される。更に、冷解凍装置1は、冷凍、冷凍保存、解凍、そして冷蔵保存をするとき、その稼働を様々なデータと比較し、使用者の希望やノウハウと比較し、そのスケジュールの最適化を可能とする。使用者の希望やノウハウ等のデータは、データ記憶部17に保存され、制御システム部16を介して、入力される。
【0130】
冷解凍装置1が複数設置されている場合にも、それぞれの装置のおかれた状況に見合った形で、必要とするデータを広域で集約分析し、集中制御又は分散制御のために、また必要とする広域運用システムに適用することができる。冷解凍装置1は、複数まとまって全体を制御する制御装置に接続され制御されることができるとともに、無線通信手段で、サーバ等の電子計算機に接続されて、個別に又はまとまって制御されることができる。
【0131】
冷解凍装置1は、一つの装置で冷凍機能、冷凍保存機能、解凍機能と冷蔵機能を有するが、冷凍・冷凍保存および冷蔵のみの機能と、解凍および冷蔵のみの機能を、別々に利用することもできる。冷解凍装置1は、細胞内の氷の成長による細胞液(旨味:ドリップ)の流出を避けるために、冷凍機能で冷凍する場合は、急速冷凍、又は、対象物にもよるが過冷却冷凍が採用され、解凍機能で解凍する場合は、急速解凍または超急速解凍が採用される。
【0132】
図5に過冷却の時間・温度特性の模式図を図示している。冷解凍装置1において、この模式図に図示したように、過冷却冷凍は、食品等を氷の核が生じないように静かにゆっくりと冷却するときに発生する過冷却の現象を利用する。過冷却による細胞内の氷の結晶は、急速冷凍よりも細胞内の氷の成長が小さく、過冷却は通常、最大氷結晶生成帯(融解温度(氷結温度)~-5℃)から-10℃程度までの温度域で発生する。
【0133】
なお、過冷却は全ての冷凍対象物に対し発生するものではない。従い、冷解凍装置1の使用者が、冷凍対象物で過冷却機能の利用中に過冷却が生じたとき、過冷却の発生を検知できれば、使用者は、その後、冷解凍装置1の使用時、同じ対象物に対して、この検知データを利用し、過冷却機能を利用したスケジュールに基づいた冷凍の実施を可能とする。そして、過冷却が発生しなかったとき、冷解凍装置1の制御として必要に応じて急速冷凍に切り替える制御の搭載も可能である。
【0134】
冷解凍装置1において、冷凍対象物が冷凍過程で、過冷却現象を起こしたことを検知すること、又は、冷凍機能に異常が出るような故障が生じたかを検知することが重要になる。そこで、過冷却現象又は冷凍機能の異常を検知するために、温度変化又は温度時間特性の変化を検知する機能を搭載することが重要になる。
【0135】
図5に図示した過冷却の時間温度特性の模式図のように、冷凍開始時間をt=0として、時間軸Tを横軸として、縦軸に温度軸Xをとり、解凍対象物の冷凍温度の時間特性を描く。このとき、冷凍対象物の冷凍開始からの経過時間をTkとし、そのときの温度をXkとするとき、時間と温度の関係の座標を(Tk、Xk)で表す。時間Tkのとき、この時間Tkに対する微小変化の時間をdtと表し、時間Tkのときの対象物の温度Xkの、dtの時間で変化する温度をdxとする。このとき、冷凍開始時からXの値が負に変化するときをマイナス(-)で表し、正に変化する時をプラス(+)で表す。
【0136】
これに基づき、計測する対象物の温度がマイナス(-)温度方向からプラス(+)温度方向に変化するときはプラス(+)として扱い、プラス(+)温度方向からマイナス(-)温度方向に変化するときはマイナス(-)として扱う。
図5に示すように、この変化を微小変化で、変化する方向を感知するために、微小変化(dx/dt)がマイナス(-)からプラス(+)に変化し、そして短時間後に対象物の温度がプラス(+)からマイナス(-)に変化することを感知するとき、過冷却が生じたと判断する。
【0137】
冷解凍装置1にはこの判断する機能を組み込む。例えば、温度センサー22で冷解凍庫2内又は対象物の温度を検知、これを温度制御部21が取得し、温度データ設定部24又は制御システム部16(電子計算機)で計算して、判断する。このとき、判断結果が制御システム部16に出力されて表示される。
【0138】
