(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136148
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】がんの治療に使用するためのミルシクリブの製剤及びその治療的組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20220908BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220908BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220908BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220908BHJP
A61K 31/44 20060101ALI20220908BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20220908BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20220908BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P1/16
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/44
A61K31/47
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116328
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2020524839の分割
【原出願日】2018-11-06
(31)【優先権主張番号】62/582,288
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519067699
【氏名又は名称】ティジアーナ ライフ サイエンシズ パブリック リミティド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】クンワー シャイルバイ
(57)【要約】
【課題】本出願は、概して、がんの治療に関し、より詳細には、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤と少なくとも1つの追加の抗がん薬との組み合わせによるがんの治療に関する。
【解決手段】本出願は、がん(例えば、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫)の治療及び/または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、当該患者に、治療上有効な量のCDK阻害剤(例えば、ミルシクリブ)を、治療上有効な量の他の抗がん薬(例えば、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブ)と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【選択図】
図68
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓がんの治療を、それを必要とする患者に行う方法における使用のためのミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、もしくは互変異性体を含む医薬組成物であって、前記方法は、前記患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、もしくは互変異性体を、治療上有効な量の他の抗がん薬と組み合わせて投与することを含み、ここで前記他の抗がん薬は、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩である、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記肝臓がんが、肝細胞癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記他の抗がん薬が、ソラフェニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ソラフェニブの治療上有効な量が、1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記がんが、肝細胞癌である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記他の抗がん薬が、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記レンバチニブの治療上有効な量が、1日1回8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、または34mgである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記他の抗がん薬が、レゴラフェニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記レゴラフェニブの治療上有効な量が、80、100、または120mgであり、1日1回、3週間投与され、その後、無投与が1週間続き、このサイクルが任意選択により繰り返される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ミルシクリブ及び前記他の抗がん薬が、前記患者に同時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ミルシクリブ及び前記他の抗がん薬が、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬製剤が、制御放出形態である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ミルシクリブ及び前記他の抗がん薬が、別個の医薬製剤でそれぞれ投与され、各製剤は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬製剤の一方または両方が、制御放出形態である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ミルシクリブ及び前記他の抗がん薬が、前記患者に逐次的に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ミルシクリブの投与が、前記他の抗がん薬を前記患者に投与する前に開始される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ミルシクリブの投与が、前記他の抗がん薬を前記患者に投与した後に開始される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ミルシクリブが、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬製剤が、経口投与用に製剤化される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬製剤が、錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
肝細胞癌の治療を、それを必要とする患者に行う方法における使用のためのミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、もしくは互変異性体を含む医薬組成物であって、前記方法は、前記患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、もしくは互変異性体を、治療上有効な量のソラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、もしくは互変異性体と組み合わせて投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項23】
前記ソラフェニブの治療上有効な量が、1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ミルシクリブ及び前記他の抗がん薬が、時間的に近接して投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ミルシクリブが、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記医薬製剤が、経口投与用に製剤化される、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記医薬製剤が、錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
肝細胞癌の治療を、それを必要とする患者に行う方法における使用のためのミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、もしくは互変異性体を含む医薬組成物であって、前記方法は、前記患者に、
(a)200、400、または800mg/日のソラフェニブ;および
(b)50、75、100、125、または150mg/日のミルシクリブ
を投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項30】
前記ミルシクリブが、前記患者に、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、請求項29に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月6日に出願された米国特許仮出願第62/582,288号の利益及び優先権を主張するものであり、その全体は、全ての目的について、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、概して、がんの治療に関し、より詳細には、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤と少なくとも1つの追加の抗がん薬との組み合わせによるがんの治療に関する。本発明は、医療及び薬物療法の分野において、有用性が認められる。
【背景技術】
【0003】
本明細書中、化合物1とも称され得るミルシクリブ、またはN,1,4,4-テトラメチル-8-((4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル)アミノ)-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[4,3-h]キナゾリン-3-カルボキサミドは、次式の構造を有する:
【化1】
【0004】
ミルシクリブは、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK7、及びCDK9を含む複数のCDK、ならびにTRK(TPKA及びTRKC)に対する低分子阻害剤であり、いくつかの前臨床腫瘍モデルで有効性が示されている(Albanese C et al.(2010)Mol Cancer Ther 9:2243-2254)。第I相試験において、ミルシクリブによる経口治療は、忍容性が良好であることが判明しており、当該薬物は、胸腺癌、膵臓癌及び結腸癌などの進行性固形腫瘍の患者において有望な臨床反応を示した(Weiss GJ et al.(2013)Invest New Drugs 31:136-144)。主な毒性プロファイルは、振戦及び胃腸毒性からなり、治療を中断した場合、可逆的であった。本試験の結果により、RP2Dは、150mg/日が推奨された。
【0005】
特に、肝細胞癌(HCC)は、極めて複雑な多因子性疾患であり、疾患の進行及び患者の予後に影響する交絡因子が多数関連している。テロメア機能障害、発がん経路の活性化、DNA損傷チェックポイントの破綻、炎症促進性及び転移性経路の活性化、ならびに酸化ストレス応答の誘導を含め、機序の範囲が広い。そのため、HCCに対する効果的な治療法には、肝細胞の増殖を制御し、また、その転移能を抑制することが必要である。ミルシクリブは、CDKに対して広範な阻害活性を示し、がん細胞の増殖を効果的に遅らせる。したがって、ミルシクリブの抗がん作用が、チロシンキナーゼ阻害剤によって増強され、相乗的な抗腫瘍形成活性をもたらし得るという提案は、合理的なものである。
【0006】
がん治療のために、ミルシクリブを第2の抗がん薬または抗がん剤と組み合わせて使用することによる、新しい治療法が必要とされている。本出願は、そのような必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0007】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のCDK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量の他の抗がん薬と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【0008】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫である、方法に関する。
【0009】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、CDK阻害剤が、ミルシクリブまたはその薬学的に許容される塩であり、他の抗がん薬が、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、パルボシクリブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、カルフィルゾミブ、セリチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、イマチニブ、イキサゾミブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、ニラパリブ、オシメルチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ルカパリブ、ルキソリチニブ、ソニデジブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギボル、またはその薬学的に許容される塩である、方法に関する。
【0010】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、他の抗がん薬が、ソラフェニブまたはその薬学的に許容される塩である、方法に関する。
【0011】
一態様において、本出願は、ソラフェニブの治療上有効な量が1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである、方法に関する。
【0012】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、腎細胞癌、肝細胞癌、または甲状腺癌である、方法に関する。
【0013】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、他の抗がん薬が、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩である、方法に関する。
【0014】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、レンバチニブの治療上有効な量が、1日1回8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、または34mgである、方法に関する。
【0015】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、腎細胞癌または甲状腺癌である、方法に関する。
【0016】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、他の抗がん薬が、レゴラフェニブまたはその薬学的に許容される塩である、方法に関する。
【0017】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、レゴラフェニブの治療上有効な量が、80、100、または120mgであり、1日1回、3週間投与され、その後、無投与が1週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される、方法に関する。
【0018】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、大腸癌または消化管間質腫瘍である、方法に関する。
【0019】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、他の抗がん薬が、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩である、方法に関する。
【0020】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、スニチニブの治療上有効な量が、12.5、25、37.5、50、62.5、75、87.5、または100mgであり、1日1回連続してまたは4週間投与され、その後、無投与が2週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される、方法に関する。
【0021】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、腎細胞癌または消化管間質腫瘍である、方法に関する。
【0022】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、他の抗がん薬が、ニボルマブである、方法に関する。
【0023】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、非小細胞肺癌または腎細胞癌である、方法に関する。
【0024】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、他の抗がん薬が、ゲムシタビンまたはその薬学的に許容される塩である、方法に関する。
