(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136149
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】癌の処置のためのSMARCA2の阻害
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220908BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220908BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116375
(22)【出願日】2022-07-21
(62)【分割の表示】P 2019544887の分割
【原出願日】2018-02-28
(31)【優先権主張番号】62/464,811
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/542,241
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513137330
【氏名又は名称】エピザイム,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100117422
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 かおり
(72)【発明者】
【氏名】グラシアン, アレクサンドラ ローズ
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー, アリソン
(57)【要約】
【課題】癌などの増殖性障害の治療に有効な阻害剤を提供することを目的とする。
【解決手段】a)複数のモノヌクレオソームおよびATPを含む条件下で第1の複数単離SMARCA2タンパク質をインキュベートし、b)複数のモノヌクレオソーム、ATP及び少なくとも1つの候補化合物を含む条件下で、第2の複数単離SMARCA2タンパク質をインキュベートし、c)a)で得られた第1の複数単離SMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性を測定し、d)b)で得られた第2の複数単離SMARCA2タンパク質の同活性を測定し、e)第1の複数単離SMARCA2タンパク質の同活性と第2の複数単離SMARCA2タンパク質の同活性とを比較し、第2の複数単離SMARCA2タンパク質の同活性が、第1の複数単離SMARCA2タンパク質のそれよりも小さい時、前記候補化合物をSMARCA2阻害剤として同定する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのSMARCA2阻害剤を同定する方法であって、
a)複数のモノヌクレオソームおよびATPを含む条件下で第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質をインキュベートし、
b)複数のモノヌクレオソーム、ATPおよび少なくとも1つの候補化合物を含む条件下で、第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質をインキュベートし、
c)工程a)でインキュベートされた第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性を測定し、
d)工程b)でインキュベートされた第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPase活性を測定し、
e)第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性と第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性とを比較し、第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPase活性が、第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPase活性よりも小さいとき、前記候補化合物をSMARCA2阻害剤として同定する方法。
【請求項2】
単離されたSMARCA2タンパク質が、単離された全長SMARCA2タンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単離されたSMARCA2タンパク質が、単離された短縮型SMARCA2タンパク質である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程c)およびd)において、ATPアーゼ活性の測定は生物発光アッセイを使用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性が、第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性よりも少なくとも5倍低い場合に、候補化合物をSMARCA2阻害剤として同定する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性が、第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性よりも少なくとも10倍低い場合に、候補化合物をSMARCA2阻害剤として同定する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性が、第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性よりも少なくとも100倍低い場合に、候補化合物をSMARCA2阻害剤として同定する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)~d)を同時に実行する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程b)およびd)を、少なくとも1つの候補化合物の異なる濃度で実行し、
異なる濃度で測定されたATPase活性に基づいて、少なくとも1つの候補化合物のSMARCA2のIC50を決定する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの選択的SMARCA2阻害剤を同定する方法であって、
a)複数のモノヌクレオソームおよびATPを含む条件下で第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質をインキュベートし、
b)複数のモノヌクレオソーム、ATPおよび少なくとも1つの候補化合物を含む条件下で、第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質をインキュベートし、
c)複数のモノヌクレオソームおよびATPを含む条件下で第1の複数の単離されたSMARCA4タンパク質をインキュベートし、
d)複数のモノヌクレオソーム、ATPおよび少なくとも1つの候補化合物を含む条件下で、第2の複数の単離されたSMARCA4タンパク質をインキュベートし、
e)工程a)でインキュベートされた第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性を測定し、
f)工程b)でインキュベートされた第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPase活性を測定し、
g)工程c)でインキュベートされた第1の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPアーゼ活性を測定し、
h)工程d)でインキュベートされた第2の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPアーゼ活性を測定し、
i)第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPase活性と第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPase活性を比較し、
j)第1の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPase活性と第2の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPase活性を比較し、
k)第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性が第1の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性よりも小さい場合に、少なくとも1つの候補化合物を選択的SMARCA2阻害剤として同定されたことを決定し、
i)第2の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPアーゼ活性および第1の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPアーゼ活性は同じ、
ii)第2の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPase活性は、第1の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPase活性よりも大きい、又は
iii)第1の複数の単離されたSMARCA2のATPアーゼ活性と比較した第2の複数の単離されたSMARCA2タンパク質のATPアーゼ活性の減少は、第1の複数の単離されたSMARCA4のATPアーゼ活性と比較した第2の複数の単離されたSMARCA4タンパク質のATPアーゼ活性の減少よりも大きい、方法。
【請求項11】
少なくとも1つの候補化合物の異なる濃度で工程b)、d)、f)およびh)を実行し、
異なる濃度で測定されたATPアーゼ活性に基づいて少なくとも1つの候補化合物のSMARCA2のIC50およびSMARCA4のIC50を決定し、ここで、少なくとも1つの候補化合物を、そのSMARCA2のIC50が少なくとも40%低い場合に、選択的SMARCA2阻害剤として同定する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
SMARCA2のIC50がSMARCA4のIC50よりも少なくとも90%低い場合に、少なくとも1つの候補化合物を、選択的SMARCA2阻害剤として同定する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
単離されたSMARCA2タンパク質が、単離された全長SMARCAC2タンパク質であり、単離されたSMARCA4タンパク質が、単離された全長SMARCA4タンパク質である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
単離されたSMARCA2タンパク質が、単離された短縮型SMARCAC2タンパク質であり、単離されたSMARCA4タンパク質が、単離された短縮型SMARCA4タンパク質である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
工程(e)~(h)において、ATPアーゼ活性の測定は、生物発光アッセイを使用することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
工程(a)~(h)を同時に実行する請求項11に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法に従ってSMARCA2阻害剤として同定された化合物を含む、それを必要とする対象における癌の治療用の医薬組成物。
【請求項18】
前記対象または対象の細胞が、SMARCA4の活性または機能の対照レベルと比較した場合に、SMARCAC4の活性または機能の低下を示す請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項11に記載の方法に従ってSMARCA2阻害剤として同定された化合物を含む、それを必要とする対象における癌の治療用の医薬組成物。
【請求項20】
対照レベルのSMARCA4の活性または機能と比較した場合に、対象または対象の細胞がSMARCAC4の活性または機能の低下を示す、請求項19に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年2月28日に出願された米国仮特許出願第62/464,811号明細書、及び2017年8月7日に出願された同62,542,241号明細書に基づく利益及び優先権を主張し、それぞれの内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、癌を処置するためのSMARCA2の調節(たとえば、阻害)に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、障害、たとえば、一定の癌などの増殖性障害の処置に有用な処置様式、たとえば、戦略、処置法、患者層別化法、化合物及び組成物を提供する。本開示の態様の一部は、ある特定のバイオマーカーに関連する細胞増殖性障害、たとえば、癌の処置のための処置様式、方法、戦略、組成物、化合物及び剤形、又はバイオマーカーの検出に基づく患者層別化法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の態様の一部は、SMARCA4の活性又は機能が低下(たとえば、SMARCA4が機能喪失)している細胞において、SMARCA2活性を調節する(たとえば、阻害する)ことを含む方法を提供する。
【0005】
本開示の態様の一部は、癌を処置する方法を必要とする対象における癌を処置する方法であって、治療有効量のSMARCA2アンタゴニストを当該対象又は当該対象の細胞に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象又は対象の細胞は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している。
【0006】
本開示の態様の一部は、細胞又は対象における癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストに関し、当該細胞又は対象は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している。
【0007】
本開示の態様の一部は、細胞又は対象における癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストに関し、当該細胞又は対象は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している。
【0008】
本開示の態様の一部は、細胞又は対象における癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用に関し、当該細胞又は対象は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している。
【0009】
本開示の態様の一部は、SMARCA2酵素をSMARCA2アンタゴニストに接触させることを含む、SMARCA2の活性を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、SMARCA2酵素は、細胞、たとえば、癌細胞の中にあり、当該方法は、細胞をSMARCA2阻害剤に接触させることを含み、当該細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む。
【0010】
本開示の態様の一部は、SMARCA2の活性の阻害に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを提供し、当該SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2酵素に
接触させられる。いくつかの実施形態では、SMARCA2酵素は、細胞、たとえば、癌細胞の中にあり、当該細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む。
【0011】
本開示の態様の一部は、SMARCA2の活性を阻害するための医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを提供し、当該医薬品は、SMARCA2酵素に接触させられる。いくつかの実施形態では、SMARCA2酵素は、細胞、たとえば、癌細胞の中にあり、当該細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む。
【0012】
本開示の態様の一部は、SMARCA2の活性を阻害するための医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を提供し、当該医薬品は、SMARCA2酵素に接触させられることになる。いくつかの実施形態では、SMARCA2酵素は、細胞、たとえば、癌細胞の中にあり、当該細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む。
【0013】
本開示の態様の一部は、癌を処置する方法を必要とする対象における癌を処置する方法であって、当該方法は、当該対象に治療有効量のSMARCA2アンタゴニストを投与することを含み、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、方法を提供する。
【0014】
本開示の態様の一部は、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必要とする対象における、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストであって、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを提供する。
【0015】
本開示の態様の一部は、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必要とする対象における、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストであって、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを提供する。
【0016】
本開示の態様の一部は、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を必要とする対象における、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用であって、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、SMARCA4の活性又は機能の低下である。ある種の実施形態では、バイオマーカーは、SMARCA4の機能喪失である。
【0018】
本開示の態様の一部は、SMARCA2アンタゴニストでの処置に感受性のある対象を識別する方法であって、当該方法は、当該対象において、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際のSMARCA4の活性又は機能の低下を検出すること、及びSMARCA2アンタゴニストを当該対象に投与することを含み、当該対象は癌を有し、癌の徴候又は症状における改善は、SMARCA2アンタゴニストに対する、対象の感受性又は対象の癌細胞の感受性を示す、方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、対照レベルは、癌を有していない対象におけるSMARCA
