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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136497
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】既設杭撤去装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
E02D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036135
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】503244697
【氏名又は名称】サンヨー綜合リース株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595018916
【氏名又は名称】株式会社シロタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 修平
(72)【発明者】
【氏名】増山 昌崇
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA02
2D050DA03
2D050DB03
(57)【要約】
【課題】外径の大きな掘削ケーシングにも対応した既設杭撤去装置を提供する。
【解決手段】既設杭撤去装置1は、油圧モータ11を有し、昇降可能なアースオーガ10と、アースオーガ10の昇降を案内するリーダ3と、油圧モータ11に連結された減速機20と、を備える。油圧モータ11の出力軸12と減速機20の出力軸23とリーダ3とは、互いに平行である。減速機20の出力軸23には、地盤Gと既設杭Pとを縁切りする掘削ケーシング40が連結される。減速機20の出力軸23は、油圧モータ11の出力軸12よりもリーダ3から離れた側に位置している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機を有し、昇降可能なアースオーガと、
前記アースオーガの昇降を案内するリーダと、
前記原動機に連結された減速機と、を備え、
前記原動機の出力軸と前記減速機の出力軸と前記リーダとは、互いに平行であり、
前記減速機の出力軸には、地盤と既設杭とを縁切りする掘削ケーシングが連結されており、
前記減速機の出力軸は、前記原動機の出力軸よりも前記リーダから離れた側に位置している、既設杭撤去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の既設杭撤去装置において、
前記減速機の出力軸と前記リーダとの距離は、前記掘削ケーシングの外径の半分の長さよりも大きい、既設杭撤去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の既設杭撤去装置において、
前記掘削ケーシングは、前記減速機の出力軸に着脱可能に連結されており、
前記減速機の出力軸には、前記掘削ケーシングの取り外し時に前記既設杭を把持する把持装置が着脱可能に連結される、既設杭撤去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設杭撤去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の建て替え等を行う場合、古い建築物を解体撤去するだけでなく、地中に埋設された既設杭を撤去する必要がある。
【0003】
既設杭の撤去方法として、例えば、リーダに沿って昇降するアースオーガによって筒状の掘削ケーシングを回転させて、地盤と既設杭とを縁切した後に、既設杭の頭部にワイヤーを掛けて、既設杭をクレーンによって引き抜く方法等が知られている。
【0004】
また、特許文献1には、既設杭撤去装置に関する発明が開示されている。この既設杭撤去装置は、地中に埋設された既設杭の周囲を掘るための掘削刃を有するケーシングと、ケーシングの先端部の内面から出没自在となるように先端部に設けられる既設杭切断刃と、既設杭切断刃を出没させる出没駆動機構と、を備える。既設杭切断刃は、所定の深度にて先端部の内面から突出して既設杭を側面から切断する。既設杭切断刃によって切断された既設杭のうちの切断部より上方の部分は、出没駆動機構によって突出した既設杭切断刃の受面にて掛止されて、ケーシングと共に地中から引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-028878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】

