(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136156
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】マイクロドロップを処理するためのマイクロ流体方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20220908BHJP
B01F 33/3031 20220101ALI20220908BHJP
B01F 33/3032 20220101ALI20220908BHJP
B01F 33/3033 20220101ALI20220908BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20220908BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20220908BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220908BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B01F33/3031
B01F33/3032
B01F33/3033
B01F23/40
G01N37/00 101
C12M1/34 A
C12M3/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117270
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2019517429の分割
【原出願日】2017-09-29
(31)【優先権主張番号】1659418
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】513008384
【氏名又は名称】エコール ポリテクニック
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャルル・バルー
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・トマシ
(57)【要約】
【課題】捕捉されたマイクロドロップを容易に制御し、空間的に事前定義された方法で捕捉することを可能にするマイクロドロップを処理する方法を提供する。
【解決手段】第1の捕捉ゾーン(15)および第2の捕捉ゾーン(18)を有するキャピラリトラップを備えるマイクロ流体システムにおいて少なくとも1つの第1のマイクロドロップ(20)および少なくとも1つの第2のマイクロドロップ(25)を取り扱う方法であって、該方法は、(i)第1の捕捉ゾーン(15)に第1のマイクロドロップ(20)を捕捉するステップと、(ii)第2の捕捉ゾーン(18)に第2のマイクロドロップ(25)を捕捉するステップとからなるステップを含み、第1および第2の捕捉ゾーンは、第1および第2のマイクロドロップ(20;25)が互いに接触するように配置され、第1および第2の捕捉ゾーン(15;18)は、前記マイクロドロップ(20)の1つに作用する捕捉力が異なるように適合される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の捕捉ゾーン(15)および第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)を有するキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)を備えるマイクロ流体システムにおいて、少なくとも1つの第1の液体マイクロドロップ(20)と、好ましくは第1のマイクロドロップ(20)より小さいサイズおよび/または小さい体積の少なくとも1つの第2の液体マイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)とを操作する方法であって、前記方法が、
(i)前記第1の捕捉ゾーン(15)に第1のマイクロドロップ(20)を捕捉するステップと、
(ii)前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)に第2のマイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)を捕捉するステップと、からなるステップを含み、
第1および第2のマイクロドロップ(20;25、25a、25b、25c、25m、25v)が互いに接触するように第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が配置されており、
前記マイクロドロップ(20、25a、25b、25c、25m、25v)の1つに及ぼされる捕捉力が異なるように前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が構成されており、
流体の配向された流れ(F1;F2)によって、前記マイクロドロップ(20、25、25a、25b、25c、25m、25v)が前記マイクロ流体システム内を移動する、方法。
【請求項2】
前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)が前記第1のマイクロドロップ(20)に及ぼす捕捉力より大きい捕捉力で、前記第1のマイクロドロップ(20)が前記第1の捕捉ゾーン(15)に捕捉される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2のマイクロドロップ(20;25、25a、25b、25c、25m、25v)が異なり、特に異なるサイズを有し、特に前記第1のマイクロドロップ(20)が、前記第2のマイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)より大きいサイズおよび/または大きい体積を有する、および/または異なる内容物を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)が複数の第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)を含み、ステップ(ii)が、第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)当たり1つの第2のマイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)を捕捉することからなり、各第2のマイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)が第1または第2のマイクロドロップ(20、25、25a、25b、25c、25m、25v)の少なくとも1つと接触するように、前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)が、流体の第1の方向の流れ(F1)の影響下で、第2の捕捉ゾーンの1つまたはいくつか(18m)に第2のマイクロドロップ(25m)を捕捉することからなるサブステップ(ii’)と、流体の第2の方向の流れ(F2)の影響下で、第2の捕捉ゾーンの別の1つの部分またはいくつかの部分(18v)に第2のマイクロドロップ(25v)を捕捉することからなるサブステップ(ii’’)とを含み、流体の第1および第2の流れは異なる向き(F1、F2)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)またはそれらの各々に捕捉された前記第2のマイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)またはそれらの各々を前記第1のマイクロドロップ(20)と融合させることからなるステップ(iii)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(iii)の後に、第1および第3のマイクロドロップ(20;85)が互いに接触するように、第2のマイクロドロップを有さない1つまたは複数の第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)に第3のマイクロドロップ(85)を捕捉することからなるステップ(v)を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
マイクロドロップ(20;25、25a、25b、25c、25m、25v;85)が捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)に無作為に供給される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の捕捉ゾーン(15)の高さ(h1)が、前記第1の捕捉ゾーンの体積が前記第1のマイクロドロップの体積と同等またはそれより大きくなるものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
‐前記キャピラリトラップの前記第1の捕捉ゾーンに前記第1のマイクロドロップを捕捉するステップであって、前記第1のマイクロドロップが第1のゾーンに捕捉され続けるように、第1のゾーンによって前記第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力F1が、配向された流れによって前記第1のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft1より大きく、抗力Ft1がF1とF2との間にあり、F2が前記キャピラリトラップの前記第2の捕捉ゾーンによって前記第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力を表す、ステップと、
‐次いで、前記キャピラリトラップの前記第2の捕捉ゾーンに前記第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第2のゾーンに前記第2のマイクロドロップを装填する間に、配向された流れによって前記第2のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft2がF2とF3との間にあり、F3が好ましくはF1未満であり、F3が前記キャピラリトラップの前記第2のゾーンによって前記第2のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力である、ステップと、
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の捕捉ゾーン(15)に捕捉された第1の液体マイクロドロップ(20)および第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)に捕捉された第2の液体マイクロドロップ(25、25a、25b25c、25m、25v)が、キャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)内で互いに接触するように配置された、第1の捕捉ゾーン(15)および第2の捕捉ゾーン(18,18a,18b,18c,18m,18v)を有するキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を特に実施するための、マイクロドロップを捕捉するマイクロ流体装置であって、第1および第2のキャピラリトラップ(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が、前記マイクロドロップ(20、25、25a、25b、25c、25m、25v)の1つに作用する捕獲力が異なるように構成されており、前記マイクロドロップ(20、25、25a、25b、25c、25m、25v)が、流体の配向された流れ(F1;F2)によって前記マイクロ流体装置内で移動する、装置。
【請求項12】
前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が空洞である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)は、それらの寸法の少なくとも1つが異なる、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が異なる高さ(h1;h2)を有し、前記第1の捕捉ゾーン(15)が特に前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)より高い、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が、上から見たときに異なる形状を有し、前記第1の捕捉ゾーン(15)が、前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)より大きな面積を有する、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)が、前記第1の捕捉ゾーン(15)に近づくにつれて少なくとも一方向に広くなる、請求項11から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記キャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)が、捕捉された第2のマイクロドロップ(25a、25b、25c、25m、25v)の各々が前記キャピラリトラップに捕捉された第1のマイクロドロップ(20)または第2のマイクロドロップ(25a、25b、25c、25m、25v)の少なくとも1つと接触するように配置された複数の第2の捕捉ゾーン(18a、18b、18c、18m、18v)を含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
各々が第1の捕捉ゾーン(15)および第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)を含む複数のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)を備え、好ましくは、前記キャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)の前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)に捕捉された前記第2のマイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)が前記キャピラリトラップ(2、12a、12b、12c)の前記第1の捕捉ゾーン(15)に捕捉された前記第1のマイクロドロップ(20)と接触するように第1の捕捉ゾーン(15)および第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)が配置されている、請求項11から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
1平方センチメートル当たり少なくとも10個のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)、より好ましくは1平方センチメートル当たり少なくとも100個のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)を備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
n個の第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)を含む第1のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)と、p個の第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)を含む第2のキャピラリトラップとを備え、nがpとは異なる、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
捕捉チャンバ(30)を有するチャネル(9)を含み、1つまたは複数のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)が前記捕捉チャンバ(30)内にある、請求項11から20のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体システムの少なくとも1つのキャピラリトラップ内でいくつかのマイクロドロップを処理するためのマイクロ流体方法に関する。本発明はまた、前記方法を実行するためのマイクロ流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各捕捉ゾーンが所定数のマイクロドロップを捕捉するように寸法決めされているほぼ円形または楕円形のトラップ内の1つまたは複数のマイクロチャネル内を循環するマイクロドロップの捕捉は、特許出願FR2950544から知られている。
【0003】
マイクロ流体システムのほぼ円形の浅いトラップにおけるほぼ同一または異なるサイズのマイクロドロップの捕獲および融合は非特許文献1および2からも知られている。1つのトラップに捕捉されるマイクロドロップは異なる。
【0004】
この種のトラップは、特に異なるサイズのマイクロドロップにトラップを適合させるために、捕捉されたマイクロドロップを正確に操作および/または制御することができず、空間的に事前定義された方法でマイクロドロップを捕捉することもできない。
【0005】
非特許文献3には、トラップをゴーグル形にするように部分的に重なり合うほぼ円形の2つの同一のゾーンを有する浅いトラップが記載されている。2つのゾーンはそれぞれ1つのマイクロドロップを捕捉することを可能にする。トラップの形状は、捕捉された2つのマイクロドロップを互いに接触させ続けてそれらを単一のマイクロドロップに融合させることを可能にする。この種のトラップは、ほぼ同じサイズの2つのマイクロドロップの処理に限定され、多数のマイクロドロップの処理には適さず、応用の可能性が低くなる。
【0006】
さらに、2つのマイクロドロップを固定して融合させるためのC字形のトラップが、非特許文献4から知られている。このトラップは、マイクロドロップの流れを妨げるレリーフを突出させることによって形成されている。しかしながら、マイクロドロップの操作は、特にトラップの形状によって制限されており、マイクロドロップをトラップ内に保持することは、正確な方向に向けられた流体の流れの存在を必要とする。
【0007】
WO2016/059302には、マイクロ流体システムにおいてマイクロドロップを取り扱う方法が記載されており、この方法は、マイクロドロップをキャピラリトラップ内に捕捉するステップと、マイクロドロップまたはそれらの環境を少なくとも部分的にゲル化するステップとを含んでいる。キャピラリトラップは、捕捉されるマイクロドロップの直径よりも大きいその深さにいくつかのマイクロドロップを収容することができる。しかしながら、マイクロドロップ、特に捕捉されたものの深さ方向の操作は制限される。
【0008】
US2015/0258543は、異なる流体を接触させてそれらの間の反応を得ることを可能にし、この反応の動力学の分析を可能にする方法を提案している。そこに開示されているマイクロ流体回路は、マイクロドロップを一度に1つずつ、キャピラリトラップとして機能するキャビティに入れることができる。体積の異なる2つのマイクロドロップを接触させて8字型のキャビティに入れることができる。それぞれの8の字のループに対応する2つの捕捉ゾーンの寸法は、そこに収容されるマイクロドロップの寸法に対応する。これらの異なる捕捉ゾーンの間には、キャビティの形状に関連したエネルギー障壁がある。たとえば、右側から供給されたマイクロドロップは、8の字型のキャビティのため、右側の捕捉ゾーンに残る。
【0009】
US2010/0190263には、2つの基板を分離する中空領域を有する液滴のアクチュエータが記載されている。これらの基板は、液滴を中空領域に輸送するための電極を含む。アクチュエータの目的は、これらの中空領域に気泡を形成して保持することである。
【0010】
非特許文献5および6には、マイクロチャネル内の流体の流れにさらされたマイクロドロップの捕捉に関連した物理学が記載されている。捕捉力は、トラップの形状およびサイズ、マイクロチャネルの深さ、マイクロドロップのサイズ、ならびに存在する流体の物理的および物理化学的特性、例えば粘度、表面張力などに由来し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2950544号公報
【特許文献2】国際公開第2016/059302号
