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特開2022-136577パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022136577
(43)【公開日】2022-09-21
(54)【発明の名称】パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220913BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220913BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021036257
(22)【出願日】2021-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕貴
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA09
2E185CB15
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】収容空間で保持される液体を好適に放出できるパウチを提供する。
【解決手段】内パウチ20と、前記内パウチ20の外側に設けられる外パウチ40と、を含むパウチ10であって、前記内パウチ20は、前記内パウチ20の収容空間S1で保持される液体を外部に放出する第1放出手段R1を備え、前記外パウチ40は、前記液体を前記外パウチ40の外部に放出する、前記第1放出手段R1とは異なる第2放出手段R2を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内パウチと、
前記内パウチの外側に設けられる外パウチと、を含むパウチであって、
前記内パウチは、前記内パウチの収容空間で保持される液体を外部に放出する第1放出手段を備え、
前記外パウチは、前記液体を前記外パウチの外部に放出する、前記第1放出手段とは異なる第2放出手段を備える
パウチ。
【請求項2】
前記第1放出手段は、前記収容空間の内圧が上昇することで前記液体を外部に放出する
請求項1に記載のパウチ。
【請求項3】
前記内パウチは、複数の内シートにより構成され、
前記複数の内シートを接合する内シール部の少なくとも一部分は、イージーピール構造を備える
請求項2に記載のパウチ。
【請求項4】
前記外パウチは、外シートにより構成され、
前記外シートは、複数の外層を含み、
前記外層の少なくとも1つは、紙層を含む
請求項1~3のいずれか一項に記載のパウチ。
【請求項5】
前記第2放出手段は、前記外シートの複数の外層の少なくとも一部分の積層方向に設けられる開口部を含む
請求項4に記載のパウチ。
【請求項6】
前記開口部は、前記外シートを貫通するように構成される
請求項5に記載のパウチ。
【請求項7】
前記第2放出手段は、前記第1放出手段よりも時間当たりの液体放出量が少ない
請求項1~6のいずれか一項に記載のパウチ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の前記パウチを備える
フェイスマスク。
【請求項9】
前記フェイスマスクは、前記パウチを保持する保持部を備え
前記第1放出手段は、前記パウチが前記保持部内で保持された状態で前記収容空間内の液体を放出する
請求項8に記載のフェイスマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制するために、マスク自体が水分を含む、または、マスクに水分を保持する保持材を設ける技術が知られている。特許文献1には、保水液を長時間保持可能な吸水性コアをマスクに収容する構成が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-319421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のマスクでは、吸水性コアに保水液を含侵させたのちにマスクに構成される収容体に吸水性コアを収容する。この場合、マスクの収容体に吸水性コアを収容するまでの間に、吸水性コアから保水液が漏れる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従うパウチは、内パウチと、前記内パウチの外側に設けられる外パウチと、を含むパウチであって、前記内パウチは、前記内パウチの収容空間で保持される液体を外部に放出する第1放出手段を備え、前記外パウチは、前記液体を前記外パウチの外部に放出する、前記第1放出手段とは異なる第2放出手段を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記パウチは、収容空間で保持される液体を好適に放出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態のパウチの正面模式図。