計測する冷凍対象物の温度がマイナス(-)温度方向からプラス(+)温度方向に動き、更に微小変化(dx/dt)もマイナス(-)からプラス(+)に変化したことを感知しただけで、その後の温度の変化が生じない場合は、冷解凍装置1に故障が生じたと判断する。すなわち、計測する対象物の温度がマイナス(-)温度方向からプラス(+)温度方向に動き、その短時間後に対象物の温度がプラス(+)からマイナス(-)に変化せず、同時に(dx/dt)がプラス(+)からマイナス(-)方向に変化せず、いずれもがプラス(+)の値のみを検知するときは、冷解凍装置1に故障が生じたと判断する。上記の故障を判断する方法は通常の冷凍時にも適用を可能とする。
【0139】
冷解凍装置1にはこの判断の機能を組み込む。例えば、温度センサー22で冷解凍庫2内又は対象物の温度を検知、これを温度制御部21が取得し、温度データ設定部24又は制御システム部16(電子計算機)で計算して、冷解凍装置1に故障が生じたと判断する。このとき、判断結果が制御システム部16に出力されて表示されることが可能とする。
【0140】
[遠赤外線のヒーター]
遠赤外線の波長帯は4~1,000μmであるが、
図11の大気による赤外線の吸収グラフに示したように、その中で大気による吸収が少ない3μmから5μm及び8μmから13μmの波長帯は「大気の窓」と言われる。また、8μm~14μmの波長帯は動植物の育成光線に相当する。
【0141】
水が遠赤外線を吸収する吸収波長は、
図12に、水の赤外線吸収波長依存性のグラフに図示したように、水の層の厚みに依存する。水の層の厚みが薄い場合、例えば1μmの場合の吸収率は0.2程度であるが、層の厚みが増えると、3μmの波長領域と有機物の吸収波長と重なる6μmの波長領域を中心に、吸収率が増大し、層の厚みが1mmになると遠赤外線をほぼ100%吸収する。
【0142】
図13に水の層の厚みが0.1mm以上の場合の遠赤外線の吸収率と氷の波長に対する吸収率を示す。水の場合は、0.1mm以上の厚さで波長が3~5μmのとき、その吸収率は0.96、波長が8~14μmで0.95~0.98である。氷の場合は、波長が3~5μmのとき、その吸収率は0.96、波長が8~14μmで0.98であり、水とほぼ同じ吸収率となっている。
【0143】
以上から、大気による吸収が少なく、氷による吸収が高い遠赤外線の波長は、概略3μmから5μm及び8μmから13μmの波長帯である。従って、解凍対象品の急速解凍のため、概略3μmから5μm及び8μmから13μmの波長帯の遠赤外線を放射する遠赤外線ヒーター14を冷解凍装置1に設置するのが良い。
【0144】
物質から放射される電磁波のピーク波長は、ウイーンの変位則としてλ(μm)=2,897/T(絶対温度=273+物体の温度℃)で表される。前述した3~5μmは、この波長をピーク波長とするとき、遠赤外線を放射する物体の相当する温度は、627~306℃に相当する。このような高温になると、解凍装置1に使用する温度としては高すぎ、赤外線ヒーター14の、解凍に係わる装置を構成する材料の選定が難しく、また解凍における温度制御も難しくなる。
【0145】
温度が0℃に相当するピーク波長は10.6μmであり、前述したピーク波長が8μmに相当する温度は89℃となる。従い、0℃~89℃に相当するピーク波長が8~10.6μmの遠赤外線を放射する遠赤外線ヒーター14(
図3と
図14の遠赤外線ヒーター例(A)を参照。)を解凍に使用することが合理的である。以上より、ピーク波長が8~10.6μmの波長の遠赤外線を放射する遠赤外線ヒーター14を冷解凍装置1に設置することが望ましい。
【0146】
解凍対象物は有機物で有るため、有機物が遠赤外線ヒーター14から遠赤外線の照射を受けるとき、遠赤外線の波長が短く輻射熱で有機物が高温になると、有機物を痛めることになる。一方、遠赤外線の波長が長く、有機物の温度が上昇せず低温だと解凍を遅らせることにもなる。そのため、本発明において、家畜や植物の育成に適する温度帯15℃~30℃に相当するピーク波長10.06μm(15℃)~9.56μm(30℃)に相当する波長の遠赤外線を解凍対象物に照射をする事により、解凍対象物の適切な解凍スピードの維持により、解凍対象物の適切な解凍を実現する。
【0147】
[ヒーターの構成と制御]
遠赤外線ヒーター14としては、棒状遠赤外線ヒーター28、遠赤外線ヒーティングマット29等の任意の遠赤外線発生手段を利用することができ、使用状況等に応じて選択することができる。棒状の遠赤外線ヒーター例(A)として、
図3に図示した棒状遠赤外線ヒーター28と、
図14に図示した棒状遠赤外線ヒーター28が例示できる。面状の遠赤外線ヒーター例(B)として、
図4に図示した遠赤外線ヒーティングマット29と、
