IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

特開2022-136224ターゲット、測量方法およびプログラム
<>
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図1
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図2
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図3
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図4
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図5
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図6
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図7
  • 特開-ターゲット、測量方法およびプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136224
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ターゲット、測量方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20220908BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119344
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2017212870の分割
【原出願日】2017-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】西田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 康司
(57)【要約】
【課題】トータルステーションの測位機能とトータルステーションと複合化したレーザースキャナとの校正のための測定を容易に行う。
【解決手段】立体構造を有する測定対象物と、反射プリズム101とを有し、反射プリズム101は、前記立体構造の頂点の位置に配置され、反射プリズム101は、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズム101に入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、前記立体構造の前記頂点の位置と前記反射プリズム101の前記光学的中心の位置が一致または一致しているとみなせるターゲット100。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体構造を有する測定対象物と、
反射プリズムと
を有し、
前記反射プリズムは、前記立体構造の頂点の位置に配置され、
前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、
前記立体構造の前記頂点の位置と前記反射プリズムの前記光学的中心位置が一致または一致しているとみなせるターゲット
【請求項2】
前記反射プリズムは、前記測定対象物に対する着脱を可能にする着脱用付帯部を備え、
前記測定対象物における前記立体構造の前記頂点の位置には、凹部が設けられ、
前記凹部に前記着脱用付帯部が嵌め込まれることで前記反射プリズムが前記測定対象物に固定され、
前記反射プリズムの前記測定対象物への固定は、前記反射プリズムを外側に向けた状態と前記反射プリズムを前記凹部の内側に向けた状態のいずれかが選択可能な請求項1に記載のターゲット
【請求項3】
前記立体構造は、内側が反射面である多角推形状を有し、
前記多角推形状の頂点が前記光学的中心となるように、前記反射プリズムが前記測定対象物と結合している請求項1に記載のターゲット
【請求項4】
内側が反射面である円錐形状を有した測定対象物と、
反射プリズムと
を有し、
前記反射プリズムは、前記円錐形状の頂点の位置に配置され、
前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、
前記円錐形状の頂点が前記光学的中心となるように、前記反射プリズムが前記測定対象物と結合しているターゲット。
【請求項5】
立体構造を有する測定対象物と、
反射プリズムと
を有し、
前記反射プリズムは、前記立体構造の頂点の位置に配置され、
前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、
前記立体構造の前記頂点の位置と前記反射プリズムの前記光学的中心の位置が一致または一致しているとみなせるターゲットを用いた測量方法であって、
前記反射プリズムの前記光学的中心位置の三次元座標を受け付けるプリズム座標受付ステップと、
前記測定対象物をレーザースキャンすることで得た点群データを受け付ける点群データ受付ステップと、
前記点群データに基づき、前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標を求める頂点座標算出ステップと、
