(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136074
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】新規製剤及び合成方法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20220908BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220908BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220908BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220908BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220908BHJP
C07B 59/00 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
A61K51/04
A61P13/08
A61P35/00
A61K9/08
A61K47/12
C07B59/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022095283
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2020114659の分割
【原出願日】2015-06-30
(31)【優先権主張番号】1411569.5
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】305040710
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ディルスタッド,ナット・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ウィックストロム,トリルド
(72)【発明者】
【氏名】ラジャナヤガム,サヌシャン
(57)【要約】
【課題】不純物プロファイルの改善された、anti-1-アミノ-3-
18F-フルオロシク
ロブチル-1-カルボン酸(
18F-FACBC)を含む組成物、並びにその組成物を得る
ための方法。
【解決手段】anti-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブチル-1-カルボン酸(
18
F-FACBC)を含む陽電子放射断層撮影(PET)トレーサー組成物であって、溶解
アルミニウム(Al)を5.0μg/ml以下しか含まないことを特徴とする組成物、並
びにその組成物を得るための方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
anti-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブチル-1-カルボン酸(18F-FAC
BC)を含む陽電子放射断層撮影(PET)トレーサー組成物であって、溶解アルミニウ
ム(Al)を5.0μg/ml以下しか含まないことを特徴とする組成物。
【請求項2】
当該組成物がアセトニトリル(MeCN)を50μg/ml以下しか含まない、請求項
1に記載のPETトレーサー組成物。
【請求項3】
当該組成物が溶解Alを3.0μg/ml以下しか含まない、請求項1又は請求項2に
記載のPETトレーサー組成物。
【請求項4】
当該組成物が溶解Alを1.5μg/ml以下しか含まない、請求項3に記載のPET
トレーサー組成物。
【請求項5】
95%以上の合成終了時(EOS)放射化学純度(RCP)を有する、請求項1乃至請
求項4のいずれか1項に記載のPETトレーサー組成物。
【請求項6】
98%以上のEOS RCPを有する、請求項5に記載のPETトレーサー組成物。
【請求項7】
99%以上のEOS RCPを有する、請求項6に記載のPETトレーサー組成物。
【請求項8】
50~100mMのクエン酸緩衝液を含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記
載のPETトレーサー組成物。
【請求項9】
PETトレーサー組成物を調製する方法であって、当該方法が、
(a)反応容器内で
18F-フッ化物源と以下の式Iの前駆体化合物とを反応させて、以下
の式IIの化合物を含む反応混合物を得る工程と、
【化1】
(式中、
LGは脱離基であり、
PG
1はカルボキシ保護基であり、
PG
2はアミン保護基である。)
【化2】
(式中、PG
1及びPG
2は式Iで定義した通りである。)
(b)PG
1及びPG
2の除去を実施して、
18F-FACBCを含む反応混合物を得る工程
と、
(c)
18F-FACBCを含む反応混合物を、親水性親油性バランス(HLB)固相に通
すことによって精製する工程と
を含んでいて、精製工程が
18F-FACBCを含む反応混合物をアルミナ固相に通すこと
を含まないことを特徴とする、方法。
【請求項10】
当該方法が、
(a)反応容器内で
18F-フッ化物源と以下の式Iの前駆体化合物とを反応させて、以下
の式IIの化合物を含む反応混合物を得る工程であって、反応工程がアセトニトリル中で
実施される工程と、
【化3】
(式中、
LGは脱離基であり、
PG
1はカルボキシ保護基であり、
PG
2はアミン保護基である。)
【化4】
(式中、PG
1及びPG
2は式Iで定義した通りである。)
(b)式IIの化合物を含む反応混合物を反応容器の外に移し、PG
1の除去を実施して
、以下の式IIIの化合物を含む反応混合物を得る工程と、
【化5】
(式中、PG
2は式Iで定義した通りである。)
(c)PG
1の除去の実施と同時に反応容器に熱を加える工程と、
(d)式IIIの化合物を含む反応混合物を反応容器に戻し、PG
2の除去を実施して、
