(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136472
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】車両の変速指示装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/42 20060101AFI20220913BHJP
B60K 23/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
F16H63/42
B60K23/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036100
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃裕
【テーマコード(参考)】
3D036
3J552
【Fターム(参考)】
3D036DA03
3D036DA07
3J552MA04
3J552MA05
3J552MA11
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA59
3J552QC03
3J552SB02
3J552UA10
3J552VA74W
3J552VA76W
3J552VC06W
3J552VD00W
(57)【要約】
【課題】運転者の要求度の高さに応じて、燃料消費量を低減させる効果を高めることができる車両の変速指示装置を提供すること。
【解決手段】エンジン2と、複数の変速段のなかで任意の1つの変速段を形成する手動変速機4と、エンジン2により駆動される補機と、を備える車両1に搭載され、手動変速機4の現在の変速段より燃料消費量の低減に有利な変速段である推奨変速段が有る場合、推奨変速段に変速するよう変速指示報知部20により運転者に変速指示を報知し、変速指示の報知後、運転者が所定時間内に変速操作を実施した場合に、補機の動作を所定時間停止させる制御部7を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される補機と、
前記エンジンに連結される手動変速機と、が搭載された車両の変速指示装置であって、
前記手動変速機の現在の変速段より燃料消費量の低減に有利な変速段である推奨変速段が有る場合、前記推奨変速段に変速するよう運転者に変速指示を報知し、
前記変速指示の報知後、運転者が所定時間内に変速操作を実施した場合に、前記補機の動作を所定時間停止させる制御部を有する車両の変速指示装置。
【請求項2】
前記補機は、空調装置のコンプレッサ、空調装置のブロワファン、ラジエータファンの少なくとも1つである請求項1に記載の車両の変速指示装置。
【請求項3】
前記車両は、前記エンジンと前記手動変速機との動力伝達を伝達状態から遮断状態まで変化させるクラッチを操作するクラッチペダルを備え、
前記制御部は、前記クラッチペダルの操作に基づいて前記変速操作が実施されたことを検出する請求項1または請求項2に記載の車両の変速指示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の変速指示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、手動変速操作が可能な変速機が搭載された自動車に用いられ、自動車の運転状態に応じて求められる変速機の最適変速段と運転者が選択している変速段とが異なっている変速指示条件が成立した場合に、変速段を最適変速段に向けて操作するよう運転者に変速指示を行なう変速指示装置が開示されている。
【0003】
このような変速指示装置には、燃料消費量を低減させるために最適な変速段へ変速指示を行なう変速指示装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転者は、燃料消費量の低減を重視して変速指示に従って変速を行なう場合と、燃料消費量の低減より車両の走行性や快適性の向上を重視して変速指示に従わずに変速しない場合とがある。
【0006】
燃料消費量の低減に対する運転者の要求度が高い場合には、燃料消費量を低減させる効果をより一層高めることが求められる。
【0007】
そこで、本発明は、運転者の要求度の高さに応じて、燃料消費量を低減させる効果を高めることができる車両の変速指示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、エンジンにより駆動される補機と、前記エンジンに連結される手動変速機と、が搭載された車両の変速指示装置であって、前記手動変速機の現在の変速段より燃料消費量の低減に有利な変速段である推奨変速段が有る場合、前記推奨変速段に変速するよう運転者に変速指示を報知し、前記変速指示の報知後、運転者が所定時間内に変速操作を実施した場合に、前記補機の動作を所定時間停止させる制御部を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、運転者の要求度の高さに応じて、燃料消費量を低減させる効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両の変速指示装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両の変速指示装置の制御システムのブロック図である
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る車両の変速指示装置の変速指示制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両の変速指示装置は、エンジンにより駆動される補機と、エンジンに連結される手動変速機と、が搭載された車両の変速指示装置であって、手動変速機の現在の変速段より燃料消費量の低減に有利な変速段である推奨変速段が有る場合、推奨変速段に変速するよう運転者に変速指示を報知し、変速指示の報知後、運転者が所定時間内に変速操作を実施した場合に、補機の動作を所定時間停止させる制御部を有するよう構成されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の変速指示装置は、運転者の要求度の高さに応じて、燃料消費量を低減させる効果を高めることができる。
