(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013628
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】ロボットを動作させるための制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20220111BHJP
A61B 34/30 20160101ALI20220111BHJP
【FI】
B25J9/10 A
A61B34/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021017026
(22)【出願日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】16/919,725
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521055585
【氏名又は名称】エヌディーアール メディカル テクノロジー プライベート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NDR Medical Technology Pte.Ltd.
【住所又は居所原語表記】Block 75,Ayer Rajah Crescent,#02-19,Singapore 139953
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】カ ウェイ ン
(72)【発明者】
【氏名】キー イー リム
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ キン リム
(72)【発明者】
【氏名】ジン クァン ゴウ
(72)【発明者】
【氏名】ダレン ユー ヤン チェオン
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707BS10
3C707LT11
3C707LT17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロボットの較正に基づいて、3Dイメージングデバイスによって取得されたターゲットを含む体の3D画像を処理して、マニピュレータを制御して細長ツールの長手方向軸をターゲットと位置合わせする制御システムを提供する。
【解決手段】ロボットは、細長ツールを閉塞されたターゲットに位置合わせするためにロボット空間内でマニピュレータのエンドエフェクタに取り付けられた細長ツールを移動させるように構成され、ロボット空間は、固定端部を中心とする3次元(3D)空間を含む。制御システムは、ロボット及び3Dイメージングデバイスと通信可能に接続されたプロセッサをさらに備える。3Dイメージングデバイスは、イメージング空間内の3D画像を取得するように構成され、イメージング空間は、3Dイメージングデバイスにおける固定基準点を中心とする3D空間を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定端部と、前記固定端部に対して移動可能なマニピュレータとを備えるロボットと、
前記ロボット及び3次元(3D)イメージングデバイスと通信可能に接続されたプロセッサと
を備え、
前記ロボットは、細長ツールを閉塞されたターゲットと位置合わせするためにロボット空間内でマニピュレータのエンドエフェクタに取り付けられた前記細長ツールを移動させるように構成され、
前記ロボット空間は、前記固定端部を中心とする3D空間を含み、
前記3Dイメージングデバイスは、イメージング空間内の3D画像を取得するように構成され、
前記イメージング空間は、前記3Dイメージングデバイスにおける固定基準点を中心とする3D空間を含み、
前記プロセッサは、
前記3Dイメージングデバイスによって取得された前記エンドエフェクタの予備的な3D画像を処理して、前記ロボット空間と前記イメージング空間とを統合することによって前記ロボットを較正することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記3Dイメージングデバイスによって取得された前記ターゲットを含む体の3D画像を処理して、統合された空間における前記ターゲットの場所データを取得することと、
前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記細長ツールの長手方向軸を前記ターゲットと位置合わせすることと、
を実行するように構成されていることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記エンドエフェクタの前記予備的な3D画像を処理して、前記固定基準点と前記ロボットの前記固定端部との間の合成ベクトルを計算することと、
計算された前記合成ベクトルに基づいて、前記イメージング空間における前記エンドエフェクタの位置データを取得することと、
を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記エンドエフェクタの前記予備的な3D画像を処理して、前記イメージング空間における前記エンドエフェクタの位置データを取得することと、
前記エンドエフェクタの前記位置データに基づいて、前記固定基準点と前記エンドエフェクタとの間の第1の方向ベクトルを計算することと、
前記第1の方向ベクトルと、前記エンドエフェクタと前記ロボットの前記固定端部との間の第2の方向ベクトルとを組み合わせて、前記3Dイメージングデバイスの前記固定基準点と前記ロボットの前記固定端部との間の前記合成ベクトルを計算することと、
を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記体の3D画像を処理して、前記イメージング空間における前記ターゲットの位置データを抽出することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記イメージング空間における前記ターゲットの前記位置データを前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに変換することと、
を実行するように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項5】
前記マニピュレータは、x軸、y軸、又はz軸に沿った前記細長ツールの変位を含む前記細長ツールの粗調整を実行するように構成され、
前記エンドエフェクタは、ピボットポイントに対する前記細長ツールの角度方向の調整を含む前記細長ツールの微調整を実行するように構成された調整機構を備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項6】
前記調整機構は、
ベースと、
前記ベースに平行になるように構成されたプラットフォームと、
前記ベースを前記プラットフォームと連結する複数のアームと、
を備え、
前記複数のアームは、前記ベースに平行な平面に沿って前記プラットフォームを移動させて、前記細長ツールの前記角度方向を調整するように構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記調整機構は、異なる放射線透過性を有する材料で作られた部分を備え、