1
8F-FACBCを含む反応混合物を得る工程と、
(e)
18F-FACBCを含む反応混合物を、親水性親油性バランス(HLB)固相に通
すことによって精製する工程と
を含んでいて、精製工程が
18F-FACBCを含む反応混合物をアルミナ固相に通すこと
を含まないことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
LGが、線状又は枝分れC1-10ハロアルキルスルホン酸置換基、線状又は枝分れC1-10
アルキルスルホン酸置換基、フルオロスルホン酸置換基、又は芳香族スルホン酸置換基で
ある、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
LGが、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ベンゼ
ンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、及びパーフルオロ
アルキルスルホン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
LGが、トリフルオロメタンスルホン酸である、請求項9又は請求項10に記載の方法
。
【請求項14】
PG1が、線状又は枝分れC1-10アルキル鎖又はアリール置換基である、請求項9乃至請
求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
PG1がメチル、エチル、t-ブチル又はフェニルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
PG1がメチル又はエチルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
PG1がエチルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PG2が、カルバメート置換基、アミド置換基、イミド置換基又はアミン置換基である
、請求項9乃至請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
PG2が、t-ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、フタルイミド又はN-
ベンジリデンアミンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PG2がt-ブトキシカルボニルである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)又は(e)で得た精製反応混合物にクエン酸緩衝液を配合する工程をさらに
含む、請求項9乃至請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
自動化されている、請求項9乃至請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
anti-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブチル-1-カルボン酸(18F-FAC
BC)を含む陽電子放射断層撮影(PET)トレーサー組成物であって、PETトレーサ
ーが請求項9乃至請求項22のいずれか1項に記載の方法で調製され、当該組成物が、溶
解アルミニウム(Al)を5.0μg/ml以下しか含まないことを特徴とする、組成物
。
【請求項24】
溶解アルミニウム(Al)を5.0μg/ml以下及びアセトニトリル(MeCN)を
50μg/ml以下しか含まないことを特徴とする、請求項23に記載の陽電子放射断層
撮影(PET)トレーサー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物、特に陽電子放射断層撮影(PET)トレーサーを含む組成物に
関する。本発明の組成物及びその合成方法は、従来技術に勝る確かな利点がある。
【背景技術】
【0002】
非天然アミノ酸18F-1-アミノ-3-フルオロシクロブタン-1-カルボン酸(18F
-FACBC、18F-フルシクロビンとしても公知)は、アミノ酸輸送体によって特異的
に取り込まれ、前立腺癌の陽電子放射断層撮影(PET)イメージングに有望である(N
anni et al 2014 Clinical Genitourinary C
ancer;12(2):106-110)。
【0003】
18F-FACBCの生成は、以下に示すようにトリフレート前駆体化合物を18F-フッ
化物で標識してから、2つの保護基を除去することを含む。
【0004】
【0005】
【0006】
脱保護工程の後、不純物を除去するための精製が実施されり。現在行われている方法で
は、脱保護工程から残った過剰なNa+及び過剰なCl-を除去するためのイオン遅滞(イ
オンリタデーション)と、18F-フッ化物を除去するためのアルミナと、1-アミノ-3
-ヒドロキシル-シクロブタン-1-カルボン酸(ヒドロキシル-ACBC)及び1-ア
ミノ-3-クロロ-シクロブタン-1-カルボン酸(クロロ-ACBC)などのFACB
Cに関連する不純物を除去するための逆相との固相の組合せが用いられている。
【0007】
合成は現在一般的に、GE Healthcare社、CTI社、Ion Beam
Applications社(ベルギー国、B-1348ルヴァン・ラ・ヌーブ、シュマ
ン・デュ・シクロトロン3)、Raytest社(ドイツ)及びBioscan社(米国
)から市販されている装置などの自動合成装置に着脱可能かつ交換可能に適合するように
設計されたいわゆる「カセット」又は「カートリッジ」を用いる自動化放射性合成手順に
よって実施される。カセットは、PETトレーサー製造の分野で周知の方法によって適切
に調製された18F-フッ化物を誘導した後の18F-FACBCの調製を実施するために必