【0025】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、ゲムシタビンの治療上有効な量が、1000mg/m2であり、30分かけて週1回7週間投与され、その後、無投与が1週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される、方法に関する。
【0026】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、乳癌である、方法に関する。
【0027】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、他の抗がん薬が、パルボシクリブまたはその薬学的に許容される塩である、方法に関する。
【0028】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、パルボシクリブの治療上有効な量が、75、100、または125mgであり、1日1回、3週間投与され、その後、無投与が1週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される、方法に関する。
【0029】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、がんが、乳癌である、方法に関する。
【0030】
一態様において、本出願は、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、方法に関する。
【0031】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及び他の抗がん薬が、患者に同時に投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0032】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及び他の抗がん薬が、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0033】
一態様において、本出願は、医薬製剤が、制御放出形態である、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0034】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及び他の抗がん薬が、別個の医薬製剤でそれぞれ投与され、各製剤は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0035】
一態様において、本出願は、医薬製剤の一方または両方が、制御放出形態である、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0036】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及び他の抗がん薬が、患者に逐次的に投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0037】
一態様において、本出願は、ミルシクリブの投与が、他の抗がん薬を患者に投与する前に開始される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0038】
一態様において、本出願は、ミルシクリブの投与が、他の抗がん薬を患者に投与した後に開始される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0039】
一態様において、本出願は、ミルシクリブが、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0040】
一態様において、本出願は、医薬製剤が、経口投与用に製剤化される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0041】
一態様において、本出願は、医薬製剤が、錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態である、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0042】
一態様において、本出願は、腎細胞癌の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量のソラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【0043】
一態様において、本出願は、肝細胞癌の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量のソラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【0044】
一態様において、本出願は、甲状腺癌の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量のソラフェニブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体と組み合わせて投与することを含む、方法に関する。
【0045】
一態様において、本出願は、ソラフェニブの治療上有効な量が、1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0046】
一態様において、本出願は、ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0047】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及びソラフェニブが、患者に同時に投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0048】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及びソラフェニブが、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0049】
一態様において、本出願は、医薬製剤が、制御放出形態である、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0050】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及びソラフェニブが、別個の医薬製剤で投与され、各製剤は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0051】
一態様において、本出願は、医薬製剤の一方または両方が、制御放出形態である、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0052】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及びソラフェニブが、患者に逐次的に投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0053】
一態様において、本出願は、ミルシクリブの投与が、ソラフェニブを患者に投与する前に開始される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0054】
一態様において、本出願は、ミルシクリブの投与が、ソラフェニブを患者に投与した後に開始される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0055】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及びソラフェニブが、薬学的に許容される賦形剤をそれぞれ更に含む別個の医薬製剤でそれぞれ投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0056】
一態様において、本出願は、一方または両方の医薬製剤が、経口投与用に製剤化される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0057】
一態様において、本出願は、各医薬製剤が、独立して、錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態である、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0058】
一態様において、本出願は、ミルシクリブ及びソラフェニブが、時間的に近接して投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0059】
一態様において、本出願は、CDK阻害剤及び他の抗がん薬が、時間的に近接して投与される、本明細書に記載される方法のいずれかに関する。
【0060】
一態様において、本出願は、ミルシクリブまたはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体と、他の抗がん薬と、を含む、医薬組成物に関する。
【0061】
一態様において、本出願は、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防において使用するための、ミルシクリブまたはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体と、他の抗がん薬と、を含む、医薬組成物に関する。
【0062】
一態様において、本出願は、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防のための薬剤の製造における、ミルシクリブまたはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体と、他の抗がん薬と、を含む、医薬組成物の使用に関する。
【0063】
一態様において、本出願は、他の抗がん薬との共投与による、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防において使用するためのミルシクリブに関する。
【0064】
一態様において、本出願は、ミルシクリブとの共投与による、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防において使用するための、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、パルボシクリブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、カルフィルゾミブ、セリチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、イマチニブ、イキサゾミブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、ニラパリブ、オシメルチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ルカパリブ、ルキソリチニブ、ソニデジブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギボル、またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0065】
一態様において、本出願は、他の抗がん薬との共投与による、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防のための薬剤の製造における、ミルシクリブの使用に関する。
【0066】
一態様において、本出願は、ミルシクリブとの共投与による、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防のための薬剤の製造における、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、パルボシクリブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、カルフィルゾミブ、セリチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、イマチニブ、イキサゾミブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、ニラパリブ、オシメルチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ルカパリブ、ルキソリチニブ、ソニデジブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギボル、またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0067】
一態様において、本出願は、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、大腸癌、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚癌、卵巣癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防における、同時、個別、または逐次使用のための複合調製物としての、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩と、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、パルボシクリブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、カルフィルゾミブ、セリチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、イマチニブ、イキサゾミブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、ニラパリブ、オシメルチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ルカパリブ、ルキソリチニブ、ソニデジブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギボル、またはその薬学的に許容される塩と、を含む、製品に関する。
【0068】
一態様において、本出願は、
(a)ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物と、
(b)ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、パルボシクリブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、カルフィルゾミブ、セリチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、イマチニブ、イキサゾミブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、ニラパリブ、オシメルチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ルカパリブ、ルキソリチニブ、ソニデジブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギボル、またはその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物と、
(c)がんの治療及び/または予防におけるその使用のための説明書と、
を含む、キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】MHCC97H細胞におけるミルシクリブのIC50値を示すグラフである。
【
図2】MHCC97L細胞におけるミルシクリブのIC50値を示すグラフである。
【
図3】HepG2.2.15細胞におけるミルシクリブのIC50値を示すグラフである。
【
図4】MHCC97H細胞増殖アッセイにおけるソラフェニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、レンバチニブ、及びパルボシクリブのIC50を示す、一連のグラフである。
【
図5】MHCC97H細胞におけるソラフェニブ及びソラフェニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図6】MHCC97H細胞におけるスニチニブ及びスニチニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図7】MHCC97H細胞におけるレゴラフェニブ及びレゴラフェニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図8】MHCC97H細胞におけるパルボシクリブ及びパルボシクリブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図9】MHCC97H細胞におけるレンバチニブ及びレンバチニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図10】MHCC97L細胞におけるスニチニブのIC50値を示すグラフである。
【
図11】MHCC97L細胞におけるソラフェニブのIC50値を示すグラフである。
【
図12】MHCC97L細胞におけるレゴラフェニブのIC50値を示すグラフである。
【
図13】MHCC97L細胞におけるレンバチニブのIC50値を示すグラフである。
【
図14】MHCC97L細胞におけるパルボシクリブのIC50値を示すグラフである。
【
図15】MHCC97L細胞におけるソラフェニブ及びソラフェニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図16】MHCC97L細胞におけるスニチニブ及びスニチニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図17】MHCC97L細胞におけるレゴラフェニブ及びレゴラフェニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図18】MHCC97L細胞におけるレンバチニブ及びレンバチニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図19】MHCC97L細胞におけるパルボシクリブ及びパルボシクリブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図20】HepG2.2.15細胞におけるスニチニブのIC50値を示すグラフである。
