(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136487
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】計測システム、ADモジュール、ネットワークモジュール、およびデータ送信方法
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20220913BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
H04Q9/00 311J
G08C15/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036122
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 洋之
【テーマコード(参考)】
2F073
5K048
【Fターム(参考)】
2F073AA11
2F073AA19
2F073AA21
2F073AB01
2F073AB04
2F073AB05
2F073BB01
2F073BB04
2F073BB07
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC02
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2F073CC12
2F073CD02
2F073CD11
2F073DD02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE04
2F073EE05
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2F073EF01
2F073EF03
2F073EF08
2F073EF09
2F073FF01
2F073FF14
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG04
2F073GG01
2F073GG05
2F073GG08
2F073GG09
5K048BA34
5K048DA01
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB10
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】
【課題】計測周期が互いに異なる複数のデータであっても、上位装置へのデータ送信動作を効率よく行う。
【解決手段】ADモジュール10が、デジタルデータごとに当該デジタルデータの送信状況を記憶回路15に保存し、ネットワークモジュール20が、デジタルデータを送信する際、ADモジュールに蓄積されているデジタルデータのうち、当該送信状況が未送信を示すデジタルデータをADモジュール10から取得して送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより計測対象から固有の計測周期で計測して得られたアナログデータをデジタルデータにAD変換して記憶回路に蓄積するADモジュールと、
予め設定されている送信周期に基づいて、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータを取得して送信するように構成されたネットワークモジュールとを備え、
前記ADモジュールは、前記デジタルデータごとに当該デジタルデータの送信状況を前記記憶回路に保存し、
前記ネットワークモジュールは、前記デジタルデータを送信する際、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータのうち、当該送信状況が未送信を示すデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信する
ことを特徴とする計測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計測システムにおいて、
前記ADモジュールは、前記計測対象ごとに前記デジタルデータの処理回数を計数し、当該デジタルデータの送信状況として前記記憶回路に保存し、
前記ネットワークモジュールは、前記デジタルデータを送信する際、前記処理回数が更新されているデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信する
ことを特徴とする計測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の計測システムにおいて、
前記ADモジュールは、前記記憶回路のうち送信済みのデジタルデータを、予め設定されている異常値に書き換えることにより、当該異常値を前記デジタルデータの送信状況として前記記憶回路に保存し、
前記ネットワークモジュールは、前記デジタルデータを送信する際、前記異常値を示していないデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信する
ことを特徴とする計測システム。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の計測システムで用いられるADモジュール。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の計測システムで用いられるネットワークモジュール。
