(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136253
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】充填施設の不正防止システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20220908BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C5/06
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120188
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2020213138の分割
【原出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 勉
(72)【発明者】
【氏名】名取 直明
(57)【要約】
【課題】充填量に関する不正を有効に検出することが出来る充填装置の不正防止システムの提供。
【解決手段】本発明の充填施設(40)の不正防止システム(100-1)は、充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量の単位時間当たりの変化率(第1の変化率)と、校正用の流量計(7)の計測結果の単位時間当たりの変化率(第2の変化率)を比較する機能を有するブロック(42B-1)と、比較結果が同一であれば不正が存在しないと判断し、比較ブロック(42B-1)による比較結果が同一でなければ不正が存在すると判断する機能を有するブロック(42C-1)を有する情報処理機器(42-1:例えば、タブレット)を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填装置のカウンターで表示される流量と校正用の流量計の計測結果とを受信する機能を有するブロックと、
充填装置のカウンターで表示される流量の単位時間当たりの変化率を演算する第1の変化率演算ブロックと、
校正用の流量計の計測結果の単位時間当たりの変化率を演算する第2の変化率演算ブロックを有し、
第1の変化率演算ブロックで演算された充填装置のカウンターで表示される流量の単位時間当たりの変化率と、第2の変化率演算ブロックで演算された校正用の流量計の計測結果の単位時間当たりの変化率を比較する機能を有する比較ブロックと、
当該比較ブロックによる比較結果が同一であれば不正が存在しないと判断し、或いは、比較するブロックによる比較結果が同一でなければは不正が存在すると判断する機能を有する判断ブロック、
を有する情報処理機器を含むことを特徴とする充填施設の不正防止システム。
【請求項2】
充填装置のカウンターで表示される流量を情報処理機器に入力する工程と、
校正用の流量計の計測結果を情報処理機器に入力する工程と、
充填装置のカウンターで表示される流量の単位時間当たりの変化率を演算する第1の変化率演算工程と、
校正用の流量計の計測結果の単位時間当たりの変化率を演算する第2の変化率演算工程を有し、
第1の変化率演算工程で演算された充填装置のカウンターで表示される流量の単位時間当たりの変化率と、第2の変化率演算工程で演算された校正用の流量計の計測結果の単位時間当たりの変化率を比較する比較工程と、
前記比較工程の結果、第1の変化率演算工程で演算された変化率と第2の変化率演算工程で演算された変化率の比較結果が同一であれば不正が存在しないと判断し、及び/又は、同一でなければ不正が存在すると判断する判断工程を有することを特徴とする充填施設の不正防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池自動車(FCV)等に水素を充填する充填装置が設置されている充填施設(例えば、いわゆる「水素ステーション」)に関し、特に、充填される水素の流量(質量流量)を計測する流量計の器差の改ざんや、その他の流量計の計測に関する不正を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
充填するべき流体(例えば水素)の流量を正確に計測し、充填装置内の流量計に対して不正行為が行われていないことを保証するため、従来技術においては、所定規則に従って、充填装置の校正を行っている。
係る校正に際して、例えば水素充填装置であれば小型のコリオリ流量計(マスターメーター)を内蔵した校正装置を用いて、車両(例えば燃料電池自動車)に水素充填をしつつ、校正を行う場合が存在する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
その様な校正装置を用いた従来技術における校正作業について、
図14を参照して説明する。
図14において、水素充填装置2には水素充填用ホース4が接続され、水素充填用ホース4は校正装置3に接続/取り外し可能に構成されている。校正装置3には基準流量計7(マスターメーター)が内蔵され、校正装置3は流量計吐出側ホース8、充填ノズル9を介して例えば燃料電池自動車1(FCV)のレセプタクル10に接続/取り外し可能である。
水素充填装置2により校正装置3を介してFCV1の車載タンクに充填すると、校正装置3の基準流量計7は充填された水素充填量を正確に計測するので、水素充填装置2内の出口流量計22の精度を評価することが出来る。
水素充填装置2内の出口流量計22には、流量計22の計測結果を発信するパルス信号発信装置24が設けられ、発信装置24からのパルス信号に基づき、流量計22の計測結果がカウンター28に送信、表示される。
水素充填装置2は制御ユニット30を有しており、水素充填プロトコルに従い水素充填制御を実行している。また、制御ユニット30は流量計22の器差を記録、記憶する器差調整ユニット32を備えている。
図14において、水素充填装置2を含む水素充填施設40は、水素充填装置2の外部装置であって、水素充填装置2との間で情報(例えば記憶されている器差)の授受が可能な装置、例えば事務所34を含んでいる。
校正装置3により水素充填装置2内の流量計22の器差を検出したならば、検出された器差は、例えば制御装置30の器差調整ユニット32で記録される。
【0004】
ここで、流量計22の分解等や器差調整を勝手に行うことが出来ると、流量計22の精度、水素充填装置2における充填精度が維持できなくなる。
さらに、器差を変更、改ざんすることが可能になり、水素充填装置2による充填量における各種不正が可能になってしまう。
しかし、水素充填装置2における流量計22の器差の改ざんを防止する技術については、パスワード等の電子的な封印技術は存在するが、水素充填装置2における流量計22の器差の改ざんを検出し、或いは、水素充填装置2の充填量に関する不正を有効に検出する技術は未だに提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、器差の改ざんを検出し、或いは、充填量に関する不正を有効に検出することが出来る充填装置の不正防止システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に関連する充填施設(40)の不正防止システム(100)は、
