(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136216
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】反射ターゲット
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20220908BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119212
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2017099409の分割
【原出願日】2017-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 登
(57)【要約】
【課題】反射プリズムの開口を、トータルステーションのレーザー光出射口と正しく正対させることが可能となり、計測対象物の位置座標を正確に計測することが可能な反射ターゲット100を提供する。
【解決手段】本発明に係る反射ターゲット100は、追尾機能を有するトータルステーション10から射出されるレーザー光を受光する開口132を有し、前記開口から入射したレーザー光を反射するプリズム130と、前記開口132を任意の方向に向けさせるように前記プリズム130の姿勢を変更させるプリズム姿勢変更機構部108と、外部の機器と通信を行う通信部と、前記トータルステーション10によって計測され、前記通信部を介して取得された前記プリズム130の反射点Cの座標と、前記トータルステーションの基準点の座標と、を結ぶ線分上に、前記開口の中心の座標Sが配されるように、前記プリズム姿勢変更機構部108に対して制御指令を出力する制御部と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追尾機能を有するトータルステーションから射出されるレーザー光を受光する開口を有し、前記開口から入射したレーザー光を反射するプリズムと、
前記開口を任意の方向に向けさせるように前記プリズムの姿勢を変更させるプリズム姿勢変更機構部と、
外部の機器と通信を行う通信部と、
前記トータルステーションによって計測され、前記通信部を介して取得された前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標と、を結ぶ線分上に、前記開口の中心の座標が配されるように、前記プリズム姿勢変更機構部に対して制御指令を出力する制御部と、
を有することを特徴とする反射ターゲット。
【請求項2】
基台と、
前記基台に対して回転する第1ブラケットと、
前記第1ブラケットを駆動する第1回転駆動部と、
前記第1ブラケットに対して回転する第2ブラケットと、
前記第2ブラケットを駆動する第2回転駆動部と、
前記第2ブラケットに取り付けられ、追尾機能を有するトータルステーションから射出されるレーザー光を受光する開口を有し、前記開口から入射したレーザー光を反射するプリズムと、
外部の機器と通信を行う通信部と、
前記トータルステーションによって計測され、前記通信部を介して取得された前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標と、を結ぶ線分上に、前記開口の中心の座標が配されるように、前記第1回転駆動部に対して第1回転制御指令を出力し、前記第2回転駆動部に対して第2回転制御指令を出力する制御部と、
を有することを特徴とする反射ターゲット。
【請求項3】
前記制御部は、
前記トータルステーションによって計測される前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標とに基づいて、前記第1回転指令及び前記第2回転指令を算出することを特徴とする請求項2に記載の反射ターゲット。
【請求項4】
前記基台の姿勢を検知する姿勢検知部を有し、
前記制御部は、前記姿勢検知部による検知情報と、前記トータルステーションによって計測される前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標とに基づいて、前記第1回転指令及び前記第2回転指令を算出することを特徴とする請求項2に記載の反射ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場などにおいて、トータルステーションなどから出射されるレーザー光を反射する反射ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場において、トータルステーションなどからレーザー光を出射して計測対象物からの反射光を基に、当該計測対象物までの距離と方向を計測することで、計測対象物の位置座標を取得する技術が知られている。このようなトータルステーションを用いた計測においては、計測対象物にはプリズムなどの反射ターゲットが取り付けられる。また、トータルステーションには、このような反射ターゲットを自動的に追尾する機能を有するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2008-121219号公報)には、建設現場において、鋼管杭を打設する工事を行う際に、鋼管杭を杭リーダーにより支持し、打設位置を自動追尾しながら打設するシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2008-121219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の反射ターゲット100の問題点について説明する。
