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▶ 山岡 洋祐の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136386
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】履物、及び、下駄
(51)【国際特許分類】
   A43B 3/12 20060101AFI20220913BHJP
   A43B 3/00 20220101ALI20220913BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A43B3/12 B
A43B3/00 102B
A61F5/01 N
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035961
(22)【出願日】2021-03-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイト掲載日 令和2年10月14日 ウェブサイトのURL (1)https://joto-seikotsuin.com (2)https://www.facebook.com/jotoseikotsuin
(71)【出願人】
【識別番号】521097851
【氏名又は名称】山岡 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】山岡 洋祐
【テーマコード(参考)】
4C098
4F050
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB11
4C098BC42
4C098BD02
4F050AA11
4F050AA19
4F050BA46
4F050JA30
4F050LA07
4F050LA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】前足部の回外の改善に有用な履物を提供する。
【解決手段】足部を載せる底部11を備えた履物10は、底部11の表側面では、足裏のうち母指球による横アーチが形成されている遠位横アーチ部に対応する領域に、その領域に頂部15aがあり、且つ、遠位横アーチ部を足幅方向に亘って載せることが可能な幅を有する隆起部15が設けられ、隆起部15の頂部15aは、底部11の裏側面に対し、足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足部を載せる底部を備えた履物であって、
前記底部の表側面では、足裏のうち母指球による横アーチが形成されている遠位横アーチ部に対応する領域に、該領域に頂部があり、且つ、前記遠位横アーチ部を足幅方向に亘って載せることが可能な幅を有する隆起部が設けられ、
前記隆起部の頂部は、前記底部の裏側面に対し、前記足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している、履物。
【請求項2】
前記底部の裏側面に対する、前記隆起部の頂部の足幅方向の傾斜角αについて、5°<α<10°の関係を満たす、請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記底部の表側面では、前記隆起部の前側の裾が、前記足部における各足指のDIP関節よりつま先側の部分に対応する領域よりも後ろ側に位置している、請求項1又は2に記載の履物。
【請求項4】
前記底部の表側面において、前記隆起部の裾から頂部までの高低差の最大値は、1.0cm以上である、請求項1乃至3の何れか1つに記載の履物。
【請求項5】
足部を載せる台を備えた下駄であって、
前記台の裏側面には、足裏のうち母指球による横アーチが形成されている遠位横アーチ部に対応する領域だけに、足幅方向に延びる歯が設けられ、
前記台の表側面は、前記歯の先端面に対し、前記足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している、下駄。
【請求項6】
前記歯の先端面に対する、前記台の表側面の足幅方向の傾斜角βについて、5°<β<10°の関係を満たす、請求項5に記載の下駄。
【請求項7】
前記歯の高さが前記足部の外側ほど高くなるように前記足幅方向に変化させることにより、前記台の表側面は、前記足部の外側が高くなるように前記足幅方向に傾斜している、請求項5又は6に記載の下駄。
【請求項8】