図15に図示した遠赤外線ヒーティングマット29が例示できる。
【0148】
図3及び
図14に図示したように、遠赤外線ヒーター14が棒状遠赤外線ヒーター28である場合、電圧を印加すると電気を通し抵抗熱で発熱する導電線又は導電体からなる導電体26と、導電体26の短絡を防ぐ絶縁と外部からの水の浸潤を防ぐ防水の役割を保持する、また食品の解凍に使用するときは人の健康や食品に無害な樹脂又はゴムからなる絶縁・防水被覆膜30とから形成され、樹脂又はゴムで覆ったケーブル25を形成する。棒状遠赤外線ヒーター28は、遠赤外線ヒーティング用機能部13には、接続線27で接続されている。
【0149】
図14には、導電体26の両側に接続端子31が設けられ、これに接続線27が接続されている。棒状遠赤外線ヒーター28の導電体26に電圧を印加するとき、導電体26の温度が上昇し、ケーブル25から遠赤外線を放射するとき、遠赤外線は導電体26から放射され被腹膜30を透過する遠赤外線と、被腹膜30が熱せられケーブル25表面から放射される遠赤外線とからなる。
【0150】
この被腹膜30を透過して放射される遠赤外線とケーブル25表面から放射される遠赤外線が対象物に照射されるとき、照射されて発生する温度を希望する温度に設定する事を可能とする。なお、複数の導電体26を、また食品の解凍に使用するときは人の健康や食品に無害な樹脂又はゴムからなる幅の広い2枚の絶縁・防水被覆膜30の間に設置し遠赤外線ヒーティングマット29を形成し、遠赤外線ヒーター14の一つとして使用を可能にする。
【0151】
本発明の冷解凍装置1は、例えば、肉類、魚介類に関わらず冷解凍対象物を、冷凍時に加え、解凍時も、-10℃から最大氷結晶生成帯(-5℃~融解温度(氷結温度))と言われる温度帯を最短時間で通過させ、対象物の細胞内の氷結晶の微細化を図り、氷結晶の肥大化により氷結晶が細胞膜を破壊し細胞液(旨味:ドリップ)の流出を抑えるために氷の結晶成長を抑えるものである。
【0152】
冷解凍装置1は、ファンヒーター等による熱量を有した空気を強制循環させる解凍方式も併せて使用することを可能とする。なお、熱を伴う空気の強制循環による解凍を適用する場合は、空気の飽和蒸気圧を上げるとき、解凍の過程で一旦細胞から出た水分すなわち水蒸気は、解凍対象物の細胞内に戻ることはなく、単に空気から解凍対象物への熱伝達を行うだけになる。また熱を保有する空気を強制的に装置内に循環させると解凍対象物の表面から蒸発が進み乾燥が進むため使用には乾燥を抑えるように注意して使用することが求められる。
【0153】
そのため、冷解凍装置1に、強制的な暖熱供給による装置内の空気の温度上昇による急速解凍を適用しないとき、棒状遠赤外線ヒーター28又は面状(マット状)の遠赤外線ヒーティングマット29の適用によるヒーティング手段を採用する。棒状のヒーティング手段の例は、
図3又は
図14に図示した遠赤外線ヒーターで、面状のヒーティング手段の例は
図4又は
図15に図示した遠赤外線ヒーターである。
【0154】
8μm(89℃相当のピーク波長)~10.6μm(0℃相当のピーク波長)の波長の遠赤外線を解凍対象物の表面に直接照射するために、例えば
図1に図示したように、棚9又は棚板7に棒状遠赤外線ヒーター28(
図3、
図14を参照)又は遠赤外線ヒーティングマット29(
図4、
図15を参照)を設置し、解凍対象物の表面に予め設定した波長の遠赤外線を照射し、解凍対象物の表面温度のデータに基づいて制御を行う。これにより、解凍対象物の表面を融解温度(氷結温度)、又は、それよりも若干低い温度である氷結状態に留め、解凍対象物内部への氷結状態での熱伝導により解凍対象物内部の解凍を早め、解凍対象物の急速解凍を可能とする。
【0155】
冷解凍装置1内の必要な位置に設置する機材は、冷蔵及び冷凍温度そして温度変化に対しても耐久性が有り、そして導電体26から発せられる遠赤外線による熱に対して耐熱性のある材料を適用する。棚9又は棚板7他にヒーティング手段、すなわち棒状遠赤外線ヒーター28又は遠赤外線ヒーティングマット29を設置し、ピーク波長が8μm(89℃に相当)~10.6μm(0℃に相当)の遠赤外線を放射し、棚板7の上に設置した解凍対象物に照射する。これにより、解凍対象物を急速解凍することができる。
【0156】
図3と
図14に図示したように、棒状遠赤外線ヒーター28は、被覆膜30として、食品の解凍に使用するときは健康や食品に無害な、絶縁材であり防水材である樹脂又はゴムで覆ったケーブル25を採用し、棚9の柱8、梁10、棚板7等に設置される。