【請求項6】
センサにより固有の計測周期で計測して得られたアナログデータをデジタルデータに変換して記憶回路に蓄積するADモジュールと、予め設定されている送信周期に基づいて、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータを取得して送信するように構成されたネットワークモジュールとを備える計測システムで用いられるデータ送信方法であって、
前記ADモジュールが、前記デジタルデータごとに当該デジタルデータの送信状況を前記記憶回路に保存するステップと、
前記ネットワークモジュールが、前記デジタルデータを送信する際、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータの送信状況を確認し、当該送信状況が未送信を示すデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信するステップと
を備えることを特徴とするデータ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサで計測して得られたデータを収集して上位装置へ送信するための計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT用のセンサおよび次世代の新しいセンサが開発されているが、社会実装に繋がるケースが少ない。その一つの要因として、センサで計測して得られたデータを上位装置へ送信する既存の計測システムにおいて、新たなセンサのデータに対応するための構成が十分ではないことが考えられる。
【0003】
従来、このような課題を解決する技術として、特許文献1では、センサ、ADモジュール、およびネットワークモジュールを、USB(Universal Serial Bus)などの単一の汎用インターフェースを介して接続した計測システムが提案されている。この計測システムでは、ADモジュールが、センサにより計測して得られたアナログデータをデジタルデータにAD変換して蓄積し、ネットワークモジュールが、ADモジュールに蓄積されているデジタルデータを収集して上位装置へ送信する。これにより、新しく開発したセンサを既存のADモジュールに接続し、あるいは新たに開発したADモジュールをネットワークモジュールに接続するだけで、計測システムを簡単かつ低コストで実現することができ、新しく開発したセンサの社会実装を容易に実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1に記載の構成を採用して、複数のセンサを用いて複数の計測対象に対応するためには、それぞれのセンサに対応したADモジュールを複数接続するか、または、複数のセンサを接続できるADモジュールを使用することが想定される。したがって、計測システムとしてモジュールの汎用性を確保するためには、各種のセンサやADモジュールに対応可能であることが求められる。この際、各データの計測周期が互いに異なる場合、上位装置へのデータの送信周期もこれに連動して複雑化する可能性があり、データ送信動作が大きく非効率化するという問題点があった。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、計測周期が互いに異なる複数のデータであっても、上位装置へのデータ送信動作を効率よく行うことができる計測技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明にかかる計測システムは、センサにより計測対象から固有の計測周期で計測して得られたアナログデータをデジタルデータにAD変換して記憶回路に蓄積するADモジュールと、予め設定されている送信周期に基づいて、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータを取得して送信するように構成されたネットワークモジュールとを備え、前記ADモジュールは、前記デジタルデータごとに当該デジタルデータの送信状況を前記記憶回路に保存し、前記ネットワークモジュールは、前記デジタルデータを送信する際、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータのうち、当該送信状況が未送信を示すデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信するように構成したものである。
【0008】
また、本発明にかかる上記計測システムの一構成例は、前記ADモジュールが、前記計測対象ごとに前記デジタルデータの処理回数を計数し、当該デジタルデータの送信状況として前記記憶回路に保存し、前記ネットワークモジュールは、前記デジタルデータを送信する際、前記処理回数が更新されているデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信するように構成したものである。
【0009】
また、本発明にかかる上記計測システムの一構成例は、前記ADモジュールが、前記記憶回路のうち送信済みのデジタルデータを、予め設定されている異常値に書き換えることにより、当該異常値を前記デジタルデータの送信状況として前記記憶回路に保存し、前記ネットワークモジュールは、前記デジタルデータを送信する際、前記異常値を示していないデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信するように構成したものである。