ところで、近年、外径の大きな既設杭の撤去に対する需要が高まっている。このような既設杭を撤去するためには、当該既設杭に対応した外径の大きな掘削ケーシングが必要である。
【0007】
掘削ケーシングは、通常、アースオーガに設けられた原動機に直結しており、その外径が大きくなるほど、アースオーガの昇降を案内するリ―ダに干渉しやすくなる。
【0008】
また、掘削ケーシングを回転させて地盤と既設杭とを縁切りするためには、アースオーガによって、ある程度の大きさのトルクを出力して、当該トルクを掘削ケーシングに与える必要がある。ここで、掘削ケーシングは、その外径が大きくなるほど、慣性モーメントが大きくなって回転しにくくなる。つまり、掘削ケーシングの外径が大きいほど、より大きなトルクを掘削ケーシングに与える必要があり、場合によっては、アースオーガにおける原動機の能力(容量)を増大する必要が生じる。
【0009】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外径の大きな掘削ケーシングにも対応した既設杭撤去装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る既設杭撤去装置は、原動機を有し、昇降可能なアースオーガと、上記アースオーガの昇降を案内するリーダと、上記原動機に連結された減速機と、を備え、上記原動機の出力軸と上記減速機の出力軸と上記リーダとは、互いに平行であり、上記減速機の出力軸には、地盤と既設杭とを縁切りする掘削ケーシングが連結されており、上記減速機の出力軸は、上記原動機の出力軸よりも上記リーダから離れた側に位置している。
【0011】
かかる構成によれば、掘削ケーシングは、アースオーガの原動機に、直結されるのではなく、減速機を介して連結される。減速機によって出力トルクが増大されるので、掘削ケーシングがアースオーガの原動機に直結される場合に比較して、より大きなトルクを掘削ケーシングに与えることが可能となる。掘削ケーシングに与えるトルクを減速機によって増大するという上記構成は、掘削ケーシングの外径が大きいために、掘削ケーシングが回転しにくい場合に、特に有効である。
【0012】
さらに、掘削ケーシングが連結される減速機の出力軸は、アースオーガにおける原動機の出力軸よりも、リーダから離れた側に位置する。これにより、掘削ケーシングがアースオーガの原動機に直結される場合に比較して、掘削ケーシングをリーダから遠ざけることができる。したがって、掘削ケーシングのリーダへの干渉を抑制する上で有利となる。掘削ケーシングを減速機によってリーダから遠ざけるという上記構成は、掘削ケーシングの外径が大きいために、掘削ケーシングがリーダに干渉しやすい場合に、特に有効である。
【0013】
以上、減速機を用いて、より大きなトルクを掘削ケーシングに与えることを可能にするとともに、掘削ケーシングをリーダから遠ざけることによって、外径の大きな掘削ケーシングにも対応した既設杭撤去装置を提供することができる。
【0014】
一実施形態では、上記減速機の出力軸と上記リーダとの距離は、上記掘削ケーシングの外径の半分の長さよりも大きい。
【0015】
かかる構成によれば、減速機の出力軸とリーダとの間に、掘削ケーシングの外径の半分の長さ、すなわち、掘削ケーシングの半径よりも大きなスペースが確保される。これにより、掘削ケーシングのリーダへの干渉を、より確実に抑制することができる。
【0016】
一実施形態では、上記掘削ケーシングは、上記減速機の出力軸に着脱可能に連結されており、上記減速機の出力軸には、上記掘削ケーシングの取り外し時に上記既設杭を把持する把持装置が着脱可能に連結される。
【0017】