図4と
図15に図示したように、遠赤外線ヒーティングマット29は、2枚の食品の解凍に使用するときは人の健康や食品に無害な、絶縁・防水被腹膜30、導電体26あるいはケーブル25、接続線27等からなり、遠赤外線ヒーティングマット29は棚板7の表、裏等に設置される。遠赤外線ヒーティングマット29は、遠赤外線ヒーター用機能部13に接続線27で接続されている。
【0157】
図15には、導電体26の両側に接続端子31が設けられ、これに接続線27が接続されている。遠赤外線ヒーター14が棒状遠赤外線ヒーター28のケーブル25を形成する樹脂又はゴムと、遠赤外線ヒーティングマット29の導電体26あるいはケーブル25を覆う樹脂又はゴムからなる被腹膜30は、食品の解凍に使用するときは人の健康や食品に無害な、絶縁機能及び防水機能を有し、繰り返しの温度変化に対し及び冷凍温度に対しても耐久性を有し、同時に耐熱性を有する長寿命の特性を有する。
【0158】
棒状遠赤外線ヒーター28は、導電体26を樹脂又はゴムで覆ったケーブル25(
図3、
図14を参照。)等から形成される。また遠赤外線ヒーティングマット29(
図4、
図15を参照。)は複数の導電体26あるいはケーブル25を樹脂又はゴムからなる幅の広い2枚の絶縁・防水被腹膜30の間に挿入され形成される。そして導電体26は接続線27を介して遠赤外線用機能部13に接続され、電源に接続される。
【0159】
遠赤外線ヒーター14と遠赤外線ヒーター用機能部13は、遠赤外線ヒーティングシステムを形成する。遠赤外線ヒーティングシステムを形成する遠赤外線ヒーター14に印可される電圧は、遠赤外線ヒーター14の温度データ、冷解凍庫内の温度及び冷解凍庫内におかれた解凍対象物の温度データを、温度センサー22で計測し、制御用温度データとして、冷解凍・冷蔵制御装置18そして制御システム部16及び遠赤外線ヒーター用機能部13を介して、遠赤外線ヒーター14に印加する電圧を自動制御する。
【0160】
例えば、制御システム部16の指示により、
図2に示した冷解凍・冷蔵制御装置18内に設けた遠赤外線ヒーター電圧制御部19により、遠赤外線ヒーター用機能部13を介して遠赤外線ヒーター14に印加する電圧を制御する。そして、制御システム部16に目標とする冷凍そして冷凍保存や解凍そして冷蔵保存等の使用者が必要とする温度設定を行い遠赤外線ヒーター14に印加する電圧を制御することができる。
【0161】
[急速解凍と温度制御]
遠赤外線を解凍対象物の表面に照射することにより急速解凍を図るとき、遠赤外線の照射により生じる熱は、解凍対象物の表面から芯部に熱伝導により伝達されるため、芯部の温度上昇は表面の温度上昇に比較し時間遅れが生じる。特に、解凍対象物の肉厚が厚いとき、解凍対象物の表面を解凍できても、芯部は冷凍状態で残ることもある。
【0162】
そのため、冷解凍装置1においては、解凍の過程で、事前に温度を設定し、その温度で遠赤外線の照射を弱め又は中断し、必要に応じてその温度での冷熱を冷解凍庫に供給し、例えば冷解凍・冷蔵保存用機能部12から冷解凍庫に冷熱を供給し、解凍対象物の表面温度を必要とする時間その温度に保つ。そして、その温度が解凍対象物の芯部に伝達される時間を確保し、解凍対象物の表面及び芯部の温度をその温度で同じ温度に近づけ、その後改めて急速解凍を実施することができる。
【0163】
ドリップの発生を抑制するために、例えば、高ATP(アデノシン三リン酸:魚の筋肉の中のエネルギー源)量のカツオ、イワシ、メバチ等の冷凍肉を、-10℃程度で一定期間保管し、その後改めて解凍すると、急速解凍しても解凍硬直が起きず、細胞液(旨味:ドリップ)の発生が抑制される。そこで、カツオ、イワシ、メバチ等の解凍時、pHを高く維持し、細胞液の漏れる量すなわちドリップ率を抑制するため、-10℃より少し低い温度で遠赤外線ヒーター14から解凍対象物への遠赤外線の照射を一旦弱めるか中断する。
【0164】
そして、冷凍装置である冷解凍・冷蔵保存用機能部12から-10℃又は-10℃より少し低い、又は少し高い、温度での冷熱供給に切り替え、解凍対象物の特性に合わせ、予め設定した温度を一定時間保持する。この保持の終了後に改めて、設定温度である約-10℃から最大氷結晶生成帯(-5℃~融解温度(氷結温度))を短時間で通過させるために、新たに設定した電圧に相当する遠赤外線を解凍対象物に照射し急速解凍する。
