(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136119
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】工具または工具部品、工具または工具部品を含む装置、工具または工具部品の製造方法、およびパルプスラリーから製品を成形する方法
(51)【国際特許分類】
D21J 1/20 20060101AFI20220908BHJP
D21J 3/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
D21J1/20
D21J3/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022110154
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2020180249の分割
【原出願日】2014-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】517214150
【氏名又は名称】セルワイズ・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ピアス、デイビッド・エー
(72)【発明者】
【氏名】フォークト、ウド
(57)【要約】
【課題】 本願はパルプスラリーから製品を成形するプロセスにおいて使用するための工具または工具部品を開示する。
【解決手段】 工具または工具部品は、製品に接触するための製品表面と、該製品表面に対して壁の反対側の裏面とを有する自己支持工具壁部を含む。工具壁部は、該工具壁部を通って製品表面から裏面まで延びる複数のチャンネルによって提供される孔を呈する。チャンネルは直線状であるか湾曲しており、屈曲点が1つしかない。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプスラリーから製品を成形するプロセスに使用される工具または工具部品であって、
製品に接触する製品面と、前記製品面に対して壁の他方側の背面とを有する自立型工具壁部と、
前記工具壁部を通って前記製品面から前記背面まで延びる複数の通路によって与えられる孔を呈する工具壁部と、
を具備し、
前記流路は真っ直ぐであるか又は1つ以下の屈曲点で湾曲していることを特徴とする工具または工具部品。
【請求項2】
前記製品面は、平坦面部および凸面部を呈することを特徴とする請求項1に記載の工具または工具部品。
【請求項3】
工具壁厚さは、前記平坦面部より前記凸面部のほうが好ましくは30~70%小さいかまたは40~60%小さいことを特徴とする請求項2に記載の工具または工具部品。
【請求項4】
前記凸面部は、前記平坦面部より大きい気孔率を示すことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項5】
前記製品面は、平坦面部および凹面部を呈することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項6】
前記平坦面部は、前記凹面部より大きい気孔率を示すことを特徴とする請求項5に記載の工具または工具部品。
【請求項7】
前記製品面は、実質的に平面であり、互いに45°~135°の角度をなす一対の表面部分を有し、工具または工具部品の主要な動作中に水平面に対して最大の角度を示す一方の前記表面部分は、他方の前記表面部分よりも大きな気孔率を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項8】
前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面において前記背面の対応する流路開口面積より小さい流路開口面積を示すことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項9】
前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面に向かって先細りになる断面を呈することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項10】
前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面に対して40~90度の角度に延びる中心軸を呈することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項11】
前記流路の少なくともいくつかは、湾曲した中心軸を呈することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項12】
前記製品面は、第1および第2の並置された表面部分を有し、
前記第1の表面部分に開口する流路の中心軸は、表面部分の製品面に対して前記第2の表面部分に開口する流路の中心軸とは異なる角度で延びていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項13】
工具または工具部品の内側のボイド容積は、該工具または工具部品にまたがる総体積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、少なくとも60%または少なくとも80%であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項14】
前記流路の少なくとも一部は、該流路近傍の壁の厚さを超える長さを呈することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項15】
少なくともいくつかの前記流路の製品面開口は、0.1~2mmの最大幅をもつ断面を有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項16】
少なくともいくつかの前記流路は、前記製品面と前記背面との間に位置する少なくとも1つの分岐を呈することを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項17】
前記工具壁は、0.2~20mmの厚さ、好ましくは0.3~15mmまたは0.5~10mmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項18】
前記工具壁部は、前記流路間のボイドが95%未満、好ましくは99%未満または99.9%未満の均質な材料片として形成されることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項19】
工具または工具部品は、該工具または工具部品が動作中において自己支持するのに十分な材料および壁厚で形成されることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項20】
工具の背面は、大気圧以外の空気圧を提供するように適合されたチャンバに対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%または少なくとも90%が曝されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項21】