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0258543号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0190263号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】E. Fradet, C. McDougal, P. Abbyad, R. Dangla, D. McGloin, and C.N. Baroud, 「Combining rails and anchors with laser forcing for selective manipulation within 2D droplet arrays」 Lab Chip, Vol.11, No.24, pp.4228-34, Dec. 2011
【非特許文献2】J. Tullis, C.L. Park, and P. Abbyad, 「Selective Fusion of Anchored Droplets via Changes in Surfactant Concentration」 Lab Chip, 2014
【非特許文献3】E. Fradet, P. Abbyad, M.H. Vos, and C.N. Baroud, 「Parallel measurements of reaction kinetics using ultralow volumes」 Lab Chip, Vol.13, No.22, pp.4326‐30, Oct. 2013
【非特許文献4】A.M. Huebner, C. Abell, W.T.S. Huck, C.N. Baroud, and F. Hollfelder,「Monitoring a Reaction at Submillisecond Resolution in Picoliter Volumes」, Anal Chem. 2011 Feb 15; 83(4): 1462-8
【非特許文献5】Dangla, R., Lee, S. & Baroud, C.N.「Trapping microfluidic drops in wells of surface energy」 Phys. Rev. Lett. 107, 124501 (1-4) (2011)
【非特許文献6】Yamada, A., Lee, S., Bassereau, P. & Baroud, C.N.「Trapping and release of giant unilamellar vesicles in microfluidic wells」 Soft Matter 10, 26-28 (2014)
【非特許文献7】E. Fradet, P. Abbyad, M.H. Vos, and C.N. Baroud, 「Parallel measurements of reaction kinetics using ultralow volumes」 Lab Chip, Vol. 13, No. 22, pp. 4326‐30, Oct. 2013
【非特許文献8】Pan, M., Rosenfeld, L., Kim, M., Xu, M., Lin, E., Derda, R., & Tang, S.K.Y. (2014) 「Fluorinated Pickering Emulsions Impede Interfacial Transport and Form Rigid Interface for the Growth of Anchorage-Dependent Cells」 Applied Materials & Interfaces, 6, 21446‐21453
【非特許文献9】S.L. Anna, N. Bontoux and H.A. Stone, 「Formation of dispersions using ‘Flow-Focusing’ in microchannels」, Appl. Phys. Lett. 82, 364 (2003)
【非特許文献10】R. Seemann, M. Brinkmann, T. Pfohl, and S. Herminghaus, 「Droplet based microfluidics」 Rep. Prog. Phys., Vol.75, No.1, p.016601, Jan. 2012
【非特許文献11】V. Chokkalingam, S. Herminghaus, and R. Seemann, 「Self-synchronizing pairwise production of monodisperse droplets by microfluidic step emulsification」 Appl. Phys. Lett., Vol.93, No.25, p.254101, 2008
【非特許文献12】G.F. Christopher and S.L. Anna, 「Microfluidic methods for generating continuous droplet streams」 J. Phys. D. Appl. Phys., Vol.40, No.19, pp.R319‐R336, Oct. 2007
【非特許文献13】R. Dangla, S.C. Kayi, and C.N. Baroud, 「Droplet microfluidics driven by gradients of confinement」 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 110, No.3, pp.853‐8, Jan. 2013
【非特許文献14】A. Funfak, R. Hartung, J. Cao, K. Martin, K.H. Wiesmuller, O.S. Wolfbeis, and J.M. Kohler, 「Highly resolved dose-response functions for drug-modulated bacteria cultivation obtained by fluorometric and photometric flow-through sensing in microsegmented flow」 Sensors Actuators, B Chem., Vol.142, No.1, pp.66‐72, 2009
【非特許文献15】E. Fradet, C. McDougal, P. Abbyad, R. Dangla, D. McGloin, and C.N. Baroud, 「Combining rails and anchors with laser forcing for selective manipulation within 2D droplet arrays」 Lab Chip, Vol.11, No.24, pp.4228‐34, Dec. 2011
【非特許文献16】E. Fradet, P. Abbyad, M.H. Vos, and C.N. Baroud, 「Parallel measurements of reaction kinetics using ultralow volumes」 Lab Chip, Vol.13, No.22, pp.4326‐30, Oct. 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、捕捉されたマイクロドロップを容易に制御し、空間的に事前定義された方法で捕捉することを可能にするマイクロドロップを処理する方法が必要とされている。マイクロドロップの連続的操作を可能にする方法もまた必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
<I.第1の態様‐操作方法>
この目的のために、本発明の第1の態様によれば、本発明は、第1の捕捉ゾーンと第2の捕捉ゾーンとを有するキャピラリトラップを備えるマイクロ流体システムにおいて少なくとも1つの第1のマイクロドロップおよび少なくとも1つの第2のマイクロドロップを操作する方法であって、
(i)第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップと、からなるステップを含み、
第1および第2の捕捉ゾーンは、第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップが互いに接触するように配置され、
第1および第2の捕捉ゾーンは、第1および第2の捕捉ゾーンによって同一の第1または第2の液体マイクロドロップに及ぼされ得る捕捉力が異なるように構成されている、方法を提案する。
【0015】
「マイクロ流体システム」とは、少なくとも1つの製品の輸送を伴うシステムであって、少なくとも1つの部分に、一方の端部から反対側の端部まで直線で測定される少なくとも1つの寸法が1ミリメートル未満である部分を含むシステムを意味する。
【0016】
「マイクロドロップ」とは、1μLと同等またはそれ未満、より好ましくは10nLと同等またはそれ未満の体積を有するドロップを意味する。マイクロドロップは液体、気体または固体であり得る。
【0017】
「キャピラリトラップ」とは、マイクロ流体システム内を循環する1つまたは複数のマイクロドロップの一時的または永久的な固定化を可能にする、マイクロ流体システムの空間ゾーンを意味する。キャピラリトラップは、1つまたは複数のレリーフ、特に中空のレリーフによって、および/またはマイクロドロップと接触する表面の1つまたは複数の局所的修飾、特にマイクロドロップの内容物の少なくとも一部との表面の親和性の1つまたは複数の修飾によって形成され得る。
【0018】
「第1および第2の捕捉ゾーンによって同一の第1または第2の液体マイクロドロップに加えられ得る捕捉力が異なる」とは、第1のマイクロドロップが第1の捕捉ゾーンのみに捕捉される場合、第2の捕捉ゾーンがこの同一の第1のマイクロドロップに対して及ぼす捕捉力と異なる捕捉力を有するキャピラリ現象によって保持されることを意味する。したがって、最小の捕捉力を及ぼす捕捉ゾーンから第1のマイクロドロップを解放することはより容易である。同じ論法が第2のマイクロドロップにも適用され得る。捕捉ゾーンの捕捉力は、捕捉されるマイクロドロップの特にその形状、マイクロドロップと接触するその表面、および/または特性、特に寸法に依存する。
【0019】
キャピラリトラップが、マイクロドロップの1つに及ぼす捕捉力が異なる2つのゾーンを有することにより、捕捉されるマイクロドロップの選択性および空間的選択性の両方を有し、特に第1のマイクロドロップが第2の捕捉ゾーンを占有すること、すなわち、第2のマイクロドロップがこの第2の捕捉ゾーンに捕捉されることを妨げることを避けることが可能となる。これは、複数の第1および第2のマイクロドロップがマイクロ流体システムに導入されるときに特に有利である。
【0020】
第1および第2のマイクロドロップが接触することにより、それらが相互作用するかまたは融合することが可能となる。
好ましくは、第1のマイクロドロップは、第2の捕捉ゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力より大きい捕捉力で第1の捕捉ゾーン内に捕捉される。したがって、第1のマイクロドロップは、第1の捕捉ゾーンによって捕捉されるのが好ましい。
【0021】
変形例として、第2のマイクロドロップは、第1の捕捉ゾーンによって第2のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力より小さい捕捉力で、第2の捕捉ゾーン内に捕捉される。この場合、第1および第2のマイクロドロップは、マイクロ流体システムにおいて順に導入および捕捉されることが好ましい。
【0022】
好ましくは、第2のマイクロドロップがマイクロ流体システム内の第2の捕捉ゾーンによって捕捉される前に、第1のマイクロドロップがマイクロ流体システム内の第1の捕捉ゾーンによって捕捉される。したがって、第2のマイクロドロップが導入されるときに、第1の捕捉ゾーンはすでに第1のマイクロドロップによって占有されているため、第1の捕捉ゾーンを占有することはできない。
【0023】
第2の捕捉ゾーンの捕捉力より大きく、第1の捕捉ゾーンの捕捉力と同等またはそれ未満の連行力が、ステップ(i)で第1のマイクロドロップに加えられ得る。例えば、第2の捕捉ゾーンの形状は、第2のゾーンの捕捉力が連行力よりも小さくなるように選択される。言い換えれば、マイクロドロップには、第2の捕獲ゾーンによる捕獲に対抗する連行のための流体力学的な力が及ぼされる。マイクロドロップを運搬する流体によって及ぼされる抗力は、マイクロドロップのサイズおよび瞬間的な形状、流体の物理的および物理化学的特性(粘度、表面張力など)ならびに流速に依存し得る。第1のドロップは第1の捕捉ゾーンにのみ捕捉される。
【0024】
連行力は、少なくとも部分的に以下のものによって加えられ得る。
‐マイクロ流体システムを流れる流体の配向された流れ。特に、マイクロドロップシステムは、流体の配向された流れによってマイクロ流体システム内を移動させることができ、マイクロドロップは、好ましくは、非混和性であり、流体の流れは、特に、第1のマイクロドロップが第1の捕捉ゾーンによってのみ捕捉されるような流量および方向を有する。移動する流体が第1のドロップに及ぼす力は、第1のドロップが第2の捕捉ゾーンに捕捉されることを防止する。
‐第1のマイクロドロップが自体の重量によってマイクロ流体システムの傾斜に沿って動かされる重力。したがって、マイクロ流体システムの傾斜に起因する第1のマイクロドロップが第1の捕捉ゾーンに到達する速度に応じて、第1のマイクロドロップは第1の捕捉ゾーンによって保持されるかまたは保持されない。
‐第1のマイクロドロップの表面張力を最小にする傾向。特に、マイクロ流体システムは、第1のマイクロドロップを動かす起伏、特にキャピラリトラップに向かってより広がる溝を含むことができる。
【0025】
好ましくは、第2のマイクロドロップには、第1のマイクロドロップに関して記載されたような、第2の捕捉ゾーンの捕捉力と同等またはそれ未満の連行力が及ぼされる。流体の配向された流れによって第2のマイクロドロップに連行力が及ぼされる場合、第1の捕捉ゾーンに捕捉された第1のマイクロドロップに流体の流れが及ぼす力は、第1のマイクロドロップを第1の捕捉ゾーンから取り出すのに不十分であることが好ましい。
【0026】
第2のマイクロドロップに対する連行力が流体の配向された流れによって及ぼされる場合、流体は、第2のマイクロドロップが、特に流体の流れの方向に対して第1の捕捉ゾーンの上流に配置された、流れの方向に対して特定の方向を有する第2の捕捉ゾーンにのみ捕捉されるように配向され得る。
【0027】
マイクロドロップは、流体の流れによって複数の捕捉ゾーンに運ばれ、捕捉ゾーンにランダムに導かれ、かつエネルギーの観点から捕捉ゾーンの中で最も有利な場所を自然に占有することが好ましい。マイクロドロップは自力で捕捉ゾーンに留まる。このようにマイクロドロップをランダムに配置することにより、多数のマイクロドロップを同時に捕捉することが可能となり、スクリーニング能力が向上する。
【0028】
実施形態において、本方法は、以下のステップを含む:
‐キャピラリトラップの第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第1のマイクロドロップが第1のゾーンに捕捉され続けるように、第1のゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力F1が、流れ(すなわち、マイクロドロップを運ぶ流体の配向された流れ)によって第1のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft1より大きく、抗力Ft1がF1とF2との間にあり、F2がキャピラリトラップの第2の捕捉ゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力を表す、ステップと、
‐次いで、キャピラリトラップの第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第2のゾーンに第2のマイクロドロップを装填する間に、流れによって第2のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft2がF2とF3との間にあり、F3が好ましくはF1未満であり、F3がキャピラリトラップの第2のゾーンによって第2のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力である、ステップと、
を含む。
【0029】
[マイクロドロップ]
好ましくは、第1の捕捉ゾーンが第1のマイクロドロップに及ぼす捕捉力は、それが第2のマイクロドロップに及ぼす捕捉力とは異なり、第2の捕捉ゾーンが第2のマイクロドロップに及ぼす捕捉力は、それが第1のマイクロドロップに及ぼす捕捉力とは異なる。実際、捕捉力は捕捉ゾーンの形状と関連して捕捉されるマイクロドロップの形状にも依存する。これにより、第1および第2のマイクロドロップの順次の捕捉が容易になる。
【0030】
好ましくは、第1の捕捉ゾーンは、それが第2のマイクロドロップに及ぼす捕捉力より大きい捕捉力を第1のマイクロドロップに及ぼす。これにより、第2のマイクロドロップが第1のマイクロドロップを追い出して取って代わるのを防ぐことができる。
【0031】
第1および第2のマイクロドロップは異なり得、特に異なるサイズであってよく、特に、第1のマイクロドロップは、第2のマイクロドロップより大きいサイズおよび/またはより大きい体積である、かつ/または異なる内容物を有する。これは、第1の捕捉ゾーンが第2のマイクロドロップに及ぼす力より大きい捕捉力を第1のマイクロドロップに及ぼすことを保証する。その結果、第1の捕捉ゾーンには単一のマイクロドロップのみが存在する。
【0032】
第1の捕捉ゾーンは、1つまたは複数の第1のマイクロドロップを捕捉することができる。
第2の捕捉ゾーンは、1つまたは複数の第2のマイクロドロップを捕捉することができる。
【0033】
変形として、第1および第2のマイクロドロップは、それらの特性のうちの少なくとも1つ、特に粘度および/または界面張力および/または少なくとも1つの捕捉ゾーンの特定のコーティングとの親和性において異なる。
【0034】
好ましくは、第1の捕捉ゾーンは第1のマイクロドロップのみを捕捉し、かつ/または第2の捕捉ゾーンは第2のマイクロドロップのみを捕捉する。特に:
‐上から見た捕捉されたときの第1のマイクロドロップの最大寸法は、上から見た第1の捕捉ゾーンの最大寸法と同等またはそれより大きく、かつ/または
‐上から見た捕捉されたときの第2のマイクロドロップの最大寸法は、上から見た第2の捕捉ゾーンの最大寸法と同等またはそれより大きく、かつ/または
‐捕捉されたときに、第1のマイクロドロップは、第1の捕捉ゾーンの体積の少なくとも70%、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%を満たし、かつ/または
‐捕捉されたときに、第2のマイクロドロップは、第2の捕捉ゾーンの体積の少なくとも70%、より好ましくは80%、さらに好ましくは90%を満たし、かつ/または
‐捕捉されたときに、第1のマイクロドロップの体積は、第1の捕捉ゾーンの体積と同等またはそれより大きいため、第1のマイクロドロップは第1の捕捉ゾーンの外側に部分的に広がり、かつ/または
‐捕捉されたときに、第2のマイクロドロップの体積は、第2の捕捉ゾーンの体積と同等またはそれより大きいため、第2のマイクロドロップは第2の捕捉ゾーンの外側に部分的に広がる。
【0035】
第1のマイクロドロップまたは第2のマイクロドロップの1つは、空気のマイクロバブルであり得る。
【0036】
[複数の第2および/または第1の捕捉ゾーン]
キャピラリトラップは複数の第2の捕捉ゾーンを含むことができ、ステップ(ii)は、第2の捕捉ゾーン当たり1つの第2のマイクロドロップを捕捉することからなり、第1および第2の捕捉ゾーンは、第2のマイクロドロップの各々が第1または第2のマイクロドロップの少なくとも1つと接触するように配置される。
【0037】
キャピラリトラップは複数の第1の捕捉ゾーンを含むことができ、ステップ(i)は、第1の捕捉ゾーン当たり1つの第1のマイクロドロップを捕捉することからなり、第1および第2の捕捉ゾーンは、第1のマイクロドロップの各々が第2のマイクロドロップまたは第1のマイクロドロップの少なくとも1つと接触するように配置される。
【0038】
好ましくは、各第2のマイクロドロップは、第1のマイクロドロップまたはそれらの各々に結合されている。
「結合されている」とは、各第2のマイクロドロップが、前記第1のマイクロドロップと直接接触しているか、または前記第1のマイクロドロップとそれ自体が接触している別の第2のマイクロドロップもしくは一連の第2および/または第1のマイクロドロップと接触していることを意味する。
【0039】
「一連のマイクロドロップ」とは、互いに接して直線または曲線を形成している複数のマイクロドロップを意味する。
第2のマイクロドロップは全て、前記キャピラリトラップに捕捉された少なくとも1つの第1のマイクロドロップと接触していてもよい。
【0040】