前記反射プリズムの前記光学的中心位置の三次元座標と前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標の差を算出する座標差算出ステップと
を有する測量方法。
【請求項6】
立体構造を有する測定対象物と、
反射プリズムと
を有し、
前記反射プリズムは、前記立体構造の頂点の位置に配置され、
前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、
前記立体構造の前記頂点の位置と前記反射プリズムの前記光学的中心の位置が一致または一致しているとみなせるターゲットを用いた測量をコンピュータに実行させるプログラムであって、
コンピュータに
前記反射プリズムの前記光学的中心位置の三次元座標を受け付けるプリズム座標受付ステップと、
前記測定対象物をレーザースキャンすることで得た点群データを受け付ける点群データ受付ステップと、
前記点群データに基づき、前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標を求める頂点座標算出ステップと、
前記反射プリズムの前記光学的中心の位置の三次元座標と前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標の差を算出する座標差算出ステップと
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射プリズムおよびそれを用いた測量の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
測量装置として、測距光を用いて特定の点の位置を精密に測定する自動視準追尾(モータドライブ)TS(トータルステーション)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、測量対象物(ターゲット)の点群データを得る装置として、レーザースキャナが知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、トータルステーションからの測距光を反射する反射プリズムが知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-229192号公報
【特許文献2】特開2010-151682号公報
【特許文献3】特開2000-221032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
精密な測位精度を有するTSと、広い範囲の点群データを取得できるレーザースキャナを複合化した測量装置が考えられる。この場合、TSによる測定座標とレーザースキャナ機能による測定座標とが一致するように予め校正処理を行う必要がある。なぜなら、両者が一致しないと、TSによる測位データとレーザースキャナによる点群データとを統合した場合、データの精度に問題が生じるからである。
【0005】
ここで、ターゲットの自動追尾機能を有するTSによる測定は、多くの場合、反射プリズムをターゲットとして測定するものであるため、前提として測定される座標は反射プリズム内に存在する光学的中心の座標となる。一方で、レーザースキャナによる測定は、概形を得たい対象がターゲットとなるため、測定されるのはターゲットの表面である。
【0006】
これらの事情により、TSとレーザースキャナとでターゲットとなる物体の同一点を測定することは難しい。また、平面板を用いて座標合わせを行う方法は、スキャナによる測定された三次元点群データの正しさの評価に偏りが生じてしまう問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、トータルステーションの測位機能とトータルステーションと複合化したレーザースキャナとの校正のための測定を容易に行うことができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、立体構造を有する測定対象物と、反射プリズムとを有し、前記反射プリズムは、前記立体構造の頂点の位置に配置され、前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、前記立体構造の前記頂点の位置と前記反射プリズムの前記光学的中心位置が一致または一致しているとみなせるターゲットである
【0009】
本発明において、前記反射プリズムは、前記測定対象物に対する着脱を可能にする着脱用付帯部を備え、前記測定対象物における前記立体構造の前記頂点の位置には、凹部が設けられ、前記凹部に前記着脱用付帯部が嵌め込まれることで前記反射プリズムが前記測定対象物に固定され、前記反射プリズムの前記測定対象物への固定は、前記反射プリズムを外側に向けた状態と前記反射プリズムを前記凹部の内側に向けた状態のいずれかが選択可能な態様が挙げられる。
【0010】
本発明において、前記立体構造は、内側が反射面である多角推形状を有し、前記多角推形状の頂点が前記光学的中心となるように、前記反射プリズムが前記測定対象物と結合している態様が挙げられる。
【0011】