【
図21】HepG2.2.15細胞におけるソラフェニブのIC50値を示すグラフである。
【
図22】HepG2.2.15細胞におけるレゴラフェニブのIC50値を示すグラフである。
【
図23】HepG2.2.15細胞におけるレンバチニブのIC50値を示すグラフである。
【
図24】HepG2.2.15細胞におけるパルボシクリブのIC50値を示すグラフである。
【
図25】HepG2.2.15細胞におけるソラフェニブ及びソラフェニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図26】HepG2.2.15細胞におけるレンバチニブ及びレンバチニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図27】HepG2.2.15細胞におけるレゴラフェニブ及びレゴラフェニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図28】HepG2.2.15細胞におけるスニチニブ及びスニチニブとミルシクリブとの組み合わせのIC50値を示す、1セットの2つのグラフである。
【
図29A】MHCC97H細胞におけるミルシクリブとソラフェニブとの間の相乗作用を示すヒートマップである。ミルシクリブ濃度はy軸上で変化し、ソラフェニブ濃度はx軸に沿って示される。赤は100%阻害を示し、緑は0%阻害を示す。
【
図29B】MHCC97H細胞におけるミルシクリブとレンバチニブとの間の相乗作用を示すヒートマップである。ミルシクリブ濃度はy軸上で変化し、レンバチニブ濃度はx軸に沿って示される。赤は100%阻害を示し、緑は0%阻害を示す。
【
図29C】MHCC97H細胞におけるミルシクリブとレゴラフェニブとの間の相乗作用を示すヒートマップである。ミルシクリブ濃度はy軸上で変化し、レゴラフェニブ濃度はx軸に沿って示される。赤は100%阻害を示し、緑は0%阻害を示す。
【
図30】ミルシクリブのビヒクルで処理したMHCC97H細胞におけるアルファフェトプロテイン(AFP)の発現変化を示すグラフである。
【
図31】MHCC97H細胞におけるミルシクリブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図32】MHCC97H細胞におけるソラフェニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図33】MHCC97H細胞におけるレゴラフェニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図34】MHCC97H細胞におけるスニチニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図35】MHCC97H細胞におけるレンバチニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図36】MHCC97H細胞におけるミルシクリブとソラフェニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図37】MHCC97H細胞におけるミルシクリブとレゴラフェニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図38】MHCC97H細胞におけるミルシクリブとレンバチニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図39】MHCC97H細胞におけるミルシクリブとスニチニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図40】MHCC97L細胞におけるミルシクリブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図41】MHCC97L細胞におけるレゴラフェニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図42】MHCC97L細胞におけるスニチニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図43】MHCC97L細胞におけるソラフェニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図44】MHCC97L細胞におけるレンバチニブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図45】MHCC97L細胞におけるパルボシクリブのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図46】MHCC97L細胞におけるミルシクリブとソラフェニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図47】MHCC97L細胞におけるミルシクリブとレゴラフェニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図48】MHCC97L細胞におけるミルシクリブとスニチニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図49】MHCC97L細胞におけるミルシクリブとレンバチニブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図50】MHCC97L細胞におけるミルシクリブとパルボシクリブの組み合わせのPromega Triplex Assayで収集されたデータから得られた、一連のグラフである。
【
図51】MHCC97H細胞におけるミルシクリブを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図52】MHCC97H細胞におけるソラフェニブ及びソラフェニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図53】MHCC97H細胞におけるスニチニブ及びスニチニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図54】MHCC97H細胞におけるレンバチニブ及びレンバチニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図55】MHCC97H細胞におけるレゴラフェニブ及びレゴラフェニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図56】MHCC97L細胞におけるミルシクリブを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図57】MHCC97L細胞におけるソラフェニブ及びソラフェニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図58】MHCC97L細胞におけるソラフェニブ及びレゴラフェニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図59】MHCC97L細胞におけるソラフェニブ及びスニチニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図60】MHCC97L細胞におけるソラフェニブ及びレンバチニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図61】HepG2.2.15細胞におけるミルシクリブを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図62】HepG2.2.15細胞におけるソラフェニブ及びソラフェニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図63】HepG2.2.15細胞におけるレゴラフェニブ及びレゴラフェニブとミルシクリブの組み合わせを用いた創傷治癒アッセイの結果を示す、一連の写真である。
【
図64】MHCC97L細胞におけるミルシクリブ(A)、レゴラフェニブ(B)、ソラフェニブ(C)、スニチニブ(D)、及びレンバチニブ(E)を用いたEMTアッセイの結果を示す、一連の棒グラフである。
【
図65】MHCC97H細胞におけるミルシクリブ(A)、レゴラフェニブ(B)、ソラフェニブ(C)、スニチニブ(D)、及びレンバチニブ(E)を用いたEMTアッセイの結果を示す、一連の棒グラフである。
【
図66】in vivo研究の実験計画を示す概略図である。MHCC97H細胞を肝臓に注射した無胸腺マウスをビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した。
【
図67】ソラフェニブ、ミルシクリブ、ソラフェニブ+ミルシクリブの経口投与による治療後のマウスの肝臓重量を示すグラフである。
【
図68】ソラフェニブ、ミルシクリブ、ソラフェニブ+ミルシクリブの経口投与による治療後のマウスの肝臓腫瘍の重量を示すグラフである。
【
図69】ビヒクル、ミルシクリブ、ソラフェニブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブによる治療後のMHCC97H同所性HCCマウスの肝臓腫瘍量の変化を示す、一連の写真である。
【
図70】MHCC97H細胞を肝臓に注射し、ビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した無胸腺マウスにおけるAFP血清レベルの変化を示すグラフである。
【
図71】
図71A及び71Bは、MHCC97H細胞を肝臓に注射し、ビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した無胸腺マウスにおけるmiR-221(71A)及びmiR-222(71B)miRNAの相対的発現を示す、一連のグラフである。
【
図72】MHCC97H細胞を肝臓に注射した後、ビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した無胸腺マウスにおけるp27
kip1(A)、p21(B)、p57(C)、及びp53(D)の相対的発現を示す、一連のグラフである。
【
図73】
図73A及び73Bは、MHCC97H細胞を肝臓に注射した後、ビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した無胸腺マウスにおけるサイクリンD1(73A)及びサイクリンE2(73B)の相対的発現を示す、一連のグラフである。
【
図74】
図74A、74B、及び74Cは、MHCC97H細胞を肝臓に注射した後、ビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した無胸腺マウスにおけるMKI67(74A)、c-Myc(74B)及びCdc6(74C)の相対的発現を示す、一連のグラフである。
【
図75】ビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した後の同所性HCCモデルマウスから培養した細胞におけるpAKT
Ser473、AKT、サイクリンD1、c-Myc、及びPTENの発現変化を示す、一連のウェスタンブロットである。ローディングコントロールにはアクチンが使用される。
【
図76】肝細胞癌におけるミルシクリブの作用機序を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈により別途明記されない限り、複数の指示物を含むことに留意すべきである。したがって、例えば、「CDK阻害剤」は、単一の阻害剤だけでなく、2つ以上の異なる阻害剤の組み合わせも指し、「剤形」は、単一の剤形のみならず、剤形の組み合わせも指す、などである。
【0071】
別途の定義のない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の説明にとって特に重要な特定の用語は、以下に定義される。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「患者」または「個体」または「対象」という用語は、治療法が所望される任意のヒトまたは哺乳類の対象を指し、一般に、本発明によって実施される治療法のレシピエントを指す。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「CDK阻害剤」という用語は、サイクリン依存性キナーゼと称されるヒトの酵素を阻害する化合物を指す。例としては、限定するものではないが、ミルシクリブ、パルボシクリブ、ディナシクリブ、P276-00、ロニシクリブ、リボシクリブ、P1446A-05、AT7519M、SNS-032、SCH727965、AG-024322、ヒグロリジン、ファスカプリシン、アベマシクリブ、アルシリアフラビンA、CINK4、AM-5992、CDK4阻害剤(CAS#546102-60-7)、CDK4阻害剤III(CAS#265312-55-8)、Cdk4/6阻害剤IV(CAS#359886-84-3)、MM-D37K、NSC625987、ON-123300、または任意のその薬学的に許容される塩が挙げられる。(Law,M.E.et al.“Cyclin-Dependent Kinase Inhibitors as Anticancer Therapeutics”Mol.Pharmacol.88:846-852(2015)参照。その全体は、参照により本明細書に援用される。)一実施形態において、CDK阻害剤は、ミルシクリブである。
【0074】
本明細書で使用される場合、「抗がん薬」または「抗がん剤」という用語は、キナーゼ阻害薬を含み、がん細胞で変化を起こし、異常成長の一部の主な原因となるプロテインキナーゼを特異的に標的とする、抗がん薬の群の任意のメンバーを指す。一実施形態において、抗がん薬は、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、パルボシクリブ、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、カルフィルゾミブ、セリチニブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イデラリシブ、イマチニブ、イキサゾミブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、ニラパリブ、オシメルチニブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ルカパリブ、ルキソリチニブ、ソニデジブ、トファシチニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、ビスモデギボル、またはその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される。一実施形態において、抗がん薬は、ソラフェニブである。一実施形態において、抗がん薬は、レンバチニブである。一実施形態において、抗がん薬は、レゴラフェニブである。一実施形態において、抗がん薬は、スニチニブである。一実施形態において、抗がん薬は、パルボシクリブである。
【0075】
他の抗がん薬には、限定するものではないが、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、解毒剤、インターフェロン、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、ホルモン、有糸分裂阻害剤、MTOR阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGF/VEGFR阻害剤、タキサンもしくはタキサン誘導体、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、微小管標的薬、トポイソメラーゼ毒型薬、分子標的もしくは酵素の阻害剤(例えば、キナーゼ阻害剤)、シチジンアナログ薬、またはwww.cancer.org/docroot/cdg/cdg_0.aspに記載の任意の化学療法剤、抗新生物薬もしくは抗増殖剤が含まれる。一実施形態において、抗がん薬は、ニボルマブである。一実施形態において、抗がん薬は、ゲムシタビンである。
【0076】
活性物質を指す場合、出願人は、「活性物質」という用語について、明記された分子実体だけでなく、その薬学的に許容される薬理学的に活性なアナログ、例えば、限定するものではないが、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、コンジュゲート、活性代謝物、結晶形(多形を含む)、エナンチオマー、ならびに他の同様の誘導体、アナログ、及び関連化合物も包含することを意図する。
【0077】
「治療すること」及び「治療」という用語は、次の作用:(i)特定の疾患もしくは障害にかかりやすい可能性があるが、罹患の診断をまだ受けていない対象において、その疾患もしくは障害の発症を防ぐこと、(ii)疾患を抑制すること、すなわち、その発症を阻止すること、または(iii)症状の軽減もしくは除外及び/または疾患の後退によって、疾患を緩和することを含む。
【0078】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、治療される個体への単位投与量に適した物理的に別個の単位を指す。すなわち、組成物は、必要な薬学的担体とともに所望の治療効果をもたらすように算出された活性物質の所定の「単位投与量」の分量をそれぞれ含有する別個の用量単位に製剤化される。本発明の単位剤形の仕様は、送達される活性物質の固有の特徴に依存する。投与量は、更に、成分の常用量及び投与様式を参照して決定され得る。いくつかの場合において、組み合わせにおける2つ以上の個々の用量単位は、活性物質の治療上有効な量をもたらし、例えば、一緒に服用される2つの錠剤またはカプセル剤は、ミルシクリブの治療上有効な用量をもたらすことができ、したがって、各錠剤またはカプセル剤の単位用量は、治療上有効な量の約50%であるという点に留意すべきである。
【0079】
化合物の「有効量」及び「治療上有効な量」という用語は、無毒であるが、所望の効果、すなわち、がんの治療をもたらすのに十分な活性物質の量を意味する。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「それを必要とする対象」は、がんを有する対象、または一般集団と比較してがん発症リスクの高い対象である。