掘削ケーシングによる地盤と既設杭との縁切りを完了させた後に、減速機の出力軸から掘削ケーシングを取り外して、代わりに、減速機の出力軸に把持装置を取り付ける。そして、把持装置により既設杭を把持した状態で、アースオーガを上昇させることによって、既設杭を引き抜く。かかる構成によれば、掘削ケーシングの場合と同様に、把持装置がアースオーガの原動機に直結される場合に比較して、把持装置をリーダから遠ざけることができる。したがって、把持装置のリーダへの干渉を抑制する上で有利となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外径の大きな掘削ケーシングにも対応した既設杭撤去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る既設杭撤去装置を示す正面図である。
図2図2は、減速機を示す正面図である。
図3図3は、減速機を示す平面図である。
図4図4は、掘削ケーシングによって地盤と既設杭とを縁切りする態様を示す正面図である。
図5図5は、パイルキャッチャーによって既設杭を把持して引き抜く態様を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0021】
(本実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る既設杭撤去装置1を正面から見た状態で示す。なお、図1における上下方向が上下方向(鉛直方向)を示す。既設杭撤去装置1は、既設杭Pを撤去するための装置である。
【0022】
図1に示すように、既設杭撤去装置1は、クローラ式のベースマシン2と、リーダ3と、昇降可能なアースオーガ10と、減速機20と、ロッド30と、を備える。
【0023】
リーダ3は、アースオーガ10の昇降を案内する柱状体である。リーダ3は、ベースマシン2に保持されて、上下方向に真直ぐ延びている。具体的には、リーダ3は、略四角柱状であり、その軸心(中心軸)が上下方向に真直ぐ延びている。
【0024】
アースオーガ10は、後述する原動機の回転駆動によって、地盤Gを掘削するための機械である。アースオーガ10は、ケーシング10aに収容された原動機としての油圧モータ11を有し、油圧モータ11の出力軸12の回転によって、地盤Gを掘削する。
【0025】
アースオーガ10には、リーダ3に係合する係合部13が設けられている。係合部13は、ケーシング10aとは別部材で構成されており、ケーシング10aにおけるリーダ3側の面に、取り付けられている。係合部13は、リーダ3に対して上下に摺動可能である。油圧モータ11により、チェーン4(図1において二点鎖線で示す)の巻上げ/巻下げを行うことによって、アースオーガ10が上下に昇降する。アースオーガ10の昇降は、係合部13において、リーダ3によって案内される。
【0026】
油圧モータ11の出力軸12は、ケーシング10aから下方に突出しており、油圧駆動によって、回転する。油圧モータ11の出力軸12の軸心は、上下方向に延びており、リーダ3の軸心に平行である。
【0027】
図1に示すように、アースオーガ10の下側には、減速機20が配置されている。減速機20は、油圧モータ11に連結されている。図2は、減速機20を正面から見た状態で示す。図3は、減速機20を上側から見た状態で示す。以下、主に図2,3を参照しながら、減速機20の具体的構成について説明する。
【0028】
減速機20は、歯車減速機であり、ケーシング21と、入力軸22と、出力軸23と、入力側歯車24と、出力側歯車25と、係合部26と、を有する。
【0029】
ケーシング21は、リーダ3(図2,3において二点鎖線で示す)から離れる方向(図2,3における左方向)に長手となるように延びている。具体的には、図3に示すように、ケーシング21は、平面視において、リーダ3から離れる方向に互いに隣り合う、大小2つの円が滑らかに接続された形状である。ケーシング21におけるリーダ3に近い側21aの径よりも、ケーシング21におけるリーダ3から遠い側21bの径の方が、大きい(以下、「小径部21a」及び「大径部21b」という)。
【0030】
入力軸22の軸心及び出力軸23の軸心は、上下方向に延びており、リーダ3の軸心に平行である。出力軸23の軸心は、入力軸22の軸心よりもリーダ3の案内面3aから離れた側に位置する。
【0031】