要な全ての試薬、反応容器及び装置を含む。
【0008】
18F-FACBC合成のために公知のカセットは、GE Healthcare社製の
FASTlab(商標)カセットである。各々のカセットは、全てポリプロピレン製の2
5個の三方活によって一体成形マニホールドの周囲に構築される。カセットには、第四級
メチルアンモニウム(QMA)固相抽出(SPE)カートリッジ、5ml環状オレフィン
コポリマー反応容器、1本の1mlシリンジ及び2本の5mlシリンジ、5本の充填済み
試薬バイアルA~Eと接続するためのスパイク類、1つのウォーターバッグ(100ml
)、3つのSPEカートリッジ(tC18、HLB及びアルミナ)及びフィルタが含まれ
る。5本のFASTlab(商標)カセット試薬バイアルは、次の通り充填される。バイ
アルAはアセトニトリル(MeCN)中にKryptofix2.2.2.及びK2CO3
を含む溶出剤溶液を含み、バイアルBはHClを含み、バイアルCはMeCNを含み、バ
イアルDは上に例示される反応スキームからの式Iの乾燥前駆体化合物を含み、バイアル
EはNaOHを含む。このFASTlab(商標)カセットを使用する18F-FACBC
製剤の製造のための公知の方法は、国際公開第2013/093025号の実施例1に記
載されている。放射性合成は、水性18F-フッ化物をQMAの上で捕捉することによって
開始され、その後バイアルAの溶出剤を用いて反応容器に溶出させ、次にバイアルCのア
セトニトリルを用いる共沸蒸留によって濃縮乾固させる。大筋においてMeCNをバイア
ルDの前駆体化合物と混合し、溶解した前駆体を反応容器に添加し、85℃で3分間加熱
する。次に、反応混合物を水で希釈し、tC18カートリッジを通して送る。反応容器を
水で洗浄し、tC18カートリッジを通して送る。tC18カートリッジに固定された、
標識された中間体を水で洗浄し、次にNaOHとともに5分間インキュベートして、エス
テル基を除去する。脱エステル化された中間体をtC18カートリッジから溶離させ、水
を用いて反応容器に戻す。反応容器内でHClを添加し、60℃で5分間加熱することに
よりBOC基を加水分解する。次に、粗18F-FACBCを、FACBCに関連する不純
物の除去のためのHLB(HLB=親水性親油性バランス)カートリッジに通し、18F-
フッ化物の除去のためのアルミナカートリッジに通し、その後クエン酸緩衝液を含有する
30ml生成物バイアルに送る。HLBカートリッジ及びアルミナカートリッジを次に水
で洗浄し、それを生成物バイアルに送る。最後に、NaOH及び水を生成物バイアルに添
加して、18F-FACBCの最終精製製剤を得る。静脈内投与の前に、この製剤を滅菌フ
ィルタに通す。
【0009】
本発明者らは、上記の公知のFASTlab(商標)カセット及びプロセスを使用して
得られる最終18F-FACBC製剤の品質が、多少変化することがあり得ることを見出し
た。残留アセトニトリルレベルは、約100μg/mlから約600μg/mlに及ぶこ
とが見出された。許容される1日露出量に関して、さらに18F-FACBC製剤の合格判
定基準という点では許容されるものの、この量及び観察された変動性は、決して理想的で
はない。さらに、残留アルミニウムは、約7μg/mlからほぼ20μg/mlまで変動
することが見出された。これは5mlの18F-FACBC注射中100μgの量となる可
能性があることを意味する。18F-FACBC製剤もクエン酸緩衝液を含む場合、アルミ
ニウムとクエン酸塩の錯体が存在する可能性がある。そのような錯体は血液脳関門を超え
ることが公知であるので、それは問題が多い(Rengel 2004 Biometa
ls;17:669-689)。
【0010】
そのため、18F-FACBC製剤には改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2013/093025号パンフレット
【発明の概要】
【0012】
本発明は、公知の組成物にみられる問題を克服する、18F-FACBCを含む医薬組成
物を提供する。特に、本発明の組成物は改良された不純物プロファイルを有し、それは従
来技術と比較して本発明の組成物をより安全にし、イメージングに効果的にする。最終製
剤中のアセトニトリル及び/又はアルミニウムのレベルが低く予測可能であることは、本
発明の組成物が世界中の薬局方の要件をより簡単に満たすことを意味する。最終製剤中の
アルミニウムの濃度が大幅に低下することに加えて、アルミナカートリッジを除去するこ
とには、より短く簡略化されたプロセスが許容されること、及びこのカートリッジから生
じる粒子が存在しないという、関連した利点がある。そして本発明者らが注目したその粒
子は、製剤注射の前に使用する滅菌フィルタをブロックすることができる。さらに、本発
明の利点は、公知のプロセスのわずかな変更だけで、公知の18F-FACBC組成物の望
ましい品質を損なうことなく達成される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特許請求される本発明の主題をより明白かつ簡潔に記載し示すために、以下の説明及び
添付される特許請求の範囲で使用される特定の用語に対して以下の定義が与えられる。本
明細書中の特定の用語のどんな例示も、限定されない例と考えられるべきである。
【0014】
一態様では、本発明は、溶解アルミニウム(Al)を5.0μg/ml以下しか含まな
いことを特徴とする、anti-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブチル-1-カルボ
ン酸(18F-FACBC)を含む陽電子放射断層撮影(PET)トレーサー組成物に関す
る。
【0015】
一態様では、本発明は、anti-1-アミノ-3-18F-フルオロシクロブチル-1-カ
ルボン酸(18F-FACBC)を含む陽電子放射断層撮影(PET)トレーサー組成物で
あって、溶解アルミニウム(Al)を5.0μg/ml以下及びアセトニトリル(MeC