【0081】
「がん」という用語は、固形腫瘍ならびに血液腫瘍及び/または悪性腫瘍を含む。「がん細胞」または「がん性細胞」は、がんである細胞増殖性障害を示す細胞である。がん細胞は、再現性のある任意の測定手段を使用して、特定することができる。がん細胞は、組織サンプル(例えば、生検サンプル)の組織学的分類または悪性度によって識別することができる。がん細胞は、適切な分子マーカーの使用によって特定することができる。
【0082】
例示的ながんには、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、肛門直腸癌、肛門管癌、虫垂癌、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫)、胆道癌、肝外胆管癌、肝内胆管癌、膀胱(bladder)癌、膀胱(urinary bladder)癌、骨関節癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳癌、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視路及び視床下部神経膠腫、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸神経癌、神経系リンパ腫、中枢神経系癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、大腸癌、皮膚T細胞性リンパ腫、リンパ系新生物、菌状息肉症、セザリー症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼の癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃(gastric/stomach)癌、胃腸カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、眼の癌、膵島細胞腫瘍(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、腎癌、喉頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、口唇及び口腔癌、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平上皮性頸部癌、口腔癌、舌癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、口腔(oral)癌、口腔(oral cavity)癌、口咽頭癌、卵巣癌、卵巣上皮細胞癌、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、膵島細胞膵癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂及び尿管、移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、子宮癌、子宮肉腫、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(stomach/gastric)癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、甲状腺腫瘍、腎盂及び尿管及び他の泌尿器の移行上皮細胞癌、妊娠性絨毛腫瘍、尿道癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、子宮体癌、膣癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
治療方法
本出願は、がんの治療方法であって、それを必要とする対象に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩及び1つ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を、治療上有効な量の第2の剤、すなわち、抗がん薬及び1つ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤と組み合わせて投与することを含み、がんが治療される、方法を提供する。一実施形態において、抗がん薬は、ミルシクリブ以外の、本明細書に開示される任意の化合物である。
【0084】
がんは、血液性の腫瘍もしくは悪性腫瘍、または固形腫瘍(1つまたは複数)、または難治性固形腫瘍であり得る。
【0085】
一実施形態において、がんは、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫(すなわち、胸腺癌)からなる群から選択される。
【0086】
このがんの治療方法は、腫瘍サイズの縮小を伴う。代替的または付加的に、がんは、転移性がんであり、本治療方法は、転移性がん細胞の浸潤の阻害を伴う。
【0087】
他の抗がん薬または剤は、アルキル化剤、抗生物質、代謝拮抗薬、解毒剤、インターフェロン、ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、ホルモン、有糸分裂阻害剤、MTOR阻害剤、マルチキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGF/VEGFR阻害剤、タキサンもしくはタキサン誘導体、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、微小管標的薬、トポイソメラーゼ毒型薬、分子標的もしくは酵素の阻害剤(例えば、キナーゼ阻害剤)、シチジンアナログ薬、またはwww.cancer.org/docroot/cdg/cdg_0.aspに記載の任意の化学療法剤、抗新生物薬もしくは抗増殖剤であり得る。
【0088】
一実施形態において、他の抗がん剤は、代謝拮抗薬またはヌクレオシドアナログである。例示的な代謝拮抗薬またはヌクレオシドアナログには、フルオロウラシル(Adrucil)、カペシタビン(Xeloda)、ヒドロキシウレア(Hydrea)、メルカプトプリン(Purinethol)、ペメトレキセド(Alimta)、フルダラビン(Fludara)、ネララビン(Arranon)、クラドリビン(Cladribine Novaplus)、クロファラビン(Clolar)、シタラビン(Cytosar-U)、デシタビン(Dacogen)、シタラビンリポソーム(DepoCyt)、ヒドロキシウレア(Droxia)、プララトレキサート(Folotyn)、フロクスウリジン(FUDR)、ゲムシタビン(Gemzar)、クラドリビン(Leustatin)、フルダラビン(Oforta)、メトトレキサート(MTX、Rheumatrex)、メトトレキサート(Trexall)、チオグアニン(Tabloid)、TS-1またはシタラビン(Tarabine PFS)が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
一実施形態において、他の抗がん薬または剤は、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブからなる群から選択される。
【0090】
ミルシクリブもしくはその薬学的に許容される塩、及び/または他の抗がん薬は、投与に好適な医薬組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的に、化合物(すなわち、活性化合物を含む)、及び薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、薬剤投与に適合した、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことが意図される。好適な担体は、本分野における標準的な参照テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されている。そのような担体または希釈剤の好ましい例には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
薬学的に許容される担体には、ラクトース、白陶土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などの固体担体が含まれる。例示的な液体担体には、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、水などが含まれる。同様に、担体または希釈剤には、単体またはワックスと合わせたモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレートなどの、当該技術分野において知られている時間遅延物質が含まれ得る。他の充填剤、賦形剤、風味剤、及び当該技術分野において知られている他の添加剤も、本出願による医薬組成物中に含めることができる。リポソーム及び不揮発性油などの非水性ビヒクルも使用することができる。そのような媒体及び剤を薬学的活性物質に使用することは、当該技術分野においてよく知られている。任意の従来の媒体または剤は、活性化合物との適合性がない場合を除き、組成物中に使用されることが企図される。補助的な活性化合物もまた、組成物中に組み込むことができる。
【0092】
一態様において、ミルシクリブ、もしくはその薬学的に許容される塩、及び/または他の抗がん薬は、治療上有効な量(例えば、腫瘍成長の阻害、腫瘍細胞の殺傷などによって、所望の治療効果を達成するのに十分な有効量)のミルシクリブ、もしくはその薬学的に許容される塩(活性成分)及び/または他の抗がん薬もしくは剤を、標準的な薬学的担体または希釈剤と従来の手順に従って組み合わせることによって(すなわち、本出願の医薬組成物を作製することによって)調製された好適な剤形で投与される。これらの手順は、所望の調製物を得るために、適宜、成分を混合、造粒及び圧縮または溶解することを含み得る。
【0093】
本明細書で使用されるとき、「治療すること」は、疾患、状態、または障害と闘うことを目的とした対象の管理及びケアを表し、症状もしくは合併症を軽減もしくは緩和すること、または疾患、状態もしくは疾患を排除することを含む。
【0094】
本明細書で使用されるとき、「予防すること」は、疾患、状態または障害の症状または合併症の発症を止めることを表す。
【0095】
一態様において、がんの治療により、腫瘍のサイズが縮小する。腫瘍のサイズの縮小は、「腫瘍退縮」とも称される。好ましくは、治療後の腫瘍サイズは、治療前のサイズと比較して、5%以上縮小し、より好ましくは、腫瘍サイズは、10%以上縮小し、より好ましくは、20%以上縮小し、より好ましくは、30%以上縮小し、より好ましくは、40%以上縮小し、更により好ましくは、50%以上縮小し、最も好ましくは、75%以上縮小する。腫瘍のサイズは、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。好ましい一態様において、腫瘍のサイズは、腫瘍径として測定され得る。
【0096】
別の態様において、がんの治療により、腫瘍体積が減少する。好ましくは、治療後の腫瘍体積は、治療前のその大きさと比較して、5%以上減少し、より好ましくは、腫瘍体積は、10%以上減少し、より好ましくは、20%以上減少し、より好ましくは、30%以上減少し、より好ましくは、40%以上減少し、更により好ましくは、50%以上減少し、最も好ましくは、75%以上減少する。腫瘍体積は、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。
【0097】
別の態様において、がんの治療により、腫瘍数が減少する。好ましくは、治療後の腫瘍数は、治療前の数と比較して、5%以上減少し、より好ましくは、腫瘍数は、10%以上減少し、より好ましくは、20%以上減少し、より好ましくは、30%以上減少し、より好ましくは、40%以上減少し、更により好ましくは、50%以上減少し、最も好ましくは、75%を超えて減少する。腫瘍数は、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。好ましい一態様において、腫瘍数は、肉眼または特定の倍率で確認できる腫瘍を計数することによって測定され得る。好ましい一態様において、特定の倍率は、2x、3x、4x、5x、10x、または50xである。
【0098】
別の態様において、がんの治療により、原発腫瘍部位から離れた他の組織または器官における転移病変の数が減少する。好ましくは、治療後の転移病変の数は、治療前の数と比較して、5%以上減少し、より好ましくは、転移病変の数は、10%以上減少し、より好ましくは、20%以上減少し、より好ましくは、30%以上減少し、より好ましくは、40%以上減少し、更により好ましくは、50%以上減少し、最も好ましくは、75%を超えて減少する。転移病変の数は、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。好ましい一態様において、転移病変の数は、肉眼または特定の倍率で確認できる転移病変を計数することによって測定され得る。好ましい一態様において、特定の倍率は、2x、3x、4x、5x、10x、または50xである。
【0099】
別の態様において、がんの治療により、治療を受けた対象集団の平均生存時間は、担体のみを投与した集団と比較して、増加する。好ましくは、平均生存時間は、30日を超えて、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて増加する。集団の平均生存時間の増加は、再現性のある任意の手段によって測定され得る。好ましい一態様において、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物による治療の開始後の集団の平均生存期間を計算することによって、測定され得る。別の好ましい態様において、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物による治療の第1ラウンド完了後の集団の平均生存期間を計算することによっても、測定され得る。
【0100】
別の態様において、がんの治療により、治療を受けた対象集団の平均生存時間は、治療を受けていない対象集団と比較して、増加する。好ましくは、平均生存時間は、30日を超えて、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて増加する。集団の平均生存時間の増加は、再現性のある任意の手段によって測定され得る。好ましい一態様において、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物による治療の開始後の集団の平均生存期間を計算することによって、測定され得る。別の好ましい態様において、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物による治療の第1ラウンド完了後の集団の平均生存期間を計算することによっても、測定され得る。
【0101】
別の態様において、がんの治療により、治療を受けた対象集団の平均生存時間は、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体ではない薬物による単剤療法を受けた集団と比較して、増加する。好ましくは、平均生存時間は、30日を超えて、より好ましくは、60日を超えて、より好ましくは、90日を超えて、最も好ましくは、120日を超えて増加する。集団の平均生存時間の増加は、再現性のある任意の手段によって測定され得る。好ましい一態様において、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物による治療の開始後の集団の平均生存期間を計算することによって、測定され得る。別の好ましい態様において、集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物による治療の第1ラウンド完了後の集団の平均生存期間を計算することによっても、測定され得る。
【0102】
別の態様において、がんの治療により、治療を受けた対象集団の死亡率は、担体のみを投与した集団と比較して、減少する。別の態様において、がんの治療により、治療を受けた対象集団の死亡率は、治療を受けていない集団と比較して、減少する。更なる態様において、がんの治療により、治療を受けた対象集団の死亡率は、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、代謝物、アナログもしくは誘導体ではない薬物による単剤療法を受けた集団と比較して、減少する。好ましくは、死亡率は、2%を超えて、より好ましくは、5%を超えて、より好ましくは、10%を超えて、最も好ましくは、25%を超えて、減少する。好ましい一態様において、治療を受けた対象集団の死亡率の減少は、再現性のある任意の手段によって測定され得る。別の好ましい態様において、集団の死亡率の減少は、例えば、活性化合物による治療の開始後の集団の単位時間あたりの疾患関連死亡数の平均を算出することによって、測定され得る。別の好ましい態様において、集団の死亡率の減少は、例えば、活性化合物による治療の第1ラウンド完了後の集団の単位時間あたりの疾患関連死亡数の平均を算出することによっても、測定され得る。
【0103】
別の態様において、がんの治療により、腫瘍成長率が減少する。好ましくは、治療後の腫瘍成長率は、治療前の数と比較して、少なくとも5%減少し、より好ましくは、腫瘍成長率は、少なくとも10%減少し、より好ましくは、少なくとも20%減少し、より好ましくは、少なくとも30%減少し、より好ましくは、少なくとも40%減少し、より好ましくは、少なくとも50%減少し、更により好ましくは、少なくとも50%減少し、最も好ましくは、少なくとも75%減少する。腫瘍成長率は、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。好ましい一態様において、腫瘍成長率は、単位時間あたりの腫瘍径の変化によって測定される。
【0104】
別の態様において、がんの治療により、腫瘍の再成長が減少する。好ましくは、治療後の腫瘍の再成長は、5%未満であり、より好ましくは、腫瘍再成長は、10%未満であり、より好ましくは、20%未満であり、より好ましくは、30%未満であり、より好ましくは、40%未満であり、より好ましくは、50%未満であり、更により好ましくは、50%未満であり、最も好ましくは、75%未満である。腫瘍の再成長は、再現性のある任意の測定手段によって測定され得る。好ましい一態様において、腫瘍の再成長は、例えば、治療後のそれまでの腫瘍縮小からの腫瘍径の増加を測定することによって測定される。別の好ましい態様において、腫瘍の再成長の減少は、治療の終了後に腫瘍が再発しないことによって示される。