図2図1のパウチのD2-D2線の断面模式図。
図3図2のパウチの部分拡大図。
図4】パウチ内の液体の流れを示す図。
図5】パウチをフェイスマスクに設けた状態を示す図。
図6】フェイスマスクの使用開始時の一状態を示す図。
図7】第1比較試験の結果を示す表。
図8】第2実施形態のパウチの断面模式図。
図9図8のパウチの部分拡大図。
図10】第2比較試験の結果を示す表。
図11】変形例の内パウチの一例を示す図。
図12】変形例の内パウチの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(パウチおよびパウチが設けられるフェイスマスクが取り得る形態の一例)
(1)本発明に従うパウチは、内パウチと、前記内パウチの外側に設けられる外パウチと、を含むパウチであって、前記内パウチは、前記内パウチの収容空間で保持される液体を外部に放出する第1放出手段を備え、前記外パウチは、前記液体を前記外パウチの外部に放出する、前記第1放出手段とは異なる第2放出手段を備える。
このパウチによれば、パウチが第1放出手段を備える内パウチと第2放出手段を備える外パウチから構成される。内パウチと外パウチとにより構成され、かつそれぞれが異なる放出手段を備えることにより、収容空間で保持される液体が内パウチおよび外パウチから好適に放出される。
【0009】
(2)前記パウチの一例によれば、前記第1放出手段は、前記収容空間の内圧が上昇することで前記液体を外部に放出する。
このパウチによれば、収容空間の内圧を上昇させることで内パウチに接触することなく、第1放出手段により内パウチから液体を放出できる。このため、例えばパウチの使用開始時にユーザと液体との接触が抑制される。
【0010】
(3)前記パウチの一例によれば、前記内パウチは、複数の内シートにより構成され、前記複数の内シートを接合する内シール部の少なくとも一部分は、イージーピール構造を備える。
このパウチによれば、イージーピール構造により、第1放出手段が容易に構成される。
【0011】
(4)前記パウチの一例によれば、前記外パウチは、外シートにより構成され、前記外シートは、複数の外層を含み、前記外層の少なくとも1つは、紙層を含む。
このパウチによれば、紙層を含むため、第2放出手段による液体の放出量を好適に調節できる。
【0012】
(5)前記パウチの一例によれば、前記第2放出手段は、前記外シートの複数の外層の少なくとも一部分の積層方向に設けられる開口部を含む。
このパウチによれば、第2放出手段は、外シートの積層方向に設けられる開口部であるため、液体を好適に放出できる。
【0013】
(6)前記パウチの一例によれば、前記開口部は、前記外シートを貫通するように構成される。
このパウチによれば、第2放出手段により液体を好適に放出できる。
【0014】
(7)前記パウチの一例によれば、前記第2放出手段は、前記第1放出手段よりも時間当たりの液体放出量が少ない。
このパウチによれば、第2放出手段が第1放出手段よりも液体を徐放するため、長い期間液体を放出できる。
【0015】
(8)本発明に従うフェイスマスクによれば、前記パウチを備える。
このフェイスマスクによれば、第1放出手段を備える内パウチと第2放出手段を備える外パウチとから構成されるパウチを備えるのでユーザの口腔内および鼻腔内の乾燥を抑制できる。
【0016】
(9)前記フェイスマスクの一例によれば、前記フェイスマスクは、前記パウチを保持する保持部を備え前記第1放出手段は、前記パウチが前記保持部内で保持された状態で前記収容空間内の液体を放出する。
このフェイスマスクによれば、第1放出手段がマスクの保持部内で液体を放出できるので、フェイスマスクの使用開始時にユーザの手が濡れにくい。
【0017】
<第1実施形態>
図1図7を参照して、第1実施形態のパウチ10およびパウチ10が設けられるフェイスマスク100(図5参照)について説明する。パウチ10は、少なくとも内パウチ20を含む。好ましくは、パウチ10は内パウチ20の外側に設けられる外パウチ40を含む。パウチ10は、内部に収容空間Sを形成する。内パウチ20の収容空間S1は、液体を保持する。液体は、例えば水である。外パウチ40の収容空間S2は、内パウチ20および内パウチ20から放出された液体を保持する。
【0018】
内パウチ20は、複数の内層を含む内シート21により構成される。内パウチ20は、2枚以上の内シート21を重ね合わせて構成されていてもよく、1枚の内シート21を折り曲げることにより構成されていてもよい。本実施形態の内パウチ20は、2枚の内シート21同士を重ね合わせて構成される。内パウチ20の形状および寸法は、フェイスマスク100に取り付けた状態でユーザの呼吸の負担とならず、かつ、好適な量の液体を保持可能な収容空間S1が形成される程度に構成される。一例では、内パウチ20の形状は正面視において長方形状または略長方形状である。内パウチ20の寸法は、例えば長手方向の長さが60mmであり、短手方向の長さが45mmである。
【0019】