N)を50μg/ml以下しか含まないことを特徴とする組成物に関する。
【0016】
本発明に関して、「PETトレーサー組成物」とは、PETトレーサーを生体適合性担
体と共に含む哺乳類への投与に適した形態の組成物をいう。本発明のPETトレーサー組
成物は、以下で本発明の組成物とも呼ばれる。「PETトレーサー」は、本明細書におい
て、1以上の臨床上有用な、PETトレーサーの位置及び/又は分布の画像を得るための
、哺乳類被験体への静脈内投与とその後のPETイメージングに適した陽電子放射体であ
る原子を含む生物活性分子と定義される。本明細書において定義される「生体適合性担体
」は、組成物が生理学的に忍容性であるように、すなわち哺乳類の身体に毒性又は過度の
不快感なく投与することができるように、医薬品を懸濁又は溶解する流体、特に液体であ
る。生体適合性担体は、好適には、無菌の発熱物質を含まない注射水又は水溶液、例えば
生理食塩水などの注射可能な担体液である。
【0017】
化合物「18F-FACBC」は、次の化学構造で表される。
【0018】
【0019】
用語「以下」は、本明細書において、標記の量よりも少ないかそれを含む任意の量を意
味する。本発明の組成物の理想化された実施形態では、0μg/mlの各不純物が存在す
ることになる。しかし、現実には、0μg/mlの不純物は可能性が低く、少なくとも微
量の各不純物が組成物に残っている。用語「以下」は、1種以上の痕跡量の不純物がPE
Tトレーサー組成物に存在することを認め、それを超えると組成物が使用を許容されない
と思われる濃度限度を定義する。
【0020】
一実施形態では、本発明の組成物は溶解Alを3.0μg/ml以下しか含まず、別の
実施形態では、溶解Alを1.5μg/ml以下しか含まない。
【0021】
一実施形態では、本発明の組成物は、MeCNを20μg/ml以下の濃度でしか含ま
ない。
【0022】
本発明の組成物は、一実施形態では95%以上、別の実施形態では98%以上、さらに
別の実施形態では99%以上の合成終了時(EOS)放射化学純度(RCP)を有する。
【0023】
用語「合成終了時」とは、標識された化合物が生成物回収バイアルに回収される時点を
いう。
【0024】
欧州特許出願公開第2119458号は、18F-FACBCのさらに安定した製剤は、
pHが2.0~5.9の範囲内に維持されている場合に達成されることを教示する。国際
公開第2013/093025号で考察されるように、クエン酸緩衝液の使用により、p
Hをさらに狭い範囲内で維持することが可能になり、分解に対する抵抗性がもたらされ、
製剤をオートクレーブ処理することが可能になる。一実施形態では、本発明の組成物はそ
のために約50~100mMのクエン酸緩衝液、別の実施形態では約60~90mMのク
エン酸緩衝液、さらに別の実施形態では約75~85mMのクエン酸緩衝液を含む。用語
「約」は、この文脈では、範囲の正確な値も、同じ安定化の効果を達成するために当業者
によって予測されるこれらの値の前後の小さい変動も組み込む。
【0025】
別の態様では、本発明は、本発明のPETトレーサー組成物を調製する方法であって、
(a)反応容器内で18F-フッ化物源と以下の式Iの前駆体化合物とを反応させて、以下
の式IIの化合物を含む反応混合物を得る工程と、
【0026】
【0027】
(式中、
LGは脱離基であり、
PG1はカルボキシ保護基であり、
PG2はアミン保護基である。)
【0028】
【0029】
(式中、PG1及びPG2は式Iで定義した通りである。)
(b)PG1及びPG2の除去を実施して、18F-FACBCを含む反応混合物を得る工程
と、
(c)18F-FACBCを含む反応混合物を、親水性親油性バランス(HLB)固相に通
すことによって精製する工程と
を含んでおり、精製工程が18F-FACBCを含む反応混合物をアルミナ固相に通すこと
を含まないことを特徴とする方法を提供する。
【0030】
別の態様では、本発明は、本発明のPETトレーサー組成物を調製する方法であって、
(a)反応容器内で18F-フッ化物源と以下の式Iの前駆体化合物とを反応させて、以下
の式IIの化合物を含む反応混合物を得る工程あって、反応工程がアセトニトリル中で実
施される工程と、
【0031】
【0032】
(式中、
LGは脱離基であり、
PG1はカルボキシ保護基であり、
PG2はアミン保護基である。)
【0033】
【0034】
(式中、PG1及びPG2は式Iで定義した通りである。)
(b)式IIの化合物を含む反応混合物を反応容器の外に移し、PG1の除去を実施して
、以下の式IIIの化合物を含む反応混合物を得る工程と、
【0035】
【0036】
(式中、PG2は式Iで定義した通りである。)
(c)PG1の除去の実施と同時に反応容器に熱を加える工程と、
(d)式IIIの化合物を含む反応混合物を反応容器に戻し、PG2の除去を実施して、1
8F-FACBCを含む反応混合物を得る工程と、
(e)18F-FACBCを含む反応混合物を、親水性親油性バランス(HLB)固相に通
すことによって精製する工程と
を含んでおり、精製が18F-FACBCを含む反応混合物をアルミナ固相に通すことを含
まないことを特徴とする方法を提供する。
【0037】
本発明の方法の工程(a)での使用に適した「
18
F-フッ化物源」は、通常、核反応18
O(p,n)18Fから水溶液として得られる。フッ化物の反応性を高め、水の存在から生
じるヒドロキシル化された副生成物を減らすか又は最小限にするために、水は一般に反応
の前に18F-フッ化物から除去され、フッ素化反応は無水反応溶媒を用いて実施される(
Aigbirhio et al 1995 J Fluor Chem;70:279
-87)。放射性フッ素化反応の18F-フッ化物の反応性を改善するために使用される追
加の工程は、水の除去の前にカチオン性対イオンを添加する工程である。好適には、対イ