少なくとも2つの第2の捕捉ゾーンは、それらが前記第2の液体マイクロドロップの1つに及ぼす捕捉力が異なるように構成され得る。少なくとも2つの第2の捕捉ゾーンによって捕捉される第2のマイクロドロップは、それらの特性の少なくとも1つ、特にそれらの最大寸法に関して異なり得る。
変形例として、キャピラリトラップの全ての第2の捕捉ゾーンは同一である。
【0041】
[複数のキャピラリトラップ]
マイクロ流体システムは、各々が第1の捕捉ゾーンと第2の捕捉ゾーンとを含む複数のキャピラリトラップを備えてよく、ステップ(i)は、各キャピラリトラップの第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉することからなり、ステップ(ii)は、各キャピラリトラップの第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉することからなり、複数のキャピラリトラップの各キャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、前記キャピラリトラップに捕捉された第1および第2のマイクロドロップが互いに接触するように配置される。
各キャピラリトラップは、上述の特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0042】
マイクロ流体システムのすべてのトラップは、それぞれ、前記キャピラリトラップに捕捉された第1および第2のマイクロドロップが互いに接触するように配置された第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを含み得る。
【0043】
変形例として、マイクロ流体システムのキャピラリトラップのうちのいくつかだけが、それぞれ、前記キャピラリトラップに捕捉された第1および第2のマイクロドロップが互いに接触するように配置された第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを含む。
【0044】
本方法は、第1または第2の捕捉ゾーンのうちの1つにガス、特に空気のマイクロバブルを捕捉することからなるステップを含み得る。これにより、その捕捉ゾーンを休止状態にすることができる。実際、ガスのマイクロバブルの存在により、第1または第2のマイクロドロップはその捕捉ゾーンに捕捉されない。
【0045】
[流体の配向された流れ]
ステップ(ii)は、第1の方向を有する流体の流れの影響下で、第2の捕捉ゾーンのうちの1つまたはいくつかに第2のマイクロドロップを捕捉することからなるサブステップ(ii’)と、第2の方向を有する流体の流れの影響下で、第2の捕捉ゾーンの別の1つまたはいくつかに第2のマイクロドロップを捕捉することからなるサブステップ(ii’’)とを含み得、第1および第2の流体の流れは異なる方向である。
【0046】
ステップ(ii’)および(ii’’)の第2のマイクロドロップは、特にそれらの特性および/または内容物のうちの少なくとも1つによって異なり得る。ステップ(ii’)および(ii’’)の第2の捕捉ゾーンは同一であり得る。
【0047】
したがって、流体の流れの方向を選択することによって、2つの捕捉ゾーンのうちの1つに選択的にマイクロドロップを捕捉することが可能であり、これにより、互いに接触するマイクロドロップの所定の空間的配置が可能になる。次いで、特にコンビナトリアルケミストリの文脈において、第1のマイクロドロップを、制御された方法で、別々の第2のマイクロドロップと接触させることが可能である。ゲルを含むマイクロドロップでは、融合後に制御された形状および組成のマイクロドロップが得られるように、キャピラリトラップ内のゲルマイクロドロップの空間的配置を制御することも可能である。
【0048】
[融合]
本方法は、第1のマイクロドロップと、第2の捕捉ゾーンまたはそれらの各々に捕捉された第2のマイクロドロップまたはそれらの各々とを融合することからなるステップ(iii)を含み得る。このような融合は、特に、2つのマイクロドロップの内容物を混合することを可能にする。
【0049】
前記融合は選択的であってよく、すなわち、例えば、参照により内容が組み込まれる非特許文献7に記載されているような赤外線レーザ、キャピラリトラップのレベルに配置されたアドレス可能な電極、または機械波を使用することによって、後者と融合させたい第1のマイクロドロップと接触している1つまたは複数の第2のマイクロドロップを選択することができる。
【0050】
変形例として、マイクロドロップの融合は非選択的であり、すなわち、特にこの融合を促進する製品をキャピラリトラップの環境に加えること、または、機械波、圧力波、温度変化もしくは電場などの外部の物理的刺激の印加によって、キャピラリトラップの第2のマイクロドロップの全てが第1のマイクロドロップと同時に融合する。
【0051】
[第2のマイクロドロップの解放]
変形例として、ステップ(iii)は、キャピラリトラップの外側の第2の捕捉ゾーンに捕捉された1つまたは少なくとも1つの第2のマイクロドロップを移動させることからなる。ステップ(iii’)は、1つまたは複数の第2のマイクロドロップに、第2の捕捉ゾーンの捕捉力よりも大きい連行力を及ぼすように構成された流体の方向を有する流れを印加することからなり得、前記流体の流れは、1つまたは複数の第1のマイクロドロップに第1の捕捉ゾーンの捕捉力と同等またはそれ未満の連行力を及ぼすように構成されているため、1つまたは複数の第1のマイクロドロップは第1の捕捉ゾーンに捕捉されたままである。
【0052】
このステップでは、第2の捕捉ゾーンから1つまたは複数の第2のマイクロドロップを移動させることが可能であり、キャピラリトラップは、その向きにより、流体の流れが第2の捕捉ゾーンに異なる連行力を及ぼすように構成され、この方法は、少なくとも1つの他の捕捉ゾーンから少なくとも1つまたは複数の第2のマイクロドロップを移動させるように流体の流れの方向を変更することからなるステップ(iv)を含むことが好ましい。これは第2のマイクロドロップの選択的解放を可能にする。したがって、特に第1のマイクロドロップと1つまたは複数の第2のマイクロドロップとの間の相互作用のために、1つまたは複数の第2のマイクロドロップに変更、例えば内容物の変更が施され、次いで分析のために解放されるように十分な定義された時間にわたって、第1のマイクロドロップおよび1つまたは複数の第2のマイクロドロップは互いに接触され得る。これにより、マイクロドロップの融合の前にプロトコルのエラーが発生した場合に、第2のマイクロドロップを他の第2のマイクロドロップに変更することが可能となる。
【0053】
[第3のマイクロドロップ]
この方法は、ステップ(iii)または(iii’)の後に、第1および第3のマイクロドロップが互いに接触するように、第2のマイクロドロップをもはや有しない1つまたは複数の第2の捕捉ゾーンに第3のマイクロドロップを捕捉することからなるステップ(v)を含み得る。第3のマイクロドロップは、第2のマイクロドロップと同一でも異なっていてもよい。第2のマイクロドロップについて上述したように、第3のマイクロドロップは、第1の捕捉ゾーン内に捕捉されたマイクロドロップと融合されるかまたは解放され得る。ステップ(vi)は数回繰り返されてもよい。これにより、例えば以下のことが可能となる。
‐第1または第2のマイクロドロップの内容物を順に希釈する、
‐第1の捕捉ゾーンに捕捉された1つまたは複数の第1のマイクロドロップの内容物に追加の試薬を供給する、
‐第1の捕捉ゾーンに捕捉された細胞を含む1つまたは複数の第1のマイクロドロップの培地を数回更新する、
‐病原体または病気の細胞を含む1つまたは複数の第1のマイクロドロップに、所与の時間間隔で、医薬品を供給して治療のための薬量を評価する、または、
‐いくつかの細胞層を有する微小組織を形成するために、細胞を数回供給する。
【0054】
[キャピラリトラップの解放]
本方法は、特に、マイクロドロップに及ぼされる捕捉力よりも大きい連行力を及ぼす流体の流れを用いて、キャピラリトラップ内に存在する全てのマイクロドロップをキャピラリトラップの外側に移動させることからなるステップ(vi)を含み得る。このようなステップはマイクロドロップを分析のために解放することを可能にする。
本方法は、マイクロ流体システムの状態を測定することからなるステップを含み得る。この測定は、ドロップの融合および/または解放の前および/または後に実行され得る。
【0055】
好ましくは、得られた1つまたは複数の最終的なマイクロドロップは、それらの内容物を識別する手段、特に多数のビーズもしくは粒子の存在による、多様な色もしくは形状の存在による、および/または第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップの1つに含まれる化合物の初期濃度に比例する比色もしくは蛍光シグナルによる標識を含み得る。
上記の方法は、以下に記載されるマイクロ流体システムを用いて実施され得る。
【0056】
[追加のステップ]
本方法は、以下の追加のステップを含み得る:
‐インキュベーション、および/または
‐特にイメージング、比色法、蛍光法、分光法(UV、ラマン)または温度測定による観察または測定。
【0057】
これらのステップは、マイクロドロップの融合の前および/または後に実施され得る。
観察または測定のステップは、融合の前および/または後に各マイクロドロップの内容物を決定すること、および例えば融合の後に生じた変化を決定することを可能にし得る。
観察ステップは、例えば、融合の前に様々なマイクロドロップをマッピングするために異なるマイクロドロップのライブラリを使用することに関して特に有用である。
【0058】
<II.マイクロ流体装置>
本発明はまた、特に、特許請求の範囲に記載の方法を実施するためにマイクロドロップを捕捉するためのマイクロ流体装置に関し、該装置は、第1の捕捉ゾーン内に捕捉された第1のマイクロドロップと第2の捕捉ゾーン内に捕捉された第2のマイクロドロップとがキャピラリトラップ内で互いに接触するように配置された第1の捕捉ゾーンと第2の捕捉ゾーンとを有するキャピラリトラップを含み、第1の捕捉ゾーンによって、および第2の捕捉ゾーンによって、同一の第1または第2の液体マイクロドロップに及ぼされ得る捕捉力が異なり得るように第1および第2の捕捉ゾーンが構成されている。
【0059】
1つのマイクロドロップに加えられる捕捉力が異なる2つのゾーンをキャピラリトラップが有するという事実は、特に第1のマイクロドロップが第2の捕捉ゾーンを占有して第2のマイクロドロップが第2の捕捉ゾーンに捕捉されることを妨げることを避けるために、捕捉されたマイクロドロップの選択性およびマイクロドロップの空間的に事前定義された方法での両方の捕捉を有することを可能にする。これは、マイクロ流体システムに複数の第1および第2のマイクロドロップが導入されたときに特に当てはまる。
第1および第2のマイクロドロップが接触していることにより、それらが相互作用することまたは容易に融合することを可能にする。
【0060】
[捕捉ゾーン]
第1および第2の捕捉ゾーンは好ましくは空洞である。空洞の形態の捕捉ゾーンの使用は、マイクロドロップの操作、特にそれらを捕捉および/または解放することを容易にする。
第1および第2の捕捉ゾーンは分離されていてよい。
変形例として、第1および第2の捕捉ゾーンは結合されている。
【0061】
キャピラリトラップは、上から見たときに回転対称性を欠くことが好ましい。この異方性により、空間的に事前定義された方法でマイクロドロップを捕捉することが可能となる。
好ましくは、第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンは、上から見たときに並んで配置されている。
【0062】
第1および第2の捕捉ゾーンは、それらの寸法の少なくとも1つが異なることが好ましい。特に、第1および第2の捕捉ゾーンは異なる高さを有し、特に第1の捕捉ゾーンは第2の捕捉ゾーンよりも高く、または第1および第2の捕捉ゾーンは上から見たときに異なる形状であり、特に第1の捕捉ゾーンは第2の捕捉ゾーンよりも大きな断面を有する。捕捉力の差は、捕捉ゾーンのサイズ、特に上から見たときの高さまたは断面と少なくとも部分的に関連する。
「捕捉ゾーンの高さ」とは、断面におけるマイクロ流体システムの捕捉ゾーンの平均高さを意味する。
【0063】
第2の捕捉ゾーンは、第1の捕捉ゾーンに近づく少なくとも一方向において広がり得る。これにより、第2のマイクロドロップを第1のマイクロドロップの方向に案内して接触させ続けることが可能になる。実際には、その表面エネルギーを最小にするために、第2のマイクロドロップは、第2の捕捉ゾーンに沿ってより大きな寸法を有するゾーンに向かって移動する傾向にある。
【0064】
上から見たときに、第2の捕捉ゾーンは第1の捕捉ゾーンに近づくにつれて広くなり得る。好ましくは、発散角αは、第2のマイクロドロップがそれを画定する2つの対向する壁と常に接触しているような角度である。第2の捕捉ゾーンは、ゼロではない発散角α、特に10°から120°の間で広がり得る。第2の捕捉ゾーンは、ほぼ三角形または切頭三角形の形状を有し得る。
【0065】
第2の捕捉ゾーンは、第1の捕捉ゾーンの方向に増加する高さを有し得る。
好ましくは、第2の捕捉ゾーンの高さは、第1の捕捉ゾーンの最大寸法と同等またはそれ未満、より好ましくは第1の捕捉ゾーンの最大寸法の半分と同等またはそれ未満である。第2の捕捉ゾーンの高さが制限されていることによって、第2のマイクロドロップが捕捉されるのを妨げるまで第2の捕捉ゾーンによって流体の動線が乱されるのを回避することを可能にする。
【0066】
第1の捕捉ゾーンの高さは、第1の捕捉ゾーンの体積が第1のマイクロドロップの体積と同等またはそれより大きくなるようなものであり得る。これは、高い捕捉力を有する第1の捕捉ゾーンを有することを可能にし、この場合、第1のマイクロドロップは、特に凹状の下部界面を有するようにわずかに変形し、沈降後に封止された要素を接触させて例えば細胞のクラスタを形成してスフェロイドを形成することを促進し得る。
【0067】
[複数の第2および/または第1の捕捉ゾーン]
キャピラリトラップは、捕捉された各第2のマイクロドロップが、キャピラリトラップ内に捕捉された第1または第2のマイクロドロップの少なくとも1つと接触するように配置された複数の第2の捕捉ゾーンを含み得る。
【0068】
キャピラリトラップは、捕捉された各第1のマイクロドロップが、キャピラリトラップ内に捕捉された1つもしくは複数の第2のマイクロドロップまたは第1のマイクロドロップの少なくとも1つと接触するように配置された複数の第1の捕捉ゾーンを含み得る。
【0069】
好ましくは、第1および第2の捕捉ゾーンは、各第2のマイクロドロップが第1のマイクロドロップの1つまたはそれらの各々と結合されるように配置される。
第1および第2の捕捉ゾーンは、第2のマイクロドロップがすべて前記キャピラリトラップ内に捕捉された少なくとも1つの第1のマイクロドロップと接触するように配置されてもよい。
【0070】
少なくとも2つの第2または第1の捕捉ゾーンは、それらが第2の液体マイクロドロップの1つに及ぼす捕捉力が異なるように構成されてもよい。少なくとも2つの第2の捕捉ゾーンによって捕捉された第2のマイクロドロップは、それらの特性の少なくとも1つ、特にそれらの最大寸法に関して異なり得る。
変形例として、キャピラリトラップのすべての第2の捕捉ゾーンは同一である。
【0071】
[複数のキャピラリトラップ]
好ましくは、本装置は、好ましくはキャピラリトラップの第2の捕捉ゾーンに捕捉された第2のマイクロドロップが前記キャピラリトラップの第1の捕捉ゾーンに捕捉された第1のマイクロドロップと接触するように配置された第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンをそれぞれ含む複数のキャピラリトラップを備える。
【0072】
各キャピラリトラップは、上述の特徴のうちの1つ以上を含み得る。
装置のすべてのキャピラリトラップは、それぞれが少なくとも1つの第1の捕捉ゾーンと少なくとも1つの第2の捕捉ゾーンとを含み得る。
【0073】
変形例として、いくつかのキャピラリトラップは、それぞれが少なくとも1つの第1の捕捉ゾーンと少なくとも1つの第2の捕捉ゾーンとを含み、いくつかのキャピラリトラップは単一の捕捉ゾーンのみを含み、単一の第1のマイクロドロップを捕捉することを可能にする。単一の捕捉ゾーンを含むこれらのキャピラリトラップは、実験の間に対照として機能し得る。
【0074】
装置は、1平方センチメートル当たり少なくとも10個のキャピラリトラップ、より好ましくは1平方センチメートル当たり少なくとも100個のキャピラリトラップを備え得る。多数のキャピラリトラップは、特にがん治療の場合、コンビナトリアルケミストリを行うこと、医薬品のスクリーニングを行うこと、タンパク質結晶化を研究すること、化学種の滴定を行うこと、または特にがん治療の場合に治療を個別化することを可能にする。
【0075】
少なくとも2つのキャピラリトラップは異なってもよい。例えば、本装置は、n個の第2の捕捉ゾーンを含む第1のキャピラリトラップと、p個の第2の捕捉ゾーンを含む第2のキャピラリトラップとを備え、nは、pとは異なる。この種のキャピラリトラップは、第2のマイクロドロップと第1のマイクロドロップとの融合後に、異なる濃度および/またはサイズのドロップを有する第1の捕捉ゾーンに捕捉されたマイクロドロップを提供することができる。マイクロ流体システムは、いくつかの濃度および/またはサイズのマイクロドロップ、特に濃度および/またはサイズの勾配を有するマイクロドロップを生成するために、異なる量の第2の捕捉ゾーンを有する2つより多くのキャピラリトラップを有し得る。異なる濃度を有する得られたマイクロドロップは、タンパク質結晶化の研究、化学種の滴定の実施、または特に癌の場合の治療の個別化のためのコンビナトリアルケミストリの分野で有用なマイクロドロップのパネルを形成することができる。
【0076】
変形例として、キャピラリトラップは全て同一である。
本装置は、捕捉チャンバを有するチャネルを備えてもよく、1つまたは複数のキャピラリトラップは捕捉チャンバ内にある。
【0077】
<III.第2の態様‐操作方法>
第2の態様によれば、本発明は、少なくとも2つの異なる方向に分配された複数のキャピラリトラップを含む捕捉チャンバを有するチャネルを備えるマイクロ流体システム内の複数の第1のマイクロドロップおよび複数の第2のマイクロドロップを操作する方法に関し、各キャピラリトラップは第1の捕捉ゾーンと第2の捕捉ゾーンとを有し、前記方法は、
(i)各キャピラリトラップの第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)各キャピラリトラップの第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップと、
かなるステップを含み、1つの同じキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップがキャピラリトラップ内で互いに接触するように配置され、キャピラリトラップはそれぞれが異方性形状を有する。
【0078】
キャピラリトラップが複数存在することにより、同時に第1および第2のマイクロドロップの複数の対を形成することが可能になる。別々の対の第1および第2のマイクロドロップは、異なっても同一であってもよい。
キャピラリトラップが異方性であることにより、マイクロドロップが捕捉ゾーンによって捕捉されると、マイクロドロップは予め定められた空間的位置を有することが可能となる。
【0079】
好ましくは、各キャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼし得る捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
【0080】
本方法は、少なくとも2つの異なる方向に分配された複数のキャピラリトラップを含む捕捉チャンバを有するチャンネルを備えるマイクロドロップを捕捉するためのマイクロ流体システムを使用して実施することができ、各キャピラリトラップは、同じキャピラリトラップの第1の捕捉ゾーンに捕捉された第1のマイクロドロップおよび第2の捕捉ゾーンに捕捉された第2のマイクロドロップが互いに接触するように配置された第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを有し、キャピラリトラップはそれぞれ異方性形状を有する。
【0081】
好ましくは、各キャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼし得る捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様によるマイクロ流体システムに関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様によるマイクロ流体システムに適用することができる。
【0082】
<IV.第3の態様‐操作方法>
