(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136535
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】トレーニング装置
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
H02B3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036198
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】川島 則孝
(72)【発明者】
【氏名】浜谷 浩行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健悟
(72)【発明者】
【氏名】玉作 朋之
(72)【発明者】
【氏名】今村 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】山下 眞治
(57)【要約】
【課題】電気関係作業のトレーニングに適したトレーニング装置を提供する。
【解決手段】電気関係作業のトレーニングのためのトレーニング装置1であって、可搬式の筐体2と、筐体2内に設置された、600Vを超える高圧の環境下で使用可能な電力機器(例えば刃型スイッチ13aを有する断路器13やがいし17で保持される銅帯17a)と、100Vの交流電圧を供給する電源を利用して、電力機器に600V以下の低圧を印加する電力出力装置として機能する変圧器25とを備える。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気関係作業のトレーニングのためのトレーニング装置であって、
可搬式の筐体と、
前記筐体内に設置された、600Vを超える高圧の環境下で使用可能な電力機器と、
前記電力機器に600V以下の低圧を印加する電圧出力装置とを備えたことを特徴とするトレーニング装置。
【請求項2】
前記電力機器として刃型スイッチを有する断路器が設置されており、前記刃型スイッチを開閉操作する作業のトレーニングが実施可能であることを特徴とする請求項1に記載のトレーニング装置。
【請求項3】
前記電力機器として検電対象部が設置されており、前記検電対象部の検電作業のトレーニングが実施可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトレーニング装置。
【請求項4】
前記電力機器として短絡接地器具を接続する接続部が設置されており、前記接続部に短絡接地器具を接続する作業のトレーニングが実施可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトレーニング装置。
【請求項5】
前記電圧出力装置は、100Vの交流電圧を供給する電源を利用して、前記電力機器に600V以下の低圧を印加することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトレーニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気関係作業のトレーニングのためのトレーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気関係作業の一つとして、停電作業がある。
図3~
図5を参照して、高圧(一般的には交流にあって600Vを超える電圧)の環境下における停電作業の例を述べる。作業者は、不図示の遮断器操作スイッチにより遮断器をオフにした後、
図3に示すように、断路器101の刃型スイッチ101aを開操作して、U相、V相、W相の断路器101を開放する。刃型スイッチ101aの開閉操作には、必要に応じてフック棒102を使用する。次に、
図4に示すように、作業者は、各相の断路器101から延出する電線103が接続する各相のがいし104の接続部105に検電器106を接触させ、停電を確認する。検電器106は、検知子を電路に接触させて、発光や発音の表示によって電路の充電、停電を判別するための機器であり、例えば特許文献1等にあるように伸縮可能なもの等が知られている。次に、
図5に示すように、作業者は、アースフックと呼ばれる短絡接地器具107を用いて、まず図示は省略するが短絡接地器具107の接地金具をアース端子(接地母線)に接続し、続いて短絡接地器具107の頭部金物108を各相の接続部105に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような電気関係作業に関して、未熟者への教育のためにトレーニングが必要である。この場合に、現場において、熟練者がマンツーマンで未熟者を指導することが考えられる。しかしながら、実電圧の環境下でのトレーニングとなり、高圧の環境下では、安全を確保するための負担が大きくなる。また、あらかじめ無電圧としてからトレーニングを実施するようにした場合は、臨場感のあるトレーニングが難しくなる。