前記台の後端は、前記足部の中足部に対応する位置に設けられている、請求項5乃至7の何れか1つに記載の下駄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足部の整体などに利用可能な履物等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、足部の健康や疾患の改善や予防を目的として、様々な履物が考案されている。特許文献1には、外反母趾を予防できるスリッパとして、スリッパの底に足の指先の第一関節が曲がって引っ掛かる溝を設け、踵を低くしたことで、底が盛り上がった形状の中央部分になったスリッパが記載されている。また、特許文献2には、本体底部の土踏まず相当位置に、下方に向けて突起部が設けられた健康履物が記載されている。
【0003】
また、非特許文献1には、脛骨内側ストレス症候群患者(Medial tibial stress syndrome (以下、「MTSS」と言う。))を伴うスポーツ障害者を対象とした研究結果の結論として、「MTSSと診断された運動選手(MTSS群)の足部形態は、アーチ高が低く、踵骨角度が回内していて、前足部が回外している。つまり足部全体のアライメントが崩れていることが示唆された」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3117010号公報
【特許文献2】特許第5895302号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】博士(スポーツ科学)学位論文「脛骨内側ストレス症候群患者の再発要因と対処法の検討Consideration for Recurrent Factor and Prevention of Medial Tibial Stress Syndrome」、[令和3年2月26日検索]、インターネット[URL:https://core.ac.uk/download/pdf/286939422.pdf]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本願発明者は、足部における骨の配列の崩れ(マルアライメント)を改善するためには、前足部の回外を改善できる履物を使用することが有効であると、考えた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、前足部の回外の改善に有用な履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、足部を載せる底部を備えた履物であって、底部の表側面では、足裏のうち母指球による横アーチが形成されている遠位横アーチ部に対応する領域に、該領域に頂部があり、且つ、遠位横アーチ部を足幅方向に亘って載せることが可能な幅を有する隆起部が設けられ、隆起部の頂部は、底部の裏側面に対し、足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、底部の裏側面に対する、隆起部の頂部の足幅方向の傾斜角αについて、5°<α<10°の関係を満たす。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、底部の表側面では、隆起部の前側の裾は、足部における各足指のDIP関節よりつま先側の部分に対応する領域よりも後ろ側に位置している。
【0011】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、底部の表側面において、隆起部の裾から頂部までの高低差の最大値は、1.0cm以上である
【0012】
また、上述の課題を解決するべく、第5の発明は、足部を載せる台を備えた下駄であって、台の裏側面には、足裏のうち母指球による横アーチが形成されている遠位横アーチ部に対応する領域だけに、足幅方向に延びる歯が設けられ、台の表側面は、歯の先端面に対し、足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。
【0013】
第6の発明は、第5の発明において、歯の先端面に対する、台の表側面の足幅方向の傾斜角βについて、5°<β<10°の関係を満たす。
【0014】
第7の発明は、第5又は第6の発明において、歯の高さが足部の外側ほど高くなるように足幅方向に変化させることにより、台の表側面は、足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。
【0015】