内パウチ20を構成する内シート21は、内シール部30で接合される。収容空間S1は、2枚の内シート21および内シール部30に囲まれた空間である。内シール部30は、内パウチ20の形状に応じて複数の内シール部が含まれる。本実施形態において、内シール部30は、内パウチ20の形状に対応して第1内シール部31、第2内シール部32、第3内シール部33、第4内シール部34を含む。内パウチ20の形状が、円形状または三角形状の場合、第1内シール31~第4内シール34の少なくとも1つを省略できる。内パウチ20の形状が、五角形以上の多角形状である場合、さらに内シール部を含む。
【0020】
第1内シール部31および第2内シール部32は、内パウチ20の長手方向に沿って設けられる。第3内シール部33および第4内シール部34は、内パウチ20の短手方向に沿って設けられる。
【0021】
第1内シール部31の内縁31A、第2内シール部32の内縁32A、第3内シール部33の内縁33A、および、第4内シール部34の内縁34Aは、収容空間S1の内郭を規定している。第1内シール部31の外縁31B、第2内シール部32の外縁32B、第3内シール部33の外縁33B、および、第4内シール部34の外縁34Bは、内パウチ20の外郭を規定する。内縁31Aと外縁31Bとの間隔を「第1内シール幅」と称する。内縁32Aと外縁32Bとの間隔を「第2内シール幅」と称する。内縁33Aと外縁33Bとの間隔を「第3内シール幅」と称する。内縁34Aと外縁34Bとの間隔を「第4内シール幅」と称する。第1~第4内シール幅は、要求されるシール強度に応じて設定される。第1~第4内シール幅は、同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。一例では、第1~第4内シール幅は、5mmである。
【0022】
内シール部30のシール強度は、任意に設定される。第1内シール部31~第4内シール部34の全てにおいてシール強度が同じであってもよく、少なくとも1つの内シール部30のシール強度が、他の内シール部30のシール強度と異なっていてもよい。少なくとも1つの内シール部30のシール強度は、収容空間S1の内圧が上昇した場合に、容易に剥がれる程度のシール強度である。内圧の上昇は、例えば加圧および加熱により生じる。一例では、少なくとも1つの内シール部30のシール強度が取り得る範囲は、0.5N/15mm以上である。一例では、少なくとも1つの内シール部30のシール強度が取り得る範囲は、10N/15mm以下である。一例では、内シール部30のシール強度は2N/15mmである。本実施形態において、第3内シール部33および第4内シール部34は、シール強度が0.5N/15mm~10N/mmの範囲内に含まれるように設定される。第1内シール部31および第2内シール部32は、例えばシール強度が0.5N/15mm~130N/15mmの範囲内で任意に設定される。
【0023】
図2に示されるように、内パウチ20は、収容空間S1の液体を外部に放出する第1放出手段R1を備える。第1放出手段R1は、例えば第3内シール部33および第4内シール部34に設定された、シール強度が低いイージーピール構造である。
【0024】
外パウチ40は、複数の内層を含む外シート41により構成される。外パウチ40は、2枚以上の外シート41を重ね合わせて構成されていてもよく、1枚の外シート41を折り曲げることにより構成されていてもよい。本実施形態の外パウチ40は、2枚の外シート41同士を重ね合わせて構成される。外パウチ40の形状および寸法は、フェイスマスク100に取り付けた状態でユーザの呼吸の負担とならず、かつ、内パウチ20を保持可能な収容空間S2が形成される程度に構成される。一例では、外パウチ40の形状は正面視において長方形状または略長方形状である。外パウチ40の寸法は、例えば長手方向の長さが80mmであり、短手方向の長さが60mmである。
【0025】
外パウチ40を構成する外シート41は、外シール部50で接合される。収容空間S2は、2枚の外シート41および外シール部50に囲まれた空間である。外シール部50は、外パウチ40の形状に応じて複数の外シール部が含まれる。本実施形態において、外シール部50は、第1外シール部51、第2外シール部52、第3外シール部53、第4外シール部54を含む。外パウチ40の形状が、円形状または三角形状の場合、第1外シール51~第4外シール54の少なくとも1つを省略できる。外パウチ40の形状が、五角形以上の多角形状である場合、さらに外シール部を含む。
【0026】