本発明は、内側が反射面である円錐形状を有した測定対象物と、反射プリズムとを有し、前記反射プリズムは、前記円錐形状の頂点の位置に配置され、前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、前記円錐形状の頂点が前記光学的中心となるように、前記反射プリズムが前記測定対象物と結合しているターゲットである。
【0012】
本発明は、立体構造を有する測定対象物と、反射プリズムとを有し、前記反射プリズムは、前記立体構造の頂点の位置に配置され、前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、前記立体構造の前記頂点の位置と前記反射プリズムの前記光学的中心の位置が一致または一致しているとみなせるターゲットを用いた測量方法であって、前記反射プリズムの前記光学的中心位置の三次元座標を受け付けるプリズム座標受付ステップと、前記測定対象物をレーザースキャンすることで得た点群データを受け付ける点群データ受付ステップと、前記点群データに基づき、前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標を求める頂点座標算出ステップと、前記反射プリズムの前記光学的中心位置の三次元座標と前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標の差を算出する座標差算出ステップとを有する測量方法である。
【0013】
本発明は、立体構造を有する測定対象物と、反射プリズムとを有し、前記反射プリズムは、前記立体構造の頂点の位置に配置され、前記反射プリズムは、光の屈折による見かけのプリズム中心であり、当該反射プリズムに入射した光の反射位置となる光学的中心を有し、前記立体構造の前記頂点の位置と前記反射プリズムの前記光学的中心の位置が一致または一致しているとみなせるターゲットを用いた測量をコンピュータに実行させるプログラムであって、コンピュータに前記反射プリズムの前記光学的中心位置の三次元座標を受け付けるプリズム座標受付ステップと、前記測定対象物をレーザースキャンすることで得た点群データを受け付ける点群データ受付ステップと、前記点群データに基づき、前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標を求める頂点座標算出ステップと、前記反射プリズムの前記光学的中心の位置の三次元座標と前記立体構造の前記頂点の位置の三次元座標の差を算出する座標差算出ステップとを実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トータルステーションの測位機能とトータルステーションと複合化したレーザースキャナとの校正のための測定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の概念図である。
図2】TSの斜視図である。
図3】TSの正面図である。
図4】TSのブロック図である。
図5】TSに備えられる座標比較部のブロック図である。
図6】処理の一例を示すフローチャートである。
図7】反射プリズムに付属部を有するターゲットの概念図である。
図8】凹型ターゲットの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.第1の実施形態
(概要)
本実施形態の概念図を図1に示す。これは、測定対象物であるターゲット100の位置データと点群データを、測量機能とレーザースキャナ機能を備えるTS200によって測量する実施形態である。
【0017】
(測定対象物の構成)
図1に示すように、ターゲット100は、六面体であって、その頂点の一つに反射プリズム101を備える。反射プリズム101は、その光学的中心102がターゲット100の頂点と重なるように配置される。ここで、光学的中心とは、光の屈折による見かけのプリズム中心位置である。この光学的中心の位置が反射プリズムに入射した光の反射位置となる。なお、反射プリズム101は、物体に固定できる構造を有すれば、着脱可能とすることもできる。
【0018】
反射プリズム101の光学的中心102とターゲット100の頂点との一致の精度は、可能な限り精度を求めた方が好ましい。しかしながら、レーザースキャナにおけるスキャン点の測位誤差があるので、上記の一致の程度はある程度の誤差が許容される。この誤差はレーザースキャナの測位精度の50%以下を目安として許容される。この場合、ある程度の誤差が許容され、反射プリズム101の光学的中心102とターゲット100の頂点の位置とが一致しているとみなせる状態となる。
【0019】
本実施形態で用いることができるターゲット100の形状は六面体に限定されず、反射プリズム101を頂点に配置可能であれば、四面体や八面体等の多面体でもよく、その面に曲面を有していてもよい。もし、ターゲット100が頂点を有しない場合であっても、各面の延長線上に交差点を見いだせるのならば、その交差点を頂点とみなしてもよい。
【0020】
(TSの構成)