第3の態様によれば、本発明はまた、第1の捕捉ゾーンと第2の捕捉ゾーンとを有するキャピラリトラップを備えるマイクロ流体システムにおける少なくとも1つの第1のマイクロドロップおよび少なくとも1つの第2のマイクロドロップを操作する方法に関し、第2の捕捉ゾーンは第1の捕捉ゾーンに近づくにつれて少なくとも1つの寸法が広くなり、前記方法は、
(i)第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップと、
からなるステップを含み、
1つの同じキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップがキャピラリトラップ内で互いに接触するように配置されている。
【0083】
第2の捕捉ゾーンが第1の捕捉ゾーンに近づくにつれて少なくとも1つの寸法において広がることにより、捕捉する間に第2のマイクロドロップを第1のマイクロドロップに向けて案内し、第1のマイクロドロップと接触させ続けることを可能にする。実際には、その表面エネルギーを最小にするために、第2のマイクロドロップは、第2の捕捉ゾーンに沿ってより大きな寸法を有するゾーンに向かって移動する傾向がある。
【0084】
第2の捕捉ゾーンは、好ましくは、第1の捕捉ゾーンに近づくにつれて、上から見てより広くなる。
第2の捕捉ゾーンは、10°から120°の間の発散角αで広がり得る。
第2の捕捉ゾーンは、第1の捕捉ゾーンの方向に増加する高さを有し得る。
【0085】
好ましくは、第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼし得る捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
【0086】
本方法は、同じキャピラリトラップの第1の捕捉ゾーンに捕捉された第1のマイクロドロップおよび第2の捕捉ゾーンに捕捉された第2のマイクロドロップが互いに接触するように配置され、第2の捕捉ゾーンが第1の捕捉ゾーンに近づくにつれて少なくとも1つの寸法において広がっている第1の捕捉ゾーンと第2の捕捉ゾーンとを有するキャピラリトラップを備えるマイクロドロップを捕捉するためのマイクロ流体システムを用いて実施することができる。
【0087】
好ましくは、第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼし得る捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様によるマイクロ流体システムに関連して上述した1つ以上の特徴は、本発明のこの態様によるマイクロ流体システムに適用することができる。
【0088】
<V.第4の態様‐細胞アセンブリ方法>
第4の態様によれば、本発明はまた、第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを有するキャピラリトラップを備えるマイクロ流体システムにおける第1の細胞を含む少なくとも1つの第1のマイクロドロップおよび第2の細胞を含む少なくとも1つの第2のマイクロドロップの細胞アセンブリ方法に関し、前記方法は、
(i)第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、1つの同じキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップがキャピラリトラップ内で互いに接触するように配置されている、ステップと、
(iii)第1のマイクロドロップと第2のマイクロドロップを融合させて第1および第2の細胞の接着による微小組織を形成するステップと、
からなるステップを含む。
【0089】
そのような方法は、インビボで遭遇する条件を非常に忠実に模倣するため、制御された構成を用いてインビトロで微小組織を作製することを可能にし得る。実際、体内では、器官のレベルでの機能の再形成を最適に再現することが重要であるという特定のアーキテクチャに従って、異なる細胞型がしばしば組織内に配置されている。制御された構成を有するこの三次元培養は、患者への移植を目的として使用され得る。例えば、グルカゴン産生アルファ細胞およびインスリン産生ベータ細胞を培養して、糖尿病を治療するために患者の膵臓に移植することができるランゲルハンス島を作り出すことが可能である。同様に、肝細胞および星状細胞は、肝移植の状況において組み合わせることができる。
【0090】
ステップ(ii)は、第1の細胞の凝集後、特に第1の細胞同士の接着によって形成される第1のスフェロイドの形成後に実施することができる。第1のスフェロイドを含む第1のマイクロドロップが液体である場合、2つのマイクロドロップの融合後、第2の細胞は第1のマイクロドロップの内容物と混合され、その後沈降して第1のスフェロイドが直接得られる。第2の細胞が第2のスフェロイドを形成する時間がある前にステップ(iii)が行われる場合、それらは最初に第1のマイクロドロップにおいて第1のスフェロイドの表面上に沈降した後に堆積され得る。
【0091】
ステップ(iii)は、第2の細胞の凝集後、特に第2の細胞の接着によって形成される第2のスフェロイドの形成後に実施され得る。したがって、第1および第2のスフェロイドは互いに融合され得る。
従って得られた微小組織の構成は実験条件に依存する。
【0092】
本方法は、第1のマイクロドロップのゲル化の追加のステップを含んでもよく、前記ステップはステップ(iii)の前、好ましくはステップ(ii)の前に行われる。これにより、細胞を区画化することが可能になる。実際、スフェロイドを含む第1のマイクロドロップが、第2のマイクロドロップの到着前にゲル化された場合、含まれる第2の細胞は、融合後、第1のスフェロイドと直接接触することができなくなる。例えば哺乳動物細胞は、0.9重量%のアガロースマトリックスを通過することができない。第1および第2の細胞は、パラクリン経路によってのみ互いに通じることができる。
【0093】
第1および第2の細胞は異なる細胞型であり得る。
好ましくは、第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼす捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
本方法は、前述の態様によるマイクロ流体システムの1つを使用して実行され得る。
【0094】
<VI.第5の態様‐細胞培養方法>
第5の態様によれば、本発明はまた、細胞培養物を含有する少なくとも1つの第1のマイクロドロップおよび培養培地を含有する少なくとも1つの第2のマイクロドロップのマイクロ流体システムにおける細胞培養の方法に関し、マイクロ流体システムは、第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを有するキャピラリトラップを備え、前記培養方法は、
(i)第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップがキャピラリトラップ内で互いに接触するように、1つの同じキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンが配置されている、ステップと、
(iii)第1のマイクロドロップを第2のマイクロドロップと融合させて、第1のマイクロドロップで行われた細胞培養の培地を更新するステップと、
からなるステップを含む。
【0095】
例えば第1のマイクロドロップで細胞を培養することを可能にするために、培地の逐次注入によって数回更新することが可能となる。
第2のマイクロドロップは、医薬品の投与の断続的な性質をモデル化するために試験されるべき活性成分を含み得る。例えば、哺乳動物細胞のスフェロイドを含有するドロップは、試験されるべき活性成分、特に医薬品を含有するマイクロドロップと6時間毎に融合され得る。
【0096】
この方法は、ステップ(iii)の後に、ステップ(ii)および(iii)を繰り返すことからなるステップ(iv)を含み、第1のマイクロドロップで行われた細胞培養物の培地がさらに更新される。
好ましくは、第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼす捕捉力が異なるように構成される。
【0097】
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
本方法は、前述の態様によるマイクロ流体システムの1つを使用して実行され得る。
【0098】
<VII.第6の態様‐ゲル化マイクロドロップの形成方法>
第6の態様によれば、本発明は、第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを有するキャピラリトラップを備えるマイクロ流体システムにおいて、液体形態である第2のゲル化培地の少なくとも1つの第2のマイクロドロップおよび第1のゲル化培地の少なくとも1つの第1のマイクロドロップの多層ゲル化マイクロドロップを形成する方法に関し、前記方法は、
(i)第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)第1の捕捉ゾーンにおいて第1のゲル化培地をゲル化するステップと、
(iii)第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、1つの同じキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップがキャピラリトラップ内で互いに接触するように配置されている、ステップと、
(iv)第1のマイクロドロップと第2のマイクロドロップを融合するステップと、
からなるステップを含む。
【0099】
これにより、可変の形状および/または機械的性質、例えば多孔性および/または剛性、および/または化学的性質、例えば組成および/または濃度を有する複雑なゲルマイクロドロップを形成することが可能となる。
本方法は、ステップ(iv)の前または後に行われ、第2のゲル化培地をゲル化することからなるステップ(v)を含み得る。
【0100】
ステップ(v)がステップ(iv)の後に行われる場合、ゲル化は、第1のマイクロドロップ上に第2のゲルの外層を形成することが可能となる。これにより、半径方向に可変の機械的性質および/または化学的性質を有する複雑なゲルマイクロドロップを形成することが可能になる。これらのゲルのマイクロドロップは、その分化がゲルの剛性によって制御される幹細胞と共に使用することができる。異なる細胞型を含む異なるヒドロゲルの層を有するゲルのマイクロドロップはまた、美容試験において皮膚の異なる層をモデル化することを可能にし得る。コラーゲンコアおよび十分に小さい孔を有するアガロース外層を有するマイクロドロップは、ニューロンのスフェロイドを作製するために使用され得、その軸索投射のみが外層の孔を介して抽出され得る。
【0101】
ステップ(v)がステップ(iv)の前に行われる場合、第2のゲル化培地は第2の捕捉ゾーンにおいてゲル化される。これにより、半径方向に可変の形状、および/または機械的および/または化学的性質を有する複雑なゲルマイクロドロップを形成することが可能になる。形成されたマイクロドロップはその後、融合前の第1および第2のマイクロドロップの形状および配置を維持する。したがって、異なる捕捉ゾーンの配置、形状、および数によって、最終的なマイクロドロップの形状を直接制御することが可能になる。この種のマイクロドロップは複雑な形状をモデル化することを可能にする。マイクロドロップの制御された形状は、マイクロドロップの識別子としても役立ち得る。
【0102】
ステップ(v)は、第2の捕捉ゾーンに捕捉するステップ(iii)の前または後に行われてもよい。
ステップ(ii)は、第1の捕捉ゾーンに捕捉するステップ(i)の前または後に行われてもよい。
【0103】
本方法は、好ましくは、ステップ(iii)から(v)を繰り返すことからなるステップ(vi)を含む。
第1および第2のゲル化培地は異なってもよい。
好ましくは、第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼし得る捕捉力が異なるように構成される。
【0104】
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
本方法は、前述の態様によるマイクロ流体システムの1つを使用して実行され得る。
【0105】
<VIII.第7の態様‐細胞封入方法>
第7の態様によれば、本発明はまた、第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを有するキャピラリトラップを備えるマイクロ流体システム内に少なくとも1つの第1のマイクロドロップおよび少なくとも1つの第2のマイクロドロップを封入する方法に関し、第1のマイクロドロップおよび第2のマイクロドロップの一方はゲル化培地を含み、他方は複数の細胞を含む。前記方法は、
(i)第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第1のマイクロドロップと第2のマイクロドロップがキャピラリトラップ内で互いに接触するように、1つの同じキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンが配置されている、ステップと、
(iii)第1のマイクロドロップを第2のマイクロドロップと融合するステップと、
(iv)ゲル中に複数の細胞を封入するためにゲル化培地をゲル化するステップと、
からなるステップを含む。
【0106】
この方法は、生物ヒドロゲル中に封入されたスフェロイドを得ることを特に可能にする。実際、制御された方法でマイクロドロップ中にスフェロイドを形成することができるようにするためには、スフェロイドを形成する間に液滴の内容物を保持することが可能でなければならない。アガロースは感熱性ヒドロゲルであるため、このプロトコルに非常に適している。アガロースは37℃で液体であり、そして次に4℃で30分後に凝固し、そして37℃に戻した後に凝固状態を維持する。しかしながら、哺乳動物細胞はアガロースに付着することができず、そしてそれを消化することもできない。したがって、このマトリックスは体内で遭遇する細胞外マトリックスとは大きく異なる。例えばI型コラーゲン、フィブロネクチン、Matrigel(登録商標)またはゼラチンなどのヒドロゲルの使用は、自然条件のより良好なシミュレーションのためには好ましいかもしれない。しかしながら、それらのゲル化を制御することはより困難である。例えば、I型コラーゲンは、細胞培養にとって好ましい条件(低温または酸性pH)では長時間液体に保つことができない。細胞が互いに接着してスフェロイドを形成するのではなく、細胞を捕捉した後に急速にゲル化されるコラーゲンのドロップに細胞が封入されている場合、細胞はコラーゲンに接着してその繊維に沿って個々に移動する。
【0107】
この問題は、前述の方法によって解決することができる。実際に、細胞は、スフェロイドを形成するように、第1の捕捉ゾーン内の第1の液体マイクロドロップに封入され得る。次いで、第2のマイクロドロップが供給されてもよく、これは第2の捕捉ゾーンに留まり、そして特に高濃度で上記の生物ヒドロゲルの1つを含む。これらの第2のマイクロドロップが捕捉されると、接触している第1および第2のマイクロドロップは直ちに融合され、依然として液体である生物ヒドロゲルはスフェロイドを含む第1のマイクロドロップと混合される。次いでゲル化が起こり、それによって、スフェロイドをインビボで遭遇する生物学的状態を表す細胞外マトリックス中にスフェロイドが封入される。
【0108】
ステップ(ii)は、第1の細胞の凝集後、特に第1の細胞同士の接着によって形成されたスフェロイドの形成後に実施されてもよい。
好ましくは、第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼす捕捉力が異なるように構成される。
【0109】
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
方法は、前述の態様によるマイクロ流体システムの1つを使用して実行され得る。
【0110】
<IX.第8の態様‐希釈方法>
第8の態様によれば、本発明はまた、第1の捕捉ゾーンおよびn個の第2の捕捉ゾーンを含む第1のキャピラリトラップと、第1の捕捉ゾーンおよびp個の第2の捕捉ゾーンを含む第2のキャピラリトラップとを備えるマイクロ流体システムにおける対象化合物の希釈方法に関する。nはpとは異なり、前記方法は、
(i)各第1の捕捉ゾーンに対象化合物を含む第1のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第1のマイクロドロップが同じ濃度の対象化合物を有する、ステップと、
(ii)各第2の捕捉ゾーンに希釈化合物の第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、1つのキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、各第2のマイクロドロップが同じ第1または第2のキャピラリトラップの第1または第2のマイクロドロップの少なくとも1つと接触し、それにより第1および第2のキャピラリトラップの各々において、少なくとも1つの第2のマイクロドロップが同じ第1または第2のキャピラリトラップの第1のマイクロドロップと接触するように配置されている、ステップと、
(iii)第1および第2のキャピラリトラップにおいて異なる濃度のマイクロドロップを得るために、互いに接触している第1および第2のマイクロドロップを融合させるステップと、
からなるステップを含む。
【0111】
第1のドロップが一定の濃度で対象化合物を含む場合、濃度の空間勾配は、例えば希釈剤を含み得る第2のマイクロドロップとの融合後に得られ得る。このような方法では、同じ濃度のマイクロドロップから始めて、制御された異なる濃度のマイクロドロップのパネルを得ることが可能であり得る。これは、例えば、コンビナトリアルケミストリ、タンパク質結晶化の調査、化学種の滴定のためのその後の方法、または特にがんの場合の治療の個別化における応用のための異なる濃度のマイクロドロップのパネルを形成するために有利であり得る。
【0112】
好ましくは、各キャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼす捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
【0113】
この方法は、第1の捕捉ゾーンおよびn個の第2の捕捉ゾーンを含む第1のキャピラリトラップと、第1の捕捉ゾーンおよびp個の第2の捕捉ゾーンを含む第2のキャピラリトラップとを備える、マイクロドロップの希釈のためにマイクロ流体システムによって使用され得る。マイクロ流体システムにおいて、nはpとは異なり、第1および第2のキャピラリトラップは、第2の捕捉ゾーンのそれぞれに捕捉された第2のマイクロドロップが、第1および第2のキャピラリトラップ内の対応する第1の捕捉ゾーンに捕捉された第1のマイクロドロップと接触するように構成される。
【0114】
好ましくは、各キャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼす捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様によるマイクロ流体システムに関連して上述した1つ以上の特徴は、本発明のこの態様によるマイクロ流体システムに適用することができる。
【0115】
<X.第9の態様‐スクリーニング方法>
第9の態様によれば、本発明はまた、複数のキャピラリトラップを備えるマイクロ流体システムにおいて、複数の第1のマイクロドロップを複数の第2のマイクロドロップとスクリーニングする方法に関し、各キャピラリトラップが第1の捕捉ゾーンおよび第2の捕捉ゾーンを有し、第1のマイクロドロップが、同一であるかまたは少なくともyが異なる第1のマイクロドロップのパネルを形成し、第2のマイクロドロップが、少なくともzが異なる第2のマイクロドロップのパネルを形成し、前記方法は、
(i)各第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップと、
(ii)各第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、各キャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンが、前記キャピラリトラップ内に捕捉された第1および第2のマイクロドロップがそこで互いに接触するように配置されている、ステップと、
(iii)マイクロ流体システムにおいて、第1および第2のマイクロドロップの異なる可能な組み合わせのうちの1つの組み合わせにそれぞれ対応するマイクロドロップのパネルを得るために、各第1のマイクロドロップを接触している第2のマイクロドロップを融合させるステップと、
からなるステップを含む。
【0116】
このような方法は、単一のマイクロ流体システムにおける多数の反応条件の迅速なスクリーニングを可能にする。
マイクロドロップが反応の間に静的であるため、動的データを得ることがより容易になる。非常に少量のマイクロドロップの使用による化合物の経済的利点もある。
【0117】