第1外シール部51および第2外シール部52は、外パウチ40の長手方向に沿って設けられる。第3外シール部53および第4外シール部54は、外パウチ40の短手方向に沿って設けられる。第1外シール部51の内縁51A、第2外シール部52の内縁52A、第3外シール部53の内縁53A、および、第4外シール部54の内縁54Aは、収容空間S2の内郭を規定している。第1外シール部51の外縁51B、第2外シール部52の外縁52B、第3外シール部53の外縁53B、および、第4外シール部54の外縁54Bは、外パウチ40の外郭を規定する。内縁51Aと外縁51Bとの間隔を「第1外シール幅」と称する。内縁52Aと外縁52Bとの間隔を「第2外シール幅」と称する。内縁53Aと外縁53Bとの間隔を「第3外シール幅」と称する。内縁54Aと外縁54Bとの間隔を「第4外シール幅」と称する。第1~第4外シール幅は、要求されるシール強度に応じて設定される。第1~第4外シール幅は、同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。一例では、第1~第4外シール幅は、5mmである。
【0027】
外シール部50のシール強度は、任意に選択可能である。外シール部50のシール強度は、好ましくは、外シール部50の剥離のしにくさとヒートシールの容易さとの関係に基づいて決められる。第1外シール部51~第4外シール部54の全てにおいてシール強度が同じであってもよく、少なくとも1つの外シール部50のシール強度が、他の外シール部50のシール強度と異なっていてもよい。外シール部50のシール強度が取り得る範囲は、一例では50N/15mm以上である。外シール部50のシール強度が取り得る範囲は、一例では130N/15mm以下である。一例では、外シール部50のシール強度は100N/15mmである。
【0028】
外パウチ40は、第2放出手段R2を備える。第2放出手段R2は、例えば外シート41に形成される開口部60である。第2放出手段R2は、第1放出手段R1とは異なる構成であることが好ましい。開口部60は、外シート41を積層方向に貫通するように構成される。開口部60は、外シート41のうち、外シール部50により接合されていない場所に設けられる。開口部60の形状は、一例では円形状である。別の例では、開口部60の形状は、四角形状である。開口部60は、所定の開口径以上にならないように形成される。開口部60は、複数設けられる。各開口部60の間の距離は、一例では等しい。別の例では、各開口部60の間の距離は、異なる。複数の開口部60の開口径は、それぞれが同一であってもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。外パウチ40が複数の外シート41で構成される場合、開口部60は少なくとも1つの外シート41に形成される。好ましくは、開口部60は複数の外シート41すべてに形成される。
【0029】
図3を参照して、内シート21および外シート41の構成について説明する。内シート21は、内層として基材層22およびシーラント層23を少なくとも含む。外シート41は、外層として基材層42、中間層43、紙層44、および、シーラント層45を少なくとも含む。内シート21の基材層22と外シート41のシーラント層45との間には、少なくとも一部分に隙間が形成される。
【0030】
基材層22は、耐水性、ガス遮断性、および、耐熱性に優れる材料により構成される。基材層22は、例えば透明蒸着層である。基材層22を構成する材料は、一例では酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等の無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートである。基材層22の厚さは任意に選択可能である。基材層22の厚さは例えば、9μm~25μmの範囲に含まれる。一例では、基材層22の厚さは12μmである。
【0031】
シーラント層23は、耐熱性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる材料により構成される。シーラント層23を構成する材料の一例は、凝集剥離タイプのイージーピールシーラントである。シーラント層23の厚さは、任意に選択可能である。シーラント層23の厚さは、例えば20μm~60μmの範囲に含まれる。一例では、シーラント層23の厚さは30μmである。シーラント層23として、例えば東レフィルム加工社製の9501シリーズ無延伸共押出フィルムが使用できる。
【0032】
基材層42は、耐水性、および、耐熱性に優れる材料により構成される。基材層42は、例えば透明蒸着層である。基材層42を構成する材料は、一例では酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素等の無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートである。基材層42の厚さは任意に選択可能である。基材層42の厚さは例えば、9μm~25μmの範囲に含まれる。一例では、基材層42の厚さは12μmである。
【0033】
中間層43は、耐熱性、および、耐衝撃性に優れる材料により構成される。中間層43は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、カルボン酸ビニル、および、アクリル酸エステルの少なくとも1つで構成される。中間層43の厚さは例えば、10μm~30μmの範囲に含まれる。一例では、中間層43は厚さ15μmのポリエチレンで構成される。
