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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136401
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
F04C2/10 341F
F04C2/10 341Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021035989
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】冬木 潤
【テーマコード(参考)】
3H041
【Fターム(参考)】
3H041AA02
3H041BB03
3H041CC13
3H041CC15
3H041CC19
3H041DD05
3H041DD08
3H041DD38
(57)【要約】
【課題】オイルポンプの長寿命化に寄与する技術を提供すること。
【解決手段】オイルポンプ(10)は、回転軸(20)に固定されており回転軸(20)と共に回転するインナーロータ(30)と、インナーロータ(30)を囲っているアウターロータ(11)と、インナーロータ(30)及びアウターロータ(11)を収納している収納部材(40)と、収納部材(40)を塞いでいる閉塞面(53)を有する閉塞部材(50)と、を備えている。収納部材(40)は、回転軸(20)を回転可能に片持ち支持している支持孔(41)を有している。インナーロータ(30)の閉塞部材(50)側の端面(31)を含む平面を基準面とする。基準面は、インナーロータ(30)の端面(31)の外周縁(32)よりも径方向内側にて、閉塞面(53)側へ突出している突出部(24)を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に挿入または固定されており前記回転軸と共に回転するインナーロータと、
前記インナーロータを囲っているアウターロータと、
前記インナーロータ及び前記アウターロータを収納している収納空間及び前記回転軸を回転可能に片持ち支持している支持孔を有している収納部材と、
前記収納空間を塞いでいる閉塞面を有する閉塞部材と、を備え、
前記インナーロータの前記閉塞部材側の端面を含む平面を基準面とし、
前記基準面は、前記インナーロータの前記端面の外周縁よりも径方向内側にて、前記閉塞面側へ突出している突出部を有しているオイルポンプ。
【請求項2】
前記突出部は、前記回転軸の前記端面が、前記インナーロータの前記端面よりも突出することにより、構成されている、請求項1に記載のオイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片持ち支持された回転軸を備えるオイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンには、エンジンのクランクシャフトの回転力を駆動源としており、エンジン内のオイルを循環させるオイルポンプが設けられている。このようなオイルポンプに関する従来技術として特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示されたオイルポンプは、ピストンの往復運動により発生するエンジンの二次振動を抑制するバランサ装置に設けられている。バランサ装置は、エンジンのクランクシャフトの軸線と平行に延びている一対のバランサシャフトを備えている。各々のバランサシャフトは、バランサシャフトの周方向について偏在して配置されたバランサウエイトを有している。
【0004】
バランサシャフトが、ピストンの往復運動による慣性力を打ち消し、エンジンの二次振動が抑制される。
【0005】
オイルポンプは、一対のバランサシャフトのうちの一方と連結している回転軸と、回転軸に固定されており回転軸と共に回転するインナーロータと、インナーロータを囲っているアウターロータと、インナーロータを収納している収納空間を有する収納部材と、収納空間を塞いでいる閉塞面を有する閉塞部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6336115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、回転軸は、収納部材に形成された支持孔のみによって片持ち支持されている場合がある。この場合、閉塞部材は回転軸を支持していない。回転軸の両端が支持される両持ち支持の場合と比較すると、片持ち支持された回転軸は傾きやすい。回転軸が傾くと、回転軸に固定されたインナーロータも傾く。
【0008】
インナーロータが傾くと、インナーロータの閉塞部材側の端面の外周縁と、閉塞部材とが接触する。インナーロータと閉塞部材とが、互いに接触すると、接触した部位は摩耗し、発熱も生じる。
【0009】
本発明は、オイルポンプの長寿命化に寄与する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1による発明によれば、
回転軸と、
前記回転軸に挿入または固定されており前記回転軸と共に回転するインナーロータと、
前記インナーロータを囲っているアウターロータと、
前記インナーロータ及び前記アウターロータを収納している収納空間及び前記回転軸を回転可能に片持ち支持している支持孔を有している収納部材と、
前記収納空間を塞いでいる閉塞面を有する閉塞部材と、を備え、
前記インナーロータの前記閉塞部材側の端面を含む平面を基準面とし、
前記基準面は、前記インナーロータの前記端面の外周縁よりも径方向内側にて、前記閉塞面側へ突出している突出部を有しているオイルポンプが提供される。
【0011】