第1のマイクロドロップのパネルは、少なくともそれらの含有量、特に対象の第1の化合物の濃度において異なるマイクロドロップを含んでもよい。
第2のマイクロドロップのパネルは、少なくともそれらの含有量、特に対象の第2の化合物の濃度において異なるマイクロドロップを含んでもよい。
【0118】
第1または第2のマイクロドロップは、本発明の第9の態様による方法によって得ることができる。
第1および第2の化合物は、互いに反応し、その初期濃度を最適化することが望ましい化合物であり得る。したがって、最良の結果を与える化合物の初期濃度を決定するために、少量で並行していくつかの反応を実施することが可能であろう。
【0119】
好ましくは、本方法は、ステップ(iii)の前に、観察または測定、特にイメージング、比色分析、蛍光測定、分光測定(UV、ラマン)または温度測定による追加のステップ(iv)を含む。そのようなステップは、異なるマイクロドロップの配置をマッピングすることを可能にする。
【0120】
好ましくは、本方法は、ステップ(iii)の後に、観察または測定、特にイメージング、比色測定、蛍光測定、分光測定(UV、ラマン)または温度測定による追加のステップ(v)を含む。
【0121】
変形例として、第1のマイクロドロップのパネルはタンパク質を含み、第1のマイクロドロップは同一のものであり、そして第2のマイクロドロップのパネルはタンパク質結晶化を可能にする異なる濃度の溶液、特に食塩水を含む。本方法は、結晶化溶液の濃度によるタンパク質結晶化を研究することを可能にし得る。実際、最適な結晶化条件はタンパク質ごとに異なる。
【0122】
更なる変形例として、第1のマイクロドロップのパネルは化合物を含み、第1のマイクロドロップは同一であり、第2のマイクロドロップのパネルは異なる濃度の滴定種を含む。この応用は、高価であるかまたは少量入手可能である試薬のアッセイの場合に特に有利であり得る。
さらなる変形例として、第1のマイクロドロップのパネルは1つまたは複数の細胞を含み、第2のマイクロドロップはそれぞれ規定濃度でスクリーニングされる医薬品を含む。
【0123】
同様の構成で、肝細胞は第1のマイクロドロップでスフェロイドの形態で培養され、毒性を評価すべき医薬品を異なる濃度で含む第2のマイクロドロップが第2の捕捉ゾーンの各々に供給される。
マイクロドロップの融合から数日後の生存率の結果を分析することによって、細胞集団の半分を殺傷する濃度を決定することが可能である。
【0124】
本方法はまた、異なる抗生物質間の相互作用を評価することを可能にし得る。異なる濃度の抗生物質AおよびBを有するマイクロドロップのパネルを形成するマイクロドロップを作成し、それらを細菌を含むマイクロドロップと融合させることが可能である。細菌を含有するマイクロドロップは、様々な濃度の細菌を有するマイクロドロップのパネルを形成し得る。これにより、単一の捕捉チャンバ内で3つの異なるパラメータ、すなわち抗生物質Aの濃度、抗生物質Bの濃度および細菌の初期濃度を変えることが可能になる。
【0125】
マイクロ流体技術を使用することによって、非常に少量を使用することが可能であり、生検から得られる細胞などの希少なサンプルの状況において非常に有利であり得る。本システムは、例えば個別化医療およびがん治療の状況において使用され得る。このシステムを用いて、例えば第1のマイクロドロップのスフェロイドの形態で、生検を受けた患者からの腫瘍細胞を培養し、第2のマイクロドロップを供給することによってそれらを様々な活性物質に供することが可能である。細胞と活性物質を含むマイクロドロップの対を融合した後、単一のチップおよび生検から得た最小数の細胞を使用して、特定の患者にとってどの活性物質がどの濃度で最も有効であるかを決定することが可能である。
【0126】
好ましくは、同一のキャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーンは、同じ第1または第2の液体マイクロドロップに対して第1および第2の捕捉ゾーンが及ぼす捕捉力が異なるように構成される。
本発明の前述の態様による方法または装置に関連して上述した1つまたは複数の特徴は、本発明のこの態様による方法に適用することができる。
方法は、前述の態様によるマイクロ流体システムのうちの1つを使用して実行され得る。
【0127】
本発明は、添付の図面を参照しながら、本発明の非限定的な実施形態の例に関する以下の説明を読むことでよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【
図1A】本発明によるキャピラリトラップの断面図を示す。
【
図1B】
図1AのキャピラリトラップのIに沿った上面図である。
【
図2】2つのマイクロドロップを捕捉した後の
図1のキャピラリトラップの概略上面図である。
【
図3】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図4】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図5A】キャピラリトラップの変形例を断面図で示す。
【
図5B】
図5AのキャピラリトラップのVに沿った上面図である。
【
図6】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図7】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図8】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図9】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図10】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図11】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図12】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図13】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図14】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図15】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図16】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図17】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図18】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図19】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図20】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図21】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図22】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図23】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図24】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図25】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図26】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図27】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図28】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図29】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図30】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図31】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図32】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図33】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図34】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図35】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図36】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図37】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図38】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図39】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図40】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図41】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図42】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図43】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図44】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの上から見た変形例である。
【
図45】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの断面の変形例である。
【
図46】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの断面の変形例である。
【
図47】マイクロドロップを有するキャピラリトラップの断面の変形例である。
【
図48】キャピラリトラップの断面における変形例を示す。
【
図53】本発明によるキャピラリトラップ内のマイクロドロップを操作する方法の変形例を示す。
【
図54】本発明によるキャピラリトラップ内のマイクロドロップを操作する方法の変形例を示す。
【
図55】本発明によるキャピラリトラップ内のマイクロドロップを操作する方法の変形例を示す。
【
図56】本発明によるキャピラリトラップ内のマイクロドロップを操作する方法の変形例を示す。
【
図57】本発明によるキャピラリトラップ内のマイクロドロップを操作する方法の変形例を示す。
【
図58】本発明によるキャピラリトラップ内のマイクロドロップを操作する方法の変形例を示す。
【
図59】本発明によるキャピラリトラップ内のマイクロドロップを操作する方法の変形例を示す。
【
図63】上から見たキャピラリトラップの変形例を示す。
【
図64】上から見たキャピラリトラップの変形例を示す。
【
図65】上から見たキャピラリトラップの変形例を示す。
【
図66】第1および第2のマイクロドロップに異なる捕捉力を及ぼす2つのゾーンを含むキャピラリトラップの例によるマイクロドロップの捕捉を示す。
【発明を実施するための形態】
【0129】
本発明は、マイクロ流体システムにおいて少なくとも1つの第1および第2のマイクロドロップを操作するための方法に関する。
マイクロ流体システム5は上壁7および下壁8を備え、それらの間にマイクロドロップの循環のためのチャネル9および少なくとも1つのキャピラリトラップ12を形成する。
【0130】
<キャピラリトラップ>
図1Aおよび
図1Bに示す例では、キャピラリトラップ12は、マイクロ流体システムの断面において、マイクロドロップが収容され得る一定の高さの下壁8内に空洞を形成する。上から見ると、それは円形の第1の捕捉ゾーン15を有し、それに隣接する三角形の第2の捕捉ゾーン18を有する。
【0131】
第1および第2の捕捉ゾーン15および18は、特にそれらの形状の違いのために、マイクロドロップに異なる捕捉力を及ぼす。ここで、第1の捕捉ゾーン15は、第2の捕捉ゾーン18よりも大きな捕捉力を及ぼす。
【0132】
第1のマイクロドロップ20がマイクロ流体システムに導入されると、このマイクロドロップに対して最大の捕捉力を有する捕捉ゾーン、この場合には第1の捕捉ゾーン15に捕捉される。
図2に示されているように、第2のマイクロドロップ25が導入されると、空いている捕捉ゾーン、ここでは第2の捕捉ゾーン18に捕捉される。
【0133】
図面において、第1のマイクロドロップ20は黒で示され、第2のマイクロドロップ25は透明で示されているが、これは2つのマイクロドロップの間の内容の特定の違いを表すものではない。
第1の捕捉ゾーン15は、第1のマイクロドロップ20が第1の捕捉ゾーンに捕捉されると、第1のマイクロドロップ20の上から見た見かけの直径D1とほぼ等しい直径aを有する。
【0134】
2つの捕捉されたマイクロドロップ20および25は、特に2つのマイクロドロップ20および25の直径に対して2つの捕捉ゾーン15および18の間の距離が小さいために互いに接触している。さらに、2つのマイクロドロップ20および25は、第2の捕捉ゾーン18の三角形の形状によって接触し続ける。実際には、第2のマイクロドロップ25は、第1の捕捉ゾーン15の方向に互いに離れる第2の捕捉ゾーン18の2つの対向する壁27および28と接触しており、その表面エネルギーを常に最小にするというその自然な傾向により、壁27および28の広がりの方向、すなわち第1の捕捉ゾーン、したがって第1のマイクロドロップ20に向かって2つの対向する壁27および28の間で並進移動する。
【0135】
図1Aおよび
図2において、2つの壁27および28はそれらの間に約45°に等しい発散角αを形成する。
図2に示す例では、第1のマイクロドロップ20は、第2のマイクロドロップ25の直径D
2よりも大きい直径D
1を有する。
【0136】
第2の捕捉ゾーン18は、第1のマイクロドロップ20に及ぼす捕捉力より大きい捕捉力を第2のマイクロドロップ25に及ぼす。実際には、第2の捕捉ゾーンの設計は、マイクロドロップの直径にかかわらず同じであるが、第2のマイクロドロップ25の直径は、第1のマイクロドロップ20よりも第2の捕捉ゾーン18の形状およびサイズにより良く適合する。しかしながら、それ以外は同じであり、第2のマイクロドロップ25は第1のマイクロドロップ20と同じ直径であり得る。
【0137】
変形例として、第1のマイクロドロップ20および第2のマイクロドロップ25は、それらの他の特性、特に表面状態、粘度または重量に関して互いに異なる。
【0138】
図3および
図4に示す変形例として、キャピラリトラップ10は、円形の第1の捕捉ゾーン15および三角形の第2の捕捉ゾーン18をそれぞれ形成する2つの並置された別々の空洞を備える。キャピラリトラップの2つの捕捉ゾーン15および18は、2つの捕捉されたマイクロドロップ20および25が互いに接触するように十分に近い。好ましくは、捕捉ゾーン15および18の重心間の距離eは、
図4に示されるように、2つのマイクロの半径の合計S
Rより短いか、または
図3に示されるように等しい。
【0139】
変形例として、
図5A及び
図5Bに示すように、第1の捕捉ゾーンは六角形の形状であってよく、第1の捕捉ゾーン15は第2の捕捉ゾーン18の高さh
2とは異なる高さh
1を有してよく、特にh
1はh
2より大きい。第1の捕捉ゾーン15は、第2の捕捉ゾーン18よりも大きな捕捉力を発揮する。
【0140】
図6に示す変形例として、第2の捕捉ゾーン18は、ほぼ10°に等しい小さな発散角αを有する長い三角形の形状を有し、これにより、一連の第2のマイクロドロップ25、ここでは互いに接触している2つの第2マイクロドロップ25aおよび25bを捕捉することが可能になる。第2の捕捉ゾーン18は実際には2つの第2の捕捉ゾーン18aおよび18bから構成されているため、それぞれ第2のマイクロドロップ25aおよび25bを捕捉することができると考えることができる。この場合、第2のマイクロドロップ25aは、第2のマイクロドロップ25bを介して第1のドロップ20に結合されている。第2の捕捉ゾーン18aおよび18bが第2のマイクロドロップ25aおよび25bに及ぼす捕捉力は、それらの位置に応じて異なり得る。ここでは、第2の捕捉ゾーン18bは、第1の捕捉ゾーン15に最も近い第2のマイクロドロップ25bに対してより強い捕捉力を及ぼす。しかしながら、第2の捕捉ゾーン18の形状によっては、そうでない場合もある。
【0141】
図示されていない変形例として、2つの第2の捕捉ゾーン18aおよび18bは、捕捉された第2のマイクロドロップ25aおよび25bに同一の力を及ぼし得る。
図示されていない変形例として、キャピラリトラップは、第2のマイクロドロップの少なくとも1つを介して第1の捕捉ゾーンに捕捉された第1のマイクロドロップとそれ自体が接触している捕捉された一連の第2のマイクロドロップを形成するように構成される。
【0142】
したがって、捕捉されたマイクロドロップがすべて直接または他のマイクロドロップを介して互いに結合されるように構成された複数の捕捉ゾーンを含むより複雑な形状のキャピラリトラップを想定することが可能である。
【0143】
図7から
図9に示す変形例として、キャピラリトラップ12は、第2の捕捉ゾーン18の1つによって捕捉された各第2のマイクロドロップ25が第1の捕捉マイクロドロップ20と接触するように第1の捕捉ゾーン15の周りに分布する複数の同一の第2の捕捉ゾーン18を有する。
図示されるように、第2の捕捉ゾーン18は、第1の捕捉ゾーン15の周りに一様に分布していてもよい。しかしながら、それ以外の場合もあり得る。
【0144】
図10に示す変形例として、キャピラリトラップ12は、第1の捕捉ゾーンによって捕捉された第1のマイクロドロップがそれぞれ少なくとも1つの他の第1のマイクロドロップと接触するように配置された複数の第1の捕捉ゾーン15と、複数の第2の捕捉ゾーン18とを有する。ここで、キャピラリトラップ12は、2つの融合された第1の捕捉ゾーン15と2つの第2の捕捉ゾーンを有し、第2の捕捉ゾーンは各第1の捕捉ゾーンに融合している。
【0145】
図11に示す変形例として、キャピラリトラップ12は、異なる形状の複数の第2の捕捉ゾーン18aおよび18bを有することができる。第2の捕捉ゾーンは、異なる第2のマイクロドロップ25aおよび25bを収容するように意図されていてもよい。例えば、図示のように、キャピラリトラップは、第1の捕捉ゾーン15と1つの空洞を形成する第2の捕捉ゾーン18aと、第1の捕捉ゾーン15から離れた第2の捕捉ゾーン18bとを有する。第2の捕捉ゾーン18aおよび18bは、全く同じマイクロドロップに異なる捕捉力を及ぼす。第2の捕捉ゾーン18aは、第2の捕捉ゾーン18bによって捕捉された第2のマイクロドロップ25aよりも大きい直径を有する第2のマイクロドロップ25aを捕捉するためのものである。
【0146】
本発明は、上述したキャピラリトラップ12の形状の例に限定されない。キャピラリトラップ12は、特に必要とされる用途に応じて様々な形状を有することができる。考えられる形状を
図12から45に示す。
【0147】
例えば、
図12に示すように、第1の捕捉ゾーン15は多角形、特に正方形であってよく、第2の捕捉ゾーン18は三角形であり、正方形の一辺に融合され得る。
図13に示される変形例として、第2の捕捉ゾーン18は、第1の捕捉ゾーン15を形成する正方形の角に融合される。
【0148】
図14に示す変形例として、第2の捕捉ゾーン18は長方形、特に正方形である。
図15に示されるように、第2の捕捉ゾーン18は、第1の捕捉ゾーン15の方向に広くなり、上面図で湾曲した輪郭を有する対向する壁27および28を有し、第2の捕捉ゾーン18はその端部に向かって細くなり得る。
【0149】
図16に示すように、キャピラリトラップ12はハート型であり、ハート型の丸い突出部が2つの第1の捕捉ゾーン15を形成し、ハート型の先端が第2の捕捉ゾーン18を形成している。
図17に示すように、第1の捕捉ゾーン15は五角形の形状であってよく、第2の捕捉ゾーン18は五角形の角から延びている。
【0150】
図18に示すように、キャピラリトラップ12は六角形の形状であってよく、第2の捕捉ゾーン18は六角形の側面から延びている。
第1の捕捉ゾーン15は、
図19に示すように正方形でも、
図20に示すように円形でもよく、第2の捕捉ゾーン18は円形でもよい。
【0151】
変形例として、第2の捕捉ゾーン18は三角形の形状であるが、