【0034】
紙層44は、たとえば再生紙または非再生紙で構成される。好ましくは、紙層44は、耐油性を備える耐油紙で構成される。紙層44の厚さに寄与する坪量は任意に選択可能である。紙層44の坪量は好ましくは、外パウチ40の強度と求められる保水力に応じて設定される。紙層44の坪量の最小値の好ましい一例は、20g/mである。紙層44の坪量の最大値の好ましい一例は、200g/mである。一例では、紙層44の坪量は50g/mである。
【0035】
シーラント層45は、耐熱性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる材料により構成される。シーラント層45は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、カルボン酸ビニル、および、アクリル酸エステルの少なくとも1つで構成される。シーラント層45の厚さは例えば、10μm~30μmの範囲に含まれる。一例では、シーラント層45は厚さ25μmのポリエチレンで構成される。
【0036】
内シート21および外シート41の任意の各層間には、図示しない接着層が設けられる。接着層は、例えばドライラミネート用接着剤から形成される。ドライラミネート用接着剤は、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤である。本実施形態では、接着層は2μmのポリエステルウレタン系接着剤で構成される。
【0037】
パウチ10の製造方法について説明する。パウチ10の製造方法は、収容空間S1に液体を保持した内パウチ20を製造する第1工程、外パウチ40を製造して内パウチ20を外パウチ40の収容空間S2内に封入する第2工程を少なくとも含む。
【0038】
第1工程では、内シート21のシーラント層23同士をヒートシールすることで、内シール部30を形成する。内シール部30に形成予定の第1内シール部31~第4内シール部34のうちの1つは、未シール状態にする。例えば、第1内シール部31を除く第2内シール部32~第4内シール部34を形成する。第1内シール部31が形成される予定の場所には、収容空間S1と外部とをつなぐ図示しない開口が形成される。開口から収容空間S1に対して液体が注入され、第1内シール部31を形成することで収容空間S1に液体を保持する内パウチ20が形成される。
【0039】
第2工程では、外シート41に開口部60を形成する。開口部60は、例えば外シート41に対して開口部60の径および数に対応する針を貫通させることで形成される。外シート41のシーラント層45同士をヒートシールすることで、外シール部50を形成する。外シール部50に形成予定の第1外シール部51~第4外シール部54のうちの1つは、未シール状態にする。例えば、第1外シール部51を除く第2外シール部52~第4外シール部54を形成する。第1外シール部51が形成される予定の場所には、収容空間S2と外部とをつなぐ図示しない開口が形成される。開口から内パウチ20を入れて、第1外シール部51を形成することで収容空間S2に内パウチ20を保持する外パウチ40が形成され、パウチ10が完成する。
【0040】
図4を参照して、収容空間S1の液体がパウチ10の外部に放出されるまでの流路の一例について説明する。図4に示される矢印A1の方向の力で加圧された場合、内パウチ20の第1放出手段R1である内シール部30のイージーピール構造部分の接合が剥がれる。収容空間S1の液体は、矢印A2に沿って収容空間S2に放出される。収容空間S2の液体は、矢印A3に沿って第2放出手段R2である開口部60を通り外部に放出される。
【0041】
イージーピール構造が剥がれる部分に形成される開口の面積は、開口部60の開口面積よりも大きい。このため、第2放出手段R2は、第1放出手段R1よりも時間当たりの液体放出量が少ない。第1放出手段R1によって収容空間S1から収容空間S2に放出された液体は、第2放出手段R2によって、時間をかけて収容空間S2から外部に放出される。
【0042】
図5に示されるように、フェイスマスク100は、ユーザの顔のうち少なくとも口および鼻を保護することに適した構造を備える。フェイスマスク100は、主面部110および取付部120を備える。フェイスマスク100を構成する材料は、例えば不織布または布である。主面部110は、ユーザに取り付けた状態でユーザの口および鼻と対向する第1主面111と第1主面111の反対側に位置する第2主面112を含む。取付部120は、主面部110をユーザの顔の適切な位置に固定するように構成される。一例では、取付部120は、主面部110の左右方向の両端部に設けられるゴムで形成された紐である。紐は、ユーザの耳に対して係り合うことで主面部110をユーザの顔の所定の位置に固定できる。
【0043】