入力軸22は、ケーシング21の小径部21aに収容されている。入力軸22の上端部は、ケーシング21から上方に突出している。出力軸23は、ケーシング21の大径部21bに収容されている。出力軸23は、ケーシング21を上下に貫通している。出力軸23の下端部は、ケーシング21から下方に突出している。
【0032】
入力側歯車24及び出力側歯車25は、互いに隣り合うように、ケーシング21に収容されている(図2,3の破線参照)。入力側歯車24は、ケーシング21の小径部21aに収容され、入力軸22に回転一体に結合されている。出力側歯車25は、ケーシング21の大径部21bに収容され、出力軸23に回転一体に結合されている。
【0033】
入力側歯車24と出力側歯車25とは、互いに噛み合っている。出力側歯車25のピッチ径は、入力側歯車24のピッチ径よりも大きい。すなわち、出力側歯車25の歯数は、入力側歯車24の歯数よりも大きい。入力側歯車24の歯数をZa、出力側歯車25の歯数をZbとすると、Zb>Zaとなる。減速機20の減速比は、Zb/Zaとなる。
【0034】
入力軸22の上端部は、油圧モータ11の出力軸12(図2において二点鎖線で示す)の下端部に、軸継手等によって同軸に連結されている。すなわち、油圧モータ11の出力軸12の軸心と減速機20の出力軸23の軸心とリーダ3の軸心とは、互いに平行である。また、減速機20の出力軸23の軸心は、油圧モータ11の出力軸12の軸心よりも、リーダ3の案内面3aから離れた側に位置している。
【0035】
出力軸23の上端部には、スイベルジョイント27が連結されている。スイベルジョイント27は、ケーシング21よりも上側に配置されている。出力軸23の下端部には、軸継手28によって、上下に延びるロッド30(図2において二点鎖線で示す)が同軸に連結されている。
【0036】
係合部26は、ケーシング21とは別部材で構成されており、ケーシング21におけるリーダ3側の端部21cに、取り付けられている。
【0037】
図2に示すように、係合部26は、正面視において、上下方向に長手の略長方形状であり、ケーシング21におけるリーダ3側の端部21cから、リーダ3に沿うように下方に延びている。図3に示すように、係合部26におけるリーダ3側の端部には、幅方向両端部(図3の上下両端部)に、一対の係合爪26aが設けられている。係合部26は、一対の係合爪26aがリーダ3を幅方向両側から挟むことによって、リーダ3に係合する。なお、図2に示すように、一対の係合爪26aは、係合部26の上下両側において、計2組設けられている。
【0038】
係合部26は、リーダ3に対して上下に摺動可能である。減速機20の昇降は、係合部26において、リーダ3によって案内される。また、減速機20はアースオーガ10に連結されているので、減速機20の昇降は、アースオーガ10の昇降に連動する。
【0039】
図1に示すように、ロッド30の下端部には、円筒状の掘削ケーシング40が、同軸に連結されている。すなわち、減速機20の出力軸23には、掘削ケーシング40が、ロッド30を介して、同軸に連結されている。
【0040】
掘削ケーシング40は、地盤Gと既設杭Pとを縁切りするためのものである。「縁切り」とは、物体にかかる応力を分断して、構造的に分離することをいう。円筒状の掘削ケーシング40の上端部40aの開口は、蓋部41によって閉じられている。蓋部41は、ロッド30の下端部に、着脱可能に連結される。すなわち、掘削ケーシング40は、ロッド30を介して、減速機20の出力軸23に着脱可能に連結される。
【0041】
掘削ケーシング40は既設杭Pの周囲の地盤Gを掘削するので、掘削ケーシング40の内径は、既設杭Pの外径よりも大きい。したがって、掘削ケーシング40の外径Dは、当然、既設杭Pの外径よりも大きい。
【0042】
油圧モータ11の出力軸12の軸心とリーダ3の案内面3aとの距離L1は、あまり大きくない。
【0043】
減速機20の出力軸23の軸心とリーダ3の案内面3aとの距離L2は、距離L1に比べて大きい。また、距離L2は、掘削ケーシング40の外径の半分の長さD/2、すなわち半径Rよりも大きい。
【0044】
図1に示すように、掘削ケーシング40が減速機20の出力軸23にロッド30を介して連結された状態において、掘削ケーシング40の上端部40aは、減速機20の係合部26の下端部26bよりも、下側に位置する。
【0045】
