(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136576
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】電動クレンメと自然落下式輸液制御装置
(51)【国際特許分類】
A61M 39/28 20060101AFI20220913BHJP
【FI】
A61M39/28 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036256
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】592222525
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】古屋 明彦
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066QQ15
4C066QQ92
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造を単純化し、軽量化、小型化を向上できる電動クレンメを提供する。
【解決手段】下側チューブクランプ31のチューブ保持面で対向する一対の圧迫凸条37、37が平行に設けられている。チューブTがクランプされると、圧接部位t、tの間ではチューブTの内面どうしが重ね合った状態になるが、その両側には流路Fが確保されている。一方、チューブTが下側チューブクランプ31に対して摺動方向に引っ張られても、摺動方向に沿って長い圧接部位tがあるので、摺動抵抗が大きくなっており、摺動し難くなっている。従って、一対のチューブクランプ31を直列させてチューブTを延ばした状態でクランプした後に、互いに直線方向で接近させるだけで、クランプ間のチューブTの長さを一定にしながら初期の「く」の字状に折り曲げることができ、曲げ角度と流量との相関関係を常に再現できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のチューブクランプと、前記一対のチューブクランプの一方のチューブクランプに対して他方のチューブクランプを接離動作させる電動式移動手段とを備え、前記一対のチューブクランプで「く」の字状に折り曲げた状態でクランプされた可撓性チューブの中間部が、前記他方のチューブクランプの接近により「く」の字が鋭角化することで前記中間部の流路が狭窄化する電動クレンメにおいて、
各チューブクランプのチューブ保持面で対向する一対の圧迫凸条がクランプする可撓性チューブの軸方向に対して平行に設けられていることを特徴とする電動クレンメ。
【請求項2】
請求項1に記載した電動クレンメにおいて、
チューブクランプでは凹断面状のガイド部と前記ガイド部を閉じる扉片のそれぞれの内面でチューブ保持面が構成されており、前記扉片側に一方の圧迫凸条が設けられていることを特徴とする電動クレンメ。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電動クレンメにおいて、
一対のチューブクランプのチューブ保持面は直列しており、他方のチューブクランプの接離動作に影響されずに、この並び状態は維持されることを特徴とする電動クレンメ。
【請求項4】
請求項3に記載した電動クレンメにおいて、
ケースと、前記ケースに対して固定的に取付けられた一方のチューブクランプと、電動式移動手段を搭載し、前記ケースに対してスライド可能に取付けられたスライドベースと、前記スライドベースに対して移動可能に取付けられた他方のチューブクランプを有して、前記ケースに対する前記スライドベースの位置の変更により、可撓性チューブの中間部が直線状に延びたチューブセット用クランプ姿勢と、「く」の字状に折り曲げられた流量制御中クランプ姿勢の間で変更可能に姿勢変更機構を備えることを特徴とする電動クレンメ。
【請求項5】
請求項4に記載した電動クレンメにおいて、
姿勢変更機構では、
ケース側の被係止突起と、スライドベース側の舌状片に設けられた係止突起を備え、前記舌状片の弾性的回動を利用して前記被係止突起を前記係止突起が乗り越えた後に係止することで流量制御中クランプ姿勢にロックされることを特徴とする電動クレンメ。
【請求項6】
請求項5に記載した電動クレンメにおいて、
姿勢変更機構では、
被係止突起の傾斜面と係止突起の傾斜面がスライド方向で圧接可能に対向し、且つ、前記係止突起を押下げる押下げシャフトを備えて、前記被係止突起の傾斜面に前記係止突起の傾斜面が圧接されて滑動させられるか、または、前記係止突起が押下げられるかで、前記被係止突起を前記係止突起が乗り越え可能になっており、
