(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013638
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】拘束具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20220111BHJP
A61F 5/01 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A61F5/01 N
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028776
(22)【出願日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】109122061
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】514049726
【氏名又は名称】奇美醫療財團法人奇美醫院
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王 志中
(72)【発明者】
【氏名】李 玉媚
(72)【発明者】
【氏名】黄 秋綿
(72)【発明者】
【氏名】張 明娟
(72)【発明者】
【氏名】呉 佩珊
(72)【発明者】
【氏名】江 恵英
(72)【発明者】
【氏名】郭 進榮
(72)【発明者】
【氏名】翁 瑞侑
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA01
4C098AA02
4C098BB09
4C098BC02
4C098BC11
4C098BC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】肘関節の動きを制限し、患者自身の肢体の状態に応じて軽微に調整することができる拘束具を提供する。
【解決手段】拘束具100は、中空構造を備える充填部10と充填部の外周に周設される外縁部20とを含む。充填部は可撓性を有し、操作可能に肘関節に巻き付けられる充填前状態と、その中空構造が充填されて可撓性がなくなり肘関節の動きを制限する充填後状態とを有する。精度の高い拘束力の参照を与えるために、拘束具は充填部の肘関節に対応する側に設けられる圧力検知器を含む、圧力を測定することで充填部の充填密度が適切であるかどうかを判断し、これに基づいて締め付け具合を調整することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肘関節の動きを制限するための拘束具であって、
中空構造を備える充填部であって、可撓性を有し操作可能に肘関節に巻き付けられる充填前状態と、その中空構造が充填されて可撓性がなくなり肘関節の動きを制限する充填後状態とを有する前記充填部と、
前記充填部の外周に周設される外縁部と
延伸手袋であって、複数の第1接続部を含み、且つ前記外縁部はそれぞれ各前記第1接続部に対応する複数の第2接続部を含み、且つ前記延伸手袋の開口幅は前記外縁部から離れる方向に漸次的に増加する前記延伸手袋とを含むことを特徴とする拘束具。
【請求項2】
前記充填部は複数のセパレータと、各前記セパレータによって隔てられて設けられる複数の中空充填ユニットとを含むことを特徴とする請求項1に記載の拘束具。
【請求項3】
前記中空充填ユニットは4つであり、それぞれが肘関節の上面、下面、及び2つの側面に対応することを特徴とする請求項2に記載の拘束具。
【請求項4】
前記充填部はそれぞれ各前記中空充填ユニットに対応する複数の充填シールを含むことを特徴とする請求項2に記載の拘束具。
【請求項5】
前記延伸手袋は中空構造を備える複数の空気入り条を含むことを特徴とする請求項1に記載の拘束具。
【請求項6】
前記外縁部には肘関節が露出するように複数の貫通孔が開設されることを特徴とする請求項1に記載の拘束具。
【請求項7】
前記外縁部は前記外縁部の一端に設けられる複数の係合スロットと、それぞれ各前記係合スロットに対応するように前記外縁部の他端に設けられる複数のフックとを含むことを特徴とする請求項1に記載の拘束具。
【請求項8】
前記充填部の肘関節に対応する側に設けられる少なくとも1つの圧力検知器と、前記圧力検知器に接続され前記外縁部まで延伸する圧力検出接点とをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の拘束具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拘束具に関し、特に患者の肘部の動きを制限するための拘束具に関する。