オンは、18F-フッ化物の溶解度を維持するために、無水反応溶媒内で十分な溶解度を有
するべきである。そのため、一般的に使用される対イオンには、ルビジウム又はセシウム
などの大型であるが柔らかい金属イオン、Kryptofix(商標)又はテトラアルキ
ルアンモニウム塩などのクリプタンドと錯化したカリウムが挙げられ、Kryptofi
x(商標)又はテトラアルキルアンモニウム塩などのクリプタンドと錯化したカリウムが
好ましい。
【0038】
本発明の方法の工程(a)のための「前駆体化合物」は、望ましい放射性標識化合物を
得るために、検出可能な標識の便宜な化学形との化学反応が部位特異的に起こり、最小限
の数の工程(理想的には単一工程)で実施することができ、重要な精製をする必要がない
(理想的にはさらに精製されない)ように設計された、放射性標識化合物の非放射性誘導
体を含む。そのような前駆体化合物は合成によるものであって、良好な化学純度で簡便に
得ることができる。
【0039】
本発明の方法の工程(a)の式Iの化合物の状況において適した「脱離基」は、フッ化
物イオンとの求核置換反応によって置換され得る化学基である。これらは合成化学の分野
において周知である。一部の実施形態では、本発明の脱離基は、線状又は枝分れC1-10ハ
ロアルキルスルホン酸置換基、線状又は枝分れC1-10アルキルスルホン酸置換基、フルオ
ロスルホン酸置換基、又は芳香族スルホン酸置換基である。本発明の他の実施形態では、
脱離基は、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ベンゼ
ンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、及びパーフルオロ
アルキルスルホン酸から選択される。一部の実施形態では、脱離基は、メタンスルホン酸
、トリフルオロメタンスルホン酸又はトルエンスルホン酸のいずれかであり、別の実施形
態では、脱離基はトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0040】
置換基PG1及びPG2に関連して使用される用語「保護基」とは、望ましくない化学反
応を阻害又は抑制するが、残りの分子を変更しない程度の穏和な条件下で目的生成物を得
るために問題の官能基から切断され得るほど十分に反応性であるように設計されている基
をいう。保護基は当業者に周知であり、「Protective Groups in
Organic Synthesis」、Theorodora W.Greene a
ndPeter G.M.Wuts,(Fourth Edition,John Wi
ley&Sons,2007)に記載されている。
【0041】
PG1「カルボキシ保護基」は、本明細書において、好ましくは線状又は枝分れC1-10
アルキル鎖又はアリール置換基をいう。単独で又は別の基の一部として使用される用語「
アルキル」は、任意の直鎖、分枝鎖又は環状の、飽和又は不飽和CnH2n+1基と定義され
る。用語「アリール」とは、単環式又は多環式芳香族炭化水素、或いは単環式又は多環式
複素芳香族炭化水素から誘導される任意のC6-14分子断片又は基をいう。本発明の方法の
一実施形態では、PG1は、メチル、エチル、t-ブチル及びフェニルから選択される。
本発明のもう一つの実施形態では、PG1は、メチル又はエチルであり、さらに別の実施
形態では、PG1はエチルである。
【0042】
PG2「アミン保護基」は、本明細書において、式IIの化合物を提供するプロセスに
おいて18Fとアミノ基の反応を好適に防ぐ化学基をいう。適したアミン保護基の例として
は、種々のカルバミン酸塩置換基、種々のアミド置換基、種々のイミド置換基、及び種々
のアミン置換基が挙げられる。好ましくは、アミン保護基は、線状又は枝分れC2-7アル
キルオキシカルボニル置換基、線状又は枝分れC3-7アルケニルオキシカルボニル置換基
、修飾基を有し得るC7-12ベンジルオキシカルボニル置換基、C2-7アルキルジチオオキ
シカルボニル置換基、線状又は枝分れC1-6アルキルアミド置換基、線状又は枝分れC2-6
アルケニルアミド置換基、修飾基を有し得るC6-11ベンズアミド置換基、C4-10環状イミ
ド置換基、置換基を有し得るC6-11芳香族イミン置換基、線状又は枝分れC1-6アルキル
アミン置換基、線状又は枝分れC2-6アルケニルアミン置換基、及び修飾基を有し得るC6
-11ベンジルアミン置換基からなる群から選択される。本発明の一部の実施形態では、P
G2は、t-ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、フタルイミド、及びN-ベ
ンジリデンアミンから選択される。その他の実施形態では、PG2は、t-ブトキシカル
ボニル又はフタルイミドから選択される。本発明の一実施形態ではPG2はt-ブトキシ
カルボニルである。
【0043】
当業者に周知のように本発明の方法の工程(a)において用語「反応すること」とは、
2以上の化学物質(一般に当技術分野で「反応体」又は「試薬」と呼ばれる)を一緒にし
て、一方又は両方/全部の化学物質に化学変化をもたらすことをいう。
【0044】
本発明の方法の工程(b)での「PG
1
の除去」は、工程(a)で得られる反応混合物
の中に含まれる式IIの化合物をカルボキシ脱保護剤と接触させることによって好適に実
施される。適したカルボキシ脱保護剤は、当業者に周知のように酸か又はアルカリ溶液で
あってよい(Greene and Wuts,前掲を参照)。カルボキシ脱保護剤の濃
度は、好適にカルボキシ保護基を除去するのに過不足のない濃度である。好ましくは、カ
ルボキシ脱保護剤はアルカリ溶液である。ある種の実施形態では、カルボキシ脱保護剤は
水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム溶液であり、好ましい実施形態では、例えば0.5
~2.0Mの水酸化ナトリウム溶液である。脱保護に使用される温度及び持続時間は、一