充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)と校正用の流量計(7:質量流量計)の計測結果とを受信する機能を有するブロック(42A:受信ブロック)と、
充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量と校正用の流量計(7)の計測結果とを比較する機能を有するブロック(42B:比較ブロック)と、
比較ブロック(42B)による比較結果が同一であれば(差異が±0.5%以内の場合)不正が存在しないと判断し、或いは、比較ブロック(42B)による比較結果が同一でなければ(±0.5%より大きい差異がある場合)は不正が存在すると判断する機能を有する判断ブロック(42C)、
を有する情報処理機器(42:例えば、タブレット)を含むことを特徴としている。
ここで、前記流体は油の様な液体と、水素の様な気体の双方を包含する。すなわち、本発明の充填装置(2)は、水素充填装置と給油装置の双方を意味している。
【0008】
本発明の充填施設(40)の不正防止システム(100-1)は、
充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)と校正用の流量計(7:質量流量計)の計測結果を受信する機能を有するブロック(42A-1:受信ブロック)と、
充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)の単位時間当たりの変化率(第1の変化率)を演算する第1の変化率演算ブロック(42E-1:カウンター表示流量変化率演算ブロック)と、
校正用の流量計(7:質量流量計)の計測結果の単位時間当たりの変化率(第2の変化率)を演算する第2の変化率演算ブロック(42F-1:校正装置の流量計の計測結果の変化率演算ブロック)を有し、
第1の変化率演算ブロック(42E-1)で演算された充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)の単位時間当たりの変化率(第1の変化率)と、第2の変化率演算ブロック(42F-1)で演算された校正用の流量計(7)の計測結果の単位時間当たりの変化率(第2の変化率)を比較する機能を有する比較ブロック(42B-1)と、
比較ブロック(42B-1)による比較結果が同一であれば(差異が±0.5%以内の場合)不正が存在しないと判断し、或いは、比較ブロック(42B-1)による比較結果が同一でなければ(±0.5%より大きい差異がある場合)は不正が存在すると判断する機能を有する判断ブロック(42C-1)、
を有する情報処理機器(42-1:例えば、タブレット)を含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明に関連する充填施設(40-2)の不正防止システム(100-2)は、
充填装置(2)の制御装置(30)内(の器差調整ユニット32)に記憶されている器差の電子封印(パスワード等)が解除された場合に封印されていた器差を受信し、充填装置(2)の外部(例えば事務所34)に記憶されている器差を受信するブロック(42A-2:受信ブロック)と、
充填装置(2)の制御装置(30)内(の器差調整ユニット32)で記憶されている器差と、充填装置(2)の外部(例えば事務所34)に記憶されている器差を比較する機能を有する比較ブロック(42B-2)と、
比較ブロック(42B-2)による器差の比較結果が同一であれば(差異が±0.5%以内の場合)器差は改ざんされていないと判断し、或いは、器差が同一でなければ(±0.5%より大きい差異がある場合は)器差が改ざんされたと判断する機能を有する判断ブロック(42C-2)、
を有する情報処理機器(42-2:例えば、タブレット)を含むことを特徴としている。
【0010】
上述した本発明に関連する不正防止システム(100)を用いた不正防止方法は、
充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)を情報処理機器(42)に入力する工程と、
校正用の流量計(7:質量流量計)の計測結果を情報処理機器(42)に入力する工程と、
情報処理機器(42)に入力された充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量と、情報処理機器(42)に入力された校正用の流量計(7)の計測結果とを比較する比較工程と、
比較の結果、充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量と校正用の流量計(7)の計測結果が同一であれば(差異が±0.5%以内の場合)不正が存在しないと判断し、或いは、同一でなければ(±0.5%より大きい差異がある場合)は不正が存在すると判断する判断工程を有することを特徴としている。
【0011】
上述した本発明の不正防止システム(100-1)を用いた本発明の不正防止方法(請求項1の充填施設の不正防止システムを用いた不正防止方法)は、
充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)を情報処理機器(42-1)に入力する工程と、
校正用の流量計(7:質量流量計)の計測結果を情報処理機器(42-1)に入力する工程と、
充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)の単位時間当たりの変化率(第1の変化率)を演算する第1の変化率演算工程(カウンター表示流量変化率の演算工程)と、
校正用の流量計(7:質量流量計)の計測結果の単位時間当たりの変化率(第2の変化率)を演算する第2の変化率演算工程(校正装置3の流量計7の計測結果の変化率演算工程)を有し、
第1の変化率演算工程で演算された充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量(質量流量)の単位時間当たりの変化率(第1の変化率)と、第2の変化率演算工程で演算された校正用の流量計(7)の計測結果の単位時間当たりの変化率(第2の変化率)を比較する比較工程と、
前記比較工程の結果、第1の変化率演算工程で演算された変化率(第1の変化率)と第2の変化率演算工程で演算された変化率(第2の変化率)の比較結果が同一であれば(差異が±0.5%以内の場合)不正が存在しないと判断し、及び/又は、同一でなければ(±0.5%より大きい差異がある場合)は不正が存在すると判断する判断工程を有することを特徴としている。
【0012】
さらに本発明に関連する不正防止方法において、
充填装置(2)の制御装置(30)内(の器差調整ユニット32)に記憶されている器差の電子封印(パスワード等)が解除された場合に封印されていた器差を情報処理機器(42-2)に入力する工程と、
充填装置(2)の外部(例えば事務所34)に記憶されている器差を情報処理機器(42-2)に入力する工程と、
充填装置(2)の制御装置(30)内(の器差調整ユニット32)で記憶されている器差と、充填装置(2)の外部(例えば事務所34)に記憶されている器差を比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果が同一であれば(例えば、差異が±0.5%以内の場合)器差は改ざんされていないと判断し、及び/又は、同一でなければ(例えば、差異が±0.5%より大きい差異がある場合は)器差が改ざんされたと判断する判断工程を有することを特徴としている。