【実施例0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る車両の変速指示装置について詳細に説明する。
【0014】
図1において、本発明の一実施例に係る車両の変速指示装置を搭載した車両1は、内燃機関型のエンジン2と、クラッチ3と、手動変速機4と、ギア機構5と、駆動輪6と、制御部7とを含んで構成されている。
【0015】
エンジン2は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なうとともに、圧縮行程及び膨張行程の間に燃焼室で点火を行なう4サイクルのエンジンによって構成されている。
【0016】
クラッチ3は、エンジン2と、手動変速機4との間に設けられ、エンジン2から手動変速機4に伝達されるトルクを変化させるようになっている。詳細には、クラッチ3は、クラッチペダル12の操作量に応じて、エンジン2の出力する回転を手動変速機4に伝達する伝達状態と、エンジン2から手動変速機4への回転の伝達を遮断する遮断状態との間で、エンジン2から手動変速機4への回転の伝達度合を変化させるようになっている。クラッチペダル12が踏み込まれていない状態では、クラッチ3は伝達状態となり、クラッチペダル12が踏み込まれている状態では、クラッチ3は遮断状態となる。
【0017】
手動変速機4は、エンジン2から駆動輪6までの動力伝達経路に設けられている。手動変速機4は、複数の変速段のなかで任意の1つの変速段を形成することができるようになっている。詳細には、手動変速機4は、運転者によるシフトレバー16の操作に応じて、形成する変速段を選択するようになっている。
【0018】
ギア機構5は、図示しないディファレンシャルギア及びドライブシャフトなどによって構成され、駆動輪6に動力を伝達するようになっている。
【0019】
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、各種バックアップデータを格納するためのフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0020】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部7として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0021】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における制御部7として機能する。
【0022】
制御部7の入力ポートには、エンジン2の機関回転数を検出するエンジン回転数センサ10と、車速を検出する車速センサ11と、クラッチペダル情報としてクラッチペダル12の操作量を検出するクラッチポジションセンサ13と、アクセルペダル14の操作量(以下、「アクセル開度」ともいう)を検出するアクセル開度センサ15とを含む各種センサ類が接続されている。
【0023】
また、制御部7の出力ポートには、インストルメントパネル等に設けられた変速指示報知部20と、エンジン2の吸入空気量を調節するスロットルバルブ30と、エンジン2の燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ31とを含む各種制御対象類が接続されている。
【0024】
車両1は、空調装置としての図示しないエアコンと、エンジン2の冷却水を冷やす図示しないラジエータとを備えている。
【0025】
エアコン制御部21は、エアコンの補機としての図示しないコンプレッサの駆動制御を行なう。
【0026】
ブロワファン制御部22は、エアコンの補機としての図示しないブロワファンの駆動制御を行なう。
【0027】
ラジエータファン制御部23は、ラジエータに風を送る、補機としての図示しないラジエータファンの駆動制御を行なう。
【0028】
制御部7は、エアコン制御部21、ブロワファン制御部22及びラジエータファン制御部23と、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行なう。
【0029】
制御部7は、例えば、エアコン制御部21へ、コンプレッサの停止を要求する動作停止要求や、コンプレッサの停止の解除を要求する動作停止解除要求などを送信する。
【0030】
制御部7は、エアコン制御部21から、コンプレッサが作動しているか否かの情報を含むエアコン作動情報を取得することができる。
【0031】
制御部7は、例えば、ブロワファン制御部22へ、ブロワファンの停止を要求する動作停止要求や、ブロワファンの停止の解除を要求する動作停止解除要求などを送信する。
【0032】
制御部7は、ブロワファン制御部22から、ブロワファンが作動しているか否かの情報であるブロワファン作動情報を取得することができる。
【0033】
制御部7は、例えば、ラジエータファン制御部23へ、ラジエータファンの停止を要求する動作停止要求や、ラジエータファンの停止の解除を要求する動作停止解除要求などを送信する。
【0034】
制御部7は、ラジエータファン制御部23から、ラジエータファンが作動しているか否かの情報であるラジエータファン作動情報を取得することができる。
【0035】
制御部7は、
図2に示すように、アクセル開度情報、車速情報、エンジン回転数情報、クラッチペダル情報、エアコン作動情報、ブロワファン作動情報、ラジエータファン情報を含む情報が入力される。
【0036】
制御部7は、このような各種センサ類から得られる情報に基づいて、各種制御対象類を制御するようになっている。例えば、制御部7は、アクセル開度情報に基づきエンジン2に要求される出力トルクを求め、エンジン2がその出力トルクを出力するようにスロットルバルブ30の開度(以下、「スロットル開度」ともいう)やインジェクタ31による燃料噴射量を制御するようになっている。
【0037】
制御部7は、アクセル開度情報と、車速情報と、エンジン回転数情報とにより、エンジン2の燃料消費量が最も少ない手動変速機4の変速段を推奨変速段として算出する。
【0038】