【0005】
本発明は、電気関係作業のトレーニングに適したトレーニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトレーニング装置は、電気関係作業のトレーニングのためのトレーニング装置であって、可搬式の筐体と、前記筐体内に設置された、600Vを超える高圧の環境下で使用可能な電力機器と、前記電力機器に600V以下の低圧を印加する電圧出力装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気関係作業のトレーニングに適したトレーニング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】実施形態に係るトレーニング装置を示す正面図である。
【
図1B】実施形態に係るトレーニング装置を示す右側面透過図である。
【
図1C】実施形態に係るトレーニング装置の筐体内を示す正面図である。
【
図2】トレーニング装置における回路構成の概要を説明するための図である。
【
図3】電気関係作業の例を説明するための図である。
【
図4】電気関係作業の例を説明するための図である。
【
図5】電気関係作業の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態では、高圧(一般的には交流にあって600Vを超える電圧)の環境下、より具体的には3kV~7kVの高圧の環境下での停電作業等の電気関係作業を想定して、そのトレーニングに適したトレーニング装置を説明する。
図1A~
図1Cに、実施形態に係るトレーニング装置1を示す。
図1Aはトレーニング装置1の正面図、
図1Bはトレーニング装置1の右側面透過図、
図1Cはトレーニング装置1の筐体2内を示す正面図である。なお、以下では、
図1Aを正面(前面)とし、それを基準として前後、左右、上下の方向を説明する。また、
図2は、トレーニング装置1における回路構成の概要を説明するための図である。
【0010】
図1A~
図1Cに示すように、トレーニング装置1は、可搬式の筐体2を備える。筐体2は、底板部3と、底板部3の四隅に立設される4本の柱4と、4本の柱4の上端で前後左右に架設される梁5とを有する。また、
図1Bに示すように、筐体2の左右において、前後の柱4の上部間には、前後に延びる補強梁6が架設される。また、前の柱4の後方であって、底板部3と補強梁6との間に、上下に延びる補強柱7が立設される。このようにして構成されるフレームに対して上面、左右面、及び後面を構成する板材8が設けられるとともに、前面に扉9が設けられる。板材8や扉9は、軽量化を図るためにポリ塩化ビニル等の合成樹脂製とする。
【0011】
筐体2の底部には、トレーニング装置1を走行移動させるためのキャスタ10と、トレーニング装置1を固定するのに使用されるアジャスタボルト11とが取り付けられる。例えば
図1Bに示すように、床板部3に、前後方向に伸縮可能な支持バー12に設置し、この支持バー12にアジャスタボルト11を取り付けるようにしてもよい。これにより、トレーニング装置1を固定するときに、トレーニング装置1の前後方向の支持間隔を広げて、転倒防止効果を高めることができる。
【0012】
筐体2内には、U相用、V相用、W相用の3台の断路器13が左右に並ぶように設置される。断路器13の具体的な支持構造の説明は省略するが、筐体2の後面付近でフレームを利用して支持されるようにすればよい。各断路器13は、刃型スイッチ13aを有する。3台の断路器13の刃型スイッチ13aはリンクを介してレバー14に連係し、レバー14の引き操作、押し操作で、3台の断路器13の開操作、閉操作を一括して行う構成になっている。各断路器13において、刃型スイッチ13aを挟んで一端側には絶縁電線15が接続し、他端側には絶縁電線16が接続する。なお、断路器13は、現場で実際に使用可能、すなわち高圧の環境下で使用可能な断路器であり、本発明でいう電力機器の一例である。
【0013】