図21に示すように、その角の1つによって第1の捕捉ゾーン15に接合されている。したがって、第2の捕捉ゾーン18は外側に広くなる。
【0152】
さらなる変形例として、第2の捕捉ゾーン18は、
図22に示されるように、多角形、特に六角形である。
さらなる変形例として、キャピラリトラップ12は、
図33に示すように、第1の捕捉ゾーン15の対向する角に融合された2つの第2の捕捉ゾーン18を含むことができる。
【0153】
図23に示すように、キャピラリトラップ12は、楕円形の第1の捕捉ゾーン15と、第1の捕捉ゾーンに融合されて楕円形の長側面から互いに反対側に延びる2つの三角形の第2の捕捉ゾーン18とを有し得る。
【0154】
図34に示す変形例として、第2捕捉ゾーン18は、
図15と同じ形状である。
図24に示すように、キャピラリトラップ12は、第1の捕捉ゾーン15の周囲に均一に分布せずそれらの間に間隔角度βを形成する2つの第2の捕捉ゾーン18を有することができる。
【0155】
第1の捕捉ゾーン15は長方形であってよく、正方形の第2の捕捉ゾーン18は長方形の短辺によって第1の捕捉ゾーン15に融着されている。第1のマイクロドロップ20のサイズに応じて、第1の捕捉ゾーン15は、
図25に示すように単一の第1のマイクロドロップ20、または
図26に示すように複数の第1のマイクロドロップ20を捕捉することができる。
【0156】
図27に示される変形例として、第2の捕捉ゾーン18は、長方形の長辺の1つによって第1の捕捉ゾーン15に融合されてもよい。
図28に示されるように、第1の捕捉ゾーン15は楕円形であり、第2の捕捉ゾーン18はその長辺から始まって第1の捕捉ゾーンに融合されてもよく、または
図29に示されるようにその短辺によって融合されてもよい。
【0157】
キャピラリトラップは、
図30に示されるように、特にそれらのサイズにおいて少なくとも2つが異なる複数の第2の捕捉ゾーン18を含むことができる。
図31に示す例では、キャピラリトラップ12は、そのベースが第1の捕捉ゾーン15を形成し、ヘッドが第2の捕捉領域18を形成するひょうたん形の形状を有する。
【0158】
図32に示す変形例として、キャピラリトラップ12は三角形の形状であり、より広い底部付近の部分が第1の捕捉ゾーン15を形成し、頂点が第2の捕捉ゾーン18を形成する。
【0159】
図35に示す例では、第1の捕捉ゾーン15は正方形であり、キャピラリトラップ12は、それぞれが第1の捕捉ゾーン15の角にそれらの角の1つによって融合された同一の正方形形状の2つの第2の捕捉ゾーン18を有する。
【0160】
図36から41に示す例では、キャピラリトラップ12は3つの第2の捕捉ゾーン18を有し、第1および第2の捕捉ゾーン15および18はそれぞれ上述のすべての形状を有してもよい。
【0161】
図42から44に示す例では、キャピラリトラップ12は、形状の異なる複数の第2の捕捉ゾーンを有する。例えば、
図42に示すように、第2の捕捉ゾーン18aの1つは三角形であり、他の第2の捕捉ゾーン18bは長方形であり、長方形は複数の第2の捕捉ゾーンを形成して一連の第2のマイクロドロップ25を捕捉するのに十分な長さであるか、または第2の捕捉ゾーンは上述の形状を有することができる。
【0162】
断面において、第1の捕捉ゾーン15および第2の捕捉ゾーン18は、それらの全幅にわたって一定の高さであり得る。
図45に示す変形例として、第1の捕捉ゾーン15は、断面において、空洞の底部に向かって傾斜する縁部を有する。
【0163】
図46に示すさらなる変形例として、第2の捕捉ゾーン18は、第1の捕捉ゾーンに向かって傾斜した壁を有する。これにより、特に、第2のマイクロドロップ25を第1のマイクロドロップ20と接触させ続けることが可能になる。
図47に示すさらなる変形例として、第1および第2の捕捉ゾーンは少なくとも1つの傾斜した壁を有する。
【0164】
図48に示す変形例として、キャピラリトラップ12は、少なくとも部分的にマイクロ流体システムの上壁7の空洞によって形成されている。
変形例として、キャピラリトラップ12は、少なくとも部分的にマイクロ流体システムの側壁の1つの空洞によって形成される。
図47に示す変形例として、キャピラリトラップは、下壁8と上壁7の両方の空洞によって形成される。
【0165】
図63から65に示す変形例として、キャピラリトラップは異方性であり、同一の捕捉力を有する複数の捕捉ゾーンを含み、キャピラリトラップはその種々のゾーンにおいて同一の複数のマイクロドロップを捕捉することができる。例えば、
図61および62に図示するように、キャピラリトラップ12はほぼ三角形の形状であってよく、マイクロドロップのサイズに応じて、3つまたは4つの同一のマイクロドロップを捕捉し得る。
図63に示す変形例として、キャピラリトラップ12は5つのアームを有する星形を有し、5個または6個の同一のマイクロドロップを捕捉することができる。
【0166】
<マイクロ流体装置>
マイクロドロップを循環させるためのチャネル9は、複数のキャピラリトラップ12を含み得る。
特に、チャネル9は、
図49に示されるように、キャピラリトラップ12がテーブルまたはマトリックスにおいて2つの空間方向に従って空間的に分配されている二次元捕捉チャンバ30を含むことができる。この図において、キャピラリトラップ12は複数のアレイの形態で互いに等間隔で配置されているが、そうでなくてもよい。それらは周期的またはそうでない任意のスキームに従って配置され得る。
【0167】
捕捉チャンバ30内のキャピラリトラップ12の数は、1チャンバ当たり1つのものから1平方センチメートル当たり数千の範囲であり得る。
キャピラリトラップ12の重心間に画定される距離pは、捕捉されることが意図される最大のマイクロドロップのサイズと同等またはそれより大きく、特にキャピラリトラップの外側の壁7および8の間のチャネル内に閉じ込められた第1のドロップの上から見た見かけの直径と同等またはそれより大きいサイズであることが好ましく、例えば20μmから1cmの間である。
【0168】
キャピラリトラップの数は、1cm2当たり200と同等またはそれより多いキャピラリトラップ、より好ましくは1cm2当たり2000と同等またはそれより多いキャピラリトラップであり得る。したがって、マイクロドロップの制御された組み合わせは、同じ捕捉チャンバ30内で数百、さらには数万の捕捉において並行して実行され得る。
キャピラリトラップ12は上記の通りであり得る。
キャピラリトラップ12は全て同一であり得る。
【0169】
変形例として、少なくとも2つのキャピラリトラップ12は、特にそれらの形状、サイズ、高さもしくは向き、または第1および第2の捕捉ゾーン15および18の数、形状、高さもしくは向きが異なり得る。これにより、キャピラリトラップ12の機能として異なる条件を有することが可能となる。
【0170】
図示されていない変形例として、チャネル9は一次元的であり、その長さに沿って分配されたキャピラリトラップ12のアレイを含むことができる。
本発明は、上述のマイクロ流体システムの形状に限定されない。マイクロ流体システムは、特に必要とされる用途に応じて、異なる形状を有することができる。
【0171】
<マイクロドロップ>
好ましくは、チャネル9は、マイクロドロップが混和しない流体で充填される。この流体は静止していても動いていてもよい。流体が動いているとき、流体の流れは好ましくは流体循環ライン(図示せず)に沿って配向され、流体入口31から流体出口32へと循環する。
【0172】
マイクロドロップは、例えば、油性液体中の水性マイクロドロップまたは水性液体中の油のマイクロドロップである。
好ましくは、第1および第2のマイクロドロップ20および25は、マイクロメートルのオーダー、特に20から5000μmの間の直径D1およびD2を有する。
【0173】
第1のマイクロドロップ20は、特にそれらのサイズおよび/またはそれらの組成に関して、第2のマイクロドロップ25とは異なるのが好ましい。
第1のマイクロドロップ20、または第2のマイクロドロップ25は、それらの少なくとも一定数が異なるマイクロドロップのパネルを形成することができる。
【0174】
第1および/または第2のマイクロドロップ20および25は、接触している第1および第2のマイクロドロップ20および25の融合の前、最中および/または後にそれらを識別することを可能にする識別化合物を含み得る。1つまたは複数の識別化合物は、例えば、一定数のビーズもしくは粒子、様々な色もしくは形状の化合物、またはマイクロドロップ中のそれらの濃度に比例する比色または蛍光シグナルを発する化合物であり得る。異なる濃度の化合物および/または異なる化合物を含む第1のマイクロドロップのパネルおよび/または第2のマイクロドロップのパネルの場合には、捕捉チャンバに捕捉されたマイクロドロップをマッピングするために、捕捉チャンバ内の第1および/または第2のマイクロドロップの位置をその組成と関連付けることが可能である。
【0175】
変形例として、第1のマイクロドロップの識別化合物は、融合後に得られたマイクロドロップの識別を可能にするように、第2のマイクロドロップの1つまたは複数の識別化合物と相互作用する。例えば、マイクロドロップの融合は化学反応を引き起こす可能性があり、そのうちの少なくとも1つの生成物を識別することができる。
【0176】
好ましくは、チャネル9は界面活性剤を含有する流体で満たされる。界面活性剤は、マイクロドロップの安定化およびそれらの構成の再現性を可能にする。さらに、界面活性剤は、製造装置からキャピラリトラップへと運ばれる間またはキャピラリトラップ内で接触した場合のマイクロドロップの自発的融合を防ぐことを可能にする。
【0177】
水性マイクロドロップの場合、界面活性剤は、例えば、フッ素化油中のPEG-di-Krytoxまたは鉱油中のSPAN(登録商標)80から選択される化合物である。油のマイクロドロップの場合、界面活性剤は、例えばドデシル硫酸ナトリウムである。
【0178】
変形例として、マイクロドロップは他の手段によって安定化され、特にマイクロドロップはゲル化されてもよく、または非特許文献8に記載されているように両親媒性ナノ粒子の吸着によって安定化されてもよく、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0179】
<操作方法>
第1および第2のマイクロドロップを操作する方法の例を
図52に示す。
ステップ40において、第1のマイクロドロップ20が生成される。移動相においてこれらの第1のマイクロドロップを形成するための多くの方法がすでに提案されている。例えば、以下の方法の例が挙げられる:
a)例えばS.L. Anna, N. Bontoux and H.A. Stone, 「Formation of dispersions using ‘Flow-Focusing’ in microchannels」, Appl. Phys. Lett. 82, 364 (2003)(非特許文献9)に記載された「フローフォーカシング(flow-focusing)」と呼ばれる方法であって、参照により本明細書に組み込まれる。
b)例えばR. Seemann, M. Brinkmann, T. Pfohl, and S. Herminghaus, in 「Droplet based microfluidics.」 Rep. Prog. Phys., Vol. 75, No. 1, p. 016601, Jan. 2012(非特許文献10)に記載された「段階乳化(step emulsification)」と呼ばれる方法であって、参照により本明細書に組み込まれる。
c)例えばV. Chokkalingam, S. Herminghaus, and R. Seemann, in 「Self-synchronizing pairwise production of monodisperse droplets by microfluidic step emulsification,」 Appl. Phys. Lett., Vol. 93, No. 25, p. 254101, 2008(非特許文献11)に記載された「フローフォーカシング」および「段階乳化」の方法を組み合わせた方法であって、参照により本明細書に組み込まれる。
d)例えばG.F. Christopher and S.L. Anna, in 「Microfluidic methods for generating continuous droplet streams,」 J. Phys. D. Appl. Phys., Vol. 40, No. 19, pp. R319‐R336, Oct. 2007(非特許文献12)に記載された「Tジャンクション(T junction)」と呼ばれる方法であって、参照により本明細書に組み込まれる。
e)例えばR. Dangla, S.C. Kayi, and C.N. Baroud, in 「Droplet microfluidics driven by gradients of confinement,」 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., Vol. 110, No. 3, pp. 853‐8, Jan. 2013(非特許文献13)に記載された「閉込め勾配(confinement gradient)」と呼ばれる方法であって、参照により本明細書に組み込まれる。または
f)例えばA. Funfak, R. Hartung, J. Cao, K. Martin, K.H. Wiesmuller, O.S. Wolfbeis, and J.M. Kohler, in 「Highly resolved dose-response functions for drug-modulated bacteria cultivation obtained by fluorometric and photometric flow-through sensing in microsegmented flow,」 Sensors Actuators, B Chem., Vol. 142, No. 1, pp. 66‐72, 2009(非特許文献14)に記載された「マイクロ分割フロー(micro-segmented flows)」の方法であって、制御された異なる比率の2つの溶液を、マイクロ流体システムの外の機能のレベルで混合して、不混和相によって分離されたマイクロリットルのドロップを形成し、次にこれらのドロップを例えば傾斜を含むマイクロ流体システムに注入することによってマイクロドロップに分割する方法であって、参照により本明細書に組み込まれる。
【0180】
これらの方法は、ほぼ等しい寸法の複数のマイクロドロップを形成することを特に可能にする。得られるマイクロドロップの寸法は、マイクロドロップの形成パラメータ、特に装置内の流体の循環速度および/または装置の形状を変更することによって制御することができる。
【0181】
第1のマイクロドロップ20は、方法と同じマイクロ流体システムまたは異なる装置で製造され得る。後者の場合、第1のマイクロドロップ20は、マイクロ流体システムに注入される前に、1つまたは複数の外部容器に貯蔵され得る。これらの第1のマイクロドロップ20は、全て同一であってもよく、またはそれらのうちのいくつかは異なる組成、濃度および/またはサイズのものであってもよい。
【0182】
これらの第1のマイクロドロップ20の形成後、第1のマイクロドロップは流体の流れによる連行によって、および/またはチャネル9のレールの形態の傾斜もしくは起伏によって、キャピラリトラップ12に運ばれ得る。いずれの場合においても、レールを追加することにより、例えば、非特許文献15に記載されるように、赤外レーザの使用と組み合わせて選択的にキャピラリトラップ12の充填を最適化することが可能となる。
【0183】
マイクロドロップの製造がマイクロ流体システムの外部で行われる場合、それらは、例えば製造システムと捕捉システムとを接続する管を介して直接、またはシリンジを用いた吸引および注入によって、貯蔵容器からマイクロ流体システムに輸送され得る。
【0184】
第1のマイクロドロップ20は、それらが受ける連行力が第1のマイクロドロップ20に対する第1の捕捉ゾーン15の捕捉力よりも小さくなるように、マイクロ流体システムにおいて連行される。次に、ステップ42において、特に第1の捕捉ゾーン15において、第1のマイクロドロップ20がキャピラリトラップ12に捕捉される。連行流が第1のマイクロドロップ20に及ぼす連行力が第2の捕捉ゾーン18の捕捉力よりも大きい場合、第1のマイクロドロップは、空の第2の捕捉ゾーン18に捕捉されない。
【0185】
そうでなければ、特にトラップおよび液滴の大きさが適切であるならば、第1のマイクロドロップ20は第2の捕捉ゾーン18に捕捉され得る。次いで、例えば流体の流速を増大させることによって、または流体の流れがない場合にはステップ44において流体の流れを追加することによって、第1のマイクロドロップ20のすべてに加えられる連行力を増大させることによって第2の捕捉ゾーンからそれらを除去することが可能である。
【0186】
変形例として、第1のマイクロドロップ20は、例えばWO2016/059302に記載されている「キャピラリトラップ内のドロップの破壊」と呼ばれる方法によって形成することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。この場合、第1マイクロドロップ20は第1の捕捉ゾーン15内に直接形成される。
【0187】
ステップ46において、第2のマイクロドロップ25が生成される。このステップはステップ44の後に示されているが、それは事前に行われてもよい。第2のマイクロドロップ25は、第1のマイクロドロップ20に関連して上述したように生成されてマイクロ流体システムに導入され得る。
【0188】
第2のマイクロドロップ25は、それらが受ける連行力が第2のマイクロドロップ25に対する第2の捕捉ゾーン18の捕捉力よりも小さくなるように、マイクロ流体システムにおいて連行される。次に、ステップ48において、第2の捕捉ゾーン18に第2のマイクロドロップ25が捕捉される。第2のマイクロドロップ25が流体の流れによって連行されるときに、流体の流れは、第1のマイクロドロップが捕捉され続けるように、第1の捕捉ゾーン15に捕捉された第1のマイクロドロップ20に対して、好ましくは第1のマイクロドロップ20に対する第1の捕捉ゾーン15の捕捉力と同等またはそれ未満の連行力を及ぼす。
【0189】
各段階において、本方法は、システムの状態を初期測定するステップを含み得る。この測定は単純なイメージング、または例えば比色、蛍光、分光(UV、ラマン)または温度測定であり得る。この測定は、上記のような識別化合物を含む異なる第1および/または第2のマイクロドロップ20のパネルを使用することに関して特に有用であり得る。
【0190】
いくつかのマイクロドロップが同一のトラップ内で接触しているとき、ステップ50において、それらの内容物を混合するために制御された方法でそれらを融合させることが可能である。この融合は選択的であってもなくてもよい。
【0191】
マイクロ流体システム、特に捕捉チャンバ30内で接触しているすべてのマイクロドロップを融合させるために、捕捉チャンバは界面活性剤を含まない流体で灌流される。マイクロ流体システムの流体中の界面活性剤の濃度は減少し、それにより界面における界面活性剤の吸着の平衡を脱着の方へシフトさせることが可能となる。マイクロドロップは安定化効果を失い、接触しているマイクロドロップと自発的に融合する。
【0192】
変形例として、マイクロ流体システムは不安定化剤を含む流体で灌流される。不安定化剤は、水性マイクロドロップの場合には、例えば、フッ素化油中の1H,1H,2H,2H‐ペルフルオロオクタン‐1‐オールである。
【0193】
さらなる変形例として、マイクロ流体システム、特に捕捉チャンバ30内で接触している全てのマイクロドロップは、機械波、圧力波、温度変化または電場などの外部からの物理的刺激を加えることによって融合される。
図50に示されるように、接触しているすべてのマイクロドロップを融合させるために、捕捉チャンバの両側に電極35が配置され得る。
【0194】
マイクロドロップを選択的に融合するために、非特許文献16に記載されるように、赤外レーザを使用してよく、または
図51に示すように捕捉ゾーン間のマイクロドロップの界面のレベルで局在化電極37を活性化させてもよく、1つまたは複数の点にまたは機械波を集中させてもよい。
【0195】
本発明は、上述の融合の例に限定されない。接触している2つのマイクロドロップ間の界面を不安定化することを可能にする任意の方法が、マイクロドロップを融合するために使用され得る。
【0196】
次いで、得られたマイクロドロップの状態を測定すること、および/またはそれをリアルタイムで観察することが可能である。これは、例えば、化学反応または生化学反応の動態を研究することを可能にする。
【0197】
<選択的捕捉>
1つまたは複数のキャピラリトラップ12が複数の第2の捕捉ゾーン18を有する場合、第2のマイクロドロップ25に及ぼされる連行力の方向およびセンスに対する1つまたは複数の第2の捕捉ゾーン18の位置は、選択的捕捉を実施することを可能にする。