工具または工具部品は、パルプスラリーからパルプを取り出すためのピックアップ工具、他の工具からある量のパルプを受け取るためのトランスファー工具、および一定量のパルプを加圧して成形品を成形するプレス工具からなる群より選択される工具の一部を形成することを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項22】
工具または工具部品は、相互接続可能であり、好ましくは可動に相互接続可能な少なくとも2つの工具壁部を含むことを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項23】
パルプスラリーから製品を成形する装置であって、
請求項1~22のいずれか1項に記載の少なくとも1つの工具または工具部品と、
前記製品面にパルプを付与する手段と、
真空引きし、および/または前記背面の大気圧よりも大きな圧力を印加する手段と、
を具備することを特徴とする製品の成形装置。
【請求項24】
前記工具壁部(101)の背面側に配置され、前記工具壁部に熱を供給する加熱エレメント(33)をさらに有することを特徴とする請求項23に記載の成形装置。
【請求項25】
前記加熱エレメントは、前記工具壁部から間隔をあけて配置されるヒータ部に配置されることを特徴とする請求項24に記載の成形装置。
【請求項26】
前記ヒータ部は、前記工具壁部と一体に形成されていることを特徴とする請求項25に記載の成形装置。
【請求項27】
前記ヒータ部は、少なくとも1つのスペーサ要素を介して前記工具壁部と接触する別個の部品によって形成されていることを特徴とする請求項25に記載の成形装置。
【請求項28】
前記加熱エレメントが前記工具壁部と一体化していることを特徴とする請求項24に記載の成形装置。
【請求項29】
パルプスラリーからの製品を成形するための工具または工具部品の製造方法であって、
工具または工具部品が形成されるべき材料の粒子を供給し、
ターゲット面に前記粒子の複数の層を連続的に分配し、
前記粉末粒子が融合して一緒になるように、その中で製造されるべき工具または工具部品の断面に対応する前記ターゲット面の粒子の各分配層の位置にエネルギ源を向ける、
ことを含むことを特徴とする工具または工具部品の製造方法。
【請求項30】
製品面から工具壁部を通って背面まで延びる複数の流路によって規定される細孔を有する前記工具壁部を形成する工程をさらに有し、前記流路は真っ直ぐであるか又は1点以下の屈曲点で湾曲していることを特徴とする請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
パルプスラリーから製品を成形する方法であって、
請求項1~22のいずれか1項に記載のモールドを準備し、
前記モールドの背面に真空を付与し、
前記モールドの製品面にパルプスラリーを付与する、
ことを特徴とする製品の成形方法。
【請求項32】
スラリー容器からパルプスラリーを取り出すのに前記モールドを使用する工程をさらに有することを特徴とする請求項31に記載の成形方法。
【請求項33】
製品を形成するためにパルプスラリーを加圧するのに前記モールドを使用する工程をさらに有し、それによって少なくともいくらかの溶媒が前記パルプスラリーから除去されることを特徴とする請求項31または32のいずれか1項に記載の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラリーから製品を成形するのに使用される工具または工具部品に関する。また、本開示は、そのような工具の製造方法、およびそのような工具または工具部品の種々の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質モールドをパルプスラリー中に浸漬し、続いて乾燥させ、場合によってはこのように成形した製品をプレスすることによって、パルプスラリーから製品を成形することが知られている。そのような製品の例として、卵カートン、衝撃吸収包装インサートおよび紙トレイ、紙コップ、飲料搬出トレイ、キノコ箱およびイチゴ箱および他の形態の工業用、農業用および消費者用包装がある。
【0003】
多孔質パルプ成形用金型は、金型表面に適合するように引き伸ばされ織られたワイヤクロス材料でつくられている。このような金型は、ワイヤクロスが金型表面に適合することを可能にするひずみまたは伸びの量に関していくつかの欠点を持っている。また、さらなる欠点としてワイヤクロスが破れやすいという性向を含む。また、ワイヤクロスの使用は、成形することができる製品の複雑さに関するいくつかの制限に関連するものでもある。とくに、モールド内にワイヤクロスを形成する場合に、ワイヤクロスの網目(ポア)が変形して開口の分布を制御することができない。
【0004】
さらに別の欠点として、そのようなモールドの作製コストがある。ワイヤクロスは、通常、自己支持性ではないため、成形すべき製品に対して特異的な裏当て金(メタルバッキング)を設ける必要がある。そのような工具は、さらに目詰まりを発生しやすく、修復することが困難である。
【0005】
例えば米国特許3067470号公報によれば、多孔質体を提供するために一緒に焼結される小さな球体から多孔性パルプ成形用金型を提供することが知られている。このような多孔質体は、米国特許3067470号公報に開示されているようなポリマー材料から製造することができる。しかし、この種のモールドは、強度面で不利な点があるばかりでなく、使用可能な温度範囲が制限されている。また、これらの金型は、表面品質と圧力低下(圧力損失)との間の二律背反に悩まされている。すなわち、表面に使用される粒子が微小になればなるほど、流路がより小さくなり、それにしたがって圧力損失が大きくなる。
【0006】
国際公開2011059391A1号公報には、ブロンズのような金属材料の粒子同士を焼結することによってパルプ成形用金型を製造する方法が開示されている。このような金型は、ポリマーベースの金型と比べてより高い温度に耐えることができるが、その製造にはより高い温度が必要とされるため、より困難な焼結プロセスにつながる。さらに、完成した金型は、ポリマー材料で作製されたものと同じ利点を有する。
【0007】
このようなことから、パルプからの製品の成形に関していくつかの課題が残されている。すなわち、より滑らかな表面構造を付与し、エネルギ消費を低減し、金型を製造するためのより安価なプロセスを提供し、耐久性があり、かつ高温に曝され得る金型を提供することが望まれている。また、形成プロセスの品質管理を向上させることも要望されている。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、パルプスラリーから製品を成形するための改良されたモールドを提供することにある。
【0009】
本発明は、添付の独立請求項によって定義され、実施形態は添付の従属請求項、以下の説明および図面に記載されている。
【0010】