【0105】
当業者であれば、本明細書で考察される既知の技術または同等の技術の詳細な説明について、一般的な参照テキストを調べることができるであろう。これらのテキストには、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(2005);Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3d ed.),Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York(2000);Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,N.Y.;Enna et al.,Current Protocols in Pharmacology,John Wiley & Sons,N.Y.;Fingl et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975),Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition(1990)が含まれる。これらのテキストは、当然のことながら、本出願の態様を作製または使用する際にも参照され得る。
【0106】
「制御放出」または「制御放出形態」という用語は、薬物の放出が即座になされない薬物含有製剤またはその一部を指し、すなわち、「制御放出」製剤を用いる投与は、吸収プールへの薬物の即時放出をもたらさない。この用語は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Ed.(Easton,PA:Mack Publishing Company,1995)に定義される「非即時放出」と区別なく用いられる。一般に、本明細書で使用される「制御放出」という用語は、徐放性製剤及び遅延放出製剤を含む。
【0107】
「徐放性」(「長期放出」と同義)という用語は、その従来の意味で使用され、長期間にわたる段階的な薬物放出をもたらし、好ましくは、必然ではないが、実質的に一定の薬物血中濃度を長期間にわたってもたらす、薬物製剤を指す。「遅延放出」という用語もまた、その従来の意味で使用され、患者への投与後に製剤から患者の体内へ薬物が放出されるまでに、測定可能な時間遅延が生じる、薬物製剤を指す。
【0108】
「薬学的に許容される」とは、生物学的に望ましくないまたは別様に望ましくないものではない物質を意味し、すなわち、当該物質は、望ましくない生物学的作用を一切生じることも、当該物質を含有する組成物の他の成分のいずれとも有害に相互作用することもなく、患者に投与される医薬組成物中に組み込むことができる。薬学的な担体または賦形剤を指すために「薬学的に許容される」という用語が使用される場合、その担体または賦形剤は、毒性試験及び製造試験の必要基準を満たすか、あるいは、米国食品医薬品局が作成するInactive Ingredient Guideに収載されていることを意味する。「薬理学的に活性な」誘導体またはアナログにおける「薬理学的に活性な」(または単に「活性な」)は、親化合物と同じ種類の薬理活性をほぼ同等の程度で有する、誘導体またはアナログを指す。
【0109】
活性物質の投与は、任意の適切な投与方法を使用して実施され得る。したがって、投与は、例えば、経口または非経口であり得るが、経口投与が好ましい。
【0110】
意図される投与方法に応じて、医薬製剤は、固体、半固体または液体であり得、例えば、錠剤、カプセル剤、カプレット、液剤、懸濁剤、乳剤、坐剤、顆粒剤、ペレット、ビーズ、散剤などであり、好ましくは、正確な投与量の単回投与に好適な単位剤形である。好適な医薬製剤及び剤形は、医薬製剤の分野で知られている従来法、ならびに関連するテキスト及び文献、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Easton,PA:Mack Publishing Co.,1995)に記載されている従来法を使用して調製され得る。経口投与、したがって、経口製剤が一般に好ましく、錠剤、カプセル剤、カプレット、液剤、懸濁剤及びシロップ剤を含み、カプセル化されていてもされていなくてもよい複数の顆粒剤、ビーズ、散剤、またはペレットを含み得る。好ましい経口製剤は、カプセル剤及び錠剤である。
【0111】
上記のとおり、投与の容易性及び投与量の均一性のために、本発明の組成物は、単位剤形に製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、治療される個体への単位投与量に適した物理的に別個の単位を指す。すなわち、組成物は、必要な薬学的担体とともに所望の治療効果をもたらすように算出された活性物質の所定の「単位投与量」の分量をそれぞれ含有する別個の用量単位に製剤化される。本発明の単位剤形の仕様は、送達される活性物質の固有の特徴に依存する。投与量は、更に、成分の常用量及び投与様式を参照して決定され得る。いくつかの場合において、組み合わせにおける2つ以上の個々の用量単位は、活性物質の治療上有効な量をもたらし、例えば、一緒に服用される2つの錠剤またはカプセル剤は、各活性物質の治療上有効な用量をもたらすことができ、したがって、各錠剤またはカプセル剤の単位用量は、治療上有効な量の約50%であるという点に留意すべきである。
【0112】
錠剤は、標準的な錠剤加工の手順及び装置を使用して製造することができる。直接打錠及び造粒技術が好ましい。活性物質に加えて、錠剤は、一般に、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、着色剤などの不活性な薬学的に許容される担体材料を含有する。
【0113】
カプセル剤も好ましい経口製剤であり、この場合、活性物質含有組成物は、液体または固体の形態でカプセル化され得る(固体は、顆粒、ビーズ、粉末またはペレットなどの粒子を含む)。好適なカプセル剤は、硬カプセル剤または軟カプセル剤のいずれでもよく、一般に、ゼラチン、デンプン、またはセルロース系材料から製造され、ゼラチンカプセル剤が好ましい。ツーピースハードゼラチンカプセル剤は、好ましくは、ゼラチンバンドなどで密封される。例えば、本明細書で先に引用したRemington:The Science and Practice of Pharmacyを参照されたい。当該文献には、カプセル化された医薬品を調製するための材料及び方法が記載されている。
【0114】
一般に、当業者には明らかなように、徐放性製剤は、徐々に加水分解される親水性ポリマーなどの材料のマトリックス内に活性物質を分散させるか、または固体の薬物含有製剤をそのような材料でコーティングすることによって、製剤化される。徐放性コーティングまたはマトリックスを提供するのに有用な親水性ポリマーには、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系ポリマー;アクリル酸ポリマー及びコポリマー、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルなどから形成されるもの、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル及び/またはメタクリル酸エチルのコポリマー;ならびにポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、及びエチレン酢酸ビニルコポリマーなどのビニルポリマー及びコポリマーが含まれる。
【0115】
本明細書中の徐放性製剤は、Rohm Pharma(Germany)から商標名「Eudragit」で入手可能なアクリル酸及びメタクリル酸コポリマーから構成され得る。EudragitシリーズのE、L、S、RL、RS、及びNEコポリマーは、有機溶媒中に可溶化したもの、水性分散液、または乾燥粉末として入手可能である。好ましいアクリル酸ポリマーは、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルのコポリマー、例えば、Eudragit L及びEudragit Sシリーズのポリマーなどである。一実施形態において、医薬製剤のいずれかは、徐放性、すなわち、徐放性製剤に製剤化され得る。
【0116】
本発明による非経口投与用調製物には、無菌の水性及び非水性の溶液、懸濁液、及び乳濁液が含まれる。注射用水溶液は、水溶性の形態で活性物質を含有する。非水性溶媒またはビヒクルの例には、オリーブ油及びトウモロコシ油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、プロピレングリコールなどの低分子量アルコール、ポリエチレングリコール、リポソームなどの合成親水性ポリマーなどが挙げられる。非経口製剤はまた、可溶化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、及び安定剤などの補助剤を含有し得、水性懸濁液は、懸濁液の粘度を高めるカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及びデキストランなどの物質を含有し得る。注射用製剤は、滅菌剤の組み込み、細菌保持フィルターでの濾過、放射線照射、または加熱によって滅菌される。また、注射用無菌媒体を使用して製造することもできる。活性物質はまた、注射による投与の直前に、好適なビヒクルで再水和され得る乾燥形態、例えば、凍結乾燥形態であってもよい。
【0117】
活性物質のそれぞれは、また、従来の経皮薬物送達システムを使用して皮膚を介して投与することができ、1つ以上の活性物質は、皮膚に貼付される薬物送達デバイスとして機能する積層構造内に含有される。そのような構造において、薬物組成物は、上部バッキング層の下にある層、すなわち「リザーバー」内に含有される。積層構造は、単一のリザーバーを備えてもよいし、複数のリザーバーを備えてもよい。一実施形態において、リザーバーは、薬物送達中に当該システムを皮膚に貼付するのに役立つ、薬学的に許容される接触接着剤材料のポリマーマトリックスを含む。あるいは、薬物含有リザーバー及び皮膚接触接着剤は、別個の異なる層として存在し、リザーバーの下に接着剤がある。この場合、リザーバーは、上記のポリマーマトリックスであってもよいし、液状またはヒドロゲルリザーバーであってもよいし、他の形態をとってもよい。経皮的な薬物送達システムは、加えて、皮膚透過促進剤を含有してもよい。
【0118】
前述の製剤に加えて、活性物質は、活性物質の制御放出、好ましくは、長期間にわたる徐放のために、デポー調製物に製剤化されてもよい。これらの徐放性製剤は、一般に、植え込み(例えば、皮下もしくは筋肉内または筋肉内注射)によって投与される。
【0119】
特定の材料の「1日用量」は、1日に投与される物質の量を指す。1日用量は、単回投与または複数回投与で投与され得る。1日用量が複数回投与で投与される場合、1日用量は、1日の間で投与される複数回投与全体で投与される物質の合計量である。例えば、12mgの1日用量は、12mgの単回用量が1日1回投与され、6mg用量が1日2回投与され、4mg用量が1日3回投与され、2mg用量が1日6回投与され得る、などである。複数回投与は、別途明記されない限り、同じまたは異なる物質用量であり得る。1日用量が複数回投与で投与される場合、複数回投与は、別途明記されない限り、同じまたは異なる投与経路によって投与され得る。したがって、12mgの1日用量は、例えば、1日の間に投与される10mgの筋肉内用量及び2mgの経口用量を含み得る。
【0120】
1つの化合物と第2の化合物「との」投与は、本明細書で使用されるとき、2つの化合物が同時にまたは実質的に同時に投与される場合を含むが、これらに限定されない。例えば、第1の化合物と第2の化合物との投与は、朝に第1の化合物を投与し、夕方に第2の化合物を投与することを含み、また、同じ剤形または2つの異なる剤形の第1及び第2の化合物を同時にまたはほぼ同時に投与することを含み得る。
【0121】
本明細書に開示される活性物質、すなわち、ミルシクリブを本明細書に開示される他の抗がん薬または剤と組み合わせる場合、ミルシクリブにより、概して、単剤療法として投与される場合に治療効果を達成するのに必要な第2の薬物または剤の量が減り、逆に、他の抗がん薬または剤により、概して、必要なミルシクリブの量が減る。
【0122】
本出願の方法は、併用療法を伴うが、活性物質は、同時にまたは異なる時間に別々に投与されてもよいし、単一の医薬製剤で投与されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、「時間的に近接して(時間的近接)」とは、他のキナーゼ阻害薬の治療効果がCDK阻害剤(例えば、ミルシクリブ)の治療効果と重複するように、CDK阻害剤(例えば、ミルシクリブ)の投与前または投与後のある時間内に、他の抗がん薬の投与が行われることを意味する。いくつかの実施形態において、他のキナーゼ阻害薬の治療効果は、CDK阻害剤(例えば、ミルシクリブ)の治療効果と完全に重複する。いくつかの実施形態において、「時間的近接」とは、他のキナーゼ阻害薬とCDK阻害剤との間に相乗効果があるように、CDK阻害剤(例えば、ミルシクリブ)の投与前または投与後のある時間内に、他のキナーゼ阻害薬の投与が行われることを意味する。
【0124】
「時間的近接」は、様々な因子によって変化し得、治療薬が投与される対象の年齢、性別、体重、遺伝的背景、病状病歴、及び治療歴;治療または改善しようとする疾患または状態;達成しようとする治療転帰;治療薬の投与量、投与頻度、投与期間;治療薬の薬物動態及び薬力学;ならびに治療薬が投与される経路(複数可)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、「時間的近接」とは、15分以内、30分以内、1時間以内、2時間以内、4時間以内、6時間以内、8時間以内、12時間以内、18時間以内、24時間以内、36時間以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、6週間以内、または8週間以内を意味する。いくつかの実施形態において、1つの治療薬の複数回投与は、別の治療薬の単回投与と時間的に近接して行われ得る。いくつかの実施形態において、時間的近接は、治療サイクル中、または投薬レジメン内で変化してもよい。
【0125】
データ/実施例の概要
細胞増殖アッセイにより、MHCC97H及びMHCC97L(ヒト由来の高度転移性肝細胞癌細胞株)ならびにHepG2.2.15細胞(ヒト肝芽腫細胞株HepG2由来)のIC50値を決定した。ミルシクリブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、及びレンバチニブを個別にまたは組み合わせて用いて、細胞を処理した。各阻害剤は、3つの細胞株にわたって、細胞増殖の用量依存的減少を示し、同等の半数阻害濃度(IC50)であった(
図1及び
図4:MHCC97H細胞、
図2及び
図10~14:MHCC97L細胞、ならびに
図3及び
図20~24:HepG2.2.15細胞)。
【0126】
IC
50値に対応する一定濃度のミルシクリブの存在下、漸増濃度のTKI(チロシンキナーゼ阻害剤)でMHCC97H細胞、MHCC97L細胞、及びHepG2.2.15細胞を処理して、細胞増殖阻害に対する相乗効果を観察した。全ての場合において、各TKIのIC
50値は、約50%減少した(MHCC97H:
図5~9、MHCC97L:
図15~19、HepG2.2.15:
図25~28)。
【0127】
一定濃度のミルシクリブと合わせた漸増濃度の阻害剤をMHCC97L細胞及びMHCC97H細胞で試験して、細胞増殖阻害に対する相乗効果を決定した。ソラフェニブの場合、MHCC97Hにおいて、単体でのIC
50は12μMであったが、ミルシクリブと組み合わせると、IC
50は6.7μMとなった(
図29A)。レンバチニブの場合、MHCC97Hにおいて、単体でのIC
50は0.28μMであったが、ミルシクリブと組み合わせると、IC
50は0.12μMとなった(
図29B)。レゴラフェニブの場合、MHCC97Hにおいて、単体でのIC
50は4.7μMであったが、ミルシクリブと組み合わせると、IC
50は1.9μMとなった(
図29C)。
【0128】
MHCC97H細胞は、ヒトアルファフェトプロテイン(AFP)を産生することが示された。
AFP ELISA アッセイ。ビヒクル対照と比較して、ミルシクリブ処理した細胞で検出されたAFPレベルは、かなり低かった(
図30)。
【0129】
Promega ApoTox-Glo(商標)Triplexアッセイも実施した。ミルシクリブを各種濃度の他のTKIと組み合わせると、MHCC97H細胞(
図31~39)及びMHCC97L細胞(
図40~50)において、ビヒクル処理した細胞と比較して、用量依存的に、細胞生存率が低下し、カスパーゼ3/7活性が上昇した。
【0130】
創傷治癒実験も実施した。引っ掻き傷をつけたMHCC97H細胞の単層をTKI(チロシンキナーゼ阻害剤)とミルシクリブ(1.3μM)の組み合わせで96時間処理すると、細胞遊走は、対応するビヒクル対照と比較して、減少した(
図51~55)。引っ掻き傷をつけたMHCC97L細胞の単層をミルシクリブ単独または他のTKIとの組み合わせで96時間処理すると、細胞遊走は、対応するビヒクル対照と比較して、減少した(
図56~60)。引っ掻き傷をつけたHepG2.2.15細胞の単層をミルシクリブ単独または他のTKIとの組み合わせで96時間処理すると、細胞遊走は、対応するビヒクル対照と比較して、減少した(
図61~63)。
【0131】
EMT(上皮間葉転換)アッセイも実施した。ミルシクリブと組み合わせたレゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ及びレンバチニブは、単体での処置と比較して、浸潤能を大幅に低下させた(P<0.005)(
図64)。MHCC97H細胞にミルシクリブまたはTKIを単独で含めると、その細胞遊走に統計的に有意な阻害がもたらされた(P<0.05)。ミルシクリブと組み合わせたレゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ及びレンバチニブは、単体での処置と比較して、浸潤能を大幅に低下させたことから(P<0.005)、ミルシクリブの抗浸潤能が実証された(
図65)。
【0132】