【0010】
また、本発明にかかるADモジュールは、上記計測システムのいずれかで用いられるADモジュールである。
また、本発明にかかるネットワークモジュールは、上記計測システムのいずれかで用いられるネットワークモジュールである。
【0011】
また、本発明にかかるデータ送信方法は、センサにより固有の計測周期で計測して得られたアナログデータをデジタルデータに変換して記憶回路に蓄積するADモジュールと、予め設定されている送信周期に基づいて、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータを取得して送信するように構成されたネットワークモジュールとを備える計測システムで用いられるデータ送信方法であって、前記ADモジュールが、前記デジタルデータごとに当該デジタルデータの送信状況を前記記憶回路に保存するステップと、前記ネットワークモジュールが、前記デジタルデータを送信する際、前記ADモジュールに蓄積されているデジタルデータのうち、当該送信状況が未送信を示すデジタルデータを前記ADモジュールから取得して送信するステップとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、計測システムにおいて、計測周期が互いに異なる複数のデータであっても、上位装置へのデータ送信動作を効率よく行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、計測システムの基本構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、モジュールの接続例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、モジュールの他の接続例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、データ送信動作の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、データ送信動作の他の例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、ADモジュールの構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、ADモジュールの他の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、ADモジュールの他の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、ネットワークモジュールの構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第1の実施の形態にかかる測定システムのデータ送信方法の動作を示すシーケンス図である。
【
図11】
図11は、第1の実施の形態のデータ送信動作例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態にかかる測定システムのデータ送信方法の動作を示すシーケンス図である。
【
図13】
図13は、第2の実施の形態のデータ送信動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる計測システム1について説明する。
図1は、計測システムの基本構成を示すブロック図である。
図2は、モジュールの接続例を示すブロック図である。
図3は、モジュールの他の接続例を示すブロック図である。
【0015】
この計測システム1は、
図1に示すように、主な装置として、センサ30、ADモジュール10、およびネットワークモジュール20を備え、センサ30からのアナログデータをADモジュール10でAD変換し、得られたデジタルデータをネットワークモジュール20が収集し、無線LANやインターネットなどの通信網NWを介して、クラウドサーバなどの上位装置60へ送信するシステムである。
【0016】
これらセンサ30、ADモジュール10、およびネットワークモジュール20は、USBなどの単一の汎用インターフェースを介して接続されている。例えば、センサ30の上位コネクタ31がADモジュール10のセンサ接続コネクタ17に接続され、ADモジュール10の上位コネクタ12がネットワークモジュール20の下位コネクタ21に接続されている。電源モジュール50は、電池などの電源を有し、ネットワークモジュール20およびADモジュール10に対して動作電源を供給する。
【0017】
複数のセンサ30をADモジュール10に接続する場合、ADモジュール10を複数接続し、それぞれのADモジュール10にセンサ接続コネクタ17を設けて、それぞれのセンサ接続コネクタ17にセンサ30を接続すればよい。例えば、
図2の例では、下位コネクタ11とセンサ接続コネクタ17を設けたADモジュール10を複数接続し、センサ接続コネクタ17にはセンサ30を接続し、下位コネクタ11には、下位のADモジュール10を接続している。
また、
図3に示すように、ADモジュール10に複数のセンサ接続コネクタ17を設け、それぞれのセンサ接続コネクタ17にセンサ30を接続してもよい。
【0018】
[発明の原理]