図2には、図1に示すTS200の斜視図が示され、図3には、正面図が示されている。TS200は、ターゲット(反射プリズム101)を探索する探索用レーザースキャン機能、および探索したターゲットを自動視準するための機構を備える。この自動視準のための機構は、追尾光の送受信部を構成する追尾光受光部204、追尾光受光部205、追尾光を用いた視準を行うためのモータ駆動機構を構成する水平回転駆動部208と鉛直回転駆動部209、自動追尾の制御を行う自動視準制御部(図示省略するが、演算制御部212に含まれる)を有する。また、TS200は、測距用レーザー光を用いてターゲット(反射プリズム101)までの距離を測距するレーザー測距機能、レーザー測距されたターゲットの方向(水平角と鉛直角(仰角または俯角))を計測する機能、ターゲットまでの距離と方向からターゲットの三次元位置(座標)を算出する機能(測量機能)、点群データを得るためのレーザースキャン機能を有する。上記の測量機能は、TS本来のターゲットの位置を精密に測定する機能(TS機能)である。
【0021】
図2に示すようにTS200は、TS本体20とレーザースキャナ部201を結合(複合化)した構造を有している。TS200は、本体部11を有している。本体部11は、台座12に水平回転が可能な状態で保持されている。台座12は図示しない三脚の上部に固定される。本体部11は、Y軸の方向から見て上方に向かって延在する2つの延在部を有する略コの字形状を有し、この2つの延在部の間に可動部13が鉛直角(仰角および俯角)の制御が可能な状態で保持されている。
【0022】
本体部11は、台座12に対して電動で回転する。すなわち、本体部11は、モータにより台座12に対する水平回転角の角度制御が行われる。また、可動部13は、モータにより鉛直角の角度制御が行なわれる。この水平回転角と鉛直角の角度制御のための駆動は、本体部11に内蔵された水平回転駆動部208および鉛直回転駆動部209(図4のブロック図を参照)により行われる。なお、水平回転駆動部208および鉛直回転駆動部209についての説明は後述する。
【0023】
本体部11には、水平回転角制御ダイヤル14aと鉛直角制御ダイヤル14bが配置されている。水平回転角制御ダイヤル14aを操作することで、本体部11(可動部13)の水平回転角の調整が行なわれ、鉛直角制御ダイヤル14bを操作することで、可動部13の鉛直角の調整が行なわれる。
【0024】
可動部13の上部には、大凡の照準を付ける角筒状の照準器15aが配置されている。また、可動部13には、照準器15aよりも視野が狭い光学式の照準器15bと、より精密な視準が可能な望遠鏡16が配置されている。
【0025】
照準器15bと望遠鏡16が捉えた像は、接眼部17を覗くことで視認できる。望遠鏡16は、測距用のレーザー光と測距対象(例えばターゲットとなる専用の反射プリズム)を追尾および捕捉するための追尾光の光学系を兼ねている。測距光と追尾光の光軸は、望遠鏡16の光軸と一致するように光学系の設計が行なわれている。この部分の構造は、市販されているTSと同じである。
【0026】
本体部11には、ディスプレイ18と19が取り付けられている。ディスプレイ18は、後述する操作部211と一体化されている。ディスプレイ18と19には、TS200の操作に必要な各種の情報や測量データ等が表示される。前後に2つディスプレイがあるのは、本体部11を回転させなくても前後のいずれの側からでもディスプレイを視認できるようにするためである。なお、説明したTSの詳細な構造については、例えば特開2009-229192号公報、特開2012―202821号公報に記載されている。
【0027】
本体部11の上部には、レーザースキャナ109が固定されている。レーザースキャナ201は、第1の塔部21と第2の塔部22を有している。第1の塔部21と第2の塔部22は、結合部23で結合され、結合部の上方の空間(第1の塔部21と第2の塔部22の間の空間)は、スキャンレーザー光を透過する部材で構成された保護ケース24で覆われている。保護ケース24の内側には、第1の塔部21からX軸方向に突出した回転部25が配置されている。回転部25の先端は、斜めに切り落とされた形状を有し、その先端部には、斜めミラー26が固定されている。
【0028】
回転部25は、第1の塔部21に納められたモータにより駆動され、X軸を回転軸として回転する。第1の塔部21には、上記のモータに加え、このモータを駆動する駆動回路と、その制御回路が納められている。
【0029】
第2の塔部22の内部には、複数条のレーザースキャン光を発光するための発光部、対象物から反射してきたスキャン光を受光する受光部、発光部と受光部に関係する光学系が納められている。レーザースキャン光は、第2の塔部22の内部から斜めミラー26に向けて照射され、そこで反射され、透明なケース24を介して外部に照射される。また、対象物から反射したスキャン光は、照射光と逆の経路を辿り、第1の塔部22内部の受光部で受光される。
【0030】
スキャン光の発光タイミングと受光タイミング、さらにその際の回転部25の角度位置と本体部11の水平回転角により、スキャン点(スキャン光の反射点)の測位が行なわれる。
【0031】
レーザースキャン用の複数条のパルスレーザー光は、回転部25の回転軸の延在方向に沿った開き角が45°~90°程度の扇状に透明な保護ケース24から外部に向かって間欠的に出射される。この際、回転部25が回転しながらレーザースキャン光の照射が行われる。これにより、X軸方向にある程度の幅を持った扇形のレーザースキャン光が、X軸回りでスキャンされつつレーザースキャナ201から出射される。ここで、本体部11を水平回転(Z軸回りの回転)させながら上記のレーザースキャン光の出射を行うことで、周囲全体(あるいは必要とする範囲)のレーザースキャンが行なわれる。
