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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136560
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20220913BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20220913BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220913BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220913BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L27/00 Z
A23L2/52
A23L2/38 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036237
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慈
(72)【発明者】
【氏名】高岸 知輝
(72)【発明者】
【氏名】武邑 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】石引 智子
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB08
4B047LF07
4B047LG06
4B117LC03
4B117LG13
4B117LK06
4B117LK07
4B117LP04
(57)【要約】
【課題】イソブチルアルデヒドが一定濃度で含まれていても、異臭が抑制された飲食品を提供すること。
【解決手段】飲食品は、15~150ppbの含有量のイソブチルアルデヒドを含有し、2-フェニルエチルアルコールを1.1~1000ppbの含有量で含有する。飲食品中の2-フェニルエチルアルコールの含有量は2.0~300ppbであってもよい。飲食品は飲料であってもよく、焙煎された穀物の抽出液を含む飲料であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
15~150ppbの含有量のイソブチルアルデヒドを含有する飲食品であり、
2-フェニルエチルアルコールを1.1~1000ppbの含有量で含有する、
飲食品。
【請求項2】
前記2-フェニルエチルアルコールの含有量が2.0~300ppbである、請求項1に記載の飲食品。
【請求項3】
前記飲食品が飲料である、請求項1又は2に記載の飲食品。
【請求項4】
前記飲食品が焙煎された穀物の抽出液を含む飲料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲食品。
【請求項5】
イソブチルアルデヒドの含有量が15~150ppbである飲食品に、2-フェニルエチルアルコールをその含有量が1.1~1000ppbとなるように添加する、
飲食品の異臭の抑制方法。
【請求項6】
2-フェニルエチルアルコールを含み、
イソブチルアルデヒドの含有量が15~150ppbである飲食品中に、前記2-フェニルエチルアルコールの含有量が1.1~1000ppbとなるように添加して用いられる、
飲食品の異臭の抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品においては、素材本来の味わいや濃さを強化した設計が求められることが多い。これらの要求される品質を満たすうえでは、様々な素材の選定や抽出技術によって香味を設計することが不可欠である。しかし、天然の素材由来の抽出物を含む場合においては、設計の過程で嗜好性を低下させる好ましくない成分が混入してしまうことも少なくない。そのような嗜好性の低下に影響を与える成分の一つとして、イソブチルアルデヒドが知られている。イソブチルアルデヒドは、飲食品中に少量存在するだけでも焦げ臭といった異臭として感じられ、香味に悪影響を及ぼす。
【0003】
飲食品の焦げ臭を抑制する方法として、例えば特許文献1では、麦芽飲料に着色料を加える方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-188160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、飲食品において、イソブチルアルデヒドによる異臭を効率的に緩和させる手段は知られていない。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、イソブチルアルデヒドが一定濃度で含まれていても、異臭が抑制された飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、例えば天然の素材由来の抽出物に由来して所定の含有量でイソブチルアルデヒドが含有される飲食品において、所定の量の2-フェニルエチルアルコールが含有されることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
<1> 15~150ppbの含有量のイソブチルアルデヒドを含有する飲食品であり、
2-フェニルエチルアルコールを1.1~1000ppbの含有量で含有する、
飲食品。
【0009】
<2> 前記2-フェニルエチルアルコールの含有量が2.0~300ppbである、<1>に記載の飲食品。
【0010】
<3> 前記飲食品が飲料である、<1>又は<2>に記載の飲食品。
【0011】