【0165】
冷凍対象物を冷凍するとき、対象物の表面から内部に熱伝導により冷凍が進む。そのため中心部の冷凍は表面の冷凍に対し時間遅れが生じる。そこで、急速冷凍では、対象物の表面と芯部との熱落差を大きくとり、
図6に図示したように、冷凍を早める急速冷凍の方法が採用されているが、それでも中心部の冷凍は表面の冷凍に対し時間遅れが生じるため最後になる。なお、
図6において、緩慢冷凍に代わり急速冷凍を採用する時、冷凍領域における冷凍曲線は実線から破線に移行し、特に最大氷結晶生成帯から-10℃に至る両者の冷凍曲線の特性の相違をAに、また冷凍保存特性の両者の特性の相違をBに、模式的に図示する。
【0166】
次に、冷凍対象物を解凍するときは、表面に解凍用の時間的に一定の熱量を与え、
図6及び
図7に図示したように、急速解凍を行う。解凍対象物に与える暖熱量が増えると、
図6の場合はCに記載した一点破線の方向に移行する、又は、
図7に図示したように、解凍曲線はAからBへと温度軸の方に移るが、解凍は表面から芯部に熱伝導をもって進み、芯部の解凍は最後になる。
【0167】
解凍のため一定熱量を外部から供給する場合、解凍対象物の解凍曲線は温度上昇と共に緩やかになる。
図7は、横軸に時間、縦軸に温度を取り、対象物を急速解凍するときの解凍曲線を描いたグラフ(様式図)であり、特に、急速解凍時の時間と温度特性の変曲点を図示している。詳しくは後述する。
【0168】
図8に氷の比熱を図示したように、氷の比熱は氷の温度が上昇するとともに上昇する。そして、氷の温度上昇と共に氷の単位温度を上げるための熱量が増大する。そのため、解凍対象物の解凍を進めるとき、解凍対象物の単位温度を上げるための熱量が増大する。
【0169】
一方、
図9に図示したように、氷の熱伝導率(縦軸)は氷の温度(横軸)が上昇するとともに減少する。そのため、急速解凍を図るとき、氷の熱伝導率は温度上昇と共に小さくなるため、解凍対象物の表面の氷の温度が低い間に、解凍対象物表面に急速に熱量を与え、対象物の表面と内部との温度差を大きくして、解凍対象物の表面から解凍対象物の内部への急速な熱伝導を図り芯部の温度上昇を早めることが必要になる。
【0170】
急速冷凍の場合も、急速解凍の場合も、-10℃から最大氷結晶生成帯(-5℃~融解温度(氷結晶)(
図6及び
図7のX1を参照。))の温度帯を早期通過させ、細胞内の氷結晶の成長を抑え、解凍対象物の細胞からの細胞液(旨味:ドリップ)の流出を防ぐ。冷凍そして解凍対象物の細胞から一旦漏れ出た細胞液(旨味:ドリップ)は、細胞内に戻ることはないので、冷凍・解凍時いずれの場合も、冷凍そして解凍対象物の表面から水分の蒸発を防ぐ必要がある。
【0171】
急速冷凍の場合、冷解凍庫に冷熱を供給し冷凍対象物の表面を急速冷凍し、表面からの水分の蒸発を抑制しつつ、対象物の氷結温度から-10℃の通過時に冷凍対象物の細胞内の氷の結晶の成長を抑え細胞が破れるのを防ぐことが必要である。
【0172】
次に、冷凍対象物を解凍するとき、装置内の解凍対象物の表面に、空気での吸収率が低くそして氷での吸収率が高い波長の遠赤外線を照射し急速解凍を行うとき、-10℃から氷結晶生成帯通過時に、解凍対象物の細胞内の氷結晶の成長が細胞を傷つけることにより細胞から細胞液(旨味:ドリップ)が流出するのを防ぎ、表面の乾燥を抑え、同時に解凍対象物の内部への氷の熱伝導率を維持することが必要になる。
【0173】
そのため、解凍対象物の表面を冷凍状態に保ち解凍対象物の表面での氷の融解を防ぐことにより、解凍対象物の表面から内部への氷の熱伝導率を維持し,同時に対象物の内部から表面への細胞液(旨味:ドリップ)の流出を防ぐためにも、解凍対象物の表面での乾燥を防ぐ必要がある。
【0174】
氷が融解し、水分が発生すると蒸発も起き、また水の比熱は氷よりも大きく、水の熱伝導率は氷よりも小さいため、解凍対象物の芯部への熱伝導は悪化する。そのため、遠赤外線ヒーター14を利用し遠赤外線を解凍対象物に照射する場合、解凍が進み、解凍対象物の表面温度が、解凍対象物の融解温度(氷結晶)(
図7のX1を参照。)に近づいた時点で、例えば(
図7)に図示した解凍曲線上の変曲点(Tn,Xn)で、赤外線ヒーター14による遠赤外線の解凍対象物への照射を弱めるか中断する。なお、変曲点(Tn,Xn)とは解凍曲線上で(0,0)に一番近い点とする。
【0175】
解凍対象物の融解温度(氷結晶)(
図7のX1を参照。)又は融解温度(氷結晶)X1よりも若干低い温度(