【0032】
なお、レーザースキャナに係る技術については、特開2010-151682号公報、特開2008-268004号公報、米国特許第8767190号公報等に記載されている。また、レーザースキャナとして、米国公開公報US2015/0293224号公報に記載されているような、スキャンを電子式に行う形態ものも採用可能である。
【0033】
図4は、TS200のブロック図である。TS200は、レーザースキャナ部201、記憶部202、測距部(EDM)203、追尾光発光部204、追尾光受光部205、水平角検出部206、鉛直角検出部207、水平回転駆動部208、鉛直回転駆動部209、表示部210、操作部211、演算制御部212を備えている。
【0034】
レーザースキャナ部201は、レーザー光を測定対象物に対してスキャン(走査)し、その反射光を検出することで、測定対象物の概形を三次元座標を有する点群データとして得る。なお、点群データに付与される三次元座標の座標系は、後述する測距部203、水平角検出部206および鉛直角検出部207によって得られる座標を扱う座標系と同じものが用いられる。記憶部202は、TS200の動作に必要な制御プログラム、各種のデータ、測量結果等を記憶する。
【0035】
測距部203は、測距用レーザー光を用いたターゲットまでの距離の計測を行う。測距部203は、測距用レーザー光の発光素子、照射光学系、受光光学系、受光素子、測距演算部、測距基準光の光路を備えている。対象物までの距離は、対象物から反射された測距光と基準光の位相差から算出される。距離の算出方法は、通常のレーザー測距と同じである。
【0036】
追尾光発光部204および追尾光受光部205は、三角錐型または扇形ビームを有した探索用レーザー光を用いた反射プリズム101の探索を行う。すなわち、追尾光発光部204が発光した探索用レーザー光を反射プリズム101に照射し、その反射光を追尾光受光部205の受光素子の中心に位置するよう制御することで、視準目標を追尾する。この制御は、演算制御部212に含まれる自動視準制御部(図示省略)で行なわれる。
【0037】
水平角検出部206および鉛直角検出部207は、測距部203が測距したターゲット100(反射プリズム101)の水平方向角と鉛直方向角(仰角および俯角)を計測する。測距部203、追尾光発光部204および追尾光受光部205の光学系を備えた筐体部分は、水平回転および仰角(俯角)制御が可能であり、水平方向角と鉛直方向角は、エンコーダにより計測される。このエンコーダの出力が水平角検出部206および鉛直角検出部207で検出され、水平方向角と鉛直方向角(仰角および俯角)の計測が行われる。
【0038】
水平回転駆動部208および鉛直回転駆動部209は、測距部203、追尾光発光部204および追尾光受光部205の光学系を備えた筐体部分の水平回転および仰角制御(および俯角制御)を行うモータ、該モータの駆動回路、該駆動回路の制御回路を含む。なお、この筐体部分と一緒にレーザースキャナ部201も水平回転する構造とされている。
【0039】
表示部210は、TS200を扱うオペレータ等に対して、その処理結果等を視覚的に認識できる状態、例えば、GUI(Graphical User Interface)等の技術により、情報の提供または表示を行う。なお、前述のディスプレイ18と19はこれに該当する。操作部211は、テンキーや十字操作ボタン等が配され、TS200に係る各種の操作やデータの入力が行なわれる。また、表示部210および操作部211は、オペレータが情報表示画面をタッチすることで動作するタッチパネル方式を採用することによって、一体化可能である。
【0040】
演算制御部212は、後述する座標比較部300を備えていることに加えて、TS200の各種動作制御に係わる演算処理および記憶部202に記憶するデータの管理の制御を行う。演算制御部212は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)に代表されるPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成される。また、一部の機能を専用のハードウェアで構成し、他の一部を汎用のマイコンにより構成することも可能である。
【0041】
各機能部を専用のハードウェアで構成するのか、CPUにおけるプログラムの実行によりソフトウェア的に構成するのかは、要求される演算速度、コスト、消費電力等を勘案して決定される。なお、機能部を専用のハードウェアで構成することとソフトウェア的に構成することは、特定の機能を実現するという観点からは、等価である。
【0042】
なお、本発明の利用においてTS200は、測量機能とレーザースキャナ機能を有しているものならば、TS等をはじめとする測量機器にも限定されず、他の機器へ代用可能である。例えば、上述の二つの機能を有するカメラや携帯端末等での代用が可能である。
【0043】
(座標比較部の構成)
