(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136172
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】皮膚用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20220908BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220908BHJP
A61K 8/9706 20170101ALN20220908BHJP
A61Q 17/04 20060101ALN20220908BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q19/08
A61K8/9706
A61Q17/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118317
(22)【出願日】2022-07-25
(62)【分割の表示】P 2019219007の分割
【原出願日】2019-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】512192532
【氏名又は名称】メディカランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 信一
(72)【発明者】
【氏名】泉 篤史
(57)【要約】
【課題】優れたしわ改善効果及び美白効果を有する皮膚用組成物を提供すること。
【解決手段】皮膚用組成物は、マイクロスポリン様アミノ酸及び抗酸化剤を含む。マイクロスポリン様アミノ酸はシノリンが好ましい。抗酸化剤は、トラネキサム酸、コウジ酸、レチノール、アスコルビン酸、コエンザイムQ10、ハイドロキノン、トコフェロール及びβ-カロテンが好ましい。
【効果】優れたしわ改善効果及び美白効果を有する皮膚用組成物が提供された。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロスポリン様アミノ酸及び抗酸化剤を含む皮膚用組成物。
【請求項2】
前記マイクロスポリン様アミノ酸がシノリンである、請求項1記載の皮膚用組成物。
【請求項3】
しわ改善剤である請求項1又は2記載の皮膚用組成物。
【請求項4】
前記抗酸化剤が、トラネキサム酸、コウジ酸、レチノール、アスコルビン酸、コエンザイムQ10、ハイドロキノン、トコフェロール及びβ-カロテンから成る群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項記載の皮膚用組成物。
【請求項5】
美白化粧料である請求項1又は2記載の皮膚用組成物。
【請求項6】
前記抗酸化剤が、コウジ酸、ハイドロキノン及びアスコルビン酸から成る群より選ばれる少なくとも1種である、請求項4記載の皮膚用組成物。
【請求項7】
前記マイクロスポリン様アミノ酸を含有する海藻エキスを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の皮膚用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、しわ改善効果及び美白効果を有する皮膚用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シノリンは天然の希少アミノ酸群であるマイコスポリン様アミノ酸(MAAs)の一種であり、天然に存在する最も紫外線吸収能の高い物質の一つとして知られている。特に皮膚の老化であるシミ、シワ、たるみの原因であるUVA領域の吸収能が高い。特に既存の紫外線吸収剤では十分にカバーしきれない領域であるUV-A2領域(320~340nm)に極大吸収を示す。自然界においてシノリンは水生生物である紅藻類やサンゴ、シアノバクテリアなどに存在する。
【0003】
シノリンは水溶性物質であり、医薬部外品、化粧品への処方は大きなメリットである。シノリンを含有するMAAsは紫外線による皮膚中のエラスチン、コラーゲンのダメージを抑える働きがある。さらに、ヒアルロン酸の生成を促進する効果も示唆されており、アンチエイジング効果が高い物質として期待されている。
【0004】
シノリンを医薬部外品や化粧品材料として用いることは公知である(特許文献1)。また、シノリンの製造方法も公知である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-52883号公報
【特許文献2】特許第5927593掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れたしわ改善効果及び美白効果を有する皮膚用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは鋭意研究の結果、マイクロスポリン様アミノ酸と抗酸化剤を共存させることにより、優れたしわ改善効果及び美白効果が発揮されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1) マイクロスポリン様アミノ酸及び抗酸化剤を含む皮膚用組成物。
(2) 前記マイクロスポリン様アミノ酸がシノリンである、(1)記載の皮膚用組成物。
(3) しわ改善剤である(2)又は(3)記載の皮膚用組成物。
(4) 前記抗酸化剤が、トラネキサム酸、コウジ酸、レチノール、アスコルビン酸、コエンザイムQ10、ハイドロキノン、トコフェロール及びβ-カロテンから成る群より選ばれる少なくとも1種である、(1)~(3)のいずれか1項記載の皮膚用組成物。
(5) 美白化粧料である(1)又は(2)記載の皮膚用組成物。
(6) 前記抗酸化剤が、コウジ酸、ハイドロキノン及びアスコルビン酸から成る群より選ばれる少なくとも1種である、(4)記載の皮膚用組成物。