傾斜面を利用した乗り越えで流量制御中クランプ姿勢に移行し、押下げを利用した乗り越えでロック解除されることを特徴とする電動クレンメ。
【請求項7】
請求項3から6のいずれかに記載した電動クレンメにおいて、
一方のチューブクランプの下側に他方のチューブクランプが配置され、更に、前記他方のチューブクランプの下側に可撓性チューブを摺動可能にガイドするガイド溝が配置されていることを特徴とする電動クレンメ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載した電動クレンメと、点滴筒に装着される滴下検出部を備え、前記滴下検出部からの滴下情報に基づいて前記電動クレンメが制御されることを特徴とする自然落下式輸液制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動クレンメと、それを利用して自然落下方式で輸液を電気的に制御できる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、自然落下方式で輸液を制御する場合には、クレンメが利用されてきた。このクレンメは、手動でころ状の部品でチューブを圧迫し、狭窄させることによって流量を調整するようになっている。
ところで、抗がん剤のような血管外漏出時に組織障害を悪化させるような薬剤を投与する場合には、安全で且つ確実な輸液の管理を図るために、自然落下方式が推奨されている。
而して、クレンメは上記したように手動式であったため、抗がん剤のような長時間にわたる微妙な流量制御を要求するような薬剤の投与に対して利用することは現場での作業負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-62371号公報
【特許文献2】特開2020-191958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それに応じて、手動式のクレンメに代えて、最近では滴下状態を検出する検出部と併用して、チューブの狭窄、すなわち開閉を電気的に制御する電動式のクレンメが提案されているが、チューブを全閉するには意外に大きな力が必要であり、特許文献1に記載のように、チューブの開閉を担う部位を大掛かりに装置化することになり、当然ながらサイズや重量も無視できないものとなる。そのため、台の上に載せるか、点滴スタンドに支持させることになるが、適当な高さの台が都合よくその場所にあることはそうそうない。また、病院等によっては、天井に吊下げたハンガーに点滴バッグを掛けるようになっており、点滴スタンドを使用しない場合もある。更に、費用の点からも割高感は否めない。
【0005】
それに対して、我々は、先に、特許文献2で、チューブの開閉を担う部位を電動式で構成しながら手動式のクレンメと同様に扱えるようなサイズおよび重量で構成できる電動クレンメを提案した。
この電動クレンメでは、一対のチューブクランプでチューブを「く」の字状に折り曲げた状態でクランプし、その部分をモータ駆動により更に鋭角的に折り曲げることで流路を狭窄する仕組みになっており、流量制御の精度を高めるために、モータ駆動による一方のチューブクランプの移動とチューブの曲げ角度との相関関係が常に一定に維持されることが必要になっている。
而して、チューブクランプでチューブをしっかりとクランプすると、チューブは可撓性のため、圧迫されて内部の流路が必要以上に狭められ必要な流量が確保できなくなってしまう。一方、クランプが不十分だと、不用意に引っ張られることでチューブクランプに対してチューブが摺動してしまい、「く」の字を形成する部分のチューブが短くなってしまい、上記相関関係が壊れてしまう。
【0006】
そのため、上下のチューブクランプでチューブを横方向に「C」字状に膨らんだ状態になるように斜めにクランプし、更に、中間のチューブクランプでその膨らんだ部分をクランプすることで、下側のチューブクランプとの間でチューブを「く」の字状に折り曲げた状態を作り出している。チューブに必要な流量を確保できるよう比較的軽くクランプしているが、上下のチューブクランプの外側からチューブを引っ張ろうとする力が加わっても、引張り方向と上下のチューブクランプによるクランプ方向が一致せず交差しているので、上下のチューブクランプに対してチューブが摺動し難くなっている。
【0007】
