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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136268
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B29C65/02
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120454
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2018103855の分割
【原出願日】2018-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】中井 貴暁
(72)【発明者】
【氏名】芝 剛史
(72)【発明者】
【氏名】津村 制志
(72)【発明者】
【氏名】林 倫生
(57)【要約】
【課題】ロール状に巻いた際にシートが変形しにくいシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を押出成形法又はインフレーション成形法によりシート状に成形することにより、厚さtが0.1~5mmである複数の樹脂シート(ただし、発泡シートを除く。)を製造する工程と、前記複数の樹脂シートを送り出して走行させながら、前記複数の樹脂シートの幅方向の端部同士を、一体化された部分の厚さtが前記厚さtの90%以上115%以下となるように一体化して1つのシートとする工程と、を含み、前記複数の樹脂シートの端部同士を一体化する方法が、前記複数の樹脂シート各々の端部を溶融させ、圧着する方法であり、前記複数の樹脂シートを、各樹脂シートの端面が3mm以下離間した状態、又は各樹脂シートの端面が互いに当接した状態で走行させて一体化する、シートの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を押出成形法又はインフレーション成形法によりシート状に成形することにより、厚さtが0.1~5mmである複数の樹脂シート(ただし、発泡シートを除く。)を製造する工程と、
前記複数の樹脂シートを送り出して走行させながら、前記複数の樹脂シートの幅方向の端部同士を、一体化された部分の厚さtが前記厚さtの90%以上115%以下となるように一体化して1つのシートとする工程と、
を含み、
前記複数の樹脂シートの端部同士を一体化する方法が、前記複数の樹脂シート各々の端部を溶融させ、圧着する方法であり、
前記複数の樹脂シートを、各樹脂シートの端面が3mm以下離間した状態、又は各樹脂シートの端面が互いに当接した状態で走行させて一体化する、シートの製造方法。
【請求項2】
走行中の前記複数の樹脂シートの端面間の距離を検知し、検知した距離に基づいて、前記複数の樹脂シートの送り出し位置を制御する、請求項1に記載のシートの製造方法。
【請求項3】
長手方向に延びた少なくとも一つの易屈曲部を有し、
前記易屈曲部は、複数の樹脂シートの一体化部であり、
前記易屈曲部の引張弾性率が、他の部分の引張弾性率に対して80%以上98%以下である、シート。
【請求項4】
前記他の部分の厚さが、0.1~5mmであり、
前記易屈曲部の厚さが、前記他の部分の厚さの90%以上115%以下である、請求項3に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の樹脂シートが一体化されたシート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広幅のシートを製造するときは、一般的な成形方法では製造する樹脂シートの幅に一定の制約があるため、樹脂シートを接合することが行われている。
特許文献1~3には、樹脂シートの接合方法として、2枚の熱可塑性樹脂シートの幅方向の端部同士を重ねた状態で、無端帯状体によって連続的に搬送しながら、端部同士の重なり部分を加熱して溶融させ、圧着する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5244645号公報
【特許文献2】特許第5346561号公報
【特許文献3】特許第5581407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3に記載の方法により得られるシートは、接合部の厚さが局所的に厚くなっているため、ロール状に巻いた際にシートが変形してしまう問題がある。