ここで、本発明の原理について説明する。一般に、計測対象は、その物理量の時間変化に応じてそれぞれ適切な計測周期を有している。また、上位装置60に蓄積された計測データを用いるアプリケーションで必要とされる計測周期もある。計測システム1では、このような要請に対応するため、ADモジュール10に予め設定された計測周期に基づいて、センサ30により計測するものとなっている。したがって、複数のセンサ30がADモジュール10に接続されている場合、異なる計測周期のデジタルデータが1つのADモジュール10に蓄積されることになる。また、複数のADモジュール10がネットワークモジュール20に接続されている場合、異なる計測周期のデジタルデータが各ADモジュール10に蓄積されることになる。
【0019】
このような状況において、ネットワークモジュール20がデジタルデータを上位装置60へ送信する場合、各計測周期のうち最小計測周期に基づいて各計測対象のデジタルデータをADモジュール10から取得して送信する方法が考えられる。しかしこの方法によれば、最小計測周期より長い計測周期のデジタルデータが重複して送信されるため、非効率となる。
図4は、データ送信動作の一例を示す説明図である。
図4には、3秒周期、4秒周期、および5秒周期の計測周期を有する3系列のデジタルデータを、その最小計測周期である3秒周期を送信周期として、まとめて送信する場合が例として示されている。例えば、送信開始から3秒後には、4秒周期および5秒周期のデジタルデータ「20.0」と「30.0」が、前回の送信開始時と重複して送信されていることがわかる。
【0020】
一方、いずれかの計測周期のデータが更新された時点で各計測周期のデジタルデータをまとめて送信する方法も考えられる。しかしこの方法によれば、この場合、各デジタルデータが得られた時点で送信されるため、データ送信の遅れは最小化されるが、重複して送信されるデジタルデータが増加するため、非効率となる。
図5は、データ送信動作の他の例を示す説明図である。
図5には、3秒周期、4秒周期、および5秒周期の計測周期を有する3系列のデジタルデータを、更新に応じてまとめて送信する場合が例として示されている。例えば、送信開始から3秒後には、4秒周期および5秒周期のデジタルデータ「20.0」と「30.0」が、前回の送信開始時と重複して送信され、送信開始から4秒後にも、5秒周期のデジタルデータ「30.0」が、前回の送信開始時と重複して送信されていることがわかる。
【0021】
これらの方法を分析した結果、発明者は、送信データの重複が非効率の原因であることを突き止めた。ここで、送信データの重複を回避するためには、各デジタルデータに関する送信状況、すなわち送信済/未送信を識別する必要がある。本発明は、このような観点に着目し、ADモジュール10が、蓄積されるデジタルデータごとに、当該デジタルデータの送信状況、すなわち送信済/未送信を保存しておき、ネットワークモジュール20が送信の際、送信状況が未送信のデジタルデータを取得して送信するように構成したものである。これにより、送信データの重複が回避されて、上位装置60へのデータ送信動作を効率よく行うことができる。
【0022】
また、ADモジュール10では、センサ30から取得したアナログデータをAD変換し、得られたデジタルデータを記憶回路に順次蓄積する。この際、計測対象ごとにAD変換処理や蓄積処理などの処理回数を容易に計数することができ、その処理回数は、それぞれの計測対象に関するデジタルデータ間でユニークな値となる。本実施の形態では、このような観点に着目し、ADモジュール10が、計測対象ごとにデジタルデータの処理回数を計数し、当該デジタルデータの送信状況として記憶回路に保存し、ネットワークモジュール20が、送信の際、処理回数が更新されているデジタルデータをADモジュール10から取得して送信するように構成したものである。これにより、極めて簡素な構成で各デジタルデータの送信状況を生成でき、未送信のデジタルデータを選択することができる。
【0023】
[計測システムの詳細構成]
次に、
図6~
図9を参照して、本実施の形態にかかる計測システム1の詳細構成について説明する。
図6は、ADモジュールの構成を示すブロック図である。
図7、8は、ADモジュールの他の構成を示すブロック図である。
図9は、ネットワークモジュールの構成を示すブロック図である。
【0024】
[ADモジュール]
ADモジュール10は、
図6に示すように、主な回路構成として、上位コネクタ12、通信回路13、AD変換回路14、記憶回路15、制御回路16、およびセンサ接続コネクタ17を有している。
図7の構成では、
図2の接続例で使用できるように、センサ接続コネクタ17に加えて、下位コネクタ11が設けられている。
図8の構成では、
図3の接続例で使用できるように、センサ接続コネクタ17が4つ設けられている。なお、センサ接続コネクタ17の数については、4に限定されるものではない。
【0025】
[下位コネクタ]
下位コネクタ11は、例えばUSBなどの単一の汎用インターフェースに準拠したメスコネクタからなり、ADモジュール10の上位コネクタ12と接続される。
[上位コネクタ]
上位コネクタ12は、USBなどの単一の汎用インターフェースに準拠したオスコネクタからなり、ネットワークモジュール20の下位コネクタ21やADモジュール10の下位コネクタ11と接続される。
[センサ接続コネクタ17]
センサ接続コネクタ17は、例えばUSBなどの単一の汎用インターフェースに準拠したメスコネクタからなり、センサ30の上位コネクタ31と接続される。