しかしながら、流量制御の精度を高めるには、「く」の字状部分のチューブの長さを輸液の投与中一定に維持するだけでなく、輸液の投与に先立って、チューブをチューブクランプでクランプする際に常に同じ「く」の字状部分を作り出す必要があり、それを簡単な手作業で再現性良く作り出すために、姿勢変更機構を備えているが、「C」字状に膨らんだ部分と絡んでいるため、この姿勢変更機構の構造は複雑なものとなっており、軽量化、小型化の観点からは未だ改良の余地があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、一対のチューブクランプで間隔をあけてチューブを「く」の字状に折り曲げた状態でクランプし、「く」の字を鋭角化することで流路を狭窄する仕組みを生かしつつ、構造を単純化し、結果として更に軽量化、小型化を向上できる、新規且つ有用な電動クレンメを提供することを、その目的とする。
また、本発明は、上記電動クレンメを検出部と併用して、チューブの開閉を電気的に制御できるよう構成した、実用的な自然落下式輸液制御装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、一対のチューブクランプと、前記一対のチューブクランプの一方のチューブクランプに対して他方のチューブクランプを接離動作させる電動式移動手段とを備え、前記一対のチューブクランプで「く」の字状に折り曲げた状態でクランプされた可撓性チューブの中間部が、前記他方のチューブクランプの接近により「く」の字が鋭角化することで前記中間部の流路が狭窄化する電動クレンメにおいて、各チューブクランプのチューブ保持面で対向する一対の圧迫凸条がクランプする可撓性チューブの軸方向に対して平行に設けられていることを特徴とする電動クレンメである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載した電動クレンメにおいて、チューブクランプでは凹断面状のガイド部と前記ガイド部を閉じる扉片のそれぞれの内面でチューブ保持面が構成されており、前記扉片側に一方の圧迫凸条が設けられていることを特徴とする電動クレンメである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した電動クレンメにおいて、一対のチューブクランプのチューブ保持面は直列しており、他方のチューブクランプの接離動作に影響されずに、この並び状態は維持されることを特徴とする電動クレンメである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載した電動クレンメにおいて、ケースと、前記ケースに対して固定的に取付けられた一方のチューブクランプと、電動式移動手段を搭載し、前記ケースに対してスライド可能に取付けられたスライドベースと、前記スライドベースに対して移動可能に取付けられた他方のチューブクランプを有して、前記ケースに対する前記スライドベースの位置の変更により、可撓性チューブの中間部が直線状に延びたチューブセット用クランプ姿勢と、「く」の字状に折り曲げられた流量制御中クランプ姿勢の間で変更可能に姿勢変更機構を備えることを特徴とする電動クレンメである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載した電動クレンメにおいて、姿勢変更機構では、ケース側の被係止突起と、スライドベース側の舌状片に設けられた係止突起を備え、前記舌状片の弾性的回動を利用して前記被係止突起を前記係止突起が乗り越えた後に係止することで流量制御中クランプ姿勢にロックされることを特徴とする電動クレンメである。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5に記載した電動クレンメにおいて、姿勢変更機構では、被係止突起の傾斜面と係止突起の傾斜面がスライド方向で圧接可能に対向し、且つ、前記係止突起を押下げる押下げシャフトを備えて、前記被係止突起の傾斜面に前記係止突起の傾斜面が圧接されて滑動させられるか、または、前記係止突起が押下げられるかで、前記被係止突起を前記係止突起が乗り越え可能になっており、傾斜面を利用した乗り越えで流量制御中クランプ姿勢に移行し、押下げを利用した乗り越えでロック解除されることを特徴とする電動クレンメである。
【0015】
請求項7の発明は、請求項3から6のいずれかに記載した電動クレンメにおいて、一方のチューブクランプの下側に他方のチューブクランプが配置され、更に、前記他方のチューブクランプの下側に可撓性チューブを摺動可能にガイドするガイド溝が配置されていることを特徴とする電動クレンメである。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれかに記載した電動クレンメと、点滴筒に装着される滴下検出部を備え、前記滴下検出部からの滴下情報に基づいて前記電動クレンメが制御されることを特徴とする自然落下式輸液制御装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電動クレンメは、チューブの開閉を担う部位が電動式でありながら、軽量化、小型化されたものであり、手動式のクレンメと同様に扱える。
