(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136511
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】放射線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20220913BHJP
G01N 23/046 20180101ALI20220913BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036154
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】山本 輝夫
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA14
2G001JA08
2G001PA03
2G001PA06
2G001PA11
2G001PA15
2G001PA16
2G001SA13
(57)【要約】
【課題】検査の作業時間をできるだけ短縮でき、無人で被検査物を試料テーブルにセットできる放射線検査装置を提供する。
【解決手段】
検査装置本体は、被検査物Wを載置する試料テーブル4と、試料テーブル4を挟んで配置された放射線源5と検出器6を有する。遮蔽室1は、検査装置本体の収容部1aと、被検査物Wの搬送部1bとを備える。搬送装置12は、搬送部1bに設けられた入口10と出口11を貫通して、遮蔽室1の外部から搬送部1b内に被検査物Wを搬送する。ロボット15は、遮蔽室1に設けられ、搬送部1b内に位置する搬送装置12と試料テーブル4との間で被検査物Wを移動させる。遮蔽壁2は、遮蔽室1における検査装置本体の収容部1aと被検査物Wの搬送部1bとの間に設けられ、ロボット15による被検査物Wの移動経路となる開口部3を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を載置する試料テーブルと、前記試料テーブルを挟んで配置された放射線源と検出器を備えた検査装置本体と、
前記検査装置本体の収容部と、前記検査装置本体の収容部とは別に設けられた前記被検査物の搬送部とを備えた遮蔽室と、
前記搬送部に設けられた入口と出口を貫通して、前記遮蔽室の外部から前記搬送部内に前記被検査物を搬送する搬送装置と、
前記遮蔽室に設けられ、前記搬送部内に位置する前記搬送装置と前記試料テーブルとの間で前記被検査物を移動させる移載装置と、
前記遮蔽室における前記検査装置本体の収容部と前記被検査物の搬送部との間に設けられ、前記移載装置における前記被検査物の移動経路となる開口部を有する遮蔽壁と、
を備えた放射線検査装置。
【請求項2】
前記試料テーブルは、前記被検査物の載置個所を複数備え、複数の載置個所の一つが前記放射線源と前記検出器の間の放射線照射領域に位置している場合に、他の載置個所は前記放射線照射領域外にあり、前記移載装置は放射線照射領域外に位置する前記載置個所と、前記搬送装置との間で前記被検査物を移動させる請求項1に記載の放射線検査装置。
【請求項3】
前記移載装置は、前記遮蔽室内に配置され、前記被検査物を把持するアームを有するロボットである請求項1又は請求項2に記載の放射線検査装置。
【請求項4】
前記移載装置は、前記遮蔽室の天井部分に配置され、前記被検査物を前記搬送装置と前記試料テーブルとの間で吊るして移動させるクレーンである請求項1又は請求項2に記載の放射線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態の実施形態は、インラインタイプの放射線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CTなどの放射線検査装置は、放射線として例えばX線ビームを照射する放射線源と、この放射線源に対向して設けられ、X線ビームを検出する検出器とを備える。放射線源と検出器との間には、被検査物が載置される検査台が設けられ、被検査物に対してX線ビームが照射される間にこの検査台が1回転することにより、全方位からの透視画像が得られる。この透視画像を再構成することにより、被検査物のCT画像が得られる。このような放射線検査装置を被検査物の製造ラインに組み込むことが知られており、その種の装置はインラインタイプと呼ばれている。
【0003】