前記プロセッサは、前記予備的な3D画像を処理して、前記ロボットの較正のために前記調整機構の放射線不透過性の部分の位置データを取得することを特徴とする、請求項5又は6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記体の3D画像を処理して、前記ターゲットと揃う選択された線を識別することと、
円錐空間の頂点が前記ターゲットに配置され、前記円錐空間の軸が前記線と位置合わせされた、前記線に沿って先細になる仮想的な円錐空間を生成することと、
をさらに実行するように構成され、
前記円錐空間は、前記調整機構の前記微調整のプロセスへの境界を提供することを特徴とする、請求項5から7の何れか一項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記ロボットの粗調整のため、式d≦r(x)-wに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記細長ツールを前記円錐空間内に移動させること
を実行するように構成され、
dは、前記調整機構の作動半径の中心と前記円錐空間の軸との間の最も近い距離を表し、
r(x)は、dの測定値に対応する前記円錐空間の半径を表し、
wは、前記調整機構の最大作動半径を表すことを特徴とする、請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
細長ツールを使用して閉塞されたターゲットに突き当てるシステムであって、
前記システムは、
請求項1から9のいずれか一項に記載の制御システムと、
前記ロボットを動作させるアクチュエータと、
を備え、
前記プロセッサは、前記ターゲットと位置合わせ時の前記細長ツールの先端との間の到達可能距離を計算するように構成され、
前記アクチュエータは、位置合わせ時の前記細長ツールの角度方向と前記到達可能距離とに基づいて、前記細長ツールを前記ターゲットに向かって前進させるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項11】
ロボットを動作させる方法であって、
前記ロボットは、固定端部と、前記固定端部に対して移動可能なマニピュレータとを備え、
前記方法は、
3次元(3D)イメージングデバイスによって取得された前記マニピュレータのエンドエフェクタの予備的な3D画像を受け取ることと、
前記予備的な3D画像を処理して、前記ロボットによって動作可能なロボット空間と前記3Dイメージングデバイスによって動作可能なイメージング空間とを統合することによって前記ロボットを較正することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記3Dイメージングデバイスによって取得された閉塞されたターゲットを含む体の3D画像を処理して、統合された空間における前記ターゲットの場所データを取得することと、
前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記マニピュレータの前記エンドエフェクタに取り付けられた細長ツールの長手方向軸を前記ターゲットと位置合わせすることと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記エンドエフェクタの前記予備的な3D画像を処理することは、
前記ロボットの前記固定端部と前記3Dイメージングデバイスにおける固定基準点との間の合成ベクトルを計算することと、
計算された前記合成ベクトルに基づいて、共通の原点を決定して、前記ロボット空間と前記イメージング空間とを統合することと、
を含み、
前記ロボットの前記固定端部は、前記ロボット空間の中心であり、前記固定基準点は、前記イメージング空間の中心であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記合成ベクトルを計算することは、
前記イメージング空間における前記エンドエフェクタの位置データを取得することと、
前記エンドエフェクタの前記位置データに基づいて、前記固定基準点と前記エンドエフェクタとの間の第1の方向ベクトルを計算することと、
前記第1の方向ベクトルと、前記エンドエフェクタと前記ロボットの前記固定端部との間の第2の方向ベクトルとを組み合わせて、前記3Dイメージングデバイスの前記固定基準点と前記ロボットの前記固定端部との間の合成ベクトルを計算することと、
を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ターゲットを含む前記体の3D画像を処理することは、
前記イメージング空間における前記ターゲットの位置データを抽出することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記イメージング空間における前記ターゲットの前記位置データを前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに変換することと、
を含むことを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記細長ツールを前記ターゲットと位置合わせすることは、x軸、y軸、又はz軸に沿った前記細長ツールの変位を含む前記細長ツールの粗調整と、ピボットポイントに対する前記細長ツールの角度方向の調整を含む前記細長ツールの微調整とを含むことを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記細長ツールの前記角度方向を調整することは、
前記調整機構のベースとプラットフォームを連結する複数のアームを作動させることで、前記ベースに平行な平面に沿って前記プラットフォームを移動させること
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記調整機構は、異なる放射線透過性を有する材料で作られた部分を備え、
前記予備的な3D画像を処理するステップは、前記ロボットの較正のために前記調整機構の放射線不透過性の部分の位置データを取得することを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、
前記体の3D画像における前記ターゲットと揃う選択された線を識別することと、
円錐空間の頂点が前記ターゲットに配置され、前記円錐空間の軸が前記線と位置合わせされた、前記線に沿って先細になる仮想的な円錐空間を生成することと、
をさらに含み、
前記円錐空間は、前記細長ツールの前記微調整への境界を提供することを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記マニピュレータを自動的に制御することは、
前記ロボットの粗調整中、式d≦r(x)-wに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記細長ツールを前記円錐空間内に移動すること
を含み、
dは、前記調整機構の作動半径の中心と前記円錐空間の軸との間の最も近い距離を表し、
r(x)は、dの測定値に対応する前記円錐空間の半径を表し、
wは、前記調整機構の最大作動半径を表すことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細長ツールを使用して閉塞されたターゲットに突き当てる方法であって、
前記方法は、
請求項11から19のいずれか一項に記載の方法を使用して、前記細長ツールの長手方向軸を前記ターゲットと位置合わせすることと、