また、筐体2内の上部には、U相用、V相用、W相用のがいし17が設置される。例えば前列にU相用の銅帯17aを保持する2つのがいし17、中央列にV相用の銅帯17aを保持する2つのがいし17、後列にW相用の銅帯17aを保持する2つのがいし17が設置される。がいし17の具体的な支持構造の説明は省略するが、筐体2の天井面付近でフレームを利用して支持されるようにすればよい。がいし17は、電線を接続する銅帯17aを保持し、銅帯17aに絶縁電線18が接続する。絶縁電線18は、後述する制御盤24において、断路器13に接続する絶縁電線16に接続する。なお、がいし17で保持される銅帯17aは、現場で実際に使用可能、すなわち高圧の環境下で使用可能な電路であり、本発明でいう電力機器の一例である。
【0014】
また、筐体2内の下部には、端子台19が設置される。端子台19の具体的な支持構造の説明は省略するが、筐体2の後面付近でフレームを利用して支持されるようにすればよい。端子台19には、断路器13に接続する絶縁電線15が接続する。また、端子台19には、ケーブル(絶縁電線よりさらに被覆を強化されたもの)20が接続する。絶縁電線15は、現場において高圧電源に接続する電線に相当するが、トレーニング装置1においては、絶縁電線15が接続する端子台19に接続するケーブル20の先端が切断されている。なお、端子台19は、現場で実際に使用可能、すなわち高圧の環境下で使用可能な端子台であり、本発明でいう電力機器の一例である。
【0015】
また、筐体2内の下部には、左右の補強柱7間に架設される支持フレーム22が設置される。支持フレーム22は上下2本あり、これら2本の支持フレーム22には、遮断器の絵又は写真が記載されたパネル23が貼り付けられる。なお、パネル23は、支持フレーム22に対して面ファスナ等を介して着脱可能とするのがよい。
【0016】
また、筐体2内の下部には、制御盤24が設置される。制御盤24の具体的な支持構造の説明は省略するが、筐体2の側面付近でフレームを利用して支持されるようにすればよい。制御盤24には、後述する変圧器25、低圧遮断器26、ヒューズ27、低圧電磁開閉器28が実装される。
【0017】
また、筐体2内の下部には、接地母線となる接地銅帯21が設置される。
【0018】
また、
図1Aに示すように、筐体2の側面下部からは、電源に接続するための電源コード29が導出される。電源コード29は、いわゆる商用電源(単相100Vの交流電圧を供給する電源)に接続するためのコンセントプラグ30を具備する。また、電源コード29には、ペンダントスイッチ31が設けられる。
【0019】
また、扉9には、電源表示灯32、電圧計33、遮断器状態表示灯(赤ランプ及び緑ランプ)34、遮断器操作スイッチ35が設置される。
【0020】
なお、トレーニング装置1の高さは、一般的な人の身長に合わせて、例えば160cm~190cm程度の高さとする。これにより、トレーニング装置1の大型化を避け、可搬性を損なわないようにしつつ、トレーニングを実施するときに、作業者が自然な体勢で作業を行うことが可能になる。なお、トレーニング装置1の前後左右幅も例えば100cm未満の寸法とし、重量も数十kg程度として、トレーニング装置1の大型化を避け、可搬性を損なわないようにするのが好ましい。
【0021】
次に、
図2を参照して、トレーニング装置1における回路構成の概要を説明する。
変圧器25の入力部に、電源コード29が接続する。変圧器25は、商用電源の100Vの交流電圧を例えば200V~440V程度の交流電圧に変圧する。変圧器25の出力部に、低圧遮断器26を介して、断路器13が接続する。例えば低圧遮断器26の単相U相と断路器13の三相のうちのU相が接続され、低圧遮断器26の単相V相と断路器13の三相のうちのV相及びW相が接続されるようにする。
また、電源コード29には、ペンダントスイッチ31よりも下流、かつ、変圧器25よりも上流に、ヒューズ27を介して電源表示灯32、電圧計33が接続する。
【0022】
各相の断路器13に接続する絶縁電線16は、現場においてVCB(Vacuum Circuit Breaker)等の遮断器36を介して母線に接続する電線に相当する。遮断器36の開閉は遮断器操作スイッチに連動し、また、遮断器操作スイッチの位置に応じて、遮断器状態表示灯が状態を表示するように構成される。トレーニング装置1においては、実際の遮断器36の重量が大きいことから、遮断器36の代わりに、遮断器の絵又は写真が記載されたパネル23が設けられる。そして、回路上では、各相の断路器13に接続する絶縁電線16は、模擬遮断器である低圧電磁開閉器28及び絶縁電線18を介して各相の銅帯17aに接続する。そして、低圧電磁開閉器28のオンオフを遮断器操作スイッチ35に連動させ、また、遮断器操作スイッチ35の位置に応じて、遮断器状態表示灯34が状態を表示するように構成する。
【0023】
各相の断路器13に接続する絶縁電線15は、現場において高圧電源に接続する電線に相当する。トレーニング装置1においては、各相の断路器13に接続する絶縁電線15が端子台19に接続し、端子台19に接続するケーブル20の先端が切断されている。