図7のX2~X1の間の温度)の冷熱を、冷解凍・冷蔵保存用機能部12からの供給し、解凍対象物の表面を氷がある冷凍状態に保持し、そして氷としての熱伝導率を維持し、解凍対象物の芯部の温度を対象物の表面温度と同程度の温度にするように上昇させる。
【0176】
解凍対象物の表面と芯部の温度差を小さくして、解凍対象物芯部の温度の急速上昇を図り、芯部の細胞内の氷結晶の成長を抑制し、芯部で氷が細胞の壁を傷つけることを防ぎ、芯部の細胞内の細胞液(旨味:ドリップ)の細胞外への流出を防ぐ。冷凍対象物を冷凍するとき、最初に、冷凍対象物の表面温度よりも冷解凍装置1内の空気の温度が下がるため、蒸気圧の関係で、水分が冷凍対象物の表面から冷解凍装置1内に蒸発する。その蒸発を抑えるため、急速冷凍を行い、解凍対象物の表面を凍らせ、解凍対象物の表面から水分の蒸発を防ぐ。
【0177】
一方、冷解凍装置1で冷凍された様々な形状の冷凍された対象物を解凍するとき、冷解凍装置1内の必要な位置に遠赤外線ヒーター14を設置し、8μm~10.6μmの波長の間の波長で適切な波長の遠赤外線を遠赤外線ヒーター14から放射し、冷凍された対象物の表面部分に照射し、対象物の表面部分に熱を発生させる。
【0178】
解凍対象物の表面温度は解凍対象物の周囲の空気よりも先に上昇するため、蒸気圧の関係で、冷凍対象物の表面で氷の昇華が生じる。その昇華により、解凍対象物表面に乾燥が生じ、細胞液(旨味:ドリップ)の流出等の悪影響が生じないように、解凍対象物の表面の氷が減少した時点で、解凍対象物の表面を氷で覆うグレージング(氷の薄膜で覆う)を必要に応じて行う。
【0179】
遠赤外線ヒーター14から放射する遠赤外線を解凍対象物に照射し急速解凍するとき、さらにより早い急速解凍を希望するときは、ファン15や必要に応じて設置したファンヒーター等により、温度の高い空気を装置内に供給することにより、さらなる急速解凍ができる。ただこの場合、ファンヒーターから供給される空気の流れで解凍対象物の表面で乾燥が生じるので注意を要する。
【0180】
解凍の場合、冷解凍装置1内又は解凍装置内で自然解凍をする場合に対し、急速解凍で外部から熱エネルギーを、時間的に一様に供給する場合、
図7に図示したように、横軸を時間軸(T軸)に、縦軸を温度軸(X軸)とするとき、外部から解凍用に遠赤外線の放射エネルギー量の供給を増やすと解凍曲線は、例えば
図7に示したようにAからB方向へと、温度軸に近づく。
【0181】
そして、上述した手法により、急速解凍の場合、時間的に一定のエネルギー量を放射する遠赤外線ヒーター14から遠赤外線を冷解凍庫2に照射する同仕様の遠赤外線ヒーター14の数を増やすことで対応する。そして、必要とする放射エネルギー量を微調整する場合は、放射エネルギー量の小さい規模の遠赤外線ヒーター14を複数設置し、期待する遠赤外線の放射エネルギー量に見合うように、放射エネルギー量の小さい規模の遠赤外線ヒーター14の稼働数を組合せ・調整することで微調整を行う。
【0182】
解凍対象物の温度が上昇するにつれて、解凍対象物の比熱が大きくなり、単位温度の上昇に必要な熱量は増加するため、解凍対象物に与える熱量が時間的に一様であると、解凍対象物の解凍曲線である温度上昇は時間とともに緩やかになる。すなわち、
図7に図示したように、温度上昇の時間変化を表す解凍曲線は緩やかになり、座標(0、0)に一番近い点である変曲点(Tn,Xn)を経て、カーブを描いて解凍対象物の融解(氷結)温度X1に近づく。
【0183】
解凍対象物の表面温度が融解(氷結)温度X1に近づき、対象物の表面の氷が融解しはじめると、融解により生じた水は蒸発するため解凍対象物の表面から蒸発熱を奪う。そのため、解凍対象物の温度上昇はとどまり、解凍対象物表面の氷の融解がほぼ終了するまで、解凍対象物の表面温度は、表面の状態にもよるが、0℃程度か、0℃以下にとどまる。そこで、上述の解凍曲線上に、変曲点(Tn,Xn)を見出し、解凍の状況を把握し、解凍対象物の表面温度が融解(氷結)温度X1に近いことを把握することが重要になる。
【0184】
そして、変曲点(Tn,Xn)を、外部から供給する暖熱すなわち遠赤外線ヒーター14から遠赤外線の照射を増減する又は照射を中止するための、又は冷解凍・冷蔵保存用機能部12から冷熱を供給するための制御に使用する。解凍対象物の温度が上昇するとき、解凍対象物の単位温度を上昇させるために必要な熱量が上昇するため、解凍対象物に与える熱量が時間的に一様であるとき、解凍対象物の解凍曲線である、温度上昇と経過時間の変化は緩やかになり、変曲点(Tn,Xn)を経て、カーブを描いて解凍対象物の融解(氷結)温度X1に近づく。