減速機20の出力軸23には、掘削ケーシング40の取り外し時に、ロッド30を介して、既設杭Pを把持する把持装置としてのパイルキャッチャー50が、着脱可能に連結される(図5参照)。パイルキャッチャー50がロッド30を介して減速機20の出力軸23に連結された状態において、パイルキャッチャー50がリーダ3に接触しないように、パイルキャッチャー50のサイズが設定されている(図5参照)。
【0046】
次に、既設杭撤去装置1によって既設杭Pを撤去する方法について説明する。図4は、掘削ケーシング40によって地盤Gと既設杭Pとを縁切りする態様を、正面から見た状態で示す。アースオーガ10における油圧モータ11の出力軸12を、油圧駆動によって回転させる。油圧モータ11の出力軸12の回転は、減速機20の入力軸22に入力されて、入力側歯車24及び出力側歯車25を介して、減速機20の出力軸23に出力される。
【0047】
減速機20の出力軸23は、減速比Zb/Zaに応じて、回転数が減少する一方、出力トルクが増大する。具体的には、油圧モータ11の出力軸12(減速機20の入力軸22)の回転数をNa、減速機20の出力軸23の回転数をNbとすると、Nb=Na×Za/Zbとなる。油圧モータ11の出力軸12(減速機20の入力軸22)の入力トルクをTa、減速機20の出力軸23の出力トルクをTbとすると、Tb=Ta×Zb/Zaとなる。
【0048】
減速機20の出力軸23は、ロッド30を介して、掘削ケーシング40にトルクを与えて、掘削ケーシング40を回転させる。掘削ケーシング40を回転させながら、アースオーガ10をリーダ3に沿って降下させて、掘削ケーシング40の先端部(下端部)を地盤Gに当接させる。これにより、既設杭Pの周囲において、地盤Gの掘削が開始される。
【0049】
掘削ケーシング40を回転させた状態で、地盤Gに水やエアーを注入しながら、アースオーガ10をリーダ3に沿ってさらに降下させて、既設杭Pの下端部よりも下側まで地盤Gを掘削する。これにより、地盤Gと既設杭Pとが縁切りされる。なお、掘削ケーシング40全体を地中に入れてしまうのではなく、掘削ケーシング40の頭部(上端部)を地表から突出させておく。
【0050】
なお、図示しないが、実際には、掘削ケーシング40は、上下方向において複数の部分、例えば、下ケーシング及び上ケーシング等に分割されている。そして、例えば、下ケーシングのみによって、所定の深さまで地盤Gを掘削した後に、下ケーシングの上部に上ケーシングを連結して、途中から、互いに連結された下ケーシング及び上ケーシングによって、既設杭Pの下端部よりも下側まで地盤Gを掘削する。下ケーシングと上ケーシングとの間に、途中、中間ケーシングを挟んでもよい。
【0051】
図5は、パイルキャッチャー50によって既設杭Pを把持して引き抜く態様を、正面から見た状態で示す。
【0052】
掘削ケーシング40によって地盤Gと既設杭Pとの縁切りを完了させた後に、ロッド30(減速機20の出力軸23)から掘削ケーシング40を取り外して、代わりに、ロッド30(減速機20の出力軸23)にパイルキャッチャー50を取り付ける。パイルキャッチャー50は、その把持部51によって、既設杭Pを把持(チャック)する。パイルキャッチャー50により既設杭Pを把持した状態で、アースオーガ10をリーダ3に沿って上昇させることによって、既設杭Pを地中から上方に引き抜く。このとき、油圧モータ11及び減速機20によって、パイルキャッチャー50に把持された既設杭Pを回転させると、既設杭Pを引き抜きやすくなる。
【0053】
パイルキャッチャー50による既設杭Pの引き抜きが完了すると、ロッド30(減速機20の出力軸23)から、パイルキャッチャー50を取り外して、代わりに、ロッド30(減速機20の出力軸23)に、地盤Gを掘削したまま地中に残った状態の掘削ケーシング40を取り付ける。そして、アースオーガ10をリーダ3に沿って上昇させて、掘削ケーシング40を地中から上方に引き抜く。掘削ケーシング40を引き抜いた後に、地盤Gにおける既設杭Pが埋もれていた箇所を土砂等で埋め戻す。以上により、既設杭Pの撤去が完了する。
【0054】
(本実施形態の効果)
既設杭Pの外径が大きくなるほど、既設杭Pを撤去することが難しくなる。近年、既設杭Pの完全撤去が求められており、外径の大きな既設杭Pを如何にして撤去するのかが、課題であった。