前記ターゲットと位置合わせ時の前記細長ツールの先端との間の到達可能距離を計算することと、
計算された前記到達可能距離に基づいて、前記細長ツールを前記ターゲットに向かって前進させることと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してロボットを動作させる制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの外科的処置は、患者の体への針の経皮挿入を含む。このような処置では、針の先端が、例えば生検、薬物送達のプロセスなどの医療プロセスが実行されるために、体内の病変、臓器、又は血管に配置される。針の挿入を必要とする外科的処置の幾つかの例には、ワクチン接種、血液/流体サンプリング、局所麻酔、組織生検、カテーテル挿入、極低温アブレーション、電解アブレーション、近接照射療法、脳外科手術、脳深部刺激療法、及び様々な低侵襲手術(MIS)が含まれる。
【0003】
手術において患者の体に針を挿入する方法は複数ある。例えば、外科医は、針の一端を患者の皮膚に配置し、リアルタイムの画像データに基づいて針の他端を繰り返し傾けて、針とターゲット(標的)との位置合わせ(アライメント)を確立することにより、手動で処置を行い得る。この方法を使用して行われる外科的処置は、人的エラーを起こしやすい可能性がある。また、患者と外科医は、健康被害を引き起こす可能性のある過剰な量の放射線にさらされる可能性がある。
【0004】
外科的処置を自動化するために、例えばロボットアーム、柔軟な針などの医療機器が導入されている。しかし、臨床医によるリモート制御を可能にするこのような機器の殆どは、手動プロセスを模倣しているに過ぎない。また、外科的処置は通常複雑であり、複数の医療機器を含むシステムを必要とする。しかし、医療機器は通常、個別に設計されており、連携して機能するようにうまく統合されていない。したがって、このような機器を使用して行われる外科的処置は、手術の結果を損なう可能性がある。
【0005】
外科的エラーにより、処置全体が繰り返されるために針を抜かなければならない場合がある。これは、患者の体の複数の穿刺により患者へのリスクが高まる可能性があるので、患者の状態を悪化させる可能性がある。深刻な場合、患者は、例えば内出血、気胸などの合併症を患う可能性がある。
【0006】
したがって、上記課題の少なくとも1つに対処しようとするシステム及び方法を提供するか、又は、有用な代替手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、固定端部と、前記固定端部に対して移動可能なマニピュレータとを備えるロボットと、
前記ロボット及び3次元(3D)イメージングデバイスと通信可能に接続されたプロセッサと
を備え、
前記ロボットは、細長ツールを閉塞されたターゲットと位置合わせするためにロボット空間内でマニピュレータのエンドエフェクタに取り付けられた前記細長ツールを移動させるように構成され、
前記ロボット空間は、前記固定端部を中心とする3D空間を含み、
前記3Dイメージングデバイスは、イメージング空間内の3D画像を取得するように構成され、
前記イメージング空間は、前記3Dイメージングデバイスにおける固定基準点を中心とする3D空間を含み、
前記プロセッサは、
前記3Dイメージングデバイスによって取得された前記エンドエフェクタの予備的な3D画像を処理して、前記ロボット空間と前記イメージング空間とを統合することによって前記ロボットを較正することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記3Dイメージングデバイスによって取得された前記ターゲットを含む体の3D画像を処理して、統合された空間における前記ターゲットの場所データを取得することと、
前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記細長ツールの長手方向軸を前記ターゲットと位置合わせすることと、
を実行するように構成されている制御システムが提供される。
【0008】
前記プロセッサは、
前記エンドエフェクタの前記予備的な3D画像を処理して、前記固定基準点と前記ロボットの前記固定端部との間の合成ベクトルを計算することと、
計算された前記合成ベクトルに基づいて、前記イメージング空間における前記エンドエフェクタの位置データを取得することと、
を実行するように構成されてもよい。
【0009】
前記プロセッサは、
前記エンドエフェクタの前記予備的な3D画像を処理して、前記イメージング空間における前記エンドエフェクタの位置データを取得することと、
前記エンドエフェクタの前記位置データに基づいて、前記固定基準点と前記エンドエフェクタとの間の第1の方向ベクトルを計算することと、
前記第1の方向ベクトルと、前記エンドエフェクタと前記ロボットの前記固定端部との間の第2の方向ベクトルとを組み合わせて、前記3Dイメージングデバイスの前記固定基準点と前記ロボットの前記固定端部との間の合成ベクトルを計算することと、
を実行するように構成されてもよい。
【0010】
前記プロセッサは、
前記体の3D画像を処理して、前記イメージング空間における前記ターゲットの位置データを抽出することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記イメージング空間における前記ターゲットの前記位置データを前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに変換することと、
を実行するように構成されてもよい。
【0011】
前記マニピュレータは、x軸、y軸、又はz軸に沿った前記細長ツールの変位を含む前記細長ツールの粗調整を実行するように構成されてもよく、前記エンドエフェクタは、ピボットポイントに対する前記細長ツールの角度方向の調整を含む前記細長ツールの微調整を実行するように構成された調整機構を備えてもよい。
【0012】
前記調整機構は、
ベースと、
前記ベースに平行になるように構成されたプラットフォームと、
前記ベースを前記プラットフォームと連結する複数のアームと、
を備え、
前記複数のアームは、前記ベースに平行な平面に沿って前記プラットフォームを移動させて、前記細長ツールの前記角度方向を調整するように構成されてもよい。
【0013】
前記調整機構は、異なる放射線透過性を有する材料で作られた部分を備えてもよく、前記プロセッサは、前記予備的な3D画像を処理して、前記ロボットの較正のために前記調整機構の放射線不透過性の部分の位置データを取得してもよい。
【0014】
前記プロセッサは、
前記体の3D画像を処理して、前記ターゲットと揃う選択された線を識別することと、
円錐空間の頂点が前記ターゲットに配置され、前記円錐空間の軸が前記線と位置合わせされた、前記線に沿って先細になる仮想的な円錐空間を生成することと、
をさらに実行するように構成されてもよく、
前記円錐空間は、前記調整機構の前記微調整のプロセスへの境界を提供してもよい。
【0015】
前記プロセッサは、
前記ロボットの粗調整のため、式d≦r(x)-wに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記細長ツールを前記円錐空間内に移動させること
を実行するように構成されてもよく、この場合、
dは、前記調整機構の作動半径の中心と前記円錐空間の軸との間の最も近い距離を表し、