よって本発明は、ロール状に巻いた際にシートが変形しにくいシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の態様を有する。
<1>厚さtが0.1~5mmである複数の樹脂シートを製造する工程と、
前記複数の樹脂シートを送り出して走行させながら、前記複数の樹脂シートの幅方向の端部同士を、一体化された部分の厚さtが前記厚さtの90%以上115%以下となるように一体化して1つのシートとする工程と、
を含む、シートの製造方法。
<2>前記複数の樹脂シートの端部同士を一体化する方法が、前記複数の樹脂シート各々の端部を溶融させ、圧着する方法である、前記<1>のシートの製造方法。
<3>前記複数の樹脂シートの端部同士を一体化する方法が、前記複数の樹脂シート各々の端部及び溶着棒を溶融させ、圧着する方法である、前記<1>のシートの製造方法。
<4>前記複数の樹脂シートを、各樹脂シートの端面が3mm以下離間した状態、又は各樹脂シートの端面が互いに当接した状態で走行させて一体化する、前記<2>のシートの製造方法。
<5>走行中の前記複数の樹脂シートの端面間の距離を検知し、検知した距離に基づいて、前記複数の樹脂シートの送り出し位置を制御する、前記<4>のシートの製造方法。
<6>長手方向に延びた少なくとも一つの易屈曲部を有するシート。
<7>前記易屈曲部の引張弾性率が、他の部分の引張弾性率に対して80%以上98%以下である、前記<6>のシート。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシートの製造方法によれば、ロール状に巻いた際にシートが変形しにくいシートを製造できる。
本発明のシートは、ロール状に巻いた際にシートが変形しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るシートの製造方法で用いるシート一体化装置の概略構成を示す斜視図である。
図2図1に示すシート一体化装置を構成する溶着ユニット及び検知機構を示す側面図である。
図3図1に示すシート一体化装置を構成するエッジコントローラの一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
なお、以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「流れ方向」(Machine Direction)は、シートの製造時における流れ方向、すなわち長手方向である。
「複数の樹脂シートの端部同士の一体化された部分」(以下、「一体化部」ともいう。)は、複数の樹脂シートが一体化された部分であって他の部分(例えば各樹脂シートの中央部)とは物性(引張弾性率等)が異なる部分を示す。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0009】
本発明のシートの製造方法は、以下の第1工程と第2工程とを含む。
第1工程:厚さtが1~2mmである複数の樹脂シートを製造する工程。
第2工程:前記複数の樹脂シートを送り出して走行させながら、前記複数の樹脂シートの幅方向の端部同士を一体化して1つのシートとする工程。
【0010】
(第1工程)
第1工程で製造する複数の樹脂シートそれぞれを構成する樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ4フッ化エチレン、ポリエチレンテレフタレート等)であってもよいし、非晶性樹脂(例えばポリスチレン等)であってもよい。
複数の樹脂シートそれぞれを構成する樹脂は、同じであってもよく異なってもよく、典型的には同じ樹脂である。
【0011】
樹脂シートの厚さtは、0.1~5mmであり、0.4~2mmが好ましい。厚さtが0.1mm以上であれば、実用的な強度を有することが可能で、シート製造時および敷設時において穴が開きにくい。厚さtが5mm以下であれば、樹脂シートや複数の樹脂シートを一体化したシートを巻き取りやすく、施工性が良い。
複数の樹脂シートそれぞれの厚さtは、略同一である。厚さtが略同一であるとは、本来の厚さの90%以上115%以下の厚さであることを意味する。本来の厚さとは、第1工程で樹脂シートを製造する際の目標値であり、複数の樹脂シートそれぞれの厚さの目標値は同一である。
【0012】
複数の樹脂シートの製造方法は、特に限定されず、公知の樹脂シートの製造方法と同様であってよい。例えば樹脂シートを構成する樹脂が熱可塑性樹脂である場合、すなわち樹脂シートが熱可塑性樹脂シートである場合は、熱可塑性樹脂を、押出成形法、インフレーション成形法等の成形法によりシート状に成形することにより樹脂シートが得られる。押出成形法では、例えば、Tダイを備えた押出成形機にて、熱可塑性樹脂を溶融させ、溶融した熱可塑性樹脂をTダイから連続的に押し出し、冷却して樹脂シートを得る。