請求項2に記載のごとく、好ましくは、前記突出部は、前記回転軸の前記端面が、前記インナーロータの前記端面よりも突出することにより、構成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1では、オイルポンプは、回転軸に挿入又は固定されており回転軸と共に回転するインナーロータと、インナーロータを囲っているアウターロータと、インナーロータ及びアウターロータを収納している収納部材と、収納空間を塞いでいる閉塞面を有する閉塞部材と、を備えている。収納部材は、回転軸を回転可能に片持ち支持している支持孔を有している。インナーロータの閉塞部材側の端面を含む平面を基準面とする。基準面は、インナーロータの端面の外周縁よりも径方向内側にて、閉塞面側へ突出している突出部を有している。
【0013】
仮に、基準面から突出している部位がない場合、回転軸の軸線が傾くと、インナーロータのなかの最も径方向外側の部位である外周縁が、閉塞部材に接触する。
【0014】
基準面から突出した突出部が設けられている場合、回転軸の軸線が傾くと、突出部の周縁が閉塞部材に接触する。突出部の周縁は、インナーロータの外周縁よりも、径方向内側に位置しているため、周縁の回転速度は、外周縁の回転速度よりも小さい。互いに接触した際に生じる荷重Pと周方向の速度Vの積であるPV値を小さくすることができる。オイルポンプを長寿命化することができる。
【0015】
請求項2では、突出部は、回転軸の端面全体が、インナーロータの端面よりも突出することにより、構成されている。回転軸の端面と、インナーロータの端面とが同一平面上に位置するオイルポンプと比較すると、回転軸の軸方向の長さを僅かに長く設定するだけで、突出部を構成することができる。簡単な構成でオイルポンプを長寿命化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1のオイルポンプの要部の断面図である。
図2図1に示されたオイルポンプのなかの、閉塞部材と、インナーロータ及び回転軸の斜視図である。
図3】回転軸の軸線に沿う方向から見た、窪み孔の形状を説明する図である。
図4図4Aは、従来技術によるオイルポンプの動作を説明する図である。図4Bは、実施例1のオイルポンプの効果を説明する図である。
図5図5Aは、実施例2のオイルポンプの要部の断面図である。図5Bは、実施例3のオイルポンプの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0018】
<実施例1>
図1には、実施例によるオイルポンプ10の要部が示されている。このオイルポンプ10は、いわゆる内接歯車式のポンプであり、回転軸20と、回転軸20に固定されており回転軸20の軸線ALを中心として回転可能なインナーロータ30と、インナーロータ30を囲っているアウターロータ11と、インナーロータ30及びアウターロータ11を収納しているハウジング12と、を備えている。
【0019】
回転軸20は、互いに径の異なる大径部21と小径部22とを有している。大径部21の端部は、他の軸部材(図示なし)と連結するための連結溝21aを有している。
【0020】
ハウジング12は、インナーロータ30及びアウターロータ11を収納している収納空間40aを有する収納部材40と、収納空間40aを塞いでいる閉塞部材50と、を備えている。
【0021】
収納部材40は、回転軸20の大径部21を回転可能に支持している支持孔41を有している。回転軸20の大径部21は支持孔41を貫通している。閉塞部材50は回転軸20を支持していない。即ち、回転軸20は、収納部材40の支持孔41により片持ち支持されている。インナーロータ30は、小径部22及び大径部21の一部と嵌合している。
【0022】
(突出部)
図1及び図2を参照する。回転軸20の小径部22の閉塞部材50側の端面23(閉塞部材50を向いている面)は、インナーロータ30の閉塞部材50側の端面31(閉塞部材50を向いている面)よりも閉塞部材50側に位置している。インナーロータ30の端面31を含む平面を基準面とする。小径部22のうち、インナーロータ30の端面31(基準面)よりも、閉塞部材50側へ突出している部位を突出部24とする。
【0023】
図2及び図3を参照する。閉塞部材50は、汲み上げられたオイルを吸入する吸入ポート51と、インナーロータ30及びアウターロータ11により汲み上げられたオイルが吐出される吐出ポート52と、有する。
【0024】
(窪み孔)
閉塞部材50のうち、収納部材40側を向いており、収納空間40aを塞ぐ面を閉塞面53とする。閉塞面53は、閉塞面53よりも窪んでいる窪み孔60を有している。窪み孔60は、閉塞面53のなかで軸線ALを含むような位置に形成されている。
【0025】
窪み孔60の縁61は、最も吸入側(In)に位置している底部62と、底部62の両端から吐出側(Ou)へ互いに平行に延びている一対の直線部63,63と、を有している。各々の直線部63を吐出側へ延長した線を延長線63aとする。窪み孔60の縁61は、一対の延長線63a,63aから互いに離れる方向に膨らんだ形状の一対の膨出部64,64を有している。底部62と対向している縁を対向部65とする。
【0026】
(窪み孔と突出部)
軸線ALに沿う方向から見て(図3参照)、窪み孔60に対して、小径部22の端面23の円状の周縁25(突出部24の周縁25)の一部が重なっている。窪み孔60に対して重なっている円弧状の部位26,27は、軸線ALが傾いた際に窪み孔60に進入可能である。吸入側に位置している円弧状の部位を吸入側進入部26とし、吐出側に位置している円弧状の部位を吐出側進入部27とする。吐出側進入部27の円弧の長さは、吸入側進入部26の円弧の長さよりも長い。
【0027】