第1の態様によれば、パルプスラリーから製品を成形するプロセスにおいて使用するための工具または工具部品が提供される。工具または工具部品は、製品に接触するための製品面と、前記製品面に対して壁の反対側の背面とを有する自己支持工具壁部を含む。工具壁部は、工具壁部を通って製品表面から背面まで延びる複数の流路(チャンネル)によって提供される孔(ポア)を呈する。流路は、真っ直ぐであるか又は湾曲しており、湾曲しているものは屈曲点が1つしかない。
【0011】
本開示の目的のために、用語「パルプ」は、セルロース、ミネラルおよびデンプンのような繊維およびこれらの材料の組み合わせを含む材料を含むように解釈されるべきである。パルプは、好ましくは液体担体を有し、これは水を含むことができる。
【0012】
用語「自己支持」は、工具壁部が十分に剛性をもち、動作中において工具壁部がその形状を維持するための支持構造を必要としないほどに十分に高い融点を有していることを意味する。
【0013】
製品面は、スラリーピックアップ工具の成形面、トランスファー工具の接触面、または雄型または雌型のプレス工具の成形面のいずれであってもよい。
【0014】
湾曲した流路は、1つまたは複数の平面内で湾曲していてもよい。
【0015】
本発明のコンセプトに従う工具または工具部品は、従来技術と比較して、真空発生のためのエネルギをより少なくしながら、使用されるパルプまたは成形品の効率的な取り出し、移送または蒸発を提供することができる。
【0016】
工具または工具部品は、平坦面部分および凸面部分を呈する製品面を有することができる。
【0017】
凸面部分は、1つまたは2つの相互直交平面内において凸状であってもよい。
【0018】
工具壁は、平坦面部分よりも凸面部分のほうが小さい、好ましくは30~70%小さい、または40~60%小さい厚さを有することができる。
【0019】
凸面部分は、平坦面部分と比べてより大きな気孔率を有することができる。
【0020】
したがって、必要に応じて真空が提供される。
【0021】
製品面は、平坦面部分および凹面部分を呈することができる。
【0022】
平坦面部分は、凹面部分と比べてより大きな気孔率を有することができる。
【0023】
凹面部分は、1つまたは2つの相互直交面内で窪んでいてもよい。
【0024】
製品面は、実質的に平坦な面であり、互いに45°~135°の角度をなす一対の表面部分を有することができ、工具または工具部品の主要動作中において水平面に対して最大角度を示す表面部分は、他の表面部分よりも大きな気孔率を示す。
【0025】
「工具の主要動作」は、工具の動作の一部として理解され、その動作中において成形される製品に対してその主要な機能を遂行する。したがって、ピックアップ工具の場合、主要な機能は、付与された真空によってパルプが取り出されている位置で実行される。また、トランスファー工具の場合、主要動作は、パルプがピックアップ工具からトランスファー工具に移される時点で実行される。また、プレス工具の場合、主要動作は加圧プレス動作となる。
【0026】
流路のうちの少なくともいくつかは、背面の対応する流路開口領域よりも小さい製品面の流路開口領域を呈することができる。
【0027】
これによって目詰まりの危険性が低減される。
【0028】
流路のうちの少なくともいくつかは、製品面に向かって先細りとなる断面を呈することができる。
【0029】
流路のうちの少なくともいくつかは、製品面に対して40~90度の角度で延びる中心軸を呈することができる。
【0030】
流路のうちの少なくともいくつかは、湾曲した中心軸を呈することができる。
【0031】
製品面は、第1および第2の並置された表面部分を有してもよく、第1の表面部分にて開口する流路の中心軸は、表面部分の製品面に対して第2の表面部分にて開口する流路の中心軸とは異なる角度で延びていてもよい。
【0032】
工具または工具部品の内側のボイド容量は、工具または工具部品にまたがる総容積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、少なくとも60%、または少なくとも80%であってもよい。
【0033】
ボイド容量は、空洞、すなわちヒータや支持体などではなく、ボイド(空隙)でつくられた容積である。
【0034】
したがって、製品面に対して真空の強化された分布が達成され、真空力の必要性が低減される。
【0035】
流路のうちの少なくともいくつかは、流路近傍の壁の厚さを超える長さを示すことができる。
【0036】
少なくともいくつかの流路の製品面開口部は、0.1~2mmの最大幅を有する断面を有することができる。
【0037】
流路のうちの少なくともいくつかは、製品面と背面との間に位置する少なくとも1つの分岐を有することができる。
【0038】
工具壁は、0.2~20mmの厚さ、好ましくは0.3~15mmまたは0.5~10mmの厚さを有する。
【0039】
工具壁部は、流路間に95%未満、好ましくは99%未満または99.9%未満の空隙(ボイド)を有する均質な材料片として形成することができる。
【0040】
工具または工具部品は、動作中において工具または工具部品が自己支持するのに十分な材料と肉厚で形成することができる。
【0041】
工具の背面は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%または少なくとも90%が大気圧以外の空気圧を付与されるように適合されたチャンバに曝露されるようにしてもよい。
【0042】
工具または工具部品は、以下の群より選択される工具の一部を形成してもよい:
パルプスラリーからパルプを取り出すためのピックアップ工具と、
他の工具からある量のパルプを受け取るためのトランスファー工具と、
一定量のパルプを加圧プレスして成形品を形成するプレス工具。
【0043】
工具または工具部品は、相互接続可能であり、好ましくは移動可能に相互接続可能である少なくとも2つの工具壁部を含むことができる。
【0044】
第2の態様によれば、パルプスラリーから製品を成形するための装置であって、上記のような少なくとも1つの工具または工具部品と、製品面にパルプを付与する手段と、真空引きし、および/または背面の大気圧よりも大きな圧力を印加するための手段とを有する装置が提供される。
【0045】
本発明の装置は、工具壁部の背面側に配置され、工具壁部に熱を供給するように構成された加熱エレメントをさらに有することができる。
【0046】
加熱エレメントは、工具壁部から間隔を置いて配置されたヒータ部に配置されてもよい。
【0047】
ヒータ部は、工具壁部と一体に形成されてもよい。
【0048】
ヒータ部は、少なくとも1つのスペーサ要素を介して工具壁部に接触する別個の部品(セパレートパート)によって形成することができる。
【0049】
この別個の部品は、工具壁部とは異なる材料から形成されてもよい。スペーサ要素は、工具壁部またはヒータ部と一体に形成されてもよい。スペーサ要素は、いずれの流路も塞がないように配置されることが好ましい。これは、工具壁部の背面にスペーサ要素を形成することによって容易になされる。
【0050】
これに代えて、加熱エレメントを工具壁部と一体化するようにしてもよい。
【0051】
例えば、加熱エレメントは、工具壁部の背面において窪んでいてもよい。
【0052】