部の実施形態ではPG1の除去を許容するように適合させてよい。例えば、特定の実施形
態では、反応工程は室温で約1~5分の持続時間で実施される。一実施形態では、PG1
の除去は、式IIの化合物を含む反応混合物を固相抽出(SPE)カラムに通すことによ
って実施され、そこで式IIの化合物は固相と結合する。ひとたび式IIの化合物が結合
すると、カルボキシ脱保護剤が所定の時間の間その中に保持されるようにSPEカラムの
出口を閉じる。この方法での使用に適した固相は、逆相固相、例えばtC18である。
【0045】
工程(c)は、当業者に周知の方法を用いて、例えばその中に反応容器を放射性合成の
持続時間の間入れる専用の加熱器具を用いて、反応容器に熱を加えることを含む。この熱
の適用は、反応容器がその後の工程(d)に使用され得るようなものでなければならない
、すなわち反応容器が無傷で損傷を受けていないようなものでなければならず、また、残
りの溶媒が効果的に除去されるようなものでなくてはならない。この工程(c)は、PG
1の除去と同時に、すなわち、式IIの化合物を含む反応混合物が反応容器から移された
後に実施される。この加熱工程に適した温度は、反応容器の許容値以下、例えば環状オレ
フィン共重合体(COC)製の反応容器には約130℃以下の温度、ポリエーテルエーテ
ルケトン(PEEK)製の反応容器には約200℃以下の温度であるべきである。便宜上
、工程(c)で反応容器を加熱するために用いられる温度は、標識工程(a)の間に使用
される温度とできるだけ近いように選択されてよい。放射標識工程(a)に適した温度は
、約80~140℃、他の実施形態では85~130℃の範囲内である。
【0046】
本発明の方法の工程(d)での「PG
2
の除去」は、式IIIの化合物とアミン脱保護
剤を接触させることによって実施される。適したアミン脱保護剤は、当業者に周知のよう
に酸か又はアルカリ溶液であってよい(Greene and Wuts,前掲を参照)
。アミン脱保護剤の濃度は、好適にPG2を除去するのに過不足のない濃度である。好ま
しくは、アミン脱保護剤は酸性溶液である。適した酸は、無機酸、例えば塩酸(HCl)
、硫酸(H2SO4)及び硝酸(HNO3)など、並びに有機酸、例えばパーフルオロアル
キルカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸(CF3CO2H)などから選択される酸である
。ある種の実施形態では、アミン脱保護剤は、例えば1.0~4.0Mの濃度のHClで
ある。PG2の除去は、一実施形態では、脱保護より速く進行させるために熱を用いて実
施される。時間は反応温度又はその他の条件に依存する。例えば、一実施形態では、PG
2の除去は、60℃で、5分の反応時間で実施される。
【0047】
「精製」工程(e)の目的は、実質的に純粋な18F-FACBCを得ることである。用
語「実質的に」とは、完全又はほぼ完全な範囲又は程度の作用、特徴、性質、状況、構造
、項目、又は結果をいう。本明細書において18F-FACBCの文脈で使用される用語「
実質的に純粋な」は、完全に純粋な18F-FACBC又はPETトレーサーとしての使用
に適しているほど十分に純粋な18F-FACBCを含む。用語「PETトレーサーとして
の使用に適している」とは、精製された18F-FACBC生成物が、18F-FACBCの
位置及び/又は分布の1以上の臨床上有用な画像を得るための哺乳類被験体への静脈内投
与とそれに続くPETイメージングに適していることを意味する。
【0048】
「HLB固相」は、様々な目的に適した親水性成分と親油性成分を有する逆相固相であ
る。HLB固相は、本発明の方法での使用に適したSPEカートリッジ、例えばOasi
s HLB SPEカートリッジとして市販されている。
【0049】
「アルミナ固相」は、遊離18F-フッ化物を除去し、最終生成物の放射化学純度を最適
化する手段として、18F標識方法において常套的に使用される酸化アルミニウム順相固相
である。アルミナ固相は、本発明の方法での使用にSPEカートリッジ、例えばWate
rs Alumina N Lightとして市販されている。
【0050】
本発明の方法において、工程(a)~(c)又は(a)~(e)は順に実施される。
【0051】
本発明の方法の一実施形態では、式Iの化合物中の置換基LGは、線状又は枝分れC1-
10ハロアルキルスルホン酸置換基、線状又は枝分れC1-10アルキルスルホン酸置換基、フ
ルオロスルホン酸置換基、又は芳香族スルホン酸置換基である。LGの例としては、メタ
ンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、
トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、及びパーフルオロアルキルスルホ
ン酸が挙げられる。一実施形態では、LGはトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0052】
本発明の方法の一実施形態では、式I及びIIの化合物中の置換基PG1は、線状又は
枝分れC1-10アルキル鎖又はアリール置換基である。例えば、PG1はメチル、エチル、
t-ブチル又はフェニルであり得る。一実施形態では、PG1はメチル又はエチルである
。もう一つの実施形態では、PG1はエチルである。
【0053】
本発明の方法の一実施形態では、式I~IIIの化合物中の置換基PG2は、カルバミ
ン酸塩置換基、アミド置換基、イミド置換基又はアミン置換基である。例としては、t-
ブトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、フタルイミド、及びN-ベンジリデンア
ミンが挙げられる。一実施形態では、PG2はt-ブトキシカルボニルである。
【0054】
本発明の方法は、工程(e)で得た精製反応混合物をクエン酸緩衝液と配合する工程を