図5は、座標比較部300のブロック図である。座標比較部300は、プリズム座標受付部301、点群データ受付部302、点群データ処理部303、頂点座標算出部304、座標差算出部305を備える。
【0044】
プリズム座標受付部301は、TS200の設置位置を基準とした座標系に基づき、測距部203、水平角検出部206および鉛直角検出部207により得られるデータから算出される反射プリズム101の座標(P, P, P)を受け付ける。反射プリズム101は、設計時に設定された光学的中心102で入射光を180°向きを変えた方向に反射する。反射プリズム101の座標(P, P, P)は、この光学的中心102の座標となる。
【0045】
点群データ受付部302は、レーザースキャナ部201によって得られる三次元座標を有する点群データを受け付ける。点群データ処理部303は、点群データ受付部302が受け付けた点群データを多面体に変換することで、測定対象物(本実施形態ならば、ターゲット100)を構成する各面の状態を求める。頂点座標算出部304は、点群データ処理部303が求めた各面の状態から算出される頂点の座標(S, S, S)を求める。
【0046】
頂点の座標(S, S, S)は以下のようにして算出される。例えば、図1に示す立方体あるいは直方体構造のターゲット100の場合を説明する。この場合、TS200から見える面(この場合は、反射プリズム101に隣接する直交する3面)のレーザースキャンデータを得る。そして、各面において、面を構成するレーザースキャンデータにフィッティングする面の方程式を算出する。次いで、レーザースキャンデータを取得した3面それぞれの面の方程式の交点を求める。この交点が上記の頂点となり、その座標が(S, S, S)となる。
【0047】
座標差算出部305は、反射プリズム101の座標(P, P, P)と測定対象物の頂点の座標(S, S, S)の差異を算出する。ここで、頂点座標算出部304が算出した頂点の座標(S, S, S)が複数あった場合、反射プリズム101の座標(P, P, P)との差異をそれぞれ算出し、差異が最も少ない頂点が反射プリズム101の座標(P, P, P)に対応する頂点とする。
【0048】
(処理の一例)
本実施形態における処理の一例を図6に示す。まず、任意位置に配置されたターゲット100が備える反射プリズム101を自動視準し、その三次元座標(P, P, P)を測定する(ステップS101)。この処理は、TS200が本来備える測位機能(TS機能)を用いて行われる。この処理では、反射プリズム101の自動視準、測距部203による反射プリズム101までの距離の測距、当該測距値とその時における望遠鏡16の光軸の方向(これは水平角検出部206と鉛直角検出部207から得られる)とから測距光の反射点の位置の計算が行なわれる。なお、三次元座標(P, P, P)は、反射プリズム101の光学的中心102の位置座標となる。次に、レーザースキャナ部201によって、ターゲット100付近を走査し、ターゲット100の点群データを測定する(ステップS102)。そして、ステップS102で得られた点群データから、ターゲット100を構成する各面の状態(この場合は、各面の面の方程式)を求める(ステップS103)。
【0049】
続いて、ステップS103において求めた各面の状態(各面の面の方程式)から各面の交差箇所である頂点の座標(S, S, S)を求める(ステップS104)。最後に、反射プリズム101の座標(P, P, P)と測定対象物の頂点の座標(S, S, S)の差異を算出し(ステップS105)、処理を終了する。
【0050】
上述のステップS101~105の処理によって得られる反射プリズム101の光学的中心座標(P, P, P)と測定対象物の頂点座標(S, S, S)の差異は、測量機器の補正および調整等に利用することができる。例えば、図4に図示しない、座標調整部300に備えられる制御信号生成部によって、処理の結果を信号化し、演算制御部212へ送信することで、TS200が測定したデータの座標補正や使用前の調整等のための各種制御に利用する。
【0051】
座標比較部300による処理の結果は、演算制御部212において利用できればよいため、演算制御部212と座標比較部300の間で信号の送受信が行えるのならば、座標比較部300は、図4に示すような演算制御部212に備えられることに限定されない。例えば、座標比較部300を別個の装置としてもよい。
【0052】
ここで、ターゲット100は、その頂点の一つに反射プリズム101を備えているため、ステップS102において、反射プリズム101が備えられている頂点部分の点群データを取得できない。そのため、ステップS104では、各面の状態から予想される頂点の位置を算出する処理を行う。この処理は、レーザースキャンで得た点群データから各面の面の方程式を求め、この各面の面の方程式を連立方程式として解いて共通する(x、y、z)座標を求めることで行われる。この座標は、各面が交差する位置であり、図1の場合でいうと、頂点102の座標となる。
【0053】
本実施形態によれば、TS200の測距部202により測位される反射プリズム101の光学的中心(反射位置)102と、レーザースキャナ部201が得た点群データから算出されるターゲット101の頂点の位置とを合致させた部材を校正用ターゲット(あるいは校正確認用ターゲット)として用意することで、TS200の測位機能とTS200と複合化したレーザースキャナとの校正のための測定を容易に行うことができる。