(7) 前記マイクロスポリン様アミノ酸を含有する海藻エキスを含む、(1)~(6)のいずれか1項に記載の皮膚用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、優れたしわ改善効果及び美白効果を有する皮膚用組成物が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の皮膚用組成物は、化粧品であってもよいし、美白化粧料と抗シワ化粧料のような医薬部外品であってもよい。これらの形態としては、化粧水、乳液、クリーム、美容液、UV、BBクリーム、化粧下地などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0011】
本発明の皮膚用組成物中に必須成分として含まれるマイクロスポリン様アミノ酸自体及びその製造方法は公知であり、市販もされているので、市販品を用いることができる。マイクロスポリン様アミノ酸としては、シノリン、パリシン、ポルフィラー334、マイコスポリングリシン等が挙げられる。これらのうち、シノリンが好ましい。これらのマイクロスポリン様アミノ酸は、単独で含まれていても複数種類のものが含まれていてもよい。また、これらのマイクロスポリン様アミノ酸は、海藻エキス(緑藻エキス、褐藻エキス、紅藻エキス)中に含まれるので、各マイクロスポリン様アミノ酸を精製せずに海藻エキスを組成物中に含めてもよい。
【0012】
組成物中のマイクロスポリン様アミノ酸の配合量(複数種類のものが含まれる場合にはその合計量)は、特に限定されず、しわ改善効果及び美白効果を発揮する範囲内で適宜設定されるが、組成物全量1mL当り通常、0.01μg~100μg程度、好ましくは、0.05μg~50μg程度、さらに好ましくは0.1μg~5.0μg程度である。
【0013】
本発明の皮膚用組成物中に必須成分として含まれる抗酸化剤としては、皮膚に適用可能な抗酸化剤であれば特に限定されず、化粧品又は医薬部外品の成分として用いることが知られている各種抗酸化剤を用いることができる。このような抗酸化剤の例として、トラネキサム酸、コウジ酸、レチノール、コエンザイムQ10、ハイドロキノン、トコフェロール、アスコルビン酸、β-カロテン、BHT、亜硫酸ナトリウム及びメタ重亜硫酸ナトリウム、並びにこれらの誘導体等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。これらのうち、トラネキサム酸、コウジ酸、レチノール、コエンザイムQ10、ハイドロキノン、トコフェロール、アスコルビン酸、β-カロテンが好ましい。抗酸化剤は、単独でも用いることができるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。組成物中の抗酸化剤の配合量(2種以上の抗酸化剤を用いる場合にはその合計量)は、特に限定されず、しわ改善効果及び美白効果を発揮する範囲内で適宜設定されるが、組成物全量1mL当り通常、0.01μg~100μg質量%程度、好ましくは、0.05μg~50μg程度、さらに好ましくは0.1μg~10μg程度である。
【0014】
上記抗酸化剤のうち、トラネキサム酸、コウジ酸、レチノール、コエンザイムQ10、ハイドロキノン、トコフェロール、アスコルビン酸及びβ-カロテンから成る群より選ばれる少なくとも1種を配合することにより、特に優れたしわ改善効果が得られる。しわ改善効果は、下記実施例に具体的に記載するように、ヒアルロン酸産生促進効果又はコラーゲン産生促進効果により評価することができる。また、上記抗酸化剤のうち、コウジ酸、ハイドロキノン、アスコルビン酸及びトラネキサム酸から成る群より選ばれる少なくとも1種を配合することにより、特に優れた美白効果が得られる。美白効果は、下記実施例に具体的に記載するように、チロシナーゼ活性阻害効果により評価することができる。
【0015】
本願発明の皮膚用組成物は、しわ改善効果及び美白効果を発揮するので、しわ改善剤又は美白化粧料として用いることができる。もちろん、しわ改善効果と美白効果を同時に発揮する化粧料組成物としても用いることができる。この場合には、しわ改善効果及び美白効果の両方に優れた抗酸化剤、すなわち、コウジ酸、ハイドロキノン、アスコルビン酸及びトラネキサム酸から成る群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の化粧料組成物は、上記各成分を溶媒中に含むものでよく、溶媒としては水が好ましい(少量(5質量%以下程度)のエタノールを含んでいてもよい)。溶媒が水の場合、化粧水の形態となる。化粧水の場合、各成分を水に入れ、ホモジナイズすることにより、本発明の化粧料を製造することができる。また、本発明の化粧料組成物は、化粧水の形態に限らず、周知の方法によりクリームやゲルの形態とすることもできる。クリームの形態にする場合、周知のとおり、モノステアリン酸グリセリル, モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリソルベート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類等の添加剤を、例えば0.10質量%~20.00質量%程度添加することによりクリームの形態にすることができる。また、ゲルの形態にする場合、周知のとおり、カルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル )クロスポリマー、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、アクリレーツクロスポリマー、ベントナイト類、ヘクトライト類、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス-20)コポリマー、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ポリグルタミン酸Na、ポリビニルピロリドン、(ビニルピロリドン/VA)コポリマー、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、シロキクラゲ多糖体等の添加剤を、例えば0.01質量%~10.00質量%程度添加することによりゲルの形態にすることができる。
【0017】
