(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136347
(43)【公開日】2022-09-20
(54)【発明の名称】炭酸ガス含有油脂組成物の調製法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/007 20060101AFI20220912BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20220912BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20220912BHJP
A23D 7/005 20060101ALI20220912BHJP
【FI】
A23D9/007
A23D9/00 502
A23D9/02
A23D7/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035904
(22)【出願日】2021-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】320014868
【氏名又は名称】中西 義和
(72)【発明者】
【氏名】中西 良博
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DC07
4B026DG01
4B026DH05
4B026DL01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】経済的に且つ少量で調製可能な、市販膨張剤の代替えとなる炭酸ガス含有油脂組成物の調製法、及びそれにより得られる炭酸ガス油脂組成物を提供する。
【解決手段】油脂類が充填密封された耐圧性の容器A中で有機酸類、炭酸塩類及び水を混合することにより発生する炭酸ガスを油脂類に溶解せしめることによる炭酸ガス含有油脂組成物の調製法、及び容器A中で炭酸ガスを発生させる方法として、有機酸類と炭酸塩類の混合物を充填した容器Bに氷を加えた後、直ちに油脂類を充填した容器Aに挿入密封することにより炭酸ガスを発生させる炭酸ガス含有油脂組成物の調製法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂類が充填密封された耐圧性の容器A中で有機酸類、炭酸塩類及び水を混
合することにより発生する炭酸ガスを油脂類に溶解せしめることによる炭酸ガス含有油脂組成物の調製法。
【請求項2】
容器A中で炭酸ガスを発生させる方法として、有機酸類と炭酸塩類の混合物を充填した容器Bに氷を加えた後、直ちに油脂類を充填した容器Aに挿入密封することにより炭酸ガスを発生させることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス含有油脂組成物の調製法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の調製法により得られる炭酸ガス含有油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガス含有油脂組成物の調製法及び炭酸ガス含有油脂組成物
に関し、詳しくは、油脂類が密封された容器中で有機酸類、炭酸塩類及び水
を混合することにより発生する炭酸ガスを油脂類に溶解せしめることによ
る炭酸ガス含有油脂組成物の調製法とそれにより得られる炭酸ガス含有油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パン、ケーキ、菓子類、饅頭等に代表されるふっくら食品には、従来より膨張剤が使用されている。ここで膨張剤は化学的膨張剤と生物的膨張剤に分類されるが、いずれも食品添加物に該当する。前者は、炭酸水素ナトリウム(重曹)や炭酸水素アンモニウム(重炭安)等を主成分とするものであり、
後者はイースト(酵母)を主成分とするものである。一方、膨張剤を使用せずに食品にふっくら感を付与する技術しては、用途が限定されるがバターや
卵白等を攪拌(ホイップ)して細かな泡を生地等に練り込む技術が知られている。
【0003】
上記、膨張剤やホイップ技術は従来から使用されてきた技術であるが、いずれも課題点が散見される。即ち、化学的膨張剤では使用後、炭酸水素ナトリウムや炭酸水素アンモニウム等から由来するアルカリ、アンモニア臭味が
付与される、又、生物的膨張剤ではイースト臭味が付与されるといった課題点があった。更に、近年、化学物質の生体機能への悪影響が問題となっており、消費者は一般的にこのような合成添加物は敬遠する傾向にある。更に、膨張剤を使用しないホイップ技術では、手間が掛かったり、高コストになるといった課題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食品添加物である化学的膨張剤、生物的膨張剤及び高価で手間の掛かるホイップ技術を使用することもなく、より安全で経済的にふっくら食品が得られる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに
油脂類が充填密封された耐圧性の容器中で、有機酸類、炭酸塩類及び水を混
合することによって発生する炭酸ガスを油脂類に溶解せしめることにより炭酸ガス含有油脂組成物が得られることを見出し、更に、従来の膨張剤やホ イップ技術への代替えが十分可能なことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。この調製法により、より安全で経済的に炭酸ガス含有油脂組成物が得られることは、これまで全く知られていなかった。
【0006】
即ち、請求項1に係る本発明は、油脂類が充填密封された耐圧性の容器A
中で有機酸類、炭酸塩類及び水を混合することにより発生する炭酸ガスを油脂類に溶解せしめることにより得られる炭酸ガス含有油脂組成物の調製法を提供するものである。
【0007】