第3の態様によれば、パルプスラリーから製品を成形するための工具または工具部品を製造する方法であって、工具または工具部品が形成される材料の粒子を準備し、前記粒子の複数の層をターゲット面に連続的に分配し、粉末粒子が融合されて粒子同士が一緒になるようにその中で製造される工具または工具部品の断面に対応するターゲット面の粒子の各分配層の位置にエネルギ源を向けることを含む方法が提供される。
【0053】
本発明方法は、工具壁部を通って製品面から背面に延びる複数の流路によって付与される孔を有する工具壁部を形成することをさらに含み、流路は真っ直ぐであるか又は1つ以下の屈曲点をもつ湾曲した形状である。
【0054】
第4の態様によれば、パルプスラリーから製品を成形する方法が提供される。本発明方法は、上述したようなモールドを準備し、モールドの背面に真空を付与するとともに、モールドの製品面にパルプスラリーを供給することを含む。
【0055】
本発明方法は、スラリー容器からパルプスラリーを取り出すためにモールドを使用することをさらに含む。
【0056】
本発明方法は、製品を形成するためにパルプスラリーを加圧プレスするモールドを使用することをさらに含み、それによって少なくともいくらかの溶媒がパルプスラリーから除去される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1a】
図1aは、パルプスラリーから製品を形成する方法の概要を示す概略図である。
【
図1b】
図1bは、パルプスラリーから製品を形成する方法の概要を示す概略図である。
【
図1c】
図1cは、パルプスラリーから製品を形成する方法の概要を示す概略図である。
【
図1d】
図1dは、パルプスラリーから製品を形成する方法の概要を示す概略図である。
【
図2a】
図2aは、異なる流路設計を有するモールド壁部分を示す概略図である。
【
図2b】
図2bは、異なる流路設計を有するモールド壁部分を示す概略図である。
【
図2c】
図2cは、異なる流路設計を有するモールド壁部分を示す概略図である。
【
図2d】
図2dは、異なる流路設計を有するモールド壁部分を示す概略図である。
【
図2e】
図2eは、異なる流路設計を有するモールド壁部分を示す概略図である。
【
図3】
図3は、モールド壁の部分を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のプレスモールドの一部を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態のプレスモールドの一部を示す概略図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態のプレスモールドの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1aに、パルプスラリー2を保持する容器1内に部分的に浸漬されたピックアップ工具10を概略的に示す。ピックアップ工具は工具ホルダ11に取り付けられ、ピックアップ工具と共に圧力調整器P1に接続された真空チャンバ12を画定する。圧力調整器は、少なくとも部分的な真空(すなわち、大気圧より低い空気圧)および/または大気圧よりも大きな空気圧を選択的に生成する能力を有することができる。
【0059】
ピックアップ工具がパルプスラリー2に浸漬されている間に、圧力調整器P1が真空を発生させ、パルプ繊維3をピックアップ工具10の製品面に貼り付ける。
【0060】
図1bに、パルプ繊維3をトランスファー工具20に移送するピックアップ工具10を概略的に示す。トランスファー工具は、真空または空気圧を生成することができる第2の圧力調整器P2に接続されてもよい。トランスファー工具は、第2の圧力調整器に接続された真空チャンバ22を画定するようにトランスファー工具ホルダ21に取り付けられてもよい。
【0061】
ピックアップ工具からトランスファー工具へのパルプ繊維3の移送中において、大気圧より高い空気圧が第1の圧力調整器P1によって生成され、パルプ繊維3をピックアップ工具から取り外すことができる。
【0062】
その代わりに、またはその補助として、第2の圧力調整器P2によって真空が生成され、パルプ繊維がトランスファー工具20によって受け取られる。
【0063】
図1cに、加熱装置5とエネルギ供給源Eを有する乾燥装置を概略的に示す。この乾燥装置を用いて、パルプ3から十分な量の水を除去し、さらなる処理のためにそれを調整し、および/または製品3′の形成を完了させることができる。
【0064】
図1dに、雄型プレス工具30と雌型プレス工具40とを含む加圧装置を概略的に示す。プレス工具の一方または両方は、それぞれの工具ホルダ31,41にそれぞれ取り付けられ、それぞれの真空チャンバ32,34にそれぞれ接続される。真空チャンバは、それぞれの圧力調整器P3,P4にそれぞれ接続することができる。
【0065】
プレス工具の一方または両方に、エネルギ供給源E1,E2によって付勢され、場合によっては制御装置Cによって制御される加熱エレメント33,43を設けることができる。加熱は、電気加熱エレメント、熱風または液体または誘導によって達成することができる。
【0066】
プレス工具およびそれらに関連する工具ホルダは、部分的に成形されたパルプ製品が挿入され得る開放位置と加圧位置との間で相対的に移動可能であり、プレス工具は互いに押し付けられ、製品3″それぞれの工具30,40の製品面に形成される。
【0067】
加圧位置にあるとき、ヒータ33,43の一方または両方によって熱を供給することができる。
【0068】
加圧工程中において、一方または両方の圧力調整器P3,P4が製品3″から出てきた水蒸気の排出を助ける真空を提供することができる。
【0069】
代替案として、圧力調整器の1つは真空を提供し、他の1つは大気圧よりも大きな圧力を提供することができる。
【0070】
必要に応じて、加圧プロセス中にモールドを通して熱風または熱蒸気を導入することができる(
図1d)。
【0071】
2つ以上の連続的な加圧工程が採用されてもよいことに留意されたい。そのような連続的な加圧工程では、例えば、製品3″の全てまたは一部を徐々に形成し、および/またはコーティングおよび装飾などの追加の特徴を製品に加えることができる。
【0072】
一実施形態では、工程は、
図1a、
図1bおよび
図1dに関して記載されたことに従って実行される。
【0073】
一実施形態では、ピックアップ工具10は、パルプ繊維を乾燥装置に直送することができる。そのような直接的な移送は、第1の圧力調整器P1が大気圧よりも大きな空気圧を生成することにより補助されてもよい。したがって、この実施形態では、工程は、
図1aおよび
図1cに関してのみ説明したことに従って実行される。
【0074】
他の実施形態では、ピックアップ工具10はプレス工具としても使用することができる。したがって、この実施形態では、
図1aおよび
図1dに関してのみ説明した手順に従って工程が実行される。
【0075】
図2a~
図2eは、異なる流路設計を有するモールド壁部分を概略的に示す。モールド壁はすべて製品面Fpおよび背面Fbを有する。製品面Fpは製造物と接触するモールドのフェイス面であり、背面Fbはモールド壁の対向面である。背面は、典型的には、真空チャンバの一部を画定することができる。
【0076】