【背景技術】
【0002】
病院で侵襲的治療を受けた患者の多くには回復期に痒みに耐えられず、カテーテルを引っ張って抜いたり、患部を引っ掻いたりする行為が見られ、一部の患者では身体的及び精神的な苦しみに耐えられず、自傷するリスクもある。このような行為は患者が手で行ったものが多いため、業界では従来、患者の掌が自由に動かないように拘束手袋を嵌めて、行動を制限するようにしている。
【0003】
しかし入院患者の多くには治療中に、点滴チューブ、経鼻胃管、気管チューブ、ドレーンチューブなど各種カテーテルを装着する必要がある。しかもチューブのほとんどが患者の手部に設けられ、前記拘束手袋を使用すると、医師又は看護師がチューブの状況をチェックし又は新しいチューブを交換するためには、拘束手袋を外し、後にまた装着する必要がある。拘束手袋のゆるさはテープを締め付けて調整できるが、その部品の制限により、患者の肢体サイズに応じて軽微に調整することが難しく、着用時の快適性が損なわれ、これは拘束手袋が患者に受け入れられ難い一因でもある。したがって、従来技術の欠点をどのように解消するかは、業界では早く解決すべき課題になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術による拘束手袋が手部のカテーテル設置を妨げ、患者自身の肢体の状態に応じて軽微に調整することができないなどの問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記目的を達成するためになされたものであって、肘関節の動きを制限するために用いられ、中空構造を備える充填部を含む拘束具であって、当該充填部は可撓性を有し操作可能に肘関節に巻き付けられる充填前状態と、その中空構造が充填されて可撓性がなくなり肘関節の動きを制限する充填後状態とを有することを特徴とする拘束具を提供する。
【0006】
さらに、当該拘束具は当該充填部の外周に周設される外縁部をさらに含む。
【0007】
さらに、当該充填部は複数のセパレータと、各当該セパレータによって隔てられて設けられる複数の中空充填ユニットとを含む。
【0008】
さらに、当該中空充填ユニットは4つであり、それぞれが肘関節の上面、下面、及び2つの側面に対応する。
【0009】
さらに、当該充填部はそれぞれ各当該中空充填ユニットに対応する複数の充填シールを含む。
【0010】
さらに、当該拘束具は延伸手袋をさらに含み、当該延伸手袋は複数の第1接続部を含み、且つ当該外縁部はそれぞれ各当該第1接続部に対応する複数の第2接続部を含み、且つ当該延伸手袋の開口幅は当該外縁部から離れる方向に漸次的に増加する。
【0011】
さらに、当該延伸手袋は中空構造を備える複数の空気入り条を含む。
【0012】
さらに、当該外縁部には肘関節が露出するように複数の貫通孔が開設される。
【0013】
さらに、当該外縁部は当該外縁部の一端に設けられる複数の係合スロットと、それぞれ各当該係合スロットに対応するように当該外縁部の他端に設けられる複数のフックとを含む。
【0014】
さらに、当該拘束具は当該充填部の肘関節に対応する側に設けられる少なくとも1つの圧力検知器と、当該圧力検知器に接続され当該外縁部まで延伸する圧力検出接点とをさらに含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の拘束具は従来のように患者の掌を拘束する代わりに、患者の肘関節を拘束することで、患者がカテーテルを引っ張るのを防ぐことを実現できる。また、本発明では充填によって、拘束具の締め付け具合を軽微に調整する機能を実現する。自傷する恐れのある患者の場合、空気を充填部に入れて膨張させれば、物体にぶつける時には緩衝又は保護するように機能する。さらに患者の肢体サイズに応じて、着用の快適性を向上させることで、拘束具を使用する患者の抵抗感を和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の第1実施形態の立体図である。
【
図2】
図2は本発明の第1実施形態の平面図である。
【
図3】
図3は本発明の第1実施形態の使用状態の模式図である。
【
図4】
図4は本発明の第1実施形態の使用状態の模式図である。
【
図5】
図5は本発明の第2実施形態の平面分解図である。
【
図6】
図6は本発明の第2実施形態の使用状態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1から
