(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136383
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】マスターバッチの製造方法およびマスターバッチ
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20220913BHJP
C08J 3/215 20060101ALI20220913BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220913BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220913BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20220913BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
C08J3/22 CER
C08J3/215 CEZ
C08K3/04
C08L101/00
C08L101/12
C08K9/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035954
(22)【出願日】2021-03-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝人
(72)【発明者】
【氏名】尾形 和樹
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA05
4F070AA07
4F070AA38
4F070AA52
4F070AA58
4F070AA60
4F070AB01
4F070AB16
4F070AC04
4F070AC12
4F070AC72
4F070AD02
4F070AD03
4F070AD06
4F070AE27
4F070AE28
4F070DA38
4F070FA05
4F070FA15
4F070FA17
4F070FB04
4F070FB05
4F070FC03
4J002AC011
4J002AC071
4J002BB121
4J002BD151
4J002BG021
4J002BG052
4J002BJ002
4J002CH042
4J002CH091
4J002CN011
4J002CP051
4J002DA016
4J002FA056
4J002FB006
4J002FB076
4J002FB266
4J002FD016
(57)【要約】
【課題】担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチを高い収率で製造することができるマスターバッチの製造方法およびマスターバッチを提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液または酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料を含む担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー分散液と、を混合して混合液を調製する工程と、前述の混合液にカチオンポリマーを添加し、混合液を凝固させてカーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を作製する工程と、を含む、マスターバッチの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液または酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料を含む担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー分散液と、を混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液にカチオンポリマーを添加し、前記混合液を凝固させてカーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を作製する工程と、
を含む、マスターバッチの製造方法。
【請求項2】
前記カチオンポリマーは、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ分散液のpHが6~11であり、前記担体高分子材料含有溶液のpHが6~11である、請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項4】
前記混合液を調製する工程では、前記カーボンナノチューブ分散液と、前記担体高分子材料含有溶液と、前記セルロースナノファイバー分散液とを混合して前記混合液を調製する、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項5】
前記多糖類がカルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項6】
前記担体高分子材料は樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項7】
前記担体高分子材料含有溶液はラテックスまたはエマルションである、請求項1~6のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項8】
前記担体高分子材料含有溶液は樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液である、請求項1~6のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂粒子の平均粒子径が0.1~50μmである、請求項8に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項10】
前記混合液を凝固させる工程において、前記混合液に酸または塩を添加した後、前記混合液に前記カチオンポリマーを添加するか、または、前記混合液に前記カチオンポリマーを添加したのち、前記混合液に酸または塩を添加する、請求項1~9のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項11】
前記カチオンポリマーは、オキサゾリン基を有するポリマーを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項12】
カーボンナノチューブと、
担体高分子材料と、
カチオンポリマーと、を含み、
前記カーボンナノチューブは酸化処理または多糖類で修飾され表面に酸性基が導入された表面処理カーボンナノチューブである、
マスターバッチ。
【請求項13】
前記カチオンポリマーは、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項12に記載のマスターバッチ。
【請求項14】
前記多糖類がカルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガムから選ばれる少なくとも1種である、請求項13に記載のマスターバッチ。
【請求項15】
前記担体高分子材料は樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、請求項12~14のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項16】
前記担体高分子材料は樹脂粒子を含む、請求項12~15のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項17】
前記樹脂粒子の平均粒子径が0.1~50μmである、請求項16に記載のマスターバッチ。
【請求項18】
更に、セルロースナノファイバーを含む、請求項12~17のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【請求項19】
前記カチオンポリマーがオキサゾリン基を有するポリマーを含む、請求項12~18のいずれか1項に記載のマスターバッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを含むマスターバッチ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノフィラーについて研究が進められている。ナノフィラーとしては、カーボンナノチューブ等が知られている。カーボンナノチューブは導電性、熱伝導性、機械的強度等の特性に優れており、様々な分野での活用が期待される素材として注目を集めている。例えば、カーボンナノチューブをゴム等に配合することで、製品の機械的特性等の各種性能の向上が期待されている。
【0003】
カーボンナノチューブは、高い凝集性を有しているため、乾燥状態では嵩高で取り扱いが難しく、直接混練機で均一にゴム等と複合化することは困難であった。そこで、カーボンナノチューブを担体高分子材料に担持させてマスターバッチ化して用いることが検討されている。
【0004】
一般的にマスターバッチは、フィラーを含む分散液と、ゴム等の担体高分子材料を含む溶液とを混合して混合液を調製し、次いで、この混合液を凝固させてフィラーと担体高分子材料とを含む凝固物を作製して製造されている。
【0005】
また、特許文献1には、ノニオン系界面活性剤の不存在下に、重量平均分子量55万~90万のジアリルアミン系カチオンポリマー(以下、「高分子量ジアリルアミン系カチオンポリマー」と称す。)と、重量平均分子量1万~4万のジアリルアミン系カチオンポリマー(以下、「低分子量ジアリルアミン系カチオンポリマー」と称す。)と、カーボンナノチューブとを水性溶媒の存在下で混合してカーボンナノチューブ懸濁液を調製する工程と、
得られたカーボンナノチューブ懸濁液とゴムラテックスとを混合する工程とを有し、