フェイスマスク100は、パウチ10を保持する保持部130をさらに備える。保持部130は、例えば袋形状に構成される。この場合、保持部130は、図示しない開口を備え、パウチ10を出し入れ可能に構成される。保持部130は、例えば第1主面111または第2主面112の少なくとも一方に設けられる。好ましくは、保持部130は、第1主面111と第2主面112との間に設けられる。
【0044】
図6を参照して第1実施形態のパウチ10の作用について説明する。
ユーザがフェイスマスク100の第2主面112を把持し、主面部110がユーザの顔の形に合うように折り曲げる。このとき、内シール部30に設けられるイージーピール構造が剥がれることにより、内パウチ20から液体が放出される。内パウチ20から放出された液体は、外パウチ40の開口部60から徐放される。ユーザがフェイスマスク100を使用している期間、パウチ10から液体が徐放されるため、ユーザの口腔内および鼻腔内の湿度を高く保ち、乾燥を抑制する。
【0045】
<第1比較試験>
第1比較試験について説明する。第1比較試験は、パウチ10において特に外パウチ40の第2放出手段R2の適切な構成を評価する試験である。第1比較試験は、保持力評価試験および残存率評価試験を含む。
【0046】
保持力評価試験では、パウチ10を加圧し、第1放出手段R1により内パウチ20の液体を放出させた状態で、外パウチ40からの液体の放出量を評価することで、パウチ10の液体保持力を評価した。保持力評価試験の評価は、本願発明者を含む評価者により実施された。評価者は、水のしたたり、および、手への液体の付着のいずれも観察されない場合は「〇」と評価した。評価者は、水のしたたりが観察される、または、手に液体が付着したと認定された場合は「×」と評価した。
【0047】
残存率評価試験では、パウチ10をフェイスマスク100の保持部130で保持した状態で加圧し、第1放出手段R1により内パウチ20の液体を放出させた状態で、所定時間経過後の液体の残存率を評価した。所定時間は、10時間に設定した。評価者は、10時間経過後のパウチ10の液体残存率が20重量パーセント以上である場合「〇」と評価し、20重量パーセント未満である場合「×」と評価した。
【0048】
第1比較試験は、実施例1~4のパウチ10、比較例1のパウチ10、および、比較例2のパウチ10を用いて実施した。以下に各パウチ10の構成について説明する。なお、内パウチ20の構成は、各パウチ10で共通である。
【0049】
実施例1~4のパウチ10、比較例1のパウチ10、および、比較例2のパウチ10の内シート21および外シート41の構成は、以下のとおりである。内シート21の基材層22は、厚さ12μmの無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートで構成される。内シート21のシーラント層23は、厚さ30μmの東レフィルム加工社製の9501シリーズ無延伸共押出フィルムで構成される。外シート41の基材層42は、厚さ12μmの無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートで構成される。外シート41の中間層43は、厚さ15μmのポリエチレンで構成される。外シート41の紙層44は、坪量50g/mの耐油紙で構成される。外シート41のシーラント層45は、厚さ25μmのポリエチレンで構成される。収容空間S1には、3gの水が保持される。
【0050】
実施例1のパウチ10は、外パウチ40の開口部60の直径(以下「開口径」と称する)が0.1mmである。開口部60の数(以下「開口数」と称する)が150個である。外シート41の面積に対する開口部60の面積(以下「開口面積比」と称する)が0.13パーセントである。なお、外シート41のうちシール部50部分を除いた部分を外シート41の面積として計算した。
【0051】
実施例2のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が150個、および、開口面積比が0.54パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0052】
実施例3のパウチ10は、開口径が0.3mm、開口数が150個、および、開口面積比が1.21パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0053】
実施例4のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が300個、および、開口面積比が1.08パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0054】
比較例1のパウチ10は、開口径が0.5mm、開口数が150個、および、開口面積比が3.36パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0055】