本発明の化粧料組成物は、上記した必須成分に加え、化粧料に用いられている各種の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、抗菌剤、保湿剤、抗炎症剤等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。抗菌剤としては、パラベン類、フェノキシエタノール、ペンチレングリコール、カプリン酸グリセリル、イソプロピルメチルフェノール、O-シメン-5-オール、オクタンジオール等を例示することができる。保湿剤としては、グリセリン、ブチレングリコール、ヒアルロン酸Na、セラミド類、コンドロイチン硫酸Na、コラーゲン、カンゾウ葉エキス、アマチャヅル葉エキス、ゲットウ葉エキス等を例示することができる。抗炎症剤としては、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、オウゴンエキス、オタネニンジンエキス、カミツレエキス、カンゾウフラボノイド等を例示することができる。
【0018】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例0019】
実施例1~18、比較例1~19 ヒアルロン酸産生促進効果(しわ改善効果)試験
精製水1mL中にシノリン1μgと、表1に示す各種抗酸化剤を表1に示す量だけ溶解した組成物を調製した。比較のため、精製水1mL中にシノリンのみを1μg溶解した組成物(比較例1)及び精製水1mL中に表1に示す抗酸化剤のみを溶解した組成物(比較例2~19)を調製した。また、陰性対照として精製水、陽性対照としてN-アセチルグルコサミン(GlcNac)を用いた。
【0020】
ヒアルロン酸産生促進効果は次のようにして評価した。24穴プレートの各ウェルに、ヒト皮膚繊維芽細胞(クラボウ社製品)を5×10000細胞/ml入れた。5%FCS-MEM (Fetal Calf SerumーMinimum Essential amino acids Media)を用い37℃、5%二酸化炭素形状維持のまま72時間培養した。その後、0.5% FCS-MEMに交換し、試料を最終濃度10μg/mlに添加した。陽性対象のN-アセチルグルコサミンは最終濃度0.1mMol添加した。添加から24時間後の各培養液上清中のヒアルロン酸量を定量した。ヒアルロン酸結合タンパク質(HABP)およびビオチン標識HABPを用いた結合タンパクサンドウィッチ法を用いた。マイクロプレートリーダーにて 450nmの吸光度測定を行った。ヒアルロン酸産生促進率は、陰性対象のヒアルロン酸量を100として算出した。結果を下記表2に示す。
【0021】
【0022】
表1に示されるように、各実施例におけるヒアルロン酸量は、シノリンのみを含む場合(比較例1)と対応する各濃度の各抗酸化剤のみを含む場合(比較例2~19)の和よりも大きくなっており、シノリンと各種抗酸化剤との併用により、ヒアルロン酸の産生量について相乗効果が発揮されることが明らかになった。
【0023】
実施例19~21、比較例20~23 美白効果試験
シノリン0.5μgと、下記表2に示す各抗酸化剤0.5μgとを1mLの精製水に溶解した(実施例19~21)。比較のため、シノリン0.5μgを1mLの精製水に溶解した(比較例20)。また、各抗酸化剤0.5μgを1mLの精製水に溶解した(比較例20~23)。
【0024】
チロシナーゼは、メラニン生成過程において、チロシンからL-DOPAへの水酸化反応、及びL-DOPAからドーパキノンへの酸化反応を触媒しており、生体内でチロシンからのメラニン生合成に直接影響を及ぼしている。チロシナーゼの阻害はメラニン生成阻害につながる。本発明の組成物がチロシナーゼ活性を阻害する効果を調べた。
【0025】
0.1Mリン酸バッファー(PH6.5)600μlに、2.5mML-チロシン水溶液を333μl加えた。両試薬を25℃でインキュベートした。ついで33μlの試料溶液(DMSO溶液)を加えて撹拌し、33μlのチロシナーゼ水溶液(1380unit/ml)を加えて酵素反応を開始した。測定は分光光度計を用いる。測定機内は25℃に保たれるよう設定した。活性の評価はチロシナーゼにより合成されるメラニンの吸光度変化(405nm)を指標とした。結果を下記表2に示す。
【0026】
【0027】
表2に示されるように、各実施例におけるチロシナーゼ阻害%は、シノリンのみを含む場合(比較例20)と対応する各濃度の各抗酸化剤のみを含む場合(比較例21~23)の和よりも大きくなっており、シノリンと各種抗酸化剤との併用により、チロシナーゼの阻害活性について相乗効果が発揮されることが明らかになった。
【0028】
実施例23~62、比較例24~64 コラーゲン産生促進効果(しわ改善効果)試験
正常ヒト線維芽細胞に被験物質を48時間暴露したのち、染色液(シリウスレッド及びファストグリーン)を用いて常法により細胞内のコラーゲン及び非コラーゲンタンパク質を染色し、細胞内のコラーゲン量を定量する試験を行った。
【0029】
予備試験として、24時間培養した人線維芽細胞に被験物質を48時間暴露(1.0mL)し、MTT法により細胞生存率を求め、細胞に影響を与えない被験物質濃度を確認した。被験物質1.0mL中に含まれる物質は、エタノール50%、被験物質総量、残りは水である。
【0030】
本試験では、ヒト線維芽細胞を試験用プレートで24時間培養し、被験物質1.0mLを混合した培地に交換し、48時間培養した。細胞をシリウスレッド及びファストグリーンで染色し、常法によりコラーゲン及びタンパク質を抽出した。吸光度(570nm)を測定し、総タンパク質量当たりのコラーゲン量を求めた。各例のサンプル数は3であった。また、陽性対照としては、3-O-エチルアスコルビン酸を用いた(データ示さず)。結果を下記表3に示す。
【0031】
【0032】
表3に示すように、シノリン単独(1μg)ではコラーゲンは生産されず(比較例64)、一方、シノリンと各抗酸化剤とを併用した場合には、各抗酸化剤単独の場合よりも吸光度が大きかった。したがって、シノリンと各抗酸化剤とを併用することによる相乗効果が確認された。