高分子量ジアリルアミン系カチオンポリマーと低分子量ジアリルアミン系カチオンポリマーとの配合重量比が高分子量ジアリルアミン系カチオンポリマー:低分子量ジアリルアミン系カチオンポリマー=100:10~100:30である、カーボンナノチューブ/ゴム複合体の製造方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、カーボンナノチューブは高い凝集性を有している。このため、カーボンナノチューブは、担体高分子材料と凝固させる前の状態の液中では、カーボンナノチューブの分散状態を安定化させている。
【0008】
しかしながら、液中でカーボンナノチューブの分散状態を安定化していることにより、担体高分子材料との凝固が完了しないことがあった。
【0009】
よって、本発明の目的は、担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチを高い収率で製造することができるマスターバッチの製造方法、および、マスターバッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者の検討によれば、カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液または酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料を含む担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー分散液と、を含む混合液に、カチオンポリマーを添加して前述の混合液を凝固させることにより、カーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を収率よく得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
【0011】
<1> カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液または酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料を含む担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー分散液と、を混合して混合液を調製する工程と、
上記混合液にカチオンポリマーを添加し、上記混合液を凝固させてカーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を作製する工程と、
を含む、マスターバッチの製造方法。
<2> 上記カチオンポリマーは、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>に記載のマスターバッチの製造方法。
<3> 上記カーボンナノチューブ分散液のpHが6~11であり、上記担体高分子材料含有溶液のpHが6~11である、<1>または<2>に記載のマスターバッチの製造方法。
<4> 上記混合液を調製する工程では、上記カーボンナノチューブ分散液と、上記担体高分子材料含有溶液と、上記セルロースナノファイバー分散液とを混合して上記混合液を調製する、<1>~<3>のいずれか1つに記載のマスターバッチの製造方法。
<5> 上記多糖類がカルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガムから選ばれる少なくとも1種である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のマスターバッチの製造方法。
<6> 上記担体高分子材料は樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載のマスターバッチの製造方法。
<7> 上記担体高分子材料含有溶液はラテックスまたはエマルションである、<1>~<6>のいずれか1つに記載のマスターバッチの製造方法。
<8> 上記担体高分子材料含有溶液は樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のマスターバッチの製造方法。
<9> 上記樹脂粒子の平均粒子径が0.1~50μmである、<8>に記載のマスターバッチの製造方法。
<10> 上記混合液を凝固させる工程において、上記混合液に酸または塩を添加した後、上記混合液に上記カチオンポリマーを添加するか、または、上記混合液に上記カチオンポリマーを添加したのち、上記混合液に酸または塩を添加する、<1>~<9>のいずれか1つに記載のマスターバッチの製造方法。
<11> 上記カチオンポリマーは、オキサゾリン基を有するポリマーを含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載のマスターバッチの製造方法。
<12> カーボンナノチューブと、
担体高分子材料と、
カチオンポリマーと、を含み、
上記カーボンナノチューブは酸化処理または多糖類で修飾され表面に酸性基が導入された表面処理カーボンナノチューブである、
マスターバッチ。
<13> 上記カチオンポリマーは、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を含む、<12>に記載のマスターバッチ。
<14> 上記多糖類がカルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガムから選ばれる少なくとも1種である、<13>に記載のマスターバッチ。
<15> 上記担体高分子材料は樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種を含む、<12>~<14>のいずれか1つに記載のマスターバッチ。
<16> 上記担体高分子材料は樹脂粒子を含む、<12>~<15>のいずれか1つに記載のマスターバッチ。
<17> 上記樹脂粒子の平均粒子径が0.1~50μmである、<16>に記載のマスターバッチ。
<18> 更に、セルロースナノファイバーを含む、<12>~<17>のいずれか1つに記載のマスターバッチ。
<19> 上記カチオンポリマーがオキサゾリン基を有するポリマーを含む、<12>~<18>のいずれか1つに記載のマスターバッチ。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチを高い収率で製造することができるマスターバッチの製造方法、および、マスターバッチを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
<マスターバッチの製造方法>
本発明のマスターバッチの製造方法は、
カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液または酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料を含む担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー分散液と、を混合して混合液を調製する工程と、
前述の混合液にカチオンポリマーを添加し、前述の混合液を凝固させてカーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を作製する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のマスターバッチの製造方法によれば、上述したカーボンナノチューブ分散液と、上述した担体高分子材料含有溶液とを含む混合液に、カチオンポリマーを添加して混合液を凝固させることにより、推測であるがアニオン性分散剤または酸化処理若しくは多糖類による修飾でアニオン性を帯びたカーボンナノチューブにカチオンポリマーがイオン結合し、このカーボンナノチューブ/カチオンポリマーが担体高分子材料とカチオンポリマーの分子鎖による絡み合いにより凝集体を結合するため、カーボンナノチューブと担体高分子材料との凝固反応が促進され、その結果、カーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を収率よく得ることができる。このため、本発明のマスターバッチの製造方法によれば、担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチを高い収率で製造することができる。
【0016】
また、本発明のマスターバッチの製造方法によれば、担体高分子材料含有溶液の種類によらず、ラテックス、エマルション、樹脂粒子分散液等の形態の担体高分子材料含有溶液を用いた場合であっても、担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチを高い収率で製造することができる。
【0017】
また、上述したカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料含有溶液とを含む混合液と、上述したセルロースナノファイバー分散液とを混合して調製した混合液にカチオンポリマーを添加して混合液を凝固させた場合においては、担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチを高い収率で製造することができる。このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、以下の理由によるものと考えられる。セルロースナノファイバーはカルボキシ基などのアニオン性基を有していることが多いため、カチオンポリマーとイオン結合などにより吸着し易いと推測される。また、セルロースを構成するグルコース単位は親水性面と疎水性面を持ち、疎水性面でカーボンナノチューブと強い相互作用を持つと推測される。以上の理由により、セルロースナノファイバーを介してカーボンナノチューブと担体高分子材料との凝固反応をより促進することができると推測される。更には、カーボンナノチューブと担体高分子材料の間にセルロースナノファイバーが介在する事でカーボンナノチューブと担体高分子材料の界面を補強する効果も期待できる。
【0018】