【0024】
このようにしたトレーニング装置1において、電源コード29のコンセントプラグ30を電源に接続した状態で、ペンダントスイッチ31がオンの場合、電源表示灯32がオン表示になり、電圧計33が電圧を表示する。商用電源を電源としているが、電圧計33は、模擬的に高圧を表示するようにスケール変換する。
そして、模擬遮断器(低圧電磁開閉器28)がオンであるとき、断路器13が閉状態にあれば、絶縁電線15の領域、絶縁電線16の領域、及び絶縁電線18の領域はいずれも充電状態にある。この状態で、レバー14の引き操作を行って断路器13を開放すると、絶縁電線15の領域は充電状態にあるが、絶縁電線16の領域及び絶縁電線18の領域は停電状態になる。
また、模擬遮断器(低圧電磁開閉器28)がオフであるとき、断路器13が閉状態にあれば、絶縁電線15の領域及び絶縁電線16の領域は充電状態、絶縁電線18の領域は停電状態にある。この状態で、レバー14の引き操作を行って断路器13を開放すると、絶縁電線15の領域は充電状態にあるが、絶縁電線16の領域及び絶縁電線18の領域は停電状態になる。
【0025】
なお、ペンダントスイッチ31がオフの場合、電源表示灯32がオフ表示になり、電圧計33は電圧を表示しない。また、絶縁電線15の領域、絶縁電線16の領域、及び絶縁電線18の領域はいずれも停電状態にある。
【0026】
本実施形態に係るトレーニング装置1では、断路器13の刃型スイッチ13aを開閉操作する作業(
図3で説明した作業に相当)のトレーニングが実施可能である。なお、
図1Bに示すように、筐体2内に、レバー14を操作するためのフック棒37を収容しておき、フック棒37を使用して刃型スイッチ13aの開閉操作を行うようにしてもよい。また、刃型スイッチ13aの開閉接触部分の噛み合わせを、現場で実際に設置される場合の噛み合わせよりも緩くしておき、刃型スイッチ13aの開閉操作の際にトレーニング装置1に大きな力が作用しないようにしてもよい。
【0027】
また、本実施形態に係るトレーニング装置1では、銅帯17a、断路器13における絶縁電線15、16との接続部、端子台19を検電対象部として、検電器を使用しての検電作業(
図4で説明した作業に相当)のトレーニングが実施可能である。例えば銅帯17a(絶縁電線18の領域)では、模擬遮断器(低圧電磁開閉器28)のオンオフや、断路器13の開閉に応じて停電/充電状態に切り替わるので、現場での作業に即したトレーニングが実施可能である。
【0028】
また、本実施形態に係るトレーニング装置1では、銅帯17a、断路器13における絶縁電線15、16との接続部、端子台19や、接地銅帯21を接続部として、短絡接地器具を接続する作業(
図5で説明した作業に相当)のトレーニングが実施可能である。
【0029】
また、本実施形態に係るトレーニング装置1では、電源表示灯32、電圧計33、遮断器状態表示灯34の表示確認作業のトレーニングや、遮断器操作スイッチ35のオンオフ作業のトレーニングが実施可能である。
【0030】
そして、上述したトレーニングを、現場でなく、教室や講義室等の安全エリアにトレーニング装置1を設置して実施することができる。トレーニング装置1によるトレーニングは、実電圧(高圧)の環境下でのトレーニングではなく、低圧の環境下でのトレーニングであり、高圧の環境下で確保すべき安全対策までは要求されない。一方で、無電圧ではなく、電圧が発生している環境下でのトレーニングであり、臨場感のあるトレーニングを実施することができる。
以上のように、電気関係作業のトレーニングに適したトレーニング装置1を提供することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、変圧器25が本発明でいう電圧出力装置に相当し、200V~440V程度の交流電圧に変圧する例を述べたが、単相100Vの交流電圧を供給する電源を利用して、電力機器に600V以下の低圧を印加するものであればよい。ここで、検電器として、低圧~高圧に対応するものが市販されている。電圧出力装置が電力機器に印加する電圧を、現場(高圧の環境下)で実際に使用する検電器の動作電圧の低圧側の範囲内とすれば、実際に使用する検電器を使用したトレーニングが可能である。
【0032】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0033】
1:トレーニング装置、2:筐体、13:断路器、13a:刃型スイッチ、17:がいし、17a:銅帯、19:端子台、21:接地銅帯、25:変圧器、29:電源コード