【0026】
[通信回路]
通信回路13は、USBコントローラなどの通信制御回路からなり、上位コネクタ12を介してネットワークモジュール20との間でデジタルデータやADモジュールの動作を制御するための各種の制御データをやり取りするように構成されている。また、下位コネクタ11を介して他のADモジュールとの間でデジタルデータやADモジュールの動作を制御するための各種の制御データをやり取りするように構成されている。
【0027】
[AD変換回路]
AD変換回路14は、センサ30から取得したアナログデータをデジタルデータにAD変換するように構成されている。
[記憶回路]
記憶回路15は、半導体メモリなどの記憶装置からなり、AD変換回路14で得られたデジタルデータと、当該デジタルデータの蓄積回数とを蓄積するように構成されている。
【0028】
[制御回路]
制御回路16は、CPUとその周辺回路を有し、制御回路16の内部メモリまたは記憶回路15に保存されているプログラムをCPUと協働させることにより、ADモジュール10で実行する処理を実現するように構成されている。
制御回路16で実行する主な処理には、予め設定されている計測周期に基づいて、センサ30で計測したアナログデータを取得し、AD変換回路14でデジタルデータに変換して記憶回路15に蓄積する処理、計測対象ごとに、デジタルデータのAD変換処理または蓄積処理の処理回数を計数し、当該デジタルデータの送信状況として記憶回路15に保存する処理が含まれる。
【0029】
また、制御回路16で実行する主な処理には、通信回路13を介してネットワークモジュール20から受信した未送信データ取得要求に応じて、送信状況が未送信を示すデジタルデータを記憶回路15から取得して返送する処理が含まれる。処理回数に基づき未送信/送信済を判定する方法としては、計測対象ごとに前回に送信したデジタルデータの送信済処理回数を記憶回路15に保存しておき、処理回数が送信済処理回数から更新されているデジタルデータを未送信のデジタルデータと判定すればよい。
【0030】
[ネットワークモジュール]
ネットワークモジュール20は、
図9に示すように、主な回路構成として、下位コネクタ21、上位コネクタ22、通信回路23、無線回路24、記憶回路25、および制御回路26を有している。
【0031】
[下位コネクタ]
下位コネクタ21は、例えばUSBなどの単一の汎用インターフェースに準拠したメスコネクタからなり、ADモジュール10の上位コネクタ12と接続される。
[上位コネクタ]
上位コネクタ22は、USBなどの単一の汎用インターフェースに準拠したオスコネクタからなり、電源モジュール50と接続される。電源モジュール50から、ネットワークモジュール20およびADモジュール10に対して動作電源が供給される。
【0032】
[通信回路]
通信回路23は、USBコントローラなどの通信制御回路からなり、下位コネクタ21を介してADモジュール10との間でデジタルデータやADモジュール10の動作を制御するための各種の制御データをやり取りするように構成されている。
【0033】
[無線回路]
無線回路24は、制御回路26から出力されたデジタルデータを、無線LANなどの無線通信により、アンテナANTから通信網NWを介して上位装置60へ送信するように構成されている。
[記憶回路]
記憶回路25は、半導体メモリなどの記憶装置からなり、ADモジュール10から取得したデジタルデータを一時保存するように構成されている。
【0034】
[制御回路]
制御回路26は、CPUとその周辺回路を有し、制御回路26の内部メモリまたは記憶回路25に保存されているプログラムをCPUと協働させることにより、ネットワークモジュール20で実行する処理を実現するように構成されている。
制御回路26で実行する主な処理には、予め設定されている送信周期に基づいて、未送信デジタルデータの取得を要求する未送信データ取得要求を、通信回路23を介してADモジュール10に送信する処理、未送信データ取得要求に応じてADモジュール10から返送されたデジタルデータを、一旦記憶回路25に保存し、無線回路24または通信回路23から上位装置60へ向けて送信する処理が含まれる。
【0035】
[第1の実施の形態の動作]
次に、
図10を参照して、本実施の形態にかかる測定システム1の動作について説明する。
図10は、第1の実施の形態にかかる測定システムのデータ送信方法の動作を示すシーケンス図である。
【0036】
ADモジュール10は、予め設定されている計測周期に基づいて、計測タイミングが到来した場合(ステップS100)、通信回路13を介してセンサ30からアナログデータを取得する(ステップS101)。
続いて、ADモジュール10は、得られたアナログデータをAD変換回路14でAD変換し(ステップS102)、得られたデジタルデータを記憶回路15に蓄積する(ステップS103)。
【0037】
この後、ADモジュール10は、計測対象ごとに蓄積したデジタルデータの処理回数を計数し(ステップS104)、得られた処理回数を当該デジタルデータに対応付けて記憶回路15に保存する(ステップS105)。
【0038】
一方、ネットワークモジュール20は、予め設定されている送信周期に基づいて、送信タイミングが到来した場合(ステップS110)、未送信データ取得要求を、通信回路23を介してADモジュール10に送信する(ステップS111)。
【0039】