以下、マスターバッチの製造方法の各工程についてさらに詳しく説明する。
【0019】
(混合液調製工程)
混合液調製工程では、カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液または酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料を含む担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー分散液と、を混合して混合液を調製する(混合液調製工程)。
【0020】
まず、カーボンナノチューブ分散液について説明する。カーボンナノチューブ分散液には、カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液(第1態様のカーボンナノチューブ分散液ともいう)、または、酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液(第2態様のカーボンナノチューブ分散液ともいう)が用いられる。第2態様のカーボンナノチューブ分散液は、更にアニオン性分散剤を含んでいてもよい。
【0021】
ここで、カーボンナノチューブとは、グラフェンシートが単層あるいは多層の管状になった物質である。本明細書におけるカーボンナノチューブには、カーボンナノホーンとよばれるホーン形状の素材も含まれる。
【0022】
カーボンナノチューブ分散液に用いられるカーボンナノチューブは、単層のカーボンナノチューブであってもよく、多層のカーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブは、機械的特性、導電性、伝熱性等の各種性能や材料コスト等の観点からは単層から20層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層から15層までのカーボンナノチューブであることがより好ましく、単層から10層までのカーボンナノチューブであることが更に好ましい。また、カーボンナノチューブの両端は、開口していてもよく、いずれか一方または両方が閉口していてもよい。
【0023】
カーボンナノチューブの平均直径は0.03~200nmであることが好ましい。カーボンナノチューブの平均直径が上記範囲であれば、高いアスペクト比を持つ事ができ、樹脂、ゴム等と複合化した際に、高い補強効果を得ることができる。平均直径の下限は、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが更に好ましい。平均直径の上限は、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0024】
カーボンナノチューブの平均長さは、0.0005~5mmであることが好ましい。カーボンナノチューブの平均長さが上記範囲であれば、高いアスペクト比を持つ事ができ、樹脂、ゴム等と複合化した際に、高い補強効果を得ることができる。平均長さの下限は、0.0006mm以上であることが好ましく、0.0008mm以上であることがより好ましく、0.001mm以上であることが更に好ましい。上限は、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることが更に好ましい。
【0025】
カーボンナノチューブの平均アスペクト比は、100~500,000であることが好ましい。カーボンナノチューブの平均アスペクト比が上記範囲であれば、高い補強効果を持ちつつハンドリング性にも優れる。平均アスペクト比の下限は、120以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましい。平均アスペクト比の上限は、450,000以下であることが好ましく、400,000以下であることがより好ましく、300,000以下であることが更に好ましい。なお、本明細書においてカーボンナノチューブの平均アスペクト比とは、カーボンナノチューブの平均長さと平均直径の比(平均長さ/平均直径)のことである。
【0026】
本明細書において、カーボンナノチューブの平均直径は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ30本の直径(外径)を測定し、それらの平均値を求めて算出した値である。また、カーボンナノチューブの平均長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したカーボンナノチューブ30本の長さを測定し、それらの平均値を求めて算出した値である。
【0027】
カーボンナノチューブの比表面積は、100~800m2/gであることが好ましく、150~700m2/gであることがより好ましく、200~600m2/gであることが更に好ましい。本明細書において、カーボンナノチューブの比表面積は、JIS Z8830(ISO 9277)に基づき、ガス吸着法(多点法)により測定したBET比表面積での値である。
【0028】
カーボンナノチューブは、アーク法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)等の公知の方法にて製造することができる。また、特開2020-180251号公報の段落0029~0038に記載された方法により製造することもできる。
【0029】
カーボンナノチューブは、酸化処理または多糖類で修飾して表面に酸性基が導入されていてもよい。酸性基としては、カルボキシ基等が挙げられる。
【0030】
酸化処理されたカーボンナノチューブとしては、特に限定されず、例えば、空気での加熱による気相酸化方法、電気化学的処理による酸化方法、酸化剤を用いた酸化方法等の方法で酸化処理されたカーボンナノチューブ等が挙げられる。酸化剤としては、オゾン;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム等の次亜ハロゲン酸塩;過硫酸、硝酸、硫酸、次亜塩素酸等の酸;過酸化水素等が挙げられる。酸化剤としてのオゾンは、ガス状オゾン、液体状オゾン、または、水等の水性溶媒中に溶解されているオゾンの形態で供給することができる。オゾン含有ガスは、任意選択的に、酸素、空気、窒素、希ガス及びそれらの混合物等のガスで希釈することができる。従来から利用できる、又は市販のオゾン発生器を、オゾン又はオゾン含有ガスを発生させるために使用することができる。オゾン又はオゾン含有ガスを生成するために、オゾン発生器に、空気又は純酸素等のガスを供給することができる。
【0031】
また、カーボンナノチューブを酸素含有雰囲気中で加熱することにより、酸化処理されたカーボンナノチューブを得ることができる。また、カーボンナノチューブをアルカリ金属水酸化物と混合して酸素含有雰囲気中で加熱し、水洗等によりアルカリ金属を除去することにより、酸化処理されたカーボンナノチューブを得ることができる。また、カーボンナノチューブをプラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、または水中での酸素バブリング処理により、酸化処理されたカーボンナノチューブを得ることができる。
【0032】
酸化処理されたカーボンナノチューブ上の酸性基含有量は、例えば、ベーム法(H.P.Boehm、E.Diehl、W.HeckおよびR.Sappok,”Surface Oxides of Carbon” Angew.Chem.inlernat.Edit.Vol.3(1964)No.10,pp.669-677)により測定することができる。ベーム法とは、測定試料に各種のアルカリを加えて反応させ、反応後のアルカリの濃度を酸で逆滴定することで測定試料表面に存在する酸性官能基量を定量する方法である。
【0033】
カーボンナノチューブの表面修飾に用いられる多糖類は、酸性多糖類であることが好ましい。酸性多糖類としては、カルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガム等が挙げられ、分散液中でのカーボンナノチューブの分散性をより向上できるという理由からカルボキシメチルセルロースであることが好ましい。
【0034】
カーボンナノチューブ分散液に用いられるアニオン性分散剤としては、アニオン性基を有する化合物が用いられる。アニオン性基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、及びこれらの塩が挙げられる。なお、カルボキシ基、スルホ基およびホスホ基は、水素原子が解離していてもよい。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、有機アミンのオニウムイオン、銅イオン、銀イオン、アルミニウムイオン、スズイオン等の金属イオン等が挙げられる。アニオン性分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天、トラガントガムおよびそれらの塩;アニオン変性ポリビニルアルコール;アニオン変性ポリアクリルアミド等が挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からアニオン性分散剤はカルボキシメチルセルロースおよびその塩であることが好ましい。アニオン性分散剤の重量平均分子量は、1,000~20,000,000であることが好ましい。重量平均分子量の上限は、15,000,000以下であることが好ましく、10,000,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量の下限は10,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましく、100,000以上であることが更に好ましい。
【0035】
カーボンナノチューブ分散液に含まれる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル等が挙げられ、水であることが好ましい。水は比誘電率が高く、溶媒として水を用いることで分散液中でのカーボンナノチューブの分散性も良好である。更には、カチオンポリマーを添加した際において、液中でのカチオンポリマーの分散性も良好である。