マウス実験(腫瘍誘発)を実施した。ミルシクリブ(30mg/kg/日)を単独またはソラフェニブ(20mg/kg/日)との組み合わせのいずれかで経口投与すると、腫瘍成長の減少に相乗効果がもたらされた[ビヒクルとの比較で、ミルシクリブ-20%(p<0.002)またはソラフェニブ-21%(p<0.001)に対し、組み合わせ-38%(p<0.0002)(
図67)。ビヒクル群は、肝臓重量が増加したが、組み合わせの場合には、肝臓重量が減少した(
図68)。ミルシクリブ、ソラフェニブ、及びその組み合わせの処置による腫瘍量の違いを示す写真を撮影した。ビヒクル群は、腫瘍が拡大したが、組み合わせの場合には、腫瘍量が減少した(
図69)。ビヒクルを投与した動物では、血清AFPの一定増加が、研究終了時まで観察された。ミルシクリブ(30mg/kg)単独、ソラフェニブ(20mg/kg)単独または組み合わせで処置した動物について記録された血清中AFPレベルは、極めて低かった(
図70)。
【0133】
ミルシクリブは、miR221/222を特異的に下方制御することにより作用することが分かった。遺伝子発現研究は、ミルシクリブが、miR-221及びmiR-222の下方制御により、その活性を発揮するであろうことを示唆している。データは、ミルシクリブによる経口処置が、miR-221及びmiR-222の下方制御により、その活性を発揮することを示唆している(
図71A及び71B)。これらのデータは、ミルシクリブが、肝臓癌の主な発現原因として知られているmiR-221及びmiR-222の発現を減少させることにより、特異的に作用することを示唆している。
【0134】
ミルシクリブを用いた作用機序研究も実施した。ミルシクリブが、p27、p21、p53及びp57などの腫瘍抑制因子の発現を上方制御したことから、ミルシクリブの作用機序は、ソラフェニブの作用機序とは異なるようである(
図72A、B、C、D)。ミルシクリブ単独またはソラフェニブとの組み合わせの経口投与は、サイクリンE2及びサイクリンD1などのサイクリンの発現を下方制御した(
図73A及び73B)。ミルシクリブ単独またはソラフェニブとの組み合わせの経口投与は、MKI67、cdc6、c-Mycなどの細胞増殖遺伝子の発現を下方制御した(
図74A、74B、74C)。ミルシクリブの作用機序は、ソラフェニブの作用機序とは異なるようである。
【0135】
機序研究は、ビヒクル処置群と比較して、ミルシクリブを投与した動物及びミルシクリブとソラフェニブを投与した動物に由来する肝臓サンプルにおいて、pAKT、c-Myc及びサイクリンD1発現を減少させ、PTENを上方制御することを明らかにした(
図75)。細胞培養研究及びヌードマウスの同所性HCCモデルからのデータは、ミルシクリブによる経口処置が、新しい機序により、その活性を発揮することを示唆している。
【0136】
肝細胞癌(HCC)
肝細胞癌(HCC)は、極めて複雑な多因子性疾患であり、疾患の進行及び患者の予後に影響する交絡因子が多数関連している。テロメア機能障害、発がん経路の活性化、DNA損傷チェックポイントの破綻、炎症促進性及び転移性経路の活性化、ならびに酸化ストレス応答の誘導を含め、機序の範囲が広い。したがって、HCCは、典型的に、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の過剰発現及び過剰な酸化ストレス(ROS)と関連している。まとめると、RTKの過剰発現及びROSは、c-mycの発現増加をもたらし、肝細胞の転移能を高くする。そのため、肝細胞の転移能は、特定のRTK阻害剤により低減することができる。他方において、HCCは、miR-221、miR-222及びCDKの過剰発現とも関連しており、細胞周期の調節異常を引き起こし、肝細胞の過剰な増殖をもたらす。ミルシクリブによる治療は、miR-221/miR-222及び多数のCDKを阻害することが知られており、肝細胞の増殖を効果的に減少させることができる。したがって、まとめると、ミルシクリブとRTK阻害剤の組み合わせは、c-mycの発現減少と、全体的な腫瘍成長及び進行に相乗効果をもたらし得る。そのため、HCCに対する効果的な治療法には、肝細胞の増殖を制御し、また、その転移能を抑制することが必要である。(
図76)
【0137】
医薬組成物及び製剤
本出願の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、及び経粘膜の投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下投与に使用される溶液または懸濁液には、次の成分:注射用水、生理食塩液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液;及び塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧調整剤が含まれ得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多用量バイアル中に封入することができる。
【0138】
本出願の化合物または医薬組成物は、化学療法剤による治療に現在使用されている多くの周知の方法で、対象に投与することができる。例えば、がんの治療の場合、本出願の化合物は、腫瘍に直接注入されてもよいし、血流または体腔に注入されてもよいし、経口摂取されてもよいし、貼付剤で皮膚を介して適用されてもよい。選択される用量は、効果的な治療を構成するのに十分でありながらも、許容できない副作用を引き起こすほど高くあってはならない。患者の病状及び健康状態は、好ましくは、治療中、及び治療後の適切な期間、厳密にモニタリングされるのがよい。
【0139】
「治療上有効な量」という用語は、本明細書で使用されるとき、特定された疾患または状態を治療、改善、もしくは予防するか、または検出可能な治療効果もしくは阻害効果を示す、医薬品の量を指す。これらの効果は、当該技術分野において知られている任意のアッセイ法によって検出することができる。ある対象に対する正確な有効量は、その対象の体重、体格、及び健康状態;状態の性質及び程度;ならびに投与に選択された治療薬または治療薬の組み合わせによる。所与の状況に対する治療上有効な量は、通常の実験によって決定することができ、臨床医の能力と判断の範囲内である。好ましい一態様において、治療される疾患または状態は、がんである。別の態様において、治療される疾患または状態は、細胞増殖性疾患である。
【0140】
ミルシクリブの治療上有効な量は、1~500mgであり、1日1回以上、最大30日間またはそれ以上にわたって投与され、その後、ミルシクリブの投与のない日が1日以上続く。この種の治療計画、すなわち、ミルシクリブの連日投与と、それに続くミルシクリブの連続日数の投与なしは、治療サイクルと呼ぶことができる。治療サイクルは、目的の効果を達成するのに必要な回数を繰り返すことができる。
【0141】
一実施形態において、ミルシクリブの治療上有効な量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、または500mgであり、1日1回または2回、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15日間連続で投与され、その後、無投与が1、2、3、4、5、6、または7日間連続し、このサイクルが任意選択で1、2、または3回繰り返される。
【0142】
一実施形態において、ミルシクリブの治療上有効な量は、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または200mgであり、1日1回または2回、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10日間連続で投与され、その後、無投与が1、2、3、4、5、6、または7日間連続し、このサイクルが任意選択で1、2、または3回繰り返される。
【0143】
一実施形態において、ミルシクリブの治療上有効な量は、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、または150mgであり、1日1回または2回、1、2、3、4、5、6、または7日間連続で投与され、その後、無投与が1、2、3、4、5、6、または7日間連続し、このサイクルが任意選択で1、2、または3回繰り返される。
【0144】
一実施形態において、ミルシクリブの治療上有効な量は、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、または125mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で1、2、または3回繰り返される。
【0145】
いずれの化合物の場合でも、治療上有効な量は、最初、例えば、新生物性細胞の細胞培養アッセイ、または通常はラット、マウス、ウサギ、イヌ、もしくはブタである動物モデルのいずれかで推定することができる。動物モデルは、また、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用され得る。次いで、そのような情報を使用して、ヒトの投与に有用な用量及び経路を決定することができる。治療/予防上の有効性及び毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な製薬手順、例えば、ED50(集団の50%で治療上有効な用量)及びLD50(集団の50%にとって致死的である用量)によって決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。用量は、採用される剤形、患者の感受性、及び投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。
【0146】
投与量及び投与は、活性物質(複数可)の十分な濃度をもたらすために、または所望の効果を維持するために、調整される。考慮され得る因子には、病状の重症度、対象の全般的な健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の併用(複数可)、反応感受性、ならびに治療法に対する耐性/応答が含まれる。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率に応じて、3~4日ごと、毎週、または2週ごとに1回投与され得る。
【0147】
本出願の活性化合物を含有する医薬組成物は、一般的に知られている方法、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣、研和、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥の各プロセスによって、製造することができる。医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体を使用する従来法で製剤化することができ、当該担体は、薬学的に使用することができる調製物への活性化合物の加工を容易にする賦形剤及び/または助剤を含む。当然のことながら、適切な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0148】
注射用途に好適な医薬組成物は、注射用無菌溶液または分散液を即時調製するための無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液と、無菌粉末と、を含む。静脈内投与の場合、好適な担体には、生理食塩水、静菌蒸留水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易に注射可能である程度に流動性である必要がある。組成物は、製造及び保存の条件下で安定していなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用を受けないように保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコールなど)、及びその好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、また界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張化剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0149】
注射用無菌溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上述した成分の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒中に組み込み、続いて、濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を無菌ビヒクル中に組み込むことによって調製され、無菌ビヒクルは、基本的な分散媒及び上述のものから必要な他の成分を含む。注射用無菌溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥及びフリーズドライであり、これにより、予め無菌濾過した当該溶液から、活性成分の粉末及び任意の所望の追加成分の粉末が得られる。
【0150】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または薬学的に許容される可食担体を含む。経口組成物は、ゼラチンカプセル剤に封入するか、または錠剤に圧縮することができる。経口治療薬を投与するには、活性化合物は、賦形剤とともに組み込まれ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物はまた、含嗽剤として使用される液性担体を使用して調製することもでき、液性担体中の化合物は、経口適用され、口の中ですすがれ、吐出または嚥下される。薬学的に適合性のある結合剤、及び/または補助剤材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、次の成分、または類似の性質の化合物のいずれかを含有することができる:微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、Primogel、もしくはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの矯味剤。
【0151】
吸入による投与の場合、化合物は、好適な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーによるエアゾールスプレーの形態で送達される。
【0152】
全身投与は、経粘膜または経皮的な手段によるものであってもよい。経粘膜投与または経皮投与の場合、透過すべきバリアーに適した浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は、一般に、当該技術分野において知られており、例えば、経粘膜投与には、界面活性剤、胆汁塩及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔スプレーまたは坐剤の使用により実施することができる。経皮的投与の場合、活性化合物は、当該技術分野において一般に知られている軟膏剤、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤へと製剤化される。
【0153】
一態様において、活性化合物は、制御放出製剤などの、化合物が身体から急速に排泄されるのを防ぐ薬学的に許容される担体とともに調製され、インプラント及びマイクロカプセル送達系を含む。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。各材料もまた、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス性抗原に対するモノクローナル抗体を用いて、感染細胞を標的としたリポソームを含む)もまた薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に知られている方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されている方法に従って調製することができる。
【0154】
投与の容易性及び投与量の均一性のために、経口または非経口組成物は、投与単位形態に製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与単位形態とは、治療される個体への単位投与量に適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な薬学的担体とともに所望の治療効果をもたらすように算出された所定量の活性化合物を含有する。本出願の投与単位形態の仕様は、活性化合物の固有の特徴及び達成しようとする具体的な治療効果によって定められ、それらに直接依存する。
【0155】
治療用途において、本出願に従って使用される医薬組成物の投与量は、選択された投与量に影響する他の因子のなかでも、剤、レシピエント患者の年齢、体重、及び臨床状態、ならびに治療を行う臨床医または医師の経験及び判断に応じて変動する。一般に、用量は、腫瘍の成長を遅延させ、好ましくは、後退させ、また好ましくは、がんの完全な退縮をもたらすのに十分である必要がある。投与量は、約0.01mg/kg/日~約3000mg/kg/日の範囲で変動する。好ましい態様において、投与量は、約1mg/kg/日~約1000mg/kg/日の範囲で変動する。一態様において、用量は、単回投与、分割投与、または連続投与で、約0.1mg/日~約50g/日、約0.1mg/日~約25g/日、約0.1mg/日~約10g/日、約0.1mg~約3g/日、または約0.1mg~約1g/日の範囲内である(この用量は、患者の体重(kg単位)、体表面積(m2単位)、及び年齢で調整され得る)。医薬品の有効量は、臨床医または他の適格な観察者によって認識される、客観的に特定可能な改善をもたらすものである。例えば、患者における腫瘍の退縮は、腫瘍径を基準にして測定することができる。腫瘍径の減少は、退縮を示す。退縮はまた、治療の終了後に腫瘍が再発しないことによっても示される。本明細書で使用されるとき、「有効投与量」という用語は、対象または細胞において所望の生物学的効果をもたらす活性化合物の量を指す。
【0156】
医薬組成物は、ミルシクリブと本明細書に記載される化合物のいずれかとの配合剤を含み得る。
【0157】
医薬組成物は、投与に関する説明書とともに、容器、箱、またはディスペンサー中に含めることができる。
【0158】