<4> 前記飲食品が焙煎された穀物の抽出液を含む飲料である、<1>~<3>のいずれか一つに記載の飲食品。
【0012】
<5> イソブチルアルデヒドの含有量が15~150ppbである飲食品に、2-フェニルエチルアルコールをその含有量が1.1~1000ppbとなるように添加する、
飲食品の異臭の抑制方法。
【0013】
<6> 2-フェニルエチルアルコールを含み、
イソブチルアルデヒドの含有量が15~150ppbである飲食品中に、前記2-フェニルエチルアルコールの含有量が1.1~1000ppbとなるように添加して用いられる、
飲食品の異臭の抑制剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、イソブチルアルデヒドが一定濃度で含まれていても、異臭が抑制された飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書において「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0016】
<1.飲食品>
飲食品は、例えば天然の素材由来の抽出物に由来して15~150ppbの含有量のイソブチルアルデヒドを含有する飲食品であって、2-フェニルエチルアルコールを1.1~1000ppbの含有量で含有する。このように特定の割合で2-フェニルエチルアルコールを含有するよう設計することで、イソブチルアルデヒドによる異臭が抑制された飲食品とすることができる。
【0017】
なお、本明細書において、「異臭」とは、イソブチルアルデヒドによる焦げ臭といったオフフレーバーを意味する。
【0018】
2-フェニルエチルアルコールは、日本酒やワインの香気成分であるが、本発明者らは、イソブチルアルデヒドを含有する飲食品に2-フェニルエチルアルコールを含有させることで、意外にも異臭が抑制されることを見出した。
【0019】
飲食品の種類は特に限定されるものではなく、例えば、飲料、焼き菓子(クッキー、ビスケット、ケーキ、ドーナツ等)等が挙げられる。中でも、様々な素材の抽出物を含有させることによりイソブチルアルデヒドが混入しやすいという観点から、飲食品は飲料であることが好ましく、焙煎された穀物の抽出液を含む飲料であることがより好ましく、茶飲料であることが更に好ましい。
【0020】
飲食品が焙煎された穀物の抽出液を含む飲料である場合、ある一種の焙煎された穀物を抽出して得られる抽出物を含む液体だけでなく、その抽出物に他の植物の抽出物を混合して得られる液体、もしくはこれらの液体に添加物を加えて得られる液体、又はこれらの液体を乾燥したものを分散させてなる液体等を含む。
【0021】
飲食品が茶飲料である場合、茶飲料に含まれる抽出物の由来となる植物の品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法は限定されない。植物の種類も特に限定されず、例えば、大麦、ハトムギ、玄米、ハブ茶、トウモロコシ、黒豆、大豆、小豆、芋、びわの葉、チャの葉、昆布、熊笹、ごま、柿の葉、アマチャヅル、桑の葉、霊芝、クコ、みかんの皮、ユズの皮、杜仲葉、シソの葉、ドクダミ、オオバコ、ギムネマ、ルイボス、ラフマ、タンポポ、ペパーミント、モロヘイヤ、陳皮、イチョウ、松葉、蓮、オリーブ、大麦若葉、カワラケツメイ、仙草、明日葉、よもぎ、月見草等を用いることができる。これらの植物のうち、大麦、ハトムギ、玄米、ハブ茶、トウモロコシ、小豆、びわの葉、ユズの皮、タンポポ、カワラケツメイからなる群から選択される一種以上を用いることが好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
[イソブチルアルデヒド]
飲食品にはイソブチルアルデヒドが含まれる。飲食品中のイソブチルアルデヒドの含有量は15~150ppbの範囲である。また、飲食品中のイソブチルアルデヒドの含有量は30ppb以上であってもよく、40ppb以上であってもよく、50ppb以上であってもよい。
【0023】
他方で、イソブチルアルデヒドによる異臭が過度にならないようにする観点から、飲食品中のイソブチルアルデヒドの含有量の上限は、100ppb以下であってもよく、70ppb以下であってもよい。
【0024】
飲食品中のイソブチルアルデヒドの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。GC-MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。また、各原料中における濃度が把握できている場合には計算することもできる。
[2-フェニルエチルアルコール]
飲食品には2-フェニルエチルアルコールが含まれる。2-フェニルエチルアルコールとしては、特に限定されないが、化合物の市販品を用いて配合したり、2-フェニルエチルアルコールが含まれる天然物やその抽出物等を配合することができる。
【0025】
また、2-フェニルエチルアルコールは発酵素材に多く含まれるため、飲食品は発酵した原料を含むものであってもよい。
【0026】
飲食品中の2-フェニルエチルアルコールの含有量は、1.1~1000ppbの範囲である。飲食品中の2-フェニルエチルアルコールの含有量をこのような範囲に設定することで、イソブチルアルデヒドが含まれる飲食品における異臭を低減させることができる。イソブチルアルデヒドによる異臭の抑制効果を高める観点から、飲食品中の2-フェニルエチルアルコールの含有量は2.0ppb以上であってもよい。
【0027】