【0036】
カーボンナノチューブ分散液は、更に、界面活性剤やフィラー(カーボンブラック、グラフェン、シリカ、タルク、ナノクレー等)を含んでいてもよい。
【0037】
カーボンナノチューブ分散液のpHは6~11であることが好ましく、7~11であることがより好ましい。カーボンナノチューブ分散液のpHが上記範囲であれば、カーボンナノチューブの分散性が良好である。なお、本明細書においてpHの値は25℃での値である。
【0038】
カーボンナノチューブ分散液の固形分濃度は0.01~15質量%であることが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましく、0.08~8質量%であることが更に好ましい。カーボンナノチューブ分散液の固形分濃度が上記範囲であれば、凝固体をより効率よく得ることができる。更には、カーボンナノチューブ分散液中におけるカーボンナノチューブの分散性も良好である。また、カーボンナノチューブ分散液中のカーボンナノチューブの含有量は0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~8質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが更に好ましい。
【0039】
次に、担体高分子材料含有溶液について説明する。担体高分子材料含有溶液に含まれる担体高分子材料としては、特に限定はなく、樹脂、エラストマーおよびゴム等が挙げられる。樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂としては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。エラストマーとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエンエラストマー、ポリイソプレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンエラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM、PTFE)等が挙げられる。担体高分子材料の重量平均分子量は5,000~15,000,000であることが好ましく、8,000~13,000,000であることがより好ましく、10,000~10,000,000であることが更に好ましい。なお、本明細書において、担体高分子材料の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量のことを意味する。
【0040】
担体高分子材料含有溶液としては、ラテックス、エマルション、樹脂粒子分散液等が挙げられる。本発明のマスターバッチの製造方法によれば担体高分子材料含有溶液として樹脂粒子分散液を用いた場合であっても、担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチを高い収率で製造することができるので、樹脂粒子分散液を用いた場合において本発明の効果がより顕著に奏される。
【0041】
担体高分子材料含有溶液として用いられるラテックスまたはエマルションは、例えば、乳化剤の存在下、乳化重合法によって樹脂、エラストマーおよびゴム等の担体高分子材料を合成した反応液をそのままで、あるいは適宜希釈したり、乳化剤を追加して調製することができる。また溶液重合法によって樹脂、エラストマーおよびゴム等の担体高分子材料を合成した反応液を乳化剤の存在下で水系に転相してラテックスまたはエマルションを調製してもよい。
【0042】
担体高分子材料含有溶液として用いられる樹脂粒子分散液は、樹脂粒子を界面活性剤や分散剤の存在下で、溶媒中で分散して調製することができる。
【0043】
樹脂粒子の平均粒子径は、0.05~50μmであることが好ましい。下限値は0.07μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.15μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。上限値は40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲であれば、カーボンナノチューブとの凝集により複合化した際に、樹脂粒子の表面にカーボンナノチューブが均一に分散した材料を得る事ができる。なお、本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定したメジアン径である。
【0044】
界面活性剤は、水溶性の界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤の種類としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤が挙げられるが、カチオンポリマーとの反応性の観点からノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のエーテル系界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエチル等の脂肪酸エステル系界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の糖エステル系界面活性剤;ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル等の芳香族系界面活性剤が挙げられる。ノニオン性界面活性剤の市販品としては、東邦化学工業株式会社製のノナール912A等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としてはラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンジスチレン化エーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アニオン性界面活性剤の市販品としては、花王株式会社製のぺレックスNB-L等が挙げられる。
【0045】
分散剤としては、上述したアニオン性分散剤等が挙げられる。
【0046】
担体高分子材料含有溶液に含まれる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル等が挙げられ、水であることが好ましい。水は比誘電率が高く、更には、カチオンポリマーを添加した際において、液中でのカチオンポリマーの分散性も良好である。
【0047】
担体高分子材料含有溶液は、更に、界面活性剤やフィラー(カーボンブラック、グラフェン、シリカ、タルク、ナノクレー等)を含んでいてもよい。
【0048】
担体高分子材料含有溶液のpHは6~11であることが好ましく、7~11であることが更に好ましい。担体高分子材料含有溶液のpHが上記範囲であれば、カーボンナノチューブ分散液と混合した際において、カチオンポリマーを添加前の混合液中でのカーボンナノチューブの分散状態を安定的に保つ事ができる。
【0049】
担体高分子材料含有溶液の固形分濃度は0.5~70質量%であることが好ましく、1~65質量%であることがより好ましく、2~60質量%であることが更に好ましい。担体高分子材料含有溶液の固形分濃度が上記範囲であれば、凝固体をより効率よく得ることができる。また、担体高分子材料含有溶液中の担体高分子材料の含有量は0.5~60質量%であることが好ましく、1~50質量%であることが更に好ましい。
【0050】
次に、セルロースナノファイバー分散液について説明する。セルロースナノファイバー分散液はセルロースナノファイバーを含む。セルロースナノファイバーとは、植物等に由来する天然セルロースをナノメートルサイズまで解繊して得られる微細セルロース繊維のことである。セルロースナノファイバーは、セルロース分子鎖が40本程度集合して結晶化度の高いセルロースミクロフィブリルで構成されている。セルロースミクロフィブリルは高い弾性率と高い引張強度を持つため、セルロースミクロフィブリルで構成されるセルロースナノファイバーは優れた機械的特性を持つ事が知られている。またセルロースを構成するグルコース単位は親水性面と疎水性面を持っており、疎水性面はカーボンナノチューブの様な疎水性高分子と相互作用を持つ事が可能である。
【0051】
セルロースナノファイバーは木材繊維をグラインダーやホモナイザーにより機械処理を繰り返す事により得る事ができる、また解繊エネルギーを低減するため木材繊維中のセルロース繊維を化学処理してから機械処理をする事でも得る事が出来る。化学処理の方法は特に限定されないが、カチオンポリマーとの反応性の観点からアニオン性官能基を導入して解繊する方法が好ましい。アニオン性官能基の導入法は特に限定されないが、例えばN-オキシル化合物である2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル フリーラジカル(TEMPO)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法や、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行う方法等がある。
【0052】
セルロースナノファイバーの平均直径は3~100nmが好ましく、4~80nmがより好ましい。セルロースナノファイバーの平均直径が上記範囲内である場合、カーボンナノチューブの直径と近いため、カーボンナノチューブ分散液とセルロースナノファイバー分散液を混合した際に相互作用しやすい。
【0053】
セルロースナノファイバーの後述の方法により測定される平均繊維長は0.0005~2.0mmであることが好ましく、0.001~1.5mmであることがより好ましく、0.0015~1.0mmであることがさらに好ましい。セルロースナノファイバーの平均繊維長が上記下限値以上であれば、カーボンナノチューブと担体高分子材料の界面強度を向上させやすい。セルロースナノファイバーの平均繊維長が、上記上限値以下であればカーボンナノチューブ分散液とセルロースナノファイバー分散液を混合した際、カーボンナノチューブとセルロースナノファイバーが相互作用しやすくなる。