【0198】
図53に示すように、2つの第2の捕捉ゾーン18mと18vが第1の捕捉ゾーン15の両側に配置され、加えられる連行力の方向に並んでいるキャピラリトラップの場合を考える。ステップ44に従って第1の捕捉ゾーン15のレベルに第1のマイクロドロップ20を捕捉した後、ステップ48aに従って第2のマイクロドロップ25mに方向F
1に向けられた連行力が供給される。第2の捕捉ゾーン18mおよび18vにおける捕捉力が十分に小さい場合、方向F
1に関して捕捉された第1のマイクロドロップ20の上流に位置する第2の捕捉ゾーン18mにのみ第2のマイクロドロップ25mが捕捉される。下流の第2の捕捉ゾーン18vが同一であっても、第1のマイクロドロップ20を迂回する第2のマイクロドロップ25の循環ラインは第2の捕捉ゾーン18vを避けるため、第2のマイクロドロップ25mに関する状況は異なる。さらに、第2のマイクロドロップ25mを上流に捕捉し続けることは、接触し得る捕捉された第1のマイクロドロップ20が存在することによって促進される。上流に第2のマイクロドロップ25mを捕捉した後、ステップ48bに従って、第2のマイクロドロップ25vにF
1と反対の方向F
2に向けられた連行力を加えて、マイクロドロップ25vの1つを第2の捕捉ゾーン18v捕捉することが可能である。
【0199】
図54に示すように、例えば、1つまたは複数の第2の捕捉ゾーン18に別の異なる第2のマイクロドロップ25を捕捉するために、第2のマイクロドロップ25に及ぼされる連行力の方向およびセンスに対する1つまたは複数の第2の捕捉ゾーン18の位置を使用して選択的解放を実行することも可能である。前述のキャピラリトラップの場合を考えると、ステップ48aにおいて、第2の捕捉ゾーン18mおよび18vにおける捕捉力が、第2のマイクロドロップ25mに及ぼされる連行力の方向に関係なく十分強力である場合、ステップ52に従って下流に捕捉された第2のマイクロドロップ25mを選択的に解放するために、方向F
3に向けられた連行力が加えられた場合に方向F
3に関して上流の第2のマイクロドロップ25mは下流よりもより保持されるという事実が利用され得る。実際には、第2のマイクロドロップ25mは変形して第1の捕捉ゾーン15に捕捉された第1のマイクロドロップ20に支えられ得るので、下流の第2のマイクロドロップ25mを解放するよりもそれを解放するために強い力が必要である。そして、解放された第2の捕捉ゾーン18vに、ステップ48bにおいて既に捕捉された第2のマイクロドロップ25mとは異なる第2のマイクロドロップ25vを捕捉することが可能となる。
【0200】
<マイクロドロップ捕捉の時系列の例>
縦軸に流体力学的抗力と比較した捕捉力の強度、横軸に時間を示す
図66に示す実施形態の例では、2つの捕捉ゾーンを有するキャピラリトラップについて、方法は以下のステップを含む。
‐キャピラリトラップの第1のゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第1のマイクロドロップが第1のゾーンに捕捉され続けるように、第1のゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力F1が、流れによって第1のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft1より大きく、抗力Ft1がF1とF2の間であり、F2がキャピラリトラップの第2のゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕獲力を表す、ステップ、
‐次に、キャピラリトラップの第2のゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第2のゾーンに第2のマイクロドロップを入れる間の流れによって第2のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft2の力がF2とF3の間であり、好ましくはF3がF1未満であり、F3が第2のゾーンによって第2のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力である、ステップ。抗力Ft2はF1未満である。
このようにして、それぞれキャピラリトラップの2つのゾーンに2つのマイクロドロップの選択的捕捉が得られる。
【0201】
<マイクロドロップのサイズによる捕捉>
同一のマイクロ流体システム内の様々なキャピラリトラップ12の第2の捕捉ゾーン18は、異なる特性、特に異なるサイズを有することができる。これにより、例えば、異なるキャピラリトラップ12内に異なる第2のマイクロドロップ25を捕捉して異なるマイクロドロップを得ることが可能になる。例えば、第2のマイクロドロップに含まれる要素の所与の濃度に関して、第2のマイクロドロップに含まれるその要素の量は、前記第2のマイクロドロップのサイズに依存する。したがって、例えば同じ捕捉チャンバ30内に異なるサイズの第2の捕捉ゾーン18を生成することによって、第2のマイクロドロップ25のサイズが第2の捕捉ゾーン18の各サイズに対応するように異なるサイズの第2のマイクロドロップ25を選択的に捕捉することが可能である。
【0202】
図55は、異なるサイズの第2の捕捉ゾーン18a、18bおよび18cを有する3つのキャピラリトラップ12a、12bおよび12cを示す。第1の捕捉ゾーン15には、第1のマイクロドロップ20が充填されている。全て同じ濃度であるがサイズが異なる第2のマイクロドロップ25a、25bおよび25cが供給される。第2の捕捉ゾーン18a、18b、および18cはそれぞれ第2のマイクロドロップのサイズに対応し、第2のマイクロドロップ25a、25b、および25cはそれらに最もよく対応する第2の捕捉ゾーン18a、18b、または18cに捕捉される。
【0203】
キャピラリトラップ12a、12b、12cは、最大の第2のマイクロドロップ18aに対する第2の捕捉ゾーン18a、18b、18cの捕捉力が、マイクロ流体システムにおいて第2のマイクロドロップの連行力の方向に、特に流体の流れの方向に増大するように配置することが好ましい。したがって、第2のマイクロドロップ25a、25bおよび25cは、最初に、最小の第2のマイクロドロップ25cのみが捕捉される第2の捕捉ゾーン18c、次に、第2のマイクロドロップ25bのみが捕捉される第2の捕捉ゾーン18b、最後に、最大の第2マイクロドロップ25aが捕捉される第2の捕捉ゾーン18aに遭遇する。
【0204】
変形例として、マイクロドロップ25a、25b、および25cは、それらのパラメータの別のものが異なり、特に異なる要素を含む。
これにより、特に化合物の濃度および/または組成に関して、それらの少なくともいくつかが異なるマイクロドロップのパネルを得ることが可能になる。
【0205】
<連続的融合>
図56に示すように、ステップ46、48、および50を繰り返して、連続的融合を実行することができる。各キャピラリトラップ12において、ステップ50の後に得られたマイクロドロップは、その体積として1つまたは複数の第1のマイクロドロップ20の体積と、キャピラリトラップ12内で融合した1つまたは複数の第2のマイクロドロップ25の体積との和を有する新たな第1のマイクロドロップ80となる。1つまたは複数の第2の捕捉ゾーン18が再び空になると、初期の1つまたは複数の第2のマイクロドロップ25と同一のまたは異なる1つまたは複数の第3のマイクロドロップ58が供給され、新たな融合が実行されてそれ自体が新たな第1のマイクロドロップとなるというように、新たなマイクロドロップ90が得られる。連続する融合では、第2の捕捉ゾーン18における新たなマイクロドロップの捕捉が妨げられる程度に大きくなるまで、さまざまな体積の融合したマイクロドロップの追加により、マイクロドロップは大きくなる。同じキャピラリトラップ12内で実施され得る最大の融合の回数は、連続して融合されたマイクロドロップの体積に依存する。
【0206】
融合ステップが外部相からの界面活性剤の除去または化学的不安定化からなる場合、それぞれの融合の間に安定化ステップが必要であり得ることに留意されたい。実際には、1つまたは複数の新たなマイクロドロップをキャピラリトラップに入れる前に、界面活性剤を含むマイクロドロップと不混和性の流体で捕捉チャンバを灌流することが必要である。
【0207】
連続的融合を実行する機能にはいくつかの用途がある。キャピラリトラップ12の第1の捕捉ゾーン15に捕捉された第1のマイクロドロップ20が細胞(例えば、細菌、酵母または哺乳動物細胞)を含む場合、連続的融合により、培地を含む第2のマイクロドロップ25を所定の時間に連続的に融合することによって、培地を数回更新することができる。
【0208】
これはまた、医薬品の投与の断続的な性質をモデル化するのに役立ち得る。例えば、哺乳動物細胞のスフェロイドを含みキャピラリトラップ12に捕捉された第1のマイクロドロップ20は、6時間毎に医薬品の第2のマイクロドロップ25と融合される。
【0209】
<ドロップ濃度勾配>
捕捉チャンバ30内のキャピラリトラップ12は異なってもよく、それらの位置は制御され得る。例えば、異なる数の第2の捕捉ゾーンを有するキャピラリトラップ12を有することが可能である。
【0210】
図57に示すように、捕捉チャンバ30は、第1の捕捉ゾーン15の周りに一様に分布した1つ、2つ、3つおよび4つの同一の第2の捕捉ゾーン18をそれぞれ有するキャピラリトラップ12a、12b、12cおよび12dを含み得る。第1のマイクロドロップ20が同一でありかつ対象化合物を含む場合、例えば希釈剤を含み得る捕捉された第2のマイクロドロップ25との融合後、マイクロ流体チャンバ内でマイクロドロップ100、105、110、および115を得ることが可能であり、ここでは異なるグレー度合いによって表示された対象化合物の4つの濃度の空間勾配を形成する。
【0211】
<マイクロドロップのパネル>
上述のようにキャピラリトラップ12を含むチャンバ内に異なる化合物および/または異なる濃度を含むマイクロドロップのパネルを注入することは、多くの用途を提供する。
【0212】
第1および第2のマイクロドロップ20および25をそれぞれ捕捉することを可能にする1000個のキャピラリトラップを有する2cm2の捕捉チャンバの例を取り上げる。第1のマイクロドロップ20は、20の異なる濃度の第1の化合物を含むマイクロドロップのパネルを形成する。第2のマイクロドロップ25は、10の異なる濃度の第2の化合物を含有する。第1および第2のマイクロドロップ20および25をキャピラリトラップ12内で融合することによって、それぞれが第1および第2のマイクロドロップ20および25の200の可能な組み合わせのうちの1つの組み合わせに統計的に対応するマイクロドロップのマトリックスを得ることができる。
【0213】
マイクロドロップが静的であるという事実もまた、動的データを取得することをより容易にする。マイクロドロップでの非常に少量の使用により、試薬の経済性の利点もある。
捕捉チャンバ30は2cm2より大きい表面積を有してもよく、マイクロ流体システムにおいて並行して実施することができる異なる反応の数をさらに大幅に増加させる。
【0214】
第1および第2のマイクロドロップ20および25に含まれる化合物は、互いに反応し得る化学分子であってよく、その初期濃度の最適化が必要である。上記の方法は、大規模なコンビナトリアルケミストリを実施することを可能にする。その場合、マイクロドロップは、1つまたは複数の識別手段を含み得る。これにより、例えば蛍光または分光法により、例えば最終生成物の濃度を測定することが可能になる。
変形例として、第1および/または第2のマイクロドロップ20および/または25は、タンパク質、酵素、および細胞を様々な濃度で含み得る。
【0215】
マイクロ流体システムおよび上記の方法は、タンパク質結晶化の調査を可能にし得る。実際、タンパク質の精製溶液から結晶を得ることは、X線回折パターンを得ることを可能にするため、その三次元構造を決定するための必須のステップである。しかしながら、タンパク質は常に非常に少量で入手され、最適な結晶化条件はタンパク質ごとに異なる。
【0216】
例えば、それぞれが第1および第2のマイクロドロップ20および25を捕捉することを可能にするいくつかのキャピラリトラップ12を有する捕捉チャンバ30の使用は、異なる濃度の生理食塩水を含む第1のマイクロドロップパネルおよび異なる濃度の対象のタンパク質を含む第2のマイクロドロップパネルを与える。第1および第2のマイクロドロップ20および25をキャピラリトラップ12内で融合することによって、濃度を決定してタンパク質結晶化を最適化することができるように、異なる濃度の生理食塩水およびタンパク質の条件を表すマイクロドロップのマトリックスを得ることが可能である。
【0217】
キャピラリトラップ12上に、捕捉チャンバ全体において同一濃度の対象元素を含む第1のマイクロドロップ20を固定化し、それを異なる濃度の滴定種を含むマイクロドロップのパネルから得られる第2のマイクロドロップ25と融合させることによって、第1のマイクロドロップ20に含まれる対象の種の滴定を実行することが可能である。この用途は、高価であるかまたは少量しか入手できない試薬の場合に特に有利であり得る。
【0218】
本明細書に提示された方法は医薬品のスクリーニングにも非常に役立ち得る。例えば、がん細胞は、個別化された形態またはスフェロイドの形態で、キャピラリトラップ12の第1の捕捉ゾーン15のそれぞれに捕捉された第1のマイクロドロップ20において培養され得、そして数日間の培養後、スクリーニング対象の医薬品を含む第2のマイクロドロップ25と各トラップにおいて融合することができ、第2のマイクロドロップ25は異なる医薬品を含むマイクロドロップのパネルから得られる。
【0219】
同様の構成において、我々は、捕捉された第1のマイクロドロップ20内のスフェロイドの形態の肝細胞の培養およびその毒性が評価対象である医薬品を含む第2のマイクロドロップ25の各キャピラリトラップ12への供給を想定することができ、各マイクロドロップは、異なる濃度の医薬品を含むマイクロドロップのパネルから得られる。融合後数日の生存率についての結果を分析することによって、例えば、細胞集団の半分を殺傷する医薬品の濃度を推定することが可能である。
【0220】
この方法はまた、異なる抗生物質間の相互作用の評価を可能にし得る。異なる濃度の1つまたは複数の抗生物質を含む第2のマイクロドロップ25のパネルを作成し、捕捉チャンバ30内でそれらを細菌を含む第1のマイクロドロップ20と融合させることが可能である。第1のマイクロドロップ20は、異なる濃度の細菌を含み得る。これにより、3つのパラメータで空間を調査することができる。
【0221】
マイクロ流体の応用は、生検などの希少なサンプルの場合に非常に有利であり得る。マイクロ流体システムは、例えば、個別化医療およびがん治療において使用され得る。このシステムを用いて、例えば捕捉された第1のマイクロドロップ20内のスフェロイドの形態で、生検を受けた患者からの腫瘍細胞を培養し、捕捉チャンバ30に第2のマイクロドロップ25を供給することによって、複数の濃度の異なる医薬品を適用することが可能である。細胞および医薬品を含む一対のマイクロドロップの融合後、特定の患者に対する最も有効な医薬品およびその濃度が、単一の捕捉チャンバ30および生検から得られる最小数の細胞のみを用いて決定され得る。
【0222】
<組織工学>
上記の方法は、微小組織を正確に形成するために、異なる種類の細胞であってもなくてもよい細胞を含むマイクロドロップを融合することを可能にし得る。
【0223】
キャピラリトラップは、
図5Aおよび
図5Bに示す通りであり得る。好ましくは、第1の捕捉ゾーン15は、その体積が第1のマイクロドロップよりも大きくなるような高さを有するので、
図5Aに示すように、捕捉された第1のマイクロドロップ20の底部は平坦ではなく、特に凸面を有する。したがって、WO2016/059302に記載されているように、前記第1のマイクロドロップ20に含まれる細胞は、沈降する間にその界面に沿って滑動し、捕捉された第1のマイクロドロップ20の底部で凝集し、スフェロイドを形成する。この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0224】
第1のマイクロドロップ20は、液体培地中に第1の細胞型の細胞を含んでよく、前記キャピラリトラップ12の第1の捕捉ゾーン15内に捕捉され、一日の固定化後、細胞の沈降により自発的に第1のスフェロイドを形成し得る。好ましくは、マイクロ流体システムは、第1のスフェロイドを形成する間にキャピラリトラップの近くに流体の流れを有さないので、第1のマイクロドロップ20の液体は動かされない。液体培地中に第2の細胞型の細胞を含む第2のマイクロドロップ25が第2の捕捉ゾーン18に捕捉され得る。第1および第2のマイクロドロップの融合後、2つの異なる型の細胞の培養物が得られ、その構造は特に実験条件に依存する。
【0225】
第1のマイクロドロップ20が液体である場合、第2のマイクロドロップ25の細胞は、融合後、第1のマイクロドロップ20の内容物と混合し、次いで定着し、第1の細胞型の細胞のスフェロイドを直接与える。
【0226】
第2のマイクロドロップ25の細胞が、融合前に第2のスフェロイドを形成する時間があった場合、2つのマイクロドロップ20および25の融合は第1および第2のスフェロイドの融合をもたらす。
第2のマイクロドロップ25の細胞がスフェロイドを形成する前に融合が起こると、細胞は第1のスフェロイドの表面に沈降後に堆積する。
【0227】
2つのマイクロドロップ20または25のうちの一方が融合操作の前にゲル化された場合、2つの細胞集団は区画化される。実際に、第2のマイクロドロップ25が到着する前に第1のスフェロイドを含むマイクロドロップ20がゲル化されると、マイクロドロップ20と25の融合後、第2の細胞型の細胞は、ゲルの存在により第1のスフェロイドと直接接触することができなくなる。例えば、哺乳動物細胞は0.9重量%のアガロースのマトリックスを通過することができない。2つの細胞群は、パラクリン経路によってのみ互いに通じることができる。
【0228】
ここに挙げた例は、第1および第2のマイクロドロップ20および25を捕捉するキャピラリトラップ12に関するものであるが、2つより多くのマイクロドロップを捕捉することを可能にするキャピラリトラップ12および/または流体の流れの方向を変更するかまたはしないことによって、いくつかのマイクロドロップを連続的に融合することからなる上述の方法を用いて、より複雑な構造の微小組織を得ることができる。上述のように複数のキャピラリトラップを使用して複数の微小組織を並行して形成することも可能である。
【0229】
微小組織を形成するためのこの技術は、インビボで遭遇する条件を非常に忠実に模倣するための制御された構造でインビトロで微小組織を作製することを可能にし得る。実際、体内では、器官のレベルで機能を再現するために重要な特定のアーキテクチャに従って、さまざまな種類の細胞が組織内に配置されることがしばしばある。
【0230】
後者はまた、患者への移植の目的のためにも使用され得る。例えば、グルカゴン産生アルファ細胞およびインスリン産生ベータ細胞を組み合わせて、糖尿病を治療するために患者の膵臓に移植することを目的としたランゲルハンス島を作り出すことができる。同様に、肝細胞および星状細胞は、肝移植の状況において組み合わせることができる。
【0231】
<ヒドロゲル>
上記の方法はまた、多層ゲルマイクロドロップを作製するために使用され得る。
キャピラリトラップ12は、上記の通りであってよく、第1の捕捉ゾーン15および第2の捕捉ゾーン18を含み得る。
【0232】
図58に示すように、第1のゲル化培地を含む第1のマイクロドロップ20が第1の捕捉ゾーン15に捕捉され、次に第1のゲル化培地がゲル化されて
図58に示されるように第1のゲルのマイクロドロップ200を形成する。次いで、ステップ58に従って、第1のゲル化マイクロドロップ200は、第2のゲル化培地を含み、ステップ56において第2の捕捉ゾーン18に捕捉された第2のマイクロドロップ25と融合され得る。この融合の後、第2のゲル化培地がゲル化されて第1のゲル上に第2のゲルの外層202を構成することができる。この操作を連続して数回繰り返して、第1のゲルのコアと他のゲルの複数の連続した外層とを有するマイクロドロップを形成することができる。
【0233】
図59に示される変形例として、第2のマイクロドロップ25に含まれる第2のゲル化培地は、第1のマイクロドロップと融合する前にゲル化されて第2のゲルのマイクロドロップ204を形成する。2つのマイクロドロップが融合されると、それらは融合前のそれらの形状および位置を保持し、捕捉ゾーンの形状、配置および数に依存する形状のゲル化マイクロドロップ210を形成する。
この方法はまた、生物学的ヒドロゲルに封入されたスフェロイドを得ることを可能にし得る。
【0234】