4の活性レベルである。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象は、臨床試験の参加者である。いくつかの実施形態では、臨床試験への対象の参加基準は、前記対象又は前記対象の細胞における、SMARCA4の活性若しくは機能の低下、又はSMARCA4の機能喪失である。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示は、SMARCA4が機能喪失している細胞においてSMARCA2活性を阻害することを含む方法を特徴とする。
【0022】
本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、SMARCA2活性は、ATPアーゼ活性である。
【0023】
本明細書に開示されている方法、使用、又は医薬品の、ある種の実施形態では、SMARCA2活性は、ブロモドメイン活性ではない。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、細胞をSMARCA2アンタゴニストに接触させることを含む。ある種の実施形態では、細胞は、インビボ、エクスビボ、インビトロ、又はインサイチュにある。本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、細胞は対象の中にある。
【0025】
いくつかの実施形態では、細胞は、エクスビボ又はインビトロにある。さらなる実施形態では、細胞は、腫瘍を有する対象から単離され、又は腫瘍を有する対象に由来する。
【0026】
いくつかの実施形態では、腫瘍は悪性である。いくつかの実施形態では、腫瘍は転移性である。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、SMARCA2アンタゴニストを対象に投与することを含む。
【0028】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA4を調節しない。たとえば、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA4を阻害しない。
【0029】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のヘリカーゼドメインを標的とする。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のATPアーゼドメインを標的とする。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のブロモドメイン活性を標的としない。
【0032】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、遺伝子変異によって引き起こされる。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、エピジェネティックな変化によって引き起こされる。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、SMARCA4遺伝子転写の低下、SMARCA4遺伝子転写産物翻訳の低下、又はこれらの組合せによっ
て引き起こされる。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、アンチセンスRNA、shRNA、siRNA、CRISPR/Cas9、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、抗体、抗体フラグメント及び抗体ミメティックからなる群から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2阻害剤である。ある種の実施形態では、SMARCA2阻害剤は、選択的SMARCA2阻害剤である。
【0037】
本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、細胞は対象の中にあり、当該方法は、SMARCA2阻害剤を当該対象に投与することを含む。
【0038】
本開示のある種の実施形態では、SMARCA2阻害剤は、SMARCA2のATPアーゼ活性を阻害する。
【0039】
本開示のある種の実施形態では、SMARCA2阻害剤は、SMARCA2のATPアーゼ活性を選択的に阻害する。
【0040】
いくつかの態様では、本開示は、癌を処置する方法であって、当該方法は、それを必要とする対象においてSMARCA2活性を阻害することを含み、当該対象はSMARCA4の機能喪失を特徴とする癌を有する、方法を特徴とする。
【0041】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2阻害剤である。いくつかの実施形態では、SMARCA2阻害剤は、BMCL2968、I-BET151、JQ1、及びPFI-3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、SMARCA2阻害剤はPFI-3である。
【0042】
いくつかの態様では、本開示は、癌を処置する方法であって、当該方法は、それを必要とする対象において、SMARCA2活性、たとえば、SMARCA2ヘリカーゼ活性又はSMARCA2のATPアーゼ活性を阻害することを含み、当該対象はSMARCA4の機能喪失を特徴とする癌を有する、方法を特徴とする。
【0043】
本開示の態様の一部は、SMARCA4の活性又は機能が低下している細胞においてSMARCA2活性を調節することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、インビボ、エクスビボ、インビトロ、又はインサイチュにある。いくつかの実施形態では、細胞は対象の中にあり、当該方法は、SMARCA2アンタゴニストを当該対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボ又はインビトロにあり、当該細胞は、腫瘍を有する対象から単離され、又は腫瘍を有する対象に由来する。いくつかの実施形態では、腫瘍は悪性である。いくつかの実施形態では、腫瘍は転移性である。
【0044】
本開示の態様の一部は、癌を処置する方法を必要とする対象における癌を処置する方法であって、当該方法は、治療有効量のSMARCA2アンタゴニストを当該対象又は当該対象の細胞に投与することを含み、前記対象又は前記対象の細胞は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している、方法を提供する。
【0045】
本開示の態様の一部は、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必
要とする対象における、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストであって、前記対象又は前記対象の細胞は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを提供する。
【0046】
本開示の態様の一部は、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必要とする対象における、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストであって、前記対象又は前記対象の細胞は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを提供する。
【0047】
本開示の態様の一部は、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を必要とする対象における、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストであって、前記対象又は前記対象の細胞は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際に低下している、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストを提供する。
【0048】
いくつかの実施形態では、対照レベルは、癌を有していない対象におけるSMARCA4の活性又は機能のレベルである。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞又は対象におけるSMARCA4の活性又は機能の低下に基づいて、SMARCA2アンタゴニストを細胞又は対象に投与することを含む。
【0049】
本開示の態様の一部は、癌を有する対象を、SMARCA2アンタゴニストでの処置を受ける候補として識別する方法であって、当該方法は、対象の癌細胞中のSMARCA4の活性又は機能のレベルを検出すること、癌細胞中に検出されたSMARCA4の活性又は機能のレベルを対照レベル又は参照レベルと比較することを含み、癌細胞中のSMARCA4の活性又は機能のレベルが対照レベル又は参照レベルと比較して低下している場合に、その対象が、SMARCA2アンタゴニストでの処置を受ける候補として識別される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、対象から癌細胞を含むサンプルを取得することを含む。
【0050】
本開示の態様の一部は、癌細胞を、SMARCA2アンタゴニストでの処置に感受性があるとして識別する方法であって、当該方法は、癌細胞中のSMARCA4の活性又は機能のレベルを検出すること、癌中に検出されたSMARCA4の活性又は機能のレベルを対照レベル又は参照レベルと比較することを含み、SMARCA4の活性又は機能のレベルが対照レベル又は参照レベルと比較して低下している場合に、その細胞が、SMARCA2アンタゴニストでの処置に感受性があるとして識別される、方法を提供する。いくつかの実施形態では、SMARCA4の活性又は機能の対照レベル又は参照レベルは、癌細胞と同源の健常な細胞中に観察又は予測されるSMARCA4のレベルである。
【0051】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2ヘリカーゼ活性を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%阻害し、又はSMARCA2活性を消失させる。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%阻害し、又はSMARCA2活性を消失させる。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、選択的SMARCA2アンタゴニ
ストである。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2活性を、SMARC4活性より、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、少なくとも10000倍、又は少なくとも100000倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA4を阻害しない。
【0052】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のヘリカーゼドメインを標的とする。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のATPアーゼドメインを標的とする。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のブロモドメイン活性を標的としない。
【0053】
いくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、遺伝子変異によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、エピジェネティックな変化によって引き起こされる。いくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、SMARCA4遺伝子転写の低下により、SMARCA4遺伝子転写産物翻訳の低下により、翻訳後修飾により、タンパク質-タンパク質相互作用の消失により、又はこれらの組合せにより、引き起こされる。
【0054】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2の小分子阻害剤である。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、アンチセンスRNA、shRNA、siRNA、CRISPR/Cas9、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、抗体、抗体フラグメント及び抗体ミメティックからなる群から選択される。
【0055】
上記の態様及び実施形態のいずれも、他の任意の態様又は実施形態と組み合わせることができる。
【0056】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の図面、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0057】
本特許又は出願ファイルには、カラーで製作された図面が少なくとも1つ含まれる。カラー図面を伴う本特許又は特許出願公開の写しは、要求に応じ、必要な料金を支払えば、米国特許商標庁により提供される。
【0058】
上記の及びさらなる特徴は、添付の図面とともに考慮されると、以下の詳細な説明から、より明快に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】CRISPRプール型スクリーニングデータを示すグラフであり、SMARCA2ノックアウトに対する感受性(LogP RSA)を示している。細胞株は、SMARCA4の発現によって着色されている。すなわち、青はSMARCA4の高発現を表し、赤はSMARCA4の低発現を表す。SMARCA2ノックアウトに感受性のある細胞株は、SMARCA4の発現が低い傾向がある。
【
図2】Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)で入手可能なRNA配列データを有するNSCLC細胞株のトランスクリプトーム解析を示すグラフである。この図は、SMARCA4の発現が低い細胞株のみがSMARCA2ノックアウトに感受性があることを示している。
【
図3】SMARCA2/4タンパク質発現についてスクリーニングした非小細胞肺癌腫瘍サンプルの免疫組織化学(IHC)スライドの一連の画像である。パネルA~Fは、以下のとおりのタンパク質発現のあるサンプルを示す。パネルA:二重陰性サンプル(SMARCA2及びSMARCA4の喪失)、パネルB:SMARCA4陰性サンプル、パネルC:SMARCA2陰性サンプル、パネルD:野生型サンプル、パネルE:二重陽性サンプル(SMARCA2及びSMARCA4の発現が存在)。
【
図4】SMARCA4変異型細胞株におけるSMARCA2ノックアウトの抗増殖効果を検証するグラフである。この図は、SMARCA4変異型細胞株にCRISPR構築物の送達用ウイルスベクターを感染させた後の、標的CRISPR細胞株における経時でのパーセント変化を示す。
【
図5】ATPアーゼドメインを阻害すると、細胞において抗増殖効果が促進されることを示すグラフである。このグラフは、CRISPRがガイドする標的に応じての、SMARCA2ノックアウトの抗増殖効果を示す。
【
図6】ブロモドメイン阻害剤PFI-3の抗増殖効果を示す一連のグラフである。パネルAは、PFI-3が、ナノモルの親和性でSMACA2に結合することを示す。パネルBは、PFI-3が、SMARCA4野生型又は変異型細胞株において細胞増殖に影響を及ぼさないことを示す。
【
図7-1】活性アッセイにおいて、単離された全長SMARCA2の挙動が良いことを示す一連のグラフである。パネルAは、ATPアーゼハイスループット生物発光アッセイにおけるシグナル-バックグラウンド比(S:B)の概要を示す。S:B比は、90分間線形を維持し、5nMのSMARCA2で値が10であることがわかった。パネルBは、発光をSMARCA2の濃度の関数としてプロットしたものである。パネルCは、生体基質解析の結果を示すプロットである。K
M値は、ATP及びモノヌクレオソームについてそれぞれ640uM及び5.8mMに決定した。パネルDは、DMSO耐性を示す。パネルEは、アッセイの均一性を示す。z値は0.70に決定した。パネルFは、参照阻害剤についてのIC
50値の決定を示す。
【
図7-2】活性アッセイにおいて、単離された全長SMARCA2の挙動が良いことを示す一連のグラフである。パネルAは、ATPアーゼハイスループット生物発光アッセイにおけるシグナル-バックグラウンド比(S:B)の概要を示す。S:B比は、90分間線形を維持し、5nMのSMARCA2で値が10であることがわかった。パネルBは、発光をSMARCA2の濃度の関数としてプロットしたものである。パネルCは、生体基質解析の結果を示すプロットである。K
M値は、ATP及びモノヌクレオソームについてそれぞれ640uM及び5.8mMに決定した。パネルDは、DMSO耐性を示す。パネルEは、アッセイの均一性を示す。z値は0.70に決定した。パネルFは、参照阻害剤についてのIC
50値の決定を示す。
【
図7-3】活性アッセイにおいて、単離された全長SMARCA2の挙動が良いことを示す一連のグラフである。パネルAは、ATPアーゼハイスループット生物発光アッセイにおけるシグナル-バックグラウンド比(S:B)の概要を示す。S:B比は、90分間線形を維持し、5nMのSMARCA2で値が10であることがわかった。パネルBは、発光をSMARCA2の濃度の関数としてプロットしたものである。パネルCは、生体基質解析の結果を示すプロットである。K
M値は、ATP及びモノヌクレオソームについてそれぞれ640uM及び5.8mMに決定した。パネルDは、DMSO耐性を示す。パネルEは、アッセイの均一性を示す。z値は0.70に決定した。パネルFは、参照阻害剤についてのIC
50値の決定を示す。
【
図8-1】活性アッセイにおけるSMARCA4の挙動を示す一連のグラフである。パネルAは、ATPアーゼハイスループット生物発光アッセイにおけるシグナル-バックグラウンド比(S:B)の概要を示す。S:B比は、90分間線形を維持し、5nMのSMARCA4で値が7であることがわかった。パネルBは、発光をSMARCA4の濃度の関数としてプロットしたものである。パネルCは、ATPの生体基質解析の結果を示すプロットである。K
M値は、133mMに決定した。パネルDは、モノヌクレオソームの生体基質解析の結果を示すプロットである。K
M値は、2.1mMに決定した。パネルEは、アッセイの均一性を示す。z値は、0.71に決定した。パネルFは、参照阻害剤についてのIC
50値の決定を示す。
【
図8-2】活性アッセイにおけるSMARCA4の挙動を示す一連のグラフである。パネルAは、ATPアーゼハイスループット生物発光アッセイにおけるシグナル-バックグラウンド比(S:B)の概要を示す。S:B比は、90分間線形を維持し、5nMのSMARCA4で値が7であることがわかった。パネルBは、発光をSMARCA4の濃度の関数としてプロットしたものである。パネルCは、ATPの生体基質解析の結果を示すプロットである。K
M値は、133mMに決定した。パネルDは、モノヌクレオソームの生体基質解析の結果を示すプロットである。K
M値は、2.1mMに決定した。パネルEは、アッセイの均一性を示す。z値は、0.71に決定した。パネルFは、参照阻害剤についてのIC
50値の決定を示す。
【
図9】ATPアーゼアッセイにおける精製したSWI/SNF複合体の挙動を示す一連のグラフである。パネルAは、SMARCB-1 flagを使用して、HEK293細胞からSWI/SNF複合体を精製したことを示すものである。
【