【0054】
なお、本明細書において、セルロースナノファイバーの平均直径は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したセルロースナノファイバー30本の直径(外径)を測定し、それらの平均値を求めて算出した値である。また、セルロースナノファイバーの平均繊維長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択したセルロースナノファイバー30本の長さを測定し、それらの平均値を求めて算出した値である。
【0055】
セルロースナノファイバーの市販品としては、スギノマシン社製のビンフィス(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0056】
セルロースナノファイバー分散液に含まれる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、tert-ブチルアルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル等が挙げられ、水であることが好ましい。
【0057】
セルロースナノファイバー分散液のpHは5~11であることが好ましく、6~10であることが更に好ましい。セルロースナノファイバー分散液のpHが上記範囲であれば、カーボンナノチューブ分散液や担体高分子材料含有溶液と混合しても分散状態を維持することができる。
【0058】
セルロースナノファイバー分散液のセルロースナノファイバーの濃度は0.05~4質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましく、0.2~2質量%であることが更に好ましい。セルロースナノファイバー分散液のセルロースナノファイバー濃度が上記範囲であれば、凝固体をより効率よく得ることができる。更には、セルロースナノファイバー分散液中におけるセルロースナノファイバーの分散性も良好である。
【0059】
混合液調製工程では、カーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料含有溶液と、セルロースナノファイバー分散液とを混合して混合液を調製することが好ましい。この態様によれば、担体高分子材料中にカーボンナノチューブが分散したマスターバッチをより高い収率で製造することができる。
【0060】
混合液調製工程で得られる混合液のpHは6~11であることが好ましく、7~11であることが更に好ましい。
【0061】
混合液調製工程で得られる混合液の固形分濃度は0.5~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることが更に好ましい。また、混合液中のカーボンナノチューブと、担体高分子材料との割合は、カーボンナノチューブ100質量部に対して担体高分子材料が200~9900質量部であることが好ましく、250~9800質量部であることがより好ましく、300~9700質量部であることが更に好ましい。また、混合液中のカーボンナノチューブと、セルロースナノファイバーとの割合は、カーボンナノチューブ100質量部に対してセルロースナノファイバーが5~100質量部であることが好ましく、10~80質量部であることがより好ましく、15~50質量部であることが更に好ましい。
【0062】
(凝固工程)
凝固工程では、混合液調製工程で得られたカーボンナノチューブ分散液と担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバー分散液とを含む混合液に、カチオンポリマーを添加し、この混合液を凝固させてカーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を作製する。
【0063】
カチオンポリマーとしては、カチオン性基を有するポリマーが挙げられる。カチオン性基としては、アミノ基、アンモニウム基、イミノ基及びこれらの塩等が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フッ素イオン、シアン化物イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン、縮合リン酸イオン等が挙げられる。なお、カチオン性基の例として挙げたアミノ基は、-NH2に限定されず、置換アミノ基および環状アミノ基も含まれる。置換アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基等が挙げられる。環状アミノ基としては、ピロリジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、モルホリン基、ピロール基、ピラゾール基、イミダゾール基、ピリジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、チアゾール基、イソチアゾール基、ピロリドン基、ピペリドン基、3-モルホリノン基、モルホリンジオン基等が挙げられる。
【0064】
カチオンポリマーはブロックポリマーであってもよく、ランダムポリマーであってもよい。例えば、ポリアリルアミン等のアリルアミン由来の繰り返し単位を有するポリマー、アンモニア及びアミン化合物から選ばれる少なくとも1種とエピクロロヒドリンとの縮合系ポリマー、ポリアクリルアミドをホフマン変性して得られるホフマン変性ポリアクリルアミド、カチオン変性ポリビニルアルコール等が挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からアリルアミン由来の繰り返し単位を有するポリマー、アンモニア及びアミン化合物から選ばれる少なくとも1種とエピクロロヒドリンとの縮合系ポリマーであることが好ましい。
【0065】
カチオンポリマーとして、オキサゾリン基を有するポリマーを用いることも好ましい。この態様によれば、カーボンナノチューブと担体高分子材料とが強固に結合したマスターバッチを製造することができる。
【0066】
オキサゾリン基を有するポリマーとしては、2-オキサゾリン系モノマー由来の繰り返し単位と含窒素複素環系モノマー由来の繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。オキサゾリン基を有するポリマー中における、2-オキサゾリン系モノマー由来の繰り返し単位の含有量は1~90モル%で、含窒素複素環系モノマー由来の繰り返し単位の含有量は10~99モル%であることが好ましい。
【0067】
2-オキサゾリン系モノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリンおよび4,5-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。含窒素複素環系モノマーとしては、N-ビニルピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-(メタ)アクリロイルピロリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルモルホリン、N-ビニルピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、N-ビニル-3,5-モルホリンジオン、N-ビニルピラゾール、N-ビニルイソオキサゾール、N-ビニルチアゾール、N-ビニルイソチアゾールおよびN-ビニルピリダジン等が挙げられる。
【0068】
オキサゾリン基を有するポリマーは、更に、炭素数1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、炭素数1~12のアルキル基を有するN-アルキル(メタ)アクリルアミド、同じ又は異なる二つの炭素数1~12のアルキル基を有するN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、芳香族置換基を有する(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(C1~12)(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のビニル系モノマー由来の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0069】
カチオンポリマーの重量平均分子量は500~2,500,000であることが好ましく、600~2,000,000であることがより好ましく、700~1,500,000であることが更に好ましい。
【0070】
また、カチオンポリマーの好ましい一態様として、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、カチオンポリマーにより生成される凝集粒子の粒径がより小さくなるという理由からカチオンポリマーcp1を用いることがより好ましい。また、カチオンポリマーcp1とカチオンポリマーcp2とを併用することも好ましい。カチオンポリマーcp1とカチオンポリマーcp2とを併用した場合には、凝集粒子径の大きさと凝集速度の制御が容易になるという効果が得られる。カチオンポリマーcp1とカチオンポリマーcp2とを併用する場合、その割合はカチオンポリマーcp1の100質量部に対してカチオンポリマーcp2が0.5~15質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。
【0071】
カチオンポリマーcp1の重量平均分子量は500~9,000であることが好ましく、600~8,500であることがより好ましく、700~8,000であることが更に好ましい。
【0072】
カチオンポリマーcp2の重量平均分子量は550,000~2,500,000であることが好ましく、600,000~2,000,000であることがより好ましく、700,000~1,500,000であることが更に好ましい。