図8は従来の反射ターゲット100の課題を説明する図であり、例として、反射ターゲット100が取り付け部材90によって柱状の計測対象物に取り付けられている様子を模式的に示している。
図8において、反射ターゲット100は模式的に示されている。また、
図8中、点線はトータルステーション10からのレーザー光の出射方向を示しており、反射プリズム130によるレーザー光の反射を示すものではない。
【0005】
トータルステーション10は、反射ターゲット100に設けられた反射プリズム130に向けてレーザー光を出射し、反射プリズム130からの反射光を受光することで、反射プリズム130の方位(水平角、鉛直角)を計測すると共に、反射プリズム130との間の距離も計測する。トータルステーション10は既知の座標に設置されることで、当該既知の座標と、計測された方位(水平角、鉛直角)データと、距離データとから、反射プリズム130の反射点C(反射プリズム130の基準位置)の位置座標を算出する。さらに、反射点Cから反射プリズム130が取り付けられている計測対象物の位置座標が算出される。
【0006】
反射点Cから反射プリズム130が取り付けられている反射ターゲット100の位置座標や計測対象物の位置座標を正確に算出するためには、トータルステーション10のレーザー光出射口(不図示)と、反射プリズム130の開口132とが正対している必要がある。
【0007】
図8(A)は反射ターゲット100における反射プリズム130の向きの調整が正しくなされていない状態を示している。すなわち、トータルステーション10のレーザー光出射口(不図示)と、反射プリズム130の開口132とが正しく正対していない状態を示している。このとき、トータルステーション10は反射プリズム130を追尾し、反射プリズム130の反射点Cを算出することができるが、この反射点Cに基づいて、反射ターゲット100の位置座標を算出したとしても、その算出値は正確ではない。
【0008】
一方、
図8(B)は反射ターゲット100における反射プリズム130の向きが正しく調整されている状態を示している。
図8(B)は、トータルステーション10のレーザー光出射口(不図示)と、反射プリズム130の開口132とが正しく正対している状態を示している。このとき、反射プリズム130の反射点Cと、反射ターゲット100の位置関係は規定通りとなり、トータルステーション10によって算出される反射点Cに基づいて、反射ターゲット100の位置座標を正確に算出することができることとなる。
【0009】
このように、トータルステーション10の反射ターゲット100においては、正確な位置座標の計測のために、反射プリズム130の開口132をレーザー光出射口(不図示)と正しく正対させなければならないが、従来の反射ターゲット100には、そのように反射プリズム130の姿勢を変更させることができず、計測した位置座標には誤差が含まれることがあり、問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係る反射ターゲットは、追尾機能を有するトータルステーションから射出されるレーザー光を受光する開口を有し、前記開口から入射したレーザー光を反射するプリズムと、前記開口を任意の方向に向けさせるように前記プリズムの姿勢を変更させるプリズム姿勢変更機構部と、外部の機器と通信を行う通信部と、前記トータルステーションによって計測され、前記通信部を介して取得された前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標と、を結ぶ線分上に、前記開口の中心の座標が配されるように、前記プリズム姿勢変更機構部に対して制御指令を出力する制御部と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る反射ターゲットは、基台と、前記基台に対して回転する第1ブラケットと、前記第1ブラケットを駆動する第1回転駆動部と、前記第1ブラケットに対して回転する第2ブラケットと、前記第2ブラケットを駆動する第2回転駆動部と、前記第2ブラケットに取り付けられ、追尾機能を有するトータルステーションから射出されるレーザー光を受光する開口を有し、前記開口から入射したレーザー光を反射するプリズムと、外部の機器と通信を行う通信部と、前記トータルステーションによって計測され、前記通信部を介して取得された前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標と、を結ぶ線分上に、前記開口の中心の座標が配されるように、前記第1回転駆動部に対して第1回転制御指令を出力し、前記第2回転駆動部に対して第2回転制御指令を出力する制御部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る反射ターゲットは、前記制御部は、前記トータルステーションによって計測される前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標とに基づいて、前記第1回転指令及び前記第2回転指令を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る反射ターゲットは、前記基台の姿勢を検知する姿勢検知部を有し、前記制御部は、前記姿勢検知部による検知情報と、前記トータルステーションによって計測される前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標とに基づいて、前記第1回転指令及び前記第2回転指令を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る反射ターゲットは、前記トータルステーションによって計測される前記プリズムの反射点の座標と、前記トータルステーションの基準点の座標と、を結ぶ線分上に、前記開口の中心の座標が配されるように、プリズム姿勢変更機構部に対して制御指令を出力するので、このような反射ターゲットによれば、反射プリズムの開口を、トータルステーションのレーザー光出射口と正しく正対させることが可能となり、計測対象物の位置座標を正確に計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る反射ターゲット100の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る反射ターゲット100のシステム構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る反射ターゲット100の動作例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る反射ターゲット100の利用方法を説明する図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る反射ターゲット100の利用方法を説明する図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る反射ターゲット100の利用方法を説明する図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る反射ターゲット100による反射プリズム130の姿勢制御を説明する図である。
【
図8】従来の反射ターゲット100の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係る反射ターゲット100の斜視図である。また、
図2は本発明の実施形態に係る反射ターゲット100のシステム構成を示すブロック図である。
【0017】
本発明に係る反射ターゲット100は、反射プリズム130が装着され、計測対象位置に取り付けられて用いられるものである。反射ターゲット100は、内部に反射プリズム130を収容可能なプリズム収容胴部131を有している。プリズム収容胴部131の先端側には、光の入射口である反射プリズム130の開口132が設けられている。
【0018】
反射ターゲット100に設けられている反射プリズム130には、例えば、トータルステーション10によって出射されたレーザー光が入射される。反射プリズム130の開口132に入射された光は、反射プリズム130内で、入射光と平行な反射光とされ、反射プリズム130から出射される。入射光が反射光として折り返される仮想の点を、反射プリズム130の反射点Cとして定義する。この反射点Cは、トータルステーション10が反射プリズム130の位置座標を計測する際の基準点となる。また、反射プリズム130の開口132の中心をSとして定義する。
【0019】
本発明に係る反射ターゲット100においては、反射プリズム130の姿勢を変更することで、反射プリズム130の開口132が、常に、トータルステーション10のレーザー光出射口(不図示)と正しく正対するようにしている。このような反射プリズム130の姿勢を変更するためのプリズム姿勢変更機構部108と称する。
【0020】
以下、本実施形態に係る反射ターゲット100においては、基台105に対して、第1軸111を中心に回転する第1ブラケット115と、第1ブラケット115に対して、第2軸121を中心に回転し、反射プリズム130が取り付けられている第2ブラケット125と、からなるプリズム姿勢変更機構部108を例に挙げ説明を行うが、反射プリズム130の開口132を任意の方向に向けさせるように反射プリズム130の姿勢を変更させることを可能とする構成であれば、その他の任意の構成を用いることができる。
【0021】
本発明に係る反射ターゲット100の基台105は、反射ターゲット100を計測対象物に取り付ける際の部材として機能する。また、基台105の中には、制御部150などを構成する電子回路や、この電子回路に給電を行うバッテリーなどがパッケージングされている。
【0022】
ここで、基台105の中には、基台105自体の姿勢を検知する姿勢検知部160が設けられていることが好ましい。姿勢検知部160としては、ジャイロセンサーと加速度センサーと地磁気センサーを組み合わせたセンサーなどを利用することができる。
【0023】
姿勢検知部160により、基台105が計測対象物に対して、どのような姿勢で取り付けられているかを把握することができる。姿勢検知部160で検知される姿勢情報は、制御部150に入力される。
【0024】