ADモジュール10は、ネットワークモジュール20からの未送信データ取得要求を、通信回路13を介して受信した場合、記憶回路15に蓄積されている各デジタルデータの送信状況、すなわち処理回数を確認し(ステップS112)、処理回数が当該計測対象の送信済処理回数から更新されているデジタルデータを、未送信データとして選択する(ステップS113)。
この後、ADモジュール10は、選択した未送信データを未送信データ取得応答により返送し(ステップS114)、計測対象ごとに、今回送信したデジタルデータの処理回数で送信済処理回数を更新し記憶回路15に保存する(ステップS115)。
【0040】
ネットワークモジュール20は、ADモジュール10からの未送信データ取得応答を、通信回路23を介して受信した場合、未送信データ取得応答から未送信のデジタルデータデータを抽出し、無線回路24または通信回路23から上位装置60へ向けて送信する(ステップS116)。
これにより、未送信のデジタルデータのみがADモジュール10から取得されて、ネットワークモジュール20から上位装置60へ送信されることになる。
【0041】
図10では、ADモジュール10が処理回数の確認を行って未送信データの送信を行うシーケンスを例示したが、ネットワークモジュール20が処理回数の確認を行って、ADモジュール10から未送信データの読み出しを行うように構成してもよい。この場合、ステップS111の処理は、ネットワークモジュール20が、ステップS105で記憶された処理回数を確認する処理となり、ステップS112、S113の処理は、ネットワークモジュール20で行われる処理となる。さらに、ステップS114の処理は、ネットワークモジュール20がADモジュール10から未送信データの読み出しを行う処理となる。ステップS115における送信済処理回数の更新データは、ネットワークモジュール20に記憶され、次回の処理回数の更新の確認時に用いられる。
【0042】
図11は、第1の実施の形態のデータ送信動作例を示す説明図である。
図11には、それぞれ3秒周期、4秒周期、および5秒周期の計測周期を有する3つの計測対象(系列)のデジタルデータを、その最小計測周期である3秒周期を送信周期として、まとめて送信する場合が例として示されている。各デジタルデータ(DATA)には、それぞれの計測対象(系列)ごとの処理回数(CNT)が対応付けて保存されている。
【0043】
例えば、送信開始から3秒後には、3秒周期のデジタルデータ「10.2」の処理回数が「1」から「2」に更新されているため、このデジタルデータは未送信データと判定される。一方、送信開始から3秒後における4秒周期および5秒周期のデジタルデータ「20.0」と「30.0」の処理回数は「1」のままであり更新されていないため、送信済データと判定される。これにより、送信開始から3秒後に送信されるのは3秒周期のデジタルデータ「10.2」だけとなり、前回の送信開始時との重複が回避されていることがわかる。
【0044】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、ADモジュール10が、デジタルデータごとに当該デジタルデータの送信状況を記憶回路15に保存し、ネットワークモジュール20が、デジタルデータを送信する際、ADモジュール10に蓄積されているデジタルデータのうち、当該送信状況が未送信を示すデジタルデータをADモジュール10から取得して送信するように構成したものである。
これにより、未送信のデジタルデータのみがADモジュール10から取得されて、ネットワークモジュール20から上位装置60へ送信されることになる。したがって、計測周期が互いに異なる複数のデジタルデータであっても、上位装置60へのデータ送信動作を効率よく行うことが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態において、ADモジュール10が、計測対象ごとにデジタルデータの処理回数を計数し、当該デジタルデータの送信状況として記憶回路15に保存し、ネットワークモジュール20が、デジタルデータを送信する際、処理回数が更新されているデジタルデータをADモジュール10から取得して送信するように構成してもよい。
これにより、計測対象ごとに、デジタルデータのAD変換処理または蓄積処理の処理回数を計数するという、極めて簡素な処理で、それぞれの計測対象に関するデジタルデータ間でユニークな値からなる送信状況を生成することができる。また、各デジタルデータの処理回数を、計測対象ごとの送信済処理回数と比較するという、極めて簡素な処理で、未送信のデジタルデータを選択することができる。
【0046】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる計測システム1について説明する。
第1の実施の形態では、各デジタルデータの送信状況として処理回数を用いた場合を例として説明した。本実施の形態では、送信状況として異常値を用いた場合を例として説明する。
【0047】
一般に、物理量を計測するシステムでは、何らかの理由で正常に計測できなかった際、計測結果として予め設定されている、例えば「999.9」などの異常値を用いる場合がある。また、システムによっては、得られた計測結果を上位装置60に送信する場合、異常値の送信を回避するように構成されているものもある。