【0073】
なお、本明細書においてカチオンポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを意味する。
【0074】
カチオンポリマーの市販品としては、ニットボーメディカル株式会社から市販されているPAAシリーズ(ポリアリルアミン)、センカ株式会社から市販されているユニセンスシリーズ(例えば、ユニセンスFCA1000L、ユニセンスFCA1001L、ユニセンスFCA5000L(以上、アクリルアミドとジアリルジメチルアンモニウムクロライドの共重合物の水溶液);ユニセンスFPA100L、ユニセンスFPA101L、ユニセンスFPA102L、ユニセンスFPA1000L、ユニセンスFPA1001L、ユニセンスFPA1002L(以上、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の水溶液);ユニセンスKHF10P(ジシアンジアミド-ホルマリン縮合物);ユニセンスKHP10L、ユニセンスKHP10P(以上、ジシアンジアミド-ジエチレントリアミン縮合物);ユニセンスKHE100L、ユニセンスKHE101L、ユニセンスKHE102L、ユニセンスKHE105L、ユニセンスKHE1000L、ユニセンスKHE1001L(以上、ジメチルアミンとアンモニアとエピクロロヒドリンとの縮合物の水溶液);ユニセンスKHE104L(ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物の水溶液);ユニセンスFPV1000L(ポリ(メタクリル酸トリメチルアミノエチル・メチル硫酸塩)の水溶液);ユニセンスZCA100L(アクリル酸塩-アクリルアミド-ジアリルアミン塩酸塩共重合物の水溶液)等)、三菱ケミカル株式会社から市販されている、ダイヤキャッチシリーズ、日本触媒株式会社から市販されているエポクロスWS-300(オキサゾリン基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0075】
カチオンポリマーの添加量は、カーボンナノチューブ分散液と担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバー分散液とを含む混合液中の固形分100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~8質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが更に好ましい。カチオンポリマーの添加量が上記範囲であれば、凝固体を効率よく得ることができる。
【0076】
凝固工程では、凝固体を効率よく得ることができるという理由から、上記混合液に酸または塩を添加した後、上記混合液に上記カチオンポリマーを添加するか、または、上記混合液に上記カチオンポリマーを添加したのち、上記混合液に酸または塩を添加することが好ましい。なかでも、上記混合液に上記カチオンポリマーを添加したのち、上記混合液に酸または塩を添加することがより好ましい。カチオンポリマーにより、カーボンナノチューブと担体高分子材料を連結してから酸または塩を添加することで、より効率よく凝固体を得ることができる。
【0077】
酸としては、例えば、ギ酸、硫酸、塩酸、酢酸等が挙げられる。塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム塩等の1~3価の金属塩が挙げられる。中でも、塩化カルシウムが好ましい。
【0078】
なお、酸を用いた凝固工程における混合液中のpHは2.8~4.8であることが好ましい。また、この凝固工程の混合液には、必要に応じて乳化剤や伸展油成分等を添加してもよい。また、カーボンブラック等の導電性成分等を添加してもよい。
【0079】
上記凝固工程の後で、生成した塊状の凝固物を分離して水洗、脱水し、80~110℃程度で乾燥することでマスターバッチを得ることができる。乾燥の方法としては、例えば、単軸押出機、オーブン、真空乾燥機、エアードライヤー等の各種乾燥装置を使用することができる。乾燥は、常圧下で行ってもよいが、減圧下(10~1000Pa程度)で行うことが好ましい。乾燥する時間は、使用する乾燥機の大きさ等によって異なるが、減圧下、通常、30~180分程度とすればよい。また、乾燥する温度は、通常、50~150℃程度とすればよい。
【0080】
<マスターバッチ>
次に、本発明のマスターバッチについて説明する。本発明のマスターバッチは、
カーボンナノチューブと、
担体高分子材料と、
カチオンポリマーと、を含み、
上記カーボンナノチューブは酸化処理または多糖類で修飾され表面に酸性基が導入された表面処理カーボンナノチューブであることを特徴とする。
【0081】
カーボンナノチューブ、担体高分子材料およびカチオンポリマーについては、上述したマスターバッチの製造方法において用いることができる素材として説明したものが挙げられる。
【0082】
カーボンナノチューブの酸化処理方法については、上述したマスターバッチの製造方法において説明した処理方法が挙げられる。また、カーボンナノチューブの表面を修飾する多糖類については、上述したマスターバッチの製造方法において説明したものが挙げられ、カルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、カルボキシメチルセルロースであることがより好ましい。
【0083】
担体高分子材料は、樹脂、エラストマーおよびゴムから選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましい。また、担体高分子材料は樹脂粒子を含むものであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径は0.05~50μmであることが好ましい。下限値は0.07μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.15μm以上であることが更に好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。上限値は40μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0084】
マスターバッチ中におけるカーボンナノチューブの含有量は、0.05~30質量%であることが好ましく、0.1~25質量%であることがより好ましく、0.5~20質量%であることが更に好ましい。
【0085】
本発明のマスターバッチは、更に、セルロースナノファイバーを含むことが好ましい。セルロースナノファイバーについては、上述したマスターバッチの製造方法において用いることができる素材として説明したものが挙げられる。マスターバッチ中におけるセルロースナノファイバーの含有量は、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~8質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることが更に好ましい。
【0086】
本発明のマスターバッチは、希釈用の高分子化合物と、必要に応じてその他添加剤と混合して用いることができる。希釈用の高分子化合物としては、特に限定はなく、樹脂、エラストマーおよびゴム等が挙げられる。樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。樹脂としては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、フッ素樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。エラストマーとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエンエラストマー、ポリイソプレンエラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーンエラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、公知の材料が挙げられ、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM、PTFE)等が挙げられる。これらは、用途に応じて適宜選択することができる。また、希釈用の高分子化合物の種類は、マスターバッチの担体高分子材料と同じ種類の素材であってもよく、異なる種類の素材であってもよい。
【0087】
本発明のマスターバッチを用いて射出成形や押出し成形等の公知の成形方法を用いることで各種成形品を製造することができる。
【実施例0088】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0089】
<カーボンナノチューブの製造>
(製造例1)
シリコン基板の片面に、アルミニウムをターゲットとして10秒間のスパッタリングを行い、膜厚1.6nm、平均粗さ(Ra)0.2nmの担持膜を成膜した。続いて、その担持膜上に、鉄をターゲットとして40秒間のスパッタリングを行い、膜厚1.0nmの触媒膜を成膜した。
【0090】
次に、触媒膜の成膜後の基板を3枚用意し、3枚の基板をCVD装置の反応容器内の石英製の台座(ボートという)上に立設した。次に、反応容器を閉め、1Paまで減圧しながら同時にヒータに通電して反応容器内の加熱を開始した。次に、反応容器内の温度が700℃に近くなった時点で、反応容器内に窒素ガスを供給し、反応容器内の圧力が90kPaに保持できるように、ポンプによる反応容器内の排気を継続的に行った。
【0091】