図10-1】精製したSWI/SNFタンパク質複合体がSMARCA2に類似の動態パラメータを示すことを説明する一連のグラフである。パネルAは、SWI/SNF及びSMARCA2の活性をモノヌクレオソーム濃度の関数としてプロットしたものである。パネルBは、SWI/SNF及びSMARCA2の活性をATP濃度の関数としてプロットしたものである。パネルCは、様々な濃度のSWI/SNFタンパク質複合体について、ATPレベルを時間の関数としてプロットしたものである。パネルDは、発光をSWI/SNFタンパク質複合体の濃度の関数としてプロットしたものである。
【
図10-2】精製したSWI/SNFタンパク質複合体がSMARCA2に類似の動態パラメータを示すことを説明する一連のグラフである。パネルAは、SWI/SNF及びSMARCA2の活性をモノヌクレオソーム濃度の関数としてプロットしたものである。パネルBは、SWI/SNF及びSMARCA2の活性をATP濃度の関数としてプロットしたものである。パネルCは、様々な濃度のSWI/SNFタンパク質複合体について、ATPレベルを時間の関数としてプロットしたものである。パネルDは、発光をSWI/SNFタンパク質複合体の濃度の関数としてプロットしたものである。
【
図11-1】SMARCA2のATPアーゼの小分子阻害剤(ADP)の検出及び検証を示す。パネルAは、SMARCA2阻害剤の切断型SMARCA2に対する結合親和性の表面プラズモン共鳴反応を、時間の関数としてプロットしたものである。パネルBは、SMARCA2阻害剤の切断型SMARCA2に対する結合親和性の表面プラズモン共鳴反応を、阻害剤の濃度の関数としてプロットしたものである。K
d値は7μMに決定した。パネルCは、2-アミノ-6-メルカプト-7-メチルプリンリボヌクレオシド/プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(MESG/PNP)アッセイを使用して測定した、全長(FL)及び切断型(TR)SMARCA2におけるATPアーゼ阻害のプロットである。SMARCA2阻害剤のIC
50値は、FL-SMARCA2及びTR-SMARCA2のIC
50について、それぞれ、28μM及び23μMに決定した。
【
図11-2】SMARCA2のATPアーゼの小分子阻害剤(ADP)の検出及び検証を示す。パネルAは、SMARCA2阻害剤の切断型SMARCA2に対する結合親和性の表面プラズモン共鳴反応を、時間の関数としてプロットしたものである。パネルBは、SMARCA2阻害剤の切断型SMARCA2に対する結合親和性の表面プラズモン共鳴反応を、阻害剤の濃度の関数としてプロットしたものである。K
d値は7μMに決定した。パネルCは、2-アミノ-6-メルカプト-7-メチルプリンリボヌクレオシド/プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(MESG/PNP)アッセイを使用して測定した、全長(FL)及び切断型(TR)SMARCA2におけるATPアーゼ阻害のプロットである。SMARCA2阻害剤のIC
50値は、FL-SMARCA2及びTR-SMARCA2のIC
50について、それぞれ、28μM及び23μMに決定した。
【
図12】様々な非小細胞肺癌細胞株についてのSMARCA4及びSMARCA2のウエスタンブロット解析である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示は、細胞増殖性障害、たとえば、SMARCA4の活性又は機能の低下(たとえば、SMARCA4の機能喪失)に関連する癌の処置のための、処置様式、方法、戦略、組成物、化合物及び剤形を提供する。本開示の態様の一部は、SMARCA4の活性若しくは機能の低下、又は機能喪失の検出に基づく患者層別化法を提供する。
【0061】
いくつかの態様では、本開示は、SMARCA4の活性又は機能が低下(たとえば、SMARCA4が機能喪失)している細胞におけるSMARCA2活性を調節することを含む方法を特徴とする。
【0062】
いくつかの態様では、本開示は、癌を処置する方法を必要とする対象における癌を処置する方法であって、治療有効量のSMARCA2アンタゴニストを当該対象又は当該対象の細胞に投与することを含む方法を特徴とする。
【0063】
いくつかの態様では、本開示は、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必要とする対象における、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを特徴とする。
【0064】
いくつかの態様では、本開示は、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必要とする対象における、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを特徴とする。
【0065】
いくつかの態様では、本開示は、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を必要とする対象における、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を特徴とする。
【0066】
いくつかの実施形態では、対象又は対象の細胞は、SMARCA4の活性又は機能が、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較して低下している。
【0067】
いくつかの態様では、本開示は、SMARCA2の活性を調節する方法であって、当該方法は、細胞をSMARCA2アンタゴニストに接触させることを含み、当該細胞は、SMARCA2阻害に感受性のあるバイオマーカーを含む、方法を特徴とする。
【0068】
いくつかの態様では、本開示は、SMARCA2の活性の調節に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを特徴とし、前記使用は、細胞をSMARCA2アンタゴニストに接触させることを含み、当該細胞は、SMARCA2阻害に感受性のあるバイオマーカーを含む。
【0069】
いくつかの態様では、本開示は、SMARCA2の活性を調節するための医薬品としてのSMARCA2アンタゴニストを特徴とし、前記医薬品は、細胞に接触させるためのものであり、当該細胞は、SMARCA2阻害に感受性のあるバイオマーカーを含む。
【0070】
いくつかの態様では、本開示は、SMARCA2の活性を調節するための医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を特徴とし、前記医薬品は、細胞に接触させるためのものであり、当該細胞は、SMARCA2阻害に感受性のあるバイオマーカーを含む。
【0071】
いくつかの態様では、本開示は、癌を処置する方法を必要とする対象における癌を処置する方法であって、当該方法は、当該対象に治療有効量のSMARCA2アンタゴニストを投与することを含み、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、方法を特徴とする。
【0072】
いくつかの態様では、本開示は、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必要とする対象における、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストであって、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、癌の処置に使用するためのSMARCA2アンタゴニストを特徴とする。
【0073】
いくつかの態様では、本開示は、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを必要とする対象における、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストであって、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、癌の処置用の医薬品として使用するためのSMARCA2アンタゴニストを特徴とする。
【0074】
いくつかの態様では、本開示は、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を必要とする対象における、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用であって、当該対象又は当該対象の細胞は、SMARCA2アンタゴニストに感受性のあるバイオマーカーを含む、癌の処置用の医薬品の製造におけるSMARCA2アンタゴニストの使用を特徴とする。
【0075】
いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、SMARCA4の活性又は機能の低下である。ある種の実施形態では、バイオマーカーは、SMARCA4の機能喪失である。
【0076】
いくつかの態様では、本開示は、SMARCA2アンタゴニストでの処置に感受性のある対象を識別する方法であって、当該方法は、当該対象において、SMARCA4の活性又は機能の対照レベルと比較した際のSMARCA4の活性又は機能の低下を検出すること、及びSMARCA2アンタゴニストを当該対象に投与することを含み、当該対象は癌を有し、癌の徴候又は症状における改善は、SMARCA2アンタゴニストに対する、対象の感受性又は対象の癌細胞の感受性を示す、方法を特徴とする。
【0077】
いくつかの実施形態では、対象は、臨床試験の参加者である。いくつかの実施形態では、臨床試験への対象の参加基準は、前記対象又は前記対象の細胞における、SMARCA4の活性若しくは機能の低下、又はSMARCA4の機能喪失である。
【0078】
いくつかの実施形態では、対照レベルは、癌を有していない対象におけるSMARCA4の活性レベルである。
【0079】
いくつかの実施形態では、本開示は、SMARCA4が機能喪失している細胞においてSMARCA2活性を阻害することを含む方法を特徴とする。
【0080】
本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、SMARCA2活性は、ATPアーゼ活性である。
【0081】
本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、SMARCA2活性は、ブロモドメイン活性ではない。
【0082】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、細胞をSMARCA2アンタゴニストに接触させることを含む。ある種の実施形態では、細胞は、インビボ、エクスビボ、インビトロ、又はインサイチュにある。本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、細胞は対象の中にある。
【0083】
いくつかの実施形態では、細胞は、エクスビボ又はインビトロにある。さらなる実施形態では、細胞は、腫瘍を有する対象から単離され、又は腫瘍を有する対象に由来する。
【0084】
いくつかの実施形態では、腫瘍は悪性である。いくつかの実施形態では、腫瘍は転移性である。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、SMARCA2アンタゴニストを対象に投与することを含む。
【0086】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA4を調節しない。たとえば、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA4を阻害しない。
【0087】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のヘリカーゼドメインを標的とする。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のATPアーゼドメインを標的とする。
【0089】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2のブロモドメイン活性を標的としない。
【0090】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、遺伝子変異によって引き起こされる。
【0091】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、エピジェネティック過程、たとえば、SMARCA4遺伝子のサイレンシング、SMARCA4遺伝子産物の半減期の転写後又は翻訳後の調節、たとえば、SMARCA4転写産物からSMARCA4タンパク質への翻訳の阻害、又はSMARCA4タンパク質の代謝回転の増大によって引き起こされる。
【0092】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA4の活性の低下は、SMARCA4遺伝子転写の低下、SMARCA4遺伝子転写産物翻訳の低下、又はこれらの組合せによって引き起こされる。
【0093】
本開示のいくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、アンチセンスRNA、shRNA、siRNA、CRISPR/Cas9、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、抗体、抗体フラグメント及び抗体ミメティックからなる群から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2の小分子阻害剤(たとえば、ADP)である。ある種の実施形態では、SMARCA2阻害剤は、選択的SMARCA2阻害剤であり、たとえば、その場合、SMARCA2阻害剤はSMARCA2を阻害するが、SMARCA4も異なるヘリカーゼも阻害せず、又はその場合、SMARCA2阻害剤はSMARCA2をSMARCA4より効率的に阻害する。
【0095】
本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、細胞は対象の中にあり、当該方法は、SMARCA2阻害剤を当該対象に投与することを含む。
【0096】
本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、SMARCA2阻害剤は、
SMARCA2のATPアーゼ活性を阻害する。
【0097】
本明細書に開示されている方法の、ある種の実施形態では、SMARCA2阻害剤は、SMARCA2のATPアーゼ活性を選択的に阻害する。
【0098】
本開示の態様の一部は、癌を処置する方法であって、当該方法は、それを必要とする対象においてSMARCA2活性を阻害することを含み、当該対象はSMARCA4の機能喪失を特徴とする癌を有する、方法を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニストは、SMARCA2阻害剤である。いくつかの実施形態では、SMARCA2阻害剤は、BMCL2968、I-BET151、JQ1、及びPFI-3からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、SMARCA2阻害剤はPFI-3である。
【0100】
本開示の態様の一部は、癌を処置する方法であって、当該方法は、それを必要とする対象において、SMARCA2活性、たとえば、SMARCA2ヘリカーゼ活性又はSMARCA2のATPアーゼ活性を阻害することを含み、当該対象はSMARCA4の機能喪失を特徴とする癌を有する、方法を提供する。
【0101】
SMARCA2/SMARCA4
本開示の態様の一部は、SMARCA2は、SMARCA4が変異した癌、又はSMARCA4の活性若しくは機能の低下若しくは喪失に関連する癌における、合成致死性の標的であるという知見に基づいている。したがって、本開示の態様の一部は、SMARCA4の機能が喪失している癌細胞においてSMARCA2を阻害することによって、そうした癌細胞の生存及び/又は増殖を低下又は消失させる方法又は医薬品を提供する。
【0102】
SMARCA2及びSMARCA4は、SWI/SNFに関連し、マトリックスに会合した、クロマチンのアクチン依存性制御因子であり、SWI/SNF複合体中で相互排他的なパラログである。SWI/SNF複合体は、ヌクレオソーム構造の直接的な調節によって、多くの細胞プロセスを制御する。触媒サブユニットであるSMARCA2及びSMARCA4は、ヌクレオソームを再配置するATP依存性ヘリカーゼ活性を有している。
【0103】
SWI/SNF複合体メンバーは、ヒト癌の約20%において変異している(Kardoch et al.Nat.Genet.,2013,45(6),592-601、その内容全体を参照により本明細書に援用する)。たとえば、SMARCA4変異型は、様々な癌の種類にわたって発生し、集団サイズ及び臨床的必要性も様々である。
【0104】
下の表1は、一定の癌の種類におけるSMARCA4変異型の頻度の概要を示す。
【0105】
【0106】
しかしながら、SMARCA4の発現は、転写後及び翻訳後の機序によっても制御され得る。このため、変異頻度の解析のみでは、タンパク質喪失を過小評価しがちであり、SMARCA4の変異型のみの観察では、患者におけるSMARCA4の活性又は機能の低下又は喪失を過小評価する恐れがある。SMARCA4の活性又は機能の低下又は喪失は、SMARCA4の変異型を有していない患者に現れる可能性がある。これらの患者は、mRNAアッセイ又はタンパク質アッセイなどの方法によって識別することができる。本開示のいくつかの実施形態では、細胞又は組織中のSMARCA4の活性又は機能の喪失を検出することを含む方法は、好適な方法、たとえば、細胞又は組織中に発現したタンパク質の定量化を可能にする抗体ベースのアッセイ(たとえば、ウエスタンブロット、免疫組織化学、ELISAなど)などによってSMARCA4タンパク質の発現レベルをアッセイすることを含む。
【0107】
SMACA2及びSMARCA4の代表的な配列を以下に示す。
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
SMARCA2アンタゴニスト
SMARCA2アンタゴニストは当該技術分野において公知であり、たとえば、下の表2に示す化合物を含む。
【0141】
【0142】
さらなるSMARCA2阻害剤は当該技術分野において公知であり、又は本開示に基づけば当業者には明らかであろう。本開示はこの点において限定されない。
【0143】
本開示のある種の態様において、SMARCA2のアンタゴニスト又は阻害剤は、SMARCA4活性を阻害するより効率的にSMARCA2活性を阻害する場合、細胞のSMARCA2活性を「選択的に阻害する」又は「選択的にアンタゴナイズする」。たとえば、いくつかの実施形態では、選択的阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2に対するIC50が、SMARCA4に対するIC50より少なくとも40パーセント低い。いくつかの実施形態では、選択的阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2に対するIC50が、SMARCA4に対するIC50より少なくとも50パーセント低い。いくつかの実施形態では、選択的阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2に対するIC50が、SMARCA4に対するIC50より少なくとも60パーセント低い。いくつかの実施形態では、選択的阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2に対するIC50が、SMARCA4に対するIC50より少なくとも70パーセント低い。いくつかの実施形態では、選択的阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2に対するIC50が、SMARCA4に対するIC50より少なくとも80パーセント低い。いくつかの実施形態では、選択的阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2に対するIC50が、SMARCA4に対するIC50より少なくとも90パーセント低い。いくつかの実施形態では、SMARCA2の選択的アンタゴニスト又は阻害剤は、基本的にSMARCA4には阻害効果を発揮しない。