モールド壁は、0.25~10mm、好ましくは0.5~5mmの厚さを有することができる。壁の肉厚は、工具の異なる部分によって異なる。また、異なる機能をもつ工具は、異なる厚さを有してもよい。
【0077】
流路は、製品面Fpを背面Fbに接続する。流路の製品面開口面積は、流路の背面開口面積より小さくてもよいが、わざわざ小さくする必要はない。このようにして、流路は、背面から製品面に向かって減少する断面積を有することができる。
【0078】
流路は、製品面Fpと平行に取られた各流路断面の重心を通る直線または曲線として規定することができる中心軸を呈する。
【0079】
図2aに、同じサイズおよび構成の一対の流路を有するパルプモールド壁部分を概略的に示す。流路は、一定の流路断面を有するそれぞれの第1の流路部分と、テーパ状の断面を有するそれぞれの第2の流路部分とを有する。
【0080】
図2bに、背面から製品面Fpに向かって連続的に先細りする一対の流路を有するパルプモールド壁部分を概略的に示す。
【0081】
図2aおよび
図2bの流路およびそれぞれの中心軸線は、製品面Fpに対して垂直に延びている。
【0082】
図2cに、中心軸が製品面Fpに対して直角以外の角度で延びる流路を有するパルプモールド壁部を概略的に示す。この角度は、20~90度の間隔、好ましくは30~90度または60~90度とすることができる。
【0083】
図2cの流路は、一定の断面積、または製品面Fpに向かって減少する断面積を有することができる。
【0084】
モールド壁部は、前記間隔内において異なる角度に延びる流路を呈することができる。
【0085】
図2dに、湾曲した流路を有するパルプモールド壁部を概略的に示す。具体的には、そのような湾曲した流路は、図示のように1つの平面内、または2つの直交する平面内で湾曲していてもよい。
【0086】
図2dの流路は、一定の断面積、または製品面Fpに向かって減少する断面積を有することができる。
【0087】
図2eは、1つの屈曲点をもつ湾曲流路を有するパルプモールド壁部分を概略的に示す。そのような湾曲した流路は、図示のように1つの平面内、または2つの直交する平面内で湾曲していてもよい。
【0088】
図2eの流路は、一定の断面積、または製品面Fpに向かって減少する断面積を有することができる。
【0089】
1つのモールドは、
図2a~
図2eの1つまたは複数に従って形成される流路を呈示することができることに留意されたい。特に、モールドは、
図2a~
図2eのいずれか1つに従って形成された流路を含む少なくとも1つの壁部分と、
図2a~
図2eの他の1つに従って形成された流路を含む他の壁部分とを含むことができる。
【0090】
図2dおよび
図2eを参照すると、流路の曲げ半径は、流路の壁厚の1/2より大きく、好ましくは、流路の厚さの3/4より大きく、または流路の壁厚の1/1より大きくすることができる。
【0091】
流路は、流路長さにわたって変化する断面を提示することができることに留意されたい。流路は、四角形、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、十一角形、十二角形、または60°から180°までの内角をもつ他の多面形状など、円形、楕円形または多角形の断面を有する少なくとも一部を提示することができる。
【0092】
図3に、製品面が上向き/右向きで、背面が下向き/左向きとなるモールド壁の一部を概略的に示す。
【0093】
図3のモールド壁部は、モールドの主要動作段階の期間中において、水平なモールド壁部分Ph、すなわち水平に対して +/- 45°、好ましくは +/- 30°または +/- 15°のモールド壁部分を呈していてもよい。このような水平モールド壁部分Phは、平坦であるか又は実質的に平坦であってもよい。例えば、このような実質的に平坦なモールド壁部分Phは、面内の任意の方向に沿って10%未満、好ましくは5%未満だけその面から外れるように湾曲していてもよい。
【0094】
モールド壁部分は、凸状のモールド壁部分Pcx、すなわち、凸状の製品面Fpを有するモールド壁部分を呈していてもよい。
【0095】
凸状のモールド壁部分は、1つまたは2つの互いに直交する方向に凸であってもよいことに留意されたい。
【0096】
また、モールド壁部分は、垂直モールド壁部分Pv、すなわちモールドの主要動作段階の期間中において、垂直に対して +/- 45°、好ましくは +/- 30°または +/- 15°のモールド壁部分を呈していてもよい。このような垂直モールド壁部分は、平坦であるか又は実質的に平坦であってもよい。例えば、実質的に平坦なモールド壁部分は、面内の任意の方向に沿って10%未満、好ましくは5%未満だけその面からずれるように湾曲していてもよい。
【0097】
また、モールド壁部分は、凹状モールド壁部分Pcv、すなわち凹状の製品面Fpを有するモールド壁部分を呈していてもよい。
【0098】
本開示の目的のために、「気孔率」という用語は、所定の壁部分の全壁面積(流路開口を含む)に対する流路開口面積の比として定義される。
【0099】
製品面における細孔開口部は、0.25mm~2mmの外径を有することができる。背面における細孔開口部は、0.3~4mmの外径を有することができる。
【0100】
したがって、製品面Fpにおける細孔開口部は、製品面上で0.045~3.2mm2、好ましくは0.045~2mm2または0.050~1mm2の開口面積を有することができる。
【0101】
また、背面Fbにおける細孔開口部は、0.45~13mm2、好ましくは0.1~5mm2または0.3~2mm2の開口面積を有することができる。
【0102】
よって、製品面開口面積に対する背面開口面積の比は、1.1~6のオーダー、好ましくは1.2~5または1.4~4のオーダーとすることができる。
【0103】
凸状モールド壁部分Pcxは、全てのモールド壁部分の最大の気孔率を示すことができる。好ましくは、凸状モールド壁部分は、10~90%、好ましくは20~60%の気孔率を有する。
【0104】
垂直モールド壁部分Pvは、凸状モールド壁部分Pcxよりも低い気孔率を有することができる。好ましくは、垂直モールド壁部分Pvは、15%~80%、好ましくは25%~60%の気孔率を有することができる。
【0105】
水平モールド壁部分Phは、垂直モールド壁部分Pvよりも低い気孔率を有していてもよい。好ましくは、水平モールド壁部分Phは、20%~75%、好ましくは30%~55%の気孔率を有することができる。
【0106】
凹状モールド壁部分Pcvは、水平モールド壁部分Phよりも低い気孔率を示すことができ、好ましくは、1~70%、好ましくは35~50%の気孔率を有する。
【0107】
上述したモールドは、3D印刷法のような添加材製造プロセスによって製造することができる。このような添加材製造プロセスは、平均粒径が1~50ミクロン、好ましくは5~30ミクロンの粉末材料の選択的焼結を含んでいてもよい。焼結プロセス中において、粉末材料は、レーザービームまたは電子ビームによるエネルギの付加によって完全に溶融される。
【0108】
モールドを作製するための材料は、金属または合金のいずれであってもよい。そのような材料の例には、チタンおよびチタン合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、青銅、黄銅、コバルトおよびクロム合金およびステンレス鋼が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