従来、インラインタイプの検査装置は、ベルトコンベア、チェーンコンベアなどの被検査物搬送ラインに沿って設けられ、ライン上の被検査物を取り出して検査装置に移動させ、検査終了後は再びラインに戻している。この場合、放射線検査装置は、放射線源を利用することから、ライン近傍の遮蔽室内に設置され、クレーンやロボットを使用して、ライン上から遮蔽室内の検査装置に被検査物を出し入れしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-264476号公報
【特許文献2】特開平2-184839号公報
【特許文献2】特開2019-194582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの従来技術においては、検査装置をラインに組み入れようとすると人手で被検査物を検査装置の中の試料テーブルにセットする必要があった。人手の代わりにロボットを使ってラインから試料テーブルにセットする方法もあるが、その場合でも放射線の照射を停止して、試料扉を開けて被検査物を検査装置の試料テーブルにセットする必要がある。そのため、その放射線のオフ、試料扉の開閉、放射線のオン時間が必要となるため、検査の作業時間が伸びてしまうという問題があった。
【0006】
これを改善するために、ラインと検査装置の間に2枚の試料扉を設けると共に、試料扉ごとにロボットなどの配置した技術もある。この技術では、ロボットによってラインから被検査物を移動させる際に2枚の試料扉を交互に開閉することで、放射線を常時オンにしていてもその漏洩が防止される。しかし、この従来技術においても、2枚の試料扉が必要であると共に、被検査物を移動させるロボットなどが複数必要になる問題があった。
【0007】
本実施形態は、上記課題を解決するために提案されたものである。すなわち、本実施形態の目的は、検査の作業時間をできるだけ短縮できるように、被検査物の出し入れのたびに放射線の照射をオンオフしたり、試料扉を開閉したりしないで済むと共に、無人で被検査物を試料テーブルにセットできる放射線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の放射線検査装置は、次のような構成を備える。
(1)被検査物を載置する試料テーブルと、前記試料テーブルを挟んで配置された放射線源と検出器を備えた検査装置本体。
(2)前記検査装置本体の収容部と、前記検査装置本体の収容部とは別に設けられた前記被検査物の搬送部とを備えた遮蔽室。
(3)前記搬送部に設けられた入口と出口を貫通して、前記遮蔽室の外部から前記搬送部内に前記被検査物を搬送する搬送装置。
(4)前記遮蔽室に設けられ、前記搬送部内に位置する前記搬送装置と前記試料テーブルとの間で前記被検査物を移動させる移載装置。
(5)前記遮蔽室における前記検査装置本体の収容部と前記被検査物の搬送部との間に設けられ、前記移載装置における前記被検査物の移動経路となる開口部を有する遮蔽壁。
【0009】
実施形態の放射線検査装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記試料テーブルは、前記被検査物の載置個所を複数備え、複数の載置個所の一つが前記放射線源と前記検出器の間の放射線照射領域に位置している場合に、他の載置個所は前記放射線照射領域外にあり、前記移載装置は放射線照射領域外に位置する前記載置個所と、前記搬送装置との間で前記被検査物を移動させる。
(2)前記移載装置は、前記遮蔽室内に配置され、前記被検査物を把持するアームを有するロボットである。
(3)前記移載装置は、前記遮蔽室の天井部分に配置され、前記被検査物を前記搬送装置と前記試料テーブルとの間で吊るして移動させるクレーンである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の放射線検査装置を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態の放射線検査装置を示す縦断面図である
【
図3】第1実施形態における検出器の構成を示すブロック図である。
【
図4】第2実施形態の放射線検査装置を示す平面図である。
【
図5】第2実施形態の放射線検査装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
以下、第1実施形態の放射線検査装置について、
図1及び
図2を参照して説明する。
本実施形態の検査装置は、放射線の遮蔽機能を有する遮蔽室1を備える。遮蔽室1は、検査装置本体の収容部1aと、検査装置本体の収容部1aとは別に設けられた被検査物Wの搬送部1bとを備える。検査装置本体の収容部1aと被検査物Wの搬送部1bとの間には、放射線の遮蔽機能を有する遮蔽壁2が設けられている。遮蔽壁2は、被検査物Wの移動経路となる開口部3を有する。