【0144】
いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも2倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも5倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも10倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たと
えば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも20倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも50倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも100倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも1000倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも10000倍効率的に阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2活性を、SMARCA4活性より少なくとも100000倍効率的に阻害する。
【0145】
いくつかの実施形態では、SMARCA4の発現又は機能の低下、又は機能喪失は、前記細胞のSMARCA2の阻害に対する感受性を付与する。
【0146】
本開示のある種の態様において、阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2のヘリカーゼドメインを標的とする。いくつかの実施形態では、阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2のATPドメインを標的とする。いくつかの実施形態では、阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2のブロモドメインを標的としない。いくつかの実施形態では、阻害剤又はアンタゴニストは、SMARCA2のブロモドメインを標的とする。
【0147】
いくつかの態様では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも10%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも20%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも30%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも40%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも50%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも60%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも70%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも90%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも95%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも98%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を、少なくとも99%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のヘリカーゼ活性を阻害し、SMARCA2活性を消失させる。
【0148】
いくつかの態様では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも10%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも20%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも30%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも40%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも50%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも60%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも70%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも80%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも90%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも95%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも98%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を、少なくとも99%阻害する。いくつかの実施形態では、SMARCA2アンタゴニスト(たとえば、SMARCA2阻害剤)は、SMARCA2のATPアーゼ活性を阻害し、SMARCA2活性を消失させる。
【0149】
本開示のある種の態様において、SMARCA2アンタゴニスト又は阻害剤は、SMARCA2活性を阻害する。SMARCA2活性の阻害は、任意の好適な方法を使用して検出することができる。阻害は、たとえば、SMARCA2活性の速度の点から、又はSMARCA2活性の産物として、測定することができる。
【0150】
阻害は、好適な対照と比較して測定可能な阻害である。いくつかの実施形態では、阻害は好適な対照と比較して少なくとも10パーセントの阻害である。すなわち、阻害剤を用いた場合の酵素活性の速度又は産物の量が、阻害剤を用いない場合に作られる、対応する速度又は量の90パーセント以下である。いくつかの実施形態では、阻害は好適な対照と比較して少なくとも20、25、30、40、50、60、70、75、80、90又は95パーセントの阻害である。いくつかの実施形態では、阻害は好適な対照と比較して少なくとも99パーセントの阻害である。すなわち、阻害剤を用いた場合の酵素活性の速度又は産物の量が、阻害剤を用いない場合に作られる、対応する速度又は量の1パーセント以下である。
【0151】
医薬製剤
本開示は又、本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩と、本明細書に開示されている1種又は複数種の他の治療剤とを、薬学的に好適なキャリア又は賦形剤と混合して、本明細書に記載の疾患又は状態を処置又は予防するための用量で含む医薬組成物も提供する。本開示の医薬組成物は又、他の治療剤又は治療法と併用して、同時に、逐次的に又は交互に投与することもできる。
【0152】
本開示の組成物の混合物は又、患者に、単純な混合物として、又は製剤化した好適な医薬組成物で投与することもできる。たとえば、本開示のいくつかの態様は、治療有効用量の本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩、水和物、エナンチオマーもしくは立体異性体と、1つ又は複数の他の治療剤と、薬学的に許容される希釈剤又はキャリアとを含む医薬組成物に関する。
【0153】
「医薬組成物」とは、本開示の化合物を、対象への投与に好適な形態で含む製剤のことである。本開示の化合物及び本明細書に記載の1つ又は複数の他の治療剤は各々、個々に製剤化することもでき、活性成分を任意に組み合わせて複数の医薬組成物に製剤化することもできる。したがって、各医薬組成物の剤形に基づいて1つ又は複数の投与経路が適切に選択され得る。あるいは、本開示の化合物と本明細書に記載の1つ又は複数の他の治療剤とを1つの医薬組成物に製剤化することができる。
【0154】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はバルク又は単位剤形である。単位剤形は、たとえば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器の単一ポンプ又はバイアルなど種々の形態のいずれかである。単位用量の組成物における活性成分(たとえば、開示された化合物又はその塩、水和物、溶媒和物又は異性体の製剤)の量は有効量であり、関連する個々の処置に応じて変化する。当業者であれば、患者の年齢及び状態によって投薬量を日常的に変える必要があることもあることを理解するであろう。投薬量は又投与経路によって異なる。経口、経肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、口腔内、舌下、胸膜内、髄腔内、鼻腔内及び同種のものなど種々の経路を意図している。本開示の化合物の局所投与又は経皮投与用の剤形として、散剤、スプレー剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液剤、パッチ剤及び吸入薬が挙げられる。いくつかの実施形態では、活性化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容されるキャリアと、必要とされる任意の防腐剤、バッファー又は噴霧剤と混合される。
【0155】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という語句とは、化合物、アニオン、カチオン、材料、組成物、キャリア及び/又は剤形が、適切な医学的判断の範囲内において、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題もしくは合併症を回避しつつ、合理的なベネフィット/リスク比に見合ってヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適であることをいう。
【0156】
「薬学的に許容される賦形剤」は、医薬組成物の調製に有用であり、かつ一般に安全で無毒性であり、生物学的にもあるいは他の点でも望ましい賦形剤を意味し、動物用途のほか、ヒトの医薬用途に許容可能な賦形剤を含む。本明細書及び特許請求の範囲に使用される「薬学的に許容される賦形剤」は、そうした賦形剤の1種及び2種以上の両方を含む。
【0157】
本開示の医薬組成物は、その目的の投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例として、非経口投与、たとえば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(たとえば、吸入)、経皮投与(局所)、及び経粘膜投与が挙げられる。非経口用途、皮内用途又は皮下用途に使用される溶液又は懸濁液として、以下の成分:無菌希釈液、たとえば食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌薬、たとえばベンジルアルコール又はメチルパラベン;酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート化剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、たとえばアセテート、シトレート又はホスフェート、及び張度調整剤、たとえば塩化ナトリウム又はブドウ糖を挙げることができる。pHは、酸又は塩基、たとえば塩酸又は水酸化ナトリウムで調整することができる。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジ又はマルチドーズバイアルに封入してもよい。
【0158】
本発明の化合物又は医薬組成物は、化学療法処置に現在使用されるよく知られた方法の多くで対象に投与することができる。たとえば、癌の処置では、本発明の化合物を腫瘍に直接注射しても、血流中もしくは体腔に注射しても、あるいは経口投与しても、あるいはパッチを用いて経皮適用してもよい。選択される用量は効果的な処置となるのに十分であるが、許容できない副作用を引き起こすほど高くないようにすべきである。病状の状況(たとえば、癌、前癌及び同種のもの)及び患者の健康については好ましくは、処置中及び処置後相当期間、詳細にモニターすべきである。
【0159】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、特定された疾患又は状態を処置、軽減又は予防する、あるいは検出可能な治療効果又は阻害効果を示す医薬剤の量をいう。効果は、当該技術分野において公知の任意のアッセイ方法により検出することができる。対象の正確な有効量は、対象の体重、大きさ及び健康;その状態の性質及び程度;ならびに投与のために選択した治療法又は併用療法によって異なる。ある状況に対する治療有効量は、臨床医の技能及び判断の範囲内にある通常の実験により決定することができる。いくつかの態様では、処置対象の疾患又は状態は癌である。いくつかの態様では、処置対象の疾患又は状態は細胞増殖性障害である。
【0160】
ある種の実施形態では、併用される各医薬剤の治療有効量は、各薬剤を単独で用いる単剤療法と比較して、併用した場合の方が少ない。このように治療有効量が少なければ、治療レジメンの毒性が低くなり得る。
【0161】
いずれの化合物でも、治療有効量は、たとえば、腫瘍性細胞の細胞培養アッセイ、又は動物モデル、通常ラット、マウス、ウサギ、イヌもしくはブタを用いて最初に推定することができる。動物モデルはさらに、適切な濃度範囲及び投与経路を判定するのに使用してもよい。次いでこうした情報を使用して、ヒトの投与に有用な用量及び経路を判定することができる。治療/予防有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物を対象とした標準的な薬学的手順、たとえば、ED50(集団の50%で治療効果のある用量)及びLD50(集団の50%致死用量)により判定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療係数であり、LD50/ED50比で表すことができる。好ましいのは、大きな治療係数を示す医薬組成物である。投薬量は、利用する剤形、患者の感受性及び投与経路によってこの範囲内で変わってもよい。
【0162】
投薬量及び投与は、十分なレベルの活性剤を与えるか、又は所望の効果を維持するように調整される。考慮に入れてもよい因子として、病状の重症度、対象の一般的な健康状態、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬剤の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する忍容性/反応が挙げられる。長時間作用性医薬組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度によって3~4日毎、毎週あるいは2週に1回投与してもよい。
【0163】
本開示の活性化合物を含む医薬組成物は、一般に知られた方法で、たとえば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、造粒プロセス、糖衣錠製造プロセス、研和プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、封入プロセス又は凍結乾燥プロセスによって製造することができる。医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用することができる調製物に加工しやすくする賦形剤及び/又は助剤を含む、1種もしくは複数種の薬学的に許容されるキャリアを用いて従来の方法で製剤化してもよい。言うまでもなく、適切な製剤は選択された投与経路によって異なる。
【0164】
注射用途に好適な医薬組成物は、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び必要に応じて調製される無菌注射用溶液又は分散液用の無菌粉末を含む。静脈内投与では、好適
なキャリアとして、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、シリンジ操作が容易である程度の流動性があるべきである。組成物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの混入微生物の作用を防止しなければならない。キャリアは、たとえば、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールならびに同種のもの)及びこれらの好適な混合物を含む溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散液の場合には、必要とされる粒度の維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール及び同種のものの使用により達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、たとえば、糖、多価アルコール、たとえばマニトール及びソルビトール、ならびに塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の持続化は、組成物に吸収を遅らせる薬、たとえば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含ませることにより行うことができる。
【0165】
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上記に列挙した1つの成分又は成分の組み合わせと共に適切な溶媒に加え、続いて濾過滅菌を行うことにより調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒及び上記に列挙したものから必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクルに活性化合物を加えることにより調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥及びフリーズドライであり、これにより活性成分と任意の所望の追加成分との、前もって滅菌濾過した溶液から、活性成分と任意の所望の追加成分との粉末が得られる。
【0166】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤又は食用の薬学的に許容されるキャリアを含む。経口組成物はゼラチンカプセルに封入しても、あるいは錠剤に圧縮してもよい。経口治療投与の目的上、活性化合物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチ剤又はカプセル剤の形態で使用してもよい。経口組成物はさらに、洗口剤として使用される液体キャリアを用いて調製してもよく、液体キャリア中の化合物は経口適用し、すすいで吐き出すか又は飲み込む。薬学的に適合する結合剤及び/又は補助剤を組成物の一部として含めてもよい。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤及び同種のものは、性質の類似した以下の成分又は化合物:バインダー、たとえば微結晶性セルロース、トラガントゴム又はゼラチン;賦形剤、たとえばデンプン又はラクトース、崩壊剤、たとえばアルギン酸、Primogel又はコーンスターチ;滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、たとえばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、たとえばスクロース又はサッカリン;又は着香剤、たとえばペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香味料のいずれかを含んでもよい。