次に、請求項2に係る本発明は、容器A中で炭酸ガスを発生させる方法として、有機酸類と炭酸塩類の混合物を充填した容器Bに氷を加えた後、直ちに油脂類を充填した容器Aに挿入密封することにより、炭酸ガスを発生させることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガス含有油脂組成物の調製法を提供するものである。
【0008】
更に、請求項3に係る本発明は、請求項1又は2記載の調製法により得られる炭酸ガス含有油脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油脂類が充填密封された耐圧性の容器A中で有機酸類、炭酸塩類及び水を混合することにより発生する炭酸ガスを油脂類に溶解せしめることにより、炭酸ガス含有油脂組成物の調製法及びそれにより得られる炭酸ガス含有油脂組成物が提供される。しかも本発明によれば、近年使用が懸念される合成食品添加物を使用することもなく、又、ホイップ技術のように手間が掛かったり、コスト高になるといった課題点もなく、より安全で
経済的にふっくら食品を作ることが可能である。よって食品分野において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、請求項1に係る本発明について詳細に説明する。本発明に使用される油脂類とは、常温で液体状の油脂類をいい、例えば、大豆油、コーン油、綿実油、米ぬか油、ベニバナ油、菜種油、ひまわり油、ピーナッツ油、椿油、
えごま油、オリーブ油、アマニ油、魚油、アーモンド油、アボカド油等が
使用され、これらの群から選ばれる一種類又は二種類以上を混合して使用される。
【0011】
本発明で使用される耐圧性容器とは、従来の炭酸飲料等の容器が一例に挙げられる。耐圧性のない容器を使用すると発生する炭酸ガスの圧力により容器が破損することが予想される為、好ましくない。尚、市販の炭酸水の容器
の20℃における耐圧性は、強炭酸、中炭酸及び弱炭酸について、それぞれ
400kPa、200kPa及び100kPa付近である。本発明の炭酸ガス含有油脂組成物の調製に使用する容器Aの20℃における耐圧性は、中炭酸用相当の200kPaあれば十分である。ペットボトルの他、ガラス瓶、
磁器容器及びステンレス容器等が使用されが、密封できるものであれば、形状は特に制限されない。次に、耐圧性容器A中に挿入する容器Bが使用されるが、挿入できるものであれば容器Bの形状は特に制限されないが、一方側が密封された筒状の容器が好適に使用される。
【0012】
本発明で使用される有機酸類としては、常温で固体の食品用有機酸類が挙げられる。即ち、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸等の群から選ばれる一種類又は二種類以上を混合して使用される。
又、本発明で使用される食品用炭酸塩類としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ソーダ灰等の群から選ばれる一種類又は二種類以上を混合して使用される。
【0013】
本発明で使用される有機酸類と炭酸塩類との混合割合は、次の如くである。有機酸類:炭酸塩類=10~70:90~30
有機酸類と炭酸塩類との混合物の使用重量は、油脂類1Lに対し、10~
40gが好適に使用される。
【0014】
次に、請求項2に係る本発明について詳細に説明する。本発明で使用する耐圧性容器A中で炭酸ガスを発生させる方法は次の如くである。即ち、上記
有機酸類と炭酸塩類の混合物を充填した容器Bに氷を加えた後、直ちに油脂類を充填した容器Aに挿入密封することにより炭酸ガスを発生させることを特徴とする。加える氷の量は、有機酸類と炭酸塩類の混合物の2倍以上が
好ましい。こうして、氷が溶解した水に有機酸類と炭酸塩類とが溶解して炭酸ガスが発生することにより炭酸ガス含有油脂組成物が得られる。但し、容器Bから混合物が出ないよう、氷の量を調整する必要がある。
容器Bを容器Aに挿入後、常温~冷蔵の条件下で3時間以上保管することにより、炭酸ガス含有油脂組成物が調製される。次いで、容器Aを開封し、
容器Bを取り出してから使用に供される。
【0015】
更に、請求項3に係る本発明は、請求項1又は2記載の調製法により得られる炭酸ガス含有油脂組成物に関するものである。
【実施例0016】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらによってなんら制限されるものではない。
【0017】
実施例1~2
(1)炭酸ガス含有油脂組成物の調製
表1に示す有機酸類と炭酸塩類との混合物に氷を加えることにより、炭酸ガス含有油脂組成物を調製した。
即ち、容器A(市販炭酸水500mL容ペットボトル、内口径21mm、高さ20cm)に菜種油450mLを充填する。一方、容器Bには、プラステック製で一方が密封された円筒容器(口の外径20mm、口の内径19mmm、高さ18cm)を用い、表1に示す量の有機酸類と炭酸塩類の混合物を充填する。次いで、表1に示す量の氷を容器Bに加えた後、直ちに容器Aに挿入密封し、冷蔵条件で5時間保管することにより、炭酸ガス含有油脂組成物を調製した。最後に、開封した後、容器Bを取り出してから使用に供した。
【0018】
(2)ホットケ―キの調製
膨張剤に替えて、上記(1)で得られた炭酸ガス含有油脂組成物を用いたホットケーキを調製した。即ち、薄力粉100g、砂糖30g、卵1コ、及び牛乳100mLのホットケーキの生地に上記(1)で得られた炭酸ガス含有油脂組成物10gを練り込んだ後、常法にてホットケーキを調製した。
【0019】
(3)ホットケーキの食感評価
上記(2)で得られた炭酸ガス含有油脂組成物を使用したホットケーキの評価について以下のようにして行った。評価は次の三段階で評価し、良好とやや良好であれば好適に用いることができる。結果を表1に示す。
(ふっくら感の評価)
・口中でふっくら感を感じる : 良好
・口中でふっくら感をやや感じる : やや良好
・口中でふっくら感を感じない : 不良
【0020】