【0185】
この変曲点(Tn,Xn)に相当する時間Tnと温度Xnの位置を、解凍の温度制御に利用することができる。この変曲点(Tn,Xn)に相当する位置を、解凍開始時間を0そして温度をX0とするときその座標を(0,X0)として、同時に解凍開始時間を0とし温度を0とする位置の座標を(0,0)とするとき、解凍曲線の上で、座標(0,0)に一番近い点とする。
【0186】
この対象物の解凍開始(座標(0,X0))からある時間をTとし、その時の温度をXとするとき、時間Tと温度Xの関係の座標を(T,X)で表す。この時間Tに対する微小変化の時間をdTと表し、時間Tの時の対象物の温度Xの、dTの時間で上昇する温度をdXとする。解凍開始時を0とし温度が0の座標を(0,0)とするとき、座標(0,0)と、解凍曲線上のある時間Tでその時の温度X、すなわち座標(T,X)との長さをYとすると、座標(0,0)と座標(T,X)の距離Yは下記で表される。
(Y)2=(T)2+(X)2
【0187】
なお計測開始点を0番目、そして次を1としてn番目の座標を(Tn、Xn)とするとき、そして座標(0,0)と座標(Tn,Xn)との距離をYnで表し、そしてYnが一番短い長さとするとき、すなわち座標(Tn,Xn)が座標(0,0)に一番近い点と仮定するならば、その関係は
図7にも示したが、下記で表される。
(Yn)
2=(Tn)
2+(Xn)
2
…(式1)
【0188】
n番目よりもひとつ前の点(n-1)と(0,0)との距離は、
(Yn+dYn-1)2=(Tn-dTn-1)2+(Xn+dXn-1)2
…(式2)
n番目よりもひとつ後の点(n+1)と(0,0)との距離は、
(Yn+dYn+1)2=(Tn+dTn+1)2+(Xn-dXn+1)2
…(式3)
で表される。
【0189】
この時、(n-1)番目、n番目、(n+1)番目の関係は下記で表される。
Yn<Yn-1
Yn<Yn+1 ...(式4)
そして、上記式1、式2、式3で、対象物の温度・時間特性が変化する点の条件として式4の条件を設定する。
【0190】
座標(0,0)と座標(Tn,Xn)との関係で、座標(0,0)と座標(Tn,Xn)の間の長さが一番短い座標を(Tn,Xn)とするとき、すなわち、微小変化の時間dTを設定すれば、近似的に、対象物の温度・時間特性の変曲点である、座標(0,0)に一番近い座標(Tn,Xn)を見出すことが可能になる。
【0191】
冷解凍装置1内又は解凍装置内の解凍対象物の解凍時に、解凍のために冷解凍装置1又は冷解凍装置1の外部から供給するエネルギーにより解凍するとき、解凍対象物の解凍の進行状況の把握及び温度制御のため、上記式1、式2,式3、式4により求められる座標(Tn,Xn)を、解凍対象物の温度・時間特性の変曲点として、冷解凍装置1の解凍の状況把握及び装置内の温度制御に使用する。
【0192】
解凍の過程で解凍対象物の表面と芯部の温度差を縮小して解凍を進めるような場合、又は、細胞液(旨味:ドリップ)の漏れを抑制するために-10℃又は-10℃に近い温度で一定時間温度をキープするような場合、座標(Tn,Xn)を求めるためのnは、-10℃又は-10℃に近い温度で一定時間のキープが終了するときをもって、計測開始点すなわち0番目として、改めて急速解凍を進める。そして改めて、最初の計測点をn=1として、上述の式1ー式4の計算方式で、変曲点(Tn,Xn)を求める。
すなわち冷解凍庫2に設置した遠赤外線ヒーター14の稼働数を増やすことにより、遠赤外線の放射エネルギー量を増やして、対象物の超急速解凍を実現する。更に、きめ細かな解凍の温度制御をするために、ベース(メイン)の遠赤外線ヒーター14よりも遠赤外線の放射エネルギー量が小さな放射エネルギー量の遠赤外線ヒーター14を設置し対応する。すなわち、ベースとなる遠赤外線ヒーター14を稼働し、そして放射エネルギー量の小さな遠赤外線ヒーター14を加えて稼働させ、必要とする放射エネルギー量の、予め設定した温度に相当する波長の遠赤外線を対象物に照射することができる。