【0167】
吸入による投与では、化合物は、好適な噴射剤、たとえば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、又はネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0168】
全身投与は又、経粘膜又は経皮手段によるものでもよい。経粘膜又は経皮投与では、透過対象のバリアに適した浸透剤を製剤に使用する。こうした浸透剤は一般に当該技術分野において公知であり、たとえば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレー又は坐剤の使用により達成することができる。経皮投与では、活性化合物を一般に当該技術分野において公知の軟膏、膏薬、ゲル又はクリームに製剤する。
【0169】
活性化合物は、化合物の身体からの急速な排除を防ぐ薬学的に許容されるキャリア、たとえばインプラント及びマイクロカプセル化送達系などの放出制御製剤と共に調製してもよい。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用してもよい。こうした製剤を調製するための方法は、当業者に明らかであろう。こうした材料はさらに、Alza
Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販品として入手することができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的としたリポソームを含む)も、薬学的に許容されるキャリアとして使用することができる。これらは、たとえば米国特許第4,522,811号明細書に記載されているような当業者に公知の方法に従い調製することができる。
【0170】
投与のしやすさ及び投薬量の均一性のため、経口又は非経口組成物を投薬単位剤形で製剤化すると特に有利である。投薬単位剤形とは、本明細書で使用する場合、単位投薬量として処置対象の対象に適した物理的に分離した単位をいい、各単位は、必要とされる薬学的キャリアと共に、所望の治療効果を発揮するように計算された所定量の活性化合物を含む。本開示の投薬単位剤形の規格は、活性化合物の特有の特徴及び達成されるべき個々の治療効果により決定され、それらに直接左右される。
【0171】
治療用途では、本明細書に記載のSMARCA2アンタゴニスト(たとえば、阻害剤)、本明細書に記載の他の治療剤、本開示の化合物と1つ又は複数の他の治療剤とを含む組成物、又は本開示に従い使用される医薬組成物の投薬量は、選択される投薬量に影響を与える数ある要因の中でも、薬剤、レシピエント患者の年齢、体重及び臨床状態、ならびに療法を行う臨床医又は開業医の経験及び判断によって異なる。一般に、用量は、腫瘍の増殖を遅延させる、そして好ましくは退縮させる、さらに好ましくは癌を完全に退縮させるのに十分であるべきである。投薬量は、単回投与、分割投与又は連続投与で約0.01mg/kg/日~約5000mg/kg/日の範囲であってもよい。いくつかの態様では、投薬量は約1mg/kg/日~約1000mg/kg/日の範囲であってもよい。いくつかの態様では、用量は約0.1mg/日~約50g/日;約0.1mg/日~約25g/日;約0.1mg/日~約10g/日;約0.1mg~約3g/日;又は約0.1mg~約1g/日の範囲であってもよい(投与はkg単位の患者の体重、m2単位の体表面積及び年齢に応じて調整してもよい)。医薬剤の有効量は、臨床医又は他の適格な観察者により認められる改善が客観的に特定できる量である。たとえば、患者の腫瘍の退縮は、腫瘍の直径を基準に測定してもよい。腫瘍の直径の減少は退縮を示す。退縮はさらに、処置を中止した後に再発する腫瘍がないことによっても示される。本明細書で使用する場合、「投薬量効果的方法」という用語は、活性化合物の量が対象又は細胞で所望の生物学的作用を発揮することをいう。
【0172】
医薬組成物は、投与説明書と共に容器、パック又はディスペンサーに含めてもよい。
【0173】
本開示の組成物はさらに塩を形成することができる。本開示の組成物は、たとえば、モノ-、ジ-、トリ-など、分子につき1つを超す塩を形成することができる。こうした形態もすべて、特許請求の範囲に記載されている発明の範囲内にあることを意図している。
【0174】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を作ることにより修飾された本開示の化合物の誘導体をいう。薬学的に許容される塩の例として、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩、及び同種のものがあるが、これに限定されるものではない。薬学的に許容される塩は、たとえば、無毒性無機酸又は有機酸から形成された親化合物の従来の無毒性塩又は第四級アンモニウム塩を含む。たとえば、そうした従来の無毒性塩として、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン
酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、サブ酢酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸及び一般に存在するアミン酸、たとえば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから選択される無機酸及び有機酸から得られるものがあるが、これに限定されるものではない。
【0175】
薬学的に許容される塩の他の例として、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ムコン酸及び同種のものが挙げられる。本開示はさらに、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、たとえば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオンに置き換えられている場合、あるいは有機塩基、たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミン及び同種のものと配位している場合に形成される塩を包含する。
【0176】
薬学的に許容される塩への言及にはすべて、同じ塩の溶媒付加体(溶媒和物)が含まれることを理解すべきである。
【0177】
本開示の組成物はさらに、エステル、たとえば、薬学的に許容されるエステルとして調製してもよい。たとえば、化合物のカルボン酸官能基をその対応するエステル、たとえば、メチル、エチル又は他のエステルに変換してもよい。さらに、化合物のアルコール基をその対応するエステル、たとえば、アセテート、プロピオネート又は他のエステルに変換してもよい。
【0178】
本組成物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口、経鼻、経皮、経肺、吸入、口腔内、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸内、胸膜内、髄腔内及び非経口で投与される。いくつかの実施形態では、化合物は経口投与される。当業者であれば、特定の投与経路の利点を認識するであろう。
【0179】
化合物を利用する投与レジメンは、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別及び医学的状態;処置対象の状態の重症度;投与経路;患者の腎機能及び肝機能;ならびに利用される個々の化合物又はその塩など種々の因子に従い選択される。通常の知識を有する医師又は獣医師であれば、当該状態の進行を予防、防止又は停止するのに必要な薬剤の有効量を容易に判定し、処方することができる。
【0180】
開示した本開示の化合物の製剤及び投与のための技術は、Remington:the
Science and Practice of Pharmacy,19th edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)で確認することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物及びその薬学的に許容される塩は、薬学的に許容されるキャリア又は希釈薬と組み合わせて医薬調製物に使用される。好適な薬学的に許容されるキャリアとして、不活性な固体充填剤又は希釈薬、及び無菌水溶液又は有機溶液が挙げられる。本化合物は、本明細書に記載の範
囲の所望の投薬量を与えるのに十分な量でそうした医薬組成物中に存在する。
【0181】
本明細書に使用されるパーセンテージ及び比率はすべて、他に記載がない限り、重量による。本開示の他の特徴と利点は様々な例から明らかである。提示した例は、本開示を実施する際に有用な様々な要素及び方法を説明するものである。こうした例は、特許請求の範囲に記載されている発明を限定するものではない。本開示に基づき、当業者であれば、本開示を実施するのに有用な他の要素及び方法を特定し、利用することができる。
【0182】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする対象」は、SMARCA4の活性又は機能のレベルの、対照レベルと比較した際の低下に関連する障害を有する対象、又は一般集団と比較して、そうした障害を発症するリスクが高い対象をいう。好ましくは、それを必要とする対象は癌を有する。「対象」には哺乳動物が含まれる。哺乳動物は、たとえば、任意の哺乳動物、たとえば、ヒト、霊長類、トリ、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、雌ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ又はブタとすることができる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0183】
いくつかの実施形態では、対照レベルは、癌を有していない対象又は癌を有していない対象の細胞におけるSMARCA4発現のレベルである。いくつかの実施形態では、対照レベルは、ある特定の集団に属する対象又は対象の細胞におけるSMARCA4発現のレベル(そのレベルは、前記集団に観察されるSMARCA4の発現又は機能の平均レベルと等しい又はほぼ等しい)としてもよい。いくつかの実施形態では、対照レベルは、一般集団におけるSMARCA4の発現又は機能の平均レベルと等しい又はほぼ等しいSMARCA4の発現又は機能のレベルとしてもよい。
【0184】
本開示の対象は、癌又は前癌性状態と診断されている、それらの症状を有する、又はそれらを発症するリスクのある任意のヒト対象を含む。本開示の対象は、変異型SMARCA4遺伝子を発現している任意のヒト対象を含む。たとえば、変異型SMARCA4は1つ又は複数の変異を含み、その変異は、置換、点変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、欠失若しくは挿入、又は本明細書に記載の、さもなければ当該技術分野において公知の、他の任意のSMARCA4変異であり、それはSMARCA4の機能喪失に関連することになる。
【0185】
それを必要とする対象は、難治性癌又は耐性癌を有していてもよい。「難治性癌又は耐性癌」とは、実施された処置に反応しない癌を意味する。癌は処置の初期に耐性である場合もあり、処置中に耐性になる場合もある。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、直近の療法による寛解後に癌が再発している。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、癌処置に有効な既知の療法をすべて受けて無効であった。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は少なくとも1つの従来療法を受けた。ある種の実施形態では、従来療法は単剤療法である。ある種の実施形態では、従来療法は併用療法である。
【0186】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、以前の療法の結果として二次癌を有してもよい。「二次癌」は、以前の発癌性療法、たとえば化学療法によって、又はその結果として発生する癌を意味する。
【0187】
対象は又、SMARCA4の機能又は発現が低下、又はSMARCA4が機能喪失している場合もある。
【0188】
いくつかの実施形態では、対象は、臨床試験の参加者である。いくつかの実施形態では、臨床試験への対象の参加基準は、前記対象又は前記対象の細胞における、SMARCA
4の活性若しくは機能の低下、又はSMARCA4の機能喪失である。
【0189】
本明細書で使用する場合、「反応性」という用語は、「反応性のある」、「感受性のある」及び「感受性」と同義であり、本開示の組成物を投与されたときに対象が治療反応を示す、たとえば、対象の腫瘍細胞又は腫瘍組織がアポトーシス及び/もしくは壊死を起こし、かつ/又は成長、分裂もしくは増殖の低下を示すことを意味する。この用語は又、対象が、本開示の組成物を投与されたときに一般集団と比較して、治療反応を示す、たとえば、対象の腫瘍細胞又は腫瘍組織がアポトーシス及び/もしくは壊死を起こし、かつ/又は成長、分裂もしくは増殖の低下を示す確率が高くなること又は高いことを意味する。
【0190】
本明細書で使用する場合、「サンプル」は、対象から得られた任意の生物学的サンプルを意味し、以下に限定されるものではないが、細胞、組織サンプル、体液(粘液、血液、血漿、血清、尿、唾液及び精液があるが、これに限定されるものではない)、腫瘍細胞及び腫瘍組織がある。好ましくは、サンプルは、骨髄、末梢血細胞、血液、血漿及び血清から選択される。サンプルは、処置又は検査中の対象から得てもよい。あるいはサンプルは、当該技術分野における通常の業務に従い医師が採取してもよい。
【0191】
本明細書で使用する場合、「正常な細胞」は、「細胞増殖性障害」の一部として分類できない細胞である。正常な細胞には、望ましくない状態又は疾患の発症に至る可能性がある制御不能な若しくは異常な増殖、又はその両方が見られない。好ましくは、正常な細胞は、正常に機能する細胞周期チェックポイント制御機序を有する。
【0192】
本明細書で使用する場合、「細胞に接触させること」とは、化合物又は他の組成物が細胞と直接接触している、又は細胞に所望の生物学的効果をもたらすのに十分に接近している状態をいう。
【0193】
本明細書で使用する場合、「候補化合物」とは、その化合物が、細胞、組織、系、動物又はヒトにおいて研究者又は臨床医が求めている所望の生物学的又は医学的反応を引き出す可能性が高いかどうかを判定するため、1つ又は複数のインビトロ又はインビボでの生物学的アッセイで試験したことがある或いは試験する予定の本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物をいう。候補化合物は、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物である。生物学的又は医学的反応は、癌の処置であってもよい。生物学的又は医学的反応は、細胞増殖性障害の処置又は予防であってもよい。インビトロ又はインビボでの生物学的アッセイとして、以下に限定されるものではないが、酵素活性アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、レポーター遺伝子アッセイ、インビトロ細胞生存率アッセイ、及び本明細書に記載のアッセイを挙げることができる。
【0194】
本明細書で使用する場合、「処置すること」又は「処置する」は、疾患、状態又は障害の対処を目的とした患者の管理及びケアのことであり、疾患、状態又は障害の症状又は合併症を緩和するため、或いは疾患、状態若しくは障害を除去するため、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含む。
【0195】
本開示の組成物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は又、疾患、状態又は障害を予防するために使用することもできる。本明細書で使用する場合、「予防すること」又は「予防する」は、疾患、状態又は障害の症状又は合併症の発症を減少又は除去することをいう。
【0196】
本明細書で使用する場合、「緩和する」という用語は、障害の徴候又は症状の重症度を低下させるプロセスをいうものとする。重要な点として、徴候又は症状は、除去されずに緩和することができる。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物を投与すると、徴
候又は症状が除去されるが、しかしながら、除去は必須ではない。効果的な投薬量は徴候又は症状の重症度を低下させることが期待される。たとえば、複数の部位で起こり得る癌などの障害の徴候又は症状は、複数の部位の少なくとも1つで癌の重症度が低下すると、緩和される。
【0197】
本明細書で使用する場合、「重症度」という用語は、癌が前癌性又は良性状態から悪性状態に変化する可能性をいうものとする。或いは、又はさらに、重症度は、たとえば、TNM方式(International Union Against Cancer(UICC)及びAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)により認められた)に従い、或いは当該技術分野において承認されている他の方法に従い、癌の病期をいうものとする。癌の病期とは、原発腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、腫瘍数、及びリンパ節転移(癌のリンパ節への広がり)などの因子に基づく癌の程度又は重症度をいう。或いは、又はさらに、重症度は、当該技術分野において承認されている方法により、腫瘍グレードをいうものとする(米国国立癌研究所(National
Cancer Institute)、www.cancer.govを参照されたい)。腫瘍グレードは、癌細胞が顕微鏡下でどのように異常に見えるか、及び腫瘍がいかに急速に増殖し広がる傾向があるかという観点から癌細胞を分類するのに使用するシステムである。腫瘍グレードを判定する際は、細胞の構造及び増殖パターンなど多くの因子が考慮される。腫瘍グレードの判定に使用される具体的な因子は、癌のそれぞれの種類によって異なる。重症度は又、腫瘍細胞が、同じ組織型の正常な細胞にどの程度類似しているかを示す、分化とも呼ばれる組織学的グレードもいう(米国国立癌研究所(National Cancer Institute)、www.cancer.govを参照されたい)。さらに、重症度は、腫瘍細胞の核の大きさ及び形状と、分裂している腫瘍細胞の割合とを示す核グレードについてもいう(米国国立癌研究所(National Cancer Institute)、www.cancer.govを参照されたい)。
【0198】
本開示の態様の一部において、重症度は、腫瘍が増殖因子をどの程度分泌したか、細胞外マトリックスをどの程度分解したか、どの程度血管新生化したか、隣接した組織への接着をどの程度失ったか、或いはどの程度転移したかをいう。さらに重症度は、原発腫瘍が転移した部位の数も示す。最後に、重症度は、様々な種類及び部位の腫瘍の処置の困難さを含む。たとえば、手術不能な腫瘍、複数の体組織に到達しやすい癌(血液系及び免疫系の腫瘍)、及び伝統的な処置に最も抵抗性があるものが、最も重度と見なされる。これらの状況において、対象の平均余命の延長及び/又は疼痛の低減、癌性細胞の比率の低下又は細胞が1つの系に限定されること、並びに癌の病期/腫瘍グレード/組織学的グレード/核グレードの改善は、癌の徴候又は症状の緩和と見なされる。
【0199】