従って、上記電動クレンメを検出部と併用して、実用的な自然落下式輸液制御装置を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る自然落下式輸液制御装置の全体の斜視図である。
【
図2】
図1の電動クレンメの扉片開放時の斜視図である。
【
図3】
図2の電動クレンメの扉片閉鎖時の斜視図である。
【
図4】
図3の断面図と、チューブのクランプ状態のイメージ図である。
【
図5】
図2のスライドベースの支持構造に係る断面図である。
【
図6】
図5のスライドベースとフロントケースの連係構造に係る平面図である。
【
図7】
図6からスライドベースを取り外した状態の平面図である。
【
図8】
図6のスライドベースのケースに対する係止構造に係る断面図である。
【
図9】
図2の下側チューブクランプの動作機構に係る斜視図である。
【
図12】
図2の電動クレンメのチューブセット時と流量制御時のイメージ図である。
【
図13】
図1の滴下検出部と電動クレンメとを一つにまとめた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る自然落下式輸液制御装置1を、図面にしたがって説明する。
図1に示すように、自然落下式輸液制御装置1は、滴下検出部3と、ブルートゥース(登録商標)を介して電気的に接続された電動クレンメ5で構成されている。滴下検出部3は、ホルダータイプに形成されており、輸液バッグに接続された点滴筒Sに装着されて、輸液の滴下による検出光の光路の遮りを利用して光学的に検出するようになっている。詳細は実用新案登録第3194008号に記載されている。
電動クレンメ5は、可撓性のチューブTに装着されて、チューブTを開閉するようになっており、滴下検出部3からの滴下情報(信号)を受けて制御される。
【0020】
図2、
図3に示すように、電動クレンメ5は外形が縦長の中空俵状で正面側が平面状に凹んだケース7で構成されている。このケース7は、トップケース9と、正面側のフロントケース11と、背面側のリアケース13とバッテリーケース15とで一体化されており、フロントケース11の正面側で平面状に凹んだ部位がチューブクランプの被取付け部17になっている。この被取付け部17を囲む上縁と下縁の左右方向中心にはそれぞれ上下方向に連なるガイド溝17a、17bが形成されている。
リアケース13には投与量と投与時間の設定ダイヤルと表示部が設けられている。また、リアケース13の側面部には穴が開けられてUSBコネクタ19が設けられている。更に、ケース7の下部では左右両側の縁よりも一段平面状に凹んで下端まで連なり、背面側で対応するバッテリーケース15側も同じように形成されており、両方で扁平な被包持部21が作られている。この被包持部21には、接点素子21a、21aが配設されている。
【0021】
被取付け部17内の上側には、上側チューブクランプ23が取付けられて固定されている。上側チューブクランプ23は断面が凹状で正面側に開口した半割筒状のガイド部25と、ガイド部25の一方の筒縁側に一端側が回動自在に支持された、ある程度弾性変形可能な扉片27で構成されている。回動により扉片27の他端側が他方の筒縁側に至ると、閉ループとなる。この閉ループの軸方向が上下方向を向くようにガイド部25と扉片27が被取付け部17に対して位置決めされている。扉片27の他端側には爪受け穴27aが形成され、他方の筒縁の他端側には係止爪25aが形成されており、この係止爪25aが爪受け穴27aに入り込んで係止されることで閉ループ状態が保持される。
ガイド部25と扉片27のそれぞれの内面でチューブ保持面が構成されており、ガイド部25側の凹底面にガイド溝17aが上下方向で連なっている。
【0022】
ガイド部25と扉片27のそれぞれのチューブ保持面に圧迫凸条29、29が設けられている。この圧迫凸条29は断面が山形で凸頂部29aが緩やかに湾曲したほぼ三角形状になっており、上下方向に延びている。閉ループ状態にすると、圧迫凸条29、29がそれぞれの凸頂部29a、29aを向かい合わせた状態で僅かな間隔をあけて対向する。
【0023】