制御された方法でマイクロドロップにスフェロイドを形成するためには、スフェロイドが形成される間、マイクロドロップの液体の内容物を保持できることが必要である。アガロースは感熱性ヒドロゲルであるため、このプロトコルに非常に適している。それは37℃で液体状態を維持し(超低ゲル化アガロース)、次に4℃で30分後に固化しそして37℃に戻した後に固化した状態を維持する。しかしながら、哺乳動物細胞はアガロースに付着することができず、それを消化することもできない。したがって、このマトリックスは体内で遭遇する細胞外マトリックスとは大きく異なる。例えばI型コラーゲン、フィブロネクチン、Matrigel(登録商標)またはゼラチンなどのヒドロゲルの使用は、自然条件のより良好なシミュレーションのためには好ましいかもしれない。しかしながら、それらのゲル化を制御することはより困難である。例えば、I型コラーゲンは、細胞培養に好ましい条件(低温または酸性pH)では長時間液体状態を維持することができない。細胞が、互いに付着してスフェロイドを形成するのではなく、捕捉後すぐにゲル化されるコラーゲンマイクロドロップに封入される場合、細胞はコラーゲンに付着してその繊維に沿って個々に移動する。
【0235】
この問題は、本発明による方法によって解決することができる。
キャピラリトラップは、
図5Aおよび
図5Bに示す通りであり得る。好ましくは、第1の捕捉ゾーン15は、
図5Aに示すように、第1の捕捉ゾーン15は、捕捉された第1のマイクロドロップ20が平らではなく特に凸状の底部を有するような高さを有し、国際出願2016/059302に記載されているように、前記第1のマイクロドロップ20に含まれる細胞は、沈降する間にその界面に沿って前記第1のマイクロドロップ20内で滑動し、捕捉された第1のマイクロドロップ20の底部で凝集し、スフェロイドを形成する。この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0236】
第1のマイクロドロップ20は、液体培地中に第1の細胞型の細胞を含み得、前記キャピラリトラップ12の第1の捕捉ゾーン15内に捕捉され、1日の固定化後、細胞の沈降により自発的にスフェロイドを形成し得る。好ましくは、マイクロ流体システムは、スフェロイドを形成する間にキャピラリトラップの近くに流体の流れを有さないので、第1のマイクロドロップ20の液体は動かされない。高濃度で上述の生物ヒドロゲルの1つを含む第2のマイクロドロップ25は、第2の捕捉ゾーン18に捕捉され得る。この第2のマイクロドロップが捕捉されると、2つのマイクロドロップは、液体状態のままである生物ヒドロゲルがスフェロイドを含む第1のマイクロドロップと混合されるように、直ちに融合される。次いでゲル化が起こり、スフェロイドはインビボで遭遇する生物学的条件を表す細胞外マトリックス中でカプセル化される。
【0237】
このスフェロイドのカプセル化技術は、上述の微小組織を形成するための技術と組み合わせて、より複雑な微小組織の構造を得ることを可能にし得る。
以下の非限定的な実施例は、上記のような本発明の実施形態の例を説明する。
【0238】
<実施例1>
本方法の実現可能性を実証するために実験を行った。
使用した捕捉チャンバ30は2cm
2のものであり、
図1A、1B、および2と同様の393個の同一のキャピラリトラップを含み、以下の寸法を有する。
a=250μm
b=c=150μm
H=100m
h=50μm
キャピラリトラップ12は、
図49に示すようにマトリックスに従って分布している。
【0239】
マイクロドロップは食用染料を含む。「マイクロ分割フロー」技術により、青から緑、そして黄色までの5つの異なる色を有する1μLのドロップを形成した。これらの1μLのドロップを、傾斜を用いて多くの第1の単分散ナノリットルマイクロドロップ20に分画した(上記f)に記載の方法)。次に、これらの様々な色の第1マイクロドロップ20を混合して異なる色を含む第1のマイクロドロップのパネルを形成し、次にキャピラリトラップ12を含む捕捉チャンバ30に注入した。第1の捕捉ゾーン15を完全に占有するように第1マイクロドロップ20のサイズを調整した。第2の捕捉ゾーン18は、空のままである。
【0240】
同様に、無色透明から赤色までの範囲の1μLのドロップの5つの色相を形成し、異なるように設計された傾斜によって、第1のマイクロドロップよりも小さい第2のマイクロドロップに細分化した。これらの第2のマイクロドロップを混合して異なる色を含む第2のマイクロドロップのパネルを形成し、次いで、そこでそれらが空の第2の捕捉ゾーン25に捕捉されるマイクロ流体チャンバに注入した。
【0241】
こうして、
図60a)に示すような第1および第2のマイクロドロップ20および25の対のマトリックスが得られる。したがって、25種類のペアが可能である。接触している第1および第2のマイクロドロップ20および25は、20体積%の濃度で1H,1H,2H,2H‐ペルフルオロオクタン‐1‐オールを含有するHFE‐7500で捕捉チャンバ30を灌流することによって融合される。
図60b)に見られるように、各キャピラリトラップ内で接触している2つのマイクロドロップの色は混合されて、初期のマイクロドロップの色に応じて、25の可能な色のうちの1つとなる。こうして、25種類の色のマイクロドロップのマトリックスが得られる。
【0242】
この実験は、異なる組成物の対の融合の後に、捕捉チャンバ30内で、同一のトラップ内で異なる濃度の異なる試薬を並行して組み合わせることが可能であることを実証している。
【0243】
<実施例2>
別々のスフェロイドの2回の連続融合から生じるスフェロイドを得るための実験を行った。
マイクロ流体システムは、以下の寸法を有する
図5Aおよび5Bに示すようなキャピラリトラップのマトリックスを有する捕捉チャンバ30を備える。
H=165μm
h
1=388μm、
h
2=80μm
c=200μm
a=400μm
【0244】
最初に、ラット肝細胞(H4IIEC3)を第1のマイクロドロップ20に封入した。第1のマイクロドロップ20を第1の捕捉ゾーン15に捕捉し、沈降後、細胞を各ドロップの底に集めて第1のスフェロイド130を形成した。
図61Aに見られるように、これらの第1のスフェロイドの形成に必要な1日の後、第2のマイクロドロップ25を第2の捕捉ゾーン18に捕捉した。後者もまたH4IIEC3細胞を含むが、第1のマイクロドロップとは対照的に、それらは蛍光マーカー(CellTracker Red(登録商標))で赤色に着色した。第2のマイクロドロップ25の赤色の細胞が各第2のマイクロドロップ25の底に集まり第2のスフェロイド135を形成するように、第1および第2のマイクロドロップ20および25のこれらの対を1日そのままに維持した。次いで、接触している第1および第2のマイクロドロップを、20体積%の濃度で1H,1H,2H,2H‐ペルフルオロオクタン‐1‐オールを含有するHFE‐7500(フッ素化油)でチャンバを灌流することによって融合した。
【0245】
図61Bに見られるように、各トラップでの融合の後、第2のスフェロイド135が沈降し、新たな第1のマイクロドロップ140内の第1のスフェロイド130と第1のマイクロドロップの底部で接触する。接触しているこれらの2つのスフェロイドは、蛍光画像によって明確に識別される互いに付着および融合して2つの部分130および135を有する新たな単一のスフェロイドを形成する(第2のスフェロイド由来の細胞は融合スフェロイドにおいて赤く見え続ける)。残りの実験のために新しい第1のマイクロドロップの安定性を回復するために、チャンバを界面活性剤を含む油で灌流する。
【0246】
次いで、今度は、
図61Cに見られるように、緑色(CellTracker Green(登録商標))に着色したH4IIEC3細胞を封入した第3のマイクロドロップ85を用いてこの操作を繰り返した。同様に、
図61Dに示すように、第3のマイクロドロップ85に第3の緑色スフェロイド145を形成し、次いで、
図61Eに示すように、第3のマイクロドロップ25を新たな第1のマイクロドロップ25と融合させた。接触している第3の緑色スフェロイド145および新たなスフェロイド140は互いに付着および融合して蛍光画像によって明確に識別可能な3つの部分を有する単一のスフェロイドを形成する。
【0247】
したがって、
図62に示すように、3色のスフェロイドのマトリックスが最終的に得られ、それぞれ異なる色の3つのスフェロイドを識別できる。
この実験は、組織工学と関連した用途に対するこの技術の可能性を実証している。実際、同じ種類の細胞で異なる色のスフェロイドを融合するのではなく、補完的な細胞型のスフェロイドを融合して、明確に定義された構成を持つ機能的な微小組織を作成することが容易に想像できる。
【0248】
<実施例3>
単一のマイクロ流体システムにおいて、医薬品(アセトアミノフェン)が肝細胞(ラット肝細胞がん、H4IIEC3細胞)に対して毒性となる濃度を決定する実験を行った。
使用したマイクロ流体チャンバは、
図5Aおよび5Bにおける2cm
2上に252個の同一のトラップを含む。
【0249】
H4IIEC3細胞を含む培地中に0.9重量%で希釈された37℃で液体であるアガロース(超低ゲル化)の第1のマイクロドロップ20を第1の捕捉ゾーン15に捕捉し、第2の捕捉ゾーン18は空の状態とした。次いで、第1のマイクロドロップ20を1日間培養して、細胞を互いに付着させて第1のマイクロドロップ20によるスフェロイドを形成させた。次いで、第1のマイクロドロップ20に4℃の温度を30分間加えることによってゲル化させた。
【0250】
並行して、アセトアミノフェンを培地に高濃度で溶解した。高濃度のフルオレセインをこの溶液に添加した。得られた溶液を純培地で異なる濃度に希釈して、異なる濃度の1μLのドロップを形成した。次いで、これらのドロップを傾斜によって第2のマイクロドロップ25に細分化し、次いで混合された後、第1のマイクロドロップ20を含む捕捉チャンバ30に注入した。これらの第2のマイクロドロップ25は、第1のマイクロドロップ20よりも小さく、第2の捕捉ゾーンの18に捕捉された。
【0251】
融合前に蛍光画像を撮影することによって、第2のマイクロドロップ25における医薬品の濃度と相関する異なるレベルの蛍光を識別することができた。これらのドロップがトラップ内でランダムに固定化されていたとしても、各スフェロイドに対応して、それがキャピラリトラップ12内で組み合わされたアセトアミノフェンの濃度を見つけることが可能である。
【0252】
接触しているマイクロドロップを融合するために、1H,1H,2H,2H‐ペルフルオロオクタン‐1‐オールを20体積%の濃度で含有するHFE‐7500(フッ素化油)でチャンバを灌流した。こうして、アセトアミノフェンは、ゲル化アガロースを通して拡散され、細胞に作用した。アセトアミノフェンに1日間曝露した後、WO2016/059302に記載されているように、マイクロドロップを互いに分離する油を水相と交換して、水相中に存在する蛍光生存率マーカーでスフェロイドを着色する。最終的なマトリックスの画像を撮影することによって、生存率が最も影響を受けたスフェロイドを決定することができた。アセトアミノフェンの濃度が高いほど、生き残る細胞が少なくなることがわかった。したがって、生存率の結果と第2のマイクロドロップにおけるアセトアミノフェンの濃度との相関関係から、これらの肝細胞に対するアセトアミノフェンの毒性の範囲は、1日の静的曝露で10から30mmol/Lであると判断できる。
【0253】
本発明に至った研究は、欧州研究会議から第7次フレームワークプログラム(FP7/2007-2013)/ERC助成契約第278248号において資金を受けた。
【符号の説明】
【0254】
12、12a、12b、12c キャピラリトラップ
15 第1の捕捉ゾーン
18、18a、18b、18c、18m、18v 第2の捕捉ゾーン
20 第1のマイクロドロップ
25、25a、25b、25c、25m、25v 第2のマイクロドロップ
30 捕捉チャンバ
【手続補正書】
【提出日】2022-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の捕捉ゾーン(15)に捕捉された第1の液体マイクロドロップ(20)および第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)に捕捉された第2の液体マイクロドロップ(25、25a、25b、25c、25m、25v)が、キャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)内で互いに接触するように配置された、第1の捕捉ゾーン(15)および第2の捕捉ゾーン(18,18a,18b,18c,18m,18v)を各々が有する複数のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)を含む捕捉チャンバ(30)を備える、マイクロドロップを捕捉するマイクロ流体装置であって、各キャピラリトラップの第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が、前記第1の捕捉ゾーンによっておよび前記第2の捕捉ゾーンによって、第1または第2の液体マイクロドロップ(20、25、25a、25b、25c、25m、25v)に作用する捕獲力が異なるように構成されており、前記キャピラリトラップが、前記捕捉チャンバ(30)内で少なくとも2つの異なる方向に分配されており、前記マイクロドロップ(20、25、25a、25b、25c、25m、25v)が、流体の配向された流れ(F1;F2)によって前記マイクロ流体装置内で移動する、装置。
【請求項2】
前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が空洞である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各キャピラリトラップの前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)は、それらの寸法の少なくとも1つが異なる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
各キャピラリトラップの前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が異なる高さ(h1;h2)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
各キャピラリトラップの前記第1および第2の捕捉ゾーン(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)が、上から見たときに異なる形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
各キャピラリトラップの前記第1の捕捉ゾーン(15)が、前記キャピラリトラップの前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)より大きな面積を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
各キャピラリトラップの前記第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)が、前記キャピラリトラップの前記第1の捕捉ゾーン(15)に近づくにつれて少なくとも一方向に広くなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記キャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)の各々が、捕捉された第2のマイクロドロップ(25a、25b、25c、25m、25v)の各々が前記キャピラリトラップに捕捉された第1のマイクロドロップ(20)または第2のマイクロドロップ(25a、25b、25c、25m、25v)の少なくとも1つと接触するように配置された複数の第2の捕捉ゾーン(18a、18b、18c、18m、18v)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
1平方センチメートル当たり少なくとも10個のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
n個の第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)を含む第1のキャピラリトラップ(12、12a、12b、12c)と、p個の第2の捕捉ゾーン(18、18a、18b、18c、18m、18v)を含む第2のキャピラリトラップとを備え、nがpとは異なる、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
マイクロドロップが流体の流れによって前記キャピラリトラップ(15;18、18a、18b、18c、18m、18v)にランダムに導かれるように、前記捕捉チャンバ(30)が構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
マイクロドロップを注入するまたはマイクロドロップを前記捕捉チャンバ(30)内に形成するための1つまたは複数の入口を備え、複数の入口がある場合、入口の数がキャピラリトラップの数よりも少ない、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記捕捉チャンバ(30)が、少なくとも上壁、下壁、2つの対向する縦側部、および2つの対向する横側部によって区切られており、前記キャピラリトラップ(12)の各々が、少なくとも別のキャピラリトラップ(12)によって前記捕捉チャンバの2つの縦側部の少なくとも一方から分離され、前記キャピラリトラップ(12)の各々が、少なくとも別のキャピラリトラップ(12)によって前記捕捉チャンバの2つの横側部の少なくとも一方から分離されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
実施形態において、本方法は、以下のステップを含む:
‐キャピラリトラップの第1の捕捉ゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第1のマイクロドロップが第1のゾーンに捕捉され続けるように、第1のゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力F4が、流れ(すなわち、マイクロドロップを運ぶ流体の配向された流れ)によって第1のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft4より大きく、抗力Ft4がF4とF5との間にあり、F5がキャピラリトラップの第2の捕捉ゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力を表す、ステップと、
‐次いで、キャピラリトラップの第2の捕捉ゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第2のゾーンに第2のマイクロドロップを装填する間に、流れによって第2のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力Ft5がF5とF3との間にあり、F3が好ましくはF4未満であり、F3がキャピラリトラップの第2のゾーンによって第2のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力である、ステップと、
を含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0200
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0200】
<マイクロドロップ捕捉の時系列の例>
縦軸に流体力学的抗力と比較した捕捉力の強度、横軸に時間を示す
図66に示す実施形態の例では、2つの捕捉ゾーンを有するキャピラリトラップについて、方法は以下のステップを含む。
‐キャピラリトラップの第1のゾーンに第1のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第1のマイクロドロップが第1のゾーンに捕捉され続けるように、第1のゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力
F4が、流れによって第1のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力
Ft4より大きく、抗力
Ft4が
F4と
F5の間であり、
F5がキャピラリトラップの第2のゾーンによって第1のマイクロドロップに及ぼされる捕獲力を表す、ステップ、
‐次に、キャピラリトラップの第2のゾーンに第2のマイクロドロップを捕捉するステップであって、第2のゾーンに第2のマイクロドロップを入れる間の流れによって第2のマイクロドロップに及ぼされる流体力学的抗力
Ft5の力が
F5とF3の間であり、好ましくはF3が
F4未満であり、F3が第2のゾーンによって第2のマイクロドロップに及ぼされる捕捉力である、ステップ。抗力
Ft5は
F4未満である。
このようにして、それぞれキャピラリトラップの2つのゾーンに2つのマイクロドロップの選択的捕捉が得られる。
【外国語明細書】