(実施例の効果)
図4Aには、従来技術のオイルポンプ100の回転軸101及びインナーロータ102が示されている。回転軸101の閉塞部材側の端面103と、インナーロータ102の閉塞部材側の端面104とは、互いに同一平面状に位置している(互いに段差がない面一の状態)。回転軸101の端面103は、インナーロータの端面に対して突出していない。軸線ALが吸入側に傾くとインナーロータの外周縁105が閉塞面106に接触する。
【0028】
図4Bには、実施例1によるオイルポンプ10のインナーロータ30及び回転軸20が示されている。軸線ALが傾くと、回転軸20の突出部24の端面23の周縁25が閉塞部材50の閉塞面53に接触する。突出部24の端面23の周縁25は、インナーロータ30の外周縁32よりも径方向内側に位置しているため、周縁25の回転速度は、外周縁32の回転速度よりも小さい。互いに接触した際に生じる荷重Pと周方向の速度Vの積であるPV値が小さくなる。オイルポンプ10を長寿命化することができる。
【0029】
なお、インナーロータ30の外周縁32は、突出部24の周縁25と共に閉塞面53に接触しているが、突出部24の周縁25のみが閉塞面53に接触してもよい。
【0030】
図2及び図3を参照する。閉塞部材50の閉塞面53には、窪み孔60が形成されている。回転軸20の軸線ALが吸入側(In)に傾くと、吸入側進入部26は、窪み孔60に進入すると共に、吸入側進入部26の両端26a,26aは、窪み孔60の縁61(直線部63)に接触する。仮に、窪み孔60がない場合、回転軸20の端面23の周縁25のなかの1点が接触する。窪み孔60がある場合、回転軸20の吸入側進入部26の両端26a,26a(2点)が接触する。回転軸20の周縁25と、閉塞面53とが、互いに接触する点が増えるため、互いに押し合う力が分散され、閉塞部材50の摩耗を抑制できる。オイルポンプ10をさらに長寿命化させることができる。
【0031】
さらに、窪み孔60が設けられていない場合と比較すると、閉塞面53に対して回転軸20の端面23が摺動する摺動面積が減り、フリクション(トルク)が下がることにより、燃費向上に貢献する。特に、吐出側進入部27の長さは、吸入側進入部26の長さよりも長いため、吐出側においてより大きく摺動面積を減らしフリクション(トルク)が下がることにより、燃費向上に貢献する。
【0032】
なお、吐出ポート52内のオイルの圧力は、吸入ポート51内のオイルの圧力よりも高い。回転軸20の軸線ALは吐出側に傾く確率は低いが、仮に回転軸20の軸線ALが吐出側(Ou)に傾き、窪み孔60に対して吐出側進入部27が進入した場合、吐出側進入部27の両端27a,27aが膨出部64,64に接触する。回転軸20の軸線ALは吐出側に傾く確率は低いため、両端27a,27a間の寸法は、両端26a,26a間の寸法よりも長くても本発明の効果を奏する。
【0033】
軸線ALに沿う方向から見て(図3参照)、窪み孔60の形状は、回転軸20の周縁25の一部と重なり(窪み孔60の一部が回転軸20の周縁25に囲われた領域に位置した状態)、軸線ALが傾いた際にその一部が進入し、かつ、その進入した部位の両端が窪み孔60の縁61に接触し、上記の効果を発揮する構成ならば窪み孔60の形状は問わない。
【0034】
軸線ALに沿う方向から見て(図3参照)、閉塞面53は、窪み孔60の縁61の外側、且つ、回転軸20の周縁25の内側に位置する2つの領域53a,53aを有している。これらの領域53a,53aに対して、回転軸20の端面23が摺動可能なため、回転軸20の回転が安定する。領域53aは、3つ以上あってもよい。
【0035】
図4Bを参照する。突出部24は、回転軸20の端面23全体が、インナーロータ30の端面31よりも突出することにより、構成されている。図4Aに示された従来技術と比較して、回転軸20の軸方向の長さを僅かに長く設定するだけで、突出部24を構成することができる。簡単な構成でオイルポンプ10を長寿命化できる。
【0036】
なお、突出部は、基準面(端面31を含む平面)よりも突出しているものならば、実施例1の構成に限られない。以下に説明するように、突出部をインナーロータの端面又は回転軸の端面に形成してもよい。突出部は、軸線ALを中心とした径が一定の環状又は円柱状の部位といえる。
【0037】
<実施例2>
図5Aには、実施例2によるオイルポンプ10Aのインナーロータ30A及び回転軸20Aが示されている。回転軸20Aの閉塞部材50側の端面23は、基準面13上に位置している。回転軸20Aは、閉塞部材50側に突出した突出部28を有している。突出部28の径は、小径部22よりも小さく設定されている。
【0038】
<実施例3>
図5Bには、実施例3によるオイルポンプ10Bのインナーロータ30B及び回転軸20Bが示されている。回転軸20Bの閉塞部材50側の端面23は、基準面13上に位置している。インナーロータ30Bの端面31には、軸線ALを中心とする環状の環状部33が形成されている。環状部33は、基準面13よりも閉塞部材50側に突出している。
【0039】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のオイルポンプは、車両に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0041】
10,10A,10B…オイルポンプ
13…基準面
20,20A,20B…回転軸
23…回転軸の閉塞部材側の端面
24…突出部
25…周縁
28…突出部
30…インナーロータ
31…インナーロータの閉塞部材側の端面(基準面)
32…外周縁
33…突出部
40…収納部材
40a…収納空間
41…支持孔
50…閉塞部材
53…閉塞面
図1
図2
図3
図4
図5