次に、反応容器内が750℃になるまで加熱し、反応容器内に窒素ガスと水素ガスの両方を供給し、反応容器内の圧力を30kPaに維持し、結果、触媒膜の粒子化が生じた。反応容器内の温度が750℃に到達後、窒素ガス、水素ガスおよびアセチレンガスを上記ヒータによる予熱を行いながら、反応容器内の基板の上端から下端に向かって触媒膜表面に沿って供給して、反応容器内の圧力を30kPaに保持しながら、基板上へのカーボンナノチューブの合成を開始した。窒素ガス、水素ガスおよびアセチレンガスの各供給流量がそれぞれ、100slm、100slmおよび10slmになるように各ガス用のマスフローコントローラを調整した。カーボンナノチューブの合成は、約60分間継続して行った。上記3種のガスの混合ガスは、基板上にカーボンナノチューブを合成した後、ポンプで装置外に継続して排気された。
【0092】
カーボンナノチューブの合成終了後、反応容器内への供給ガスを窒素ガスのみに切り替え、反応容器内圧を90kPaに維持しながら、750℃から室温まで降温した。次に、反応容器を開放して、基板を取り出した。長さ1.7~2.1mm、平均長さ2.0mm、平均層数6層、直径7~10nm、平均直径9nm、比表面積364m2/g、G/D比0.9、金属不純物含有率250ppmのウェーブがほとんどない直線的なカーボンナノチューブが得られた。
【0093】
なお、カーボンナノチューブの長さは、基板のままあるいは基板からカーボンナノチューブを刈り取った後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式:JSM-7800F)により撮影されたSEM像から評価した。また、カーボンナノチューブの平均長さについては、SEM像からカーボンナノチューブを任意に30本選択して、30本のカーボンナノチューブの長さの平均値を算出して求めた。
【0094】
カーボンナノチューブの層数および直径は、基板のままあるいは基板からカーボンナノチューブを刈り取った後、透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、型式:HF2200)により撮影されたTEM像から評価した。カーボンナノチューブの平均層数は、カーボンナノチューブの層数を判定可能なTEM像から任意の30視野を選出し、30個のカーボンナノチューブの層数の平均値における小数点以下の数字を四捨五入して求めた。また、カーボンナノチューブの平均直径は、TEM像から任意の30視野を選出し、30本のカーボンナノチューブの直径の平均値における小数点以下の数字を四捨五入して求めた。
【0095】
カーボンナノチューブの比表面積(BET値)は、JIS Z8830(ISO 9277)に基づき、比表面積測定装置(株式会社島津製作所製、型式:3Flex)を用いたガス吸着法(多点法)により測定した。
【0096】
カーボンナノチューブのG/D比は、ラマンマイクロスコープ(RENISHAW社製、型式:inVia)を用いて求めた。具体的には、ラマンマイクロスコープを用いて測定されるラマンスペクトルのG-band(1590cm-1)のピーク強度をD-band(1350cm-1)のピーク強度で除した値を求めた。
【0097】
<樹脂粒子の平均粒子径の測定方法>
樹脂粒子分散液中の樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式の粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、型式:LA-960)を用いて、レーザー回折・散乱法により測定した。
【0098】
<マスターバッチの製造>
(実施例1)
製造例1で得られたカーボンナノチューブの10gを、カルボキシメチルセルロース(商品名セロゲン WS-C、第一工業製薬株式会社製)10gを溶解した2リットルのイオン交換水に分散し、高圧ホモジナイザー(スターバーストミニ、型式HJP-25001)に1回通してカーボンナノチューブ分散液(pH7.5)を得た。このカーボンナノチューブ分散液に、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス(商品名Nipol LX531B、日本ゼオン株式会社製、固形分濃度66質量%、pH11)を272.7g添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名PAA-08、ニットボーメディカル株式会社製、ポリアリルアミン、重量平均分子量8,000、固形分15質量%)46.7gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。凝固物の回収率は98.2%であった。なお回収率は乾燥後のマスターバッチの重量に対して、配合したカーボンナノチューブ、カルボキシメチルセルロース、ラテックスおよびカチオンポリマーの固形分量の総和の量から求めた。
【0099】
(実施例2)
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を調製した。このカーボンナノチューブ分散液に対して、セルロースナノファイバー分散液(商品名ビンフィスWFo-100、株式会社スギノマシン製、平均直径30nm、固形分濃度2質量%)の340gにイオン交換水の1410gを加えた溶液と、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス(商品名Nipol LX531B、日本ゼオン株式会社製、固形分濃度66質量%、pH11)272.7gを添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名PAA-08、ニットボーメディカル株式会社製、ポリアリルアミン、重量平均分子量8,000、固形分15質量%)46.7gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料の固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は100%であった。
【0100】
(実施例3)
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を調製した。このカーボンナノチューブ分散液に、天然ゴムラテックス(商品名HA、ムサシノケミカル株式会社製、固形分60質量%、pH10.4)300gを添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名ユニセンスKHE100L、センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロロヒドリン縮合物(重量平均分子量823)、固形分濃度60質量%水溶液)3.5gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料の固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は98%であった。
【0101】
(実施例4)
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を調製した。このカーボンナノチューブ分散液に、水素化ニトリルゴムラテックス(商品名Zetpol ZP2230LX、日本ゼオン株式会社製、固形分濃度41%、pH9.7)439gを添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名ユニセンスKHE100L、センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロロヒドリン縮合物(重量平均分子量823)の固形分濃度60質量%水溶液)3.5gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料の固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は100%であった。
【0102】
(実施例5)
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を調製した。このカーボンナノチューブ分散液に、フッ素アクリル樹脂エマルション(商品名SIFCLEAR F101、株式会社イーテック製、固形分濃度47質量%、pH7.7)383gを添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名ユニセンスKHE100L、センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロロヒドリン縮合物(重量平均分子量823)、固形分濃度60質量%水溶液)3.5gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料の固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は100%であった。
【0103】
(実施例6)
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を調製した。このカーボンナノチューブ分散液に、シリコーンエラストマーエマルション(商品名DOWSIL IE-7170、ダウ・東レ株式会社製、固形分濃度48質量%、pH10.5)375gを添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名ユニセンスKHE100L、センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロロヒドリン縮合物(重量平均分子量823)、固形分濃度60質量%水溶液)5.2gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料の固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は100%であった。
【0104】
(実施例7)