制御部150は、姿勢検知部160より得られる姿勢情報に基づいて、第1ブラケット115の回転角と、第2ブラケット125の回転角と決定することで、反射プリズム130の開口132を所望とする方向に向けさせるように反射プリズム130の姿勢を変更させることが可能となる。
【0025】
ただし、上記のような姿勢検知部160は、必須の構成要件ではない。例えば、計測対象物に対して必ず定まった姿勢で反射ターゲット100が取り付けられるような用途であれば、姿勢検知部160は不要である。
【0026】
さて、上記のような基台105からは第1回転駆動部110が延在するように設けられている。第1回転駆動部110内には、第1モーター112と、第1モーター112の回転軸(不図示)の回転角度を検出する第1エンコーダー113とが設けられている。本発明に係る反射ターゲット100においては、第1エンコーダー113によって検出される第1モーター112の回転角度によって、第1モーター112を高い精度で回転制御する。
【0027】
第1モーター112に対する制御指令θ1は、制御部150から出力されると共に、第1エンコーダー113によって検出される第1モーター112の回転角度データは、制御部150に入力されることで、第1モーター112の回転制御が実行される。
【0028】
ここで、制御部150は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理装置である。
【0029】
第1モーター112の回転軸(不図示)には、第1ブラケット115が取り付けられており、第1モーター112の回転に伴い、θ1=0のホームポジションから任意の回転角で、第1軸111を中心として第1ブラケット115が回転するようになっている。
【0030】
また、第1ブラケット11の一端には、第2回転駆動部120が設けられている。第2回転駆動部120内には、第2モーター122と、第2モーター122の回転軸(不図示)の回転角度を検出す第2エンコーダー123とが設けられている。本発明に係る反射ターゲット100においては、第2エンコーダー123によって検出される第2モーター122の回転角度によって、第2モーター122を高い精度で回転制御する。
【0031】
第2モーター122に対する制御指令θ2は、制御部150から出力されると共に、第2エンコーダー123によって検出される第2モーター122の回転角度データは、制御部150に入力されることで、第2モーター122の回転制御が実行される。
【0032】
第2モーター122の回転軸(不図示)には、第2ブラケット125が取り付けられており、第2モーター122の回転に伴い、θ2=0のホームポジションから任意の回転角で、第2軸121を中心として第2ブラケット125が回転するようになっている。
【0033】
なお、反射プリズム130の反射点Cは、第1軸111と第2軸121の交点に配されるように設定されると、種々の演算が簡単となり好ましいが、このことは必須の要件ではない。
【0034】
第2ブラケット125には、反射プリズム130が取り付けられており、本発明に係る反射ターゲット100においては、第1ブラケット115及び第2ブラケット125が回転することで、反射プリズム130の開口132を所望とする任意の方向に向けさせるように反射プリズム130の姿勢を変更させることが可能となる。
【0035】
例えば、制御部150から、第1モーター112に対する第1の回転制御指令θ
1=φが出力され、第2モーター122に対する第2の回転制御指令θ
2=ψが出力されることで、反射ターゲット100においては、反射プリズム130の姿勢を
図3に示すようなものとすることができる。
【0036】
本発明に係る反射ターゲット100においては、書き換え可能な記憶部180が、制御部150とデータ通信可能に設けられている。このような記憶部180には、少なくとも、トータルステーション10の測定の際の基準点となる座標である測定中心Tの座標を記憶させておく。
【0037】
また、本発明に係る反射ターゲット100においては、外部の機器と通信を行う通信部170が設けられている。通信部170は、外部の機器から受信したデータを制御部150に転送すると共に、制御部150から転送されたデータを外部の機器に送信する。ここで、外部の機器としては、トータルステーション10にデータ通信可能に接続されているデータ転送装置20想定している。このデータ転送装置20においては、データ処理部25がトータルステーション10から計測データを受領すると、これを通信部27から無線によって送信する構成となっている。反射ターゲット100における通信部170では、データ転送装置20の通信部27から送信されるトータルステーション10の計測データを受信する。
【0038】
なお、通信部170は有線によるもの無線によるもののいずれも用いることができるが、無線によるものの方がより利便性が高い。
【0039】
以上のように構成される本発明に係る反射ターゲット100の利用方法について説明する。
図4乃至
図6は本発明の実施形態に係る反射ターゲット100の利用方法を説明する図である。
図4乃至
図6では計測対象物を、吊り上げて上昇させつつ計測対象物の位置座標(反射点Cから所定量オフセットした計測対象物における所定点の位置座標)をトータルステーション10で計測することを想定している。
【0040】