r(x)は、dの測定値に対応する前記円錐空間の半径を表し、
wは、前記調整機構の最大作動半径を表す。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、細長ツールを使用して閉塞されたターゲットに突き当てるシステムであって、
前記システムは、
第1の態様で定義される制御システムと、
前記ロボットを動作させるアクチュエータと、
を備え、
前記プロセッサは、前記ターゲットと位置合わせ時の前記細長ツールの先端との間の到達可能距離を計算するように構成され、
前記アクチュエータは、位置合わせ時の前記細長ツールの角度方向と前記到達可能距離とに基づいて、前記細長ツールを前記ターゲットに向かって前進させるように構成されているシステムが提供される。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、ロボットを動作させる方法であって、
前記ロボットは、固定端部と、前記固定端部に対して移動可能なマニピュレータとを備え、
前記方法は、
3次元(3D)イメージングデバイスによって取得された前記マニピュレータのエンドエフェクタの予備的な3D画像を受け取ることと、
前記予備的な3D画像を処理して、前記ロボットによって動作可能なロボット空間と前記3Dイメージングデバイスによって動作可能なイメージング空間とを統合することによって前記ロボットを較正することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記3Dイメージングデバイスによって取得された閉塞されたターゲットを含む体の3D画像を処理して、統合された空間における前記ターゲットの場所データを取得することと、
前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記マニピュレータの前記エンドエフェクタに取り付けられた細長ツールの長手方向軸を前記ターゲットと位置合わせすることと、
を含む方法が提供される。
【0018】
前記エンドエフェクタの前記予備的な3D画像を処理することは、
前記ロボットの前記固定端部と前記3Dイメージングデバイスにおける固定基準点との間の合成ベクトルを計算することと、
計算された前記合成ベクトルに基づいて、共通の原点を決定して、前記ロボット空間と前記イメージング空間とを統合することと、
を含んでもよく、この場合、
前記ロボットの前記固定端部は、前記ロボット空間の中心であり、前記固定基準点は、前記イメージング空間の中心である。
【0019】
前記合成ベクトルを計算することは、
前記イメージング空間における前記エンドエフェクタの位置データを取得することと、
前記エンドエフェクタの前記位置データに基づいて、前記固定基準点と前記エンドエフェクタとの間の第1の方向ベクトルを計算することと、
前記第1の方向ベクトルと、前記エンドエフェクタと前記ロボットの前記固定端部との間の第2の方向ベクトルとを組み合わせて、前記3Dイメージングデバイスの前記固定基準点と前記ロボットの前記固定端部との間の合成ベクトルを計算することと、
を含んでもよい。
【0020】
前記ターゲットを含む体の3D画像を処理することは、
前記イメージング空間における前記ターゲットの位置データを抽出することと、
前記ロボットの較正に基づいて、前記イメージング空間における前記ターゲットの前記位置データを前記統合された空間における前記ターゲットの前記場所データに変換することと、
を含んでもよい。
【0021】
前記細長ツールを前記ターゲットと位置合わせすることは、x軸、y軸、又はz軸に沿った前記細長ツールの変位を含む前記細長ツールの粗調整と、ピボットポイントに対する前記細長ツールの角度方向の調整を含む前記細長ツールの微調整とを含んでもよい。
【0022】
前記細長ツールの前記角度方向を調整することは、
前記調整機構のベースとプラットフォームを連結する複数のアームを作動させることで、前記ベースに平行な平面に沿って前記プラットフォームを移動させること
を含んでもよい。
【0023】
前記調整機構は、異なる放射線透過性を有する材料で作られた部分を備えてもよく、前記予備的な3D画像を処理するステップは、前記ロボットの較正のために前記調整機構の放射線不透過性の部分の位置データを取得することを含んでもよい。
【0024】
前記方法は、
前記体の3D画像における前記ターゲットと揃う選択された線を識別することと、
円錐空間の頂点が前記ターゲットに配置され、前記円錐空間の軸が前記線と位置合わせされた、前記線に沿って先細になる仮想的な円錐空間を生成することと、
をさらに含んでもよく、
前記円錐空間は、前記細長ツールの前記微調整への境界を提供してもよい。
【0025】
前記マニピュレータを自動的に制御することは、
前記ロボットの粗調整中、式d≦r(x)-wに基づいて、前記マニピュレータを自動的に制御して、前記細長ツールを前記円錐空間内に移動すること
を含んでもよく、この場合、
dは、前記調整機構の作動半径の中心と前記円錐空間の軸との間の最も近い距離を表し、
r(x)は、dの測定値に対応する前記円錐空間の半径を表し、
wは、前記調整機構の最大作動半径を表す。
【0026】
本発明の第4の態様によれば、細長ツールを使用して閉塞されたターゲットに突き当てる方法であって、
前記方法は、
第3の態様に定義される方法を使用して、前記細長ツールの長手方向軸を前記ターゲットと位置合わせすることと、
前記ターゲットと位置合わせ時の前記細長ツールの先端との間の到達可能距離を計算することと、
計算された前記到達可能距離に基づいて、前記細長ツールを前記ターゲットに向かって前進させることと、
を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の実施形態は、例としてのみ提供されており、下記の説明及び図面から、当業者によりよく理解され容易に明らかであろう。
【0028】
【
図1A】本発明の例示的な一実施形態による制御システムを示す概略図を示す。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【
図2C】
図2Aの調整機構のツールホルダの使用を示す2つの斜視図を示す。
【0033】
【
図3】
図1A、
図1Bのシステムによる調整プロセスの斜視図及び平面図の概略図を示す。
【0034】
【
図4】ロボットを動作させる方法を示すフローチャートを示す。
【0035】
【
図5】例示的な実施形態のシステム及び方法を実施するのに適したコンピュータを示す概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1Aは、例示的な実施形態による制御システム100を示す概略図を示す。
図1Bは、
図1Aのシステム100の拡大図を示す。以下の説明では、システム100を使用して、患者の体内の病変治療のために体内で行われる外科手術において手術ツール(器具)を位置合わせする。システム100は、例えば腎臓結石の除去、椎体形成術などの病変治療以外の用途にも使用できることが理解されよう。当業者によって理解されるように、他の非外科的用途も可能である。
【0037】
図1Aに示すように、システム100は、ロボット104及び3次元(3D)イメージング(画像化)デバイス106に通信可能に接続されているプロセッサ102を備える。システム100の一部として、ロボット104は、x軸、y軸、及びz軸が交わる固定中心を有する3D空間(以下「ロボット空間108」という)内を移動するように構成される。ロボット104の動きは、