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を調製した。このカーボンナノチューブ分散液に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子分散液(商品名ポリフロン PTFE D-210C、ダイキン工業株式会社製、平均粒子径0.25μm、固形分濃度60質量%、pH9.7)300gを添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名ユニセンスKHE100L、センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロロヒドリン縮合物(重量平均分子量823)、固形分濃度60質量%水溶液)5.2gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は100%であった。
【0105】
(実施例8)
実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を調製した。このカーボンナノチューブ分散液に、ポリプロピレン分散液(商品名アローベース YA-6010、ユニチカ株式会社製、エマルション、固形分濃度25質量%、pH9.93)720gを添加して混合液を調製した。この混合液にカチオンポリマー(商品名ダイヤキャッチCHP295、三菱ケミカル株式会社製、重量平均分子量702,000)2質量%溶液を90g添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は97%であった。
【0106】
(実施例9)
顆粒形状のポリフェニレンサルファイド(商品名MA520、DIC株式会社製)を流動層式対向型ジェットミル(商品名カウンタジェットミルAFG、ホソカワミクロン株式会社製)で粉砕して粉砕物(ポリフェニレンサルファイド粒子)を得た。得られたポリフェニレンサルファイド粒子の平均粒子径は16.2μmであった。得られたポリフェニレンサルファイド粒子180gに1800gのイオン交換水を加え、ノニオン性界面活性剤(商品名ノナール912A、東邦化学工業株式会社製、固形分濃度5質量%)72gを添加して攪拌した。更にカルボキシメチルセルロース(商品名セロゲン WS-C、第一工業製薬株式会社製)の2質量%溶液180gを添加し、攪拌してポリフェニレンサルファイド粒子分散液(pH6.8)を調製した。このポリフェニレンサルファイド粒子分散液と、実施例1と同様にして調整したカーボンナノチューブ分散液とを混合して混合液を調製した。この混合液にカチオンポリマー(商品名ユニセンスKHE100L、センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロロヒドリン縮合物(重量平均分子量823)固形分濃度60質量%水溶液)5.2gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は100%であった。
【0107】
(実施例10)
ペレット形状のポリエーテルケトン(商品名381G、ビクトレックス・ジャパン株式会社)を流動層式対向型ジェットミル(ホソカワミクロン製、カウンタジェットミルAFG)で粉砕して粉砕物(ポリエーテルケトン粒子)を得た。得られたポリエーテルケトン粒子の平均粒子径は12.3μmであった。得られたポリエーテルケトン粒子の180gに1800gのイオン交換水を加え、ノニオン性界面活性剤(商品名ノナール912A、東邦化学工業株式会社製、固形分濃度5質量%)72gを添加して攪拌した。更にカルボキシメチルセルロース(商品名セロゲン WS-C、第一工業製薬株式会社製)の2質量%溶液180gを添加し、攪拌してポリエーテルケトン粒子分散液(pH7.4)を調製した。ポリエーテルケトン粒子分散液と、実施例1と同様にして調整したカーボンナノチューブ分散液とを混合して混合液を調製した。この混合液にカチオンポリマー(商品名ユニセンスKHE100L、センカ株式会社製、ジメチルアミン-アンモニア-エピクロロヒドリン縮合物(重量平均分子量823)、固形分濃度60質量%水溶液)5.2gを添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は98%であった。
【0108】
(実施例11)
製造例1で得られたカーボンナノチューブの10gを、6質量%の次亜塩素酸溶液1990ml中に分散し、50℃にて1時間処理した。その後、処理溶液をろ過し、pHが中性になるまで水で洗浄して、酸化処理されたカーボンナノチューブ(以下、カーボンナノチューブOTと記す)を得た。カーボンナノチューブOTのカルボキシ基含有量は0.1meq/gであった。なお、カーボンナノチューブOTのカルボキシ基含有量はベーム法により定量した。具体的にはカーボンナノチューブOTの30mgに対して10mlの0.1規定の炭酸水素ナトリウムを加えた後、2時間超音波処理を行った後、3日間静置した。その後処理液をろ過し、ろ液を0.01規定の塩酸で滴定を行った。中和点の判定は自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM-1750)によって行なった。
【0109】
次に、上記処理液をろ過して得られたカーボンナノチューブOTのケーキに対してイオン交換水で2リットルになるまで希釈した後、高圧ホモジナイザー(スターバーストミニ、型式HJP-25001)に1回通してカーボンナノチューブ分散液(pH6.8)を得た。このカーボンナノチューブ分散液に、実施例1と同様にしてアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)ラテックス(商品名Nipol LX531B、日本ゼオン株式会社製、固形分濃度66質量%、pH11)を272.7g添加して混合液を調製した。次に、上記混合液にカチオンポリマー(商品名PAA-08、ニットボーメディカル株式会社製、ポリアリルアミン、重量平均分子量8,000、固形分15質量%)を4.7g添加して攪拌した。更に20%ギ酸溶液を上記混合液が凝固するまで添加した。得られた凝固物を目開き149μmのメッシュでろ過し、凝固物を回収した。凝固物を脱水後、110℃で乾燥してマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は96.5%であった。
【0110】
(実施例12)
実施例1において20%ギ酸溶液の代わりに20%塩化カルシウム溶液5gを添加した以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は98.7%であった。
【0111】
(実施例13)
実施例1においてカチオンポリマーとして(商品名エポクロスWS-300、日本触媒株式会社製、オキサゾリン基含有ポリマー、重量平均分子量120,000、固形分10質量%)の10.2g添加した以外は実施例1と同様にしてマスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は95.4%であった。
【0112】
(比較例1)
実施例1において、カチオンポリマーを添加しなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、マスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は63%であった。カチオンポリマーによるカーボンナノチューブとラテックスとの間の橋掛けがないため、凝固効率が悪かったためと考えられる。
【0113】
(比較例2)
実施例10において、カチオンポリマーを添加しなかった以外は実施例10と同様の操作を行い、マスターバッチを作製した。実施例1と同様に乾燥後のマスターバッチの重量に対して、マスターバッチ原料固形分の総和から回収率を求めたところ、凝固物の回収率は72%であった。これは比較例1同様、カーボンナノチューブと粉末微粒子へのカチオンポリマーによる橋掛けが無いため、凝固効率が悪かったためと考えられる。
カーボンナノチューブをアニオン性分散剤に分散させたカーボンナノチューブ分散液または酸化処理若しくは多糖類で修飾して表面に酸性基を導入したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブ分散液と、担体高分子材料を含む担体高分子材料含有溶液と、更に任意でセルロースナノファイバーを含むセルロースナノファイバー分散液と、を混合して混合液を調製する工程と、
前記混合液にカチオンポリマーを添加し、前記混合液を凝固させてカーボンナノチューブと担体高分子材料とを含む凝固物を作製する工程と、
を含む、マスターバッチの製造方法。
前記カチオンポリマーは、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のマスターバッチの製造方法。
前記カーボンナノチューブ分散液のpHが6~11であり、前記担体高分子材料含有溶液のpHが6~11である、請求項1または2に記載のマスターバッチの製造方法。
前記混合液を調製する工程では、前記カーボンナノチューブ分散液と、前記担体高分子材料含有溶液と、前記セルロースナノファイバー分散液とを混合して前記混合液を調製する、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
前記多糖類がカルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
前記混合液を凝固させる工程において、前記混合液に酸または塩を添加した後、前記混合液に前記カチオンポリマーを添加するか、または、前記混合液に前記カチオンポリマーを添加したのち、前記混合液に酸または塩を添加する、請求項1~9のいずれか1項に記載のマスターバッチの製造方法。
前記カチオンポリマーは、重量平均分子量が500~10,000のカチオンポリマーcp1および重量平均分子量が500,000~2,500,000のカチオンポリマーcp2から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項12に記載のマスターバッチ。
前記多糖類がカルボキシメチルセルロース、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天およびトラガントガムから選ばれる少なくとも1種である、請求項13に記載のマスターバッチ。