なお、トータルステーション10としては、一般的な計測機能に加え、他の外部機器と通信を行い得る通信機能と、反射プリズム130を自動的に追尾する追尾機能と、を少なくとも有するものを用いる。
【0041】
上記のような計測においては、まず、取り付け部材90を用いて、計測対象物に対して反射ターゲット100を取り付けるようにする。(
図4参照)
続いて、
図5に示すように、手動で反射ターゲット100の反射プリズム130を、トータルステーション10に向けた上で、トータルステーション10による反射プリズム130の自動追尾を開始する。反射プリズム130を手動でトータルステーション10に向ける際は、だいたいの方向で良く、正確である必要はない。要は、トータルステーション10によって、反射プリズム130が捕捉可能に反射プリズム130の向きが設定されていればよい。
【0042】
さて、上記のような設定がされた上で、
図6に示すように計測対象物を吊り上げていく。このとき、トータルステーション10は反射プリズム130を自動追尾すると共に、計測した反射プリズム130の反射点Cに係る情報を、反射ターゲット100に対して送信する。
【0043】
このとき、本発明に係る反射ターゲット100が、反射プリズム130の姿勢をどのように変更していくのかを、
図7を参照して説明する。
図7は本発明の実施形態に係る反射ターゲット100による反射プリズム130の姿勢制御を説明する図である。反射ターゲット100については、反射プリズム130を抜き出して、模式的に示している。
【0044】
図7において、トータルステーション10の基準点の座標(x
t,y
t,z
t)は既知点であり、当該座標情報については反射ターゲット100の記憶部180に記憶されており、制御部150によって参照されるようになっている。
【0045】
一方、計測対象物の上昇に伴い、上昇する反射プリズム130の反射点Cの座標(xc,yc,zc)は、時々刻々トータルステーション10によって計測され、通信部170を介して制御部150が取得する。
【0046】
制御部150では、トータルステーション10によって計測される反射プリズム130の反射点Cの座標(xc,yc,zc)と、トータルステーション10の基準点Tの座標(xt,yt,zt)と、を結ぶ線分上に、開口中心Sの座標(xs,ys,zs)が配されるように、第1回転駆動部110に対して第1回転制御指令θ1を出力し、第2回転駆動部120に対して第2回転制御指令θ2を出力する。
【0047】
本発明に係る反射ターゲット100においては、制御部150が上記のような反射プリズム130の姿勢制御を行うことで、反射プリズム130の開口132を、トータルステーション10のレーザー光出射口と正しく正対させることが可能となり、計測対象物の位置座標を正確に計測することが可能となる。
【0048】
なお、本実施形態においては、反射ターゲット100の制御部150で種々の演算を行うような構成としているが、このような演算の一部は、トータルステーション10側の演算手段(不図示)で行うようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、吊り上げることで上昇する計測対象物に反射ターゲット100を取り付けた例に基づいて説明を行ったが、本発明に係る反射ターゲット100はどのような計測対象物にも適用できる。計測対象物は静止するものであっても、移動するものであっても良い。
【0050】
移動する計測対象物として、例えば、工場内の搬送車などの移動体に本発明に係る反射ターゲット100を取り付けることで、当該移動体の位置を正確に計測し、位置データのログを残すことができるようになる。
【0051】
また、本発明に係る反射ターゲット100をロボットアームなどに取り付け、当該ロボットアームの位置を計測することにより、当該ロボットアームの制御をより正確に行うことなどが可能となる。
【0052】
以上、本発明に係る反射ターゲット100は、トータルステーション10によって計測される前記プリズムの反射点Cの座標と、トータルステーション10の基準点Tの座標と、を結ぶ線分上に、開口の中心Sの座標が配されるように、プリズム姿勢変更機構部108に対して制御指令を出力するので、このような反射ターゲット100によれば、反射プリズム130の開口132を、トータルステーション10のレーザー光出射口と正しく正対させることが可能となり、計測対象物の位置座標を正確に計測することが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10・・・トータルステーション
20・・・データ転送装置
25・・・データ処理部
27・・・通信部
90・・・取り付け部材
100・・・反射ターゲット
105・・・基台
108・・・プリズム姿勢変更機構部
110・・・第1回転駆動部
111・・・第1軸
112・・・第1モーター
113・・・第1エンコーダー
115・・・第1ブラケット
120・・・第2回転駆動部
121・・・第2軸
122・・・第2モーター
123・・・第2エンコーダー
125・・・第2ブラケット
130・・・反射プリズム
131・・・プリズム収容胴部
132・・・開口
150・・・制御部
160・・・姿勢検知部
170・・・通信部
180・・・記憶部
C・・・反射点
S・・・開口中心
T・・・測定中心(トータルステーション基準点)