【0013】
第1工程では、複数の樹脂シートを別々に成形してもよいし、1つの押出成形機で長尺の樹脂シートを成形し、得られた長尺の樹脂シートを分割して複数の樹脂シートを得てもよい。
複数の樹脂シートはそれぞれ、巻き取って巻回物としてから第2工程に供してもよいし、巻き取らずにそのまま第2工程に供してもよい。
樹脂シートを巻回物としてから第2工程に供する場合、第2工程では、樹脂シートを送り出す際に、前記巻回物を開反する。
【0014】
第1工程で樹脂シートを連続的に製造し、得られた樹脂シートを巻き取らずそのまま第2工程に供することで、第1工程と第2工程とを連続して実施できる。
連続的に製造し、そのまま第2工程に供する樹脂シートは、複数の樹脂シートのうちの全部でもよく一部でもよい。例えば、第1工程で、複数の押出成形機を用いる等によって複数の樹脂シートの全部を連続的に製造し、製造された複数の樹脂シートをそのまま第2工程に供することができる。例えば、第1工程で、複数の樹脂シートの一部を巻回物としてから第2工程に供し、残りの樹脂シートを連続的に製造してそのまま第2工程に供することができる。
【0015】
(第2工程)
第2工程では、複数の樹脂シートの幅方向の端部同士を一体化する。
一体化は、一体化部の厚さtが、樹脂シートの厚さtの90%以上115%以下となるように行う。このようにして得られたシートは、シート全体の厚さが略均一であるため、ロール状に巻いた際に変形しにくい。また、一体化部の強度も良好である。
一体化部の厚さtは、厚さtの95%以上105%未満が好ましい。
【0016】
以下、図1~2に示すシート一体化装置100を用いて、複数の樹脂シートの幅方向の端部同士を一体化する場合を例に挙げて、第2工程を説明する。
【0017】
<シート一体化装置>
図1は、シート一体化装置100の概略構成を示す斜視図である。図2は、シート一体化装置100を構成する溶着ユニット及び検知機構を示す側面図である。
シート一体化装置100は、流れ方向と直交する方向に並んで配置された3枚の熱可塑性樹脂シート1,2,3(樹脂シート)を走行させながら、熱可塑性樹脂シート1,2,3各々の幅方向(流れ方向と直交する方向)の端部を溶融させ、圧着することによって、熱可塑性樹脂シート1,2,3を一体化するものである。シート一体化装置100によって、流れ方向(熱可塑性樹脂シートの走行方向)に沿って延びた2つの一体化部4aを有するシート4が得られる。
シート一体化装置100の上流側には、図示しない3台の押出成形機が設けられており、各押出成形機で熱可塑性樹脂シート1,2,3を連続的に製造し、シート一体化装置100に供給するようになっている。
【0018】
シート一体化装置100は、2組の溶着ユニット10と、各溶着ユニット10の上流側に設けられた2組の検知機構20と、各検知機構20の上流側に設けられた送給ユニット30と、各溶着ユニット10の下流側に設けられた巻取りユニット40とを有する。
2組の溶着ユニット10は、流れ方向と直交する方向に並んで配置されている。2組の溶着ユニット10のうち、一方の溶着ユニット10は、熱可塑性樹脂シート1の一方の端部と熱可塑性樹脂シート2の一方の端部とを一体化する。他方の溶着ユニット10は、熱可塑性樹脂シート2の他方の端部と、熱可塑性樹脂シートの一方の端部とを一体化する。
なお、図示はしていないが、熱可塑性樹脂シート1,2,3は各々、支持台の上を走行するようになっている。
【0019】
溶着ユニット10は、上下に配置された溶着機10a,10bを有する。溶着機10a,10bの間を、熱可塑性樹脂シート1,2,3が走行するようになっている。以下、上側の溶着機10aを第1の溶着機10aといい、下側の溶着機10bを第2の溶着機10bという。第1の溶着機10a及び第2の溶着機10bは互いに密着するようにばね等により付勢されている。
【0020】
第1の溶着機10a及び第2の溶着機10bは、各々、搬送手段11、第1の加熱手段12と、第2の加熱手段13と、押圧ロール14と、冷却手段15とを有する。
搬送手段11は、熱可塑性樹脂シートの端部(熱可塑性樹脂シート1,2の端部又は熱可塑性樹脂シート2,3の端部)に接触する無端帯状のベルト11aと、回転してベルト11aを搬送させると共にベルト11aの走行方向を屈曲させる複数のロール11bとを具備する。本実施形態例におけるロール11bはモータ等の駆動手段により回転駆動するようになっている。この回転駆動するロール11bによって、ベルト11aは、熱可塑性樹脂シートの走行に対応するように回転するようになっている。