第8の発明は、第5乃至第7の何れか1つの発明において、台の後端は、足部の中足部に対応する位置に設けられている。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、底部の表側面において足裏の遠位横アーチ部に対応する領域に、隆起部が設けられている。隆起部の頂部は、遠位横アーチ部に対応する領域にある。隆起部は、遠位横アーチ部を足幅方向に亘って載せることが可能な幅を有する。そのため、履物の使用者が足部を底部に載せて踵部を上げると、遠位横アーチ部で多くの体重を支える状態(以下、「横アーチ支持状態」と言う。)となる。そして、第1の発明では、隆起部の頂部が、底部の裏側面に対し、足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。そのため、横アーチ支持状態では、前足部を回内方向へ誘導する荷重が足部に作用し、前足部の回外を引き起こしている足部における骨の配列の崩れ(マルアライメント)が矯正される。つまり、アライメント調整が行われる。横アーチ支持状態を維持したり、横アーチ支持状態を反復したりする等のリハビリ運動を繰り返すことにより、正しい骨の配列における正しい筋肉の使い方を覚え込ませることができ、前足部の回外及びマルアライメントが徐々に改善されていく。第1の発明によれば、前足部の回外及びマルアライメントの改善に有用な履物を提供することができる。
【0017】
また、第5の発明では、下駄の台の裏側面において、遠位横アーチ部に対応する領域だけに、足幅方向に延びる歯が設けられ、台の表側面は、歯の先端面に対し、足部の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。第5の発明では、下駄の使用者が足部を台に載せて、歯のみで体重を支える状態にすると、横アーチ支持状態となり、前足部を回内方向へ誘導する荷重が足部に作用する。そして、上述のリハビリ運動を繰り返すことで、正しい骨の配列における正しい筋肉の使い方を覚え込ませることができ、前足部の回外及びマルアライメントが徐々に改善されていく。第5の発明によれば、前足部の回外及びマルアライメントの改善に有用な下駄を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、実施形態1に係る履物の斜視図であり、図1(b)は、ベルトを省略した履物の斜視図である。
図2図2(a)は、実施形態1に係る履物の底部(右足用のみ)の上面図であり、図2(b)は、足部が載せられた状態の底部(右足用のみ)の上面図である。
図3図3は、実施形態1に係る履物を前側から見た図である。
図4図4は、実施形態1に係る履物(右足用のみ)の使用状態の斜視図である。
図5図5(a)は、実施形態2に係る下駄の上面図であり、図5(b)は、足部が載せられた状態の下駄(右足用のみ)の上面図である。
図6図6は、実施形態2に係る下駄を前側から見た図である。
図7図7は、実施形態2に係る下駄(右足用のみ)の使用状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
<実施形態1>
本実施形態は、本発明に係る履物10である。履物10は、サンダルである。履物10は、図1(a)に示すように、足部5を載せる底部11と、底部11に載せられた足部5を拘束するためのベルト12a,12bとを備えている。ベルト12a,12bは、前側ベルト12a及び後ろ側ベルト12bにより構成されている。前側ベルト12a及び後ろ側ベルト12bの各々は、面ファスナー等により長さ調節可能となっている。なお、ベルト12の構成や形態は、本実施形態のものに限定されない。
【0021】
底部11は、図1(b)に示すように、前後方向が長手方向となる厚板状に形成されている。底部11は、図2(a)に示すように、上面視において前端部及び後端部が丸みを帯びている。また、底部11は、図2(b)に示すように、履物10のサイズに合った足部5における前足部5f、中足部5m、及び、後足部5hを全て載せることができる大きさを有する。底部11の前後方向の寸法Xは、足部5の足長とほぼ同じ、又は、足長よりも僅かに大きい。なお、履物10では右足用の底部11と左足用の底部11が左右対称に形成されており、図2では、左足用の底部11の記載を省略している。
【0022】
底部11の表側面11aでは、図2(b)に示すように、足部5の足裏のうち母指球による横アーチが形成されている遠位横アーチ部5x(寸法線5xの範囲内における足幅方向に亘る領域)に対応する領域に、隆起部15が設けられている。隆起部15は、側面視において、曲線状に上側に膨んだ形状を呈する。隆起部15の頂部15aは、遠位横アーチ部5xに対応する領域にある。また、隆起部15は、遠位横アーチ部5xを足幅方向に亘って載せることが可能な幅を有する。本実施形態では、隆起部15が、底部11の足幅方向に亘って形成されている。なお、「遠位横アーチ部5x」は、第1~第5趾MP関節底側から第1~第5中足骨遠位底側にかけての面と言うこともできる。