図1Aの座標軸A1で表される。3Dイメージングデバイス106によって取得された3D画像に基づいて、ロボット104は、細長ツールを病変に位置合わせするように、プロセッサ102によって制御される。ロボット104の動きは、プロセッサ102から信号を受け取るアクチュエータ(図示せず)によって操作される。
【0038】
一実施形態において、ロボット104は、ロボット空間108の中心である固定端部109と、固定端部109に対して移動可能なマニピュレータ(遠隔操縦装置)110とを備える。マニピュレータ110は、x軸、y軸、z軸、又はこれらのうちの組み合わせに沿った細長ツールの変位を含む細長ツール粗調整に使用される。マニピュレータは、マニピュレータ110のエンドエフェクタとしてマニピュレータ110の端部に取り付けられた調整機構112を備える。調整機構112は、ピボットポイント(回転中心)に対する細長ツールの角度方向の調整を含む、細長ツールの微調整に使用される。
図1A、
図1Bに示すように、マニピュレータ110は、座標軸A1に沿って動き、調整機構は座標軸A2に沿って動く。
【0039】
調整機構112は、ベースと、ベースに平行になるように構成されたプラットフォームとを備える。ベースとプラットフォームは、ベースに平行な平面に沿ってプラットフォームを移動させて細長ツールの角度方向を調整するように構成されている複数のアームによって連結されている。一実施形態において、調整機構は、異なる放射線透過性を有する材料で作られた部分を備える。例えば、調整機構112のプラットフォームは、X線を遮る放射線不透過性材料であるチタン製の3つのボールを備え、調整機構112の残りの部分は、放射線透過性材料で作られている。3つのボールは、プラットフォームの環状リングにおいて互いに均一な角距離をおいて配置され、そのため、調整機構112の位置は、調整機構112が3Dイメージングデバイス106によってスキャン(走査)されるときに正確に決定され得る。調整機構112の構成は、
図2A~
図2Cを参照して、以下でさらに詳細に説明される。
【0040】
3Dイメージングデバイス106は、コンピュータ処理された3D画像を生成するために患者の体の走査を実行することができる医療イメージングデバイスである。3Dイメージングデバイス106の幾つかの例には、磁気共鳴画像法(MRI)装置、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ、フルオロスコープ(透視装置)が含まれる。
図1Aに示すように、3Dイメージングデバイス106は、X線管を備えるガントリ114と、ベッド116とを備え、ベッド116は、X線管がベッド116上の患者の周りを回転している間にガントリ114内に移動することができる。3Dイメージングデバイス106は、3D空間(以下、「イメージング空間118」という)内の3D画像を取得するように構成される。イメージング空間118は、
図1A、
図1Bにおいて、x軸、y軸、及びz軸が交わる固定中心(以下「固定基準点120」という)を有する座標軸A3で表される。
【0041】
3Dイメージングデバイス106は、使用中、ロボット104のエンドエフェクタをスキャンして、エンドエフェクタの予備的な3D画像を生成する。プロセッサ102は、予備的な3D画像を処理して、ロボット空間108をイメージング空間118と統合することによって、ロボット104を較正する。一実施形態において、エンドエフェクタの予備的な3D画像を処理して、イメージング空間118におけるエンドエフェクタの位置データを取得する。例えば、プロセッサ102は、予備的な3D画像を処理して、調整機構112の放射線不透過性の部分の位置データを取得する。
【0042】
エンドエフェクタの位置データに基づいて、プロセッサ102は、固定基準点120とエンドエフェクタとの間の第1の方向ベクトルV1を計算する。さらに、プロセッサ102は、エンドエフェクタとロボット104の固定端部109との間の第2の方向ベクトルV2を計算する。第1の方向ベクトルV1と第2の方向ベクトルV2とを組み合わせて、固定基準点120とロボット104の固定端部109との間の合成ベクトルRを計算する。計算された合成ベクトルRに基づいて、プロセッサ102は、ロボット空間108とイメージング空間118との統合のための共通の原点を決定する。一実施形態において、共通の原点は、固定基準点120と同じ点にある。しかし、共通の原点は、グローバル座標系の任意の他の点に配置可能であることが理解されよう。
【0043】
その後、ロボット104は、3Dイメージングデバイス104が病変を含む患者の体をスキャンするために、3Dイメージングデバイス106の横にしまい込まれる。ロボット104の較正に基づいて、プロセッサ102は、体の3D画像を処理して、統合された空間における病変の場所データを取得する。一実施形態において、プロセッサ102は、3D画像を処理して、イメージング空間118における病変の位置データを抽出し、ロボット104の較正に基づいて、イメージング空間118における位置データを、統合された空間における病変の場所データに変換する。一実施形態において、プロセッサ102はさらに、調整機構112の微調整プロセスへの境界を提供する微調整空間を生成するように構成される。
【0044】
プロセッサ102は、3Dイメージングデバイス106からの3D画像を処理して、体表面、体(例えば、他の器官、骨、動脈)内の閉塞、病変を含む体の部分の場所データを取得するためのソフトウェアを備える。例えば、腫瘍学的イメージングでは、病変は通常、正常な体細胞よりも豊富な血液供給を有し、これにより、3D画像上に識別可能な陰影が生成される。これにより、ソフトウェアは、3D画像の陰影に基づいて病変の画像を識別することが可能となる。ソフトウェアを使用して病変を識別する代わりに、3D画像上の病変もまた、表示デバイスで臨床医によって手動で識別され得ることが理解されるであろう。
【0045】
病変の場所データが取得された後、ロボット104は、患者の体の上方の、ロボット104の以前の位置に戻される。病変の場所データに基づいて、プロセッサ102は、マニピュレータ110を自動的に制御して、細長ツールの長手方向軸を病変と位置合わせする。一実施形態において、3Dイメージングデバイス106は、体と手術ツールを含むロボット104のエンドエフェクタとのリアルタイム3D画像を取得する。プロセッサ102は、粗調整プロセス中、マニピュレータ110を制御して、プロセッサ102によって生成された微調整空間内の位置に手術ツールを移動させる。次に、プロセッサ102は、微調整プロセス中、調整機構112を制御して、微調整空間内の手術ツールの角度方向を調整し、手術ツールの長手方向軸を病変と位置合わせする。粗調整プロセス及び微調整プロセスについては、
図3を参照して以下でさらに詳しく説明する。
【0046】
プロセッサ102は、手術ツールを位置合わせした後、リアルタイムの3D画像から手術ツールの先端の場所データを抽出する。先端と病変の場所データに基づいて、プロセッサ102は、先端と病変との到達可距離を計算する。一実施形態において、プロセッサ102は、計算された距離に基づいて、病変に向かう手術ツールの軌道をシミュレートする。シミュレーション結果が満足のいくものである場合、臨床医は、プロセッサ102によって制御される自動挿入又は臨床医によって制御される手動挿入のいずれかによって、病変に向けて手術ツールの挿入を進めることを確認する。プロセッサ102は、進めるための確認を受け取ると、計算された到達可能(突当)距離に基づいて手術ツールを病変に向かって前進させるようにアクチュエータに信号を送る。