【0021】
ベルト11aの、熱可塑性樹脂シートに接触する部分の内側には、第1の加熱手段12と、第2の加熱手段13と、押圧ロール14と、冷却手段15とが上流側から順に設けられている。
第1の溶着機10aの第1の加熱手段12と第2の溶着機10bの第1の加熱手段12、第1の溶着機10aの第2の加熱手段13と第2の溶着機10bの第2の加熱手段13、第1の溶着機10aの冷却手段15と第2の溶着機10bの冷却手段15とは互いに対向している。また、第1の溶着機10aの押圧ロール14と第2の溶着機10bの押圧ロール14とは、熱可塑性樹脂シートの端部を挟持して圧縮するように配置されている。
【0022】
第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13としては、例えば、加熱体、熱風や赤外線等により加熱する加熱機等が挙げられる。なお、本実施形態例では、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13は、ベルト11aの内側に配置されているため、熱可塑性樹脂シートの端部を直接加熱しない。第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の熱は、ベルト11aを介して熱可塑性樹脂シートの端部に伝達される。
【0023】
溶着機10a,10bの間を走行する熱可塑性樹脂シートの端部同士が重なっていない場合、すなわち、各熱可塑性樹脂シートの端面が離間した状態、又は各熱可塑性樹脂シートの端面が互いに当接した状態である場合は、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅は、各熱可塑性樹脂シートの端部同士を充分に一体化する点から、(一体化する熱可塑性樹脂シートの端面間の距離+10mm)以上が好ましく、(一体化する熱可塑性樹脂シートの端面間の距離+20mm)以上がより好ましい。
また、一体化部4aの強度を充分に確保し、加熱エネルギーの消費量を抑える点から、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅は、(一体化する熱可塑性樹脂シートの端面間の距離+50mm)以下が好ましく、(一体化する熱可塑性樹脂シートの端面間の距離+40mm)以下がより好ましい。
【0024】
押圧ロール14の幅は、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13で溶融させた部分全体を圧縮でき、一体化部4aを平坦化できることから、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅以上であることが好ましい。また、押圧ロール14の幅は、溶着ユニット10を小型化できることから、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅のほぼ同一幅であることが好ましい。
ここで、第1の加熱手段12の幅と第2の加熱手段13の幅とが異なる場合、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅は、第1の加熱手段12の幅及び第2の加熱手段13の幅のうち、広い方の幅を示すものとする。以下同様である。
なお、押圧ロール14の幅を、一体化部4aの幅とみなすことができる。
【0025】
冷却手段15としては、例えば、冷却体、冷風により冷却する冷却機等が挙げられる。なお、本実施形態例の冷却手段15は、ベルト11aの内側に配置されているため、熱可塑性樹脂シートを直接冷却しない。
冷却手段15の幅は、溶融させた部分の全体を充分に冷却するために、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅以上であることが好ましく、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅の1.3倍以上であることがより好ましい。
また、冷却手段15の幅は、溶着ユニット10を小型化でき、また、冷却エネルギーの消費量を抑えることができる点から、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13の幅の2倍以下であることが好ましく、1.6倍以下であることがより好ましい。
【0026】
上記溶着ユニット10としては、例えば、クインライト電子精工株式会社製オープンアーム型熱板式連続溶着機LHP-W708-OA型が挙げられる。