【0013】
本発明の実施に際して、流量計(質量流量計46)を内蔵し、
流量計(46)の吸入側におけるレセプタクル(47)と吐出側におけるノズル(48)を設け、前記レセプタクル(47)は水素充填装置(2)側のノズル(5)と着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、
前記ノズル(48)は燃料電池自動車(FCV1)のレセプタクル(10)に着脱自在である充填ノズル(45)を用いることが好ましい。
係る充填ノズル(45)には、(前記ノズル45を載置する)支持装置(50)を設けることが好ましい。
そして、当該充填ノズル(45)を用いた校正に際しては、
校正終了時に、水素充填装置(2)内における脱圧のみを行い、水素充填装置(2)内の流量計(22)と別途設けられた流量計(46)を内蔵する充填ノズル(45)における脱圧を行わない。
【発明の効果】
【0014】
上述の構成を具備する本発明或いは本発明に関連する充填施設(40)の不正防止システム(100、100-1)は、例えば、器差を改ざんすることなく、充填装置(2)内部の流量計(22)からのパルス信号を不正に変換して、カウンター(28)の表示を変更(流量計22からのパルス信号の改ざん)したとしても、充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量と校正用の流量計(7)の計測結果とを比較して、或いは、充填装置(2)のカウンター(28)で表示される流量の単位時間当たりの変化率と校正用の流量計(7)の計測結果の単位時間当たりの変化率を比較して、その比較結果が同一であれば不正が存在しないと判断し、比較結果が同一でなければ不正が存在すると判断する判断ブロック(42C、42C-1)を有する情報処理機器(42、42-1)を含むので、その様な不正が生じてカウンター(28)の表示が実際の充填量と異なれば、直ちに不正を判断することが出来る。
そのため、充填装置(2)の内部を人手により検査しないと不正が判断できない場合(例えば、上述した流量計22からのパルス信号の改ざんがされている場合)でも、不正の有無を正確且つ迅速に判断することが出来る。
そして、係る不正の有無の判断を、校正用の流量計(7)で計測する度に(校正の度に)行うことが出来るので、係る不正に対する抑止力が高まる。
【0015】
また本発明に関連する充填施設(40-2)の不正防止システム(100-2)によれば、充填装置(2)の制御装置(30)内(の器差調整ユニット32)に記憶されている器差と、充填装置(2)の外部に記憶されている器差を比較して、同一であれば器差は改ざんされていないと判断し、同一でなければ器差が改ざんされたと判断する機能を有する情報処理機器(42-2)を含んでいるので、不正行為により器差を改ざんしたとしても、充填装置(2)内の器差と充填装置(2)外部(例えば事務所34)に記憶されている器差とを同一に改ざんしない限りは、当該改ざんを検知することが出来る。
そして、係る改ざんの検知は、充填装置(2)を用いて充填する度毎に行うことが出来るので、改ざんの検知を短い周期で確実に実行して、改ざんに対する抑止力を高めることが出来る。
【0016】
本発明において、流量計(質量流量計46)を内蔵し、流量計(46)の吸入側におけるレセプタクル(47)と吐出側におけるノズル(48)を設け、前記レセプタクル(47)は水素充填装置(2)側のノズル(5)と着脱自在であり、逆止弁を設けておらず、前記ノズル(48)は燃料電池自動車(FCV1)のレセプタクル(10)に着脱自在である充填ノズル(45)を用いれば、水素充填装置(2)の水素充填ノズル(5)と流量計(46)のレセプタクル(47)とを接続し、流量計(46)のノズル(48)を燃料電池自動車(FCV1)のレセプタクル(10)に接続することにより、燃料電池自動車(FCV1)内に水素ガスを充填することが出来る。その様に充填すれば、流量計(46)で水素ガスの質量流量を計測出来るので、充填しつつ、校正を行うことが出来る。
そして、係るノズル(45)では校正用の流量計(46)の吐出側にホースを設ける必要が無いため、従来の校正装置(3)におけるマスターメーター(7)と校正装置(3)のノズル(9)とを結ぶホース(8)が不要であり、その分だけ、水素充填系統における熱容量及び圧損を減少し、その結果、定められた充填プロトコルにおける充填特性を容易に実現することが出来る。
さらに、係る水素充填ノズル(45)で校正を行えば、校正終了後、水素充填ノズル(45)内に残存する水素ガスは微量であり、また、当該残存する水素ガスは、水素充填装置(2)側の脱圧機構(脱圧弁13、脱圧ライン14)を介して、自動的に排出されるので、当該ノズル(45)に脱圧する構造を設ける必要がなく、作業員による脱圧作業が不要である。これに加えて、脱圧系統から逆流するのを防止するための逆止弁等も不要である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る充填施設の概要を示す説明図である。
【
図2】第1実施形態におけるタブレットの機能ブロック図である。
【
図3】第1実施形態の制御を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2実施形態におけるタブレットの機能ブロック図である。
【
図5】第2実施形態の制御を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る水素ステーションの概要を示す説明図である。
【
図7】第3実施形態で用いられる水素充填装置内の器差調整ユニットの機能ブロック図である。
【
図8】第3実施形態におけるタブレットの機能ブロック図である。
【
図10】本発明の実施形態で好適に用いられる水素充填ノズルの説明図である。
【
図11】
図10で示す水素充填ノズルを用いた校正作業の説明図である。
【
図12】
図10で示す水素充填ノズルにおける支持装置の説明図である。
【
図13】
図10~
図12で示す水素充填ノズルを用いた校正における校正終了時の作業フローチャートである。
【
図14】従来技術における校正を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図示の実施形態では、充填施設として水素ステーション40、40-2を説明する。
なお、
図1~
図9において、
図14と同様な部材には
図14と同様な符号を付している。
最初に
図1~
図3を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態では、水素充填装置2内の流量計22のパルス発信機24を不正改造して、カウンター28に表示される流量を誤魔化すタイプの不正を検出している。具体的には、水素充填装置2のカウンター28に表示される流量と、校正装置3の流量計7の計測結果を比較して、上述した不正改造の有無を判断する。
図1における符号100(100-1)は、第1実施形態に係る不正防止システム100と、第2実施形態に係る不正防止システム100-2を包括的に表示する趣旨で用いられている。