あるいは、その材料は、プラスチック材料のようなポリマー材料であってもよい。
【0110】
このような成形プロセスを通して、製品面Fpを背面Fbに接続する良好に画定された流路を提示し、これら流路間の材料が均質であり、少なくとも95%、好ましくは99%または99.9%のボイドの無い多孔質モールドを達成することが可能になる。
【0111】
上の
図1a~1dを参照すると、工具10,20,30,40のうちの1つ以上が本願明細書の開示に従って形成されていてもよいことに留意されたい。
【0112】
さらに、例えばピックアップ工具10および/またはトランスファー工具20は、プレス工具30,40よりも薄い壁および/またはより低い融点を有する材料で形成されてもよいことに留意されたい。
【0113】
工具は、1つの完全な工具として、またははんだ付け、溶接、接着剤または融着によって接合された少なくとも2つの工具部品として製造することができる。
【0114】
さらに、工具は、工具部品を連結するヒンジ機構を備えた一対の工具部品として形成することができる。このようにして形成された工具は、さらに複雑な製品の製造を可能にすることができる。
【0115】
図4は、第1の実施形態に係る加圧モールド壁部の一部を模式的に示す図である。
図4は、雄型に向けられているが、同じ設計を雌型にも採用してよいことが理解される。
【0116】
加圧モールドは、加熱エレメント33が配置される凹部1015を有するモールド壁101を提供する。モールド壁101は、
図2a~
図3のいずれかの開示に従って形成することができる流路102を提供する。
【0117】
くぼみ及び加熱エレメントは、抵抗発熱用の細長いリード線または加熱された液体またはガスを導く案内用の流路によって形成することができる。代替案として、凹部は誘導加熱することができる磁性体を受け入れることができる。このような磁性体は、個々に分離したアイランドとして形成するか、または1本以上の細長いロッドとして形成することができる。
【0118】
凹部および加熱エレメントは、背面の全部または一部に及ぶことができる。凹部および加熱エレメントのセクションは、必要であるとみなして互いから離間させることができる。
【0119】
凹部1015は、その背面からモールド壁内に延び込ませることができる。モールド壁内に延び込むことができる距離の非限定的な例は、関連する壁部分におけるモールド壁厚の約3/4または約1/2または約1/4とすることができる。
【0120】
凹所が背面に向かって開いている場合、加熱エレメント33は、モールド壁部分が製造された後に挿入されてもよい。また、必要に応じて加熱エレメント33を交換することも可能である。
【0121】
本実施形態では、背面Fbは、真空チャンバ32に向けて開放されており、
図4中の矢印で示すように真空引きすることができる。
【0122】
図5に、第2の実施形態による加圧モールドの一部を概略的に示す。
図5は、雄型に向けられているが、同じ設計が雌型に採用されてもよいことが理解される。
【0123】
加圧モールドは、外側部分1011とヒータ部1013とを含み、その間に間隙1021が設けられている。スペーサ1012は、ヒータ部1013と外側部分1011との間に延び出し、間隙1021にまたがっている。
【0124】
外側部分1011の流路102は、製品面Fpを背面Fbに接続する。これらの流路は、
図2a~
図3のいずれかの開示に従って形成することができる。
【0125】
ヒータ部1013の背面Fb2には凹部1015が存在していてもよく、この凹部1015には加熱エレメント33が
図4に関連して述べたいずれかの選択肢に従って配置されるようにしてもよい。
【0126】
ヒータ部1013の背面は、真空チャンバ32に向かって開放されていてもよい。
【0127】
マニホールド流路1022は、ギャップ1021をヒータ部1013の背面Fb2にも連通させる。これらのマニホールド流路は、流路102よりも大きな断面を有し、その数は流路102の数より少ない。例えば、マニホールド流路1022の主な幅は、流路102の幅の10倍から1000倍のオーダーであってもよい。
【0128】
さらに、マニホールド流路1022の数は、流路102の数の1/10~1/10000程度であってもよい。マニホールド流路1022の総流断面は、流路102の総流断面と等しいか、またはそれより大きくすることができる。例えば、マニホールド流路1022の総流断面は、流路102の総流断面の100~300%程度とすることができる。
【0129】
外側部分1011、ヒータ部1013およびスペーサ1012は、一体に形成されてもよい。
【0130】
図6は、第3実施形態に係る加圧モールドの一部を模式的に示す図である。本実施形態は、モールドがスペーサ1012と一体に形成された外側部分1011を提供する点で、
図5のものに類似している。流路102は、
図2a~
図3および
図5に関して説明したものとして形成することができる。
【0131】
図6の実施形態では、ヒータ部1013´およびオプションとしてスペーサ1012は、別個の材料片および外側部分1011とは異なる材料から形成される。
図5のヒータ部1013と同様にヒータ部に加熱エレメントを配置してもよい。
【0132】
これに代えて、加熱エレメント33をヒータ部1013のなかに封入してもよい。いずれにしても、マニホールド流路1022は、
図5に関連して説明した方法でヒータ部1013´を貫通していてもよい。
【0133】
ヒータ部1013´は、金属材料で形成された本体を備えていてもよい。
【0134】
ヒータ部1013´の後側には、絶縁体1014が設けられていてもよい。絶縁体1014は、絶縁体1014を通って延びる入口流路1024からマニホールド流路1022への真空の分配を可能にするように、ヒータ部1013´に当接していてもよく、またはヒータ部1013´からわずかに離間していてもよい。
【0135】
絶縁体1014は、セラミック材料などの剛性の絶縁材料から形成することができる。絶縁体1014は、例えばそれを損傷から保護するために、ケーシングによって取り囲まれていてもよい。
【0136】
両方の加圧モールド(例えば、雄型と雌型)には、絶縁体を設けることができる。そのような場合、絶縁体は、モールドが成形位置で一緒にされたときに、エネルギ損失が低減されるように、モールドを実質的に取り囲むことができる。モールドが出合う場所には、蒸気を逃がすためのギャップ間隙が設けられていてもよい。代替的または追加的に、蒸気を逃がすための貫通孔を一方または両方の絶縁体に設けることができる。
【0137】
ヒータ1013,1013´が設けられている場合のように、追加の本体がモールドの背面の近くに配置される実施形態では、スペーサは、製品面に加えられた圧力の一部を追加の本体に向けて送ることができる。
【0138】
典型的には、製品面に印加される圧力の95%未満が、好ましくは90%未満、80%未満、70%未満、50%未満、30%未満または10%未満が追加の本体に伝達されるようにすることができる。圧力の非伝達部分は、それ自体の剛性のためにモールドによって吸収されてもよい。