【0023】
底部11の表側面11aでは、前後方向において隆起部15が、隆起部15の前側の裾15bから、後ろ側の裾15cまでの範囲に形成されている。底部11の表側面11aでは、隆起部15の前側の裾15bが、足部5における各足指のDIP関節よりつま先側の部分に対応する領域よりも後ろ側に位置している。本実施形態では、底部11の表側面11aでは、隆起部15の前側の裾15bが、足指5eの付け根に対応する位置近傍にある。隆起部15の前側の裾15bは、前側に少し膨らんだ曲線状で、足幅方向に延びている。一方、隆起部15の後ろ側の裾15cは、中足部5mに対応する領域にある。隆起部15の後ろ側の裾15cは、足部5の骨を基準にした場合、楔状骨又はその近傍にある。隆起部15の後ろ側の裾15cは、後ろ側に少し膨らんだ曲線状で、足幅方向に延びている。
【0024】
なお、隆起部15は、足部5を底部11に載せて、足指5eを前側に伸ばし、且つ、遠位横アーチ部5xと略同じ高さに踵部5hを浮かせた状態で、遠位横アーチ部5xだけで体重を支持する状態になる形態(つまり、足裏のうち遠位横アーチ部5xよりも前側及び後ろ側で体重を支持しない状態になる形態)が好ましい。例えば、隆起部15の前側の裾15bは、本実施形態の位置よりも前側又は後ろ側であってもよいし、隆起部15の後ろ側の裾15cも、本実施形態の位置よりも前側又は後ろ側であってもよい。
【0025】
上面視において、底部11の前後方向の寸法Xを基準にして、足幅方向の中心で見た場合に、隆起部15の頂部15a(頂部15aの前後方向の中心)は、底部11の前端から0.3Xの位置近傍にある。また、隆起部15の前側の裾15bは、底部11の前端からX/6~X/4の範囲(例えばX/5の位置近傍)にある。また、隆起部15の後ろ側の裾15cは、底部11の前端から(2/5×X)~(3/5×X)の範囲(例えばX/2の位置近傍)にある。
【0026】
また、実寸法で見た場合、寸法Xが26cmの履物10であれば、隆起部15の頂部15a(頂部15aの前後方向の中心)は、底部11の前端から8cmの位置近傍にあり、隆起部15の前側の裾15bは、底部11の前端から4.5~6.5cmの範囲にあり、隆起部15の後ろ側の裾15cは、底部11の前端から10.5~15.5cmの範囲にある。
【0027】
隆起部15の頂部15aは、図3に示すように、底部11の裏側面11bに対し、足部5の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。底部11の裏側面11bに対する、隆起部15の頂部15aの足幅方向の傾斜角αについて、5°<α<10°の関係を満たす。傾斜角αは、好ましくは6°以上9°以下(例えば、7°)である。傾斜角αが5°以下の場合は、足部5のマルアライメントの改善効果が小さい。一方、傾斜角αが10°以上の場合は、使用者によっては、上述のリハビリ運動時に不安定さ等があるために、履物10を継続使用することができない虞があるためである。なお、本実施形態では、傾斜角αが、足幅方向に略一定であるが、例えば足裏の形状などに基づいて足幅方向に傾斜角αを変化させてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、隆起部15の高さ(隆起部15の裾からの高さ)が足部5の外側ほど高くなるように足幅方向に変化させることにより、隆起部15の頂部15aを足幅方向に傾斜させているが、底部11の厚みが足部5の外側ほど厚くなるように足幅方向に変化させることにより、隆起部15の頂部15aを足幅方向に傾斜させてもよい。
【0029】
続いて、隆起部15の高さ寸法について、隆起部15の裾15b,15cから頂部15aまでの高低差の最大値は、1cm以上である。つまり、頂部15aのうち最も高い外端の高さは、1cm以上である。この高さは、好ましくは1.5cm以上2cm以下である。また、頂部15aのうち最も低い内端は、ほぼゼロでもよいが、この内端の高さは、好ましくは0.5cm以上1cm以下である。
【0030】
底部11の表側面11aでは、隆起部15以外の領域が、足部5の変形を生じさせるような大きい凹凸がない平坦領域となっている。表側面11aの平坦領域は、足裏形状に合わせて、外周部の内側部分が少し窪んでいる。また、底部11の裏側面11bも、足部5の変形を生じさせるような大きい凹凸がない平坦領域となっている。なお、本明細書において「平坦領域」は、全体として平らであればよく、足部5の変形を生じさせない小さい凹凸(例えば、いわゆる健康サンダルの底部の表側面に密集して設けられる多数の小突起、底部の裏側面に設けられる小さな溝部など)が形成されていてよい。
【0031】
[本実施形態の効果等について]