図1において、第1実施形態に係る不正防止システム100が適用される水素ステーション40は水素充填装置2を備えている。水素充填装置2は、水素充填用ホース4、校正装置3の校正用流量計7(マスターメーター)、充填ノズル9を介して、例えば燃料電池自動車1(FCV)のレセプタクル10に接続されている。FCV1に対して水素充填を行えば、水素ガスが校正用流量計7を流れ、校正用流量計7により充填された水素ガスの質量流量が計測され、水素充填装置2の流量計22の校正を行うことが出来る。
【0019】
水素充填装置2の充填系統(図示せず)には流量計22が介装されており、流量計22の計測結果は、パルス信号としてパルス信号発信装置24から信号ラインSL1を介してカウンター28に送信され、カウンター28に表示される。
水素充填装置2は制御ユニット30を有しており、水素充填プロトコルに従った水素充填制御を実行する機能を有している。制御ユニット30は、流量計22の器差を記録、記憶する器差調整ユニット32を備えている。
水素ステーション40には、水素充填装置2の外部の事務所34が設けられており、事務所34は流量計22の器差を記憶する記憶装置36を含んでいる。事務所34の記憶装置36と水素充填装置2の間では、情報(例えば水素充填に関する情報)の授受が可能である。
【0020】
図1において、第1実施形態の不正防止システム100は情報処理装置としてのタブレット42を含んでおり、タブレット42は例えば作業者が保持している。
タブレット42と充填装置2のカウンター28は、例えば赤外線通信(IR通信)により相互に通信可能であり、カウンター28で表示される流量計22の流量は、図示しない送信装置により、無線通信ラインCL1を介してタブレット42に送信される。
また、タブレット42と校正用流量計7についても、例えば赤外線通信(IR通信)により相互に通信可能であり、校正用流量計7の計測結果は、図示しない無線送信装置により、無線通信ラインCL2を介してタブレット42に送信される。
係る送信は図示しない他の無線装置で行うことが出来るし、或いは、図示しない信号ラインを介して行うことも出来る。
なお、図示の実施形態では、充填施設として水素ステーション40が示されているが、ガソリン、軽油の様な液体を充填する給油装置にも適用可能である。
【0021】
図2で示す様に、情報処理装置であるタブレット42は、受信ブロック42A、比較ブロック42B、判断ブロック42C及び判断結果表示ブロック42Dを有している。
受信ブロック42Aは、充填装置2のカウンター28から「カウンター28に表示される流量(質量流量)」を、通信ラインCL1を介して受信する機能を有している。また、受信ブロック42Aは、校正装置3の流量計7(質量流量計)から「校正用の流量計7の計測結果」を、通信ラインCL2を介して受信する機能を有している。
受信ブロック42Aが受信した「カウンター28で表示される流量」は、信号ラインSL2を介して比較ブロック42Bに送信され、受信ブロック42Aが受信した「校正用の流量計7の計測結果」は、信号ラインSL3を介して比較ブロック42Bに送信される。
【0022】
比較ブロック42Bは、受信ブロック42Aから送信された「カウンター28に表示される流量」と「校正用の流量計7の計測結果」とを比較する機能をしている。比較ブロック42Bの比較結果は、信号ラインSL4を介して判断ブロック42Cに送信される。
判断ブロック42Cは、比較ブロック42Bから受信した比較結果に基づき、不正の有無を判断する機能を有している。すなわち、「カウンター28に表示される流量(質量流量)」と「校正用の流量計7の計測結果」(以下、「両者」という)の差異が、例えば±0.5%以内の場合は同一と判断し、不正が存在しないと判断する。また、両者の差異が、例えば±0.5%より大きい場合は同一ではないと判断し、不正が存在すると判断する。
判断ブロック42Cによる判断結果は、信号ラインSL5を介して判断結果表示ブロック42Dに送信される。判断結果表示ブロック42Dは、判断ブロック42Cから受信した判断結果を、タブレット42の図示しないディスプレイに表示する機能を有している。作業者(不正防止担当者)は、表示される判断結果により不正の有無を確認して、不正防止に対処することが出来る。
【0023】
次に
図1、
図2を参照しつつ、主として
図3を参照して、第1実施形態における制御の手順を説明する。
図3において、ステップS1では、作業者がタブレット42を操作し、充填装置2のカウンター28に対して、通信ラインCL1(無線)を介して「カウンター28に表示される流量」の送信を要求する。また、校正装置3の流量計7に対して、通信ラインCL2(無線)を介して、「流量計7の計測結果」の送信を要求する。そして、ステップS2、ステップS3に進む。
ステップS2では、ステップS1のタブレット42からの要求に基づき、「カウンター28に表示される流量」がタブレット42の受信ブロック42Aに、無線通信ラインCL1を介して入力される(入力工程)。
ステップS3では、ステップS1のタブレット42からの要求に基づき、「校正用の流量計7の計測結果」がタブレット42の受信ブロック42Aに、無線通信ラインCL2を介して入力される(入力工程)。
【0024】
ステップS4では、ステップS2で入力された「カウンター28に表示される流量」と、ステップS3で(受信ブロック42Aに)入力された「校正用の流量計7の計測結果」を比較する(比較工程)。係る比較工程は、タブレット42の比較ブロック42Bにより実行される。
次のステップS5では、ステップS4の比較結果を受け、「カウンター28に表示される流量」と、「校正用の流量計7の計測結果」が同一であるか否かを判断する(判断工程)。上述した様に、「カウンター28に表示される流量」と「校正用の流量計7の計測結果」の差異が、例えば±0.5%以内の場合には両者は同一と判断され、差異が例えば±0.5%より大きい場合には両者は同一ではないと判断される。係る判断は、タブレット42の判断ブロック42Cにより実行される。
ステップS5の判断の結果、「カウンター28に表示される流量」と「校正用の流量計7の計測結果」が同一の場合(ステップS5が「Yes」)はステップS6に進み、「カウンター28に表示される流量」と「校正用の流量計7の計測結果」が同一でない場合(ステップS5が「No」)はステップS7に進む。
【0025】
ステップS6(両者が同一の場合)は、判断ブロック42Cにより「不正は存在しない」と判断する。一方、ステップS7では、判断ブロック42Cにより「不正が存在する」と判断する(判断工程)。
ステップS5~ステップS7における判断ブロック42Cの判断結果は、判断結果表示ブロック42Dのディスプレイに表示され、可視化されることにより、作業者の不正防止対策に供することが出来る。
【0026】
図1~
図3に示す第1実施形態に係る不正防止システム100によれば、充填装置2のカウンター28で表示される流量と校正用の流量計7の計測結果とを比較して、比較結果が同一であれば(差異が±0.5%以内の場合)不正が存在しないと判断し、比較結果が同一でなければ(±0.5%より大きい差異がある場合)不正が存在すると判断する判断ブロック(42C)を有している。