本明細書で使用する場合、「症状」という用語は、疾患、疾病、損傷の兆し、又は体内で何かがおかしいという兆しと定義される。症状は、症状を経験している個体によって感じられ、又は気付かれるが、他人には容易に気付かれ得ない。他人とは、非医療専門家と定義される。
【0200】
本明細書で使用する場合、「徴候」という用語も又、体内で何かがおかしいという兆しと定義される。ただし、徴候は、医師、看護師又は他の医療専門家により確認することができるものと定義される。
【0201】
癌
「癌細胞」又は「癌性細胞」は、癌である細胞増殖性障害を発現している細胞である。任意の再現可能な測定手段を用いて、癌細胞又は前癌性細胞を同定することができる。癌細胞又は前癌性細胞は、組織サンプル(たとえば、生検標本)の組織学的分類又はグレード分類により同定してもよい。癌細胞又は前癌性細胞は、適切な分子マーカーの使用によ
り同定してもよい。
【0202】
例示的な癌として、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、肛門直腸癌、肛門管癌、虫垂癌、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、基底細胞癌、皮膚癌(非メラノーマ性)、胆道癌、肝外胆管癌、肝内胆管癌、膀胱癌(bladder
cancer、urinary bladder cancer)、骨及び関節癌、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫、脳癌、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸、神経系癌、神経系リンパ腫、中枢神経系癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸癌、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系腫瘍、菌状息肉腫、Seziary症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌(gastric cancer、stomach cancer)、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、眼癌、島細胞腫瘍(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓癌、腎癌、腎臓癌、喉頭癌、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、口唇及び口腔癌、肝癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、Waldenstramマクログロブリン血症、髄芽腫、メラノーマ、眼内(眼)メラノーマ、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性頸部扁平上皮癌、口癌、舌癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌(oral cancer、oral cavity cancer)、中咽頭癌、卵巣癌、上皮性卵巣癌、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、島細胞 膵癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎盂及び尿管移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮癌、子宮肉腫、皮膚癌(非メラノーマ性)、皮膚癌(メラノーマ)、メルケル皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管ならびに他の泌尿器の移行上皮癌、妊娠性絨毛性腫瘍、尿道癌、子宮内膜子宮癌、子宮肉腫、子宮体部癌、腟癌、外陰癌、ならびにウィルムス腫瘍があるが、これに限定されるものではない。
【0203】
「血液系の細胞増殖性障害」は、血液系の細胞に関係する細胞増殖性障害である。血液系の細胞増殖性障害として、リンパ腫、白血病、骨髄系新生物、マスト細胞新生物、骨髄形成異常、良性単クローン性免疫グロブリン血症、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ腫様丘疹症、真性赤血球増加症、慢性骨髄球性白血病、原発性骨髄線維症及び本態性血小板血症を挙げることができる。血液系の細胞増殖性障害として、血液系の細胞の過形成、異形成及び化生を挙げることができる。好ましくは、本開示の組成物は、本開示の血液癌又は本開示の血液細胞増殖性障害からなる群から選択される癌を処置するのに使用してもよい。本開示の血液癌として、多発性骨髄腫、リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、小児期リンパ腫、ならびにリンパ球及び皮膚由来のリンパ腫)、白血病(小児白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病及びマスト細胞白血病を含む)、骨髄系新生物及びマスト細胞新生物を挙げることができる。
【0204】
「肺の細胞増殖性障害」は、肺の細胞に関係する細胞増殖性障害である。肺の細胞増殖
性障害として、肺細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、肺癌、肺の前癌又は前癌性状態、肺の良性増殖又は病変、及び肺の悪性増殖又は病変、及び肺以外の体内の組織及び臓器の転移病変を挙げることができる。好ましくは、本開示の組成物は、肺癌又は肺の細胞増殖性障害を処置するのに使用してもよい。肺癌として、肺の癌のすべての型を挙げることができる。肺癌として、悪性肺新生物、上皮内癌、定型的カルチノイド腫瘍、及び非定型的カルチノイド腫瘍を挙げることができる。肺癌として、小細胞肺癌(「SCLC」)、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、腺扁平上皮細胞癌及び中皮腫を挙げることができる。肺癌として、「瘢痕癌」、気管支肺胞上皮癌、巨細胞癌、紡錘細胞癌及び大細胞神経内分泌癌を挙げることができる。肺癌として、組織化学的及び超徴形態学的多様性(たとえば、混合細胞型)を有する肺新生物を挙げることができる。
【0205】
肺の細胞増殖性障害として、肺細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、肺癌、肺の前癌性状態を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、肺の過形成、化生及び異形成を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、アスベストによる過形成、扁平上皮化生及び良性反応性中皮化生を挙げることができる。肺の細胞増殖性障害として、円柱上皮が重層扁平上皮に置換された状態、及び粘膜異形成を挙げることができる。有害な環境化学物質、たとえばタバコの煙及びアスベストを吸入した個体は、肺の細胞増殖性障害を発症するリスクが高い場合がある。個体に肺の細胞増殖性障害の発症を引き起こしやすい可能性がある既往の肺疾患として、慢性間質性肺疾患、壊死性肺疾患、強皮症、リウマチ様疾患、サルコイドーシス、間質性肺臓炎、結核、繰り返す肺炎、特発性肺線維症、肉芽腫、石綿肺、線維化肺胞炎及びホジキン病を挙げることができる。
【0206】
「結腸の細胞増殖性障害」は、結腸の細胞に関係する細胞増殖性障害である。好ましくは、結腸の細胞増殖性障害は結腸癌である。好ましくは、本開示の組成物は、結腸癌又は結腸の細胞増殖性障害を処置するのに使用してもよい。結腸癌として、結腸の癌のすべての型を挙げることができる。結腸癌として、散発性及び遺伝性結腸癌を挙げることができる。結腸癌として、悪性結腸新生物、上皮内癌、定型的カルチノイド腫瘍、及び非定型的カルチノイド腫瘍を挙げることができる。結腸癌として、腺癌、扁平上皮癌及び腺扁平上皮細胞癌を挙げることができる。結腸癌は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群及び若年性ポリポーシスからなる群から選択される遺伝性症候群と関連していてもよい。結腸癌は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群及び若年性ポリポーシスからなる群から選択される遺伝性症候群により引き起こされることがある。
【0207】
結腸の細胞増殖性障害として、結腸細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害として、結腸癌、結腸の前癌性状態、結腸の腺腫性ポリープ及び結腸の異時性病変を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害として腺腫を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害は、結腸の過形成、化生及び異形成を特徴としてもよい。個体に結腸の細胞増殖性障害の発症を引き起こしやすい可能性がある既往の結腸疾患として、既往の結腸癌を挙げることができる。個体に結腸の細胞増殖性障害の発症を引き起こしやすい可能性がある現在の疾患として、クローン病及び潰瘍性大腸炎を挙げることができる。結腸の細胞増殖性障害は、p53、ras、FAP及びDCCからなる群から選択される遺伝子の突然変異と関連していてもよい。個体は、p53、ras、FAP及びDCCからなる群から選択される遺伝子の突然変異の存在のため、結腸の細胞増殖性障害を発症するリスクが高い可能性がある。
【0208】
「膵臓の細胞増殖性障害」は、膵臓の細胞に関係する細胞増殖性障害である。膵臓の細
胞増殖性障害として、膵臓細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。膵臓の細胞増殖性障害として、膵臓癌、膵臓の前癌又は前癌性状態、膵臓の過形成、及び膵臓の異形成、膵臓の良性増殖又は病変、及び膵臓の悪性増殖又は病変、ならびに膵臓以外の体内の組織及び臓器の転移病変を挙げることができる。膵癌は、膵臓の癌のすべての型を含む。膵癌として、導管腺癌、腺扁平上皮癌、多形巨細胞癌、粘液性腺癌、破骨細胞様巨細胞癌、粘液性嚢胞性癌、細葉細胞癌、分類不能大細胞癌、小細胞癌、膵芽腫、乳頭状新生物、粘液性嚢胞腺腫、乳頭状嚢胞性新生物、及び漿液性嚢胞腺腫を挙げることができる。膵癌は又、組織化学的及び超徴形態学的多様性(たとえば、混合細胞型)を有する膵臓の新生物を含んでもよい。
【0209】
「前立腺の細胞増殖性障害」は、前立腺細胞に関係する細胞増殖性障害である。前立腺の細胞増殖性障害として、前立腺細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。前立腺の細胞増殖性障害として、前立腺癌、前立腺の前癌又は前癌性状態、前立腺の良性増殖又は病変、及び前立腺の悪性増殖又は病変、ならびに前立腺以外の体内の組織及び臓器の転移病変を挙げることができる。前立腺の細胞増殖性障害として、前立腺の過形成、化生及び異形成を挙げることができる。
【0210】
「皮膚の細胞増殖性障害」は、皮膚の細胞に関係する細胞増殖性障害である。皮膚の細胞増殖性障害として、皮膚細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。皮膚の細胞増殖性障害として、皮膚の前癌又は前癌性状態、皮膚の良性増殖又は病変、メラノーマ、悪性メラノーマ及び皮膚の他の悪性増殖又は病変、ならびに皮膚以外の体内の組織及び臓器の転移病変を挙げることができる。皮膚の細胞増殖性障害として、皮膚の過形成、化生及び異形成を挙げることができる。
【0211】
「卵巣の細胞増殖性障害」は、卵巣の細胞に関係する細胞増殖性障害である。卵巣の細胞増殖性障害として、卵巣の細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。卵巣の細胞増殖性障害として、卵巣の前癌又は前癌性状態、卵巣の良性増殖又は病変、卵巣癌、卵巣の悪性増殖又は病変、及び卵巣以外の体内の組織及び臓器の転移病変を挙げることができる。皮膚の細胞増殖性障害として、卵巣の細胞の過形成、化生及び異形成を挙げることができる。
【0212】
「乳房の細胞増殖性障害」は、乳房の細胞に関係する細胞増殖性障害である。乳房の細胞増殖性障害として、乳房細胞を侵す細胞増殖性障害のすべての型を挙げることができる。乳房の細胞増殖性障害として、乳癌、乳房の前癌又は前癌性状態、乳房の良性増殖又は病変、及び乳房の悪性増殖又は病変、ならびに乳房以外の体内の組織及び臓器の転移病変を挙げることができる。乳房の細胞増殖性障害として、乳房の過形成、化生及び異形成を挙げることができる。
【0213】
乳房の細胞増殖性障害は、乳房の前癌性状態であってもよい。本開示の組成物は、乳房の前癌性状態を処置するのに使用してもよい。乳房の前癌性状態として、乳房の非定型的過形成、非浸潤性乳管癌(DCIS)、乳管内癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、小葉性新生物、及びステージ0もしくはグレード0の乳房の増殖又は病変(たとえば、ステージ0もしくはグレード0の乳癌又は上皮内癌)を挙げることができる。乳房の前癌性状態は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)により承認されたTNM分類スキームに従いステージ判定することができ、原発腫瘍(T)にはステージT0又はTisが割り当てられ;所属リンパ節(N)にはステージN0が割り当てられ;遠隔転移(M)にはステージM0が割り当てられている。
【0214】
乳房の細胞増殖性障害は乳癌であってもよい。好ましくは、本開示の組成物は、乳癌を処置するのに使用してもよい。乳癌は、乳房の癌のすべての型を含む。乳癌として、原発
性上皮乳癌を挙げることができる。乳癌として、乳房が他の腫瘍、たとえばリンパ腫、肉腫又はメラノーマに罹患している癌を挙げることができる。乳癌として、乳房の癌腫、乳房の腺管癌、乳房の小葉癌、乳房の未分化癌、乳房の葉状嚢肉腫、乳房の血管肉腫及び乳房の原発性リンパ腫を挙げることができる。乳癌として、ステージI、II、IIIA、IIIB、IIIC及びIVの乳癌を挙げることができる。乳房の腺管癌として、浸潤癌、管内成分優位の浸潤性上皮内癌、炎症性乳癌、ならびに面皰型、粘液(膠様)型、髄様、リンパ球浸潤を伴う髄様型、乳頭型、硬性型及び管状型からなる群から選択される組織学的型を有する乳房の腺管癌を挙げることができる。乳房の小葉癌として、in situ成分優位の浸潤性小葉癌、浸潤性(invasive)小葉癌、及び浸潤性(infiltrating)小葉癌を挙げることができる。乳癌として、パジェット病、乳管内癌を伴うパジェット病、及び浸潤性腺管癌を伴うパジェット病を挙げることができる。乳癌として、組織化学的及び超徴形態学的多様性(たとえば、混合細胞型)を有する乳房新生物を挙げることができる。
【0215】
好ましくは、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、乳癌を処置するのに使用してもよい。処置できる乳癌として、家族性乳癌を挙げることができる。処置できる乳癌として、散発性乳癌を挙げることができる。処置できる乳癌は、男性/雄対象に発生してもよい。処置できる乳癌は、女性/雌対象に発生してもよい。処置できる乳癌は、閉経前の女性/雌対象に発生しても、あるいは閉経後の女性/雌対象に発生してもよい。処置できる乳癌は、30歳以上の対象に発生しても、あるいは30歳未満の対象に発生してもよい。処置できる乳癌は、50歳以上の対象又は50歳未満の対象に発生している。処置できる乳癌は、70歳以上の対象に発生しても、あるいは70歳未満の対象に発生してもよい。
【0216】
処置できる乳癌は、BRCA1、BRCA2又はp53の家族性突然変異又は自然突然変異を同定するため型別にしてもよい。処置できる乳癌は、HER2/neu遺伝子の増幅を有するもの、HER2/neuを過剰発現するもの、あるいは低レベル、中間レベル又は高レベルのHER2/neu発現を有するものとして型別にしてもよい。処置できる乳癌は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、ヒト上皮増殖因子受容体-2、Ki-67、CA15-3、CA 27-29及びc-Metからなる群から選択されるマーカーについて型別にしてもよい。処置できる乳癌は、ER不明、高ER又は低ERとして型別にしてもよい。処置できる乳癌は、ER陰性又はER陽性として型別にしてもよい。乳癌のER分類は、任意の再現可能な手段により行ってもよい。乳癌のER分類は、Onkologie 27:175-179(2004)に記載されているように行ってもよい。処置できる乳癌は、PR不明、高PR又は低PRとして型別にしてもよい。処置できる乳癌は、PR陰性又はPR陽性として型別にしてもよい。処置できる乳癌は、受容体陽性又は受容体陰性として型別にしてもよい。処置できる乳癌は、CA
15-3もしくはCA27-29又はその両方の血中レベルの上昇と関連するものとして型別にしてもよい。
【0217】
処置できる乳癌として、乳房の局所腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、センチネルリンパ節(SLN)生検陰性と関連する乳房の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、センチネルリンパ節(SLN)生検陽性と関連する乳房の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、任意の適用可能な方法により腋窩リンパ節がステージ判定された、1つ又は複数の腋窩リンパ節陽性と関連する乳房の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、リンパ節転移の陰性状態(たとえば、リンパ節転移陰性)又はリンパ節転移の陽性状態(たとえば、リンパ節転移陽性)を有するものとして型別にされた乳房の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌として、体内の他の部位に転移した乳房の腫瘍を挙げることができる。処置できる乳癌は、骨、肺、肝臓又は脳からなる群から選択される部位に転移したものとして分類してもよい。処置できる乳癌は
、転移性、限局性、局部性、局所局部性、局所進行性、遠隔性、多中心性、両側性、同側性、対側性、新規診断性、再発性及び手術不能性からなる群から選択される特徴に従い分類してもよい。
【0218】
本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、乳房の細胞増殖性障害を処置又は予防するのに使用しても、あるいは一般集団と比較して乳癌を発症する高いリスクを有する対象の乳癌を処置又は予防するのに使用してもよい。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い対象は、乳癌の家族歴又は個人歴がある女性/雌対象である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い対象は、BRCA1もしくはBRCA2又はその両方に生殖系列突然変異又は自然突然変異を有する女性/雌対象である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い対象は、乳癌の家族歴、及びBRCA1もしくはBRCA2又はその両方に生殖系列突然変異又は自然突然変異がある女性/雌対象である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い対象は、30歳より高齢、40歳より高齢、50歳より高齢、60歳より高齢、70歳より高齢、80歳より高齢、又は90歳より高齢の女性/雌である。一般集団と比較して乳癌を発症するリスクが高い対象は、乳房の非定型的過形成、非浸潤性乳管癌(DCIS)、乳管内癌、非浸潤性小葉癌(LCIS)、小葉性新生物、又はステージ0の乳房の増殖又は病変(たとえば、ステージ0もしくはグレード0の乳癌又は上皮内癌)を有する対象である。