さらに含んでよい。一実施形態では、この配合工程により、50~100mMの濃度のク
エン酸緩衝液、別の実施形態では60~90mMのクエン酸緩衝液、さらに別の実施形態
では75~85mMのクエン酸緩衝液が得られる。
【0055】
一実施形態では、本発明の方法は、自動化される、例えば自動合成装置で実施される。
18F標識PETトレーサーは、多くの場合、自動放射性合成装置で便宜に調製される。用
語「自動放射性合成装置」とは、Satyamurthy et al(1999 Cl
inPositr Imag;2(5):233-253)に記載される単位操作の原理
に基づいて自動化されたモジュールを意味する。用語「単位操作」とは、複雑なプロセス
が一連の簡単な操作又は反応になることを意味し、それは様々な材料に適用することがで
きる。好適な自動合成装置は、様々な供給業者から市販されており、それには:GE H
ealthcare社(英国チャルフォント・セント・ジャイルズ);CTI社(米国ノ
ックスビル);Ion Beam Applications社(ベルギー国、B-13
48ルヴァン・ラ・ヌーブ、シュマン・デュ・シクロトロン3)、Raytest社(ド
イツ、シュトラベンハルト)及びBioscan(米国ワシントンDC)が挙げられる。
【0056】
商用の自動放射性合成装置はまた、放射性医薬品調製の結果として生成された液体放射
性廃棄物用の適した容器も提供する。自動放射性合成装置は、適切に構成された放射性作
業セルで用いられるように設計されているので、一般に放射線遮蔽を備えていない。放射
性作業セルは、ホットセルとも呼ばれ、オペレーターを潜在的放射線量、並びに化学蒸気
及び/又は放射性の蒸気を除去するための換気から保護するために適した放射線遮蔽を提
供する。
【0057】
本発明の好ましい自動放射性合成装置は、所与バッチの放射性医薬品の調製を実施する
ために必要な全ての試薬、反応容器及び装置を含む、使い捨て又は単回使用「カセット」
(一般に「カートリッジ」とも呼ばれる)と相互作用する合成装置である。かかるカセッ
トは、単にカセットを交換するだけで、自動放射合成装置で相互汚染のリスクを最小限に
抑えながら各種の放射性医薬品を製造できる柔軟性をもつことを意味する。カセット方式
には、装置構成の単純化とそれに伴うオペレーターエラーのリスク低減、GMP(Good M
anufacturing Practice)コンプライアンスの向上、マルチトレーサー能力、生産作業間
の迅速な変更、カセット及び試薬の作業前自動診断検査、実施すべき合成と化学試薬との
自動バーコードクロスチェック、試薬のトレーサビリティ、使い捨てであり、そのため相
互汚染のリスクがなく、改竄及び誤用を防ぐことができるという利点がある。
カセットは、アルミナカートリッジを取り除くことによって簡略化された。アルミナカ
ートリッジは、遊離18F-フッ化物の残渣を不十分な精製から、かつ/又は放射線分解か
ら除去するために、前のカセット構成に存在した。しかし、本発明者らは、アルミナカー
トリッジでの休止活性(rest activity)が非常に低く(0.1~0.3%)、精製プロ
セスと程度の低い放射線分解の両方を示すことを見出した。これらのデータは、アルミナ
カートリッジが余分であり、除外できることを示唆する。このことは、滅菌フィルタを塞
ぐ危険性をもたらす、アルミナカートリッジ由来のどんな粒子も製剤中に存在する危険性
がないという追加の利益を有する。
【0058】
このプロセスは、脱エステル化工程がtC18カートリッジで進行する間に残留アセト
ニトリルを反応容器から除去する並行工程を付加することによって改良された。この結果
、従来技術の方法を用いて得られるよりも残留アセトニトリルの濃度が低く、より予測可
能な最終製剤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明の方法を実施するための例示的なカセットを示す図である。
【0060】
実施例の簡単な説明
以下の限定されない例は、本発明の主題の特定の実施形態を説明するのに役立つ。
【0061】
実施例で用いた略語
BOC tert-ブチルオキシカルボニル
DP 医薬品
HLB 疎水性親油性バランス
K222 Kryptofix 222
MeCN アセトニトリル
QMA 第四級メチルアンモニウム
RAC 放射能濃度
RCP 放射化学純度。
【実施例0062】
比較例1:従来技術の
18
F-FACBCの合成
1(i)FASTlabカセット 市販のGE FASTlab(商標)で単回使用カ
セットを用いて全ての放射化学を実施した。各々のカセットは、全てポリプロピレン製の
25個の三方活によって一体成形マニホールドの周囲に構築される。手短に言えば、カセ
ットには、5ml反応容器(環状オレフィン共重合体)、1本の1mlシリンジ及び2本
の5mlシリンジ、5本の充填済み試薬バイアルと接続するためのスパイク類、1つのウ
ォーターバッグ(100ml)並びに種々のSPEカートリッジ及びフィルタが含まれる
。流路は窒素パージ、真空及び3本のシリンジによって制御される。完全自動化システム
は、サイクロトロンで生成した18F-フッ化物を用いる単一工程のフッ素化用に設計され
ている。FASTlabは、ソフトウェアパッケージによって、シリンジの移動、窒素パ
ージ、真空、及び温度調節などのイベントを一工程ずつ時間依存的な順序でプログラムさ
れた。バイアルAは、79.5%(v/v)MeCN水溶液(1105μl)中、K222
(58.8mg、156μmol)、K2CO3(8.1mg、60.8μmol)を含有
した。バイアルBは、4M HCl(2.0ml)を含有した。バイアルCは、MeCN
(4.1ml)を含有した。バイアルDは、前駆体(48.4mg、123.5μmol
)をその乾燥形態で含有した(カセット組立てまで-20℃で貯蔵)。バイアルEは、2
M NaOH(4.1ml)を含有した。30mlの生成物回収ガラスバイアルに、20