そのため、器差は改ざんしないが、充填装置2内部の流量計22からのパルス信号を不正に変換して、カウンター28の表示を変更したとしても、その様な不正によりカウンター28の表示が実際の充填量と異なれば、直ちに不正を判断することが出来る。そして、係る不正の有無の判断を、校正用の流量計7で計測する度に(校正の度毎に)行うことが出来るので、係る不正に対する抑止力が高まる。
【0027】
上述した様に、
図1~
図3に示す第1実施形態では、充填装置2のカウンター28に表示される流量と、校正用(校正装置3の)の流量計7の計測結果を比較して不正の有無を検出している。ここで、カウンター28に表示される流量の変化率と、校正用の流量計7の計測結果の変化率を求め、変化率同士を比較することにより、パルス発信機24の不正改造を検出することが出来る。
図4、
図5で示す第2実施形態では、この様な知見に基づいて提案されており、充填装置2のカウンター28に表示される流量の単位時間当たりの変化率と、校正用の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率を比較して、パルス発信機の不正改造を検出している。
第2実施形態に係る不正防止システム100-1(
図1参照)におけるタブレット42-1の機能ブロック図である
図4と、第2実施形態における制御フローチャートである
図5を参照して、第2実施形態を説明する。
図4において、タブレット42-1は、受信ブロック42A-1、第1の変化率演算ブロック42E-1(カウンター表示流量変化率演算ブロック)、第2の変化率演算ブロック42F-1(校正装置の流量計の計測結果の変化率演算ブロック)、比較ブロック42B-1、判断ブロック42C-1及び判断結果表示ブロック42D-1を有している。
以下の説明では、主として、
図2に示す第1実施形態のタブレット42のブロック図と相違する部分を説明する。
【0028】
受信ブロック42A-1は、充填装置2のカウンター28から、無線通信ラインCL1を介して受信した「カウンター28に表示される流量(質量流量)」を、信号ラインSL6を介して第1の変化率演算ブロック42E-1(カウンター表示流量変化率演算ブロック)に送信する機能を有している。
また、受信ブロック42A-1は、校正用の(校正装置3の)流量計7(質量流量計)から、無線通信ラインCL2を介して受信した「校正用の流量計7の計測結果」を、信号ラインSL7を介して第2の変化率演算ブロック42F-1(校正装置の流量計の計測結果の変化率演算ブロック)に送信する機能を有している。
第1の変化率演算ブロック42E-1は、受信した「カウンター28で表示される流量」に基づき、タイマー42G-1の計測結果をも用いて、「カウンター28で表示される流量の単位時間当たりの変化率(第1の変化率)」を演算する機能を有している。第1の変化率演算ブロック42E-1の演算結果は、信号ラインSL8を介して比較ブロック42B-1に送信される。
第2の変化率演算ブロック42F-1は、受信した「校正装置3の流量計7の計測結果」に基づき、タイマー42G-1の計測結果をも用いて、「校正装置3の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率(第2の変化率)」を演算する機能を有している。第2の変化率演算ブロック42F-1の演算結果は、信号ラインSL9を介して比較ブロック42B-1に送信される。
【0029】
比較ブロック42B-1は、第1の変化率演算ブロック42E-1から受信した「カウンター28で表示される流量の単位時間当たりの変化率」と、第2の変化率演算ブロック42F-1から受信した「校正装置3の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率」を、比較する機能を有している。
比較ブロック42B-1の比較結果は、信号ラインSL10を介して判断ブロック42C-1に送信される。
判断ブロック42C-1は、比較ブロック42B-1から受信した比較結果に基づき、不正の有無を判断する機能を有している。
すなわち、「カウンター28に表示される流量(質量流量)の単位時間当たりの変化率」と「校正用の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率」の差異が、例えば±0.5%以内の場合は同一と判断し、同一であれば不正が存在しないと判断する。そして、両者の差異が、例えば±0.5%より大きい場合は同一でないと判断し、同一でなければ不正が存在すると判断する。
判断ブロック42C-1による判断結果は、信号ラインSL11を介して判断結果表示ブロック42D-1に送信される。
【0030】
図1、
図4を参照しつつ、主として
図5を参照して第2実施形態の制御の手順を説明する。第2実施形態の制御の説明に際し、
図3に示す第1実施形態の作業手順と相違する部分を主として説明する。
図5において、ステップS11では、作業者はタブレット42-1を操作し、充填装置2のカウンター28に対して、「カウンター28に表示される流量」の送信を要求し、校正装置3の流量計7に対して、「流量計7の計測結果」の送信を要求する。そして、ステップS12、S13に進む。
ステップS12では、ステップS11のタブレット42-1からの要求に基づき、「充填装置2のカウンター28に表示される流量」がタブレット42-1の受信ブロック42A-1に、通信ラインCL1を介して入力される(入力工程)。そしてステップS14に進む。
ステップS14では、「カウンター28で表示される流量の単位時間当たりの変化率(第1の変化率)」を演算する(カウンター表示流量変化率の演算工程)。当該演算は、第1の変化率演算ブロック42E-1(カウンター表示流量変化率演算ブロック)が実行する。そしてステップS16に進む。
【0031】
ステップS13では、ステップS11のタブレット42-1からの要求に基づき、「校正用の流量計7の計測結果」がタブレット42-1の受信ブロック42A-1に、通信ラインCL2を介して入力される(入力工程)。そしてステップS15に進む。
ステップS15では、「校正装置3の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率(第2の変化率)」を演算する(校正装置3の流量計7の計測結果の変化率演算工程)。当該演算は、第2の変化率演算ブロック42F-1(校正装置の流量計の計測結果の変化率演算ブロック)が実行する。そしてステップS16に進む。
ステップS16では、ステップS14で演算した「カウンター28で表示される流量の単位時間当たりの変化率」と、ステップS15演算した「校正用の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率」を比較する(比較工程)。当該比較工程は、タブレット42-1の比較ブロック42B-1により実行される。
【0032】
次のステップS17では、ステップS16の比較結果から、「充填装置2のカウンター28に表示される流量の単位時間当たりの変化率」と、「校正用の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率」が同一であるか否かを判断する(判断工程)。
ステップS17の判断工程では、「カウンター28に表示される流量の単位時間当たりの変化率」と「校正用の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率」の差異が、例えば±0.5%以内の場合、両者は同一と判断し、両者の差異が例えば±0.5%より大きい場合は同一ではないと判断する。当該判断は、判断ブロック42C-1により実行される。