本実施形態では、履物10の使用者が足部5を底部11に載せて踵部(後足部)5hを上げると、遠位横アーチ部5xで多くの体重を支える横アーチ支持状態(図4に示す状態)となる。そして、隆起部15の頂部15aが、底部11の裏側面11bに対し、足部5の外側が高くなるように足幅方向に傾斜しているため、横アーチ支持状態では、前足部5fを回内方向へ誘導する荷重が足部に作用し、前足部5fの回外を引き起こしている足部5の骨の配列の崩れ(マルアライメント)が矯正される。横アーチ支持状態を維持したり、横アーチ支持状態を反復したりする等のリハビリ運動を繰り返すことで、正しい骨の配列における正しい筋肉(腓骨筋、後脛骨筋、腓腹筋などの足関節周囲筋群)の使い方を覚え込ませることができ、前足部5fの回外及びマルアライメントが徐々に改善されていく。本実施形態によれば、前足部5fの回外及びマルアライメントの改善に有用な履物10を提供することができる。また、足部5のアライメントと筋活動が正常化することにより、歩行や姿勢も改善され、足部5に関わらず各関節の痛みや機能障害も改善することもできる。
【0032】
ここで、底部の表側面が平坦な履物(以下、「通常の履物」と言う。)の場合、履物の使用者が踵部を上げると、足指5e及び遠位横アーチ部5xで体重を支える状態(以下、「横アーチ支持状態」と言う。)となる。一方、本実施形態では、隆起部15の裾15b,15cから頂部15aまでの高低差の最大値が、約1.5cmあるため、横アーチ支持状態で、足指5e及び踵部5hを浮かせやすく、通常の履物に比べて、足指5eで支える体重が少なく、遠位横アーチ部5xで支える体重が大きくなる。また、通常の履物では、横アーチ支持状態にするために、遠位横アーチ部5xに対して踵部5hをある程度上側に上げる必要があるが、本実施形態では、踵部5hをそれほど上げる必要がなく、履物10の使用者が容易に横アーチ支持状態の姿勢を取ることができる。本実施形態によれば、前足部5fの回外を改善するためのリハビリ運動を容易に行うことができ、しかも改善効果が高い履物10を提供することができる。
【0033】
また、傾斜角αがα=7°であり、後述する実施例で実証したように、前足部5fの回外及びマルアライメントの改善効果が十分に得られ、且つ、上述のリハビリ運動を比較的行いやすく、使用者にとって継続使用しやすい履物10を提供することができる。
【0034】
<実施形態2>
本実施形態は、本発明に係る下駄20である。下駄20は、図5及び図6に示すように、足部5を載せる台21と、台21に取り付けられた前坪22から左右にそれぞれ延びる鼻緒23と、台21の裏側面21bから下方に突出する歯24とを備えている。なお、台21の裏側には、前坪22に対応する位置に前金27が設けられている。
【0035】
台21は、平板状に形成されている。台21は、図5(a)に示すように、上面視において前側の左右の角部が丸みを帯びた略四角形状を呈する。また、台21は、図5(b)に示すように、下駄20のサイズに合った足部5の前足部5fと中足部5mの一部とを載せることができる大きさを有する。台21の後端は、中足部5mに対応する位置に設けられている。台21の後端は、足部5の骨を基準にした場合、楔状骨又はその近傍にある。台21の前後方向の寸法Yは、前足部5fの長さよりも長く、前足部5fと中足部5mの合計長さよりも短い。なお、下駄20では右足用と左足用とが左右対称に形成されており、図5(b)では、左足用の記載を省略している。
【0036】
台21の表側面21aは、全面が平坦領域となっている。台21の裏側面21bでは、遠位横アーチ部5xに対応する領域だけに、歯24が1つ設けられている。上面視において、台21の前後方向の寸法Yを基準にして、歯24の前後方向の中心位置は、台21の前端から0.4Y~0.6Yの範囲(例えば0.5Yの位置近傍)にある。歯24は、足幅方向(左右方向)に延びている。なお、台21の裏側面21bにおいて、遠位横アーチ部5xに対応する領域に設ける歯24の数は、2つ以上であってもよい。この場合、本実施形態に比べて前後方向の寸法が小さい歯24を、前後に隣接して並べることができる。
【0037】
台21の表側面21aは、図6に示すように、歯24の先端面24aに対し、足部5の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。本実施形態では、歯24の高さが足部5の外側ほど高くなるように足幅方向に変化させることにより、台21の表側面21aは、足部5の外側が高くなるように足幅方向に傾斜している。台21の厚みは、足幅方向に一定である。なお、台21の厚みが足部5の外側ほど厚くなるように足幅方向に変化させることにより、台21の表側面21aが足部5の外側が高くなるように足幅方向に傾斜させてもよい。