0mMクエン酸三ナトリウム(10ml)を充填した。
【0063】
1(ii)
18
F-フッ化物の製造
担体を添加しない18F-フッ化物を、18O(p,n)18F核反応によってGEPETt
race6 サイクロトロン(Norwegian Cyclotron Centre
,オスロ)で作成した。デュアルビーム、30μAの電流を用い、HAVAR箔を備えた
2つの同等なAgターゲットに対して、16.5MeVのプロトンを使用して照射を実施
した。各々のターゲットは、≧96%の[18O]水(Marshall Isotope
s)を1.6ml含有した。照射及びホットセルへの送達後、各々のターゲットを[16O
]水(メルク、GR分析用の水)で洗浄した。18F-フッ化物水溶液をQMAに通し、18
O-H2O回収バイアルに入れた。次に、QMAをMeCNでフラッシし、廃棄物に送っ
た。
【0064】
1(iii)
18
F-フッ化物の標識
捕捉した18F-フッ化物を、バイアルAからの溶出剤を用いて反応容器に溶出し、次に
アセトニトリル(バイアルC)による共沸蒸留によって濃縮乾固した。MeCNをバイア
ルD中の前駆体と混合し、そこから溶解した前駆体を反応容器に添加し、85℃に加熱し
た。
【0065】
1(iv)エステル保護基の除去
反応混合物を水で希釈し、tC18カートリッジを通して送った。反応容器を水で希釈
し、tC18カートリッジを通して送った。tC18カートリッジに固定された、標識中
間体を水で洗浄し、次に2M NaOHとともにインキュベートし、その後に2M Na
OHを廃棄物に送った。
【0066】
1(v)BOC保護基の除去
次に、標識中間体(エステル基を含まない)を水を用いてtC18カートリッジから反
応容器の中に溶出させた。4M HClを添加することによりBOC基を加水分解し、反
応容器を加熱した。
【0067】
1(vi)精製
粗18F-FACBCを含む反応容器の内容物を、HLB及びアルミナカートリッジに通
し、30mlの生成物バイアルに送った。HLB及びアルミナカートリッジを、水で洗浄
し、生成物バイアルに回収した。
【0068】
1(vii)配合
2M NaOH及び水を生成物バイアルに添加し、精製した製剤(DP)を総量26m
lで得た。
(1viii)アセトニトリル濃度
アセトニトリル(MeCN)濃度は、FID、自動液体インジェクタ、USP固定相G
43(6%シアノプロピルフェニル-94%ジメチルポリシロキサン)を含む熔融石英キ
ャピラリーカラム、及び、レポーティング・インテグレーター(reporting i
ntegrator)又は再統合能力を備えたデータシステムを備えたガスクロマトグラ
フィー系を用いて求めた。1000μg/mlのMeCNを標準液として使用した。ブラ
ンクは、1mlの精製水を2mlのGCクリンプキャップバイアルに移すことによって調
製し、それに直ちに蓋をした。1mlの標準液を2mlのGCクリンプキャップバイアル
に移し、直ちに蓋をした。0.20mlのサンプルを、ローボリュームインサート(0.
25ml)を備えた2mlのGCクリンプキャップバイアルに移し、直ちに蓋をした。G
C計測器の実験条件は以下の通りであった。
担体ガス流、ヘリウム:2.0ml/分
オーブン温度プログラム:40℃で6分間、次に240℃まで20℃/分で4分間
インジェクタ温度:225℃
スプリット比:10:1
検出器:FID
検出器温度:250℃
水素流量:30ml/分
空気流量:400ml/分
メイクアップガス流量(He):25ml/分。
【0069】
自動液体インジェクタの実験条件は以下の通りであった。
溶媒プレ洗浄:3
サンプルポンプ:3
溶媒ポスト洗浄:3
注入量:1ml。
【0070】
カラムは250℃で少なくとも1時間、使用前に状態調整した。
【0071】
各々の標準液の1回注入及びサンプル溶液の2回の反復注入を、ブランク注入に加えて
、以下の順序で実施した。
1.ブランク
2.校正標準液
3.校正標準液
4.ブランク
5.サンプル、反復1
6.サンプル、反復2
7.ブランク。
【0072】
各々の分析物の濃度、Csampleを次式を用いてμg/mlで算出した。
【0073】
【0074】
(式中、
Asample:サンプル中の分析物のピーク面積
Cstd:較正標準液中の分析物の濃度(μg/ml)
Astd:較正標準液中の分析物のピーク面積、2回の注入の平均値。
(1ix)アルミニウム濃度
アルミニウム濃度は、誘導結合高周波プラズマ原子発光分析(ICP-AES)によっ
て求めた。
(1x)放射化学パラメータ
18F-FACBCの放射化学純度(RCP)及び放射能濃度(RAC)を測定した。
【0075】
RCPは、薄層クロマトグラフィー(TLC)によって求めた。アセトニトリル:メタ
ノール:水:酢酸、20:5:5:1 v/vからなる移動相を用いて、TLCストリッ
プを溶出した。RCP及び18F-フッ化物を始めとするあらゆる放射化学不純物を、全て
のピークの正味の合計の百分率として報告した。
(1xi)結果
以下の結果を得た。
【0076】
【0077】
実施例2:本発明の方法を用いる
18
F-FACBCの合成
2(i)順序の変更
図1に示すように、変更したFASTlab(商標)カセットを使用した。配列に反応
容器の余分な加熱/パージを含めたことを除いて、実施例1に記載される順序を使用した
。加水分解工程は2つの工程に置き換えられ、その最初の工程には、加水分解と同時並行
で反応容器の85℃での加熱、反応容器の窒素パージ(600mbar HF)及び真空
(-600mbar)が含まれた。2番目の工程にも加水分解が含まれたが、反応容器の
加熱は停止した。窒素パージ(600mbar HF)及び真空(-600mbar)を
反応容器の冷却に使用した。さらに、アルミナSPEを除去し、配列を変更して、HLB
カートリッジ工程の後に生成物を直接製剤バッファーバイアルに移した。
【0078】
2(ii)分析
実施例1に記載される分析方法を使用した。
【0079】