【0219】
処置できる乳癌は、Scarff-Bloom-Richardson方式に従い組織学的にグレード分けしてもよく、この場合、乳腺腫瘍には1、2又は3の有糸分裂数スコア;1、2又は3の核異型度スコア;1、2又は3の脈管形成スコア;及び3~9のScarff-Bloom-Richardson総スコアが割り当てられる。処置できる乳癌には、グレード1、グレード1~2、グレード2、グレード2~3又はグレード3からなる群から選択される、International Consensus Panel
on the Treatment of Breast Cancerによる腫瘍グレードが割り当てられていてもよい。
【0220】
処置できる癌は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)のTNM分類方式に従いステージ判定することができ、この場合、腫瘍(T)にはTX、T1、T1mic、T1a、T1b、T1c、T2、T3、T4、T4a、T4b、T4c又はT4dのステージが割り当てられており;所属リンパ節(N)にはNX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b又はN3cのステージが割り当てられており;遠隔転移(M)にはMX、M0又はM1のステージが割り当てられ得る。処置できる癌は、American Joint Committee on Cancer(AJCC)分類に従い、ステージI、ステージIIA、ステージIIB、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIC又はステージIVとステージ判定することができる。処置できる癌は、AJCC分類に従い、グレードGX(たとえば、評価できないグレード)、グレード1、グレード2、グレード3又はグレード4のグレードを割り当ててもよい。処置できる癌は、AJCCの病理分類(pN)に従い、pNX、pN0、PN0(I-)、PN0(I+)、PN0(mol-)、PN0(mol+)、PN1、PN1(mi)、PN1a、PN1b、PN1c、pN2、pN2a、pN2b、pN3、pN3a、pN3b又はpN3cのステージに判定することができる。
【0221】
処置できる癌として、直径が約2センチメートル以下であると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌として、直径が約2~約5センチメートルであると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌として、直径が約3センチメートル以上であると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌として、直径が5センチメートル超であると判定された腫瘍を挙げることができる。処置できる癌は、顕微鏡所見によって高分化、中分化、低分化又は未分化として分類してもよい。処置できる癌は、顕微鏡所
見により有糸分裂数(たとえば、細胞分裂の量)又は核異型度(たとえば、細胞の変化)に関して分類してもよい。処置できる癌は、顕微鏡所見により壊死領域(たとえば、死につつある又は変性しつつある細胞領域)を伴うものとして分類してもよい。処置できる癌は、異常核型を有するもの、異常な数の染色体を有するもの、あるいは外見が異常な1つ又は複数の染色体を有するものと分類してもよい。処置できる癌は、異数体、三倍体、四倍体又は倍数性が変化したものとして分類してもよい。処置できる癌は、染色体転座、又は全染色体の欠失もしくは重複、又は一部の染色体の欠失、重複もしくは増幅の領域を有するものとして分類してもよい。
【0222】
いくつかの実施形態では、処置対象の癌は、SWI/SNF複合体のメンバー、たとえば、SMARCA4が変異し、又は機能喪失(たとえば、酵素活性が低下)している癌である。たとえば、処置対象の癌は、SMARCA4が変異している癌とすることができる。SMARCA4の変異が発生している癌の非制限的な例として、卵巣高カルシウム型小細胞癌(SCCOHT)、膀胱癌、胃癌、肺癌(たとえば、非小細胞肺癌)、膠芽腫脳腫瘍(神経膠腫、GBM)、頭頚部癌、腎癌、子宮癌、子宮頚癌及び膵癌が挙げられる。
【0223】
処置できる癌は、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリー又はイメージサイトメトリーにより評価してもよい。処置できる癌は、細胞の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%が細胞分裂の合成期(たとえば、細胞分裂のS期)にあるものとして型別にしてもよい。処置できる癌は、S期割合が低い又はS期割合が高いものとして型別にしてもよい。
【0224】
癌は、ほとんどすべての徴候又は症状を引き起こし得る疾患群である。徴候及び症状は、癌がどこにあるか、癌の大きさ、及び癌が近くの器官又は構造にどの程度影響を与えるかによって異なる。癌が広がる(転移する)場合、症状は体の様々な部分で現れることがある。
【0225】
癌を処置すると、腫瘍容積が縮小することがある。好ましくは、処置後、腫瘍容積は、処置前のその大きさと比較して5%以上縮小し;一層好ましくは、腫瘍容積は10%以上縮小し;一層好ましくは20%以上縮小し;一層好ましくは30%以上縮小し;一層好ましくは40%以上縮小し;なお一層好ましくは50%以上縮小し;最も好ましくは75%超縮小する。腫瘍容積は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。
【0226】
癌を処置すると、腫瘍の数が減少しうる。好ましくは、処置後、腫瘍数は、処置前の数と比較して5%以上減少し;一層好ましくは、腫瘍数は10%以上減少し;一層好ましくは20%以上減少し;一層好ましくは30%以上減少し;一層好ましくは40%以上減少し;なお一層好ましくは50%以上減少し;最も好ましくは75%超減少する。腫瘍の数は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。腫瘍の数は、肉眼又は特定の倍率で観察できる腫瘍をカウントすることにより測定することができる。好ましくは、特定の倍率は2倍、3倍、4倍、5倍、10倍又は50倍である。
【0227】
癌を処置すると、原発腫瘍部位から離れた他の組織又は器官における転移病変の数が減少することがある。好ましくは、処置後、転移病変の数は、処置前の数と比較して5%以上減少し;一層好ましくは、転移病変の数は10%以上減少し;一層好ましくは20%以上減少し;一層好ましくは30%以上減少し;一層好ましくは40%以上減少し;なお一層好ましくは50%以上減少し;最も好ましくは75%超減少する。転移病変の数は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。転移病変の数は、肉眼又は特定の倍率で観察できる転移病変をカウントすることにより測定することができる。好ましくは、特定の倍率は2倍、3倍、4倍、5倍、10倍又は50倍である。
【0228】
癌を処置すると、処置した対象の集団の平均生存期間が、キャリアを単独投与した集団と比較して延長されることがある。好ましくは、平均生存期間は30日を超えて;一層好ましくは60日を超えて;一層好ましくは90日を超えて;最も好ましくは120日を超えて延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。集団の平均生存期間の延長は又、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
【0229】
癌を処置すると、処置した対象の集団の平均生存期間が、未処置対象の集団と比較して延長されることがある。好ましくは、平均生存期間は30日を超えて;一層好ましくは60日を超えて;一層好ましくは90日を超えて;最も好ましくは120日を超えて延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。集団の平均生存期間の延長は又、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
【0230】
癌を処置すると、処置した対象の集団の平均生存期間が、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、アナログもしくは誘導体ではない薬剤による単独療法を受けた集団と比較して延長されることがある。好ましくは、平均生存期間は30日を超えて;一層好ましくは60日を超えて;一層好ましくは90日を超えて;最も好ましくは120日を超えて延長される。集団の平均生存期間の延長は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の平均生存期間の延長は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。集団の平均生存期間の延長は又、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の平均生存期間を計算することにより測定してもよい。
【0231】
癌を処置すると、処置した対象の集団の死亡率がキャリアを単独投与した集団と比較して低下することがある。癌を処置すると、処置した対象の集団の死亡率が未処置集団と比較して低下することがある。癌を処置すると、処置した対象の集団の死亡率が、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩溶媒和物、アナログもしくは誘導体ではない薬剤による単独療法を受けた集団と比較して低下することがある。好ましくは、死亡率は2%超;一層好ましくは5%超;一層好ましくは10%超;最も好ましくは25%超低下する。処置した対象の集団の死亡率の低下は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団の死亡率の低下は、たとえば、集団について活性化合物による処置の開始後の単位時間当たりの疾患関連死亡の平均数を計算することにより測定してもよい。集団の死亡率の低下は又、たとえば、集団について活性化合物による初回処置の終了後の単位時間当たりの疾患関連死亡の平均数を計算することにより測定してもよい。
【0232】
癌を処置すると、腫瘍の増殖率が低下することがある。好ましくは、処置後、腫瘍の増殖率は処置前の数と比較して少なくとも5%低下し;一層好ましくは、腫瘍の増殖率は少なくとも10%低下し;一層好ましくは少なくとも20%低下し;一層好ましくは少なくとも30%低下し;一層好ましくは少なくとも40%低下し;一層好ましくは少なくとも50%低下し;なお一層好ましくは少なくとも50%低下し;最も好ましくは少なくとも75%低下する。腫瘍の増殖率は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。腫瘍の増殖率は、単位時間当たり腫瘍直径の変化により測定してもよい。
【0233】
癌を処置すると、腫瘍の再増殖が抑制されることがある。好ましくは、処置後、腫瘍の再増殖は5%未満であり;一層好ましくは、腫瘍の再増殖は10%未満であり;一層好ま
しくは20%未満であり;一層好ましくは30%未満であり;一層好ましくは40%未満であり;一層好ましくは50%未満であり;なお一層好ましくは50%未満であり;最も好ましくは75%未満である。腫瘍の再増殖は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。腫瘍の再増殖は、たとえば、以前の腫瘍縮小後に、処置後生じた腫瘍の直径の増加を測定することにより測定してもよい。腫瘍の再増殖の抑制は、処置を中止した後に腫瘍が再発しないことにより示される。
【0234】
細胞増殖性障害を処置又は予防すると、細胞増殖率が低下することがある。好ましくは、処置後、細胞増殖率は少なくとも5%低下し;一層好ましくは少なくとも10%低下し;一層好ましくは少なくとも20%低下し;一層好ましくは少なくとも30%低下し;一層好ましくは少なくとも40%低下し;一層好ましくは少なくとも50%低下し;なお一層好ましくは少なくとも50%低下し;最も好ましくは少なくとも75%低下する。細胞増殖率は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。細胞増殖率は、たとえば、組織サンプルにおいて単位時間当たりに分裂している細胞数を測定することにより測定してもよい。
【0235】
細胞増殖性障害を処置又は予防すると、増殖している細胞の比率が低下することがある。好ましくは、処置後、増殖している細胞の比率は少なくとも5%;一層好ましくは少なくとも10%;一層好ましくは少なくとも20%;一層好ましくは少なくとも30%;一層好ましくは少なくとも40%;一層好ましくは少なくとも50%;なお一層好ましくは少なくとも50%;最も好ましくは少なくとも75%低下する。増殖している細胞の比率は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。好ましくは、増殖している細胞の比率は、たとえば組織サンプルにおいて分裂している細胞数を非分裂細胞の数と比較して定量することにより測定される。増殖している細胞の比率は、分裂指数と等価であり得る。
【0236】
細胞増殖性障害を処置又は予防すると、細胞の増殖部位又は領域の大きさが小さくなることがある。好ましくは、処置後、細胞の増殖部位又は領域の大きさは、処置前のその大きさと比較して少なくとも5%縮小し;一層好ましくは少なくとも10%縮小し;一層好ましくは少なくとも20%縮小し;一層好ましくは少なくとも30%縮小し;一層好ましくは少なくとも40%縮小し;一層好ましくは少なくとも50%縮小し;なお一層好ましくは少なくとも50%縮小し;最も好ましくは少なくとも75%縮小する。細胞の増殖部位又は領域の大きさは、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。細胞の増殖部位又は領域の大きさは、細胞の増殖部位又は領域の直径又は幅として測定してもよい。
【0237】
細胞増殖性障害を処置又は予防すると、異常な外観もしくは形態を有する細胞の数又は比率が低下することがある。好ましくは、処置後、異常な形態を有する細胞数は、処置前のその大きさと比較して少なくとも5%減少し;一層好ましくは少なくとも10%減少し;一層好ましくは少なくとも20%減少し;一層好ましくは少なくとも30%減少し;一層好ましくは少なくとも40%減少し;一層好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは少なくとも50%減少し;最も好ましくは少なくとも75%減少する。異常な細胞外観又は形態は、任意の再現可能な測定手段により測定することができる。異常な細胞形態は、たとえば倒立型培養顕微鏡を用いて顕微鏡観察により測定してもよい。異常な細胞形態は、核異型の形をとることがある。
【0238】
本明細書で使用する場合、「選択的に」という用語は、ある集団において別の集団より高頻度で起こる傾向があることを意味する。比較される集団は細胞集団であってもよい。好ましくは、本開示の化合物、又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、癌又は前癌性細胞に選択的に作用するが、正常な細胞には作用しない。好ましくは、本開示の
化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物は、1つの分子標的(たとえば、SMARCA2などの標的ヘリカーゼ)を調節するが、別の分子標的(たとえば、SMARCA4などの異なるヘリカーゼ、又は非ヘリカーゼ酵素、たとえば、SMARCA2のATPアーゼ阻害剤の場合、異なるヘリカーゼのATPアーゼ活性、又はATPアーゼ活性を有する異なるタンパク質)をあまり調節しないように選択的に作用する。本開示は又、ヘリカーゼ(たとえば、SMARCA2)などの酵素の活性を選択的に阻害する方法も提供する。好ましくは、SMARCA2阻害剤は、第2の異なる酵素、たとえば、異なるヘリカーゼ(たとえば、SMARCA4)又はATPアーゼ活性を示している異なる酵素を阻害することと比較して、SMARCA2の阻害が第2の異なる酵素の阻害の2倍より大きい場合に、SMARCA2、たとえば、SMARCA2のヘリカーゼ又はATPアーゼの活性を、選択的に阻害する。いくつかの実施形態では、選択的なSMARCA2阻害は、SMARCA2の阻害が、第2の異なる酵素の阻害の5倍より大きい、10倍より大きい、50倍より大きい、100倍より大きい、又は1000倍より大きい場合に起こる。たとえば、いくつかの実施形態では、SMARCA2阻害は、SMARCA2のヘリカーゼ活性阻害がSMARCA4阻害の2倍より大きい場合に、SMARCA4阻害より選択的に起こると言われることになる。
【0239】
本開示の組成物、たとえば、SMARCA2阻害剤と、プレドニゾンなどの1種又は複数種の他の治療剤とを含む組成物は、分子標的(たとえば、標的ヘリカーゼ)の活性を調節することができる。調節とは、分子標的の活性を刺激又は阻害することをいう。好ましくは、本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を少なくとも2倍刺激又は阻害する場合、この組成物は分子標的の活性を調節する。一層好ましくは、本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍刺激又は阻害する場合、この組成物は分子標的の活性を調節する。分子標的の活性は、任意の再現可能な手段により測定することができる。分子標的の活性は、インビトロで測定してもインビボで測定してもよい。たとえば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイ又はDNA結合アッセイによりインビトロで測定してもよいし、又は分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現をアッセイすることによりインビボで測定してもよい。
【0240】
本開示の組成物、たとえば、SMARCA2阻害剤と、プレドニゾンなどの1種又は複数種の他の治療剤とを含む組成物は、分子標的(たとえば、標的ヘリカーゼ)の活性を調節することができる。調節とは、分子標的の活性を刺激又は阻害することをいう。好ましくは、本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を少なくとも2倍刺激又は阻害する場合、この組成物は分子標的の活性を調節する。一層好ましくは、本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍刺激又は阻害する場合、この組成物は分子標的の活性を調節する。分子標的の活性は、任意の再現可能な手段により測定することができる。分子標的の活性は、インビトロで測定してもインビボで測定してもよい。たとえば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイ又はDNA結合アッセイによりインビトロで測定してもよいし、又は分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現をアッセイすることによりインビボで測定してもよい。
【0241】
本開示の組成物は、化合物を添加しても、前記化合物が存在しないこと以外は同じ条件下の分子標的の活性と比較して、分子標的の活性を10%より多く刺激又は阻害しない場合、分子標的の活性をあまり調節しない。
【0242】
本開示の組成物を細胞又はそれを必要とする対象に投与すると、目的のヘリカーゼの活性が調節(すなわち、刺激又は阻害)され得る。
【0243】
本開示の化合物、たとえば、SMARCA2阻害剤と、1つ又は複数の他の治療剤、たとえば、プレドニゾンとを含む組成物を、細胞又はそれを必要とする対象に投与すると、細胞内の標的(たとえば、基質)の活性が調節(すなわち、刺激又は阻害)される。本開示の化合物を用いて、以下に限定されるものではないが、ヘリカーゼなど、いくつかの細胞内標的を調節することができる。