他方で、2-フェニルエチルアルコールを大量に入れると飲食品のおいしさが損なわれる場合がある。したがって飲食品のおいしさを良好に保つという観点から、飲食品中の2-フェニルエチルアルコールの含有量の上限は500ppb以下であることが好ましく、300ppb以下であることがより好ましく、50ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが特に好ましい。
【0028】
飲食品中の2-フェニルエチルアルコールの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定することができる。GC-MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。また、各原料中における濃度が把握できている場合には計算することもできる。
【0029】
[その他の成分]
飲食品においては、その効果を阻害しない範囲で、一般的な飲食品に通常用いられる他の原料や添加剤を適宜配合できる。なお、配合量は目的とする効果に応じて適宜調整できる。具体的には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
[容器]
製造された飲食品が例えば飲料である場合、容器に充填することで容器詰飲料とすることができる。容器としては、飲料業界で公知の密封容器であればよく、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定できる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体、又はこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。特に、透明(半透明も含む)容器が好ましい。透明容器は全体が透明であっても、一部が透明であってもよい。
【0031】
<2.飲食品の製造方法>
飲食品は、飲食品の製造において採用される任意の条件や方法を用いて製造できる。例えば、イソブチルアルデヒドの含有量が15~150ppbである飲食品に、含有量が1.1~1000ppbとなるように2-フェニルエチルアルコールを添加し、更にその他必要に応じて加えられる成分を添加するなどして飲食品を調製する。
【0032】
飲食品中のイソブチルアルデヒドの含有量は任意の適当な方法により調整すればよい。また、2-フェニルエチルアルコールを添加する方法は、常法にしたがえばよい。
【0033】
飲食品の製造方法は特に限定されず、飲食品が例えば飲料である場合、準備されたそれぞれ所定量の成分を含有する抽出液等及び所定量の2-フェニルエチルアルコールを、順次又は同時に添加し、撹拌等により混合する方法が挙げられる。各成分の混合順序等については、特に限定されない。また、複数の植物を予め混合して抽出処理を行って抽出液を得た後に、得られた抽出液に2-フェニルエチルアルコールを所定濃度となるように添加する方法も挙げられる。2-フェニルエチルアルコールを添加するにあたっては、香料(化学合成された化合物等)として添加する方法、2-フェニルエチルアルコールを含む食品素材を添加する方法等が挙げられる。
【0034】
飲食品が例えば飲料である場合、容器に充填して容器詰飲料とすることができ、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0035】
<3.飲食品の異臭の抑制方法>
上記のとおり、本発明によれば、イソブチルアルデヒドの含有量が15~150ppbである飲食品に、2-フェニルエチルアルコールをその含有量が1.1~1000ppbとなるように添加することで、イソブチルアルデヒドによる異臭を抑制させることができる。
【0036】
<4.飲食品の異臭の抑制剤>
飲食品の異臭の抑制剤は、2-フェニルエチルアルコールを含むものである。この抑制剤は、イソブチルアルデヒドの含有量が15~150ppbである飲食品中に、2-フェニルエチルアルコールの含有量が1.1~1000ppbとなるように添加して用いられる。
【0037】
飲食品の異臭の抑制剤は、本分野において採用される任意の方法や適当な改良を加えた方法によって製造することができる。また、飲食品の異臭の抑制剤に2-フェニルエチルアルコール以外の成分が含まれる場合、その種類及び含量は、得ようとする効果に応じて適宜設計できる。
【実施例0038】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0039】
≪試験1:イソブチルアルデヒド添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
焙煎した大麦(L*=41)10gを、90℃、30倍容の水で抽出した。なお、上記L*値は室温にした試料をミルサー IFM-300(岩谷産業社製)を用いて20秒間粉砕した後に、粉砕後の試料を分光色差計 SE7700(日本電色工業社製)を用いて反射法にて測定して得られた値である。得られた抽出液にL-アスコルビン酸ナトリウム0.3g、L-アスコルビン酸0.1g、炭酸水素ナトリウム0.2gをそれぞれ添加し、純水で1000gに定容し、調合液を得た。得られた調合液をUHT殺菌後、10倍に希釈して無菌的にPETボトルに充填し、サンプル(基準品1)を得た。得られた基準品1にイソブチルアルデヒドを5~50ppbの各濃度となるように添加し、評価に用いる試験サンプルを作製した。
【0040】
[イソブチルアルデヒド含有量の分析]
基準品1及び試験サンプル中におけるイソブチルアルデヒドの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、分析対象である飲料100μLをバイアル瓶(容量10mL)に入れ、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC-MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC-MSの分析条件>