【0139】
モールド表面に印加される圧力は、プレス工程中の用途に応じて、少なくとも100kPa、少なくとも25kPa、少なくとも450kPa、少なくとも800kPaまたは少なくとも1mPaのオーダーとすることができる。
【0140】
製品面および/または背面は、例えば、砥石研磨され、艶出し研摩され、陽極酸化され、または表面コーティングを設けるなどのような表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理は、例えば、モールドを製造する材料と比較して腐食の危険性を低減するために使用することができる。表面処理またはコーティングは、代替的にかまたは追加的に粘着防止特性を提供することができる。そのような粘着防止特性は、例えばモールドが作製される材料よりも疎水性の材料で付与することができる。さらに別の選択肢として、表面処理またはコーティングは、モールド作製材料と比べて増加した硬度を有する表面を提供することができる。
【符号の説明】
【0141】
1…容器、2…パルプスラリー、3…パルプ繊維、3′,3″…製造物、5…加熱装置、10…ピックアップ工具、11…工具ホルダ、12,22,32,42…真空チャンバ、20…トランスファー工具、21…トランスファー工具ホルダ、30…雄型プレス工具、31,41…工具ホルダ、33,43…ヒータ(加熱エレメント)、40…雌型プレス工具、
101…モールド壁部(自己支持工具壁部)、102…流路、1011…外側部分、1012…スペーサ、1013,1013′…ヒータ部、1014…絶縁体、1015…くぼみ、1021…ギャップ(間隙)、1022…マニホールド流路、1024…入口流路、
P1,P2,P3,P4…圧力調整器、E,E1,E2…エネルギ供給源、C…制御装置、
Fp…製品面、Fb…背面。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプスラリーから製品を成形するプロセスで使用される工具または工具部品であって、
前記工具または工具部品は、製品に接触する製品面と、前記製品面に対して壁の他方側の背面とを有する自己支持工具壁部を有し、
前記自己支持工具壁部には、前記自己支持工具壁部を通って前記製品面から前記背面まで延びる複数の流路によって与えられる孔があり、
前記流路は真っ直ぐであるか又は1つ以下の屈曲点で湾曲しており、
前記製品面には第1の多孔性表面部および第2の多孔性表面部があり、
前記第1の多孔性表面部は前記第2の多孔性表面部より大きな気孔率を示す、ことを特徴とする工具または工具部品。
【請求項2】
前記第1の多孔性表面部は凸面部であり、前記第2の多孔性表面部は平坦面部である、ことを特徴とする請求項1に記載の工具または工具部品。
【請求項3】
工具壁厚さは、前記平坦面よりも前記凸面部のほうが小さい、ことを特徴とする請求項2に記載の工具または工具部品。
【請求項4】
前記第1の多孔性表面部は平坦面部であり、前記第2の多孔性表面部は凹面部である、ことを特徴とする請求項1に記載の工具または工具部品。
【請求項5】
前記第1の多孔性表面部および前記第2の多孔性表面部は、実質的に平坦な面であり、互いに45°~135°の角度をなす一対の表面部を形成し、前記工具または工具部品の主要な動作中に水平面に対して最大の角度を示す一方の前記第1の多孔性表面部は、他方の前記第2の多孔性表面部よりも大きな気孔率を示す、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項6】
前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面に向かって先細りになる断面を呈する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項7】
前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面に対して40~90度の角度に延びる中心軸を呈する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項8】
前記工具壁は0.2~20mmの厚さを有する、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項9】
前記工具壁部は、均質な材料片として形成され、前記流路間にボイドが少なくとも95%無い、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【請求項10】
前記工具壁部は3D印刷されたものである、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の工具または工具部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
製品面および/または背面は、例えば、砥石研磨され、艶出し研摩され、陽極酸化され、または表面コーティングを設けるなどのような表面処理が施されていてもよい。そのような表面処理は、例えば、モールドを製造する材料と比較して腐食の危険性を低減するために使用することができる。表面処理またはコーティングは、代替的にかまたは追加的に粘着防止特性を提供することができる。そのような粘着防止特性は、例えばモールドが作製される材料よりも疎水性の材料で付与することができる。さらに別の選択肢として、表面処理またはコーティングは、モールド作製材料と比べて増加した硬度を有する表面を提供することができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]パルプスラリーから製品を成形するプロセスに使用される工具または工具部品であって、製品に接触する製品面と、前記製品面に対して壁の反対側の背面とを有する自立型工具壁部と、前記工具壁部を通って前記製品面から前記背面まで延びる複数の流路によって与えられる孔を呈する工具壁部と、を具備し、前記流路は真っ直ぐであるか又は1つ以下の屈曲点で湾曲していることを特徴とする工具または工具部品。
[2]前記製品面は、平坦面部および凸面部を呈することを特徴とする[1]に記載の工具または工具部品。
[3]工具壁厚さは、前記平坦面部より前記凸面部のほうが好ましくは30~70%小さいかまたは40~60%小さいことを特徴とする[2]に記載の工具または工具部品。
[4]前記凸面部は、前記平坦面部より大きい気孔率を示すことを特徴とする[2]または[3]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[5]前記製品面は、平坦面部および凹面部を呈することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[6]前記平坦面部は、前記凹面部より大きい気孔率を示すことを特徴とする[5]に記載の工具または工具部品。