比較例2のパウチ10は、開口径が0.2mm、開口数が600個、および、開口面積比が2.15パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0056】
図7を参照して第1比較試験の試験結果について説明する。
保持力評価試験において、実施例1~4のパウチ10および比較例2のパウチ10では、水のしたたりおよび手が濡れる状態は観察されなかった。一方で、比較例1のパウチ10では、水のしたたりが観察され、手が濡れる状態が観察された。残存率評価試験において、実施例1~4のパウチ10および比較例1のパウチ10は、十分な量の液体が残存していたため「〇」と評価された。一方で、比較例2のパウチ10は、液体の大部分が外部に放出されていたため「×」と評価された。保持力評価試験の結果からは、開口径は、0.3mm以下に設定することが好ましいことが明らかになった。残存率評価試験の結果からは、開口数を300個以下に設定することが好ましいことが明らかとなった。保持力評価試験および残存率評価試験を踏まえると、開口面積比は、2.0パーセント未満に設定することが好ましい。
【0057】
<第2実施形態>
図8図10を参照して、第2実施形態のパウチ10について説明する。第2実施形態のパウチ10は、外パウチ40の第2放出手段R2の構成が第1実施形態のパウチ10と相違する。第1実施形態のパウチ10と共通する構成については、同一の符号を付し、説明の一部または全部を省略する場合がある。
【0058】
図8および図9に示されるように、外パウチ40に設けられる開口部60は、第1開口部61および第2開口部62を含む。第1開口部61および第2開口部62のいずれも、外シート41を積層方向に貫通しないように構成される。
【0059】
第1開口部61は、外シート41の基材層42および中間層43を積層方向に貫通する。第1開口部61は、紙層44を積層方向に貫通しないように構成される。第1開口部61は、紙層44の積層方向に紙層44を貫通しない程度に部分的に設けられていてもよい。
【0060】
第2開口部62は、外シート41のシーラント層45を積層方向に貫通する。第2開口部62は、紙層44を積層方向に貫通しないように構成される。第2開口部62は、紙層44の積層方向に紙層44を貫通しない程度に部分的に設けられていてもよい。
【0061】
第1開口部61および第2開口部62は、積層方向において位置が一致していてもよく、少なくとも一部分の位置がずれていてもよい。少なくとも一部分の位置がずれている場合、より徐放性を高めることができる。第1開口部61および第2開口部62は、開口径、開口数、および、開口面積比の全てが一致していてもよく、少なくとも1つが異なっていてもよい。
【0062】
<第2比較試験>
第2比較試験について説明する。第2比較試験は、第2実施形態の外パウチ40に設けられる第2放出手段R2の適切な構成を評価する試験である。第2比較試験は、保持力評価試験および残存率評価試験を含む。保持力評価試験および残存率評価試験は、第1比較試験と同様の手順で実施した。
【0063】
第2比較試験は、実施例1~3のパウチ10、比較例1のパウチ10、および、比較例2のパウチ10を用いて実施した。以下に各パウチ10の構成について説明する。なお、内パウチ20の構成は、各パウチ10で共通である。
【0064】
実施例1~3のパウチ10、比較例1のパウチ10、および、比較例2のパウチ10の内シート21および外シート41の構成は、以下のとおりである。内シート21の基材層22は、厚さ12μmの無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートで構成される。内シート21のシーラント層23は、厚さ30μmの東レフィルム加工社製の9501シリーズ無延伸共押出フィルムで構成される。外シート41の基材層42は、厚さ12μmの無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレートで構成される。外シート41の中間層43は、厚さ15μmのポリエチレンで構成される。外シート41の紙層44は、坪量50g/mの耐油紙で構成される。外シート41のシーラント層45は、厚さ25μmのポリエチレンで構成される。収容空間S1には、3gの水が保持される。
【0065】
実施例1のパウチ10は、外パウチ40に設けられる第1開口部61および第2開口部62の開口径が0.2mm、第1開口部61および第2開口部62の開口数がそれぞれ600個、第1開口部61および第2開口部62の開口面積比が2.1パーセントである。
【0066】
実施例2のパウチ10は、外パウチ40に設けられる第1開口部61および第2開口部62の開口径0.4がmm、第1開口部61および第2開口部62の開口数がそれぞれ600個、第1開口部61および第2開口部62の開口面積比が8.6パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0067】