このことにより、解凍対象物に与える熱量が時間的に一様であるときの解凍曲線を利用し解凍する急速解凍の場合のよりもより一層急速解凍ができ、超急速解凍を実現する。解凍対象物の表面の氷の温度を上昇させ解凍するとき、対象物の表面温度をあまりに急激に上昇させると、対象物の表面温度を融解(氷結)温度にキープすることが出来ないまま急激に融解し、表面が融解の状態でも、対象物の芯部が冷凍のままとどまることになる。従って、対象物の表面温度を適切な温度にキープし、そして対象物の表面から芯部への熱伝導は氷の状態での熱伝導をキープして、芯部の解凍が適切に進むようにする事が望ましい。
そのために対象物の表面に照射する遠赤外線の波長を適切な波長の遠赤外線として、発生する温度は適切な温度にキープする必要がある。そのため、超急速解凍で解凍を進める場合も、解凍対象物の表面温度が融解(氷結)温度X1に到達したとき、そして表面温度が融解(氷結)温度X1近づいたとき、冷解凍・冷蔵保存用機能部12により冷熱を供給し、対象物の表面の温度を冷凍状態にキープすることが求められる。
上述の超急速解凍の実現を図るため、冷解凍庫2に供給する遠赤外線の放射エネルギー量を、比熱β1を達成した時点で比熱β2を目指す形で、「β1/α、β2/α、・・・βn/α」で増加させるために、具体的には、以下の必要な遠赤外線ヒーター14を準備し、対応する。すなわちベースとなる同じ放射エネルギー量で、予め設定した電圧で予め設定した温度に相当する波長の遠赤外線を対象物に放射可能な、ベースとなる遠赤外線ヒーター14を必要数準備する。次に、可能な範囲で電圧を上昇させ、遠赤外線ヒーター14から放射される遠赤外線の放射量を増やす。
更に、急速解凍そして超急速解凍いずれの場合でも、きめ細かな解凍の温度制御をするために、遠赤外線の放射エネルギー量がベースの遠赤外線ヒーター14よりも小さな遠赤外線ヒーター14を複数準備し、放射エネルギー量の微調整に対応する。すなわち、予め設定した温度に相当する波長の遠赤外線を放射する、放射エネルギー量の大きな遠赤外線ヒーター14と放射エネルギー量の小さな遠赤外線ヒーター14を複数組み合わせて、必要とする放射エネルギー量の遠赤外線を対象物に照射を可能とする。
超急速解凍の実現を図るとき、冷解凍庫2に供給する遠赤外線の放射エネルギー量を、比熱αのときに比熱β1を目指し、比熱β1を達成した時点で、比熱β2を目指す形で、「β1/α、β2/β1,・・・βn/βn-1」で、順次、増加させ対応することも可能である。
超急速解凍を実施する場合で、解凍の途中で、例えば-10℃で遠赤外線ヒーター14を止め解凍を中断し冷熱を供給し、一定時間後に改めて超急速解凍を開始する場合は、解凍を中断した時点の遠赤外線のエネルギー供給量を改めて供給し、超急速解凍を開始する。そして超急速解凍を再開した時点での比熱をαとし、一定時間ごとの比熱をβ1,β2,・・・βnとして、遠赤外線のエネルギー供給量をβ1/αで増加させ、比熱β1を実現した時点で、遠赤外線のエネルギー供給量を改めてβ2/αに増加して、超急速解凍を実現する。
そのため冷凍スピードはゆっくりとなり温度上昇のスピードが落ちる。この時、外部から熱を与えすぎると、解凍対象物表面の全面又は一部が融解し、解凍対象物の表面に水が生じる。水は、氷よりも熱伝導率が低く、また温度の高い氷の比熱は温度の低い氷の比熱よりも大きくなるため、解凍対象物の表面から内部への熱の伝達が悪くなり、解凍対象物の芯部の温度が上昇しないまま冷凍状態で残ることになる。
解凍対象物を解凍するとき、解凍対象物の部位に温度差が生じた場合は、ベースとなる遠赤外線ヒーター14のうち一部の遠赤外線ヒーター14の放射エネルギー量を調整するか又は、複数準備した、ベースの遠赤外線ヒーター14よりも遠赤外線の放射エネルギー量が小さな遠赤外線ヒーター14を利用し、解凍対象物の温度差のある部位への遠赤外線の放射量の増減を調整し、解凍対象物の解凍が全体的に同じような温度で進展するように微調整することができる。
そして、解凍対象物の温度制御の不具合の有無のチェックをそして必要に応じて、冷解凍装置1の冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵保存等の機能の制御システムを修正する。使用者が設定するスケジュールに従い冷凍、冷凍保存、解凍、冷蔵保存状態の維持等を冷解凍装置1で実現する。
本発明は、食品及び医薬品等を冷凍し搬送する食品及び医薬品保存分野、そしてロジスティック分野に利用すると良い。具体的には、本発明は、食品及び医薬品等の被冷凍物を生産地で冷凍を行い、冷凍した装置ごとコンテナーとして輸送し、消費地で解凍そして冷蔵保存を可能とする。