【0012】
本実施形態において、検査装置本体としてはX線CTが使用されるが、単なる透過型の放射線検出器であっても良い。検査装置本体は、被検査物Wを載置する試料テーブル4と、試料テーブル4を挟んで配置された放射線源5と検出器6を有する。放射線源5からは、コーン状にX線ビームBが被検査物Wに対して照射され、被検査物Wを透過したX線ビームBは検出器6によってX線透過データとして検出される。
【0013】
本実施形態において、試料テーブル4は、被検査物の載置部を2つ有する。すなわち、試料テーブル4はX線ビームBの光軸と交差する方向に移動する支持部7と、支持部7上にその移動方向に沿って並んだ2つのターンテーブル8a,8bを有する。これらのターンテーブル8a,8bが被検査物Wの載置部である。2つのターンテーブル8a,8bは、一方のターンテーブル8aがX線ビームB内の透視位置にある場合、他方のターンテーブル8bはX線ビームBの照射範囲から外れた位置、すなわち、被検査物Wの移載位置にあるように支持部7に設けられている。試料テーブル4は、テーブル切替機構9と、ターンテーブル8a,8bの駆動機構(図示せず)を有する。テーブル切替機構9は、リニアモータ等の駆動機構を備え、2つのターンテーブル8a,8bがX線ビームBの内外に交互に位置するように、支持部7を移動させる。
【0014】
被検査物Wの搬送部1bは、前記のように遮蔽壁2を挟んで遮蔽室1内に設けられている。搬送部1bには入口10と出口11が設けられ、これら入口10及び出口11を貫通して、遮蔽室1の外部から搬送部1b内に被検査物Wを搬送する搬送装置12が設けられている。搬送装置12としては、チェーンコンベア、ベルトコンベア、バケットコンベア等のコンベアや、シュートその他の装置が使用できる。本実施形態では、被検査物Wを所定間隔で載置した状態で搬送するコンベアが使用されている。
【0015】
搬送装置12には、直接被検査物Wを載置しても良いが、本実施形態では、被検査物Wをホルダ13上に支持し、そのホルダ13ごと被検査物Wを搬送する。また、ホルダ13の下部に、後述するロボット15のアームやクレーン16の爪で持ち上げるための円板を設けておき、これにより被検査物Wやホルダ13がロボット15やクレーン16の爪から外れて落ちにくくすることが好ましい。
【0016】
搬送装置12における遮蔽室1の出口11よりも後段には、良品と不良品の振分装置14が設けられている。この振分装置14としては、公知のものを適宜使用できるが、例えば、良品は搬送装置12の良品ライン12a側に流し、不良品が運ばれてきた場合に、プッシュロッドやロボットアームなどを用いて、搬送装置12上から不良品ライン12bに被検査物Wを排出するものが使用できる。
【0017】
遮蔽壁2に設けられた開口部3の近傍には、搬送装置12とターンテーブル8a,8bとの間で被検査物をやり取りする移載装置が設けられている。本実施形態では、移載装置として、被検査物本体の収容部1aに設置されたロボット15が使用される。ロボット15としては、収容部1aに設置された本体と、本体から延びる多関節アームを有するもので、多関節アームを開口部3から搬送装置12に向かって挿入して被検査物Wを把持して取り上げると共に、X線ビームBの照射範囲を乗り越えて照射範囲外にあるターンテーブル8b上に被検査物Wを載置するものを使用する。
【0018】
図3に示すように、検出器6には、検出器6によって得られたX線透過データに基づきCT画像を生成する再構成部20、再構成部20によって得られたCT画像に基づいて、被検査物Wの良品、不良品を判定する判定部21が接続されている。判定部21の出力側には振分制御部22が接続され、振分制御部22が振分装置14の良品と不良品の振分動作を制御する。
【0019】
[1-2.作用]
本実施形態において、被検査物Wは搬送装置12に載せられ、入口10を通って遮蔽室1の搬送部1b内に搬入される。搬送装置12上の被検査物Wはホルダ13と共に、ロボット15により搬送装置12上から持ち上げられ、遮蔽壁2の開口部3を通り、X線ビームB外にあるターンテーブル8bに載せられる。その状態で、テーブル切替機構9により支持部7がX線光軸と交差する方向に移動し、X線ビームB外のターンテーブル8bはX線ビームB内に配置される。
【0020】