ステップS17の判断の結果、「カウンター28に表示される流量の単位時間当たりの変化率」と「校正用の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率」が同一の場合(ステップS17が「Yes」)はステップS18に進む。一方、「カウンター28に表示される流量の単位時間当たりの変化率」と「校正用の流量計7の計測結果の単位時間当たりの変化率」が同一でない場合(ステップS17が「No」)はステップS19に進む。
【0033】
ステップS18(第1及び第2の変化率が同一の場合)では、判断ブロック42C-1は「不正は存在しない」と判断する(判断工程)。
一方、ステップS19(第1及び第2の変化率が同一ではない場合)では、判断ブロック42C-1は「不正が存在する」と判断する(判断工程)。
図4、
図5の第2実施形態においても、校正の度に不正改造の有無を判断することが出来る。
図4、
図5の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1~
図3に示す第1実施形態と同様である。
【0034】
次に、
図6~
図9を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図1~
図5の第1実施形態及び第2実施形態の不正防止システム100、100-1では、充填装置2のカウンター28に表示される流量或いはその変化率と、校正装置3の流量計7の計測結果或いはその変化率を比較して、パルス信号発信装置24の不正改造を検出している。それに対して
図6~
図9の第3実施形態の不正防止システム100-2では、充填装置内に電子封印された器差と、事務所側で記憶された器差とを比較して、器差の改ざんの有無を検出している。
図6で示す水素ステーション40―2は、
図1の水素ステーション40と同様である。ただし、
図1(第1実施形態及び第2実施形態)では、タブレット42(42-1)は充填装置2のカウンター28及び校正用流量計7と無線通信ラインCL1、CL2を介して通信可能であるのに対して、
図6(第3実施形態)では、タブレット42-2は制御装置30の器差調整ユニット32及び事務所34内の記憶装置36と通信ラインCL3、CL4を介して通信可能に構成されている。
図6では、校正用流量計を介さずに、充填ホース4の先端の充填ノズル9を直接燃料電池自動車1のレセプタクル10に接続し、充填する際に、器差改ざんをチェックしているが、
図1と同様に、FCV1に対して校正用流量計7を介して水素充填する際に、器差改ざんのチェックを実行することが可能である。
【0035】
図6において、充填装置2の制御ユニット30は器差調整ユニット32を備えており、器差調整ユニット32は充填装置2の流量計22の器差を、電子封印した状態で記録、記憶している。
明確には図示されていないが、水素充填装置2の制御装置30は外部の事務所34内の記憶装置36との間で情報の授受が可能に構成されている。そして器差調整ユニット32に記録された器差は、既存の手順に従って事務所34内の記憶装置36に記憶される。
換言すれば、事務所34内の記憶装置36には、適正状態であれば、器差調整ユニット32に記録、記憶されているのと同一の器差が、電子封印された状態で記憶されており、常に同一であるように設定されている。両方の器差を比較し両者が異なっている場合には、器差が改ざんされたと判断出来る。
タブレット42-2は制御装置30の器差調整ユニット32と無線通信ラインCL3を介して相互に通信可能であり、器差調整ユニット32に記録、記憶される器差は、無線通信ラインCL3によりタブレット42-2に送信される。そしてタブレット42-2は事務所内の記憶装置36と無線通信ラインCL4を介して相互に通信可能であり、記憶装置36に記憶される器差は、無線通信ラインCL4によりタブレット42-2に送信される。
【0036】
図7において、器差調整ユニット32は、送受信ブロック32A、封印解除判断ブロック32B、封印ブロック32C、記憶ブロック32D及び器差設定ブロック32Eを有している。
送受信ブロック32Aは、タブレット42-2から器差参照の要求(例えば、電子封印解除のパスワードの送信要求等)を通信ラインCL3を介して受信し、当該要求信号を、信号ラインSL12を介して封印解除判断ブロック32Bに送信する機能を有している。
封印解除判断ブロック32Bは、送受信ブロック32Aから受信した器差参照の要求に基づき(電子封印のパスワード送信要求等に基づき)、封印解除の可否を判断する機能を有する。封印解除が可能(適正)の場合は、封印解除判断ブロック32Bから電子封印解除信号が、信号ラインSL13を介して封印ブロック32Cに送信される。判断の結果、封印解除が不可(不適当)の場合は、タブレット42-2からの器差参照の要求は却下され、ら電子封印解除信号は封印ブロック32Cに送信されない。
封印ブロック32Cは、封印解除判断ブロック32Bから電子封印解除信号を受信した場合に、器差調整ユニット32における器差の封印を解除する機能を有している。封印ブロック32Cは、封印を解除した後、器差送信信号(器差の送信許可を意味する信号)を、信号ラインSL14を介して記憶ブロック32Dに送信する。
【0037】
記憶ブロック32Dは、封印ブロック32Cから受信した器差送信信号に基づき、記憶ブロック32Dに記録、記憶されている器差を、信号ラインSL15を介して送受信ブロック32Aに送信する機能を有している。封印を解除された器差は、送受信ブロック32Aから、無線通信ラインCL3を介してタブレット42-2に送信される。
器差設定ブロック32Eは、器差を新たに設定する機能を有している。例えば、校正の結果、以前とは器差が異なる場合や、後述する様な器差の改ざんが発覚した場合等において、信号ラインSL16を介して伝達された器差設定指令に基づいて、器差設定ブロック32Eにより新たな器差が設定される。器差設定ブロック32Eで設定された新たな器差は、信号ラインSL17を介して記憶ブロック32Dに送信され、記憶ブロック32Dにおいて新たな器差が記録される。
【0038】
図8において、情報処理装置としてのタブレット42-2は、受信ブロック42A-2、比較ブロック42B-2、判断ブロック42C-2及び判断結果表示ブロック42D-2を有している。
受信ブロック42A-2は、充填装置2の制御装置30の器差調整ユニット32から「器差調整ユニット32(充填装置2側)が記憶している器差」を、無線通信ラインCL3を介して受信する機能を有している。
また、受信ブロック42A-2は、充填装置2の外部の事務所34に配置される記憶装置36から「記憶装置36(事務所34側)が記憶している器差」を、無線通信ラインCL4を介して受信する機能を有している。タブレット42-2の受信ブロック42A-2が制御装置30内の器差調整ユニット32及び事務所34の記憶装置36から器差を取得するためには、それぞれ電子封印を解除するための手順(パスワードの入力等)が必要であるが、電子封印を解除する手順は
図7を参照して上述したので、
図8では封印解除の手順に関する図示を省略している。