制御部7は、手動変速機4が現在形成している変速段が推奨変速段と異なる場合、推奨変速段に切り替えるよう、変速指示報知部20により運転者に変速指示を報知する。
【0039】
制御部7は、変速指示報知部20による変速指示の報知後、所定時間内に運転者が変速操作を実施した場合に、コンプレッサ、ブロワファン、ラジエータファンなどの補機の動作を所定時間停止させる。ここで、補機とは、エンジン2の動力によって作動する、エンジン2の駆動に対する負荷となる機器類のことである。
【0040】
制御部7は、例えば、クラッチペダル情報により運転者が変速操作を実施したか否かを判定する。制御部7は、例えば、シフトレバー16のシフト位置がニュートラル位置になったことや、手動変速機4が推奨変速段を形成していることや、アクセル開度の変化パターンが変速時の変化パターンと同様になっていることなどにより、運転者が変速操作を実施したことを判定してもよい。
【0041】
制御部7は、エアコン作動情報によりコンプレッサが作動しているか否かを判定し、コンプレッサが作動している場合のみ、コンプレッサの動作停止要求を送信するようにしてもよい。エアコン作動情報は、コンプレッサが作動していることを検出するセンサにより取得してもよい。
【0042】
制御部7は、ブロワファン作動情報によりブロワファンが作動しているか否かを判定し、ブロワファンが作動している場合のみ、ブロワファンの動作停止要求を送信するようにしてもよい。ブロワファン作動情報は、ブロワファンが作動していることを検出するセンサにより取得してもよい。
【0043】
制御部7は、ラジエータファン作動情報によりラジエータファンが作動しているか否かを判定し、ラジエータファンが作動している場合のみ、ラジエータファンの動作停止要求を送信するようにしてもよい。ラジエータファン作動情報は、ラジエータファンが作動していることを検出するセンサにより取得してもよい。
【0044】
以上のように構成された本実施例に係る車両の変速指示装置による変速指示制御処理について、
図3を参照して説明する。なお、以下に説明する変速指示制御処理は、手動変速機4が現在形成している変速段が推奨変速段と異なるため変速指示を行なう必要があるときに開始される。
【0045】
ステップS1において、制御部7は、コンプレッサ、ブロワファン、ラジエータファンなどの補機が駆動されているか否かの作動情報を取得する。ステップS1の処理を実行した後、制御部7は、ステップS2の処理を実行する。
【0046】
ステップS2において、制御部7は、推奨変速段に切り替えるよう、変速指示報知部20により運転者に変速指示を報知する。ステップS2の処理を実行した後、制御部7は、ステップS3の処理を実行する。
【0047】
ステップS3において、制御部7は、クラッチペダル情報から、所定時間内に運転者が変速操作したか否かを判定する。
【0048】
所定時間内に運転者が変速操作したと判定した場合には、制御部7は、ステップS4の処理を実行する。所定時間内に運転者が変速操作していないと判定した場合には、制御部7は、変速指示制御処理を終了する。
【0049】
ステップS4において、制御部7は、ステップS1において取得した作動情報に基づいて駆動されている補機の制御部へ補機の動作停止要求を送信する。ステップS4の処理を実行した後、制御部7は、ステップS5の処理を実行する。
【0050】
ステップS5において、制御部7は、動作停止要求を送信してから一定時間経過したか否かを判定する。
【0051】
一定時間経過したと判定した場合には、制御部7は、ステップS6の処理を実行する。一定時間経過していないと判定した場合には、制御部7は、ステップS5の処理を実行する。
【0052】
ステップS6において、制御部7は、ステップS4において動作停止要求を送信した補機の制御部へ補機の動作停止解除要求を送信する。ステップS6の処理を実行した後、制御部7は、変速指示制御処理を終了する。
【0053】
このように、本実施例では、制御部7は、変速指示報知部20による変速指示の報知後、所定時間内に運転者が変速操作を実施した場合に、コンプレッサ、ブロワファン、ラジエータファンなどの補機の動作を所定時間停止させる。
【0054】
変速指示の報知後、運転者が所定時間内に変速操作を実施した場合、運転者は燃料消費量の低減を重視していると想定される。このため、補機の動作を停止させれば、より一層燃料消費量を低減させる効果を高めることができる。
【0055】
一方、変速指示の報知後、運転者が所定時間内に変速操作を実施しなかった場合、運転者は燃料消費量の低減より車両1の走行性や快適性を重視していると想定される。このため、補機を通常通り動作させ、エンジン2の冷却性や車両1の快適性を維持させる。
【0056】
補機は、エアコンのコンプレッサ、エアコンのブロワファン、ラジエータファンの少なくとも1つである。
【0057】
エアコンのコンプレッサ、エアコンのブロワファン、ラジエータファンは、動作を短時間停止させても車両1の快適性やエンジン2の冷却性に大きな影響を及ぼすことがない一方、これらの補機の動作を停止させる頻度を増やすことで燃料消費量の低減効果を高めることができる。
【0058】
また、制御部7は、例えば、クラッチペダル情報により運転者が変速操作を実施したか否かを判定する。
これにより、簡素な構成で変速操作の実施を検出することができる。
【0059】
なお、本実施例においては、燃料消費量を低減させるため、エンジン2にかかる負荷を停止させたが、変速中の回生発電などの車両1の安全上動作が停止しても問題ない、燃料消費量を増大させる全ての制御を停止させるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施例においては、補機の動作停止を所定時間経過後に解除させたが、クラッチ3の係合や、変速段の判明など、変速が完了したことをトリガとして補機の動作停止を解除するようにしてもよい。
【0061】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部7が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0062】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。