【0027】
検知機構20は、レーザー光照射部21とセンサー22とを有する。センサー22は、ロール状である。レーザー光照射部21とセンサー22とは上下に互いに対向しており、レーザー光照射部21とセンサー22との間を熱可塑性樹脂シート1,2,3が通過するようになっている。
レーザー光照射部21は、第2の溶着機10bの上流側に配置されている。レーザー光照射部21は、センサー22に向かってレーザー光を照射する。
センサー22は、第1の溶着機10aの上流側に配置されている。センサー22は、レーザー光照射部21から照射されたレーザー光を検知し、熱可塑性樹脂シート1,2又は2,3の端面間の距離を判定する。熱可塑性樹脂シート1,2又は2,3を、端面が離間した状態又は当接した状態で走行させる場合、端面間の距離が広いほど、熱可塑性シートによって遮られるレーザー光が少なくなり、センサー22の受光量が多くなる。そのため、予め受光量と端面間の距離と受光量との関係を求めてセンサー22に入力しておくことで、受光量から端面間の距離を判定できる。
また、2組の検知機構20各々のセンサー22は、各々、送給ユニット30の第1のガイドロール31、第3のガイドロール33各々が有するエッジコントローラ(図示略)と電気的に接続されており、センサー22で検知したデータ(走行中の熱可塑性樹脂シートの端面間の距離)をエッジコントローラに出力するようになっている。
センサー22の位置は、溶着ユニット10になるべく近いことが好ましい。センサー22と溶着ユニット10との間の距離は、0~20cmが好ましく、0~10cmがより好ましい。
【0028】
送給ユニット30は、熱可塑性樹脂シート1,2,3を溶着ユニット10に送給するためのものである。本実施形態における送給ユニット30は、第1のガイドロール31と、第2のガイドロール32と、第3のガイドロール33とを有する。
第1のガイドロール31、第2のガイドロール32及び第3のガイドロール33はそれぞれ、上流側に配置された押出成形機から供給された熱可塑性樹脂シート1,2,3を溶着ユニット10に送給するものである。
第1のガイドロール31、第2のガイドロール32及び第3のガイドロール33は、各々、幅方向が流れ方向と直交する方向に沿うように配置されている。
【0029】
第1のガイドロール31及び第3のガイドロール33には、各々、図示しないエッジコントローラ(EPC)が設けられている。エッジコントローラは、センサー22と電気的に接続され、センサー22から出力されたデータが入力されるようになっている。
エッジコントローラは、第1のガイドロール31又は第3のガイドロール33の、流れ方向と直交する方向における位置を制御し、それによって、熱可塑性樹脂シート1又は3の送り出し位置を制御する、送り出し位置制御機構である。
エッジコントローラは、センサー22からのデータ、すなわち走行中の熱可塑性樹脂シートの端面間の距離に基づいて、熱可塑性樹脂シート1又は3の送り出し位置を制御する。
例えば、センサー22で検知した端面間の距離が、予め設定した距離よりも広い場合は、第1のガイドロール31又は第3のガイドロール33を、第2のガイドロール32側に移動させて、熱可塑性樹脂シート1又は3の端面と、熱可塑性樹脂シート2の端面との間の距離を狭くする。
例えば、センサー22で検知した端面間の距離が、予め設定した距離よりも狭い場合は、第1のガイドロール31又は第3のガイドロール33を、第2のガイドロール32側とは反対側に移動させて、熱可塑性樹脂シート1又は3の端面と、熱可塑性樹脂シート2の端面との間の距離を広くする。
例えば、センサー22で検知した端面間の距離が、予め設定した距離である場合は、第1のガイドロール31又は第3のガイドロール33の位置をそのまま維持する。
【0030】
エッジコントローラとしては、例えば、図3に示すルーチン処理にて端面間の距離を制御する装置を使用できる。該ルーチン処理は、具体的には、以下のように行われる。
まず、センサー22で検知した端面間の距離を変数に入れる(ステップ1)。次いで、前記変数と、予め設定した端面間の距離の下限値とを対比し、前記変数の値が前記下限値以上であるか否かを判定する(ステップ2)。ステップ2において、前記変数の値が前記下限値以上でない場合は、ガイドロール(第1のガイドロール31又は第3のガイドロール33)を幅広方向、つまり熱可塑性樹脂シート1又は3の端面と熱可塑性樹脂シート2の端面との間の距離が広くなる方向に揺動し、その後、再度ステップ1を行う。ステップ2において、前記変数の値が前記下限値以上である場合は、前記変数と、予め設定した端面間の距離の上限値とを対比し、前記変数の値が前記上限値以下であるか否かを判定する(ステップ3)。ステップ3において、前記変数の値が前記上限値以下でない場合は、ガイドロール(第1のガイドロール31又は第3のガイドロール33)を幅狭方向、つまり熱可塑性樹脂シート1又は3の端面と熱可塑性樹脂シート2の端面との間の距離が狭くなる方向に揺動し、その後、再度ステップ1を行う。ステップ3において、前記変数の値が前記上限値以下である場合は、ルーチン処理を終了する。