本出願はまた、以下に関する。
A.がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブ、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される、治療上有効な量の他の抗がん薬と組み合わせて投与することを含む、方法。
B.非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量の他の抗がん薬と組み合わせて投与することを含む、方法。
C.非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブからなる群から選択される、治療上有効な量の他の抗がん薬と組み合わせて投与することを含む、方法。
D.他の抗がん薬が、ソラフェニブまたはその薬学的に許容される塩である、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、ソラフェニブの治療上有効な量は、1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである。一実施形態において、がんは、腎細胞癌、肝細胞癌、または甲状腺癌である。
E.他の抗がん薬が、レンバチニブまたはその薬学的に許容される塩である、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、レンバチニブの治療上有効な量は、1日1回8、10、12、14、18、20、22、24、26、28、30、32、または34mgである。一実施形態において、がんは、腎細胞癌または甲状腺癌である。
F.他の抗がん薬が、レゴラフェニブまたはその薬学的に許容される塩である、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、レゴラフェニブの治療上有効な量は、80、100、または120mgであり、1日1回、3週間投与され、その後、無投与が1週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される。一実施形態において、がんは、大腸癌または消化管間質腫瘍である。
G.他の抗がん薬が、スニチニブまたはその薬学的に許容される塩である、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、スニチニブの治療上有効な量は、12.5、25、37.5、50、62.5、75、87.5、または100mgであり、1日1回連続してまたは4週間投与され、その後、無投与が2週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される。一実施形態において、がんは、腎細胞癌または消化管間質腫瘍である。
H.他の抗がん薬が、ニボルマブである、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、がんは、非小細胞肺癌または腎細胞癌である。
I.他の抗がん薬が、パルボシクリブまたはその薬学的に許容される塩である、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、パルボシクリブの治療上有効な量は、75、100、または125mgであり、1日1回、3週間投与され、その後、無投与が1週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される。一実施形態において、がんは、乳癌である。
J.他の抗がん薬が、ゲムシタビンである、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、ゲムシタビンの治療上有効な量は、1000mg/m2であり、30分かけて週1回7週間投与され、その後、無投与が1週間続き、このサイクルが任意選択で繰り返される。一実施形態において、がんは、乳癌である。
K.ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、本明細書に開示される方法のいずれか。例えば、ミルシクリブの治療上有効な量は、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが複数回、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上繰り返される。例えば、ミルシクリブの治療上有効な量は、約100mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される。例えば、ミルシクリブの治療上有効な量は、100mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される。
L.ミルシクリブ及び他の抗がん薬が、患者に同時に投与される、本明細書に記載される方法のいずれか。
M.ミルシクリブ及び他の抗がん薬は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される。一実施形態において、医薬製剤は、制御放出形態である。
N.ミルシクリブ及び他の抗がん薬は、別個の医薬製剤でそれぞれ投与され、各製剤は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む。一実施形態において、医薬製剤の一方または両方は、制御放出形態である。
O.ミルシクリブ及び他の抗がん薬が、患者に逐次的に投与される、本明細書に記載される方法のいずれか。一実施形態において、ミルシクリブの投与は、他の抗がん薬を患者に投与する前に開始される。一実施形態において、ミルシクリブの投与は、他の抗がん薬を患者に投与した後に開始される。
P.ミルシクリブは、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される。一実施形態において、他の抗がん薬は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される。一実施形態において、医薬製剤のいずれかは、経口投与用に製剤化される。例えば、一実施形態において、医薬製剤は、錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態である。
Q.腎細胞癌の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量のソラフェニブと組み合わせて投与することを含む、本明細書に開示される方法のいずれか。
R.ソラフェニブの治療上有効な量が、1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである、本明細書に開示される方法のいずれか。
S.ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、本明細書に開示される方法のいずれか。
T.肝細胞癌の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量のソラフェニブと組み合わせて投与することを含む、本明細書に開示される方法のいずれか。
U.ソラフェニブの治療上有効な量が、1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである、本明細書に開示される方法のいずれか。
V.ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、本明細書に開示される方法のいずれか。
W.甲状腺癌の治療または予防を、それを必要とする患者に行う方法であって、患者に、治療上有効な量のミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体を、治療上有効な量のソラフェニブと組み合わせて投与することを含む、方法。
X.ソラフェニブの治療上有効な量が、1日2回400mg、1日2回200mg、または1日1回200mgである、本明細書に開示される方法のいずれか。
Y.ミルシクリブの治療上有効な量が、50、75、100、125、または150mgであり、1日1回、4日間連続で投与され、その後、無投与が3日間連続し、このサイクルが任意選択で繰り返される、本明細書に開示される方法のいずれか。
Z.ミルシクリブ及びソラフェニブが、患者に同時に投与される、本明細書に開示される方法のいずれか。
AA.ミルシクリブ及びソラフェニブが、薬学的に許容される賦形剤を更に含む単一医薬製剤で投与される、本明細書に開示される方法のいずれか。
BB.医薬製剤が、制御放出形態である、本明細書に開示される方法のいずれか。
CC.ミルシクリブ及びソラフェニブが、別個の医薬製剤で投与され、各製剤は、薬学的に許容される賦形剤を更に含む、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、医薬製剤の一方または両方は、制御放出形態である。
DD.ミルシクリブ及びソラフェニブが、患者に逐次的に投与される、本明細書に開示される方法のいずれか。
EE.ミルシクリブの投与が、ソラフェニブを患者に投与する前に開始される、本明細書に開示される方法のいずれか。
FF.ミルシクリブの投与が、ソラフェニブを患者に投与した後に開始される、本明細書に開示される方法のいずれか。
GG.ミルシクリブ及びソラフェニブが、薬学的に許容される賦形剤をそれぞれ更に含む別個の医薬製剤でそれぞれ投与される、本明細書に開示される方法のいずれか。一実施形態において、一方または両方の医薬製剤は、経口投与用に製剤化される。例えば、一実施形態において、各医薬製剤は、独立して、錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態である。
HH.ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブからなる群から選択される他の抗がん薬の使用を更に含む、がんの治療または予防において、それを必要とする患者に使用するための、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体。
II.他の抗がん薬の使用を更に含む、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防において、それを必要とする患者に使用するための、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体。
JJ.ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブからなる群から選択される他の抗がん薬の使用を更に含む、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防において、それを必要とする患者に使用するための、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体。
KK.ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブからなる群から選択される他の抗がん薬の使用を更に含む、がんの治療または予防を、それを必要とする患者に行うための薬剤の製造における使用のための、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体。
LL.他の抗がん薬の使用を更に含む、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防を、それを必要とする患者に行うための薬剤の製造に使用するための、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体。
MM.ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ニボルマブ、ゲムシタビン、及びパルボシクリブからなる群から選択される他の抗がん薬の使用を更に含む、非小細胞肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、甲状腺癌、大腸癌、消化管間質腫瘍、乳癌、前立腺癌、膵癌、または胸腺腫の治療または予防を、それを必要とする患者に行うための薬剤の製造に使用するための、ミルシクリブ、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは互変異性体。
【0159】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願、及び公開物は、その全体が参照により本明細書に援用される。しかしながら、明確な定義を含む特許、特許出願、または公開物が参照により援用される場合、それらの明確な定義は、それらが記載されている、援用される特許、特許出願、または公開物に適用され、本出願のテキストの残り、特に、本出願の特許請求の範囲には適用されないことを理解されたい。
【0160】
本発明について、その好ましい特定の実施形態とともに説明してきたが、前述の説明は、本発明の範囲を例示するものであって、限定を意図するものではないことを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、等価物で置き換えることができ、更に、他の態様、利点及び改変は、本発明が属する技術分野の当業者には明らかであることを理解するであろう。
【実施例0161】
実施例1.細胞増殖アッセイによるIC50値
Shailubhai,K et al.“Atiprimod is an inhibitor of cancer cell proliferation and angiogenesis.”J Exp Ther Oncol.2004;4:267-279;及びChoudhari et al.“Deactivation of Akt and STAT3 signaling promotes apoptosis,inhibits proliferation,and enhances the sensitivity of hepatocellular carcinoma cells to an anticancer agent,atiprimod”Molecular Cancer Therapeutics.2007;6:112-121を参照されたい。参考文献は、その全体が本明細書に援用される。
【0162】
MHCC97H及びMHCC97L(ヒト由来の高度転移性肝細胞癌細胞株)
【0163】
HepG2.2.15細胞は、ヒト肝芽腫細胞株HepG2由来である。
【0164】
細胞(MHCC97H、MHCC97L、及びHepG2.2.15)を2%FBS中で24時間培養し、次いで、実験の前日に、トリプシン処理し、2%FBS中に再懸濁し、ラットコラーゲンをコーティングした96ウェルプレートに10,000細胞/100μl/ウェルの密度で播種し、5%CO2、37℃で培養した。翌日、各細胞を、ミルシクリブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、及びレンバチニブを個別にまたは組み合わせて用いて、DMEM/F12+2%FBS+中で72時間処理してから、WST-1試薬を加えた。約100μLの培地を対照ウェルに添加した。細胞を様々な薬物濃度で72時間培養した後、細胞を1X滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した。細胞増殖を比色試験によって決定するために、10μLのWST-1試薬(Sigma Aldrich,St Louis,MO)を100μLの細胞培地中に加え、5%CO2、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション時間が終了したら、プレートをプレートシェーカー上に1分間置き、Tecan F200及びiControlソフトウェアを使用し、基準波長600nm、光学密度450nmで分光光度計を使用して観察した。IC50値をGraphPadPrism(GraphPad Software,La Jolla,CA)を使用して決定した。各実験をデュプリケートで実施し、2回繰り返した。
【0165】
各阻害剤は、3つの細胞株にわたって、細胞増殖の用量依存的減少を示し、同等の半数阻害濃度(IC50)であった(
図1及び
図4:MHCC97H細胞、
図2及び
図10~14:MHCC97L細胞、ならびに
図3及び
図20~24:HepG2.2.15細胞)。
【0166】
レンバチニブが最も低いIC
50値を示し、ミルシクリブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ及びスニチニブが続いた。
【表1】
【0167】
実施例2.MHCC97H細胞での細胞増殖アッセイによるミルシクリブと組み合わせた阻害剤のIC
50値
相乗効果試験
【表2】
【0168】
IC
50値に対応する一定濃度のミルシクリブの存在下、漸増濃度のTKIでMHCC97H細胞、MHCC97L細胞、及びHepG2.2.15細胞を処理して、細胞増殖阻害に対する相乗効果を観察した。全ての場合において、各TKIのIC
50値は、約50%減少した(MHCC97H:
図5~9、MHCC97L:
図15~19、HepG2.2.15:
図25~28)。
【0169】
一定濃度のミルシクリブと合わせた漸増濃度の阻害剤をMHCC97L細胞及びMHCC97H細胞で試験して、細胞増殖阻害に対する相乗効果を決定した。
【0170】
この相乗効果試験において、矢印は、TKIとミルシクリブの組み合わせの中間点を表す。ソラフェニブの場合、MHCC97Hにおいて、単体でのIC
50は12μMであったが、ミルシクリブと組み合わせると、IC
50は6.7μMとなった(
図29A)。
【0171】
レンバチニブの場合、MHCC97Hにおいて、単体でのIC
50は0.28μMであったが、ミルシクリブと組み合わせると、IC
50は0.12μMとなった(
図29B)。
【0172】
レゴラフェニブの場合、MHCC97Hにおいて、単体でのIC
50は4.7μMであったが、ミルシクリブと組み合わせると、IC
50は1.9μMとなった(
図29C)。
【0173】
実施例3.MHCC97H細胞は、ヒトアルファフェトプロテイン(AFP)を産生する。
【0174】
AFP ELISAアッセイ