【0047】
図2A、
図2Bはそれぞれ、
図1A、
図1Bのシステム100での使用に適した調整機構112の斜視図、正面図を示す。調整機構112は、環状リングの形態のベース202と、第1のアーム204a、第2のアーム204b、及び第3のアーム204cとして表される複数のアームとを備える。アーム204a、204b、204cは、互いに略均一な角距離をおいてベース202に接続されている。
【0048】
調整機構112は、より高い位置のプラットフォーム206をさらに備える。より高い位置のプラットフォーム206は、アーム204a、204b、204cの各々のエンドエフェクタ208a、208b、208cに接続されている。プラットフォーム206は、環状リングの形態であり、プラットフォーム206の中心にボールジョイントコンプライアンス210を備える。ボールジョイントコンプライアンス210は、手術ツール212を保持し手術ツール212の摺動を可能にする穴を備える。ボールジョイントコンプライアンス210は、手術ツール212を保持して患者の体内に挿入するための、プランジャ(図示せず)の形態の駆動機構をさらに備える。
【0049】
動作中、ベース202は、マニピュレータ110の端部に取り付けられる。アーム204a、204b、204cは、少なくとも1つのアクチュエータ(図示せず)によって作動されて、互いに協調してプラットフォーム206の位置を調整し、したがって、ピボットポイント210に対する手術ツール212の方向を調整する。
図2Aに矢印216a、216b、216cで示すように、プラットフォーム206は、ベース202に対して移動する。プラットフォーム206の位置がアーム204a、204b、204cによって調整される場合、ボールジョイントコンプライアンス210は、プラットフォーム206の中心で緩く保持されて、手術ツール212が、ピボットポイント210を中心に自由に旋回又は回転できる。この構成により、
図2Aに矢印218で示すように、手術ツール212の傾斜が可能になる。
【0050】
例示的な実施形態における手術ツール212は、ピボットポイント214の反対側の手術ツール212の端部222に隣接して取り付けられた調節可能なストッパ220を備える。手術ツール212の方向及び挿入の深さが確認された後、ストッパ220とボールジョイントコンプライアンス210との間の距離が挿入の深さに略等しくなるように、ボールジョイントコンプライアンス210の位置がロックされ、ストッパ220が手術ツールに取り付けられる。次に、プランジャがアクチュエータによって作動されて、手術ツール212を保持して患者の体内に挿入する。手術ツール212の挿入の深さは、ボールジョイントコンプライアンス210とストッパ220との間の距離によって制限され、手術ツール212の患者の体内への過度の挿入を防止する。
【0051】
調整機構112の構造は、通常、軽くて剛性のある材料で作られる。一実施形態において、調整機構112の様々な部分が、異なる放射線透過性を有する材料で作ることができる。一例として、調整機構112のプラットフォーム206は、例えばステンレス鋼、チタンなどの放射線不透過性材料で作られた3つのボールを備え、調整機構112の他の部分は、放射線透過性材料で作られる。3つのボールは、プラットフォームの環状リングにおいて互いに均一な角距離をおいて配置され、そのため、調整機構112の位置は、調整機構112が3Dイメージングデバイス106によってスキャンされるときに正確に決定されて、調整機構112とロボット104又は3Dイメージングデバイス106との間の幾何学的関係の決定を可能にする。
【0052】
調整機構112は、単純な構造を有し、サイズが比較的小さいので、プロセッサ102からの信号に対して迅速に移動、応答し得る。調整機構112の構成はまた、過度の移動を制限する。これにより、手術中の皮膚の裂傷を低減し得る。さらに、調整機構112の殆どの部分が生体適合性材料で作られており、そのため、手術における調整機構112の使用は、患者に望ましくない影響を引き起こさない。例えば、適切であり得る材料は、チタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。しかし、調整機構112の構造は、他の材料によって作られ得ることが理解されよう。
【0053】
一実施形態において、手術ツール212は、手術ツール212の圧力変化を検出するためにプロセッサ102に通信可能に接続された触覚センサ(図示せず)を含み得る。これは、患者の体における手術ツール212の深さの検出及び病変の検出の際のプロセッサ102の精度を高め得る。
【0054】
図2Cは、
図2Aの調整機構112のツールホルダ224の使用を示す2つの斜視図を示す。ここで、ツールホルダ224は、プラットフォーム206から取り外し可能である。ツールホルダ224の構造は、ボールジョイントコンプライアンス210と、複数の支持構造226とを備える。複数の支持構造226は、ボールジョイントコンプライアンス210から半径方向外向きに延在し、ボールジョイントコンプライアンス210をプラットフォーム206の環状リングと連結する。キャッチ228として表される係合機構は、ツールホルダ224をプラットフォーム206に取り外し可能に固定するために使用される。
【0055】
第1の配置(
図2Cの左図)に示すように、プラットフォーム206が動かされて手術ツール212を傾斜させるときに、ツールホルダ224はプラットフォーム206に取り付けられる。手術ツール212の傾斜は矢印218によって示される。第2の配置(
図2Cの右図)に示すように、ストッパ220によって許容される挿入の深さを超えてさらに挿入が必要な場合、例えば、ツールホルダ224を時計回り又は反時計回りの方向に回転させ、矢印230で示すように、患者の体の上に下げることによって、ツールホルダ224はプラットフォーム206から取り外される。ツールホルダ224は、例えば、粘着テープ又はゲルを使用して、患者の体に取り付けることができる。ツールホルダ224が患者の体に取り付けられた後、矢印232に示すように、プランジャがアクチュエータによって作動されて、手術ツール212を保持し、さらに患者の体に挿入する。この時点で、手術ツールの角度方向は、病変と揃っていることが確認されている。したがって、ツールホルダ224は、手術ツール212が患者の体内により深く挿入されることを可能にし、必要に応じて実行される作業の種類に柔軟に対応できるようにする。
【0056】
図3は、
図1A、
図1Bのシステム100による調整プロセスの斜視図(左側)及び罷免図(右側)の概略図を示す。
【0057】
3Dイメージングデバイス106が体をスキャンした後、病変302を含む体の3D画像が表示デバイスに表示される。体表面及び体内の閉塞に対する病変302の場所に基づいて、臨床医は、病変302と位置合わせされ病変302に突き当てる手術ツールの挿入に適した軌道線304を選択する。手動選択の代わりに、プロセッサ102におけるソフトウェアが、病変に突き当てるための手術ツールの挿入のための一又は複数の軌道線を自動的に決定することができることが理解されよう。詳細には、病変302の場所に基づいて、ソフトウェアは、手術ツールが臓器を傷つけないように重要な臓器を迂回するため、且つ、例えば手術ツールを曲げる可能性がある骨などの硬い構造を迂回するために、適切な軌道経路を提案することができる。