[7]前記製品面は、実質的に平坦であり、互いに45°~135°の角度をなす一対の表面部分を有し、工具または工具部品の主要な動作中に水平面に対して最大の角度を呈する一方の前記表面部分は、他方の前記表面部分よりも大きな気孔率を有することを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[8]前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面において前記背面の対応する流路開口面積より小さい流路開口面積を示すことを特徴とする[1]乃至[7]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[9]前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面に向かって先細りになる断面を呈することを特徴とする[1]乃至[8]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[10]前記流路の少なくともいくつかは、前記製品面に対して40~90度の角度に延びる中心軸を呈することを特徴とする[1]乃至[9]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[11]前記流路の少なくともいくつかは、湾曲した中心軸を呈することを特徴とする[1]乃至[10]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[12]前記製品面は、第1および第2の並置された表面部分を有し、前記第1の表面部分に開口する流路の中心軸は、表面部分の製品面に対して前記第2の表面部分に開口する流路の中心軸とは異なる角度で延びていることを特徴とする[1]乃至[11]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[13]工具または工具部品の内側のボイド容積は、該工具または工具部品にまたがる総体積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、少なくとも60%または少なくとも80%であることを特徴とする[1]乃至[12]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[14]前記流路の少なくとも一部は、該流路近傍の壁の厚さを超える長さを有することを特徴とする[1]乃至[13]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[15]少なくともいくつかの前記流路の製品面開口は、0.1~2mmの最大幅をもつ断面を有することを特徴とする[1]乃至[14]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[16]少なくともいくつかの前記流路は、前記製品面と前記背面との間に位置する少なくとも1つの分岐を有することを特徴とする[1]乃至[15]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[17]前記工具壁は、0.2~20mmの厚さ、好ましくは0.3~15mmまたは0.5~10mmの厚さを有することを特徴とする[1]乃至[16]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[18]前記工具壁部は、前記流路間のボイドが95%未満、好ましくは99%未満または99.9%未満の均質な材料片として形成されることを特徴とする[1]乃至[17]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[19]工具または工具部品は、該工具または工具部品が動作中において自己支持するのに十分な材料および壁厚で形成されることを特徴とする[1]乃至[18]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[20]工具の背面は、大気圧以外の空気圧を提供するように適合されたチャンバに対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%または少なくとも90%が曝されることを特徴とする[1]乃至[19]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[21]工具または工具部品は、パルプスラリーからパルプを取り出すためのピックアップ工具、他の工具からある量のパルプを受け取るためのトランスファー工具、および一定量のパルプを加圧して成形品を成形するプレス工具からなる群より選択される工具の一部を形成することを特徴とする[1]乃至[20]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[22]工具または工具部品は、相互接続可能であり、好ましくは可動に相互接続可能な少なくとも2つの工具壁部を含むことを特徴とする[1]乃至[21]のいずれかに記載の工具または工具部品。
[23]パルプスラリーから製品を成形する装置であって、[1]~[22]のいずれかに記載の少なくとも1つの工具または工具部品と、前記製品面にパルプを付与する手段と、真空引きし、および/または前記背面の大気圧よりも大きな圧力を印加する手段と、を具備することを特徴とする製品の成形装置。
[24]前記工具壁部(101)の背面側に配置され、前記工具壁部に熱を供給する加熱エレメント(33)をさらに有することを特徴とする[23]に記載の成形装置。
[25]前記加熱エレメントは、前記工具壁部から間隔をあけて配置されるヒータ部に配置されることを特徴とする[24]に記載の成形装置。
[26]前記ヒータ部は、前記工具壁部と一体に形成されていることを特徴とする[25]に記載の成形装置。
[27]前記ヒータ部は、少なくとも1つのスペーサ要素を介して前記工具壁部と接触する別個の部品によって形成されていることを特徴とする[25]に記載の成形装置。
[28]前記加熱エレメントが前記工具壁部と一体化していることを特徴とする[24]に記載の成形装置。
[29]パルプスラリーからの製品を成形するための工具または工具部品の製造方法であって、工具または工具部品が形成されるべき材料の粒子を供給し、ターゲット面に前記粒子の複数の層を連続的に分配し、前記粉末粒子が融合して一緒になるように、その中で製造されるべき工具または工具部品の断面に対応する前記ターゲット面の粒子の各分配層の位置にエネルギ源を向ける、ことを含むことを特徴とする工具または工具部品の製造方法。
[30]製品面から工具壁部を通って背面まで延びる複数の流路によって規定される細孔を有する前記工具壁部を形成する工程をさらに有し、前記流路は真っ直ぐであるか又は1点以下の屈曲点で湾曲していることを特徴とする[29]に記載の製造方法。
[31]パルプスラリーから製品を成形する方法であって、[1]~[22]のいずれかに記載のモールドを準備し、前記モールドの背面に真空を付与し、前記モールドの製品面にパルプスラリーを付与する、ことを特徴とする製品の成形方法。
[32]スラリー容器からパルプスラリーを取り出すのに前記モールドを使用する工程をさらに有することを特徴とする[31]に記載の成形方法。
[33]製品を形成するためにパルプスラリーを加圧するのに前記モールドを使用する工程をさらに有し、それによって少なくともいくらかの溶媒が前記パルプスラリーから除去されることを特徴とする[31]または[32]のいずれかに記載の成形方法。
【外国語明細書】