【0038】
歯24の先端面24aに対する、台21の表側面21aの足幅方向の傾斜角βについて、5°<β<10°の関係を満たす。傾斜角βは、好ましくは6°以上9°以下(例えば、7°)である。傾斜角βが5°以下の場合は、足部5のマルアライメントの改善効果が小さい。一方、傾斜角βが10°以上の場合は、上述したように、使用者によっては履物10を継続使用することができない虞がある。なお、本実施形態では、傾斜角βが、足幅方向に略一定である。
【0039】
続いて、歯24の寸法について、歯24の高さ(平均高さ)は、2cm未満である。この高さは、好ましくは1cm以上2cm未満である。また、隆起部15の前後方向の寸法は、例えば2.5cm以上3.5cm以下である。
【0040】
[本実施形態の効果等について]
本実施形態では、下駄20の使用者が足部5を台21に載せて、歯24のみで体重を支える状態にすると、横アーチ支持状態となり、前足部5を回内方向へ誘導する荷重が足部に作用する。そして、上述のリハビリ運動を繰り返すことで、正しい骨の配列における正しい筋肉(腓骨筋、後脛骨筋、腓腹筋などの足関節周囲筋群)の使い方を覚え込ませることができ、前足部5fの回外及びマルアライメントが徐々に改善されていく。本実施形態によれば、前足部5fの回外及びマルアライメントの改善に有用な下駄20を提供することができる。また、足部5のアライメントと筋活動が正常化することにより、歩行や姿勢も改善され、足部5に関わらず各関節の痛みや機能障害も改善することもできる。また、下駄20は台21の表側面21aが平坦面であるため、使用者にとっても無理なくリハビリ運動を継続できる。
【実施例0041】
以下、上述の傾斜角αを変化させた履物(下駄)の実施例及び比較例について説明を行う。なお、本発明は、その主旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1は、傾斜角βが7.5°の下駄である。実施例2は、傾斜角βが5°の下駄である。実施例3は、傾斜角βが10°の下駄である。なお、実施例1の下駄は、上述の実施形態2に係る下駄であり、実施例2,3の下駄は、傾斜角βのみが実施例1とは異なっている。
【0043】
本願発明者は、後述する検査1で足部の回内可動域が過剰であった被験者12名を対象として、下駄の実証試験を行った。実証試験では、実施例1~3の各下駄に対し、4名の被験者を割り当てた。各被験者には、4週間のリハビリ期間に亘って、毎日10分のリハビリ運動を行うことを課した。被験者は、整骨院又は自宅でリハビリ運動を行った。なお、実施例3では、2名の被験者が途中でリハビリを中止せざるを得なくなった。中止したのは、1名はリハビリ運動の際の不安定さを訴えたためであり、もう1名は途中で痛みが出たためである。
【0044】
リハビリ期間の終了後、4週間のリハビリ運動を終了した10名の被験者に対し、立位距骨下関節角度チェック(検査1)、片足立ち不安定性チェック(検査2)、及び、立位アライメントチェック(検査3)を行った。検査1は、足部の回内可動域が過剰になっていないかを確認するものである。検査2は、7秒間の片足立ちができるか否かを確認するものである。検査3は、目視及び写真にて、踵上に頭の位置があるか否かを確認するものである。各検査の結果を表1に示す。
【表1】
【0045】
表1によれば、実施例1-3の中では、実施例1の改善効果が最も良好であった。実施例2、3は、実施例1より劣るが改善効果が見られた。なお、実施形態1の履物(サンダル)については実証試験を行っていないが、使用者が履いた時に足部の骨の配列の崩れを矯正できる点は実施形態2の下駄と同じであるため、実施形態2と同様の結果となることが推測される。
【0046】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、履物10は、サンダル以外の種類(例えば、スリッパ、靴)であってもよい。
【0047】
上述の実施形態において、下駄20の台21は、下駄20のサイズに合った足部5の前足部5fと中足部5mと後足部5hを載せることができる大きさを有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、足部の整体などに利用可能な履物等に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
5 足部
5x 遠位横アーチ部
10 履物
11 底部
12a,12b ベルト
15 隆起部
15a 頂部
20 下駄
21 台
24 歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7