【0058】
プロセッサ102は、円錐空間306の頂点が病変302に配置され、円錐空間306の軸310が選択された線304と位置合わせされた、線304に沿って先細になる仮想的な円錐空間306を生成する。円錐空間306は、調整機構112によるピボットポイントに対する手術ツールの傾斜を含む微調整プロセスへの境界を提供する。言い換えると、手術ツールの角度方向は、円錐空間306内で調整される。この調整は、マニピュレータ110の粗調整中に、プロセッサ102によって達成される。詳細には、プロセッサ102は、式d≦r(x)-wに基づいて、較正されたロボット104を自動的に制御して、細長ツールを円錐空間306内に移動させる。ここで、
d=調整機構の作動半径の中心と円錐空間の軸との間の最も近い距離、
r(x)=dの測定値に対応する円錐空間の半径、
w=調整機構の最大作動半径
である。
【0059】
その後、微調整プロセスが調整機構112によって実行される。手術ツールは、ピボットポイントに対して円錐空間306内で傾斜されて、手術ツールを病変302と位置合わせする(
図3に、2つのより小さな円錐空間312a、312bで示すように)。
【0060】
図4は、ロボットを動作させる方法を示すフローチャートを示す。ロボットは、固定端部と、固定端部に対して移動可能なマニピュレータとを備える。ステップ402で、3Dイメージングデバイスによって取得されたマニピュレータのエンドエフェクタの予備的な3次元(3D)画像が受け取られる。ステップ404で、予備的な3D画像は、ロボットによって動作可能なロボット空間を3Dイメージングデバイスによって動作可能なイメージング空間と統合することによってロボットを較正するために処理される。ステップ406で、ロボットの較正に基づいて、3Dイメージングデバイスによって取得された閉塞されたターゲットを含む体の3D画像が処理されて、統合された空間におけるターゲットの場所データを取得する。ステップ408で、統合された空間におけるターゲットの場所データに基づいて、マニピュレータは、細長ツールの長手方向軸をターゲットと位置合わせするように自動的に制御される。
【0061】
本発明の実施形態は、ロボットを動作させる制御システム及び方法を提供する。図を参照して上記で説明したように、プロセッサ102は、固定基準点120と固定端部109との間の合成ベクトルを計算して共通の原点を見つけることによってロボット104を較正する。これにより、ロボット空間106とイメージング空間118とを統合することによってロボット104を較正することができる。次に、体の3D画像が処理されて、統合された空間におけるターゲットの場所データが取得され、マニピュレータ110がプロセッサ102によって制御されて手術ツールの長手方向軸をターゲットと位置合わせする。
【0062】
ロボット空間108とイメージング空間118の統合により、ロボット104のその場での較正が可能になる。較正により、ロボット104と3Dイメージングデバイス106は相乗的に動作することができ、ロボット104は、3Dイメージングデバイスによって取得された3D画像に基づいてプロセッサ102によって制御されて、統合された空間における位置に正確に到達することができる。これにより、手術ツールを位置合わせしてターゲットに突き当てる際のロボット104の精度を有利に高め、したがって、外科手術におけるエラーの可能性を低減し得る。さらに、患者の体のリアルタイム3D画像は、体内のターゲットの場所データを提供する。これにより、ロボット104は、角度方向を正確に調整して、手術ツールの先端とターゲットとの間の到達可能距離を決定することができる。
【0063】
図5は、例示的なコンピューティングデバイス500(以下、同様の意味で、コンピュータシステム500という)を示す。例示的なコンピューティングデバイス500は、
図1A、
図1Bに示すシステム100及び
図3、
図4に示すプロセスを実施するために使用され得る。コンピューティングデバイス500の説明は、例としてのみ提供されており、限定することを意図しない。
【0064】
図5に示すように、例示的なコンピューティングデバイス500は、ソフトウェアルーチンを実行するためのプロセッサ507を備える。明確にするため、単一のプロセッサが示されているが、コンピューティングデバイス500は、マルチプロセッサシステムを備えてもよい。プロセッサ507は、コンピューティングデバイス500の他のコンポーネントと通信するために通信インフラストラクチャ506に接続されている。通信インフラストラクチャ506は、例えば、通信バス、クロスバー、ネットワークを含み得る。
【0065】
コンピューティングデバイス500はさらに、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリ508と、二次メモリ510とを備える。二次メモリ510は、例えば、ストレージドライブ512及び/又はリムーバブルストレージドライブ517などを備え、ストレージドライブ512は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、又はハイブリッドドライブであり、リムーバブルストレージドライブ517は、磁気テープドライブ、光ディスクドライブ、ソリッドステートストレージドライブ(例えば、USBフラッシュドライブ、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートドライブ、又はメモリカードなど)を含み得る。リムーバブルストレージドライブ517は周知の方法で、リムーバブル記憶媒体577から読み取り、且つ/又は、これに書き込む。リムーバブル記憶媒体577は、磁気テープ、光ディスク、不揮発性メモリ記憶媒体などを含み、リムーバブル記憶ドライブ517によって読み取られ、書き込まれる。関連技術の当業者によって理解されるように、リムーバブル記憶媒体577は、コンピュータ実行可能プログラムコード命令及び/又はデータを中に記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む。
【0066】
代替的な実施形態において、二次メモリ510は、コンピュータプログラム又は他の命令をコンピューティングデバイス500にロードすることを可能にするための他の同様の手段を追加的又は代替的に備え得る。そのような手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット522及びインタフェース550を含み得る。リムーバブルストレージユニット522及びインタフェース550の例には、プログラムカートリッジ及びカートリッジインタフェース(例えば、ビデオゲームコンソールデバイスに見られるものなど)、リムーバブルメモリチップ(例えば、EPROM、PROMなど)及び関連するソケット、リムーバブルソリッドステートストレージドライブ(例えば、USBフラッシュドライブ、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートドライブ、メモリカードなど)、及びソフトウェア及びデータをリムーバブルストレージユニット522からコンピュータシステム500に転送できるようにする他のリムーバブルストレージユニット522及びインタフェース550が含まれる。
【0067】