本実施の形態は、このような異常値に着目し、データ送信の際、異常値を示すデジタルデータは送信せず、異常値以外、すなわち正常値を示すデジタルデータを送信するものとし、送信したデジタルデータについては、異常値に書き換えるように構成したものである。これにより、重複して送信されるデータを回避でき、効率よくデータ送信を行うことができる。
【0048】
本実施の形態において、ADモジュール10の制御回路16は、記憶回路15のうち送信済みのデジタルデータを、予め設定されている異常値に書き換えることにより、当該異常値をデジタルデータの送信状況として記憶回路15に保存するように構成されている。
また、ネットワークモジュール20の制御回路26は、デジタルデータを送信する際、異常値を示していないデジタルデータをADモジュール10から取得して送信するように構成されている。
本実施の形態にかかるその他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
[第2の実施の形態の動作]
次に、
図12を参照して、本実施の形態にかかる測定システム1の動作について説明する。
図12は、第2の実施の形態にかかる測定システムのデータ送信方法の動作を示すシーケンス図である。
【0050】
ADモジュール10は、予め設定されている計測周期に基づいて、計測タイミングが到来した場合(ステップS200)、通信回路13を介してセンサ30からアナログデータを取得する(ステップS201)。
続いて、ADモジュール10は、得られたアナログデータをAD変換回路14でAD変換し(ステップS202)、得られたデジタルデータを記憶回路15に蓄積する(ステップS203)。
【0051】
一方、ネットワークモジュール20は、予め設定されている送信周期に基づいて、送信タイミングが到来した場合(ステップS210)、未送信データ取得要求を、通信回路23を介してADモジュール10に送信する(ステップS211)。
【0052】
ADモジュール10は、ネットワークモジュール20からの未送信データ取得要求を、通信回路13を介して受信した場合、記憶回路15に蓄積されている各デジタルデータのデータ値を確認し(ステップS212)、データ値が予め設定されている異常値ではなく、正常値を示すデジタルデータを、未送信データとして選択する(ステップS213)。
この後、ADモジュール10は、選択した未送信データを未送信データ取得応答により返送し(ステップS214)、選択した未送信データのデータ値を異常値に書き換えることにより、送信積み(ステップS215)。
【0053】
ネットワークモジュール20は、ADモジュール10からの未送信データ取得応答を、通信回路23を介して受信した場合、未送信データ取得応答から未送信のデジタルデータデータを抽出し、無線回路24または通信回路23から上位装置60へ向けて送信する(ステップS216)。
これにより、未送信のデジタルデータのみがADモジュール10から取得されて、ネットワークモジュール20から上位装置60へ送信されることになる。
【0054】
図13は、第2の実施の形態のデータ送信動作例を示す説明図である。
図13には、それぞれ3秒周期、4秒周期、および5秒周期の計測周期を有する3つの計測対象(系列)のデジタルデータを、その最小計測周期である3秒周期を送信周期として、まとめて送信する場合が例として示されている。
【0055】
例えば、送信開始から3秒後には、3秒周期のデジタルデータが正常値「10.2」に更新されているため、このデジタルデータは未送信データと判定され、4秒周期および5秒周期のデジタルデータは、異常値「999.9」を示すことから、これらデジタルデータは送信済データと判定される。これにより、送信開始から3秒後に送信されるのは3秒周期のデジタルデータ「10.2」だけとなり、前回の送信開始時との重複が回避されていることがわかる。
【0056】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、ADモジュール10が、記憶回路15のうち送信済みのデジタルデータを、予め設定されている異常値に書き換えることにより、当該異常値をデジタルデータの送信状況として記憶回路15に保存し、ネットワークモジュール20が、デジタルデータを送信する際、異常値を示していないデジタルデータをADモジュール10から取得して送信するように構成したものである。
これにより、未送信のデジタルデータのみがADモジュール10から取得されて、ネットワークモジュール20から上位装置60へ送信されることになる。したがって、計測周期が互いに異なる複数のデジタルデータであっても、上位装置60へのデータ送信動作を効率よく行うことが可能となる。
【0057】
また、デジタルデータが異常値を示す場合には、送信済データと判定するようにしたので、第1の実施の形態のように処理回数を送信状況として用いる場合と比較して、送信状況を保存するための記憶領域を省くことができ、記憶回路15のメモリリソースを有効利用できる。
【0058】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…計測システム、10…ADモジュール、11…下位コネクタ、12…上位コネクタ、13…通信回路、14…AD変換回路、15…記憶回路、16…制御回路、17…センサ接続コネクタ、18…アナログスイッチ、20…ネットワークモジュール、21…下位コネクタ、22…上位コネクタ、23…通信回路、24…無線回路、25…記憶回路、26…制御回路、30…センサ、31…上位コネクタ、50…電源モジュール、60…上位装置、NW…通信網。