【0244】
活性化するとは、組成物(たとえば、タンパク質又は核酸)を所望の生物学的機能を果たすのに好適な状態にすることをいう。活性化させることができる組成物は又、不活性状態も有する。活性化している組成物は、阻害性もしくは刺激性の生物学的機能、又はその両方を有し得る。
【0245】
上昇とは、組成物(たとえば、タンパク質又は核酸)の所望の生物活性における増加をいう。上昇は組成物の濃度の増加によって起こり得る。
【0246】
本明細書で使用する場合、「細胞周期チェックポイント経路」とは、細胞周期チェックポイントの調節に関わる生化学的経路をいう。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイントを含む1つ又は複数の機能に対して刺激作用もしくは阻害作用を有しても、あるいはその両方を有してもよい。細胞周期チェックポイント経路は、少なくとも2つの組成物、好ましくはタンパク質からなり、そのどちらも細胞周期チェックポイントの調節に寄与する。細胞周期チェックポイント経路は、細胞周期チェックポイント経路の1つ又は複数のメンバーの活性化により活性化され得る。好ましくは、細胞周期チェックポイント経路は生化学的シグナル伝達経路である。
【0247】
本明細書で使用する場合、「細胞周期チェックポイント制御因子」とは、細胞周期チェックポイントの調節において少なくともある程度機能し得る組成物をいう。細胞周期チェックポイント制御因子は、細胞周期チェックポイントを含む1つ又は複数の機能に対して刺激作用もしくは阻害作用を有しても、あるいはその両方を有してもよい。細胞周期チェックポイント制御因子はタンパク質でも、あるいはタンパク質でなくてもよい。
【0248】
癌又は細胞増殖性障害を処置すると、細胞死が起こることがあり、好ましくは細胞死により、ある集団で細胞の数が少なくとも10%減少する。一層好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の減少;一層好ましくは少なくとも30%の減少;一層好ましくは少なくとも40%の減少;一層好ましくは少なくとも50%の減少;最も好ましくは少なくとも75%の減少を意味する。集団における細胞数は、任意の再現可能な手段により測定することができる。集団における細胞数は、蛍光活性化セルソーター(FACS)、免疫蛍光顕微鏡及び光学顕微鏡により測定してもよい。細胞死を測定する方法は、Li et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.100(5):2674-8,2003に示される通りである。いくつかの態様では、細胞死はアポトーシスにより起こる。
【0249】
好ましくは、有効量の本開示の組成物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、正常な細胞に対してあまり細胞毒性を示さない。治療有効量の化合物の投与により、正常な細胞に10%を超えて細胞死が誘導されない場合、治療有効量の化合物は正常な細胞に対してあまり細胞毒性を示さない。治療有効量の化合物の投与により、正常な細胞に10%を超えて細胞死が誘導されない場合、治療有効量の化合物は正常な細胞の生存率にあまり影響を与えない。いくつかの態様では、細胞死はアポトーシスにより起こる。
【0250】
本開示の組成物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と細胞を接触させると、癌細胞に選択的に細胞死を誘導又は活性化することができる。本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体に投与すると、癌細胞に選択的に細胞死を誘導又は活性化することができる。本開示の組成物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と細胞を接触させると、細胞増殖性障害に冒された1つ又は複数の細胞に選択的に細胞死を誘導することができる。好ましくは、本開示の組成物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、それを必要とする被験体に投与すると、細胞増殖性障害に冒された1つ又は複数の細胞に選択的に細胞死が誘導される。
【0251】
本開示は、本開示の組成物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することによって、癌を処置又は予防する方法であって、本開示の組成物又はその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与すると、細胞周期(たとえばG1、G1/S、G2/M)のうち1つ又は複数の期における細胞の蓄積による癌細胞増殖の予防、又は細胞老化の誘導、もしくは腫瘍細胞分化の促進;正常な細胞において相当量の細胞死を起こすことのない、細胞毒性、壊死もしくはアポトーシスによる癌細胞の細胞死の促進、治療係数が少なくとも2の動物における抗腫瘍活性のうち1つ又は複数が起こる方法に関する。本明細書で使用する場合、「治療係数」とは最大耐量を有効用量で除した値である。
【0252】
当業者は、本明細書で考察した公知の技術又は等価な技術の詳細な説明に関する一般的な参考図書を参照してもよい。そうした図書として、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Inc.(2005);Sambrook et
al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd edition),Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New York(2000);Coligan et al.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,N.Y.;Enna et al.,Current Protocols in Pharmacology,John Wiley & Sons,N.Y.;Fingl et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics(1975),Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition(1990)が挙げられる。さらにこれらの図書は、本開示の態様の製造又は使用の際に参照してもよいことは、言うまでもない。
【実施例0253】
実施例1
CRISPR/Cas9媒介性遺伝子ノックアウトによるSMARCA2のノックアウトに対する感受性を、CRISPR/Cas9プール型スクリーニングによって判定した。大規模細胞集団を、バーコードをつけた、目的遺伝子へのsgRNAガイドのプール化ライブラリーに感染させた。増殖ベースのスクリーニングについては、実験の開始時と終了時に、ゲノムDNAのシークエンシングにより、バーコード/CRISPR表示を測定し、CRISPR sgRNAにおける相対的な濃縮/減少によって、ノックアウトにより増殖速度が変更された遺伝子を確認した。600超のエピジェネティック遺伝子を標的とする6500の小ガイドRNAを含むカスタムCRISPRレンチウイルスライブラリーを作製し、195の細胞株に対し、40日までの期間にわたってスクリーニングした。KRasを陽性対照としてCRISPR/Cas9ライブラリーに含め、KRasノックアウトに対する感受性は、KRasの変異型と相関性が高いことが観察された。A549
肺癌細胞株及びNCIH1299肺癌細胞株を含む、SMARCA4の欠損細胞又は変異型細胞は、SMARCA2ノックアウトに感受性があることが判明した(
図1)。SMARCA2とSMARCA4の間の合成致死性の関係は、文献でさらに検証された(Hoffman et al.PNAS,2013,111(8),3128-3133;Wilson et al,Mol.Cell Biol.,2014,34(6),1136-44;Vangamundi et al.Cancer Res.2015,75(18):3865-78;及びOike et al.,Cancer Res.2013 Sep 1;73(17),5508-18;これらの各々の内容は、その全体を参照により本明細書に援用する)。
【0254】
SMARCA4発現と、SMARCA2阻害に対する感受性の間の関係をさらに研究するために、非小細胞肺癌(NSCLC)株のパネルを試験してSMARCA2及びSMARCA4のタンパク質レベルを調査した。Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)で入手可能なRNA配列データを有するNSCLC細胞株のトランスクリプトーム解析が
図2に示されている。SMARCA4発現が低い細胞株は、SMARCA2阻害に感受性があることが判明し、SMARCA4の喪失によりSMARCA2阻害に対する反応が予測され、SMARCA4の喪失が、患者層別化バイオマーカーになり得ることを示唆した。SMARCA4変異型ではタンパク質喪失の過小評価になるため、SMARCA2及びSMARCA4の発現のタンパク質レベルの把握が不可欠であり、この患者集団のより優れた解析、たとえば、免疫組織化学アッセイ又はマルチプレックスタンパク質アッセイによって臨床サンプル中のタンパク質発現を査定する必要があることも示唆している。
【0255】
実施例2:臨床サンプル中のタンパク質発現を査定するためのSMARCA2/4免疫組織化学アッセイ
226の非小細胞肺癌腫瘍サンプルのパネルをスクリーニングして、SMARCA2及びSMACRA4の検出用に最適化された免疫組織化学(IHC)アッセイによってSMARCA2/4タンパク質発現を調査した。IHCスライドが
図3A~3Eに示されている。結果を表3に要約している。
【0256】
【0257】
実施例3:細胞中のSMARCA2阻害の抗増殖効果
SMARCA4変異型細胞株におけるSMARCA2ノックアウト又は阻害の抗増殖効果は、実施例1に記載したCRISPRプール型スクリーニングの結果により示唆され、これを3種の標的検証アッセイ:遺伝子型シークエンシングアッセイ、蛍光競合アッセイ、及びCRISPRドメインを中心としたスクリーニングでさらに評価した。
【0258】
遺伝子型シークエンシングアッセイ(NGS)では、細胞増殖の、SMARCA2感受性への依存性が確認された。蛍光競合アッセイは有効であった。CRISPRプール型スクリーニングの結果の表現型の検証は、野生型又は非機能性の変異型に強い選択性があるため、単一遺伝子については困難である。
【0259】
CRISPRドメインを中心としたスクリーニングでは、抗増殖効果の、標的とした触媒ドメインに対する依存性が示された。具体的には、SMARCA2のATPアーゼドメインの阻害が、細胞中のSMARCA2ノックアウトの抗増殖効果を促進することが判明した。
【0260】
SMARCA2ヘリカーゼドメインを標的とするCRISPRガイドは、最強の抗増殖効果を有することが判明した。SMARCA2ブロモドメインを標的とするガイドは、効果が最小であった(
図5)。さらに、SMARCA2/4ブロモドメイン阻害剤PFI-3での処置は、SMARCA4の野生型細胞株又は変異型細胞株において細胞増殖に対する機能効果がない(
図6、パネルA~C)。
【0261】
実施例4:ATPアーゼ阻害剤のスクリーニング
ブロモドメインを標的とする既知の阻害剤は、SMARCA2のATPアーゼ活性に対して効果がないことが判明した(表4を参照されたい)。SMARCA2のATPアーゼ及び非ブロモドメイン機能は、SMARCA4機能喪失細胞の生存能に必要である。このため、実行可能なアンタゴニスト又は阻害剤(すなわち、ATPアーゼ阻害剤)の開発にはATPアーゼ活性をモニターする方法が必要である。
【0262】
【0263】
SMARCA2は、通常、マルチドメイン複合体中に見出される。それ故、好適な化合物のスクリーニング及び開発における第1のステップは、単離された完全長タンパク質が細胞系と同様に挙動するのかどうか、及び生物物理学に好適な構築物が産生され得るのかどうかを判定することであった。
【0264】
単離された全長SMARCA2(FL-SMARCA2)は、活性アッセイにおいて挙動が良いことが判明した。シグナル-バックグラウンド比、タンパク質濃度の関数として
のATPアーゼ活性、及びモノヌクレオソーム生体基質に対するATP活性の依存性を、単離された全長SMARCA2及びSMARACA4について、ハイスループットスクリーニング生物発光アッセイ(HTS ADP-Glo(商標)形式)で決定した。その結果は、
図7、パネルA~C及び
図8、パネルA~Cにそれぞれ要約されている。精製したSWI/SNF複合体は、ATPアーゼアッセイにおいて、モノヌクレオソームに依存性のATPアーゼ活性を示した。精製した複合体の濃度の関数としてのATPアーゼ活性が、モノヌクレオソームの存在下で16~18倍高い勾配を示すことが判明した(
図9、パネルC)。その活性及びヌクレオソームへの依存性は、単離された全長SMARCA2とSWI/SNF複合体との間で類似していることが示された。さらに、精製したタンパク質複合体及び単離されたSMARCA2は、類似の動態パラメータを示した(
図10、パネルA~D)。したがって、単離されたSMARCA2を更なる開発に使用し、474K
HTSを完了した。
【0265】
HTSアッセイからHitをさらに評価し、IC
50及び表面プラズモン共鳴(SPR)において決定した親和性相互作用(SMARCA2結合)について優先した。IC
50は、2-アミノ-6-メルカプト-7-メチルプリンリボヌクレオシド/プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(MESG/PNP)アッセイで決定した(
図11)。
【0266】
他に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味をもつ。本明細書では、単数形は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数形も含む。特記しない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「ある(a)」、「ある(an)」及び「当該(the)」という用語は、単数形又は複数形であると理解される。特記しない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「又は(or)」という用語は、包括するものと理解される。
【0267】
特記しない限り又は文脈から明らかでない限り、本明細書で使用する場合、「約(about)」という用語は、当該技術分野において通常の許容度の範囲内、たとえば、平均値の標準偏差2以内などと理解される。「約」は、表示値の10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内又は0.01%以内と理解されることが可能である。文脈から他の意味が明らかでない限り、本明細書に記載されるすべての数値は、「約」という用語で修飾される。
【0268】
本明細書に記載のものと類似又は均等の方法及び材料は、本発明の実施又は試験に使用されることが可能であるが、好適な方法及び材料は以下に記載される。本明細書に記載する刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献はすべて、参照により援用される。本明細書に引用する参考文献は、特許請求の範囲に記載されている本発明に対する従来技術であるとは認められない。矛盾がある場合は、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、材料、方法及び実施例は、単に例示のためのものであり、限定するものではない。細胞株又は遺伝子の名称が使用される場合、略語及び名称は、特記しない限り又は文脈から明らかでない限り、American Type Culture Collection(ATCC)又は米国国立生物工学情報センター(NCBI:National Center
for Biotechnology Information)の命名法に準拠する。
【0269】
本発明は、その精神又は本質的な特徴を逸脱することなく他の特定の形態で実施することができる。したがって前述の実施形態は、あらゆる点で本明細書に記載の本発明に関する限定ではなく、例示と見なすべきである。このため本発明の範囲は、明細書本文ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等範囲に属するすべての変更
をすべてその範囲内に包含することを意図している。
【0270】
本開示は、特許請求の範囲のうち1つ若しくは複数からの、又は1つ若しくは複数の記述の関連部分からの、1つ又は複数の限定、要素、節又は記述用語が、別の請求項に組み込まれているすべての変形、組合せ及び順列を包含することが理解されよう。たとえば、別の請求項に対して独立しているある請求項は、同じ基本請求項に対して独立している他の任意の請求項に見出される限定のうち1つ又は複数を含むように変更され得る。さらに、特許請求の範囲が組成物を列挙している場合、他に指示がない限り、又は矛盾若しくは齟齬が発生することが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示されている組成物を作製又は使用する方法のいずれかに従って、又は当該技術分野において公知の方法があればそれに従って、その組成物を作製又は使用する方法が含まれることが理解されよう。
【0271】
要素が一覧として、たとえば、マーカッシュ群形式で提示されている場合、その要素の可能なすべての亜群も又開示されていること、及び任意の要素又は要素の任意の亜群はその群から除去され得ることが理解されよう。「含む」という用語はオープンであるものとし、追加の要素又はステップの組み入れが可能であることも留意されたい。一般に、実施形態、もの又は方法が、特定の要素、特徴又はステップを含むと記載されている場合、そうした要素、特徴又はステップからなる、又はそれらから実質的になる実施形態、もの又は方法も又提供されていることが理解されるべきである。簡潔にするために、本明細書にそれらの実施形態を個別に明記はしていないが、これらの実施形態の各々が本明細書において提供され、明確に特許請求されたり、又は放棄されたりできることが理解されよう。
【0272】
範囲が定められている場合、両端が含まれる。さらに、他に指示がない限り、さもなければ文脈及び/又は当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表されている値は、いくつかの実施形態では、表示範囲内の任意の特定値(文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、その範囲の下限の単位の10分の1まで)を想定し得ることが理解されよう。簡潔にするために、本明細書に各範囲中の値を個別に明記はしていないが、これらの値の各々が本明細書において提供され、明確に特許請求されたり、又は放棄されたりできることが理解されよう。他に指示がない限り、さもなければ文脈及び/又は当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表された値は、その定められた範囲内の任意の部分範囲を想定することができ、その部分範囲の両端は、その範囲の下限の単位の10分の1と同程度までの正確さで表されることも理解されよう。
【0273】
さらに、本開示の任意の特定の実施形態は、特許請求の範囲の請求項のうち任意の1つ又は複数から明確に除外されてもよいことが理解されよう。範囲が定められている場合、その範囲の任意の値は、特許請求の範囲の請求項のうち任意の1つ又は複数から明確に除外されてもよい。本発明の組成物及び/又は方法の、任意の実施形態、要素、特徴、用途、又は態様は、任意の1つ又は複数の特許請求の範囲の請求項から除外することができる。簡潔にするためであるが、1つ又は複数の要素、特徴、目的又は態様が除外されている実施形態のすべてが本明細書に明確に記載されているわけではない。