【0054】
すなわち、一または複数の面で構成されるターゲットに対して、その面の頂点に反射プリズムの光学的中心位置(浮上点)を合わせるように測定対象に反射プリズムを配置することで、TSの測量機能とレーザースキャン機能によって得られる座標を合わせることが可能となる。
【0055】
(変形例1)
図7に示すように、反射プリズム101が着脱用付帯部103を備え、ターゲット100から取り外し可能な構造となっていてもよい。着脱用付帯部103は、ターゲット100に反射プリズム101を固定するものであって、例えば、磁石や吸着パッド等をターゲット100との接合面に有する。
【0056】
この構造により、反射プリズム101を測定する際は、反射プリズム101が取り付けられている面をターゲット100の表面に出し、ターゲット100の点群データを測定する際には、反射プリズム101が取り付けられていない面を表面に出すことができる。本変形例は、ステップS102において点群データを取得できない部分がなくなり、レーザースキャンデータに基づき特定される面の精度の点で有利となる。また、レーザースキャン時に反射プリズムをマスクする作業が不要となるので、その分作業が簡素化される。
【0057】
(変形例2)
図8に示すように、測定対象は、反射プリズム101を奥に配置した凹型ターゲット400でもよい。この構造では、凹型ターゲット400は、四角錐の内周面が反射面であり、四角錐の頂点が反射プリズム101の光学的中心(反射点)と一致するまたは一致しているとみなせるように凹型ターゲット400と反射プリズム101とが結合されている。
【0058】
凹型ターゲット400は、反射プリズム101の他に、回転軸401と反射プリズム付属物402を備え、回転軸401を中心とした水平回転により、反射プリズム101および反射プリズム付帯部402が回転する構造となる。そして、反射プリズム101の光学的中心は回転軸401の中心と一致するように配置されているため、様々な方向から測定ができる。なお、反射プリズム付属部402の形状は、反射プリズム101の光学的中心を頂点とした三角錐等の多角錐形状の他、円錐形状(コーナーキューブ形状の場合も含む)でもよい。
【0059】
なお、凹型ターゲット400を用いた場合の処理は、反射プリズム101と反射プリズム付帯物402を点群データ測定対象(レーザースキャン対象)として、前述のステップS101~105を行う。
【0060】
2.第2の実施形態
本発明は、測定対象物の点群データと測定対象の頂点座標を利用して、カメラのキャリブレーションを行うこともできる。これは、キャリブレーションが大きさの既に分かっている図形パターン(例えば、水玉模様の図形パターン等)を用いて行うことに基づき、得られた点群データを模様に見立て、算出される測定対象物の頂点座標を既知の座標として与えることでキャリブレーションを行うことができる。なお、本発明を利用したキャリブレーションに用いる図形パターンは、頂点の位置を与えられるのならば、何でもよく、例えば、直線、円、バーコード等が挙げられる。本実施形態は、カメラによって画像を取得することができるTS等によって実施できる。
【0061】
(その他)
本発明は、TSとレーザースキャナを複合化した測量装置において、両者の光学原点を一致させた構成に適用することもできる。仮に、TSとレーザースキャナの光学原点を設計上で一致させ、また部品精度や組み立て精度に留意して製品として仕上げても、レーザースキャナにおける方位検出のタイミングと測位データの取得タイミングのズレや誤差の問題は依然として残る。このため、この装置においてもTSの測位機能とレーザースキャナとの間におけるデータの互換性を担保するための校正処理が必要となる。この際に本発明を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、測量の技術に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
11…本体部、12…台座、13…可動部、14a…水平回転角制御ダイヤル、14b…鉛直回転角制御ダイヤル、15a…照準器、15b…照準器、16…望遠鏡、17…接眼部、18…ディスプレイ、19…ディスプレイ、20…TS本体、21…塔部、22…塔部、23…結合部、24…保護ケース、25…回転部、26…斜めミラー、100…ターゲット、101…反射プリズム、102…光学的中心、103…着脱用付帯部、200…TS、201…レーザースキャナ部、202…記憶部、203…測距部、204…追尾光発光部、205…追尾光受光部、206…水平角検出部、207…鉛直角検出部、208…水平回転駆動部、209…鉛直回転駆動部、210…表示部、211…操作部、212…演算制御部、300…座標比較部、301…プリズム座標受付部、302…点群データ受付部、303…点群データ処理部、304…頂点座標算出部、305…座標差算出部、306…プリズム配置箇所決定部、400…凹型ターゲット、401…回転軸、402…反射プリズム付属物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8