被取付け部17内の下側には、下側チューブクランプ31が配置されており、上側チューブクランプ23と共に一対のチューブクランプ23、31をなしている。
この下側チューブクランプ31は上側チューブクランプ23と同様な構成で、ガイド部33、扉片35、一対の圧迫凸条37、37が設けられている。ガイド部33側の凹底面にガイド溝17bが上下方向で連なっている。
図4に示すように、閉ループ状態にすると、圧迫凸条37、37がそれぞれの凸頂部37a、37aを向かい合わせた状態で僅かな間隔をあけて対向する。
【0024】
一対のチューブクランプ23、31はどちらも同じようにチューブTをクランプしており、
図4の〇領域内では、下側チューブクランプ31によるチューブTのクランプ状態をイメージ的に示す。チューブTがクランプされると、一対の圧迫凸条37、37のそれぞれの凸頂部37a、37aがチューブTを周方向で挟んで対向した状態で圧迫する。この圧接部位tは凸頂部37a、37aにより形成されるので、チューブTの軸方向に垂直な断面に示すように、圧接部位t、tの間ではチューブTの内面どうしが重ね合った状態になるが、その両側には流路Fが確保されている。
一方、圧迫凸条37、37はチューブTの軸方向に対して平行に長さを有してチューブTに対して圧接しているので、圧接部位tはチューブTの長さ方向に長さを有している。チューブTが下側チューブクランプ31に対して摺動方向に引っ張られても、摺動方向に沿って長い圧接部位tがあるので、摺動抵抗が大きくなっており、摺動し難くなっている。
このように、チューブTを上下方向に延ばした状態のままでクランプしても、チューブTをしっかりとクランプしつつ、流路Fを確保することが可能になっている。
【0025】
下側チューブクランプ31が、上側チューブクランプ23に対して接離動作するようになっている。
図6に示すように、下側チューブクランプ31に向かい合う被取付け部17に平行して、ケース7の内部には板状のスライドベース39が設けられている。フロントケース11はリアケース13の縁部に対して被せるようになっており、内面側の境界部分を利用して左右両側にガイド凹条41、41が形成されている。このガイド凹条41、41は上下方向に延びており、スライドベース39の左右両縁がそれぞれスライド移動可能に保持されている。ケース7の使用状態では、スライドベース39は上下方向に移動することになる。
【0026】
スライドベース39には、
図5~
図9に示すように、係止機構が設けられている。
スライドベース39の移動方向下側に当たる左右両側の縁からはそれぞれ係止片43、43が連設されている。この係止片43は細帯状になって下方に延びているが、その下端側は左右方向外方に向かって半円状に膨らんでいる。係止片43の半円部43aは係止片43のその他の部位よりも左右方向外方に膨らんでいるが、スライドベース39の左右縁よりも左右方向外方には突出していない。
【0027】
係止片43の係止相手として、ガイド凹条41に半円柱状の係止凸部45が設けられている。
係止片43と係止凸部45は平面上では干渉関係にあるが、係止片43側が弾性的に回動することで周面どうしの滑動を介して係止凸部45を乗り越えることができる。係止凸部45はガイド凹条41の下壁との間に係止片43の半円部43aが入り込める隙間をあけて設けられているので、その隙間に入り込んだ係止片43は回動可能となる力が加えられない限り、係止される。スライドベース39を上方に向かって移動させようとする力が加わると、回動を促すので係止が解除される。
【0028】
また、スライドベース39の左方向の縁の中間はL字状に切り込まれたような形状になって、その部分が長方形板状の舌状片47になっている。この舌状片47は左方の係止片43とスライド方向で基端側を向かい合わせにして対向している。
舌状片47はスライドベース39と連なる基端がフロントケース11側に持ち上がった状態になっており、舌状片47の背面側の平面はスライドベース39の正面側の平面に対して平行であるか段差ができている。従って、舌状片47が背面側に向かって弾性的に回動することが可能になっている。
舌状片47の正面側は隆起して側方から見ると半矢印状になっており、隆起部分は傾斜面47aと垂直面47bで構成されている。
【0029】
舌状片47は係止突起となっており、その係止相手となる被係止突起として、フロントケース11の被取付け部17の内面に内方に突出する断面が直角二等辺状の係止凸部49が設けられている。この係止凸部49は、傾斜面49aが舌状片47の傾斜面47aと対向しており、平面上では干渉関係にあるが、舌状片47側が弾性的に回動することで圧接方向に対向した傾斜面どうしの滑動を介して係止凸部49を乗り越えることができる。乗り越えた後は、垂直面47bと垂直面49bが対向するので、舌状片47が回動可能となる力が加えられない限り、係止される。この係止位置は流量制御時に利用される。