【0055】
本実施形態によれば、掘削ケーシング40は、アースオーガ10の油圧モータ11に、直結されるのではなく、減速機20を介して連結される。減速機20によって出力トルクが増大されるので、掘削ケーシング40がアースオーガ10の油圧モータ11に直結される場合に比較して、より大きなトルクを掘削ケーシング40に与えることが可能となる。
【0056】
掘削ケーシング40に与えるトルクを減速機20によって増大するという上記構成は、掘削ケーシング40の外径Dが大きいために(慣性モーメントが大きいために)、掘削ケーシング40が回転しにくい場合に、特に有効である。
【0057】
さらに、掘削ケーシング40が連結される減速機20の出力軸23は、アースオーガ10における油圧モータ11の出力軸12よりも、リーダ3から離れた側に位置する。これにより、掘削ケーシング40がアースオーガ10の油圧モータ11に直結される場合に比較して、掘削ケーシング40をリーダ3から遠ざけることができる。したがって、掘削ケーシング40のリーダ3への干渉を抑制する上で有利となる。
【0058】
掘削ケーシング40を減速機20によってリーダ3から遠ざけるという上記構成は、掘削ケーシング40の外径Dが大きいために、掘削ケーシング40がリーダ3に干渉しやすい場合に、特に有効である。
【0059】
以上、減速機20を用いて、より大きなトルクを掘削ケーシング40に与えることを可能にするとともに、掘削ケーシング40をリーダ3から遠ざけることによって、外径Dの大きな掘削ケーシング40にも対応した既設杭撤去装置1を提供することができる。
【0060】
油圧モータ11の出力軸12とリーダ3との距離L1があまり大きくないので、仮に掘削ケーシング40を油圧モータ11に直結すると、掘削ケーシング40がリーダ3に干渉してしまうおそれがある。
【0061】
本実施形態では、減速機20の出力軸23とリーダ3との間に、掘削ケーシング40の外径の半分の長さD/2、すなわち、掘削ケーシング40の半径Rよりも大きなスペースが確保される。これにより、掘削ケーシング40のリーダ3への干渉を、より確実に抑制することができる。
【0062】
掘削ケーシング40の場合と同様に、パイルキャッチャー50がアースオーガ10の油圧モータ11に直結される場合に比較して、パイルキャッチャー50をリーダ3から遠ざけることができる。したがって、パイルキャッチャー50のリーダ3への干渉を抑制する上で有利となる。
【0063】
減速機20の出力軸23と掘削ケーシング40との間にロッド30を介在させることによって、上下方向(昇降方向)において、掘削ケーシング40を、減速機20から遠ざけている。具体的には、図1に示すように、ロッド30の介在によって、掘削ケーシング40の上端部40aを、減速機20における係合部26の下端部26bよりも下側に、位置付けている。これにより、掘削ケーシング40は、上下方向において、減速機20の係合部26に重ならないようになる。したがって、掘削ケーシング40の減速機20の係合部26への干渉を抑制する上で有利となる。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0065】
原動機として、油圧モータ11の代わりに、電動モータ等を用いてもよい。
【0066】
減速機20として、歯車減速機の代わりに、チェーン・スプロケット機構、ベルト・プーリ機構等を用いてもよい。
【0067】
アースオーガ10の昇降方法は、上述した油圧モータ11によるチェーン昇降に限定されず、例えば、油圧モータ駆動によるラックギヤ昇降、油圧ウインチによるワイヤロープ昇降等、種々の方法を適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、既設杭撤去装置に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0069】
G 地盤
P 既設杭
D 外径
R 半径(外径の半分の長さ)
L2 距離
1 既設杭撤去装置
3 リーダ
10 アースオーガ
11 油圧モータ(原動機)
12 出力軸
20 減速機
22 入力軸
23 出力軸
40 掘削ケーシング
50 パイルキャッチャー(把持装置)
図1
図2
図3
図4
図5