受信ブロック42A-2が受信した「器差調整ユニット32が記憶している器差」は、信号ラインSL18を介して比較ブロック42B-2に送信され、受信ブロック42A-2が受信した「記憶装置36が記憶している器差」は、信号ラインSL19を介して比較ブロック42B-2に送信される。
【0039】
比較ブロック42B-2は、受信ブロック42A-2から送信された「器差調整ユニット32が記憶している器差」と「記憶装置36が記憶している器差」とを比較する機能をしている。比較ブロック42B-2の比較結果は、信号ラインSL20を介して判断ブロック42C-2に送信される。
判断ブロック42C-2は、比較ブロック42B-2から受信した比較結果に基づき、不正(改ざん)の有無を判断する機能を有している。「器差調整ユニット32が記憶している器差」と、「器差調整ユニット32の外部の(事務所32の)記憶装置36が記憶している器差」を比較した結果、両者の差異が例えば±0.5%以内の場合は同一と判断し、器差は改ざんされていないと判断する。一方、両者の差異が例えば±0.5%より大きい場合は同一ではないと判断し、器差は改ざんされたと判断する。
判断ブロック42C-2による判断結果は、信号ラインSL21を介して判断結果表示ブロック42D-2に送信される。
判断結果表示ブロック42Dは、判断ブロック42Cから受信した判断結果を、タブレット42の図示しないディスプレイに表示する機能を有している。
【0040】
次に
図6~
図8を参照しつつ、主として
図9を参照して第3実施形態の制御を説明する。
図9において、ステップS21では、作業者はタブレット42-2を操作して、充填装置2の器差調整ユニット32に対して、無線通信ラインCL3を介して、「器差調整ユニット32に記憶されている器差の送信」を要求する。また、事務所34の記憶装置36に対して、無線通信ラインCL4を介して、「記憶装置36に記憶されている器差の送信」を要求する。そして、ステップS22、ステップS23に進む。
ステップS22では、タブレット42-2からの器差送信の要求を受けて、器差調整ユニット32の電子封印を解除して、ステップS24に進む。この電子封印の解除は、器差調整ユニット32の封印解除判断ブロック32Bが器差送信の要求における電子封印解除のパスワード等を参酌して実行する。パスワード等が適正でなければ電子封印は解除されず、器差調整ユニット32の器差はタブレット42-2には送信されない。
ステップS24では、「充填装置側の器差調整ユニット32に記憶されている器差」をタブレット42-2に送信する(器差をタブレット42-2に呼び出す)。当該器差の呼び出しに際し、器差調整ユニット32は「記憶されている器差」を、無線通信ラインCL3を介してタブレット42-2に送信し、タブレット42-2の受信ブロック42A-2が受信する(入力工程)。そしてステップS26に進む。
【0041】
ステップS23では、ステップS21のタブレット42-2からの器差送信の要求を受け、事務所側の記憶装置36に記録されている器差の電子封印を解除して、ステップS25に進む。当該電子封印の解除は、記憶装置36が器差送信の要求における電子封印解除のパスワード等を参酌して実行する。パスワード等が適正でなければ電子封印は解除されず、記憶装置36の器差はタブレット42-2には送信されない。
ステップS25では、「事務所側の記憶装置36に記憶されている器差」をタブレット42-2に送信する(器差をタブレット42-2に呼び出す)。当該器差の呼び出しに際し、記憶装置36は「記憶されている器差」を、無線通信ラインCL4を介してタブレット42-2に送信し、タブレット42-2の受信ブロック42A-2はそれを受信する(入力工程)。そしてステップS26に進む。
【0042】
ステップS26では、ステップS24で入力された「器差調整ユニット32(充填装置側)に記憶されている器差」と、ステップS25で入力された「記憶装置36(事務所側)に記憶されている器差」を比較する(比較工程)。当該比較工程は比較ブロック42B-2により実行される。
次のステップS27では、ステップS26の比較結果を受け、「器差調整ユニット32(充填装置側)に記憶されている器差」と、「記憶装置36(事務所側)に記憶されている器差」が同一であるか否かを判断する(判断工程)。
当該判断工程では、上述した様に判断ブロック42C-2により実行され、「器差調整ユニット32(充填装置側)に記憶されている器差」と「記憶装置36(事務所側)に記憶されている器差」の差異が、例えば±0.5%以内の場合、両者は同一と判断され、両者の差異が例えば±0.5%より大きい場合、両者は同一ではないと判断される。
ステップS27の判断の結果、「器差調整ユニット32(充填装置側)に記憶されている器差」と「記憶装置36(事務所側)に記憶されている器差」が同一の場合(ステップS27が「Yes」)はステップS28に進む。一方、「器差調整ユニット32(充填装置側)に記憶されている器差」と「記憶装置36(事務所側)に記憶されている器差」が同一でない場合(ステップS27が「No」)はステップS29に進む。
【0043】
ステップS28(両者が同一の場合)では、判断ブロック42C-2により「器差は改ざんされていない」と判断する。
一方、ステップS29(両者が同一ではない場合)では、判断ブロック42C-2により「器差が改ざんされた」と判断する。
ステップS27~ステップS29の判断結果は、判断結果表示ブロック42D-2のディスプレイに表示、可視化し、不正防止対策に供する。
【0044】
図6~
図9に示す本発明の第3実施形態に係る充填装置2の不正防止システム100-2によれば、制御装置30内の器差調整ユニット32に記憶されている器差と、充填装置2の外部の事務所34に設置された記憶装置36に記憶されている器差を比較して、同一であれば器差は改ざんされていないと判断し、同一でなければ器差が改ざんされたと判断する。
そのため、不正行為により器差を改ざんしたとしても、充填装置2内の器差調整ユニット32の器差と充填装置2外部である事務所34の記憶装置36に記憶されている器差の双方を同一の数値に改ざんしない限りは、当該改ざんを検知することが出来る。
そして、係る改ざんの検知は、充填装置2を用いて充填する度毎に行うことが出来るので、改ざんの検知を短い周期で確実に行い、以て、改ざんに対する抑止力を高めることが出来る。
【0045】
図示の実施形態において、
図14で示すような校正装置3を用いることに代えて、質量流量計を有するノズルにより校正を行い、以て、器差を決定することが好ましい。
係るノズルを用いている場合には、当該ノズルが具備している質量流量計を校正用流量計として用いる。
図示の実施形態に好適に用いられるノズル(質量流量計を有するノズル)について、
図10~
図13を参照して、以下で説明する。
図10~
図13において、
図1、
図6、
図14で示すのと同様の部材は同様な符号を付して示している。
図10において、図示の実施形態に好適に用いられる水素充填ノズルは全体を符号45で示している。
充填ノズル45は流量計46(質量流量計)を内蔵しており、流量計吸入側レセプタクル47と、流量計吐出側ノズル48を有している。また充填ノズル45は、
図12を参照して後述する支持装置50を有している。
流量計吸入側レセプタクル47は、水素充填装置2(