【0031】
巻取りユニット40は、溶着ユニット10により熱可塑性樹脂シート1,2,3を一体化して得たシート4を、駆動手段によって回転駆動する回転軸40aに巻き取るものである。
【0032】
シート一体化装置100においては、2組の溶着ユニット10各々の搬送手段11が同期しながら駆動する。すなわち、2組の溶着ユニット10の搬送手段11のベルト11aの走行速度が略同じにされる。したがって、3つの熱可塑性樹脂シート1,2,3が略同じ送り出し速度で送り出され、走行する。「略同じ」とは、目標とする数値を基準として98%以上102%以下の数値範囲であることを意味する。
また、シート一体化装置100においては、各搬送手段11及び巻取りユニット40の回転軸40aが同期しながら駆動する。すなわち、搬送手段11のベルト11aの走行速度、及び巻取りユニット40の回転軸40aの回転速度が略同じにされる。
【0033】
<シートの製造方法>
次に、シート一体化装置100を用いたシートの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態のシートの製造方法では、まず、3枚の熱可塑性樹脂シート1,2,3を各々連続的に、シート一体化装置100の上流側に配置された3台の押出成形機(図示略)で製造し、送給ユニット30の第1のガイドロール31、第2のガイドロール32及び第3のガイドロール33により、熱可塑性樹脂シート1,2,3が並行状態となるようガイドする。次いで、熱可塑性樹脂シート1,2,3を検知機構20に向けて送り出し、熱可塑性樹脂シート1,2,3を平行に走行させる。
【0034】
検知機構20では、レーザー光照射部21がセンサー22方向にレーザー光を照射し、センサー22が、レーザー光照射部21とセンサー22との間を走行する熱可塑性樹脂シート1,2,3の端面間の距離を検知するとともに、検知した端面間の距離を第1のガイドロール31、第3のガイドロール33のエッジコントローラ(図示略)に出力する。
エッジコントローラは、センサー22から入力された端面間の距離に基づき、熱可塑性樹脂シート1,3の送り出し位置を制御する。
【0035】
エッジコントローラは、隣り合う熱可塑性樹脂シート(熱可塑性樹脂シート1及び2、又は2及び3)の端面が3mm以下離間した状態、又は隣り合う熱可塑性樹脂シートの端面が互いに当接した状態で走行するように、熱可塑性樹脂シート1,3の送り出し位置を制御することが好ましい。
本発明者らの検討によれば、端面間の距離が3mm以下であれば、熱可塑性樹脂シートの端部同士を一体化したときに、一体化部4aの厚さtが、熱可塑性樹脂シート1,2,3の厚さtの115%以下と薄いながらも、充分な強度で熱可塑性樹脂シートの端部同士が一体化されたシート4が得られる。
【0036】
隣り合う熱可塑性樹脂シートの端面を離間させる場合、端面間の距離の下限は0mm超である。該端面間の距離は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。
【0037】
次いで、隣り合う熱可塑性樹脂シート(熱可塑性樹脂シート1及び2、又は2及び3)の端部を、各々、第1の溶着機10a及び第2の溶着機10bの各搬送手段11のベルト11aで挟持し、ベルト11aをロール11bにより回転させることにより、熱可塑性樹脂シート1,2,3を搬送する。また、第1の加熱手段12及び第2の加熱手段13により順次、ベルト11aを介して、隣り合う熱可塑性樹脂シートの端部を加熱して溶融させ、押圧ロール14により溶融させた端部を挟持して圧着し、冷却手段15により冷却して固化させる。これにより、隣り合う熱可塑性樹脂シートの端部同士を溶着して一体化する。
【0038】
その際の加熱温度は、熱可塑性樹脂シート1,2,3が結晶性樹脂から構成される場合には、結晶性樹脂の融点を超える温度とすることが好ましく、熱可塑性樹脂シート1,2,3が非晶性樹脂から構成される場合には、非晶性樹脂のガラス転移温度を超える温度とすることが好ましい。
加圧時の圧力は、一体化部4aの厚さtが前記範囲内となるように設定される。