【0030】
符号51はロック解除シャフトを示し、このロック解除シャフト51はフロントケース11の貫通穴を貫通して、その先端側は内部に入り込んでいる。ロック解除シャフト51の軸方向はスライドベース39のスライド方向と直交しており、上記した係止状態では、その下端は舌状片47の傾斜面47aに軽く接触しながら対向する位置関係になっている。電動クレンメ5を点滴筒Sに装着させると、自荷重により上方にはスライド移動し難くなっているため、この軽い接触によって上方へのスライド移動も不能になっている。この係止位置は流量制御時に利用される。
ロック解除シャフト51のフロントケース11から出たところにはロック解除キー53が取付けられている。このロック解除キー53を下げると、ロック解除シャフト51が押し下げられて舌状片47の回動を促すので係止が解除される。
【0031】
図10、
図11に示すように、上記のようにスライド移動自在に構成されたスライドベース39の被取付け部17を向いた面と反対側の面に、電動的移動手段を構成する直動型モータ55のモータ本体55aが固定されている。このモータ本体55aに直動シャフト55bが串刺し状に貫通しており、この直動シャフト55bはモータ駆動により直動してモータ本体55aの両側面からの突出度合が変更されるようになっている。
【0032】
また、スライドベース39の当該反対側の面には枠体57が配置されている。枠体57は壁状になってスライドベース39から立ち上がる方向に高さを有している。この枠体57はスライドベース39の左右両側と平行な部分を有しており、左右両側の外方にそれぞれガイド筒57a、57aが突設している。
スライドベース39の左右両側にはそれぞれ一対のガイド筒39a、39aが枠体57側に突設しており、一対のガイド筒39a、39aの間にガイド筒57aが介装された状態で、ガイド軸(図示省略)が一対のガイド筒39a、39aに架け渡されて固定されており、ガイド筒57aはガイド軸に対して摺動自在に外嵌されている。従って、スライドベース39に対して枠体57はスライド移動可能にガイド支持されている。
【0033】
枠体57は直動型モータ55のモータ本体55aと直動シャフト55bを囲んでおり、直動シャフト55bの軸方向端部が枠体57に当接した状態で嵌め込まれている。枠体57には連結部57bが設けられており、直動シャフト55bの一方の端部はその連結部57bに対して当接している。直動シャフト55bの直動方向と枠体57のスライド移動方向は一致しているので、直動シャフト55bの進退移動に連動して枠体57が移動する。
スライドベース39の背面側の板面と対向する枠体57の縁端面との間には間隔があいている。枠体57側の連結部57bはスライドベース39側に突出する突起部分を有しているが、この突起部分はスライドベース39の切欠き39bに入り込んでおり、スライドベース39に対して枠体57が移動する際には、突起部分が切欠き39bから出没する方向に移動するので、枠体57の移動には支障が無い。
【0034】
この突起部分の天面はスライドベース39の正面と面一となっており、そこに差込み穴が設けられている。この差込み穴に下側チューブクランプ31のスタンド31aが差し込まれてその奥側が固定されている。このスタンド31aはフロントケース11の長穴11aを貫通しており、その上端側はガイド部33の底面に固定されている。従って、スタンド31aはフロントケース11から少し浮き上がった状態になっている。スタンド31aの移動方向に沿ってその移動範囲をカバーするように長穴11aは長くなっている。
【0035】
この連係構造を備えた姿勢変更機構により、フロントケース11に対してスライドベース39が移動し、スライドベース39に対して下側チューブクランプ31がモータ駆動、すなわち電動で移動することが可能になっている。この下側チューブクランプ31の動作は上側チューブクランプ23に対する接離動作になっている。
フロントケース11には、上側チューブクランプ23の直下に曲げ当て部59が設けられており、チューブTの折り曲げ方向が規制されている。この曲げ当て部59は舌片状に突出しており、その先端が凸曲面部になっている。
【0036】
図12に示すように、チューブセット時には、スライドベース39をチューブセット用の位置に係止させ、モータ駆動により下側チューブクランプ31を上限まで上げておく。