図4に示すとおり、本発明は、患者の肘関節900の動きを制限して、患者の自傷行為などを止めるように使用する拘束具100を提供する。本発明では、拘束具100はナイロン混紡繊維からなってもよいし、十分な強さを有する繊維布地からなってもよく、限定されない。
【0018】
具体的には、拘束具100は中空構造を備える充填部10と、充填部10の外周に周設される外縁部20とを含む。充填部10は可撓性を有し操作可能に肘関節900に巻き付けられる充填前状態(
図2を参照)と、その中空構造が充填されて可撓性がなくなり肘関節900の動きを制限する充填後状態(
図3及び
図4を参照)とを有する。さらに、外縁部20は外縁部20の一端に設けられる複数の係合スロット23と、それぞれ各係合スロット23に対応するように外縁部20の他端に設けられる複数のフック24とを含み、医師又は看護師が拘束具100を肘関節900に巻き付けた後、係合スロット23とフック24の係合によって、拘束具100を患者の肘部に定着することができ、また看護師がクリップ25を用いて当該外縁部を患者の衣服に定着させて固定することができる。好ましくは、充填部10に高圧空気を入れて気密状態で密封させ、高圧空気が充填部10の内部に一定の強さを有する剛体結合を生じさせると、患者の肘関節900から力がかかっても曲がったり変形したりせずに、拘束が実現し、自傷する恐れのある患者の場合、空気を入れると物体にぶつける時には緩衝又は保護するように機能する。充填物として水又は細砂を使ってもよいが、充填物の重さ及び利便性を考慮すると、本発明では好ましい実施形態として空気を入れる。
【0019】
また、充填部10には縫製などにより複数のセパレータ11と、各セパレータ11によって隔てられて設けられる複数の中空充填ユニット12とが形成されてもよい。本実施形態では、中空充填ユニット12は、空気を入れて膨張させるエアバッグであり、且つセパレータ11によって4つに分けられ、それぞれが肘関節900の上面、下面、及び2つの側面に対応し、このようにして患者の手部及び肘部を固定させる。また、充填部10はそれぞれ各中空充填ユニット12に対応する複数の充填シール13を含み、充填シール13には気密性密封構造が設けられてもよく、当該構造は当業者に周知されるものであるため、ここで重複を避けるために説明を省略する。また、拘束が長期化すると患者の手部と肘部に血行が悪くなるのを避けるために、外縁部20には肘関節900が露出するように複数の貫通孔22が開設され、医師又は看護師が拘束具100の外部から患者の肘部は締め付けすぎて発赤、腫れ、うっ血などが生じるかどうかを観察することができる。
【0020】
看護師が患者に拘束具100を付与する時は、精度の高い拘束力の参照を与えるために、拘束具100は充填部10の肘関節900に対応する側に設けられる少なくとも1つの圧力検知器40と、圧力検知器40に接続され外縁部20まで延伸する圧力検出接点50とをさらに含む。本実施形態では、圧力検知器40はピエゾ抵抗素子であってもよく、外縁部20まで延伸し、看護師がオーム計で正確な圧力値を測定することで、充填部10の充填密度が適切であるかどうかを判断し、これに基づいて締め付け具合を調整することができる。
【0021】
図5及び
図6は、本発明の第2実施形態を示す。本実施形態では、拘束具100は延伸手袋30をさらに含み、延伸手袋30は複数の第1接続部31を含み、且つ外縁部20はそれぞれ各第1接続部31に対応する複数の第2接続部21を含み、且つ延伸手袋30の開口幅は外縁部20から離れる方向に漸次的に増加し、延伸手袋30は中空構造を備える複数の空気入り条32を含む。これにより、状況に応じて看護師が掌部拘束を加えることもでき、しかも延伸手袋30は開口幅が漸次的に増加して患者の掌部に嵌まるため、手部のカテーテル設置に支障をきたさずに済む。
【0022】
上述したように、本発明の拘束具100は従来のように患者の掌を拘束する代わりに、患者の肘関節900を拘束することで、患者がカテーテルを引っ張り、自傷するのを防ぐことを実現できる。また、本発明では充填によって、拘束具100の締め付け具合を軽微に調整する機能を実現し、患者が不安で暴れて物体にぶつける時に緩衝又は保護するように機能し、さらに患者の肢体サイズに応じて、着用の快適性を向上させることで、拘束具100を使用する患者の抵抗感を和らげることもできる。
【符号の説明】
【0023】
10 充填部
11 セパレータ
12 中空充填ユニット
13 充填シール
100 拘束具
20 外縁部
21 第2接続部
22 貫通孔
23 係合スロット
24 フック
25 クリップ
30 延伸手袋
31 第1接続部
32 空気入り条
40 圧力検知器
50 圧力検出接点
900 肘関節