図11)の充填用ホース4先端の充填用ノズル5と着脱自在に構成されている。流量計吸入側レセプタクル47は逆止弁は内蔵していない。
流量計吐出側ノズル48は、
図1、
図6、
図14で示すノズル9と同様に構成されており、充填対象の電池自動車(FCV1)のレセプタクル10(逆止弁を内蔵)と着脱自在に構成されている。
【0046】
図11において、水素充填装置2は、水素充填装置2の充填ホース4、充填ノズル5内に残存する水素ガスを水素充填後に脱圧するための脱圧機構(遮断弁12、脱圧弁13、脱圧系統14)を有している。
図10、
図11において、水素充填ノズル45の流量計吸入側レセプタクル47に水素充填装置2の充填用ノズル5を接続し、水素充填ノズル45の流量計吐出側ノズル48をFCV1のレセプタクル10に接続して、FCV1に対して水素充填を行えば、水素充填装置2、充填ホース4、充填ノズル5、流量計吸入側レセプタクル47を介して水素ガスが流量計46を流れ、流量計46により水素ガスの質量流量が計測され、校正が行われる。
【0047】
図14で示す従来の校正と比較すると、
図10で示す水素充填ノズル45には流量計吐出側水素充填ホース8(
図14)が存在しないので、その分だけ水素充填系統における熱容量及び圧損が少なく、定められた充填プロトコルにおける充填特性で、水素充填プロトコルに従った水素充填を実行することができる。
流量計46で計測された質量流量は、図示しない無線送信装置により(例えば赤外線通信により)、例えば作業者が保持する情報処理装置(例えばタブレット42:
図1、
図6)に送信される。タブレットにおいては、流量計46の計測結果に基づいて水素充填装置2側の流量計(22:
図1、
図6、
図14)の器差を演算し、校正の報告書を作成することが可能である。
水素充填ノズル45は、校正装置としての機能を発揮するノズルであり、この水素充填ノズル45を使用することにより、通常の水素充填と同様な態様で校正を行うことが出来る。
【0048】
上述した様に、流量計46とFCV1のレセプタクル10との間に充填ホースは存在しておらず、また、レセプタクル47には逆止弁が内蔵されていない。水素充填後に水素充填ノズル45内に残存する水素ガスは微量であり、校正の後、水素充填ノズル45に残存する水素ガスは、水素充填装置2側のノズル5、ホース4を介して、水素充填装置2側の脱圧機構(脱圧弁13、脱圧系統14)により自動的に排出される。
そのため、充填ノズル45内に脱圧機構を設ける必要はなく、作業員による充填ノズル45側の脱圧作業が不要であり、校正に用いられる機器も簡素化される。
【0049】
図12において、充填ノズル45を支持する支持装置50を設けている。
支持装置50は本体部51と台車部52を備えており、本体部51の上端近傍に充填ノズル45が載置、固定される。本体部51に載置された充填ノズル45は、支持装置50の本体部51の長手方向を軸に回動(矢印A1)することが可能であり、充填ノズル45の水平面(図示せず)に対する傾斜を矢印A2で示す様に調整出来る。
流量計46を内蔵する大重量の充填ノズル45を支持装置50で支持するため、充填ノズル45の大重量がレセプタクル10に負荷されることは無く、レセプタクル10の破損を防止することが出来る。
また、本体部51を載置する台車部52を設けているので、大重量の充填ノズル45を載置した状態の支持装置50が容易に移動することが出来る。
さらに、図示の支持装置50において、公知の機構により本体部51の長手方向の長さを調整可能に構成し、流量計吐出側ノズル48の高さ位置を垂直方向(矢印A3方向)に調節可能としている。
【0050】
図13を参照して、図示の充填ノズル45を用いた場合における校正終了の手順を説明する。
ステップS31では、充填(或いは校正)を終了するか否かを判断する。水素充填の際には、水素充填装置2(
図11)の吐出側に配置された圧力計22(
図1、
図6)で圧力がチェックされるので、水素充填装置2の吐出側圧力が所定値(例えば80MPa)以上か否かを判断し、所定以上の高圧になった場合に「充填(校正)を終了」と判断する。
ステップS31において、充填を終了する場合(ステップS31が「Yes」)はステップS32に進む。
【0051】
ステップS32(充填を終了)では、水素充填装置2の遮断弁12(
図11)を閉鎖して、ステップS33に進む。
ステップS33では、水素充填装置2の脱圧弁13(
図11)を開放し、脱圧系統14(
図11)を介して水素充填装置2内に残留する水素ガスを脱圧する。
脱圧弁13を開放することにより、水素充填装置2側の充填ホース4(
図11)、充填ノズル5(
図11)内に残存する水素ガスが排出されると共に、水素充填ノズル45内に残存する微量の水素ガスも、逆止弁が内蔵されていない流量計吸入側レセプタクル47、水素充填装置2側の充填ノズル5、充填ホース4を介して、水素充填装置2側の脱圧弁13、脱圧系統14を介して排出(自動脱圧)される。
【0052】
ステップS34では、ステップS33による水素充填装置2の自動脱圧が終了したか否かを判断する。ステップS34では、水素充填装置2の吐出側圧力が脱圧の基準圧力(例えば1MPa)以下になった場合に「自動脱圧が終了」と判断する。
ステップS34で自動脱圧が終了した場合(ステップS34が「Yes」)にはステップS35に進む。
ステップS35(自動脱圧が終了)では、水素充填装置2の遮断弁12を開放し、脱圧弁13を閉鎖する。そしてステップS36に進む。
ステップS36では、充填ノズル45の流量計吐出側ノズル48をFCV1側のレセプタクル10から取り外す。ステップS33において水素充填ノズル45内の水素は脱圧されているので、ステップS36においては水素充填ノズル45の脱圧は不要である。換言すれば、図示の充填ノズル45を用いれば、校正終了時に、水素充填装置2内における脱圧のみを行い、水素充填装置2内の流量計とは別途設けられた充填ノズル45に内蔵された流量計46については脱圧を行わない。
【0053】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0054】
1・・・燃料電池自動車(FCV)
2・・・充填装置(水素充填装置)
3・・・校正装置
4・・・水素充填装置側の充填ホース
5・・・水素充填装置側のノズル
7、46・・・流量計(質量流量計)
8・・・流量計吐出側ホース
9・・・充填ノズル
10・・・レセプタクル(燃料電池自動車側のレセプタクル)
22・・・充填装置側の流量計
28・・・カウンター
30・・・制御装置
32・・・器差調整ユニット
34・・・事務所
36・・・記憶装置
42、42-1、42-2・・・タブレット(情報処理機器)
42A、42A-1、42A-2・・・受信ブロック
42B、42B-1、42B-2・・・比較ブロック
42C、42C-1、42C-2・・・判断ブロック
42D、42D-1、42D-2・・・判断結果表示ブロック
42E-1・・・第1の変化率演算ブロック(カウンター表示流量変化率演算ブロック)
42F-1・・・第2の変化率演算ブロック(校正装置の流量計の計測結果の変化率演算ブロック)
45・・・充填ノズル
47・・・流量計吸入側レセプタクル
48・・・流量計吐出側ノズル
50・・・支持装置
100、100-1、100-2・・・不正防止システム