コンピューティングデバイス500はまた、少なくとも1つの通信インタフェース527を備える。通信インタフェース527は、ソフトウェア及びデータが、通信経路526を介してコンピューティングデバイス500と外部デバイスとの間で転送されることを可能にする。本発明の様々な実施形態において、通信インタフェース527は、データがコンピューティングデバイス500と、例えばパブリックデータ又はプライベートデータ通信ネットワークなどのデータ通信ネットワークとの間で転送されることを可能にする。通信インタフェース527は、異なるコンピューティングデバイス500間でデータを交換するために使用されることも可能で、その場合、そのようなコンピューティングデバイス500は、相互接続されたコンピュータネットワークの一部を形成する。通信インタフェース527の例には、モデム、ネットワークインタフェース(例えば、イーサネットカードなど)、通信ポート(例えば、シリアル、パラレル、プリンタ、GPIB、IEEE 1394、RJ45、USBなど)、関連する回路を備えたアンテナなどが含まれ得る。通信インタフェース527は、有線であっても無線であってもよい。通信インタフェース527を介して転送されるソフトウェア及びデータは、通信インタフェース527によって受け取ることができる電子信号、電磁信号、光信号、又は他の信号であり得る信号の形態である。このような信号は、通信経路526を介して通信インタフェースに提供される。
【0068】
図5に示すように、コンピューティングデバイス500はさらに、関連するディスプレイ550に画像をレンダリングするための動作を実行するディスプレイインタフェース502と、関連するスピーカ557を介してオーディオコンテンツを再生するための動作を実行するためのオーディオインタフェース552とを含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「コンピュータプログラム製品」という用語は、一部において、リムーバブル記憶媒体577、リムーバブルストレージユニット522、ストレージドライブ512に取り付けられたハードディスク、又は通信経路526(ワイヤレスリンク又はケーブル)を介して通信インタフェース527にソフトウェアを運ぶ搬送波を指し得る。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、実行及び/又は処理のために、記録された命令及び/又はデータをコンピューティングデバイス500に提供する、任意の非一時的で不揮発性の有形記憶媒体を指す。このような記憶媒体の例には、磁気テープ、CD-ROM、DVD、Blu-ray(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ、ROM、集積回路、ソリッドステートストレージドライブ(例えば、USBフラッシュドライブ、フラッシュメモリデバイス、ソリッドステートドライブ、メモリカードなど)、ハイブリッドドライブ、磁気光学ディスク、例えばPCMCIAカードなどのコンピュータ読み取り可能なカードなど(このようなデバイスがコンピューティングデバイス500の内部又は外部であるか否かに関わらず)が含まれる。コンピューティングデバイス500へのソフトウェア、アプリケーションプログラム、命令、及び/又はデータの提供にも関与し得る一時的又は無形のコンピュータ読み取り可能な伝送媒体の例には、無線又は赤外線伝送チャネル、並びに別のコンピュータ又はネットワークデバイスへのネットワーク接続、及び電子メール送信、ウェブサイトに記録された情報を含むインターネット又はイントラネットなどが含まれる。
【0070】
コンピュータプログラム(コンピュータプログラムコードともいう)は、メインメモリ508及び/又は二次メモリ510に格納される。コンピュータプログラムは、通信インタフェース527を介して受け取られ得る。そのようなコンピュータプログラムは、実行されると、コンピューティングデバイス500が、本明細書に記載の実施形態の一又は複数の特徴を実行できるようにする。様々な実施形態において、コンピュータプログラムは、実行されると、プロセッサ507が上記の実施形態の特徴を実行することを可能にする。したがって、そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム500のコントローラを表す。
【0071】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム製品に格納され、リムーバブルストレージドライブ517、ストレージドライブ512、又はインタフェース550を使用してコンピューティングデバイス500にロードされ得る。コンピュータプログラム製品は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体であり得る。或いは、コンピュータプログラム製品は、通信経路526を介してコンピュータシステム500にダウンロードされ得る。ソフトウェアは、プロセッサ507によって実行されると、コンピューティングデバイス500に、本明細書に記載の実施形態の機能を実行させる。
【0072】
図5の実施形態は、単に例として提示されていることを理解されたい。したがって、幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス500の一又は複数の機能が、省略されてもよい。また、幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス500の一又は複数の機能が、一緒に組み合わせられてもよい。さらに、幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス500の一又は複数の機能が、一又は複数の構成要素に分割されてもよい。
【0073】
コンピューティングデバイス500が、固定端部と固定端部に対して移動可能なマニピュレータとを備えるロボットを較正するように構成される場合、コンピューティングシステム500は、実行されるとコンピューティングシステム500に以下を含むステップを実行させるアプリケーションを格納した非一時的なコンピュータ読み取り場可能な媒体を備える。含まれるステップは、3Dイメージングデバイスによって取得されたマニピュレータのエンドエフェクタの予備的な3次元(3D)画像を受けとることと、ロボットによって動作可能なロボット空間を3Dイメージングデバイスによって動作可能なイメージング空間と統合することによって、ロボットを較正するために予備的な3D画像を処理することと、ロボットの較正に基づいて、3Dイメージングデバイスによって取得された閉塞されたターゲットを含む体の3D画像を処理して、統合された空間におけるターゲットの場所データを取得することと、統合された空間におけるターゲットの場所データに基づいて、マニピュレータを自動的に制御して、マニピュレータのエンドエフェクタに取り付けられた細長ツールの長手方向軸をターゲットと位置合わせすることである。
【0074】
当業者は、広く記載されている本発明の主旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように、本発明に対して多数の変形及び/又は変更を行うことができることを理解されたい。したがって、本実施形態は、全ての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。
【外国語明細書】