具体的な加熱温度、加熱時間、冷却温度、冷却時間、圧力、加圧時間等の溶着条件は、熱可塑性樹脂シート1,2,3の材質、厚さ等により適宜設定される。なお、熱可塑性樹脂シート1,2,3の材質、厚さ等が同じでも、これらの条件は相互に関連するので、一義的には決まらない。
【0039】
次いで、熱可塑性樹脂シート1,2,3を一体化して得たシート4を、回転する巻取りユニット40の回転軸40aに巻き付けることにより、シート4の巻回物を得る。
【0040】
上記のようにして得たシート4は、例えば、一般・産業廃棄物埋立処分場、濁水沈殿池、工場廃液処理池、ヘドロ浚渫池、農業用貯水池、宅地造成調整池、ゴルフ場、庭園、公園等の観賞池、農・工業用水路、排水路、ボックストンネル、ビル・プール・タンク等の地下構造物の外防水、アースダム、ロックフィルダム、河川堰堤・貯水池堰堤等の遮水コア、デスクマット、トラックシート、テント倉庫生地、コンテナバック、シートシャッター、シート間仕切りカーテン、スクリーン、ブラインド等の産業分野で使用できる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
例えば、第2工程において、シート一体化装置100を用いて、複数の樹脂シート各々の端部を溶融させ、圧着する例を示したが、複数の樹脂シートの端部同士を一体化する方法はこれに限定されない。
【0042】
複数の樹脂シート各々の端部及び溶着棒を溶融させ、圧着する方法によって、複数の樹脂シートの端部同士を一体化してもよい。この方法で用いる溶着棒は、熱可塑性樹脂を含む。溶着棒を構成する熱可塑性樹脂は、典型的には、複数の樹脂シート各々を構成する熱可塑性樹脂と同じである。
【0043】
シート一体化装置100において、検知機構20は、熱可塑性樹脂シート1又は3の、熱可塑性樹脂シート2側とは反対側の端部付近に設けられてもよい。この場合、熱可塑性樹脂シート1又は3の端面の位置から、熱可塑性樹脂シート1,2又は2,3の端面間の距離を検知できる。
【0044】
溶着ユニット10は、ロール11bが駆動手段により回転駆動するものでなくてもよい。
また、溶着ユニット10においては、例えば、ベルト11aが回転する搬送手段11の代わりに、回転駆動しながら熱可塑性樹脂シートを挟持する一対のロールを搬送手段としてもよいし、搬送手段を省略してもよい。
また、溶着ユニットは、熱可塑性樹脂シートを挟持して溶着する加熱ロールであってもよい。
【0045】
送給ユニット及び巻取りユニットの一方又は両方は、2つの回転ドラムが互いに隣接すると共に軸が平行になるように水平に設けられたものであってもよい。このような送給ユニット及び巻取りユニットでは、2つの回転ドラムの上に熱可塑性樹脂シート1,2,3の巻取りを配置し、2つの回転ドラム上で熱可塑性樹脂シート1,2,3の巻取りを回転させる。
第1工程で製造した樹脂シートをロール状に巻き取って巻回物とし、送給ユニット30の第1のガイドロール31、第2のガイドロール32及び第3のガイドロール33の一部又は全部を、前記巻回物を回転自在に取り付け可能な回転軸に置換し、各回転軸に前記巻回物を取り付け、各巻回物を開反して第2工程を行うようにしてもよい。
【0046】
一体化する樹脂シートは、少なくとも2枚であればよい。また、シートが有する一体化部は少なくとも一つであればよい。
【0047】
上記のとおり複数の樹脂シートを一体化したシートにおける一体化部は、厚さtが、樹脂シートの厚さtの90%以上115%以下であるため、該シートは、ロール状に巻いた際に変形しにくい。
また、一体化部は、他の部分(例えば各樹脂シートの中央部分)に対して十分な強度(引張弾性率等)を保持しつつ、他の部分よりも柔軟性に富んでおり、易屈曲部として作用する。易屈曲部の引張弾性率は、例えば、他の部分の引張弾性率に対して80%以上98%以下である。
易屈曲部を有するシートは、例えば、廃棄物処分場用防水シートとして使用した場合、施工する面に凹凸があったとしても当該凹凸に対する密着性が向上するため、施工性に優れている。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3 熱可塑性樹脂シート
4 シート
4a 一体化部(易屈曲部)
10 溶着ユニット
11 搬送手段
11a ベルト
11b ロール
12 第1の加熱手段
13 第2の加熱手段
14 押圧ロール
15 冷却手段
20 検知機構
21 レーザー光照射部
22 センサー
30 送給ユニット
31,32,33 ガイドロール
40 巻取りユニット
40a 回転軸
100 シート一体化装置
図1
図2
図3