X線ビームB内でターンテーブル8aは回転動作を行い、被検査物Wの全周方向からのX線透過データを検出器6にて収集する。この全周方向からのX線透過データを再構成部20にて画像再構成演算を行い、被検査物WのCT画像を生成する。X線透過データ収集が完了した被検査物Wは、テーブル切替機構9により支持部7及びターンテーブル8aと共にX線ビームBの外側に移動する。その後、検査が終了した被検査物Wは、X線ビームBの外側でロボット15により搬送装置12に戻される。
【0021】
生成されたCT画像に対して判定部21にて被検査物Wの良否判定を行い、その結果に基づき振分制御部22が振分装置14を作動させ、良品は搬送装置12の良品ライン12a側に、不良品は不良品ライン12b側に流すように仕分ける。
【0022】
X線ビームB内に移動したターンテーブル8a上の被検査物Wのデータ収集中に、先にデータ収集が完了しX線ビームB外部に移動したターンテーブル8b上の被検査物Wを、ロボット15にて搬送装置12に戻し、次の未検査の被検査物Wを搬送装置12からX線ビームB外のターンテーブル8bに載せておく。このようにすることで、テーブル切替機構9により検査済みの被検査物Wを載せたターンテーブル8aをX線ビームB外に移動させると同時に、次の未検査の被検査物Wを載せたターンテーブル8bをX線ビームBの照射位置に移動させることができる。その結果、複数の被検査物WのX線透過データを連続的に得ることができる。
【0023】
[1-3.効果]
(1)本実施形態では、遮蔽室1の内部に搬送装置12を配置し、しかも、遮蔽室1内の検査装置本体の収容部1aと被検査物Wの搬送部1bとの間に遮蔽壁2を設けたことにより、被検査物W等に当たって散乱したX線が遮蔽室1の外部に漏れることがなくなる。その結果、放射線源5は常にオンのままとすることが可能となり、検査時間を短縮することができる。
(2)ターンテーブル8a,8bを2つ設けて、X線ビームBの照射範囲内に交互に移動させることで、被検査物Wの交換作業に待ち時間が不要となり、その点からも検査時間の短縮が可能となる。
(3)遮蔽室1に被検査物Wを出し入れするための扉を設けることなく、搬送部1bの入口10と出口11、及び遮蔽壁2の開口部3のいずれも常時開放状態にあるので、遮蔽室1外部からX線ビームBの照射領域に対する被検査物Wの移動が短時間で円滑に実施できる。
【0024】
[2.第2実施形態]
第2実施形態を
図4及び
図5を参照して、説明する。第2実施形態は、第1実施形態のロボット15に代えて、天井クレーンを移載装置として使用したものである。すなわち、遮蔽室1の天井部分には、遮蔽壁2の開口部3を貫通して、搬送部1bから照射範囲外のターンテーブル8bにまで伸びるクレーン16が設けられている。このクレーン16の昇降部16aには、開閉する爪状の把持部16bが設けられ、この把持部16bによって上方から挟み込まれた状態で、被検査物Wは搬送装置12とターンテーブル8b間を移載される。
【0025】
このような構成を有する第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、放射線源5をオンとしたまま、遮蔽室1内部において被検査物Wの移送が可能である。また、支持部7に2つのターンテーブル8a,8bを設けることで、被検査物Wの移送とCTスキャンを同時に行うことが可能となり、検査時間の短縮を図ることができる。
【0026】
[3.他の実施形態]
本明細書においては、本実施形態に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0027】
例えば、図示の実施形態ではターンテーブルが8a,8bの2個となっているが、検査時間は余分にかかるがターンテーブルが1個であっても良い。この場合、透過データ収集が完了後、被検査物Wをコンベアに戻し、次の被検査物Wを搬送装置12から照射範囲外のターンテーブルに載せることになる。また、ターンテーブルを3個以上としても良い。
【0028】
クレーン16やロボット15以外の移載装置を使用することもできる。CTではない単なる透過型の放射線検出装置を使用した場合には、被検査物Wの載置部としてターンテーブルを使用することなく、支持部7上に被検査物Wの位置決め部材やストッパなどの載置部を設けることができる。
【符号の説明】
【0029】
W…被検査物
B…X線ビーム
1…遮蔽室
1a…検査装置本体の収容部
1b…被検査物の搬送部
2…遮蔽壁
3…開口部
4…試料テーブル
5…放射線源
6…検出器
7…支持部
8a,8b…ターンテーブル
9…テーブル切替機構
10…入口
11…出口
12…搬送装置
12a…良品ライン
12b…不良品ライン
13…ホルダ
14…振分装置
15…ロボット
16…クレーン
16a…昇降部
16b…把持部
20…再構成部
21…判定部
22…振分制御部