MHCC97H細胞を6ウェル培養プレートに500,000細胞/2mL/ウェルの密度で播種し、加湿したCO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした。次いで、細胞を1.3μMのミルシクリブまたはビヒクルでDMEM/F12+2%FBS中、72時間処理した。その後、製造元の説明書に従って、細胞をRIPAバッファーで溶解し、上清を回収し、その上清を使用して、ELISAアッセイを実施した。同所性HCCマウスモデルにおいて、High Range AFPキットを製造元の説明書に従って使用して、血清マーカーであるアルファ-フェトプロテイン(AFP)レベルを0、6、12、18、24、30、36、42及び48日目に決定した。
【0175】
新たに培養したMHCC97H細胞を1.3μMのミルシクリブで72時間処理し、AFPレベルを決定した。ビヒクル対照と比較して、ミルシクリブ処理した細胞で検出されたAFPレベルは、かなり低かった(
図30)。
【0176】
実施例4.Promega ApoTox-Glo(商標)Triplexアッセイ
【0177】
ラットコラーゲンをコーティングした96ウェルプレートの各ウェルに、HCC細胞を10,000細胞/100μLの密度で播種し、5%CO2、37℃で一晩成長させた。次いで、細胞を、様々な濃度の各剤単独で、またはMHCC97H細胞の場合1.3μMのミルシクリブ及びMHCC97L細胞の場合1.16μMのミルシクリブと組み合わせて、48時間処理した。Promega ApoTox-Glo Triplexアッセイ(Madison,WI)を製造元の説明書に従って使用して、生細胞数、アポトーシスによる細胞死及び細胞に対する細胞毒性効果を決定した。48時間後、GF-AFC基質とbis-AAF-R110基質の両方を含有する生存性/細胞毒性試薬を全てのウェルに加え、30分間インキュベートし、生存性については400EX/505EM及び細胞傷害については485EX/520EMの光学密度で測定した。アポトーシスについては、カスパーゼ-glo3/7を全てのウェルに加え、500rpmで30秒間軽く混合し、次いで、室温で30分間インキュベートし、存在するカスパーゼ活性量と相関する発光を測定した。実験の詳細については、Ito H,Uchida T,Makita K.Ketamine causes mitochondrial dysfunction in human induced pluripotent stem cell-derived neurons.PLoS One.2015;10:e0128445)を参照されたい。参考文献は、その全体が本明細書に援用される。
【0178】
ミルシクリブを各種濃度の他のTKIと組み合わせると、MHCC97H細胞(
図31~39)及びMHCC97L細胞(
図40~50)において、ビヒクル処理した細胞と比較して、用量依存的に、細胞生存率が低下し、カスパーゼ3/7活性が上昇した。
【0179】
実施例5.創傷治癒(0.5×106細胞を使用)
【0180】
コラーゲンをコーティングした6ウェル培養プレートに500,000細胞/2mL/ウェルの密度で細胞を播種し、加湿したCO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートし、均一な単層を得た。次いで、新しい10μLピペットチップを用いて、ウェルの中心を端から端まで、単層を直線状に引っ掻いた。引っ掻いた後、細胞を滅菌PBSで1回洗浄し、剥離した細胞を除去した。その後、ウェルに新たな2%FBS含有DMEM/F12を、試験物質単独またはミルシクリブとの組み合わせで、補充した。Olympus IX81顕微鏡を使用して、直後のT0ならびに24、48、及び72時間の各時間後に、引っ掻き傷をつけた単層の写真を撮影した。SlideBook(商標)5ソフトウェアを使用して、画像を解析した。値を遊走のパーセンテージとして表した。Saxena NK,Sharma D,Ding X,et al.Concomitant activation of the JAK/STAT,PI3K/AKT,and ERK signaling is involved in leptin-mediated promotion of invasion and migration of hepatocellular carcinoma cells.Cancer Res.2007;67:2497-2507を参照されたい。
【0181】
引っ掻き傷をつけたMHCC97H細胞の単層をTKI(チロシンキナーゼ阻害剤)とミルシクリブ(1.3μM)の組み合わせで96時間処理すると、細胞遊走は、対応するビヒクル対照と比較して、減少した(
図51~55)。
【0182】
引っ掻き傷をつけたMHCC97L細胞の単層をミルシクリブ単独または他のTKIとの組み合わせで96時間処理すると、細胞遊走は、対応するビヒクル対照と比較して、減少した(
図56~60)。
【0183】
引っ掻き傷をつけたHepG2.2.15細胞の単層をミルシクリブ単独または他のTKIとの組み合わせで96時間処理すると、細胞遊走は、対応するビヒクル対照と比較して、減少した(
図61~63)。
【0184】
実施例6 EMTアッセイ
【0185】
R&D systems社のキット(Cat#CCM017)を採用したEMT(上皮間葉転換)誘導
【0186】
トランスウェル浸潤アッセイのために、100X StemXVivo(登録商標)EMT Inducing Media Supplement(R&D systems,Minneapolis,MN)を含有する標準培地が入った6ウェルトランスウェルプレート(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)の上部チャンバーに、100,000細胞/500μL/ウェルの密度でHCC細胞を播種し、加湿したCO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした。翌日、試験物質含有または不含のEMT誘導培地を加え、3日ごとに培地を交換しながらインキュベーションを10日間続けた。10日目に、下部チャンバーに遊走した細胞数を、Bio-Rad(Hercules,CA)自動セルカウンターを使用して決定した。得られた値を浸潤のパーセンテージとして表し、対照細胞の細胞カウントを100%とみなした。
【0187】
がん細胞の浸潤能は、上皮性特徴を失うことと、遊走性の間葉性特性を獲得することとに依存するものであり、これは、上皮間葉転換(EMT)と呼ばれる。
【0188】
MHCC97L細胞にミルシクリブまたはTKIを単独で含めると、その細胞遊走に統計的に有意な阻害がもたらされた(P<0.05)。ミルシクリブと組み合わせたレゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ及びレンバチニブは、単体での処置と比較して、浸潤能を大幅に低下させた(P<0.005)(
図64)。
【0189】
MHCC97H細胞にミルシクリブまたはTKIを単独で含めると、その細胞遊走に統計的に有意な阻害がもたらされた(P<0.05)。ミルシクリブと組み合わせたレゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ及びレンバチニブは、単体での処置と比較して、浸潤能を大幅に低下させたことから(P<0.005)、ミルシクリブの抗浸潤能が実証された(
図65)。
【0190】
実施例7:無胸腺ヌードマウスにおける同所性腫瘍誘発
【0191】
マウス実験を実施した。実験は、当該研究が行われたInstitutional Animal Care and Use Committee of Washington Biotechnology Inc(Baltimore,MD)の承認を受けたガイドラインに従った。(
図66)クレモフォール/エタノール(1:1)中に試験剤を溶解して5Xストック溶液を作製し、使用時に水で希釈した。PBS中のMHCC97Hヒト肝細胞(5×106)を20%Matrigelと混合し、次いで、雌のBalb/cヌードマウスの右脇腹に同所移植した。細胞接種の7日後、AFPレベルに応じて、マウスを処置群(n=12)または対照群(n=12)のいずれかに無作為に割り当てた。全体的外観及び腫瘍成長に関する動物検査を毎日実施した。ミルシクリブ(30mg/Kg)、ソラフェニブ(20mg/Kg)、ミルシクリブ+ソラフェニブまたは対応するビヒクルを個々のマウスに1日1回、12日目から47日目まで、経口投与した。48日目の処置が終了したら、動物を安楽死させ、遺伝子発現及び機序アッセイのために、血液、肝組織及び腫瘍を採取した。MHCC97Hの注入により同所移植を行った動物の100%で肝臓腫瘍が発生した。
【0192】
ミルシクリブ(30mg/kg/日)を単独またはソラフェニブ(20mg/kg/日)との組み合わせのいずれかで経口投与すると、腫瘍成長の減少に相乗効果がもたらされた[ビヒクルとの比較で、ミルシクリブ-20%(p<0.002)またはソラフェニブ-21%(p<0.001)に対し、組み合わせ-38%(p<0.0002)(
図67)。ビヒクル群は、肝臓重量が増加したが、組み合わせの場合には、肝臓重量が減少した(
図68)。
【0193】
ミルシクリブ、ソラフェニブ、及びその組み合わせの処置による腫瘍量の違いを示す写真を提供する。ビヒクル群は、腫瘍が拡大したが、組み合わせの場合には、腫瘍量が減少した(
図69)。
【0194】
ビヒクルを投与した動物では、血清AFPの一定増加が、研究終了時まで観察された。ミルシクリブ(30mg/kg)単独、ソラフェニブ(20mg/kg)単独または組み合わせで処置した動物について記録された血清中AFPレベルは、極めて低かった(
図70)。
【0195】
実施例8:ミルシクリブは、miR221/222を特異的に下方制御することにより作用する。
miRNAの単離及び発現解析
ビヒクル、ミルシクリブ、ソラフェニブ、またはミルシクリブ+ソラフェニブで処置した後の無胸腺ヌードマウスのmiRNAを、TaqMan Advanced miRNA cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)を製造元の説明書に従って使用して、トータルRNAから単離した。miRNA-221及びmiR-222の定量を、TaqMan Advanced miRNA Assay(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)を使用して、1:10のサンプル希釈で、デュプリケートで実施した。PCR混合物を95℃で20秒間インキュベートし、続いて、95℃で3秒間及び60℃で30秒間のサイクルを40サイクル行った。結果を、参照miRNAであるhsa-miR-192-5pに対して正規化し、2-ΔCTとして算出された相対遺伝子発現を対照サンプルに対する増加倍数で表した。
【0196】
遺伝子発現研究は、ミルシクリブが、miR-221及びmiR-222の下方制御により、その活性を発揮するであろうことを示唆している。
【0197】
データは、ミルシクリブによる経口処置が、miR-221及びmiR-222の下方制御により、その活性を発揮することを示唆している(
図71A及び71B)。
【0198】
ビヒクル、ソラフェニブ、ミルシクリブ、ミルシクリブ+ソラフェニブで処置したマウスの腫瘍組織及びナイーブ無処置マウスの正常肝組織を採取し、miR-221及びmiR-222のレベルを決定した。miR-221及びmiR-222の両レベルは、ビヒクル処置したマウスの腫瘍で上昇した。ソラフェニブ単独での処置は、これらのmiRの発現をわずかに減少させたのに対し、ミルシクリブ単独での処置は、miR-221とmiR-222の両方の発現を有意に減少させた。これらのデータは、ミルシクリブが、肝臓癌の主な発現原因として知られているmiR-221及びmiR-222の発現を減少させることにより、特異的に作用することを示唆している(Park JK,et al.“miR-221 silencing blocks hepatocellular carcinoma and promotes survival.”Cancer Res.2011;71:7608-76参照)。これらのデータはまた、ミルシクリブによる経口処置が、ソラフェニブの経口投与とは異なる機序により、腫瘍成長を減少させたことを意味している。
【0199】
実施例9:ミルシクリブの作用機序研究
ウェスタンブロット解析
胸腺ヌードマウスの腫瘍組織を秤量し、RIPA溶解バッファー(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)とともにホモジナイズした。腫瘍ライセートを遠心分離によって清澄化し、タンパク質濃度をBradford試薬(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を使用して決定した。等量のタンパク質(30μg)をプレキャストポリアクリルアミドゲル(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)上で分離し、孔径0.2μmのニトロセルロース膜(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)に転写した。5%(w/v)スキムミルクによりブロットを室温で2時間ブロッキングし、次いで、一次抗体を4℃で一晩プローブした。一次抗体は、次のタンパク質:ヒトPTEN、ヒトAKT及びホスホ-AKT(Ser473)、ヒトc-Myc、ヒトサイクリンD1ならびにヒトβ-アクチン(Cell Signaling Technology,Beverly,MA)に対するものであった。3回洗浄した後、インキュベーションに続いて、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体と室温で1時間反応させた。Image Studio 4.0-Western Analysis Ribbon(Li-Cor,Lincoln,NE)を使用して、免疫反応性バンドを可視化した。
【0200】
逆転写及び定量リアルタイムPCR
RNeasy Miniキットを製造元の説明書(Qiagen,Germantown,MD)に従って使用して、トータルRNAを抽出した。Nanodrop Lite(Thermo Scientific,Wilmington,DE)を使用して、RNAを定量した。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)を使用して、相補的DNA(cDNA)合成をトータルRNAの逆転写によって実施した。LightCycler 480 Instrument II(Roche Diagnostics Corporation,Indianapolis,IN)を使用し、TaqMan Fast Advanced Master Mixならびにヒトp27、サイクリンE2、サイクリンA2、CdC6、MKI67、サイクリンD1、p21、p57、c-Myc及びp53に対するTaqMan Gene Expressionプローブ(Thermo Fisher Scientific)を使用する、リアルタイム定量PCRを採用した。各サンプルにおける標的遺伝子の発現をハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化した。全サンプルをデュプリケートで実施し、2-ΔCTとして算出された相対遺伝子発現を対照サンプルに対する増加倍数で表した。
【0201】
ミルシクリブの作用機序が、p27、p21、p53及びp57などの腫瘍抑制因子の発現を上方制御したことから、ミルシクリブの作用機序は、ソラフェニブの作用機序とは異なるようである(
図72A、B、C、D)。
【0202】
ミルシクリブ単独またはソラフェニブとの組み合わせの経口投与は、サイクリンE2及びサイクリンD1などのサイクリンの発現を下方制御した(
図73A及び73B)。
【0203】
ミルシクリブ単独またはソラフェニブとの組み合わせの経口投与は、MKI67、cdc6、c-Mycなどの細胞増殖遺伝子の発現を下方制御した(
図74A、74B、74C)。
【0204】
ミルシクリブの作用機序は、ソラフェニブの作用機序とは異なるようである。
【0205】
機序研究は、ビヒクル処置群と比較して、ミルシクリブを投与した動物及びミルシクリブとソラフェニブを投与した動物に由来する肝臓サンプルにおいて、pAKT、c-Myc及びサイクリンD1発現を減少させ、PTENを上方制御することを明らかにした(
図75)。
【0206】
細胞培養研究及びヌードマウスの同所性HCCモデルからのデータは、ミルシクリブによる経口処置が、新しい機序により、その活性を発揮することを示唆している。
【0207】
実施例10:AFP ELISAアッセイ
【0208】
MHCC97H細胞を6ウェル培養プレートに500,000細胞/2mL/ウェルの密度で播種し、加湿したCO2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートした。次いで、細胞を1.3μMのミルシクリブまたはビヒクルでDMEM/F12+2%FBS中、72時間処理した。その後、製造元の説明書に従って、細胞をRIPAバッファーで溶解し、上清を回収し、その上清を使用して、ELISAアッセイを実施した。同所性HCCマウスモデルにおいて、High Range AFPキットを製造元の説明書に従って使用して、血清マーカーであるアルファ-フェトプロテイン(AFP)レベルを0、6、12、18、24、30、36、42及び48日目に決定した。
【0209】
実施例11:作用機序
【0210】
肝細胞癌(HCC)は、極めて複雑な多因子性疾患であり、疾患の進行及び患者の予後に影響する交絡因子が多数関連している。テロメア機能障害、発がん経路の活性化、DNA損傷チェックポイントの破綻、炎症促進性及び転移性経路の活性化、ならびに酸化ストレス応答の誘導を含め、機序の範囲が広い。したがって、HCCは、典型的に、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の過剰発現及び過剰な酸化ストレス(ROS)と関連している。まとめると、RTKの過剰発現及びROSは、c-mycの発現増加をもたらし、肝細胞の転移能を高くする。そのため、肝細胞の転移能は、特定のRTK阻害剤により低減することができる。他方において、HCCは、miR-221、miR-222及びCDKの過剰発現とも関連しており、細胞周期の調節異常を引き起こし、肝細胞の過剰な増殖をもたらす。ミルシクリブによる治療は、miR-221/miR-222及び多数のCDKを阻害することが知られており、肝細胞の増殖を効果的に減少させることができる。したがって、まとめると、ミルシクリブとRTK阻害剤の組み合わせは、c-mycの発現減少と、全体的な腫瘍成長及び進行に相乗効果をもたらし得る。そのため、HCCに対する効果的な治療法には、肝細胞の増殖を制御し、また、その転移能を抑制することが必要である。(
図76)