実施例3のパウチ10は、外パウチ40に設けられる第1開口部61および第2開口部62の開口径が0.6mm、第1開口部61および第2開口部62の開口数がそれぞれ600個、第1開口部61および第2開口部62の開口面積比が19.4パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0068】
比較例1のパウチ10は、外パウチ40に設けられる第1開口部61および第2開口部62の開口径が0.8mm、第1開口部61および第2開口部62の開口数がそれぞれ600個、第1開口部61および第2開口部62の開口面積比が34.5パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0069】
比較例2のパウチ10は、外パウチ40に設けられる第1開口部61および第2開口部62の開口径が1.0mm、第1開口部61および第2開口部62の開口数がそれぞれ600個、第1開口部61および第2開口部62の開口面積比が53.8パーセントである。その他の構成については、実施例1のパウチ10と同様の構成を備える。
【0070】
図10を参照して第2比較試験の試験結果について説明する。
保持力評価試験において、実施例1~3のパウチ10および比較例1のパウチ10では、水のしたたりおよび手が濡れる状態は観察されなかった。一方で、比較例2のパウチ10では、水のしたたりが観察され、手が濡れる状態が観察された。残存率評価試験において、実施例1~3のパウチ10は、十分な量の液体が残存していたため「〇」と評価された。一方で、比較例1および比較例2のパウチ10は、液体の大部分が外部に放出されていたため「×」と評価された。保持力評価試験の結果からは、第1開口部61および第2開口部62の開口径は、1.0mm以下に設定することが好ましいことが明らかになった。残存率評価試験の結果からは、開口面積比を30パーセント未満に設定することが好ましいことが明らかになった。
【0071】
<変形例>
実施の形態に関する説明は本発明に従うパウチおよびフェイスマスクが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うパウチおよびフェイスマスクは各実施形態以外に例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0072】
・内シール部30は、別の形態を取り得る。図11および図12に示されるように内シール部30の少なくとも1つが、収容空間S1に向けて突出するように構成されていてもよい。図示される例では、第3内シール部33および第4内シール部34に収容空間S1に向けて突出部33Tおよび突出部34Tが形成される。突出部33Tのシール幅は、第3内シール部33のシール幅と同じ、第3内シール部33のシール幅よりも広い、または、第3内シール部33のシール幅よりも狭い。突出部33Tと内パウチ20の外縁との間には、重なり合うシート同士がシールされていない未シール部が設けられる。突出部34Tのシール幅は、第4内シール部34のシール幅と同じ、第4内シール部34のシール幅よりも広い、または、第4内シール部34のシール幅よりも狭い。突出部34Tと内パウチ20の外縁との間には、重なり合うシート同士がシールされていない未シール部が設けられる。収容空間S1の内圧が上昇する場合、突出部33Tの先端部、および、突出部34Tの先端部に応力が集中するため、シール強度が高い場合でも、突出部33Tおよび突出部34Tに第1放出手段R1が形成されやすい。このため内シール部30のシール強度を高めることができ、意図しない第1放出手段R1による液体の放出が抑制される。
【0073】
・第1放出手段R1は、別の形態を取り得る。一例では内シート21予め形成された開口である。開口は、例えばイージーピールシーラントにより覆われる。ユーザが使用開始時に、パウチ10が設けられるフェイスマスク100の主面部110を左右方向または上下方向に向かって引っ張ることで、イージーピールシーラントが剥がれて開口が露出する。露出した開口から収容空間S1の液体が外部に放出される。第2放出手段R2に含まれる開口部60がイージーピールシーラントで覆われていてもよい。この場合、意図しない第2放出手段R2による液体の放出が抑制される。
【0074】
・内シール部30のシール強度は任意に変更される。例えば、第1内シール部31および第2内シール部32は、シール強度が0.5N/15mm~10N/mmの範囲内に含まれるように設定される。第3内シール部33および第4内シール部34は、例えばシール強度が0.5N/15mm~130N/15mmの範囲内で任意に設定される。
【符号の説明】
【0075】
10 …パウチ
20 …内パウチ
21 …内シート
30 …内シール部
40 …外パウチ
41 …外シート
50 …外シール部
60 …開口部
100…フェイスマスク
110…主面部
120…取付部
130…保持部
R1 …第1放出手段
R2 …第2放出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12