・機器 GC:Agilent 7890B GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:Agilent 7000D GC/MS Triple Quad(アジレント・テクノロジー社製)
捕集管(吸着剤):Tenax TA、Carbopack-B & Carbopack-X
・カラム :DB-WAX UI、20m×0.18mm、膜厚0.30μm(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法 :スプリットレス
・キャリアガス :He(1.0ml/分)
・トランスファーライン :250℃
・昇温プログラム :40℃(3分間保持)→5℃/分→240℃(7分間保持)
・プリカーサーイオン>プロダクトイオン(CE(コリジョンエネルギー))
:Isobutylaldehyde 72>43(5V)
・イオン化方法 :EI
・四重極温度 :150℃
・イオン源温度 :230℃
【0041】
[官能評価]
作製した基準品1及び試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品1に対して、「おいしさ」、「香りの良さ」、「焦げ感」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、基準品1の点数を基準値(4点)として評価した。なお、「おいしさ」は「嗜好性の高さ」を、「香りの良さ」は「穀物茶全体の香りの印象」を、「焦げ感」は「苦味、えぐみ、焦げっぽい香り」をそれぞれ評価した。
【0042】
「おいしさ」、「香りの良さ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり良い
6点:良い
5点:やや良い
4点:基準品と同等
3点:やや悪い
2点:悪い
1点:かなり悪い
【0043】
「焦げ感」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0044】
(結果)
下記表1に基準品1及び試験サンプル中のイソブチルアルデヒド濃度及び官能評価結果を示す。なお、「おいしさ」、「香りの良さ」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「焦げ感」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており、評価が高いことを意味する。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されるとおり、イソブチルアルデヒド濃度が高くなると「焦げ感」が強く感じられるようになり、「おいしさ」及び「香りの良さ」が不良であった。
【0047】
≪試験2:2-フェニルエチルアルコール添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
上記で得られた基準品1にイソブチルアルデヒドを150ppbの濃度となるように添加し、基準品2を作製した。なお、基準品2の2-フェニルエチルアルコール濃度は0.09ppbであった。得られた基準品2に2-フェニルエチルアルコールを0.2~1000ppbの濃度となるように添加し、試験サンプルを作製した。
【0048】
基準品2及び試験サンプル中における2-フェニルエチルアルコールの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC-MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
<GC-MSの分析条件>
・機器:GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
HS:Gerstel社製MPS,
TUBE:Tenax TA、CarbopackB/X
・カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
・定量イオン:2-phenylethylalcohol m/z=91
・温度条件:40℃(2分)~8℃/分→240℃(10分)
・キャリアガス流量:He 1ml/分
・注入法:スプリットレス
・イオン源温度:230℃
【0049】
[官能評価]
作製した基準品2及び試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品に対して、「おいしさ」、「香りの良さ」、「焦げ感」について比較評価することで行った。各評価点数は、試験1と同様の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、基準品2の点数を基準値(4点)として評価した。
【0050】
(結果)
下記表2に基準品2及び試験サンプル中のイソブチルアルデヒド濃度、2-フェニルエチルアルコール濃度、及び官能評価結果を示す。なお、「おいしさ」、「香りの良さ」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「焦げ感」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており、評価が高いことを意味する。
【0051】
【表2】
【0052】
表2に示されるとおり、実施例1~5では、比較例1と比べて「焦げ感」が抑制されていた。また、実施例1~4では、「焦げ感」の抑制に加えて、「おいしさ」が同等であるか又は向上しており、更に実施例1~3では、「香りの良さ」も同等であるか又は向上していた。