ガイド溝17a~上側チューブクランプ23~下側チューブクランプ31~ガイド溝17bが直列するので、チューブTを直線状に延ばした状態でガイド溝17a、17bに通しながら、上側チューブクランプ23と下側チューブクランプ31でクランプする。但し、曲げ当て部59に当たった部位のチューブTはその反対側に僅かに膨らむ。このチューブセットにより、上側チューブクランプ23と下側チューブクランプ31にクランプされるチューブTの中間部の長さは常に一定に再現されることになる。この直列状態は、スライドベース39のスライド移動や下側チューブクランプ31の接離動作に影響されずに維持される。
【0037】
その後、スライドベース39を流量制御時の位置までスライド移動させて係止させる。下側チューブクランプ31をケース7に対して手で持ち上げることで、スライドベース39が自然にチューブセット用の係止状態を解除してスライド移動し、更に上方の流量制御時の係止位置で係止する。この位置で下側チューブクランプ31が流量制御中クランプ姿勢になる。
この係止により、上側チューブクランプ23と下側チューブクランプ31でクランプされた中間のチューブTは「く」の字状に折り曲がる。初期状態では、スライドベース39に対して下側チューブクランプ31が最も上の位置まできており、上側チューブクランプ23に対して最接近しているので、「く」の字が最も鋭角化されており、止水状態になっている。この止水状態から、モータ駆動により下側チューブクランプ31が下降することで、流路Fが開かれて輸液が流れるようになる。全開状態では、下側チューブクランプ31は、フロントケース11に対してチューブセット時と同じ位置にある。
チューブTの曲げ角度とチューブTの流量は相関しており、電動クレンメ5はチューブTを曲げることで、チューブTの流路Fの狭窄度合いを調整することができる。
下側チューブクランプ31はモータ駆動により一定範囲で移動が可能になっており、この移動により流量制御が実現されている。
【0038】
圧迫するよりも格段に小さな力で曲げることができるので、単純な構造ながら、完全に閉じて止水を実現することが容易となっている。そのため、電動クレンメ5は、手動式のクレンメと同様のサイズおよび重量で構成できる。
従って、自然落下式輸液制御装置1では、電動クレンメ5を既存の手動式のクレンメと同様に取り扱うことを可能としている。
【0039】
バッテリーケース15に収容されたバッテリー(図示省略)は、USBバスパワーにより充電可能な二次電池で構成されており、この収容状態のままで充電できることから、取外し機構を不要とし、その分だけ軽量化、小型化できる。USBコネクタ19に接続された外部電源から電源供給を受けてバッテリーが充電されるようになっている。
【0040】
電動クレンメ5には、被包持部21が設けられており、
図13に示すように、ここを滴下検出部3で包持させることで一つにまとめることができる。また、その包持状態では滴下検出部3側の接点素子(図示省略)と電動クレンメ5側の接点素子21a、21aを電気的に接続できるようになっている。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の具体的構成は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨から外れない範囲での設計変更があっても本発明に含まれる。
例えば、チューブクランプに所定の動きを実現できれば、具体的な構造は変更可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…自然落下式輸液制御装置 3…滴下検出部 5…電動クレンメ
7…ケース 9…トップケース 11…フロントケース 11a…長穴
13…リアケース 15…バッテリーケース 17…被取付け部
17a、17b…ガイド溝 19…USBコネクタ
21…被包持部 21a…接点素子 23…上側チューブクランプ
25…ガイド部 25a…係止爪 27…扉片 27a…爪受け穴
29…圧迫凸条 29a…凸頂部 31…下側チューブクランプ
31a…スタンド 33…ガイド部 33a…係止爪 35…扉片
35a…爪受け穴 37…圧迫凸条 37a…凸頂部 39…スライドベース
39a…ガイド筒 39b…切欠き 41…ガイド凹条 43…係止片
43a…半円部 45…係止凸部 47…舌状片 47a…傾斜面
47b…垂直面 49…係止凸部 49a…傾斜面 49b…垂直面
51…ロック解除シャフト 53…ロック解除キー
55…直動型モータ 55a…モータ本体 55b…直動シャフト
57…枠体 57a…ガイド筒 57b…連結部 59…曲げ当て部
S…点滴筒 T…チューブ t…圧接部位 F…流路